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令和5年・2023|問14|行政不服審査法

不作為についての審査請求に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 不作為についての審査請求は、当該処分についての申請をした者だけではなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者もすることができる。
  2. 不作為についての審査請求について理由があり、申請に対して一定の処分をすべきものと認められる場合、審査庁が不作為庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、当該不作為庁に対し当該処分をすべき旨を命じる。
  3. 不作為についての審査請求は、審査請求が濫用されることを防ぐために、申請がなされた日から法定された一定の期間を経過しなければすることができない。
  4. 不作為についての審査請求がなされた場合、審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てによりまたは職権で、裁決が下されるまでの仮の救済として一定の処分をすることができる。
  5. 不作為についての審査請求の審理に際しては、迅速な救済を図るために、審査庁は、審理員を指名して審理手続を行わせるのではなく、審理手続を省いて裁決を下さなければならない。

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【答え】:2

【解説】

1.不作為についての審査請求は、当該処分についての申請をした者だけではなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者もすることができる。

1・・・妥当でない

法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為がある場合には、当該不作為についての審査請求をすることができます(行政不服審査法3条)。つまり、不作為についての審査請求は、処分についての申請をした者だけしか行うことができず「処分がなされることにつき法律上の利益を有する者」は、不作為についての審査請求はできません

2.不作為についての審査請求について理由があり、申請に対して一定の処分をすべきものと認められる場合、審査庁が不作為庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、当該不作為庁に対し当該処分をすべき旨を命じる。

2・・・妥当である

不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言します。この場合において、不作為庁の上級行政庁である審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命じます(行政不服審査法49条3項1号)。

■不作為についての審査請求

審査庁 とるべき措置
不作為庁の上級行政庁 不作為庁に対して、処分すべき旨を命じる
不作為庁 自ら処分をする

 

3.不作為についての審査請求は、審査請求が濫用されることを防ぐために、申請がなされた日から法定された一定の期間を経過しなければすることができない。

3・・・妥当でない

法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為がある場合には、当該不作為についての審査請求をすることができます(行政不服審査法3条)。そして、不作為については、審査請求期間の定めはないので、不作為が続いている限り、いつでも審査請求が可能です。よって、「審査請求が濫用されることを防ぐために、申請がなされた日から法定された一定の期間を経過しなければすることができない」という部分が妥当ではありません。

4.不作為についての審査請求がなされた場合、審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てによりまたは職権で、裁決が下されるまでの仮の救済として一定の処分をすることができる。

4・・・妥当でない

本肢のようなルール(不作為についての審査請求に対する「仮の救済」のルール)は行政不服審査法にはありません。よって妥当ではありません。

5.不作為についての審査請求の審理に際しては、迅速な救済を図るために、審査庁は、審理員を指名して審理手続を行わせるのではなく、審理手続を省いて裁決を下さなければならない。

5・・・妥当でない

本肢のようなルールは行政不服審査法にはありません。よって妥当ではありません。まず、不作為についての審査請求の審理でも、審理員は指名されます(行政不服審査法9条1項)。よって、本肢は妥当ではありません。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問13|行政手続法

行政手続法が定める行政庁等の義務に関する次のア~エの記述のうち、努力義務として規定されているものの組合せとして、正しいものはどれか。

ア.申請者以外の利害を考慮すべきことが法令において許可の要件とされている場合に、公聴会を開催すること

イ.申請に対する処分を行う場合の審査基準を定めて公にしておくこと

ウ.不利益処分を行う場合の処分基準を定めて公にしておくこと

エ.申請に対する処分の標準処理期間を定めた場合に、それを公にしておくこと

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:1(ア・ウが努力義務)

【解説】

ア.申請者以外の利害を考慮すべきことが法令において許可の要件とされている場合に、公聴会を開催すること

ア・・・努力義務である

行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければなりません(行政手続法10条)。つまり、公聴会の開催は、努力義務です。

イ.申請に対する処分を行う場合の審査基準を定めて公にしておくこと

イ・・・法的義務である

行政庁は、審査基準を定めるものとされています(行政手続法5条1項)。つまり、審査基準を定めることは法的義務です。また、行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければなりません(行政手続法5条3項)。つまり、審査基準を原則、公にしておくことも法的義務です。

ウ.不利益処分を行う場合の処分基準を定めて公にしておくこと

ウ・・・努力義務である

行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければなりません(行政手続法12条1項)。つまり、不利益処分を行う場合の「処分基準を定めること」及び「処分基準を公にしておくこと」は努力義務です。

