平成29年度(2017年度)過去問

平成29年・2017|問7|憲法の概念

憲法の概念に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。
  2. 憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
  3. 憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。
  4. 憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。
  5. 憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。
1・・・妥当ではない
硬性憲法とは、憲法改正について、通常の立法手続よりも厳格な手続を要求している憲法を言います。分かりやすくいえば、憲法改正をしにくい憲法です。
日本の憲法も、憲法改正については、
各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、
さらに国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票において過半数の賛成を得なければならない
とされている(憲法96条)ので、硬性憲法にあたります。
また、ドイツとフランスの憲法は、どちらも硬性憲法です。
一方、軟性憲法とは、憲法改正につき通常の立法手続で可能な憲法を言います。
イギリスは改正手続がしやすい軟性憲法に当たります。
2.憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
2・・・妥当
憲法の意味は「形式的意味の憲法」と「実質的意味の憲法」の2つがあります。
つまり、憲法とは?という問いに対して、2つの切り口から説明できるということです。形式的意味の憲法とは、
憲法という名前で呼ばれている成文の法典(日本国憲法のように文としてあらわされているか)を意味します。
つまり、憲法典という形式さえあれば、内容がどのようなものであるかは問いません。
極端なことを言えば、憲法が1条しかなかったとしても、成文として存在しているのであれば
形式的意味での憲法は存在することになります。
ちなみに、イギリスは主要国で唯一、憲法が法典として存在しない国です。実質的意味の憲法は、「成文」「不文」は関係なく、内容に着目しています。
内容のない憲法は、実質的意味での憲法は存在しないということになりますそして「実質的意味の憲法」には、さらに「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」に分類されます。

実質的意味の憲法には、さらに「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」に分類されます。明治憲法下の皇室典範は実質的意味の憲法には当たりますが、形式的には憲法ではないため、上記の形式的意味の憲法には当たりません。

固有の意味の憲法」とは、
国家統治の基本を定めた法としての憲法をいいます。

国があれば、当然に国家権力があります。
国家権力とは、国家統治の力です。

憲法は、国家統治の力についてルールで定めたものなので、
どんな国家でも、「固有の意味の憲法」は存在するわけですね。

立憲的意味の憲法」とは、
市民革命により、絶対的な存在である王様を倒して、国家(王様)による個人の自由への干渉を制限し、国民の権利を保障するという内容をもった憲法です。
つまり、権力を制限することで国民の自由を保障するための法という意味が「立憲的意味の憲法」です。

そして、問題文を見ると
憲法の定義をめぐっては、
①成文の憲法典という法形式だけでなく、
②国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、
後者②は実質的意味の憲法と呼ばれる。
②実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
これは妥当です。

3.憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。
3・・・妥当ではない
憲法は、「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員裁判官その他の公務員」を拘束する規範です。
国民(主権者)は含みません憲法99条)。
よって、本肢は「主権者が自らを拘束する規範でもある」という部分が妥当ではありません。
4.憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。
4・・・妥当ではない
憲法は、国の最高法規であって、その条規(憲法)に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しません(無効)憲法98条)。
条約と憲法の優劣については、明確な判例はありません。
したがって、「条約は国内法として憲法より強い効力を有する」が妥当ではありません。
5.憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。
5・・・妥当ではない
日本国憲法には前文があるが、この前文は憲法の一部だと考えられていて、法規範性も有しています。
したがって、前文を改正するためには、憲法改正の手続き(憲法第96条)が必要です。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問6|憲法・財政

次の文章の空欄[  ]に当てはまる語句(ア)と、本文末尾で述べられた考え方(イ)(現在でも通説とされる。)との組合せとして、妥当なものはどれか(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

