平成27年度(2015年度)過去問

平成27年・2015|問37|会社法・株式会社の設立

株式会社の設立に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 発起人は、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。

イ 複数の発起人がいる場合において、発起設立の各発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならないが、募集設立の発起人は、そのうち少なくとも1名が設立時発行株式を1株以上引き受ければよい。

ウ 発起設立または募集設立のいずれの方法による場合であっても、発行可能株式総数を定款で定めていないときには、株式会社の成立の時までに、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

エ 設立時取締役その他の設立時役員等が選任されたときは、当該設立時役員等が会社設立の業務を執行し、またはその監査を行う。

オ 発起設立または募集設立のいずれの方法による場合であっても、発起人でない者が、会社設立の広告等において、自己の名または名称および会社設立を賛助する旨の記載を承諾したときには、当該発起人でない者は発起人とみなされ、発起人と同一の責任を負う。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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【答え】:1

【解説】

ア 発起人は、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
ア・・・妥当
発起人は、「設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨」を定めようとするときは、発起人全員の同意を得なければなりません(会社法57条2項)。
よって、妥当です。そして、発起人全員の同意が必要なものは下記4つです。

  1. 設立時に発行する株式に関する事項の決定(会社法32条)
    →発起人が割当てを受ける「設立時発行株式の数」と「設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額」、「成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項(資本金と資本準備金をどのように振り分けるか?)」
  2. 現物出資を行う者がいる場合の対抗要件の具備(会社法34条1項ただし書き)
    →会社成立前に会社名義での登記・登録を行えない場合もあるので、発起人全員の同意を得て、登記・登録は会社成立後に行うことができる
  3. 発行可能株式総数に関する定款の定め(会社法37条)
    →会社成立時までに発起人全員の同意で定めることが認められ、原始定款で定めた場合でも、発起人全員の同意で変更できる
  4. 設立時募集株式に関する事項の決定(会社法58条)
    →「設立時募集株式数はどれだけにするか?」「払込金額はいくらにするか?」などを定める場合、発起人全員の同意が必要
イ 複数の発起人がいる場合において、発起設立の各発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならないが、募集設立の発起人は、そのうち少なくとも1名が設立時発行株式を1株以上引き受ければよい。
イ・・・妥当ではない
各発起人(発起設立・募集設立)は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければなりません(会社法25条2項)。
募集設立の場合でも、発起人は、1株以上引き受ける必要があります
よって、妥当ではありません。
ウ 発起設立または募集設立のいずれの方法による場合であっても、発行可能株式総数を定款で定めていないときには、株式会社の成立の時までに、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
ウ・・・妥当
■発起設立の場合、発起人は、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、発起人全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければなりません(会社法37条1項)。

■また、募集設立の場合は、発行可能株式総数を定款で定めていないときは、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければなりません(会社法98条)。
したがって、発起設立の場合も募集設立の場合も、会社の成立までに、定款変更をして、発行可能株式総数の定めを設けなければなりません。
よって、本肢は妥当です。

エ 設立時取締役その他の設立時役員等が選任されたときは、当該設立時役員等が会社設立の業務を執行し、またはその監査を行う。
エ・・・妥当ではない
設立時取締役の仕事は、「調査」をすることです。
会社設立後の取締役のように「業務の執行」は行わないし、「監査」もしません。設立時取締役は、その選任後遅滞なく、下記事項を調査しなければなりません(会社法46条)。
よって、本肢は妥当ではありません。

  1. 現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であること
  2. 現物出資財産についての弁護士等の証明が相当であること
  3. 出資の履行が完了していること
  4. 株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと
オ 発起設立または募集設立のいずれの方法による場合であっても、発起人でない者が、会社設立の広告等において、自己の名または名称および会社設立を賛助する旨の記載を承諾したときには、当該発起人でない者は発起人とみなされ、発起人と同一の責任を負う。
オ・・・妥当ではない
募集設立の場合において、当該募集の広告その他当該募集に関する書面又は電磁的記録に自己の氏名又は名称及び株式会社の設立を賛助する旨を記載し、又は記録することを承諾した者は、発起人とみなします会社法103条2項)。
これを「擬似発起人」と言います。
そして、この擬似発起人のルールは、募集設立の場合のみ適用され、募集を行わない発起設立の場合は、上記ルールはありません。
したがって、本肢の「発起設立または募集設立のいずれの方法による場合であっても」という記述が妥当ではありません。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問36|商法・運送人・場屋営業

運送営業および場屋営業に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 運送人は、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明するのでなければ、その運送品に生じた損害を賠償する責任を負う。
  2. 運送品が高価品であるときに、荷送人が運送を委託するにあたり、運送品の種類および価額を通知していなければ、運送人はその運送品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
  3. 場屋の営業主は、客から寄託を受けた物品について、物品の保管に関して注意を怠らなかったことを証明すれば、その物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
  4. 客が特に寄託しない物品であっても、客が場屋内に携帯した物品が場屋の営業主またはその使用する者の不注意によって損害を受けたときは、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負う。
  5. 場屋の営業主が寄託を受けた物品が高価品であるときは、客がその種類および価額を通知してこれを場屋の営業主に寄託したのでなければ、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。

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【答え】:3

【解説】

1.運送人は、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明するのでなければ、その運送品に生じた損害を賠償する責任を負う。
1・・・正しい

●運送人 → 注意を怠らなかったことを証明したときは、損害賠償責任を負わなくてもよい

運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が「滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ」、又は「運送品が延着した」ときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。
ただし、運送人がその運送品の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、損害賠償責任を負わなくてもよいです(商法575条)。
本肢の「運送人は、注意を怠らなかったこと(注意をしていたこと)を証明するのでなければ(証明できない場合)、その運送品に生じた損害を賠償する責任を負う」というのは正しい記述です。

2.運送品が高価品であるときに、荷送人が運送を委託するにあたり、運送品の種類および価額を通知していなければ、運送人はその運送品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
2・・・正しい

●貨幣、有価証券その他の高価品 → 通知した場合のみ、運送人は損害賠償責任を負う

貨幣、有価証券その他の高価品」については、原則、荷送人(発送者)が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人(運ぶ人)は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負いません商法577条)。
よって、本肢は正しいです。