エ.申請に対する処分の標準処理期間を定めた場合に、それを公にしておくこと

エ・・・法的義務である

行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません(行政手続法6条)。つまり、申請に対する処分の標準処理期間を定めることは努力義務ですが、申請に対する処分の標準処理期間を定めた場合に、それを公にしておくことは法定義務です。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問12|行政手続法

行政手続法の定める聴聞に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 聴聞の当事者または参加人は、聴聞の終結後であっても、聴聞の審理の経過を記載した調書の閲覧を求めることができる。
  2. 聴聞の当事者および参加人は、聴聞が終結するまでは、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
  3. 当事者または参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、証拠書類等を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。
  4. 当事者または参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書および証拠書類等を提出することができる。
  5. 当事者または参加人が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、陳述書等を提出しない場合、主宰者は、当事者に対し改めて意見を述べ、証拠書類等を提出する機会を与えなければならない。

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【答え】:5
【解説】

1.聴聞の当事者または参加人は、聴聞の終結後であっても、聴聞の審理の経過を記載した調書の閲覧を求めることができる。

1・・・正しい

当事者又は参加人は、「聴聞調書」及び「聴聞の終結後に作成される報告書の閲覧を求めることができます(行政手続法24条4項)。報告書は、聴聞終結後に作成されるものなので、聴聞終結後に閲覧できないとなると、閲覧できるときはなくなってしまいます。当然、聴聞終結後に見れないと意味がありません。よって、本肢は正しいです。なお、聴聞調書と報告書について、閲覧期限は行手法に規定はないので、閲覧期限はありません。

2.聴聞の当事者および参加人は、聴聞が終結するまでは、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。

2・・・正しい

当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料閲覧を求めることができます(行政手続法18条1項前段)。本肢は正しいです。

3.当事者または参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、証拠書類等を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。

3・・・正しい

当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、①意見を述べ、及び②証拠書類等を提出し、並びに③主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができます(行政手続法20条2項)。よって、本肢は正しいです。

4.当事者または参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書および証拠書類等を提出することができる。

4・・・正しい

当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。(行政手続法21条1項)。よって、正しいです。

5.当事者または参加人が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、陳述書等を提出しない場合、主宰者は、当事者に対し改めて意見を述べ、証拠書類等を提出する機会を与えなければならない。

5・・・誤り

主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく聴聞を終結することができます(行政手続法23条1項)。本肢は「当事者に対し改めて意見を述べ、証拠書類等を提出する機会を与えなければならない」となっているので誤りです。当事者に対し改めて意見を述べる機会を与える必要もなければ、証拠書類等を提出する機会も与える必要もありません。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問11|行政手続法

行政手続法(以下「法」という。)の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 法の規定において用いられる「法令」とは、法律及び法律に基づく命令のみを意味し、条例及び地方公共団体の執行機関の規則はそこに含まれない。
  2. 特定の者を名あて人として直接にその権利を制限する処分であっても、名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分は、法にいう不利益処分とはされない。
  3. 法の規定が適用される行政指導には、特定の者に一定の作為または不作為を求めるものに限らず、不特定の者に対して一般的に行われる情報提供も含まれる。
  4. 行政指導に携わる者が、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならないのは、法令に違反する行為の是正を求める行政指導をする場合に限られる。
  5. 行政機関が、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ行政上特別の支障がない限りこれを公表しなければならないのは、根拠となる規定が法律に置かれている行政指導をしようとする場合に限られる。

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【答え】:2

【解説】

1.法の規定において用いられる「法令」とは、法律及び法律に基づく命令のみを意味し、条例及び地方公共団体の執行機関の規則はそこに含まれない。

1・・・妥当でない

法令とは、「法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む)を言います(行政手続法2条1号)。つまり、法律及び法律に基づく命令のみを意味するのではなく、条例及び地方公共団体の執行機関の規則も含まれます。よって、本肢は妥当ではありません。

2.特定の者を名あて人として直接にその権利を制限する処分であっても、名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分は、法にいう不利益処分とはされない。

2・・・妥当

不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいうのですが、例外として、名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分は除かれます(行政手続法2条4号ハ)。したがって、特定の者を名あて人として直接にその権利を制限する処分であっても、名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分は、行政手続法にいう不利益処分とはされないので妥当です。

不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く
イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分 ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

3.法の規定が適用される行政指導には、特定の者に一定の作為または不作為を求めるものに限らず、不特定の者に対して一般的に行われる情報提供も含まれる。

3・・・妥当でない

行政指導とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいいます(行政手続法2条6号)。つまり、行政指導には、不特定の者に対して一般的に行われる情報提供は含まれません。よって、妥当ではありません。

