株式会社の設立等に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。
ア.発起設立または募集設立のいずれの場合であっても、各発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。
イ.株式会社の設立に際して作成される定款について、公証人の認証がない場合には、株主、取締役、監査役、執行役または清算人は、訴えの方法をもって、当該株式会社の設立の取消しを請求することができる。
ウ.現物出資財産等について定款に記載または記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士または税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合は、当該証明および不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合には、現物出資財産等については検査役による調査を要しない。
エ.株式会社が成立しなかったときは、発起人および設立時役員等は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為について、その責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。
オ.発起設立または募集設立のいずれの場合であっても、発起人は、設立時発行株式を引き受けた発起人または設立時募集株式の引受人による払込みの取扱いをした銀行等に対して、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができる。
- ア・ウ
- ア・エ
- イ・エ
- イ・オ
- ウ・オ
【答え】:1
【解説】
ア・・・正しい
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければなりません(会社法25条2項)。
これは、発起設立も募集設立も同じです。
よって、本肢は正しいです!
イ・・・誤り
「株式会社の設立の取消しの訴え」という制度はありません。よって、本肢は誤りです。
ちなみに、持分会社では「持分会社の設立の取消しの訴え」があります(会社法832条)。
株式会社については「設立無効の訴え」という制度はあります(会社法828条)。
本肢の場合、「定款認証がない」ので、「設立無効の訴え」を提起することは可能です。
ウ・・・正しい
現物出資財産等について、「定款に記載され、又は記録された価額」が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明を受けた場合、現物出資財産等については検査役による調査は不要です(会社法33条10項3号)。
よって、正しいです。
【現物出資財産等で検査役の調査が不要な場合】
- 現物出資・財産引受の定款記載価額の総額が500万円を超えない場合
- 市場価格のある有価証券で、定款記載の価額がその市場価格を超えない場合
- 弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けている場合。(不動産については不動産鑑定士)
【検査役とは?】
「検査役」とは、相対的記載事項がある場合に、発起人は、公証人の認証の後遅滞なく、相対的記載事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをし、裁判所によって選任された者です(33条1項2項)。
【2の具体例】2の市場価格とは、株価を指します。例えば、ソフトバンクの株価が1株5,000円とします。この場合、100株で50万円です。ソフトバンクの株100株を出資金額50万円以下として出資するのであれば、検査役の検査は不要ということです。
エ・・・誤り
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、発起人は、株式会社の設立に関して支出した費用を負担します(会社法56条)。
本肢は「設立時役員等」となっているので誤りです。
「設立時役員等」は含みません!
【設立時役員等が負担しない理由】
そもそも「設立時役員等」とは、設立時取締役等を指しますが
設立時取締役は、出資の履行が完了しているか等の設立事項の調査をするだけで、通常の会社の取締役とは異なり、業務の執行機関(実際の業務に携わる機関)ではないです。
言い換えると、経営陣ではないでの、株式会社の設立に関して支出した費用を負担しません。
【会社不成立の具体例】 創立総会で設立廃止の決議がなされた場合等です。
この場合、発起人が全責任を負うため、発起人は、設立に関して支出した費用を負担しないといけません(56条)。
【会社法56条の具体例】 発起人A・Bがおり、募集設立を行い、引受人から出資を受けた場合、A・Bは、無過失でも、引受人に対する出資されたお金について、連帯して返還義務を負います。
オ・・・誤り
設立時発行株式を引き受ける者の募集をした場合には、発起人は、出資金の払込みの取扱いをした銀行等に対し、これらの規定により払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができます(会社法64条1項)。
これは「募集設立の場合」のみの規定であり「発起設立」については対象外です。
よって、本肢は誤りです。
【募集設立のみ保管証明制度がある理由】
募集設立の場合、発起人以外の出資者は、直接設立事務に関与しません。
そのため、出資したお金が発起人等に不当に使われてしまう可能性もあります。
それを防ぐために払込金保管証明制度があります。
■なぜ、「発起人が」払込金保管証明書の交付請求ができるかというと、設立をする際に、払込金保管証明書が添付書類として必要になるため、設立手続きを行う発起人が交付請求できるようにしています。
| 問1 | 著作権の関係上省略 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 基礎法学 | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 憲法 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 憲法 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・社会 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 一般知識・経済 |
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| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 一般知識・社会 |
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| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |




