平成24年度(2012年度)過去問

平成24年・2012|問5|憲法・財政

日本国憲法第7章の財政に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 内閣は、災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費によることなく、閣議の決定によって財政上必要な支出をすることができる。
  2. 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
  3. 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
  4. 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
  5. すべて皇室の費用は、予算に計上することを要し、かつ、国会の議決を経なければならない。

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【答え】:1

【解説】

1.内閣は、災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費によることなく、閣議の決定によって財政上必要な支出をすることができる。
1・・・誤り
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け内閣の責任でこれを支出することができます(憲法87条1項)。
災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費で対応するので、本肢の「災害救助等緊急の必要があるときは、・・予備費によることなく」は誤りです。

予備費

予備費とは、予定外の支出及び予算を超過した支出へ対応するために準備しておく費用のこと。
2.内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2・・・正しい
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければなりません(憲法86条)。
よって、正しいです。
3.国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
3・・・正しい
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければなりません(憲法90条1項)。
よって、本肢は正しいです。
4.予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
4・・・正しい
予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基いて予備費を設け内閣の責任でこれを支出することができます(憲法87条1項)。
よって、正しいです。
5.すべて皇室の費用は、予算に計上することを要し、かつ、国会の議決を経なければならない。
5・・・正しい
すべて皇室財産は、国に属するすべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければなりません(憲法88条)。
よって、正しいです。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問4|憲法・内閣

次の記述のうち、憲法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。
  2. 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、開会後直ちにこれを釈放しなければならない。
  3. 両議院の議員は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
  4. 国務大臣は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
  5. 国務大臣は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、問責決議によらなければ罷免されない。

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【答え】:1【解説】

1.国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。
1・・・正しい
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されません(憲法75条)。よって、本肢は正しいです。
但し、これは在任期間中の話であり、在任期間が終了した後は訴追される可能性はあります。

2.両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、開会後直ちにこれを釈放しなければならない。
2・・・誤り
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければなりません(憲法50条)。
つまり、「開会後直ちにこれを釈放」ではなく、「議院の要求があれば釈放」です。
よって、誤りです。

3.両議院の議員は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
3・・・誤り
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受けます(憲法49条)。
しかし、減額されることもあります
よって、誤りです。減額されないのは「裁判官」です(憲法79条6項、80条2項)。
4.国務大臣は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
4・・・誤り
両議院の議員」は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれません憲法51条:免責特権)。
院外(衆議院の外、参議院の外)で責任を問われないのは「国会議員」です。国会議員でない大臣の場合、院外で責任を問われる場合はあります

5.国務大臣は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、問責決議によらなければ罷免されない。
5・・・誤り
内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができます(憲法68条)。
つまり、国務大臣の罷免は、内閣総理大臣の権限でどんな場合でも行えます。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問3|憲法・内閣

内閣の「責任」について書かれた次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 日本国憲法における内閣は、衆議院に対してのみ「責任」を負うのであり、参議院に対しては「責任」を負っていない。
  2. 日本国憲法は内閣の「連帯責任」を強調しており、特定の国務大臣に対して単独の「責任」を負わせることは認めていない。
  3. 明治憲法では、君主に対する内閣の「連帯責任」のみが規定されており、衆議院に対する「責任」は想定されていなかった。
  4. 内閣の「責任」のとり方は任意かつ多様であるべきなので、日本国憲法の下で総辞職が必要的に要求されることはない。
  5. 大臣に対する弾劾制度を認めない日本国憲法においては、内閣に対して問われる「責任」は、政治責任であって狭義の法的責任ではない。