4.行政指導に携わる者が、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならないのは、法令に違反する行為の是正を求める行政指導をする場合に限られる。

4・・・妥当でない

行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければなりません(行政手続法35条1項)。これは、「法令に違反する行為の是正を求める行政指導をする場合に限られない」ので本肢は妥当ではありません。

「法令に違反する行為の是正を求める行政指導以外」の行政指導とは、例えば、勧告です。法令には違反していないけれども、こうしてくれないかな?とお願いをするイメージです。勧告には法的拘束力はないので、勧告に従わなくても罰則はありません。

5.行政機関が、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ行政上特別の支障がない限りこれを公表しなければならないのは、根拠となる規定が法律に置かれている行政指導をしようとする場合に限られる。

5・・・妥当でない

同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければなりません(行政手続法36条)。したがって、根拠となる規定が法律に置かれている行政指導をしようとする場合に限られない」ので本肢は妥当ではありません。

条例に基づく行政指導であっても、同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政指導指針を定めて、原則、公表しなければなりません。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問10|行政法

在留期間更新の許可申請に対する処分に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例(マクリーン事件判決〔最大判昭和53年10月4日民集32巻7号1223頁〕)に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.在留期間更新の判断にあたっては、在留規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持など国益の保持の見地のほか、申請者である外国人の在留中の一切の行状を斟酌することはできるが、それ以上に国内の政治・経済・社会等の諸事情を考慮することは、申請者の主観的事情に関わらない事項を過大に考慮するものであって、他事考慮にも当たり許されない。

イ.在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無にかかる裁量審査においては、当該判断が全く事実の基礎を欠く場合、または事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により当該判断が社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の逸脱、濫用として違法とされる。

ウ.在留期間更新の法定要件である「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかに関する判断について、処分行政庁(法務大臣)には裁量が認められるが、もとよりその濫用は許されず、上陸拒否事由または退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることはできない。

エ.外国人の在留期間中の政治活動について、そのなかに日本国の出入国管理政策や基本的な外交政策を非難するものが含まれていた場合、処分行政庁(法務大臣)がそのような活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の逸脱、濫用には当たらない。

オ.外国人の政治活動は必然的に日本国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすものであるから、そもそも政治活動の自由に関する憲法の保障は外国人には及ばず、在留期間中に政治活動を行ったことについて、在留期間の更新の際に消極的事情として考慮することも許される。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:3(イ・エが妥当)

【解説】

ア.在留期間更新の判断にあたっては、在留規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持など国益の保持の見地のほか、申請者である外国人の在留中の一切の行状を斟酌することはできるが、それ以上に国内の政治・経済・社会等の諸事情を考慮することは、申請者の主観的事情に関わらない事項を過大に考慮するものであって、他事考慮にも当たり許されない。

ア・・・妥当でない

判例(最大判昭53.10.4)によると「法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたっては、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立って、申請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情を斟酌(しんしゃく)し、時宜に応じた的確な判断をしなければならない」と判示しています。よって、本肢の「国内の政治・経済・社会等の諸事情を考慮することは、申請者の主観的事情に関わらない事項を過大に考慮するものであって、他事考慮にも当たり許されない」という記述が妥当ではありません。
※ 斟酌(しんしゃく):相手の事情や心情をよくくみとること

イ.在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無にかかる裁量審査においては、当該判断が全く事実の基礎を欠く場合、または事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により当該判断が社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の逸脱、濫用として違法とされる。

イ・・・妥当

判例(最大判昭53.10.4)によると「裁判所は、法務大臣の判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するにあたっては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。」と判示しています。そのため、「当該判断が全く事実の基礎を欠く場合」、または「事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により当該判断が社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くことが明らかである場合」に限り、裁量権の逸脱、濫用として違法とされます。よって、本肢は妥当です。

ウ.在留期間更新の法定要件である「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかに関する判断について、処分行政庁(法務大臣)には裁量が認められるが、もとよりその濫用は許されず、上陸拒否事由または退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることはできない。

ウ・・・妥当でない

【前半部分】 出入国管理令では、「在留期間の更新については、法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可できる」としています。そのため、更新事由の判断を、法務大臣の裁量に任せて、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨であると解されます。したがって、外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められます(最大判昭53.10.4)。よって、前半部分は妥当です。

【後半部分】 その濫用は許されないが「上陸拒否事由または退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることはできない。」というのは妥当ではありません。上陸拒否事由や退去強制事由に準じる事由に該当しなくても、裁量権の濫用がなければ、更新申請を不許可にできます