3.場屋の営業主は、客から寄託を受けた物品について、物品の保管に関して注意を怠らなかったことを証明すれば、その物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
3・・・誤り
旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者(場屋営業者)は、客から寄託を受けた物品(預かったモノ)の滅失又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができません商法596条1項)。
つまり、場屋の営業主が免責となるのは、不可抗力の場合であって、注意していたことを証明しても免責にはなりません。
したがって、本肢は誤りです。

4.客が特に寄託しない物品であっても、客が場屋内に携帯した物品が場屋の営業主またはその使用する者の不注意によって損害を受けたときは、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負う。
4・・・正しい
客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は損傷したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負います商法596条2項)。
したがって、本肢は正しいです。
5.場屋の営業主が寄託を受けた物品が高価品であるときは、客がその種類および価額を通知してこれを場屋の営業主に寄託したのでなければ、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
5・・・正しい

●寄託を受けていない場屋営業 → 注意を怠らなかったことを証明した場合、損害賠償責任を負わない(=責任を免れる)
●逆に注意していたことを証明できない場合、損害賠償責任を負う

貨幣、有価証券その他の高価品」については、客がその種類及び価額を通知してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き場屋営業者は、その滅失又は損傷によって生じた損害を賠償する責任を負いません商法597条)。
したがって、本肢「通知して寄託したのでない場合(=通知していない場合)、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負わない」ので、正しいです。

※ 本肢は、選択肢1の損害賠償責任を負わない(=免責となる)語呂合わせ「帰宅した女王の深田恭子、運送に注意、その他も注意」の「その他も注意」に当たります。(寄託していない物品=その他)


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問35|民法・婚姻・離婚等

改正民法に対応済

婚約、婚姻および離婚に関する以下の相談に対する回答のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア <相談> 私はAとの婚約にあたりAに対して結納金100万円を贈与したのですが、結局は婚姻に至りませんでした。私はAに対して結納金100万円の返還を請求できるでしょうか。
<回答> 結納は婚姻の成立を確証し、併せて当事者間の情宜を厚くする目的で授受される一種の贈与とされています。婚姻が解消された場合には原則として返還すべきものですので、あなたには結納金の返還を請求できる権利があります。

イ <相談> 私は事実婚状態にあったBと合意のうえ入籍することにして婚姻届を作成しましたが、提出前にBは交通事故に遭い、現在昏睡状態にあります。こうした状態でも先に作成した婚姻届を提出すれば、私はBと正式に婚姻できるのでしょうか。
<回答> 判例によれば、婚姻が有効に成立するためには、届出時点における当事者の婚姻意思が必要です。婚姻届作成後に翻意したというような特段の事情がないとしても、現在Bは意思能力を欠いた状態ですので、婚姻届を提出したとしても婚姻の効力は生じません。

ウ <相談> 私は配偶者Cとの間に子がいますが、Cは5年前に家を出て他で生活しており、子の養育費はすべて私が負担しています。Cに対して離婚訴訟を提起するにあたり、併せてこの間の養育費の支払いを求めることができるでしょうか。
<回答> 子の監護に要する費用は、婚姻から生じる費用です。婚姻費用の請求は婚姻の継続を前提とする請求であるのに対して、離婚訴訟は婚姻の解消を目指す訴訟ですから、このように性質が異なる訴訟を一緒に行うことはできません。離婚を申し立てる前に、監護費用の支払いを求める訴えを別途提起する必要があります。

エ <相談> 私と配偶者であるDとの婚姻関係は既に破綻しており、離婚にむけて協議を進めています。D名義のマンションを私に贈与することをDと私とは書面により合意したのですが、離婚届を提出する前日になって、Dは、この贈与契約を取り消すと言ってきました。Dの取り消しは認められるのでしょうか。
<回答> 民法の規定によれば夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消すことができますが、その趣旨は、夫婦間の約束事に法は介入すべきではなく、当事者の道義に委ねるべきだというものです。婚姻が実質的に破綻しているような場合にはこの趣旨は妥当しませんので、Dはマンションの贈与契約を取り消すことができません。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

ア <相談> 私はAとの婚約にあたりAに対して結納金100万円を贈与したのですが、結局は婚姻に至りませんでした。私はAに対して結納金100万円の返還を請求できるでしょうか。<回答> 結納は婚姻の成立を確証し、併せて当事者間の情宜を厚くする目的で授受される一種の贈与とされています。婚姻が解消された場合には原則として返還すべきものですので、あなたには結納金の返還を請求できる権利があります。

ア・・・妥当

●結納は贈与の一種 / 婚約を解消した場合、結納金は不当利得として返還しなければならない

判例によると、結納(ゆいのう)は、婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼(じょうぎ:つきあいという意味)を厚くする目的で授受される一種の贈与であるとし、また、別の判例で、婚姻(婚約)が解消された場合、結納金は不当利得として返還が必要としています。

イ <相談> 私は事実婚状態にあったBと合意のうえ入籍することにして婚姻届を作成しましたが、提出前にBは交通事故に遭い、現在昏睡状態にあります。こうした状態でも先に作成した婚姻届を提出すれば、私はBと正式に婚姻できるのでしょうか。<回答> 判例によれば、婚姻が有効に成立するためには、届出時点における当事者の婚姻意思が必要です。婚姻届作成後に翻意したというような特段の事情がないとしても、現在Bは意思能力を欠いた状態ですので、婚姻届を提出したとしても婚姻の効力は生じません。

イ・・・妥当ではない

①婚姻届が、本人の意思に基づいて作成され、かつ、②夫婦共同生活関係が存続していたとすれば、その後、届出書の受理前に本人が意識不明となったとしても、その後の届出書の受理によって、婚姻は有効に成立したものと解する

判例では、「本件婚姻届がBの意思に基づいて作成され、同人がその作成当時婚姻意思を有していて、Bと相談者との間に事実上の夫婦共同生活関係が存続していたとすれば、その届書が当該係官に受理されるまでの間に同人が完全に昏睡状態に陥り、意識を失ったとしても、届書受理前に死亡した場合と異なり、届出書受理以前に翻意する(決意を変えること)など婚姻の意思を失う特段の事情のないかぎり、右届書の受理によって、本件婚姻は、有効に成立したものと解すべきである。」としています。

