平成27年度(2015年度)過去問

平成27年・2015|問17|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の定める執行停止に関する次の記述のうち、妥当な記述はどれか。

  1. 処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。
  2. 処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。
  3. 本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。
  4. 処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
  5. 処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。

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【答え】:5

【解説】

1.処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。
1・・・妥当ではない
●差止め訴訟 → 執行停止は準用されない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、「処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者」は可能です。
一方、差止め訴訟に、執行停止の規定が準用されていません(行政事件訴訟法38条)。

【理由】 差止め訴訟は、まだ処分がされていない状況です。つまり、執行停止するための処分がなされていないので、執行停止の規定する意味がないです。

したがって、「差止訴訟」を提起した者は、処分の執行停止の申立てはできません。

2.処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。
2・・・妥当ではない
●執行停止の申立て → 処分に関する取消訴訟の提起後であればよい / 取消訴訟の提起と同時に執行停止の申立てをする必要はない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、「処分の取消しの訴えの提起」の「後」であれば、執行停止の申立ては行えます
よって、「本案訴訟の提起と同時になさなければならず」が妥当ではありません。

3.本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。
3・・・妥当ではない
執行停止 → 申立てが必要 / 裁判所の職権では行えない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、執行停止をするには「申立て」が必要です。
裁判所の職権で、処分の執行停止は行えません

注意点:行政不服審査法では、「審査庁の職権」でも「申立て」でも執行停止ができます

【違いの理由】

これは、三権分立の考えから来ています。

審査庁は、あくまでの行政機関なので、行政機関内での話となります。

一方、裁判所は、司法機関なので、三権分立の観点から
司法機関が行政機関の職務を侵害することはできるだけ避ける考えがあります。

そのため、行政機関の行為を尊重するために、裁判所(司法機関)は
職権では、執行停止できないとしています。

4.処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
4・・・妥当ではない
効力の停止 → 処分の執行」又は「手続の続行の停止」によって目的を達することができる場合には、することができない

「処分の効力の停止」は、処分執行」又は「手続の続行の停止」によって目的を達することができる場合には、することができません(行政事件訴訟法25条2項ただし書)。
一方「処分の執行停止」についてこのような制限はないので、誤りです。

5.処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。
5・・・妥当
●執行停止の決定 → 口頭弁論は不要 / ただし、当事者の意見を聞く必要はある

処分の執行停止の決定は、口頭弁論を経ないですることができます
ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければなりません(行政事件訴訟法25条6項)。よって、本問は妥当です。

「口頭弁論」とは、口頭で意見を聞くということなのですが、一定の手続に従って行ないます。上記「当事者の意見を聞く」というのは、口頭弁論のような細かい手続は必要なく、意見を聞くだけで良いです。つまり、簡易的な方法でよいということです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問16|行政事件訴訟法

事情判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 事情判決は、処分取消しの請求を棄却する判決であるが、その判決理由において、処分が違法であることが宣言される。
  2. 事情判決においては、公共の利益に著しい影響を与えるため、処分の取消しは認められないものの、この判決によって、損害の賠償や防止の措置が命じられる。
  3. 事情判決に関する規定は、義務付け訴訟や差止訴訟にも明文で準用されており、これらの訴訟において、事情判決がなされた例がある。
  4. 事情判決に関する規定は、民衆訴訟に明文では準用されていないが、その一種である選挙の無効訴訟において、これと同様の判決がなされた例がある。
  5. 土地改良事業が完了し、社会通念上、原状回復が不可能となった場合、事業にかかる施行認可の取消訴訟は、訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない。

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【答え】:正解の選択肢なし(出題ミス)

【解説】

1.事情判決は、処分取消しの請求を棄却する判決であるが、その判決理由において、処分が違法であることが宣言される。
1・・・妥当ではない
事情判決 = 処分・裁決は違法ではあるが、処分を取消すこと公の利益に著しい障害を生ずる場合、棄却できる取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、
原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができます事情判決という)。
この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければなりません(行政事件訴訟法31条)。
本問は「判決理由において」が妥当ではありません。正しくは「主文において」です。

2.事情判決においては、公共の利益に著しい影響を与えるため、処分の取消しは認められないものの、この判決によって、損害の賠償や防止の措置が命じられる。
2・・・妥当ではない
●事情裁決 → 処分・裁決の違法は認められるが、処分・裁決の取消しは認められない
また、損害賠償を命じられることはない
選択肢1の解説の通り、事情判決については、「処分または裁決が違法」であることの宣言を受けます。しかし、公共の利益に著しい影響があるため、処分または裁決の取り消しはされません。つまり、行政側の処分・裁決を優先することになります。
そして、事情判決の中で、「損害の賠償や防止の措置が命じられる」ことはありません。損害賠償を求めるのであれば、別途、国家賠償請求をする必要があります。
3.事情判決に関する規定は、義務付け訴訟や差止訴訟にも明文で準用されており、これらの訴訟において、事情判決がなされた例がある。

