改正民法に対応済
A、B、CおよびDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団体を設立した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。
- X会が権利能力なき社団であり、Aがその代表者である場合、X会の資産として不動産があるときは、その不動産の公示方法として、Aは、A個人の名義で所有権の登記をすることができる。
- X会が民法上の組合である場合、X会の取引上の債務については、X会の組合財産がその債務のための責任財産になるとともに、組合員であるA、B、CおよびDも、各自が損失分担の割合に応じて責任を負う。
- X会が権利能力なき社団である場合、X会の取引上の債務については、その構成員全員に1個の債務として総有的に帰属し、X会の社団財産がその債務のための責任財産になるとともに、構成員であるA、B、CおよびDも各自が連帯して責任を負う。
- X会が民法上の組合である場合、組合員であるA、B、CおよびDは、X会の組合財産につき持分権を有するが、X会が解散して清算が行われる前に組合財産の分割を求めることはできない。
- X会が権利能力なき社団である場合、構成員であるA、B、CおよびDは、全員の同意をもって、総有の廃止その他X会の社団財産の処分に関する定めのなされない限り、X会の社団財産につき持分権を有さず、また、社団財産の分割を求めることができない。
【解説】
A、B、CおよびDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団体を設立した。
1.X会が権利能力なき社団であり、Aがその代表者である場合、X会の資産として不動産があるときは、その不動産の公示方法として、Aは、A個人の名義で所有権の登記をすることができる。
1・・・正しい
●権利能力なき社団の代表者は、当該社団の資産である不動産について、自己の名義で所有権を登記できる
権利能力がなければ当然権利義務の帰属主体にはなれません(法人のように人格を持たない)。どういうことかというと、不動産を購入して登記をしようとしても権利能力がないと、登記ができません。そのため、権利能力なき社団の場合、「代表者の個人名義」や「構成員全員の共有名義」で登記をしたりします。よって、本問は正しいです。
A、B、CおよびDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団体を設立した。
2.X会が民法上の組合である場合、X会の取引上の債務については、X会の組合財産がその債務のための責任財産になるとともに、組合員であるA、B、CおよびDも、各自が損失分担の割合に応じて責任を負う。
2・・・正しい
●組合の債務 → 共有(合有) → 「損失分担の割合」て責任を負う
組合の債権・債務は、組合員全員に合有的に帰属します。
原則として、組合員は損失分担の割合(=出資額に応じた割合)で債務を負います(民法674条1項)。
これは、組合内部の話です。
一方で、債権者としては、原則、等しい割合で(均等に)権利行使できます。
ただし、組合当事者間で損失分担割合が定められていて、債権者が損失分担割合を知らなかったときは、等しい割合で請求することも認められます(民法675条)。
これは、外部的な話です。
つまり、債権者(組合外部)は、原則:①損失分担割合 or ②等しい割合を請求でき、例外的に割合を知っていたときは①損失分担割合分に限って請求できます。
一方で、組合員同士(内部)については、出資額に応じて(=損失分担割合)負担します。
本肢は、内部的な話なので、各自が損失分担の割合に応じて責任を負います。よって、正しいです。
A、B、CおよびDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団体を設立した。
3.X会が権利能力なき社団である場合、X会の取引上の債務については、その構成員全員に1個の債務として総有的に帰属し、X会の社団財産がその債務のための責任財産になるとともに、構成員であるA、B、CおよびDも各自が連帯して責任を負う。
3・・・誤り
●権利能力なき社団 → 財産の範囲のみ責任を負う(構成員個人は直接責任を負わない)
判例は、「権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、一個の義務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的債務ないし責任を負わないと解するのが相当である」としている。
【具体例】 A・B・Cが構成員の権利能力なき社団があり、当該社団に1000万円の現金があった。その後、社団は1500万円の債務があった場合、500万円が債務として残りますが、A・B・C個人はこの債務を負いません。
A、B、CおよびDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団体を設立した。
4.X会が民法上の組合である場合、組合員であるA、B、CおよびDは、X会の組合財産につき持分権を有するが、X会が解散して清算が行われる前に組合財産の分割を求めることはできない。
【選択肢2と3の違い】
選択肢2は「組合」で、選択肢3は「権利能力なき社団」です。
組合は、組合員個人が責任を負います。
権利能力なき社団は、構成員個人は責任は負わず、責任を負うのは「社団自身」です。
4・・・正しい
組合の財産 → 合有 → 組合員は持分権を持つが、持分を処分することはできない
組合の財産は、共有の中の「合有」に当たります。合有なので、各組合員は持分を持つのですが、共有とは異なり、持分を自由に処分(譲渡)することができず、清算前に目的物の分割請求もできません(民法676条)。よって、正しいです。
A、B、CおよびDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団体を設立した。
5.X会が権利能力なき社団である場合、構成員であるA、B、CおよびDは、全員の同意をもって、総有の廃止その他X会の社団財産の処分に関する定めのなされない限り、X会の社団財産につき持分権を有さず、また、社団財産の分割を求めることができない。
5・・・正しい
権利なき社団の財産 → 総有 → 構成員は「持分権」「分割請求権」を持たない
判例では、権利能力なき社団の財産は、「総有」に属するため、構成員は、当然には、当該財産に関し、持分権又は分割請求権を有しないとしています。つまり、脱退した組合員は、組合に対して財産について分割請求をすることはできません。
平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 幸福追求権など | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 投票価値の平等 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 内閣 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政調査 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・社会 |
| 問20 | 損失補償 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・経済 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 行政法 | 問54 | 一般知識・社会 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