つまり、婚姻届が、Bの意思に基づいて作成され、かつ、②Bと相談者との間で、事実上の夫婦共同生活関係が存続していたとすれば、その後、届出書の受理前にBがこん睡状態になったとしても、その後の届出をして受理されれば、婚姻は有効に成立します。

ウ <相談> 私は配偶者Cとの間に子がいますが、Cは5年前に家を出て他で生活しており、子の養育費はすべて私が負担しています。Cに対して離婚訴訟を提起するにあたり、併せてこの間の養育費の支払いを求めることができるでしょうか。<回答> 子の監護に要する費用は、婚姻から生じる費用です。婚姻費用の請求は婚姻の継続を前提とする請求であるのに対して、離婚訴訟は婚姻の解消を目指す訴訟ですから、このように性質が異なる訴訟を一緒に行うことはできません。離婚を申し立てる前に、監護費用の支払いを求める訴えを別途提起する必要があります。

ウ・・・妥当ではない

●離婚請求の申し立てにより、裁判所は、監護費用の支払いまで命ずることができるので、別途監護費用の支払いを求める訴えはしなくてもよい

判例では、「離婚の訴えにおいて、別居後単独で子の監護に当たっている当事者から他方の当事者に対し、別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払を求める旨の申立てがあった場合には、裁判所は、離婚請求を認容するに際し、右申立てに係る子の監護費用の支払を命ずることができる」としています。つまり、離婚の訴えがあった場合、裁判所は、その裁判の判決で、監護費用の支払いまで命ずることができます。よって、離婚を申し立てる前に、監護費用の支払いを求める訴えを別途提起する必要がないので誤りです。

エ <相談> 私と配偶者であるDとの婚姻関係は既に破綻しており、離婚にむけて協議を進めています。D名義のマンションを私に贈与することをDと私とは書面により合意したのですが、離婚届を提出する前日になって、Dは、この贈与契約を取り消すと言ってきました。Dの取り消しは認められるのでしょうか。<回答> 民法の規定によれば夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消すことができますが、その趣旨は、夫婦間の約束事に法は介入すべきではなく、当事者の道義に委ねるべきだというものです。婚姻が実質的に破綻しているような場合にはこの趣旨は妥当しませんので、Dはマンションの贈与契約を取り消すことができません。

エ・・・妥当

●夫婦関係が破綻に瀕しているような場合、当該男女は、第三者に当たる→婚姻期間中であっても夫婦間の契約は取消しできない

夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができます(民法754条本文)。ただし、第三者の権利を害することはできません(754条ただし書き)。

そして、婚姻が実質的に破綻しているような場合になされた契約はどうなるかについて、判例は、「夫婦関係が破綻に瀕しているような場合になされた夫婦間の贈与はこれを取り消しえない(取消しできない)と解すべきである」としています。

理由 夫婦関係が破綻に瀕しているような場合、当該男女は、第三者に当たるため、上記754条ただし書きが適用され、贈与を受けた者の権利を害することはできず、贈与契約も取消しできないとしています。

関連ポイント

「書面によらない贈与」は、各当事者が解除をすることができます(550条)。一方、「書面による贈与」は、もはや解除することができません。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問34|民法・損害賠償額の予定

改正民法に対応済

A(3歳)は母親Bが目を離した隙に、急に道路へ飛び出し、Cの運転するスピード違反の自動車に轢(ひ)かれて死亡した。CがAに対して負うべき損害賠償額(以下、「本件損害賠償額」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 本件損害賠償額を定めるにあたって、A自身の過失を考慮して過失相殺するには、Aに責任能力があることが必要であるので、本件ではAの過失を斟酌することはできない。
  2. 本件損害賠償額を定めるにあたって、A自身の過失を考慮して過失相殺するには、Aに事理弁識能力があることは必要でなく、それゆえ、本件ではAの過失を斟酌することができる。
  3. 本件損害賠償額を定めるにあたって、BとAとは親子関係にあるが、BとAとは別人格なので、Bが目を離した点についてのBの過失を斟酌することはできない。
  4. 本件損害賠償額を定めるにあたって、Aが罹患(りかん)していた疾患も一因となって死亡した場合、疾患は過失とはいえないので、当該疾患の態様、程度のいかんにかかわらずAの疾患を斟酌することはできない。
  5. 本件損害賠償額を定めるにあたって、Aの死亡によって親が支出を免れた養育費をAの逸失利益から控除することはできない。

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改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

A(3歳)は母親Bが目を離した隙に、急に道路へ飛び出し、Cの運転するスピード違反の自動車に轢(ひ)かれて死亡した。

1.本件損害賠償額を定めるにあたって、A自身の過失を考慮して過失相殺するには、Aに責任能力があることが必要であるので、本件ではAの過失を斟酌することはできない。

1・・・妥当ではない

過失相殺の規定の適用 → 事理弁識能力は必要 / 責任能力は不要

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができます(民法722条2項)。

判例によると「被害者たる未成年者の過失を斟酌(しんしゃく)する場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく(=のように)、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である」としています。

つまり、事理弁識能力があれば、責任能力まではなかったとしても、過失相殺の規定を適用されるということです。したがって、本問は「過失相殺のためには責任能力が必要」となっているので誤りです。

※ 「斟酌する」とは、相手の事情や心情をくみとること、推察すること

※ 「責任能力(行為の責任を弁識する能力)」とは、その行為をすればよくない結果が生じることが予想でき、その結果、自分がどのような責任を問われるのかを理解できる能力

※ 「事理弁識能力」とは、物事に対しての良し悪しを判断する知能

A(3歳)は母親Bが目を離した隙に、急に道路へ飛び出し、Cの運転するスピード違反の自動車に轢(ひ)かれて死亡した。

2.本件損害賠償額を定めるにあたって、A自身の過失を考慮して過失相殺するには、Aに事理弁識能力があることは必要でなく、それゆえ、本件ではAの過失を斟酌することができる。