3・・・妥当ではない

●事情判決 → 義務付け訴訟・差止め訴訟には準用されない

事情判決(31条)については、義務付け訴訟や差止め訴訟には準用されていません(行政事件訴訟法38条)。

【理由】 義務付け訴訟・差止め訴訟は、「処分・裁決前」に起こす訴訟です。

  • 義務付け訴訟は、申請or審査請求をしたにも関わらず「申請が拒否」されたり、処分・裁決を行なわない場合(不作為状態が続く場合)に「処分をしてください!」と訴えるものです。
  • 差止め訴訟は、処分・裁決されると重大な損害を生ずるおそれがあるため「処分をしないでください!」と訴えるものです。

上記の通り、「処分・裁決がなされる前」の話です。

事情判決は、「処分・裁決が違法」を前提として、処分・裁決を取消すことで公の利益に著しい障害を生ずる場合に棄却することです。つまり、事情判決は「処分・裁決後」の話なので、「処分・裁決前」の義務付け訴訟や差止め訴訟は準用されません。

4.事情判決に関する規定は、民衆訴訟に明文では準用されていないが、その一種である選挙の無効訴訟において、これと同様の判決がなされた例がある。
4・・・妥当ではない
●事情判決 → 民衆訴訟には準用される●具体例:衆議院議員定員不均衡訴訟(選挙無効訴訟)事情判決(31条)については、民衆訴訟には準用されています(行政事件訴訟法43条)。よって、妥当ではありません。具体的には、下記「最大判昭51.4.14:衆議院議員定員不均衡訴訟(選挙の無効訴訟)」で、事情判決の法理が適用されて無効となっています。【事案】昭和47年の衆議院議員選挙につき、千葉県第1区の選挙人Xは、

衆議院議員選挙当時、各選挙区の議員1人あたりの有権者数の最大値と最小値との比率に4.99対1の明白かつ多大な較差があり、この較差は平等選挙において当然許される程度を超えているため、

選挙区別議員定数を定めた公職選挙法の各規定は、憲法14条(法の下の平等)に反し無効であり、本件選挙も無効であると主張した。

4.991の較差が生じ、8年間是正されなかった議員定数配分の規定は違憲か?

② 違憲となる場合、定数配分規定全体が違憲となるか?

③ 違憲となる場合、選挙自体無効となるか?

判例

4.991の較差が生じ、8年間是正されなかった議員定数配分の規定は違憲か?

違憲である

一般に、制定当時憲法に適合していた法律が、その後における事情の変化により、その合憲性の要件を欠くに至つたときは、原則として憲法違反の瑕疵を帯びることになるというべきである。

しかし、右の要件の欠如が漸次的な事情の変化によるものである場合には、いかなる時点において当該法律が憲法に違反するに至ったものと断ずべきかについて慎重な考慮が払われなければならない。

本件の場合についていえば、人口の異動は不断に生じ、したがって選挙区における人口数と議員定数との比率も絶えず変動するのに対し、選挙区割と議員定数の配分を頻繁に変更することは、必ずしも実際的ではなく、また、相当でもないことを考えると、右事情によって具体的な比率の偏差が選挙権の平等の要求に反する程度となったとしても、これによって直ちに当該議員定数配分規定を憲法違反とすべきものではない。

人口の変動の状態をも考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われない場合に始めて憲法違反と断ぜられるべきものと解するのが、相当である。
そして、本件事案については、憲法の要求するところに合致しない状態になっていたにもかかわらず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったものと認めざるをえない。

それ故、本件議員定数配分規定は、本件選挙当時、憲法の選挙権の平等の要求に違反し、違憲と断ぜられるべきものであったというべきである。

② 違憲となる場合、定数配分規定全体が違憲となるか?

定数配分規定全体が違憲となる

選挙区割及び議員定数の配分は、議員総数と関連させながら、複雑、微妙な考慮の下で決定される。

一旦このようにして決定されたものは、一定の議員総数の各選挙区への配分として、相互に有機的に関連し、一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有する。

その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、定数配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招いている部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。

③ 違憲となる場合、選挙自体無効となるか?

事情判決の法理により、選挙を無効とはしない

定数配分規定及びこれに基づく選挙を当然に無効であると解した場合、当該選挙により選出された議員がすべて当初から議員としての資格を有しなかったこととなる結果、すでにこれらの議員によって組織された衆議院の議決を経た上で成立した法律等の効力にも問題が生ずる。

また、今後における衆議院の活動が不可能となり、明らかに憲法の所期しない結果を生ずる。

そのため、事情判決の法理により(事情判決の考え方を用いて) 、選挙は無効とはならない。

5.土地改良事業が完了し、社会通念上、原状回復が不可能となった場合、事業にかかる施行認可の取消訴訟は、訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない。
5・・・妥当ではない
●土地改良事業が完了し、原状回復が不可能となったとしても、施行認可の取消訴訟の訴えの利益は消滅しない

●また、事情判決の余地もある

事案A町は、町営の土地改良事業を計画し、事業計画を定め、B県知事に対して、本件土地改良事業の施行の認可申請をした。その後、本件事業地内の土地所有者であるXは、本件認可の取消しを求めて出訴した。そして、裁判の係属中に本件事業計画にかかる工事はすべて完了した。

① 土地改良事業の工事が完了して、原状回復が不可能となった場合、当該事業の施行認可の取消しを求める訴えの利益は消滅するか?