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【答え】:5【解説】

1.日本国憲法における内閣は、衆議院に対してのみ「責任」を負うのであり、参議院に対しては「責任」を負っていない。
1・・・誤り
内閣は、行政権の行使について、国会(衆議院と参議院の両方)に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。
よって、「衆議院に対してのみ」ではありません。
2.日本国憲法は内閣の「連帯責任」を強調しており、特定の国務大臣に対して単独の「責任」を負わせることは認めていない。
2・・・誤り
選択肢1の通り、内閣は国会に対して連帯責任を負っていることを憲法において強調しています。
ただし、「特定の国務大臣に対して単独の責任を負わせることは認めていない」とは規定されていません
実際、特定の大臣のみ、不適切発言により政治責任を取ることもあります。
3.明治憲法では、君主に対する内閣の「連帯責任」のみが規定されており、衆議院に対する「責任」は想定されていなかった。
3・・・誤り
明治憲法(大日本帝国憲法)では、「国務各大臣が、天皇に対して単独でその責任を負う(明治憲法第55条)」としていました。
「連帯責任」ではなく「各大臣が単独で責任」を負います。衆議院に対する「責任」は想定されていなかった点については正しいです。
4.内閣の「責任」のとり方は任意かつ多様であるべきなので、日本国憲法の下で総辞職が必要的に要求されることはない。
4・・・誤り
①内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければなりません(憲法69条)また、
②内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければなりません(憲法70条)。①で解散された場合、その後衆議院の総選挙となり、選挙後初めて国会が召集された場合に内閣総辞職となります。つまり、内閣不信任決議が可決されると、内閣は責任を取るのですが、①の場合も②の場合もいずれにしても必ず総辞職をしなければなりません。

よって、「日本国憲法の下で総辞職が必要的に要求されることはない」は誤りです。

5.大臣に対する弾劾制度を認めない日本国憲法においては、内閣に対して問われる「責任」は、政治責任であって狭義の法的責任ではない。
5・・・正しい
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設けます(憲法64条)。
つまり、弾劾制度は「裁判官」に対する制度です。
日本国憲法では、大臣に対する弾劾制度を認めていません。
また、内閣に対して問われる「責任」は、政治責任であると解されています。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問2|基礎法学

次に掲げる条文は、いずれも「みなす」の文言が含まれているが、正しい法律の条文においては「みなす」ではなく「推定する」の文言が用いられているものが一つだけある。それはどれか。

  1. 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。(民法753条) 法改正により回答不要
  2. 移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。(民事訴訟法22条3項)
  3. 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書とみなす。(民事訴訟法228条2項)
  4. 自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪*については、他人の財物とみなす。(刑法242条)
  5. 試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。(行政書士法4条の7第3項〔一部省略〕)

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【答え】:3【解説】「みなす」とは、判断を確定させること言い、反対の事実を証明して、判断を覆すことはできません。一方、
「推定する」とは、一応そのよう判断を下すことをいい、反対の事実が証明されれば、その判断は覆されます(くつがえされます)

つまり、
反対の事実が証明できるような場合は、「推定する」という用語が使われ、
反対の事実を証明できない場合は「みなす」が使われます。

1.未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。(民法753条) 法改正により回答不要
1・・・正しい
下記解説は法改正前の内容となります。なので、覚えなくても大丈夫です。
「未成年者が婚姻した」という事実があれば、成年に達した者とするわけなので
上記事実は通常、くつがえすことはできないので、「みなす」で正しいです。
2.移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。(民事訴訟法22条3項)
2・・・正しい
「移送の裁判が確定した」という事実は、通常、くつがえすことはできないので「みなす」を使います。
3.文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書とみなす。(民事訴訟法228条2項)
3・・・誤り
「文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきとき」ということは、公務員が職務上作成したものではない可能性もあります
その場合は、くつがえされるので、「推定する」が使われます。
4.自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。(刑法242条)
4・・・正しい
「自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるとき」という事実があれば、それで、他人のモノとする、ということですが
上記事実があるのが前提で、通常覆られないので、「みなす」が使われます。
5.試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。(行政書士法4条の7第3項〔一部省略〕)
5・・・正しい
「試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員」である事実は通常覆らないので、「みなす」が使われます。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問1|基礎法学

「判例」に関する次の記述のうち、明らかに誤っているものはどれか。

  1. 判例は、一般的見解によれば、英米法系の国では後の事件に対して法的な拘束力を有する法源とされてきたが、大陸法系の国では法源とはされてこなかった。
  2. 英米法系の国では、判決のうち、結論を導く上で必要な部分を「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び、後者には判例法としての拘束力を認めない。
  3. 判例という語は、広義では過去の裁判例を広く指す意味でも用いられ、この意味での判例に含まれる一般的説示が時として後の判決や立法に大きな影響を与えることがある。
  4. 下級審が最高裁判所の判例に反する判決を下した場合、最高裁判所は申立てに対して上告審として事件を受理することができる。
  5. 最高裁判所が、法令の解釈適用に関して、自らの過去の判例を変更する際には、大法廷を開く必要がある。

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【答え】:2

【解説】

1.判例は、一般的見解によれば、英米法系の国では後の事件に対して法的な拘束力を有する法源とされてきたが、大陸法系の国では法源とはされてこなかった。
1・・・正しい
英米法系とは、「判例法主義」がとられ、裁判所で作り上げられた判例に先例的拘束力が認められ、判例が第一次的法源とされています。そして、アメリカやイギリス等が採用しています。一方、
大陸法系とは、「成文法主義」がとられ、議会や政府が作る高度に体系化された制定法が第一次的法源として、すべての法領域で尊重されます。ただ、大陸法を採用している国でも補完的に判例法を法源にしたりすることはあります。そして、ドイツ・フランス等が採用しています。
よって、本肢は正しいです。
2.英米法系の国では、判決のうち、結論を導く上で必要な部分を「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び、後者には判例法としての拘束力を認めない。
2・・・誤り
まず、判決のうち、判決理由について下記2つに分けます。

  1. 「判決の核心部分」を「レイシオ・デシデンダイ」と呼び
  2. 「他の部分」を「傍論(オビタ・ディクタム)」と呼びます。

1の核心部分(レイシオ・デシデンダイ)については、判例法としての法的拘束力を有するのに対し、
2のその他の部分(オビタ・ディクタム)は、判例法としての法的拘束力を有しません。
本肢は、『「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び』が誤りです。

3.判例という語は、広義では過去の裁判例を広く指す意味でも用いられ、この意味での判例に含まれる一般的説示が時として後の判決や立法に大きな影響を与えることがある。
3・・・正しい
判例とは、裁判において具体的事件における裁判所が示した法律的判断のことです。
判例の狭義では、最高裁判所判決の核心部分であり、広義には、下級審の判例も含めます。そして、判例は、「先例」としての重み付けがなされ、それ以後の判決に拘束力を持ち、影響を及ぼす。分かりやすく言えば、昔の判例を根拠にして、別の裁判の判決を出すこともあるということです。また、判例をきっかけに法改正されたりもします。

よって、本肢は正しいです。

4.下級審が最高裁判所の判例に反する判決を下した場合、最高裁判所は申立てに対して上告審として事件を受理することができる。
4・・・正しい
本肢は正しいです。刑事訴訟法によると、
高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、最高裁判所の判例と相反する判断をしたことを理由として上告の申立をすることができる(刑事訴訟法405条2号)。民事訴訟法によると
上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができます(民事訴訟法318条1項)。上記刑事訴訟法、民事訴訟法いずれも分かりやすく言えば、本肢の内容「下級審が最高裁判所の判例に反する判決を下した場合、最高裁判所は申立てに対して上告審として事件を受理することができる」になります。

5.最高裁判所が、法令の解釈適用に関して、自らの過去の判例を変更する際には、大法廷を開く必要がある。
5・・・正しい
事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによります。
但し、下記の場合においては、必ず大法廷で裁判しなければなりません(裁判所法10条)。

  1. 当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。)
  2. 前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。
  3. 憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき

本肢は、3号に当たるので、大法廷を開く必要があります。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略