2・・・妥当ではない

●過失相殺の規定の適用 → 事理弁識能力は必要 / 責任能力は不要

選択肢1の解説のとおり、事理弁識能力があれば、責任能力まではなかったとしても、過失相殺の規定を適用されます。

したがって、本問は「過失相殺するには、Aに事理弁識能力があることは必要でなく」となっているので誤りです。Aの事理弁識能力は必要です。

A(3歳)は母親Bが目を離した隙に、急に道路へ飛び出し、Cの運転するスピード違反の自動車に轢(ひ)かれて死亡した。

3.本件損害賠償額を定めるにあたって、BとAとは親子関係にあるが、BとAとは別人格なので、Bが目を離した点についてのBの過失を斟酌することはできない。

3・・・妥当ではない

●過失相殺における「過失」 → 被害者自身だけなく、被害者側(父母)の過失も含む

判例によると、『過失相殺の規定における「被害者の過失」とは、単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、当該被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解するのを相当とする』としています。

つまり、母親Bの過失も「過失」に含めて、過失相殺の規定の適用します。よって、「母親Bの過失を斟酌できない」という本問は誤りです。

A(3歳)は母親Bが目を離した隙に、急に道路へ飛び出し、Cの運転するスピード違反の自動車に轢(ひ)かれて死亡した。

4.本件損害賠償額を定めるにあたって、Aが罹患(りかん)していた疾患も一因となって死亡した場合、疾患は過失とはいえないので、当該疾患の態様、程度のいかんにかかわらずAの疾患を斟酌することはできない。

4・・・妥当ではない

●被害者の疾患(病気)についても、過失相殺を適用する

過失相殺とは、そもそも「損害を公平に分担」するためのルールです。そして、被害者が罹患していた疾患(わずらっていた病気)を斟酌することができるかどうかについて、判例では、「被害者の疾患(病気)の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるにあたり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患を斟酌することができるものと解するのが相当である」としています。

つまり、被害者の病気が一因となって死亡した場合、病気も「過失」といえるときは、その分、加害者の損害賠償額を減らすこともできるということです。よって、本問は誤りです。

A(3歳)は母親Bが目を離した隙に、急に道路へ飛び出し、Cの運転するスピード違反の自動車に轢(ひ)かれて死亡した。

5.本件損害賠償額を定めるにあたって、Aの死亡によって親が支出を免れた養育費をAの逸失利益から控除することはできない。

5・・・妥当

●交通事故によって支払う必要がなくなった養育費 → 逸失利益から差し引くことはできない

「損益相殺」とは、交通事故によって損害を受けた被害者が、その事故によって損害以上の利益を受けた場合に、賠償額からその利益分を控除することをいいます。つまり、「慰謝料等-被害者が受けた利益=加害者支払うべき金額」です。

「逸失利益(いっしつりえき)」とは、不法行為(交通事故)がなかったら当然に得られるはずだった収入をいいます。つまり、この逸失利益分は加害者からもらえる分なので、上記に追加して考えると、 「慰謝料等-被害者が受けた利益+逸失利益=加害者支払うべき金額」となります。

例えば、被害者である子Aの死亡によって、親が支出を免れた養育費を逸失利益から控除する(差し引く)ことができるかについて、判例では、「交通事故により死亡した幼児の損害賠償債権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなった場合においても、当該養育費と幼児の将来得べかりし収入との間には、前者を後者から損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との同質性がなく、したがって、幼児の財産上の損害賠償額の算定にあたり、その将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきものではないと解するのが相当である」としています。

つまり、「Aの死亡によって親が支出を免れた養育費をAの逸失利益から控除することはできない」ので正しいです。

具体例 Aの死亡後の養育費が、将来1000万円かかるとします。この場合、母Bは、将来かかるはずだった1000万円がかからなくなるという一種の利益はあるけど、判例では、これは利益とは認めない(=利益には含めない)と言っています。つまり、養育費については、逸失利益ではないので、損益相殺しないということです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問33|民法・贈与

改正民法に対応済

Aは、自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した(以下、「本件贈与」という)。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 本件贈与が口頭によるものであった場合、贈与契約は諾成契約であるから契約は成立するが、書面によらない贈与につき贈与者はいつでも撤回することができるため、甲がBに引き渡されて所有権移転登記手続が終了した後であっても、Aは本件贈与を撤回することができる。
  2. 本件贈与が書面によるものであるというためには、Aの贈与意思の確保を図るため、AB間において贈与契約書が作成され、作成日付、目的物、移転登記手続の期日および当事者の署名押印がされていなければならない。
  3. 本件贈与につき書面が作成され、その書面でAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、遺言が撤回自由であることに準じて、Aはいつでも本件贈与を撤回することができる。
  4. 本件贈与につき書面が作成され、その書面でBがAの老後の扶養を行うことが約された場合、BがAの扶養をしないときであっても、甲の引渡しおよび所有権移転登記手続が終了していれば、Aは本件贈与を解除することができない。
  5. 本件贈与につき書面が作成され、その書面で、BがAの老後の扶養を行えばAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、Bが上記の負担を全部またはこれに類する程度まで履行したときであっても、特段の事情がない限り、Aは本件贈与を撤回することができる。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

1.本件贈与が口頭によるものであった場合、贈与契約は諾成契約であるから契約は成立するが、書面によらない贈与につき贈与者はいつでも撤回することができるため、甲がBに引き渡されて所有権移転登記手続が終了した後であっても、Aは本件贈与を撤回することができる。

1・・・妥当ではない

●書面によらない贈与 → 各当事者は解除をすることができる
●ただし、履行の終わった部分については、解除できない

書面によらない贈与は、各当事者は解除をすることができます。ただし、履行の終わった部分については、解除できません(民法550条)。判例では、「所有権移転登記手続が終了した場合、引き渡しの有無にかかわらず、履行が終わったものと解すべきとし、Aは贈与を解除することができません。

2.本件贈与が書面によるものであるというためには、Aの贈与意思の確保を図るため、AB間において贈与契約書が作成され、作成日付、目的物、移転登記手続の期日および当事者の署名押印がされていなければならない。

2・・・妥当ではない

●書面による贈与 →  書面に贈与がされたことが確実に分かる程度の記載があれば足りる
●必ずしも、 「作成日付」「目的物」「移転登記手続の期日」「当事者の署名・押印」のすべてが必要なわけではない

判例では、「贈与が書面によってされたといえるためには、贈与の意思表示自体が書面によっていることを必要としないことはもちろん、書面が贈与の当事者間で作成されたこと、又は書面に無償の趣旨の文言が記載されていることも必要とせず、書面に贈与がされたことを確実に看取しうる(分かる)程度の記載があれば足りる」としています。つまり、「作成日付」「目的物」「移転登記手続の期日」「当事者の署名・押印」の一部がなかったとしても、「Bに甲建物を贈与した」と紙に書かれていたら、書面による贈与となります。

3.本件贈与につき書面が作成され、その書面でAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、遺言が撤回自由であることに準じて、Aはいつでも本件贈与を撤回することができる。

3・・・妥当

●死因贈与 : 遺贈のルールが適用される
●遺言はいつでも撤回できるため、死因贈与も「書面になっていても」いつでも解除できる

「死因贈与」とは、贈与する者の死亡によって効力が生じる生前の贈与契約のことをいいます。例えば、「私が死んだらこの土地をあげます」といった内容です。

「遺贈」とは、遺言による贈与することです。例えば、遺言で「甲建物はAに遺贈する」と記載した場合です。

そして、遺言は、いつでも撤回できます(民法1022条)。さらに判例では、死因贈与については、遺言の取消に関する民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきであるとしているので、死因贈与も、いつでも解除できます。

4.本件贈与につき書面が作成され、その書面でBがAの老後の扶養を行うことが約された場合、BがAの扶養をしないときであっても、甲の引渡しおよび所有権移転登記手続が終了していれば、Aは本件贈与を解除することができない。

4・・・妥当ではない

●負担付贈与で受贈者が負担である義務の履行を怠る場合、贈与者は贈与契約の解除ができる

負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。例えば、時価3000万円の土地を贈与するかわりに、借入金500万円を負担させる場合です。そして、判例では、負担付贈与において受贈者(もらう側)が、その負担である義務の履行を怠る場合、贈与者は、贈与契約の解除ができるとしています。

【考え方】 契約内容として、負担することを約束して、贈与しているのだから、負担の義務を履行しないということは、契約解除のルールが適用されるのは当然です(民法541条)。

5.本件贈与につき書面が作成され、その書面で、BがAの老後の扶養を行えばAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、Bが上記の負担を全部またはこれに類する程度まで履行したときであっても、特段の事情がない限り、Aは本件贈与を撤回することができる。

5・・・妥当でない

●負担付死因贈与 → 受贈者が負担である義務の全部またはそれに類する程度の履行をした場合、契約解除できない

負担付死因贈与とは、「負担付贈与」と「死因贈与」が合わさっている贈与です。例えば、私が死亡した時に時価3000万円の土地を贈与するかわりに、借入金500万円を負担させる場合です。

そして、受贈者が、負担である義務の全部またはそれに類する程度の履行をした場合、「死因贈与」のルールである「死因贈与もいつでも解除できる」というルールは適用されるのかが問題になってきます。

これについて、判例では、受贈者が、負担である義務の全部またはそれに類する程度の履行をした場合、 「死因贈与もいつでも解除できる」というルールは適用されないとしています。

【理由】 贈与者の意思を尊重する代わりに、すでに大部分の義務を履行した受贈者の利益を犠牲にするのは相当でないから。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問32|民法・債務不履行等

改正民法に対応済

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約(両債務に関する履行期日は同一であり、AがBのもとに電器製品を持参する旨が約されたものとする。以下、「本件売買契約」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

  1. Bが履行期日を過ぎたにもかかわらず売買代金を支払わない場合であっても、Aが電器製品をBのもとに持参していないときは、Aは、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできない。
  2. Aが履行期日に電器製品をBのもとに持参したが、Bが売買代金を準備していなかったため、Aは電器製品を持ち帰った。翌日AがBに対して、電器製品を持参せずに売買代金の支払を求めた場合、Bはこれを拒むことができる。
  3. Bが予め受領を拒んだため、Aは履行期日に電器製品をBのもとに持参せず、その引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告するにとどめた場合、Bは、Aに対して、電器製品の引渡しがないことを理由として履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできない。
  4. 履行期日にAが電器製品を持参したにもかかわらず、Bが売買代金を支払えなかった場合、Aは、相当期間を定めて催告した上でなければ、原則として本件売買契約を解除することができない。
  5. 履行期日になってBが正当な理由なく売買代金の支払をする意思がない旨を明確に示した場合であっても、Aは、電器製品の引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告しなければ、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことができない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

1.Bが履行期日を過ぎたにもかかわらず売買代金を支払わない場合であっても、Aが電器製品をBのもとに持参していないときは、Aは、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできない。

1・・・正しい

●同時履行の抗弁権を主張できる場合、債務不履行(履行遅滞)にならない

「売主Aの引渡債務」と「買主Bの支払債務」は同時履行の関係にあります。そのため、Aが電化製品をBのもとに持参しないとき(=履行提供しないとき)は、Bは代金の支払いを拒むことができます(民法533条)。

したがって、Bは債務不履行に陥っていないので、Aは、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできません。

よって、正しいです。

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

2.Aが履行期日に電器製品をBのもとに持参したが、Bが売買代金を準備していなかったため、Aは電器製品を持ち帰った。翌日AがBに対して、電器製品を持参せずに売買代金の支払を求めた場合、Bはこれを拒むことができる。

2・・・正しい

●相手方の履行の提供があっても、その提供が継続されないかぎり、同時履行の抗弁権は失わない

判例によると、「相手方の履行の提供があっても、その提供が継続されないかぎり、同時履行の抗弁権は失われない」としています(最判昭34.5.14)。

つまり、Aが一度電器製品をBのもとに持参しているので、Aは履行提供しています。

しかし、翌日Aが、電器製品を持参しなかったので、履行提供が継続されていません。

そのため、Bの同時履行の抗弁権は消滅しないので、Bは売買代金の支払いを拒むことができます。

よって、正しいです。

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

3.Bが予め受領を拒んだため、Aは履行期日に電器製品をBのもとに持参せず、その引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告するにとどめた場合、Bは、Aに対して、電器製品の引渡しがないことを理由として履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできない。

3・・・正しい

●債権者が弁済の受領を拒んでいる場合 → 口頭の提供で、弁済の提供をしたことになる
●弁済の提供の効果 → 債務不履行責任を免れる

弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければなりません。

ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足ります(民法493条)。

本肢の場合、Bが予め受領を拒んだため、Aは、引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告するだけで、弁済の提供をしたことになるので、履行遅滞になりません