(参考知識) 複数の土地について、土地改良事業を行なう計画が認可されると、その土地の所有者は、一時的にその土地から出ていかないといけません。そして、改良事業が終わった後に、新しい土地(換地という)を割当てられます。イメージはP139問22の土地区画整理事業です。

判決:最判平4.1.24 】

→ 訴えの利益は消滅しない

本件認可処分は、本件事業の施行者であるA町に対し、本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものである。そして、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。

そして、本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条(事情判決)の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求めるXの法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。

したがって、本問の場合、訴えの利益は消滅しないし、事情判決の余地もあるので、「訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない」は、妥当ではありません。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問15|行政不服審査法

処分についての審査請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 審査請求の審理は、書面によるのが原則であるが、申立人の申立てがあった場合には、審理員は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。
  2. 審査請求は、行政の適正な運営を確保することを目的とするため、一般概括主義がとられており、国会および裁判所が行う処分以外には、適用除外とされている処分はない。
  3. 審査請求は、行政の適正な運営を確保することを目的とするため、対象となる処分に利害関係を有さない者であっても、不服申立てができる期間であれば、これを行うことができる。
  4. 審査請求は、簡易迅速に国民の権利利益の救済を図るための制度であるから、審査請求が行われた場合には、処分の効力は、裁決が行われるまで停止する。
  5. 審査請求は、簡易迅速に国民の権利利益の救済を図るための制度であるから、審査請求に対する審査庁の判断が一定期間内に示されない場合、審査請求が審査庁によって認容されたとみなされる。

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【答え】:1

【解説】

1.審査請求の審理は、書面によるのが原則であるが、申立人の申立てがあった場合には、審理員は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。
1・・・正しい
審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立人等に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければなりません行政不服審査法31条)。
ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
よって、本肢は原則の話なので、正しいです。

2.審査請求は、行政の適正な運営を確保することを目的とするため、一般概括主義がとられており、国会および裁判所が行う処分以外には、適用除外とされている処分はない。
2・・・誤り
次に掲げる処分及びその不作為については、審査請求の規定は、適用されません(行政不服審査法7条)。

  • 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
  • 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
  • 検査官会議で決すべきものとされている処分

上記以外にも適用除外となるものはあります。
よって、「国会および裁判所が行う処分以外」でも、審査請求の規定について適用除外となるものはあるので誤りです。

行政不服審査法1条(目的)
この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする

【一般概括主義 (いっぱんがいかつしゅぎ)】

法律に例外のある場合を除いて、全ての処分について訴訟提起できる考え方を言います。
この考え方は、行政不服審査法でも採用しており、一定の例外を除いて、全ての処分について不服申立てをすることができます。

3.審査請求は、行政の適正な運営を確保することを目的とするため、対象となる処分に利害関係を有さない者であっても、不服申立てができる期間であれば、これを行うことができる。
3・・・誤り
判例によると
不服申し立てができる者とは、「当該処分について不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」をいう、としています。
したがって、「処分に利害関係を有さない者」については、不服申し立てを行うことはできません。
【法律上の利益のイメージ】
自分の権利や利益を害されたものといったイメージなのですが、例えば、あなたが行政書士の登録を受けていて登録消除処分(登録取り消し処分)を受けた場合、行政書士の業務を行えなくなります。ここでいう、行政書士の業務を営む権利が「法律上の利益」です。
4.審査請求は、簡易迅速に国民の権利利益の救済を図るための制度であるから、審査請求が行われた場合には、処分の効力は、裁決が行われるまで停止する。
4・・・誤り
審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げません(行政不服審査法25条)。
これを、「執行不停止の原則」と言います。
したがって、審査請求が行われたとしても、処分の効力は、停止することはないので、本肢は誤りです。

5.審査請求は、簡易迅速に国民の権利利益の救済を図るための制度であるから、審査請求に対する審査庁の判断が一定期間内に示されない場合、審査請求が審査庁によって認容されたとみなされる。
5・・・誤り
本肢のようなルールはありません。
よって、誤りです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問14|行政不服審査法

行政不服審査法に基づく審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、または審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する。
  2. 不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請を認める処分をすべき旨を命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。
  3. 処分についての審査請求に理由があり、審査庁が裁決で当該処分の変更を命ずることができる場合において、公の利益に著しい障害が生じることを防ぐため必要があると認めるときは、審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる。
  4. 事実上の行為についての審査請求に理由がある場合、上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨宣言するとともに、当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる(改)。
  5. 処分についての審査請求の裁決には、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様の事情裁決の制度があるが、事情裁決が行われるのは、処分が違法である場合に限られ、処分が不当である場合には行われない。

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【答え】:4

【解説】

1.処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、または審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する。
1・・・誤り
処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下します(行政不服審査法45条1項)。
一方、
処分についての審査請求に理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却します(同条2項)。よって、「審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する」が誤りです!

