令和元年度(2019年度)過去問

表見代理

表見代理とは?

わかりやすくいうと、相手方が、無権代理行為について、有効な代理行為と思えるような事情があり、本人と無権代理人との間に特別な事情がある場合、本人よりも相手方を保護しようとするのが表見代理です。

表見代理の効果

表見代理が成立すると、無権代理行為は有効となり、本人は契約内容を履行する義務を負います(本人は責任を負う)。

表見代理が成立する要件

表見代理が成立するためには、下記3つを満たす必要があります。

  1. 下記「表見代理の類型」の1つに該当すること
  2. 相手方が善意無過失であること

表見代理の類型(5パターン)

  1. 代理権授与の表示
    本人が代理権を与えていないのに、代理権を与えたような表示をした場合(例えば、白紙委任状を渡した)
  2. 権限外の行為
    本人が代理人が与えた代理権の範囲を超えた内容の代理行為をした場合(例えば、抵当権設定の代理権を与えたにも関わらず、売却した)
  3. 代理権消滅後の行為
    代理権が消滅しているにもかかわらず、代理行為(無権代理行為)を行った(例えば、代理権をはく奪されたにもかかわらず、代理権を行使した)
  4. 代理権の授与の表示をした後の権限外の行為
    上記1と2の両方が行われている事案です。
  5. 代理権消滅後の権限外の行為
    上記2と2の両方が行われている事案

参考条文

(代理権授与の表示による表見代理等)
第109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

(権限外の行為の表見代理)
第110条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

(代理権の消滅事由)
第111条 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
2 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。

(代理権消滅後の表見代理等)
第112条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

強迫

強迫とは?

「強迫」とは、相手に何らかの害を加えると告知することによって、相手の自由な意思決定を妨げる行為を言います。

民法では「強迫」という漢字を使い、刑法では「脅迫」という漢字を使います。

刑法の「脅迫」は、生命・財産などに害を加えると相手に告知することを意味しますが、行政書士では、こちらは覚えなくてもよいです。

強迫の効果

強迫による意思表示は、あとで取り消すことができます(民法96条1項)。

例えば、AがBに強迫されて、A所有の土地をBに売却してしまった場合、Aはあとで、強迫を理由にAB間の売買契約を取り消すことができます。

第三者から強迫を受けた場合

第三者から強迫を受けた場合、相手方が善意無過失であろうが関係なく、強迫を受けた者はあとで取り消しができます

例えば、Aが第三者Cに強迫されて、A所有の土地をBに売却してしまった場合、第三者Cが強迫について善意無過失であっても、Aはあとで、強迫を理由にAB間の売買契約を取り消すことができます。(もちろん、第三者Cが悪意でも有過失でも取消しできます)

強迫取消し前の第三者との関係

第三者から強迫を受けた場合と同じく、強迫取消し前の第三者が善意無過失であろうと関係なく、強迫を受けた者はあとで取り消しができます

例えば、AがBに強迫されて、A所有の土地をBに売却してしまった。その後、Bが第三者Cにこの土地に売却した。

この場合、第三者Cが強迫について善意無過失であっても、Aは強迫取消しを第三者Cに対抗できます。つまり、Aは土地をCから取り戻すことができます。(もちろん、第三者Cが悪意でも有過失でも取消しできます)

「詐欺取消し前の第三者」と「強迫取消し前の第三者」の違い

Aが誰かから詐欺を受けて、Bに甲土地を売却しました。「Aが詐欺を理由に取消す前」に、Bは第三者Cに売却しました(Cは取消し前の第三者)。その後、Aは詐欺を理由にBに取消しの意思表示をしました。

この場合、AとCのどちらを保護するだろうか?(どちらが勝つか?)

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詐欺取消前の第三者については、第三者が善意無過失かそれ以外かで保護すべき人を決めます

第三者Cが、詐欺について善意無過失であればCが保護され、Cがそれ以外(悪意or有過失)であればAが保護されます。

「Aが詐欺を受けていたことを知らない第三者C」と「騙されたA」とを比較すれば、何も知らないCの方を保護すべきだというという理由から善意の第三者を保護しています。詐欺を受けていたことを知っていたのであれば保護する必要はないので、その場合は詐欺を受けたAを保護します。

注)第三者Cは善意無過失でありさえすれば、たとえ登記がなくても、保護される!