よって、履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできないので正しいです。

■弁済の提供を行うとどうなるのか?(弁済の提供の効果)

弁済の提供をすると、本人(本問のA)は履行遅滞の責任(遅延損害金等)を免れます。よって、Bは、 Aに対して、電器製品の引渡しがないことを理由として債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償責任を問うことはできないので正しいです。

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

4.履行期日にAが電器製品を持参したにもかかわらず、Bが売買代金を支払えなかった場合、Aは、相当期間を定めて催告した上でなければ、原則として本件売買契約を解除することができない。

4・・・正しい

●催告に解除 → 契約解除するには、原則、相当期間を定めて催告する必要がある

当事者の一方がその債務を履行しない場合、原則、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができます(民法541条本文)。

よって、契約解除するには、原則、催告をする必要があります

したがって、本問は正しいです。

【注意】

ただし、例外としては債務不履行が軽微と認められる場合は、解除できないので、この点は注意しましょう!
また、催告解除の例外として、無催告解除(催告することなく解除)できる場合もあるので、併せて覚えておきましょう!

■催告をしなくても解除(無催告解除)ができる場合

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

5.履行期日になってBが正当な理由なく売買代金の支払をする意思がない旨を明確に示した場合であっても、Aは、電器製品の引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告しなければ、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことができない。

5・・・誤り

●相手方が受領拒絶の意思を明確にしたとき → 弁済の提供なく、債務不履行を理由に損害賠償請求できる

「買主Bが正当な理由なく売買代金の支払をする意思がない旨を明確に示した場合」とは、売主Aの電器製品の受領を拒絶していることになります。

判例(最判昭32.6.5)では、受領拒絶の意思を明確にしたときは、債務者(売主A)は口頭の提供をする必要はないとして、Aは弁済の提供をしなくても、Bに対して債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償責任を問うことができるとしています。

【関連ポイント】

買主Bが正当な理由なく売買代金の支払をする意思がない旨を明確に示した場合」とは「代金支払債務の債務者が債務の全部の履行を拒絶している場合」に当たります。そのため、債権者A(売主)は、催告することなく、契約解除をすることも可能です。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問31|民法・代物弁済

改正民法に対応済

代物弁済(担保目的の代物弁済契約によるものは除く。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、土地所有権の移転の効果は、原則として代物弁済契約の意思表示によって生じる。
  2. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、債務消滅の効果は、原則として移転登記の完了時に生じる。
  3. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が占有する時計を引き渡した場合、当該時計が他人から借りた時計であったとしても、債権者が、善意、無過失で、平穏に、かつ、公然と占有を開始したときには、時計の所有権を取得できる。
  4. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する時計を引き渡した場合、その時計に契約内容に適合しない瑕疵があるときでも、債権者は、債務者に対し契約不適合責任を追及することはできない。
  5. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて手形または小切手を交付した場合、これによって債務消滅の効果が生じるので、それらの不渡りがあっても、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

1.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、土地所有権の移転の効果は、原則として代物弁済契約の意思表示によって生じる。

1・・・妥当

●代物弁済による所有権移転の効果 → 代物弁済契約の成立時に生ずる(本問)

●代物弁済による債務消滅の効果 → 所有権移転登記手続を完了した時に生ずる

お金を借りたらお金で返すのが筋ですが、民法ではお金以外のモノ(例えば不動産)で弁済しても有効としています。これを「代物弁済」と言います。漢字のとおり「代わりに物で弁済する」ということです。

そして、不動産を用いて代物弁済をした場合、「いつ所有権が移転するのか?」「いつ債務が消滅するのか?(いつ代物弁済が成立するか?)」が問題となります。

いつ所有権が移転するのか? → 原則、当事者間の代物弁済契約の成立した時に、所有権が移転します。よって、本問は正しいです。

いつ債務が消滅するのか?(いつ、代物弁済が成立するか? → 特段の事情のない限り、単に代物弁済契約の意思表示をするだけでは生ぜず、所有権移転登記手続を完了した時に生ずるとしています。

参考知識

「所有権の移転」については、「物権変動」なので「物権」に関する内容です。

一方、「代物弁済による債務消滅」は「債権債務」の話なので「債権」に関する内容です。

つまり、「物権」と「債権」を分けて考えることが重要です。

2.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、債務消滅の効果は、原則として移転登記の完了時に生じる。

2・・・妥当

●代物弁済による所有権移転の効果 → 代物弁済契約の成立時に生ずる

●代物弁済による債務消滅の効果 → 所有権移転登記手続を完了した時に生ずる(本問)

選択肢1の類題です。

いつ債務が消滅するのか?(いつ、代物弁済が成立するか? → 特段の事情のない限り、単に代物弁済契約の意思表示をするだけでは生ぜず、所有権移転登記手続を完了した時に生ずるとしています。

よって、本問は正しいです。

3.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が占有する時計を引き渡した場合、当該時計が他人から借りた時計であったとしても、債権者が、善意、無過失で、平穏に、かつ、公然と占有を開始したときには、時計の所有権を取得できる。

3・・・妥当

●即時取得の要件の一つ : 代物弁済契約も「取引行為」にあたる

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(「即時取得」という)(民法192条)。つまり、即時取得の成立要件をまとめると下表のとおりで、この要件をすべて満たすと、動産を占有した者は、その動産の所有権を取得します。「要件1」について、対象は時計なので動産です。「要件2」について、債務者(前主)は、時計の所有者ではなく他人から借りているだけです。つまり、代物弁済するについて無権利者です。「要件3」について、判例では、代物弁済も取引行為に当たるとしています。「要件4」について、債権者は、占有を開始しています。「要件5」について、債権者は、平穏・公然・善意・無過失です。よって、すべての要件を満たしているので、債権者は、即時に時計の所有権を取得します。

即時取得の要件

4.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する時計を引き渡した場合、その時計に契約内容に適合しない瑕疵があるときでも、債権者は、債務者に対し契約不適合責任を追及することはできない。

4・・・妥当ではない

●代物弁済も契約なので、契約不適合責任が適用される

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、代物弁済の債権者は、「①追完請求」「②代金減額請求」「③損害賠償請求や④契約解除」ができます(民法559、562~564条)。