法の形式はその生産方法によって決定せられる。生産者を異にし、生産手続を異にするに従って異る法の形式が生ずる。国家組織は近代に至っていよいよ複雑となって来たから、国法の形式もそれに応じていよいよ多様に分化してきた・・・。
すべて国庫金の支出は必ず予め定められた準則――これを実質的意味の予算または予算表と呼ぼう――にもとづいてなされることを要し、しかもその予定準則の定立には議会の同意を要することは、近代立憲政に通ずる大原則である。諸外国憲法はかくの如き予算表は「[ ア ]」の形式をとるべきものとなし、予算表の制定をもって「[ ア ]」の専属的所管に属せしめている。わが国ではこれと異り「[ ア ]」の外に「予算」という特殊な形式をみとめ、予算表の制定をもって「予算」の専属的所管に属せしめている。
(出典 宮澤俊義「憲法講義案」1936年から)

  1. ア:法律 イ:予算法形式説
  2. ア:法律 イ:予算法律説
  3. ア:議決 イ:予算決定説
  4. ア:命令 イ:予算行政説
  5. ア:議決 イ:予算決算説

>解答と解説はこちら


【答え】: 1

【解説】

内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければなりません(憲法86条)。
つまり、予算は内閣が作成して国会の審議にかけるわけですが、
予算には、3つの考え方があります。

予算行政説:予算は「行政計画」であるという考え方
予算法律説:予算は「法律」であるという考え方
予算法形式説 :予算は「法律」とは異なる特殊の法形式であるという考え方(通説

予算法形式説 の考え方が通説となっているので、問題文の「本文末尾で述べられた考え方(イ)(現在でも通説とされる。)」という部分から、「イ」は予算法形式説となります。

予算行政説

予算行政説は、予算を「行政計画」としてとらえるため、
「予算は行政(政府)を拘束しません」。
そのため、財政民主主義に反するという意見があります。

憲法83条(財政民主主義)
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

予算法律説

予算法律説は、「財政民主主義」に重点を置いた考え方で、
「予算が、政府や国民を拘束する」ことになります。

予算法形式説

予算法形式説は、予算は行政のみ拘束し、国民は拘束しません
つまり、政府は、予算に反する支出等は違法となります。
そして、予算は法律そのものではなく、予算を執行するためには別に執行のための法律が必要となってきます。

本問の内容は「予算法形式説」なので、
イには、「予算法形式説」となります。

ア.
諸外国憲法はかくの如き予算表は「[ ア ]」の形式をとるべきものとなし、予算表の制定をもって「[ ア ]」の専属的所管に属せしめている。わが国ではこれと異り「[ ア ]」の外に「予算」という特殊な形式をみとめ、予算表の制定をもって「予算」の専属的所管に属せしめている。
ア・・・法律
イギリス、ドイツ、フランス等では予算は「法」として成立します。
一方、
日本の通説は、予算法律説ではなく、予算法形式説です。
わが国ではこれと異り「法」の外に「予算」という特殊な形式をみとめています。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問5|憲法・内閣

内閣に関する次の記述のうち、憲法の規定に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 内閣総理大臣は、国会の同意を得て国務大臣を任命するが、その過半数は国会議員でなければならない。
  2. 憲法は明文で、閣議により内閣が職務を行うべきことを定めているが、閣議の意思決定方法については規定しておらず、慣例により全員一致で閣議決定が行われてきた。
  3. 内閣の円滑な職務遂行を保障するために、憲法は明文で、国務大臣はその在任中逮捕されず、また在任中は内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない、と規定した。
  4. 法律および政令には、その執行責任を明確にするため、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
  5. 内閣の存立は衆議院の信任に依存するので、内閣は行政権の行使について、参議院に対しては連帯責任を負わない。