2.不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請を認める処分をすべき旨を命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。
2・・・誤り
不作為についての審査請求に理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言します。
この場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとります(行政不服審査法49条3項)。

  1. 不作為庁の上級行政庁である審査庁 → 当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。
  2. 不作為庁である審査庁 → 当該処分をすること。
3.処分についての審査請求に理由があり、審査庁が裁決で当該処分の変更を命ずることができる場合において、公の利益に著しい障害が生じることを防ぐため必要があると認めるときは、審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる。
3・・・誤り
処分についての審査請求があった場合に、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできません:不利益変更の禁止(行政不服審査法48条)。
よって、本肢は「審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる」が誤りです。

4.事実上の行為についての審査請求に理由がある場合、上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨宣言するとともに、当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる(改)。
4・・・正しい
事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、原則として、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、次の各号に掲げる審査庁の区分に応じ、当該各号に定める措置をとります(行政不服審査法47条)。

  1. 処分庁以外の審査庁(上級行政庁である審査庁等) → 当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること。
  2. 処分庁である審査庁 → 当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すること。

したがって、本肢は上記1号の内容なので正しいです。

5.処分についての審査請求の裁決には、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様の事情裁決の制度があるが、事情裁決が行われるのは、処分が違法である場合に限られ、処分が不当である場合には行われない。
5・・・誤り
審査請求に係る処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、
審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、処分を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、
審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができます(行政不服審査法45条3項)。
これを「事情裁決」と言い、行政事件訴訟法の定める「事情判決」に類似する制度です。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問13|行政手続法

X省では、ホームページに、「行政手続法、よくある質問と回答」の内容を掲載しようと検討している。以下はその原稿案である。これらのうち、誤りを含むものはどれか。

  1. Q「ある営業の許可のための申請をしようと思っています。役所でどのような点を審査することになるのか、事前に知ることはできますか?」
    →A「役所は、申請を認めるべきかどうか役所側が判断するときの基準をできる限り具体的に定め、誰でも見ることができるようにしておかなければなりません。この基準は、原則として公にされています。」
  2. Q「私がしようとしている許可申請については、A県知事が許可・不許可処分をすることになっています。処分の根拠は法律に定められているようです。行政手続法が適用されるのでしょうか?」
    →A「地方公共団体の役所がするそのような処分については、行政手続法の規定は適用されません。当該地方公共団体が行政手続条例を定めていれば、行政手続条例が適用されることになります。」
  3. Q「許可の申請をした結果はいつ頃わかるのか、目安を知りたいのですが?」
    →A「役所は、申請が届いてから結論を出すまでに通常の場合必要とする標準的な期間をあらかじめ定めるように努め、定めたときは公にしておかなければならないことになっています。ここで定められた期間が、申請の処理にかかる時間の目安となります。」
  4. Q「許可申請をしたのに、いつまでたっても返答がないのですが?」
    →A「申請書が役所に届いたら、役所は直ちに審査を開始することになっています。役所が申請を受け取らなかったり、審査をせずに放置しておくなどの取扱いは行政手続法上許されていません。申請先の役所に状況を問い合わせてみましょう。」
  5. Q「申請が不許可になった場合、その理由は教えてもらえるのでしょうか?」
    →A「役所は、申請を許可できない、不許可にする、という場合には、処分と同時に(書面でするときは書面で)その理由を示すことになっています。」

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.
Q「ある営業の許可のための申請をしようと思っています。役所でどのような点を審査することになるのか、事前に知ることはできますか?」
→A「役所は、申請を認めるべきかどうか役所側が判断するときの基準をできる限り具体的に定め、誰でも見ることができるようにしておかなければなりません。この基準は、原則として公にされています。」
1・・・誤りを含まない
問題文は「営業の許可のための申請」という記述から、「申請に対する処分」についての出題と分かります。
そして、行政庁は、審査基準を必ず定めます(義務)(行政手続法5条1項)。
そして、行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければなりません(同条2項)。
さらに、行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければなりません(義務)(同条3項)。
したがって、本肢に誤りは含まれません。

2.
Q「私がしようとしている許可申請については、A県知事が許可・不許可処分をすることになっています。処分の根拠は法律に定められているようです。行政手続法が適用されるのでしょうか?」
→A「地方公共団体の役所がするそのような処分については、行政手続法の規定は適用されません。当該地方公共団体が行政手続条例を定めていれば、行政手続条例が適用されることになります。」
2・・・誤りを含む
地方公共団体の機関がする