よって、債権者は、債務者に対し、責任を追及することはできないというのは誤りです。責任追及の内容は①~④です。

>>契約不適合責任の解説はこちら

5.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて手形または小切手を交付した場合、これによって債務消滅の効果が生じるので、それらの不渡りがあっても、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできない。

5・・・妥当

●手形・小切手の交付 = 代物弁済による債務消滅の効果が生ずる

判例によると、「弁済(支払い)に代えて、手形や小切手を交付した場合、代物弁済したことになる」としており、これによって、債権債務の効力が生じます。したがって、それらの不渡りがあっても(小切手を銀行に持っていってお金をもらえなかったとしても)、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできません。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問30|民法・留置権

改正民法に対応済

留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。
  2. Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。
  3. AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。
  4. Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。
  5. Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

1.Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。

1・・・妥当

●留置権 = 物権 → 債務者以外の者にも対抗できる

他人物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができます(民法295条)。

※ 留置権の成立要件は下表参照

■本問を見ると、建物は、AからB、BからCと売却されているので、「所有権」はCに移っています。しかし、Aはまだ、代金をもらっていないので建物の引き渡しをしていない状況です。つまり、「他人物の占有者=A」です。そして、代金債権は「建物に関して生じた債権」です(上表の成立要件の2参照)。よって、Aは、295条の留置権を持ちます。

留置権は、物権なので、「代金債権の債務者B」だけでなく、Cに対しても主張できます。つまり、Aは、Cから建物引渡請求に対して、「代金を支払ってもらうまで、建物は引渡しません!」と留置権を行使できます。

2.Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。

2・・・妥当ではない

●二重譲渡により、売主が履行不能になったことに基づく損害賠償請求権 → 「目的物に関して生じた債権」に当たらない → 留置権は成立しない

判例によると、不動産の二重譲渡において、「登記を得られなかった者Bが取得した損害賠償請求債権」を担保するために、留置権を行使することはできないとしています。

【理由】 Bの有する損害賠償請求権は、成立要件の2の「目的物(建物)に関して生じた債権」ではありません。Aの債務不履行(履行不能)によって生じた債権です。選択肢1の代金債権は、「建物」が「代金」に価値を替えたもので、

損害賠償請求とは違います。そのため、当該損害賠償請求権では、留置権は成立せず(Bは留置権を行使できない) 、BはCからの明渡請求を拒むことができません。

3.AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。

3・・・妥当

●他人物売買により、売主が履行不能になったことに基づく損害賠償請求権 → 「目的物に関して生じた債権」に当たらない → 留置権は成立しない

判例によると、他人物売買の買主Bは、所有者Cの目的物の返還請求に対し、所有権を移転するはずであった売主Aの債務不履行による損害賠償債権のために、留置権を主張できないとしています。

【理由】 考え方は選択肢2と同じです。Bの有する損害賠償請求権は、

成立要件の2の「目的物(建物)に関して生じた債権」ではありません。

Aの債務不履行によって生じた債権です。

そのため、留置権は成立せず(Bは留置権を行使できない)、BはCからの明渡請求を拒むことができません。

4.Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。

4・・・妥当

●必要費・有益費の償還請求権に基づいて留置できる → 賃貸人への明渡しを拒むことができる

ただし、賃料不払いによる契約解除後に支出した必要費・有益費の場合、償還請求権に基づいて留置できない

「有益費」とは、物件の価値を増加させる費用を指し、例えば、トイレのウォシュレットへの変更に要した費用です。

そして、契約解除前に、賃借人Bが有益費を支払ったにもかかわらず、賃貸人Aが有益費を支払ってくれない場合、賃借人Bは、賃貸借契約が終了しても、留置権に基づいて、建物の明渡しを拒むことができます。つまり、賃借人Bが有益費を支出した場合は、その償還(弁済)を受けるまで留置権により、建物の返還を拒否できます。(ただし、その際、契約終了後の賃料相当額は賃貸人Aに支払う必要はあります。)

一方、賃料不払いを理由に契約解除となった後に支出した有益費については、留置権は成立せず、建物の明け渡しを拒むことはできません(判例)。

【理由】 賃料不払いを理由として契約解除となった後は、 建物の占有が不法行為によって始まったことになります。

つまり、選択肢1の「留置権の成立要件の4」を満たさないので、留置権は成立しない。

※ 必要費とは、建物を保存する費用のことで、例えば、雨漏りの修理費用などです。

5.Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。

5・・・妥当

建物明渡債務と敷金返還債務とは、同時履行の関係にない

賃借人の建物明渡債務の履行が先 → その後に、賃貸人は敷金を返還すればよい

【判例と理由】 判例によると、「賃借人の建物の明渡し」と「賃貸人の敷金返還」は、 「賃借人の建物の明渡し」が先で、その後に「賃貸人は敷金を返還すればよい」としています。つまり、「建物明渡債務」と「敷金返還債務」とは、同時履行の関係にありません。上記理由から、賃借人Bは、留置権を行使することはできません。

【別の考え方】

また、上記に付随した考え方として、敷金返還請求権は、建物の明渡し後に発生するものなので、明渡し前は、敷金返還請求権は発生していないので、敷金返還請求権に基づいて建物を留置することはできない


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問29|民法・相隣関係

改正民法に対応済

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関する記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、次の各場合において、別段の慣習は存在しないものとする。

  1. Aは、境界線から1メートル未満の距離(注)において乙土地を見通すことができる窓または縁側(ベランダも含む)を設けることができるが、その場合には、目隠しを付さなければならない。
  2. 甲土地に所在するAの竹木の枝が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、原則、自らその枝を切除することができる。(改)
  3. 甲土地に所在するAの竹木の根が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、その根を切除することはできず、Aにその根を切除させなければならない。
  4. AおよびBが甲土地および乙土地を所有する前から甲土地と乙土地の境界に設けられていた障壁は、AとBの共有に属するものと推定されるが、その保存の費用は、A・B間に別段の約定がない限り、AとBが、甲土地と乙土地の面積の割合に応じて負担する。
  5. 甲土地内のAの建物の屋根から雨水が直接に乙土地に注がれる場合に、Bは、その雨水が注がれることを受忍しなければならない。

