社外取締役に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 社外取締役は、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人を兼任することができない。
- 監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役の過半数は、社外取締役でなければならない。
- 公開会社であり、かつ、大会社である監査役会設置会社であって、発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、1名以上の社外取締役を選任しなければならない。
- 株式会社が特別取締役を選定する場合には、当該株式会社は、特別取締役による議決の定めがある旨、選定された特別取締役の氏名および当該株式会社の取締役のうち社外取締役であるものについては社外取締役である旨を登記しなければならない。
- 株式会社は、社外取締役の当該株式会社に対する責任について、社外取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、当該社外取締役が負う責任の限度額をあらかじめ定める旨の契約を締結することができる旨を定款で定めることができる。
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【答え】:誤りはない(法改正により誤りがなくなってしまいました)
【解説】
1.社外取締役は、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人を兼任することができない。
1・・・正しい
●社外取締役 → 「当該会社またはその子会社」の「業務執行取締役」もしくは「執行役」または「支配人その他の使用人」を兼任することができない
社外取締役とは、「株式会社の取締役」であって、「当該株式会社又はその子会社」の「業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人」でなく、かつ、過去10年以内に「当該株式会社又はその子会社」の「業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人」となったことがないものをいいます(会社法2条1項15号のイ)。したがって、社外取締役は、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人を兼任することができません。上記社外取締役になれない者(兼任できない者)を列挙すると下記の通りです。いずれかに該当すると、社外取締役になれません。
- 当該会社の「業務執行取締役」、「執行役」、「支配人などの使用人」
- 過去10年以内の当該会社の「業務執行取締役」、「執行役」、「支配人などの使用人」
- 子会社の「業務執行取締役」、「執行役」、「支配人などの使用人」
- 過去10年以内の子会社の「業務執行取締役」、「執行役」、「支配人などの使用人」
2.監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役の過半数は、社外取締役でなければならない。
2・・・正しい
●監査等委員会設置会社:監査等委員である取締役の人数は3人以上、過半数は、社外取締役
監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、会社・子会社の業務執行取締役や使用人などと兼任できず(331条3項)、また、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければなりません(同条6項)。
3.公開会社であり、かつ、大会社である監査役会設置会社であって、発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、1名以上の社外取締役を選任しなければならない。
3・・・正しい
●公開会社かつ大会社の監査役会設置会社で、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社 → 社外取締役を置かなければならない
公開会社であり、かつ、大会社である監査役会設置会社であって、発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、1名以上の社外取締役を置く義務があります(会社法327条の2)。
したがって、「1名以上の社外取締役を選任しなければならない」は正しいです。
■「有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社」とは、「株式を証券取引所に上場した会社」および「有価証券届出書を提出した会社」です。イメージとしては、大会社です!
■「有価証券報告書」とは、投資家が投資を行う際に十分投資判断ができるように、事業の状況、財務状態、経営成績などの財務諸表を記載したものです。
4.株式会社が特別取締役を選定する場合には、当該株式会社は、特別取締役による議決の定めがある旨、選定された特別取締役の氏名および当該株式会社の取締役のうち社外取締役であるものについては社外取締役である旨を登記しなければならない。
4・・・正しい
●特別取締役による議決の定めがあるとき → 登記が必要
特別取締役による議決の定めがあるときは、次のことを登記しなければなりません(会社法911条3項21号)。
1.特別取締役による議決の定めがある旨
2.特別取締役の氏名
3.取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
特別取締役による取締役会決議の要件
【指名委員会設置会社では特別取締役による議決の定めをすることができない理由】
指名委員会設置会社については、会社の執行機関として「執行役」が取締役会で選任され、業務執行を決定する権限を、取締役会が大幅に執行役に委任することができます。つまり、この執行役が上記特別取締役と同じ役割を果たします。そのため、指名委員会設置会社では特別取締役による議決の定めをすることができないです。
5.株式会社は、社外取締役の当該株式会社に対する責任について、社外取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、当該社外取締役が負う責任の限度額をあらかじめ定める旨の契約を締結することができる旨を定款で定めることができる。
5・・・正しい
●定款で定めれば、万一、社外取締役が、任務を怠って誰かに損害を与えても、社外取締役自身が取るべき賠償額の上限を、事前に決めておくことができる
株式会社は、「社外取締役、会計参与、社外監査役又は会計監査人(社外取締役等)」の任務懈怠責任について、当該社外取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときの損害賠償の限度額を、社外取締役等と契約締結することができる旨を定款で定めることができます(会社法427条1項)。分かりやすく言えば、定款で定めれば、万一、社外取締役が、任務を怠って誰かに損害を与えても、社外取締役自身が取るべき賠償額の上限を、事前に決めておくことができるということです。
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