  1. 処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  2. 行政指導、
  3. 地方公共団体の機関に対する届出(根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  4. 地方公共団体の機関が命令等を定める行為

については、行政手続法の規定(申請に対する処分、不利益処分、行政指導、届出、意見公募手続等)は、適用されません(行政手続法3条3項)。
「処分の根拠は法律に定められている」という場合、上記1号に含まれません
つまり、上記適用除外にはなっていないので、行政手続法が適用されるということです。

適用されないのは、「処分の根拠が条例又は規則に定められている場合」です。

3.
Q「許可の申請をした結果はいつ頃わかるのか、目安を知りたいのですが?」
→A「役所は、申請が届いてから結論を出すまでに通常の場合必要とする標準的な期間をあらかじめ定めるように努め、定めたときは公にしておかなければならないことになっています。ここで定められた期間が、申請の処理にかかる時間の目安となります。」
3・・・誤りを含まない
行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間定めるよう努める(努力義務)とともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備え付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません(義務)行政手続法6条)。
したがって、本肢は誤りを含みません。

4.
Q「許可申請をしたのに、いつまでたっても返答がないのですが?」
→A「申請書が役所に届いたら、役所は直ちに審査を開始することになっています。役所が申請を受け取らなかったり、審査をせずに放置しておくなどの取扱いは行政手続法上許されていません。申請先の役所に状況を問い合わせてみましょう。」
4・・・誤りを含まない
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、
申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、
速やかに、申請者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません(行政手続法7条)。
したがって、本肢は誤りを含みません。
※細かいことをいうと、問題文は「直ちに」、法律上は「遅滞なく」となっており異なります。ただ、他の選択肢と比較した場合、2が昭からに誤りとなるので、そちらを選ぶ流れとなります。対話型の問題では、ニュアンスがあっていれば正しいとなることもあるので覚えておくとよいでしょう。)

5.
Q「申請が不許可になった場合、その理由は教えてもらえるのでしょうか?」
→A「役所は、申請を許可できない、不許可にする、という場合には、処分と同時に(書面でするときは書面で)その理由を示すことになっています。」
5・・・誤りを含まない
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分(申請に対する処分)をする場合は、原則、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければなりません
そして、上記処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければなりません(行政手続法8条)。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問12|行政手続法

次に掲げる行政手続法2条が定める定義の空欄[ ア ]~[ オ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

申請 ―― 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の[ ア ]に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が[ イ ]をすべきこととされているものをいう。

不利益処分 ―― 行政庁が、法令に基づき、[ ウ ]を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。

行政指導 ―― 行政機関がその任務又は[ エ ]の範囲内において一定の行政目的を実現するため[ オ ]に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

  1. ア:特定の者 イ:一定の処分 ウ:特定の者 エ:法律に基づく命令 オ:特定の者
  2. ア:自己 イ:諾否の応答 ウ:不特定の者 エ:法令 オ:不特定の者
  3. ア:利害関係を有する者 イ:諾否の応答 ウ:特定の者 エ:管轄 オ:特定の者
  4. ア:特定の者 イ:一定の処分 ウ:不特定の者 エ:職務命令 オ:不特定の者
  5. ア:自己 イ:諾否の応答 ウ:特定の者 エ:所掌事務 オ:特定の者

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

ア.イ.
申請 ―― 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の[ ア ]に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が[ イ ]をすべきこととされているものをいう。
ア・・・自己
イ・・・諾否の応答
申請」とは、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(許認可等という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいいます(行政手続法2条3号)。よって、「アには自己」「イには諾否の応答」が入ります。

ウ.
不利益処分 ―― 行政庁が、法令に基づき、[ ウ ]を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。
ウ・・・特定の者
不利益処分」とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいいます。ただし、次のいずれかに該当するものを除きます(行政手続法2条4号)。

  • 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
  • 申請に対する処分
  • 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
  • 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

よって「ウには特定の者」が入ります。

エ.オ.
行政指導 ―― 行政機関がその任務又は[ エ ]の範囲内において一定の行政目的を実現するため[ オ ]に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
エ・・・所掌事務
オ・・・特定の者
行政指導」とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいいます(行政手続法2条6号)。よって、「エには所掌事務」「オには特定の者」が入ります。

所掌事務とは、法令で、その担当と決まっている事務を言います。
つまり、自分が担当している事務の範囲のことしか、行政指導を行えないということです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問11|行政手続法