>解答と解説はこちら


【答え】: 4

【解説】

1.内閣総理大臣は、国会の同意を得て国務大臣を任命するが、その過半数は国会議員でなければならない。
1・・・妥当ではない
内閣総理大臣は、国務大臣を任命します(憲法68条1項)。
ただし、国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければなりません(憲法68条1項但し書き)。
つまり、本肢のような「国会の同意」は不要です。
2.憲法は明文で、閣議により内閣が職務を行うべきことを定めているが、閣議の意思決定方法については規定しておらず、慣例により全員一致で閣議決定が行われてきた。
2・・・妥当ではない
憲法には、「閣議」についての規定はありません
閣議により内閣が職務を行うべきことは、内閣法4条で定めています。
また、閣議の意思決定方法については規定しておらず慣例により全員一致で閣議決定が行われています。
3.内閣の円滑な職務遂行を保障するために、憲法は明文で、国務大臣はその在任中逮捕されず、また在任中は内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない、と規定した。
3・・・妥当ではない
国務大臣は、その在任中内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されません(検察官は刑事事件について公訴できない)。ただし、在任期間が切れると、訴追されます(=訴追の権利は、害されない)(憲法75条)。
その点は、妥当です。しかし、「国務大臣はその在任中(大臣であるときは)逮捕されず」という記述は妥当ではありません。似たようなルールが憲法50条で規定されています。国会議員は原則として国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならないという特権があります(憲法50条)。

この2つとひっかける問題です。

国務大臣は過半数が国会議員であればよいので、国会議員でない可能性もあります。
そのため、「国務大臣はその在任中逮捕されず」という記述は妥当ではありません。

つまり、

  • 国会議員でない大臣の場合(例えば、小泉内閣時代の竹中平蔵)、逮捕はされるけど、検察官による公訴はされない
  • 国会議員である大臣の場合、会期中は、逮捕もされないし、検察官による公訴もされない
4.法律および政令には、その執行責任を明確にするため、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
4・・・妥当
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とします(憲法74条)。
したがって、妥当です。
5.内閣の存立は衆議院の信任に依存するので、内閣は行政権の行使について、参議院に対しては連帯責任を負わない。
5・・・妥当ではない
内閣は、行政権の行使について、国会(衆議院と参議院の両方)に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。
したがって、「内閣は、参議院に対しては連帯責任を負わない」という記述は妥当ではありません。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問4|憲法・経済的自由

次の記述は、ため池の堤とう(堤塘)の使用規制を行う条例により「ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は、ため池の破損、決かい等に因る災害を未然に防止するため、その財産権の行使を殆んど全面的に禁止される」ことになった事件についての最高裁判所判決に関するものである。判決の論旨として妥当でないものはどれか。

  1. 社会生活上のやむを得ない必要のゆえに、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、条例による制約を受忍する責務を負うというべきである。
  2. ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない。
  3. 憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。
  4. 事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切である。
  5. 憲法29条2項は、財産権の内容を条例で定めることを禁じているが、その行使については条例で規制しても許される。

>解答と解説はこちら


【答え】: 5

【解説】

1.社会生活上のやむを得ない必要のゆえに、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、条例による制約を受忍する責務を負うというべきである。
1・・・妥当
判例では、「ため池の保全に関する条例は、ため池の堤とうを使用する権利者に対しては、その使用のほとんどが全面的に禁止されるので、権利に著しい制限を加えるものである。しかし、それは「災害を未然に防止する」という社会生活上のやむを得ない必要からくることであって、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない(受け入れて耐える)責務を負うというべきである」
と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。

2.ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない。
2・・・妥当
判例では、「ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。
3.憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。
3・・・妥当
判例では、
「ため池の堤とうの使用権は、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外(らちがい:枠外)にある。
そして、この使用権を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に牴触またはこれを逸脱するものとはいえない」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。
4.事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切である。
4・・・妥当
判例では、「事柄によっては、特定または若干の地方公共団体の特殊な事情により、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに、その条例で定めることが、容易且つ適切なことがある
本件(奈良県ため池条例事件)のような、ため池の保全の問題は、まさにこの場合に該当するというべきである。」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件全文参照)。
5.憲法29条2項は、財産権の内容を条例で定めることを禁じているが、その行使については条例で規制しても許される。
5・・・妥当ではない
憲法29条2項とは「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定しており、「財産権の内容を条例で定めることを禁じている」とは規定していません。
したがって、妥当ではありません。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問3|憲法