一方、強迫による取消し前の第三者では、強迫を受けたAが保護されます。つまり、第三者が善意無過失であっても、悪意や有過失であっても、第三者は保護されません。これは、騙された人と異なり、強迫を受けた者に落ち度はないから、より手厚く保護しているのです。

参考条文

(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(取消権の期間の制限)
第126条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

詐欺

詐欺とは?

詐欺(さぎ)とは、他人に騙されて意思表示をしてしまった場合を指します。詐欺のことを「欺罔行為(ぎもうこうい)」と言ったりもします。

詐欺の効果

詐欺による意思表示は、取り消すことができます(民法96条1項)。

例えば、AがBに騙されて、A所有の土地をBに売却してしまった場合、Aはあとで、詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができます。

上記取消権は、①追認をすることができる時から5年間行使しないとき、または、②詐欺による意思表示をした時から20年を経過したとき時効によって消滅します(民法126条)。

第三者から詐欺を受けた場合

第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知り(悪意)、又は知ることができた(有過失)ときに限り、詐欺を受けた者は、その意思表示を取り消すことができます(民法96条2項)。

例えば、Aが、第三者Cから詐欺を受け、A所有の土地をBに売却した場合、Bが悪意もしくは有過失の場合、AはBに対して詐欺取消しを主張できます。つまり、AはBから土地を取り戻すことができます。

逆にBが善意無過失であれば、AはBから詐欺を理由に土地を取り戻すことができません。

詐欺取消し前の第三者との関係

例えば、AがBに騙されて、A所有の土地をBに売却してしまった。その後、Aが詐欺取消しをする前に、Bが第三者Cに土地を売却してしまった。この場合、Aは土地を取り戻すことができるか?

第三者Cが、詐欺の事実について善意無過失であれば第三者Cが保護され、悪意または有過失の場合、Cは保護されず、Aは詐欺取消しをCに主張できます

「詐欺取消し前の第三者」と「強迫取消し前の第三者」の違い

Aが誰かから詐欺を受けて、Bに甲土地を売却しました。「Aが詐欺を理由に取消す前」に、Bは第三者Cに売却しました(Cは取消し前の第三者)。その後、Aは詐欺を理由にBに取消しの意思表示をしました。

この場合、AとCのどちらを保護するだろうか?(どちらが勝つか?)

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詐欺取消前の第三者については、第三者が善意無過失かそれ以外かで保護すべき人を決めます

第三者Cが、詐欺について善意無過失であればCが保護され、Cがそれ以外(悪意or有過失)であればAが保護されます。

「Aが詐欺を受けていたことを知らない第三者C」と「騙されたA」とを比較すれば、何も知らないCの方を保護すべきだというという理由から善意の第三者を保護しています。詐欺を受けていたことを知っていたのであれば保護する必要はないので、その場合は詐欺を受けたAを保護します。

注)第三者Cは善意無過失でありさえすれば、たとえ登記がなくても、保護される!

一方、強迫による取消し前の第三者では、強迫を受けたAが保護されます。つまり、第三者が善意無過失であっても、悪意や有過失であっても、第三者は保護されません。これは、騙された人と異なり、強迫を受けた者に落ち度はないから、より手厚く保護しているのです。

参考条文

(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(取消権の期間の制限)
第126条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

錯誤

錯誤とは?

錯誤とは、簡単に言えば「勘違い」を意味します。具体例は、下記「表示の錯誤」と「動機の錯誤」の中で解説します。

表示の錯誤と動機の錯誤

表示の錯誤とは?

「表示の錯誤」とは、「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」を言います(民法95条1項1号)。

分かりづらいですが、具体例を考えれば簡単です。

例えば、甲土地を買おうと思っていたのにも関わらず、「乙土地を購入します!」と言ってしまった場合です。

動機の錯誤とは?

「動機の錯誤」とは、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」を言います(民法95条1項2号)。

これも具体例を考えれば簡単です。

例えば、甲土地の近くに駅が新設されると思い込んで「甲土地を購入します!」といったにも関わらず、駅は新設されなかった場合、「駅が新設される」という動機について勘違いをしています。