(注)その距離は、窓または縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

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改正民法に対応済
【答え】:1

【解説】

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

1.Aは、境界線から1メートル未満の距離(注)において乙土地を見通すことができる窓または縁側(ベランダも含む)を設けることができるが、その場合には、目隠しを付さなければならない。

1・・・正しい

●境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける → 目隠しが必要

境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む)を設ける者は、目隠しを付けなければなりません(民法235条)。

【具体例】 目隠しとは、例えば、開閉できない窓であれば曇りガラスにしたりすることが挙げられます。

境界線近くに建物を建てられて、隣の家から覗かれてしまうのは、気分が良くありません。そのための最低限のルールです。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

2.甲土地に所在するAの竹木の枝が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、原則、自らその枝を切除することができる。(改)

2・・・誤り

●隣地から入り込んだ、隣地の竹木の「枝」は、原則、勝手に切ることができない

土地の所有者は、隣地の竹木の「枝」が境界線を越えてきたときは、その竹木の所有者(隣人)に、その枝を切除させることができます。他人所有の「枝」を、無断で切り取ることはできません(民法233条1項) 例外として、下記1~3に該当する場合は、自ら、隣地から伸びてきた枝を切ることができます。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

3.甲土地に所在するAの竹木の根が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、その根を切除することはできず、Aにその根を切除させなければならない。

3・・・誤り

●隣地から入り込んだ、隣地の竹木の「根」は、勝手に切ることができる

土地の所有者は、隣地の竹木の「根」が境界線を越えてきたときは、その根を、勝手に切り取って処分することができます(民法233条2項) 。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

4.AおよびBが甲土地および乙土地を所有する前から甲土地と乙土地の境界に設けられていた障壁は、AとBの共有に属するものと推定されるが、その保存の費用は、A・B間に別段の約定がない限り、AとBが、甲土地と乙土地の面積の割合に応じて負担する。

4・・・誤り

●障壁・境界標は共同で設置することができ、負担額は折半(半分ずつ)

土地の所有者は、隣地の所有者と共同して、障壁や境界標を設けることができます。そして、設置費用や保存費用(維持管理費用)は、折半です(民法226条)。

※境界標とは、境界がどこかを表すために境界上に埋められるプレートなどです。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

5.甲土地内のAの建物の屋根から雨水が直接に乙土地に注がれる場合に、Bは、その雨水が注がれることを受忍しなければならない。

5・・・誤り

●直接に雨水を隣地に注ぐ屋根 → ダメ!

土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはなりません(民法218条)

右図では、A所有の建物の屋根を見ると、雨が降ると、直接隣地(乙土地)に流れ込んでしまいます。Aは、このような建物を建ててはいけません。

つまり、Bは、雨水が注がれることを受忍(我慢)する必要はありません。

※ ちなみに、隣地所有者Bは、Aに対して、雨どいなどの防止設備の設置の請求ができ、また損害があれば損害賠償請求もできます。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問28|民法・意思表示

改正民法に対応済

心裡留保および虚偽表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。
  2. 財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。
  3. 土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。
  4. 仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。
  5. 金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済【答え】:5

【解説】

1.養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。

1・・・妥当ではない

●当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合 → 養子縁組は無効

養子縁組が無効となるのは、①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき、②当事者が縁組の届出をしないときです(民法802条)。そして、判例では、真に養親子関係の設定を欲する効果意思がない場合(つまり、養親子関係を設定する気持ちがない場合)には、①に該当するとして、無効であるとしています。

よって、「相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたとき」も、その養子縁組は無効です。

2.財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。
2・・・妥当ではない

●虚偽表示 → 当事者間では無効
●出捐の意思がないにも関わらず、出捐を仮装して財団法人を設立 → 虚偽表示のルールが適用され、設立の意思表示は無効

出捐者(しゅつえんしゃ)とは、金銭や品物を寄付する者です。そして、財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員が通謀して(グルになって)、出捐者が出捐(寄付)の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐(寄付)を仮装して虚偽の意思表示を行った場合、(通謀)虚偽表示のルールが適用されます。

よって、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であっても虚偽表示にあたり、財団法人の設立の意思表示は無効です。

3.土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。

3・・・妥当ではない

●「土地」の仮装譲渡について、「建物」の賃借人は、法律上の利害関係人ではないので、「第三者」には当たらない
●虚偽表示の第三者に当たらない → 虚偽表示は無効

問題文の状況は上図の通りです。分かりやすいように
「土地の仮装譲渡人A」「土地の仮装譲受人をB(建物賃貸人)」「建物賃借人をC」としています。

ここで、建物賃借人CがAB間の仮装譲渡における第三者に当たるのかを考えます。

もし、第三者に当たれば、Cが仮装譲渡について善意のとき、Cは保護され、土地の仮装譲渡人Aは、Cに対して、建物からの退去および土地の明渡しを求めることができないです。

【判例と理由】 判例では、「第三者」とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいうとしています。ここで、「表示の目的」とは「土地」を指しています。今回建物賃借人Cはあくまでも「建物」を借りているだけにすぎず、「土地」は借りていません。よって、「表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者」とは言えないので、土地の仮装譲渡の第三者には当たらないとしています。

したがって、虚偽表示は当事者間では無効なので、Aは、AB間の①仮装譲渡の無効を主張し、Cに対して、建物からの退去および土地の明渡しを求めることができます。

また、判決の理由についても解説します!

4.仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。
4・・・妥当ではない

●虚偽表示おける 「第三者」とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいう
●仮装債権の譲受人=第三者にあたる
●虚偽表示 : 善意の第三者は保護される

判例では、仮装譲渡されたことが原因で発生した「売買代金債権(仮装債権)」の譲受人(上図のC)は、①仮装譲渡の第三者に当たるとしているので、Cが善意であれば、Cは保護されCは、「代金債権の債務者B」に対して、代金の支払いを求めることができます。

5.金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。

5・・・妥当

●仮装債権の譲受人=第三者にあたる
●虚偽表示 : 善意の第三者は保護される

考え方は選択肢4と同じです。

①金銭消費貸借契約が仮装され、Aは「ウソの貸金債権(仮装債権)」を有します。それを、Cに債権譲渡した場合、Cは①の虚偽表示の第三者に当たります。

よって、Cは善意であれば保護され、Cは借主Bに対して貸金の返済を請求できます。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略