人権の享有主体性をめぐる最高裁判所の判例に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすなど、外国人の地位に照らして認めるのが相当でないと解されるものを除き、外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶ。
  2. 会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。
  3. 公務員は政治的行為を制約されているが、処罰対象となり得る政治的行為は、公務員としての職務遂行の政治的中立性を害するおそれが、実質的に認められるものに限られる。
  4. 憲法上の象徴としての天皇には民事裁判権は及ばないが、私人としての天皇については当然に民事裁判権が及ぶ。
  5. 憲法が保障する教育を受ける権利の背後には、子どもは、その学習要求を充足するための教育を施すことを、大人一般に対して要求する権利を有する、との観念がある。

>解答と解説はこちら


【答え】: 4

【解説】

1.わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすなど、外国人の地位に照らして認めるのが相当でないと解されるものを除き、外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶ。
1・・・妥当
外国人の政治活動の自由が問題となった判例で「外国人の政治活動の自由はわが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等を除き保障される」と判示しています(最大判昭53.10.4:マクリーン事件)。

【具体例】
「わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動」とは、例えば、「外国人が政治家に対して献金をすること」です。

つまり、「外国人が政治家に対して献金をする自由」は例外的に、保障されていません。
外国人が政治家に対して献金をすることで政治家が外国人に有利な政治的意思決定をしかねないからです。
実際、外国人が政治家に対して献金をすることは政治資金規正法で原則禁止されています。

2.会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。
2・・・妥当
判例で「会社も、自然人と同じように、政治的行為をする自由がある」と判示しています(最大判昭45.6.24:八幡製鉄事件)。
3.公務員は政治的行為を制約されているが、処罰対象となり得る政治的行為は、公務員としての職務遂行の政治的中立性を害するおそれが、実質的に認められるものに限られる。
3・・・妥当
判例では、公務員が処罰される対象になる政治的行為は、政治的に中立でなくなる可能性が「実質的に」(実際に)あるものに限られる、と判示しています(最判平24.12.7:堀越事件)。
4.憲法上の象徴としての天皇には民事裁判権は及ばないが、私人としての天皇については当然に民事裁判権が及ぶ。
4・・・妥当ではない
判例では、天皇には民事裁判権が及ばない(民事訴訟の原告や被告にはならない)としています。(最判平元.11.20)
5.憲法が保障する教育を受ける権利の背後には、子どもは、その学習要求を充足するための教育を施すことを、大人一般に対して要求する権利を有する、との観念がある。
5・・・妥当
判例では、「みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる。」と判示しています(最大判昭51.5.21:旭川学力テスト事件全文参照)。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問2|基礎法学

次のア~オの記述と、それらの記述が示す法思想等との組合せとして、最も適切なものはどれか。

ア.法を現実に通用している制定法および慣習法等の実定法とする考え方
イ.人身の自由および思想の自由等の人格的自由とともに経済的自由を最大限に尊重し、経済活動に対する法規制を最小限にとどめるべきであるとする考え方
ウ.事物の本性や人間の尊厳に基づいて普遍的に妥当する法があるとする考え方
エ.法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定されるとし、私有財産制度も普遍的なものではなく、資本主義経済によって生み出されたとする考え方
オ.法制度を経済学の手法を用いて分析し、特に効率性の観点から立法および法解釈のあり方を検討する考え方

  1. ア:パンデクテン法学 イ:リベラリズム ウ:自然法 エ:社会主義法学 オ:利益法学
  2. ア:概念法学 イ:リバタリアニズ ウ:パターナリズム エ:コミュニタリアニズム オ:法と経済学
  3. ア:法実証主義 イ:リベラリズム ウ:善きサマリア人の法 エ:マルクス主義法学 オ:利益法学
  4. ア:概念法学 イ:レッセ・フェール ウ:善きサマリア人の法 エ:コミュニタリアニズム オ:ネオリベラリズム
  5. ア:法実証主義 イ:リバタリアニズム ウ:自然法 エ:マルクス主義法学 オ:法と経済学