錯誤の成立要件

表示の錯誤の成立要件

下記2つを同時に満たすことで錯誤が成立します。

  1. 錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである
  2. 表意者に重大な過失がない

※1の「重要なものである」とは、勘違いをしていなかったら、そのような意思表示をしなかっただろう場合です。

※「重大な過失」とは、通常期待される注意を著しく欠くことを言います。

動機の錯誤の成立要件

上記表示の錯誤の成立要件に加えて

動機を明示すること、または黙示に明示すること」が必要となります。

共通錯誤

共通錯誤とは、表意者だけでなく、相手方も同じ勘違いをしていた場合を指します。

この場合、表意者に重過失があっても、錯誤取消の主張ができます。

錯誤の効果

錯誤が成立すると、表意者(勘違いをした者)は、あとで取り消しをすることができます(民法95条1項)。

原則、相手方や第三者は、錯誤を理由に取り消すことはできません。

上記取消権は、①追認をすることができる時から5年間行使しないとき、または、②錯誤による意思表示をした時から20年を経過したとき時効によって消滅します(民法126条)。

錯誤と第三者との関係

善意無過失の第三者は保護されます(民法95条4項)。

例えば、Aが勘違いをして、A所有の土地をBに売却し、その後、Bが、「Aの錯誤について善意無過失のC」に売却した場合、善意無過失のCは保護され、AはCに対して、錯誤取消しを主張できません。

参考条文

(錯誤)
第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(取消権の期間の制限)
第126条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

虚偽表示

虚偽表示とは?

虚偽表示(きょぎひょうじ)とは、相手方と通じて(グルになって)、虚偽(ウソ)の意思表示をすることです。

例えば、Aが、税金を滞納していて、このままだとA所有の土地が差押えられるので、AとBがグルになってA所有の土地について、AがBに売却する契約をした場合、この売買契約は「虚偽表示」にあたります。

※虚偽表示は「通謀虚偽表示(つうぼうきょぎひょうじ)」とも言います。

虚偽表示の効力

虚偽表示は、当事者間では無効となります(民法94条1項)。

そのため、上記事例でいえば、AB間の売買契約な無効です。

虚偽表示と第三者との関係

虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができません(民法94条2項)。

例えば、Aが、税金を滞納していて、このままだとA所有の土地が差押えられるので、AとBがグルになってA所有の土地について、AがBに売却する契約をし、その後、Bが虚偽表示の事実を知らない(善意の)第三者Cに、当該土地を売却した場合、AはCに対して虚偽表示の無効を主張できません。(AはCから土地を取り返すことができない)

94条2項の虚偽表示の第三者とは?

判例・通説によると「虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき新たに法律上利害関係を有するに至った者」を言います。

第三者に該当する例

  1. 不動産の仮装譲受人から譲り受けた者
  2. 不動産の仮装譲受人から抵当権の設定を受けた者
  3. 虚偽表示の目的物を差し押さえた債権者
  4. 仮装債権の譲受人

第三者に該当しない例

  1. 仮装譲受人の単なる一般債権者
  2. 先順位抵当権が仮装放棄され、目的物につき順位上昇を主張する後順位抵当権者
  3. 債権の仮装譲受人から債権の取立てのために債権を譲り受けた者
  4. 土地賃借人がその所有する借地上の建物を仮装譲渡した場合の土地を所有する土地賃貸人
  5. 土地の仮装譲受人が、その土地上に建物を建築し、その建物を賃貸した場合の建物賃借人

参考条文

(虚偽表示)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

心裡留保

心裡留保とは?

心裡留保(しんりりゅうほ)とは、冗談で売りますよ!買いますよ!あげますよ!といううように、真意ではないことを言います。

心裡留保による意思表示の効力

表意者がその真意ではないことを知って意思表示をした(冗談で言った)場合、原則、その意思表示は有効となります(民法93条本文)。

ただし、例外として、相手方が、「その意思表示が表意者の真意ではないこと」を知り(悪意)、又は知ることができた(有過失)ときは、その意思表示は、無効となります。

例えば、売主Aが、買主Bに対して、「A所有の土地を無料で上げるよ!」と冗談で言って、冗談で言っていることを買主Bが知りながら「ありがとう!その土地もらうよ!」といった場合、上記例外にあたるので、この贈与契約は無効となります。

養子縁組と心裡留保

「養親になりたい・養子になりたい」という意思のない養子縁組は、相手方がその真意(意思)を知っていも・知らなくても(善意・悪意関係なく無効です(最判昭23.12.23)。

心裡留保と第三者との関係

上記具体例で、AB間の贈与契約が、心裡留保により無効となにも関わらず、Bがその土地を第三者Cに売却した場合どうなるか?