行政手続法による意見公募手続につき、妥当な記述はどれか。

  1. 意見公募手続に関する規定は、地方公共団体による命令等の制定については適用されないこととされているが、地方公共団体は、命令等の制定について、公正の確保と透明性の向上を確保するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
  2. 意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、結果を公示しなければならないが、意見の提出がなかったときは、その旨の公示は必要とされない。
  3. 意見公募手続においては、広く一般の意見が求められ、何人でも意見を提出することができるが、当該命令等について、特別の利害関係を有する者に対しては、意見の提出を個別に求めなければならない。
  4. 意見公募手続において提出された意見は、当該命令等を定めるに際して十分に考慮されなければならず、考慮されなかった意見については、その理由が意見の提出者に個別に通知される。
  5. 意見公募手続の対象である命令等には、法律に基づく命令又は規則のほか、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断する基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.意見公募手続に関する規定は、地方公共団体による命令等の制定については適用されないこととされているが、地方公共団体は、命令等の制定について、公正の確保と透明性の向上を確保するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
1・・・妥当

●地方公共団体による命令等の制定 → 行政手続法の適用はない=意見公募手続が不要
●地方公共団体は、公正の確保と透明性の向上を確保するために必要な措置を講ずるように努めなければならない

地方公共団体の機関がする

  1. 処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  2. 行政指導
  3. 地方公共団体の機関に対する届出(根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  4. 地方公共団体の機関が命令等を定める行為

については、行政手続法の規定(申請に対する処分、不利益処分、行政指導、届出、意見公募手続等)は、適用されません行政手続法3条3項)。
よって、「意見公募手続に関する規定は、地方公共団体による命令等の制定については適用されないこととされている」という部分は妥当です。
ただし、地方公共団体は、上記処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(努力義務)行政手続法46条)。
よって、後半部分も妥当です。

※ 上記覚えるのはなかなか難しいので、地方公共団体で行政手続法の適用があるもの(上段)のみ覚えると楽でしょう!

2.意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、結果を公示しなければならないが、意見の提出がなかったときは、その旨の公示は必要とされない。
2・・・妥当ではない

●意見公募手続を実施して命令等を定めた場合に公示すべきもの → 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)

命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければなりません(行政手続法43条)。

  1. 命令等の題名
  2. 命令等の案の公示の日
  3. 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨
  4. 提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由

上記3号の内容から、「提出意見がなかった場合にあっては、提出意見がなかった旨」を公示しなければなりません。
よって、本肢は妥当ではありません。

3.意見公募手続においては、広く一般の意見が求められ、何人でも意見を提出することができるが、当該命令等について、特別の利害関係を有する者に対しては、意見の提出を個別に求めなければならない。
3・・・妥当ではない

●命令等を定めようとする場合 → 広く一般の意見を求めなければならない
●特別の利害関係人に個別に意見の提出を求める義務はない

命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該「命令等の案」及び「これに関連する資料」をあらかじめ公示し、「意見の提出先」及び「意見の提出のための期間(意見提出期間)」を定めて広く一般の意見を求めなければなりません(行政手続法39条)。
本肢のように、「命令等について、特別の利害関係を有する者に対しては、意見の提出を個別に求めなければならない」というルールはないので、妥当ではありません。

4.意見公募手続において提出された意見は、当該命令等を定めるに際して十分に考慮されなければならず、考慮されなかった意見については、その理由が意見の提出者に個別に通知される。
4・・・妥当ではない

●意見公募手続を実施して命令等を定める場合 → 提出された当該命令等の案についての意見を十分に考慮しなければならない

命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見を十分に考慮しなければなりません(行政手続法42条)。
しかし、本肢のように「考慮されなかった意見については、その理由が意見の提出者に個別に通知される」というルールはないので妥当ではありません。

※行政手続法は、条文をある程度確認しておいた方がよいです。その理由は本問のように、法律に規定されていない内容が問題文に記載されることがあるからです。ある程度確認しておけば、「そんな内容なかったな、だから×」と答えを導けます。
行政手続法は、50条弱しなかいため、ネットなどで何度か確認しておきましょう。

5.意見公募手続の対象である命令等には、法律に基づく命令又は規則のほか、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断する基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。
5・・・妥当ではない

●命令等 = 意見公募手続の対象
●行政指導指針 → 命令等に含まれる

命令等」とは、内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいいます(行政手続法2条8号)。

よって、「行政指導に関する指針は含まれない」は妥当ではありません。

意見公募手続の対象である命令等の上記4つは必ず頭に入れておきましょう!