>解答と解説はこちら


【答え】: 5

【解説】

ア.法を現実に通用している制定法および慣習法等の実定法とする考え方
ア・・・法実証主義
法実証主義とは、実定法だけを法と認め、実定法の上位に自然法の存在は認めないという考え方です。
つまり、法実証主義は、実定法の上位に自然法の存在を認める自然法論と対立した考え方です。
「実定法」とは、
立法府の制定行為,および慣習,判例などの経験的事実に基づいて成立し,その存立を経験的,歴史的に実証される法を言い、「制定法」および「慣習法」等が実定法です。実証法とも言います。
「自然法」とは、
人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法です。
分かりやすい具体例でいうと、「公序良俗」です。「公序良俗」とは何か、という具体的な定義はなく、概念的な内容です。しかし、判例でもよくあるように、「公序良俗(社会秩序)」を基準に判断して、裁判官の裁量により、判決を下すこともあります。
「概念法学」とは
法規の解釈をする際、法典に欠陥はなく、論理的に完結しているという前提に立って、条文の解釈や運用を論理的に行うことを第一とする考え方です。
そしてこの概念法学は、現実を無視した形式論的な考察態度、いわゆる「机上の空論」を批判していう場合で用いられます。
現実の裁判における基準として機能しない、または機能させることをそもそも考えていないような法的理論に対して向けられることが多いです。
イ.人身の自由および思想の自由等の人格的自由とともに経済的自由を最大限に尊重し、経済活動に対する法規制を最小限にとどめるべきであるとする考え方
イ・・・リバタニアリズム
「リバタニアリズム」とは、
「個人の自由権」と「経済的な自由」を絶対的に重視し、それに制約を加える国家の役割(法規制)を最小限度にとどめようとする考え方です。
言い方を変えると、他者の自由を侵害しない限りにおける、各人の「個人の自由権」と「経済的な自由」を尊重しようとする思想的立場です。
「リベラリズム」とは
人間は理性を持ち、従来の権威から自由であり「自己決定権を持つ」との立場から、
政治的には「政府からの自由」である自由権や個人主義、「政府への自由」である国民主権などの民主主義、
経済的には私的所有権と自由市場による資本主義などの思想や体制の基礎となるものです。
「レッセ・フェール(自由放任主義)」とは
国家による国民経済への統制と干渉を排除して、個人や企業の自由競争にまかせて経済を営むべきであるとする主義で、アダム=スミスの「国富論」でも主張しています。
ウ.事物の本性や人間の尊厳に基づいて普遍的に妥当する法があるとする考え方
ウ・・・自然法
「自然法」とは、
人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法です。
分かりやすい具体例でいうと、「公序良俗」です。「公序良俗」とは何か、という具体的な定義はなく、概念的な内容です。しかし、判例でもよくあるように、「公序良俗(社会秩序)」を基準に判断して、裁判官の裁量により、判決を下すこともあります。
「パターナリズム」とは
強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためを思って、弱い立場にある者の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいいます。
親が子供のためによかれと思ってすることから来ています。
「善きサマリア人の法」とは、
災難に遭った人や急病人等の「窮地の人」を救うために「無償で善意の行動」をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ「失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法である。
誤った対応をして訴えられたり、処罰を受けたりする恐れをなくして、その場に居合わせた人による傷病者の救護を促進しよう、との意図があります。
※「善きサマリア人」は聖書に出てくる内容です。
エ.法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定されるとし、私有財産制度も普遍的なものではなく、資本主義経済によって生み出されたとする考え方
エ・・・マルクス主義法学
「マルクス主義法学」とは、簡単に言えば、
経済状況(生産諸要素および経済的構造)である「下部構造」と、
思想や政治、法律などの「上部構造」に分けて
上部構造は下部構造によって決まってくる
つまり、法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定される
という考え方です。
「社会主義法」とは、社会主義体制の国で採られる法制度の総称である。
大陸法圏に属するソビエト連邦法及びこれを参考とした他の社会主義国の法です。
「コミュニタリアニズム」とは
共同体(コミュニティ)の価値を重んじる政治思想で、歴史的に形成されてきた共同体の伝統の中でこそ個人は人間として完成され、生きていけるという考え方です。
「リベラリズムやリバタリアニズム」が個人を優先するのに対し、
「コミュニタリアニズム」は共同体が優先する考え方です。
オ.法制度を経済学の手法を用いて分析し、特に効率性の観点から立法および法解釈のあり方を検討する考え方
オ・・・法と経済学
「法と経済学」とは、
経済学の観点および手法を利用して、法的理論を分析・再解釈する学問を言います。
「利益法学」とは
法の解釈を利益整序の観点から行う法学で
法は、「社会における諸利益に対してどれをいかに保護するかの価値判断を行うもの」という考え方をします。
「ネオリベラリズム(新自由主義)」とは、
政府の規制を緩和・撤廃して民間の自由な活力に任せ成長を促そうとする考え方を言います。
政府の積極的な民間介入に反対し、資本主義下の自由競争秩序を重んじる立場および考え方です。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問1|基礎法学