第三者Cが「Aの心裡留保」を知らない善意の)場合、第三者Cが保護され、AはCに対して無効主張できません

一方、

第三者Cが「Aの心裡留保」を知っている悪意の)場合、第三者Cを保護する必要性が低いので、AはCに対して無効主張できます

参考条文

(心裡留保)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

被補助人

被補助人とは?

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者で、家庭裁判所により補助開始の審判を受けた者を言います(民法15条1項本文)。

そして、本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければなりません(民法15条2項)。

補助開始の審判を受ける場合、補助人は、①同意権付与の審判、②代理権付与の審判の一方または双方を受けます(民法17条1項、876条の9第1項)。

被補助人の行為能力

被補助人は原則、単独で法律行為を行えます。

ただし、補助人が①同意権付与の審判を受けた場合、下記の中から同意が必要と指定された内容に限って、補助人の同意が必要となります。

※同意権が付与される内容は、「被保佐人が保佐人の同意が必要なもの」と同じです。下記の中から、同意が必要なものを家庭裁判所が指定します。

  1. 元本を領収し、又は利用すること。
  2. 借財又は保証をすること。
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
  4. 訴訟行為をすること。
  5. 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
  8. 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
  9. 山林について10年を超える賃貸借、宅地について5年を超える賃貸借、建物について3年を超える賃貸借をすること
  10. 上記行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること
    【具体例】
    例えば、未成年者A(子)の法定代理人B(親)が被保佐人である場合、被保佐人である法定代理人Bが未成年者A(子)の土地を法定代理人として売却する場合、保佐人(弁護士等)の同意が必要。同意なく売却した場合を取り消すことができる

補助人の権限

被補助人の保護者を「補助人」と言います。

そして、補助人は「同意権(同意権付与の審判を受けた補助人に限る)」「取消権」「追認権」「代理権(代理権付与の審判を受けた補助人に限る)」を有します。

  • 同意権:被補助人が単独で行えない行為に対して同意を与える権利(これは同意権付与の審判を受けた補助人のみ有する権利)
  • 取消権:補助人の同意が必要な法律行為であるにも関わらず、被補助人が単独で法律行為を行った場合、後で取り消しができる権利
  • 追認権:補助人の同意が必要な法律行為であるにも関わらず、被保佐人が単独で法律行為を行った場合、後で契約を確定的に有効にさせる権利
  • 代理権:被補助人を代理して法律行為を行う権利(これは代理権付与の審判を受けた補助人のみ有する権利)

保護者(補助人)のもつ権利

※1 代理権については、家庭裁判所による「代理権付与の審判」があった場合に補助人は代理権を有します

※2 「同意権付与の審判」があった範囲の行為について補助人は同意権・取消権・追認権を有する。

>>保護者が有する権利のまとめ表はこちら

補助人の義務

補助人は、補助の事務を行うに当たっては、被補助人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。(民法876条の5 、876条の10:身上配慮義務

参考条文

(補助開始の審判)
第15条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。

(被補助人及び補助人)
第16条 補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第17条 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

(補助開始の審判等の取消し)
第18条 第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
2 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
3 前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。

(補助人に代理権を付与する旨の審判)
第876条の9 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
2 第八百七十六条の四第二項及び第三項の規定は、前項の審判について準用する。

(保佐の事務及び保佐人の任務の終了等)
第876条の5 保佐人は、保佐の事務を行うに当たっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。(下記第876条の10に準用の規定あり)

(補助の事務及び補助人の任務の終了等)
第876条の10 第六百四十四条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項、第八百六十二条、第八百六十三条及び第八百七十六条の五第一項の規定は補助の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は補助人が前条第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。

 

被保佐人

被保佐人とは?

「被保佐人」とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所による保佐開始の審判を受けた者です。

「事理を弁識する能力が著しく不十分」とは、不動産や現金等の一定の重要な財産に関する法律行為を自分一人で行う判断能力がないことを意味します。

被保佐人の行為能力

被保佐人は、原則単独で法律行為を行えます。

ただし、下記1~10の内容については保佐人の同意が必要で、もし被保佐人が保佐人の同意を得ずに行った場合、後で取り消しができます。

  1. 元本を領収し、又は利用すること。
  2. 借財又は保証をすること。
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
  4. 訴訟行為をすること。
  5. 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
  8. 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
  9. 山林について10年を超える賃貸借、宅地について5年を超える賃貸借、建物について3年を超える賃貸借をすること
  10. 上記行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること
    【具体例】
    例えば、未成年者A(子)の法定代理人B(親)が被保佐人である場合、被保佐人である法定代理人Bが未成年者A(子)の土地を法定代理人として売却する場合、保佐人(弁護士等)の同意が必要。同意なく売却した場合を取り消すことができる