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問10|行政法・行政立法

行政立法に関する次の会話の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

  • 教員A 「今日は行政立法に関して少し考えてみましょう。B君、行政立法の具体例をいくつか挙げることができますか?」
  • 学生B 「そうですね。建築基準法施行規則や所得税基本通達があります。」
  • 教員A 「よく知っていますね。建築基準法施行規則はその名のとおり建築基準法の委任に基づき定められた[ ア ]ですね。国民の権利義務に関わる規定を含むものですから、講学上は[ イ ]に分類されます。Cさん、所得税基本通達は何に分類されるでしょうか?」
  • 学生C 「所得税基本通達は、国税庁内部で上級機関が下級機関に発する事務処理の取決めのことですから、[ ウ ]でしょうか?」
  • 教員A 「そのとおりですね。では、[ イ ]の中には、性質の異なる二種類のものがあることを知っていますか?」
  • 学生B・C 「どういうことでしょうか?」
  • 教員A 「質問の仕方を変えると、[ イ ]の中には、新たに権利義務を設定するのではなく、法律を実施するための技術的細目を定めるものがありますよね。」
  • 学生B 「[ エ ]のことですね。申請書の様式を定める規定がこれにあたると言われています。」
  • 教員A 「正解です。ただ、このような分類枠組みについては今日では疑問視されていることにも注意してください。」
  1. ア:省令 イ:法規命令 ウ:行政規則 エ:執行命令
  2. ア:省令 イ:行政規則 ウ:法規命令 エ:委任命令
  3. ア:政令 イ:法規命令 ウ:行政規則 エ:委任命令
  4. ア:政令 イ:行政規則 ウ:法規命令 エ:執行命令
  5. ア:政令 イ:法規命令 ウ:行政規則 エ:独立命令

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【答え】:1

【解説】

本問は「行政立法」に関する出題です。


教員A 「今日は行政立法に関して少し考えてみましょう。B君、行政立法の具体例をいくつか挙げることができますか?」

学生B 「そうですね。建築基準法施行規則や所得税基本通達があります。」

教員A 「よく知っていますね。建築基準法施行規則はその名のとおり建築基準法の委任に基づき定められた[ ア ]ですね。

ア・・・省令
「建築基準法施行規則」は「国土交通大臣の定める省令」です。ちなみに〇〇施行令・・・政令
〇〇施行規則・・・省令

です。


教員A 「よく知っていますね。建築基準法施行規則はその名のとおり建築基準法の委任に基づき定められた[ ア:省令 ]ですね。国民の権利義務に関わる規定を含むものですから、講学上は[ イ ]に分類されます。」
イ・・・法規命令
国民の権利義務に関わる規定を含む」ということは、「イには法規命令」が入ります。

教員A 「Cさん、所得税基本通達は何に分類されるでしょうか?」学生C 「所得税基本通達は、国税庁内部で上級機関が下級機関に発する事務処理の取決めのことですから、[ ウ ]でしょうか?」教員A 「そのとおりですね。」

ウ・・・行政規則
国税庁内部で上級機関が下級機関に発する事務処理の取決め」ということは、国民の権利義務に関わらない内容なので、「ウには行政規則」が入ります。

教員A 「質問の仕方を変えると、[ イ:法規命令 ]の中には、新たに権利義務を設定するのではなく、法律を実施するための技術的細目を定めるものがありますよね。」学生B 「[ エ ]のことですね。申請書の様式を定める規定がこれにあたると言われています。」教員A 「正解です。ただ、このような分類枠組みについては今日では疑問視されていることにも注意してください。」

エ・・・執行命令
法規命令には「執行命令」と「委任命令」の2つがあります。
執行命令とは、法律を実施するための具体的細目(細かい内容)を定めたルールです。
委任命令とは、新たに権利義務を設定する命令です。よって、「新たに権利義務を設定するのではなく、法律を実施するための技術的細目を定めるものがありますよね」
という記述から
「エには執行命令」が入ります。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問9|行政法

国と国家公務員との法律関係に関する次の記述のうち、最高裁判所の判決に照らし、正しいものはどれか。

  1. 国と国家公務員は特別な社会的接触の関係にあるので、公務災害の場合、国は、一般的に認められる信義則上の義務に基づいて賠償責任を負うことはない。
  2. 安全配慮義務は私法上の義務であるので、国と国家公務員との間の公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。
  3. 公務災害に関する賠償は、国の公法上の義務であるから、これに民法の規定を適用する余地はない。
  4. 公務災害に関する賠償については、国家賠償法に基づく不法行為責任が認められる場合に限られ、上司等の故意過失が要件とされる。
  5. 公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間については、早期決済の必要性など行政上の便宜を考慮する必要がないので、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用される。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

本問は「最判昭50.2.25」に関する出題です。

【解説】

1.国と国家公務員は特別な社会的接触の関係にあるので、公務災害の場合、国は、一般的に認められる信義則上の義務に基づいて賠償責任を負うことはない。
1・・・誤り
判例によると
「国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている」
と判示しています。
つまり、国と公務員との間であっても、安全配慮義務(信義則上の義務)が認められ、これに基づいて賠償責任を負うことがあります。
2.安全配慮義務は私法上の義務であるので、国と国家公務員との間の公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。
2・・・誤り
判例によると、
「安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負う
としています。
よって、「公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。」は誤りです。
3.公務災害に関する賠償は、国の公法上の義務であるから、これに民法の規定を適用する余地はない。
3・・・誤り
判例によると
「国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、・・・私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではない。
よって、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法の5年と解すべきではなく、(旧)民法の10年と解すべき
として、民法を適用しているため、「民法の規定を適用する余地はない」は妥当ではありません。
※ 現行の民法では、「(権利を行使することができるときから)20年」という消滅時効が適用されます。
>>人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効
4.公務災害に関する賠償については、国家賠償法に基づく不法行為責任が認められる場合に限られ、上司等の故意過失が要件とされる。
4・・・誤り
公務災害に関する賠償については、「国家賠償法に基づく不法行為責任が認められない場合」でも、安全配慮義務違反によって賠償してもらえます。
また、上司の故意過失は要件とされていません。
5.公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間については、早期決済の必要性など行政上の便宜を考慮する必要がないので、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用される。
5・・・正しい
選択肢3の通り、「公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間」は民法の消滅時効(10年)が適用されるので、正しいです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問8|行政法