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

「『犯罪論序説』は[ ア ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。近頃、犯罪としての行為を[ イ ]と[ ウ ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居るが、…(中略)…[ イ ]と[ ウ ]性と責任性を区別せずして犯人の刑事責任を論ずることは、いわば空中に楼閣を描くの類である。私はかように解するから伝統的犯罪理論に従い、犯罪を[ イ ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と見、これを基礎として犯罪の概念構成を試みた。
本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」

以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

  1. ア:罪刑法定主義 イ:構成要件 ウ:違法 エ:瀧川
  2. ア:自由主義 イ:形成要 ウ:相当 エ:矢内原
  3. ア:罪刑専断主義 イ:侵害要件 ウ:違法 エ:澤柳
  4. ア:責任主義 イ:構成要件 ウ:違法エ:矢内原
  5. ア:罪刑法定主義 イ:侵害要件 ウ:必要 エ:瀧川

>解答と解説はこちら


【答え】: 1

【解説】

「『犯罪論序説』は[ ア:罪刑法定主義 ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ:構成要件 ]に該当する[ ウ:違法 ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。近頃、犯罪としての行為を[ イ:構成要件 ]と[ ウ:違法 ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居るが、…(中略)…[ イ:構成要件 ]と[ ウ:違法 ]性と責任性を区別せずして犯人の刑事責任を論ずることは、いわば空中に楼閣を描くの類である。私はかように解するから伝統的犯罪理論に従い、犯罪を[ イ:構成要件 ]に該当する[ ウ:違法 ]・有責の行為と見、これを基礎として犯罪の概念構成を試みた。
本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」

以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ:瀧川 ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ:瀧川 ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

ア.
『犯罪論序説』は[ ア ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。
ア・・・罪刑法定主義
「伝統的犯罪理論」や「犯罪の概念構成」から、アには「罪刑法定主義」が入ることは想像できます。『犯罪論序説』とは、瀧川幸辰(京都大学教授)著の刑法の教科書です。そして、
罪刑法定主義とは、ある行為を犯罪として処罰するためには、事前に法令によって「犯罪とされる行為の内容」、及び「それに対して科される刑罰」を、明確に規定しておかなければならないとする原則を言います。
イ.ウ.
『犯罪論序説』は[ ア:罪刑法定主義 ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。
近頃、犯罪としての行為を[ イ ]と[ ウ ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居る
イ・・・構成要件
ウ・・・違法
刑法学における犯罪は、ドイツの刑法理論を継受する日本においては、
犯罪の成立要件を①構成要件、②違法、③有責の三つの要素に体系化し、
犯罪を「構成要件に該当し違法かつ有責な行為」と定義することが多い。
しかし、他の体系を用いて犯罪を定義する刑法学者もある。
エ.
「・・・本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」
以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。
エ・・・瀧川
1933年、京都大学教授で刑法学者の滝川は、中央大学での講演やその著『刑法読本』の内容が危険思想であるとの理由で問題とされました。
当時の文部大臣鳩山一郎は、京大総長に対し滝川に辞職勧告を行うよう命じ、一方的に滝川を休職処分にしました。
これに対し、京大法学部教授団や学生らが抗議運動を起こしたが、当局の弾圧により、数名の教授はやめさせることなり、また、滝川の『刑法読本』は発売禁止となりました。
これが瀧川事件です。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略