保佐人の権限

被保佐人の保護者を「保佐人」と言います。

そして、保佐人は「同意見」「取消権」「追認権」「代理権(代理権付与の審判を受けた保佐人に限る)」を有します。

  • 同意権:被保佐人が単独で行えない行為に対して同意を与える権利
  • 取消権:保佐人の同意が必要な法律行為であるにも関わらず、被保佐人が単独で法律行為を行った場合、後で取り消しができる権利
  • 追認権:保佐人の同意が必要な法律行為であるにも関わらず、被保佐人が単独で法律行為を行った場合、後で契約を確定的に有効にさせる権利
  • 代理権:被保佐人を代理して法律行為を行う権利(これは代理権付与の審判を受けた保佐人のみ有する権利)

保護者(保佐人)のもつ権利

 
※ 代理権については、家庭裁判所による代理権付与の審判があった場合に保佐人は代理権を有します。 被保佐人本人以外の者が代理権付与の請求をする場合、本人の同意が必要です。
 
※ 被保佐人が、「重要な財産上の行為」をする場合には、保佐人の同意が必要ですが、被保佐人の不利益とならないにも関わらず、保佐人が同意をしないときは、被保佐人の請求により、家庭裁判所は、保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。

>>保護者が有する権利のまとめ表はこちら

保佐人の義務

保佐人は、保佐の事務を行うに当たっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(民法876条の5第1項:身上配慮義務)。

参考条文

(保佐開始の審判)
第11条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

(被保佐人及び保佐人)
第12条 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

(保佐人の同意を要する行為等)
第13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
2 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

(保佐開始の審判等の取消し)
第14条 第11条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。
2 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

(保佐の事務及び保佐人の任務の終了等)
第876条の5 保佐人は、保佐の事務を行うに当たっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

成年被後見人

成年被後見人とは?

「成年被後見人」とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者を言います(民法7条)。

「事理を弁識する能力」とは、自己の財産を管理する能力です。

「常況にある」とは、いつもそのような状態であるということです。

簡単にいえば、認知症などが原因で、ほとんど物事の判断ができない方で、後見開始の審判を受けた者です。

成年被後見人の行為能力

成年被後見人の法律行為は、原則、取り消すことができます(民法9条本文)。

ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、成年被後見人であることを理由に取消しすることはできません(民法9条ただし書)。

「日用品の購入その他日常生活に関する行為」とは、食料品や洗剤などの日用品の購入や、ガス料金・水道料金・電話料金の支払いを指します。

成年後見人(法定代理人)の権限

成年被後見人の保護者を「成年後見人」と言います。

そして、成年被後見人の法定代理人(成年後見人)は「代理権」「取消権」「追認権」を有します。

  • 代理権:成年被後見人を代理して法律行為を行う権利
  • 取消権:成年被後見人が、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外の法律行為を行った場合、後で取り消しができる権利
  • 追認権:成年被後見人が、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外の法律行為を行った場合、後で契約を確定的に有効にさせる権利
  • 成年被後見人への郵便物等の管理権:①成年被後見人に宛てた郵便物又は信書便物(郵便物等)を成年後見人に配達すべき旨を、配送事業者に嘱託する(頼む)ことができる権利、②成年被後見人に宛てた郵便物等を開いて見ることができる権利。

成年後見人(法定代理人)の義務

成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(民法858条)。この成年後見人の義務を「身上配慮義務」と言います。

参考条文

(後見開始の審判)
第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

(成年被後見人及び成年後見人)
第8条 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。

(成年被後見人の法律行為)
第9条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

(後見開始の審判の取消し)
第10条 第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第858条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

(成年後見人による郵便物等の管理)
第860条の2 家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第二条第三項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2 前項に規定する嘱託の期間は、六箇月を超えることができない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人若しくは成年後見監督人の請求により又は職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。
4 成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。

第860条の3 成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
2 成年後見人は、その受け取った前項の郵便物等で成年後見人の事務に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。
3 成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った第一項の郵便物等(前項の規定により成年被後見人に交付されたものを除く。)の閲覧を求めることができる。

令和元年度2019年度|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略