裁判による行政上の義務履行確保について、最高裁判所の判決に照らし、妥当な記述はどれか。

  1. 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、法令の適用により終局的に解決することができないから、法律上の争訟に該当しない。
  2. 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、このような訴訟を提起することを認める特別の規定が法律にあれば、適法となりうる。
  3. 国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、終局的には、公益を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟には該当しない。
  4. 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、行政上の義務履行確保の一般法である行政代執行法による代執行が認められる場合に限り、不適法である。
  5. 国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではないが、現行法上、こうした訴訟を認める特別の規定があるため、提起することが許されている。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

本問はすべて「宝塚市パチンコ条例事件」に関する内容です。

1.国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、法令の適用により終局的に解決することができないから、法律上の争訟に該当しない。

1・・・妥当ではない

●財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合 → 法律上の争訟に該当する
●行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするもの → 法律上の争訟に該当しない
【事案】

宝塚市Xの条例に「パチンコ店等の建築物を建築するためには市長の同意を必要とし、この規定に違反して建築しようとする者に対し、市長は建築の中止、原状回復その他必要な措置を講じるよう命じることができる」旨の規定があった。

宝塚市長は、上記規定に違反してパチンコ店を建築しようとするYに対して、その建築工事の中止を命じた。

しかし、Yがこれに従わなかったため、宝塚市Xは、Yに対して、建築工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起した。

①法律上の争訟にあたるか?

②この民事訴訟は適法か?不適法か?

判例

判例では、下記のように言っています。

行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象(=裁判の対象)は、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる。
そうだとすると、国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきである。

分かりやすくいうと、「裁判の対象は、法律上の争訟である必要がある。法律上の争訟とは、1)当事者間の所有権等の対抗関係や所有権等の存否に関する紛争で、かつ、2)法令を使って最終的に解決できるものです

そうだとすると、国などが提起した訴訟で、財産権(所有権など)を対象として、所有権を主張するような場合は、法律上の争訟に当たるというべき」ということです。

さらに、続いて、今回の裁判については、下記のように判示しています(判例で示しています)。

国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではない

分かりやすくいうと、今回の宝塚市Yの裁判は、「行政権(建築工事の続行禁止を求める権利)」を対象として、国民Xに対して、義務履行を求める訴訟です。この訴訟は、「法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的」である。

上記に記載した、「財産権(所有権)などを主張して、自己の権利利益の保護救済を目的」とするものではない。

したがって、法律上の争訟に該当せず、裁判所で裁判するものではないと言っています。

ここで、問題文を見ると、「法律上の争訟に該当しない理由」は「法令の適用により終局的に解決することができないから」と書いてありますが、これは誤りです。今回の宝塚市の訴訟において、 「法律上の争訟に該当しない理由」は「法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的」とするからです。よって、妥当ではありません。

また、問題にはなっていませんが、②法律上の争訟ではないので、今回の宝塚市の訴訟は、不適法です。

2.国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、このような訴訟を提起することを認める特別の規定が法律にあれば、適法となりうる。
2・・・妥当
●行政権を主体通して、国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟 → 法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される

判例では、下記のように示しています。

国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。

つまり、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、このような訴訟を提起することを認める特別の規定が法律にあれば、適法となる可能性があります。(=原告適格や被告適格、提訴期間の要件を満たせば適用になる)

3.国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、終局的には、公益を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟には該当しない。

3・・・妥当ではない

●財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求める場合 → 法律上の争訟に当たる

判例では「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たる」としています。よって本問は「法律上の争訟に該当しない」となっているので誤りです。

4.国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、行政上の義務履行確保の一般法である行政代執行法による代執行が認められる場合に限り、不適法である。
4・・・妥当ではない
●「行政権」の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟 → 法律に特別の規定がある場合に限り、適法「行政代執行法による代執行が認められる場合に限り、不適法」という記述は妥当ではありません。
正しくは、「法律に特別の規定がない場合、不適法」言い方を変えると、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、「法律に特別の規定がある場合に限り、適法」と言うことです。5.国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではないが、現行法上、こうした訴訟を認める特別の規定があるため、提起することが許されている。

5・・・妥当ではない
●財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合 → 法律上の争訟に当たる判例では「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たる」と判示しています。
つまり、本問の「法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではない(=当たり前に裁判所の審判の対象とはならない)」は妥当ではありません。

平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略