エ.外国人の在留期間中の政治活動について、そのなかに日本国の出入国管理政策や基本的な外交政策を非難するものが含まれていた場合、処分行政庁(法務大臣)がそのような活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の逸脱、濫用には当たらない。

エ・・・妥当

判例(最大判昭53.10.4)の事案では、法務大臣が、外国人の政治活動を斟酌して、「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえない」と判断し、更新不許可の処分を下しました。この処分は「裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない」として、違法ではないと判示しています。したがって、本肢の通り「外国人の在留期間中の政治活動について、そのなかに日本国の出入国管理政策や基本的な外交政策を非難するものが含まれていた場合、処分行政庁(法務大臣)がそのような活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の逸脱、濫用には当たらない」ので、妥当です。

オ.外国人の政治活動は必然的に日本国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすものであるから、そもそも政治活動の自由に関する憲法の保障は外国人には及ばず、在留期間中に政治活動を行ったことについて、在留期間の更新の際に消極的事情として考慮することも許される。

オ・・・妥当でない

判例(最大判昭53.10.4)によると、「原則、外国人にも政治活動の自由を認めており、例外として、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動などは、政治活動の自由の保障は及ばない」としています。したがって、本肢の「そもそも政治活動の自由に関する憲法の保障は外国人には及ばず」が妥当ではありません。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問9|行政法

行政上の法律関係に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている。

イ.未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わない。

ウ.食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではない。

エ.法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:3(イ・ウが妥当)

【解説】

ア.社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている。

ア・・・妥当でない

判例(最判平15.9.4)によると「労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である」と判示しています。よって、本肢の「社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、もっぱら契約によるものとされている」という記述は妥当ではありません。

イ.未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わない。

イ・・・妥当

判例(最判平28.4.21)によると、「国は、拘置所に収容された被勾留者に対して、信義則上の安全配慮義務を負わないというべきである」と判示しています。よって、妥当です。

未決勾留とは、まだ裁判が終了していない被告人や容疑者が、裁判の進行中に拘束されている状態を指します。つまり、まだ裁判が行われていない段階で、裁判所や警察などの権限を持つ機関によって拘束することを言います。そして、被勾留者とは、未決勾留より拘束された者(拘置所に収容された者)を言います。

ウ.食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではない。

ウ・・・妥当

判例(最判昭35.3.18)によると、「本件売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとして、食品衛生法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、食品衛生法により本件取引の効力が否定される理由はない」としています。よって、本肢の場合、食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行ったときであっても、当該販売にかかる売買契約が当然に無効とはなりません。売買契約は、有効です。よって。本肢は妥当です。

エ.法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない。

エ・・・妥当でない

判例(最判昭62.10.30)によると、「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課稅処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである」と判示しています。よって、本肢の場合、信義誠実の原則は、租税法律関係に適用される余地があるので妥当ではありません。

つまり、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて(免除して)納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限って、信義則に反して、課税処分が違法となるということです。

【分かりやすくいうと】

他の納税者との間の平等・公平を犠牲にしたとしても、処分を受けた者を保護する必要性がある場合に限って、信義則違反として課税処分が違法となるということ。

つまり、「信義誠実の原則は、租税法律主義が妥当する(使われる)租税法律関係についても適用される場合もある」ので妥当ではないです。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問8|行政法

行政行為の瑕疵に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。

イ.普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。

ウ.複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。

エ.行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。

オ.更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:3

【解説】

ア.ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。

ア・・・妥当でない

【違法行為の転換とは】
ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたときは、これを後者の行為として扱うことが許されることがあります。これを「違法行為の転換」といいます。
本肢は「新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない」が妥当ではありません。「後者の行為(別の行為)として扱うことが許されます」。

イ.普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。

イ・・・妥当である

①普通地方公共団体の長Aに対する解職請求の結果、解職が認められた。
②その後、後任の長Bが行政処分(村と奈良市の合併に関する処分)を行った。
③しかし、その後、①の長Aに対する解職請求についての投票結果が無効とされた。
この場合、「たとえ賛否投票の効力の無効が宣言されても、賛否投票の有効なことを前提として、それまでの間になされた後任村長の行政処分は無効となるものではないと解すべきである」としています(最大判昭36.12.7)。よって、本肢の場合、前任の長Aの解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長Bの行政処分は、当然に無効となるものではないので妥当です。

ウ.複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。

ウ・・・妥当でない

【違法性の承継とは】
複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において、先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることを「違法性の承継」といいます。よって、「先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになる(反することになる)ので許されることはない。」というのは妥当ではありません。

【具体例】 例えば、ある都市計画に基づいて建設される予定の公共施設の計画について、都市計画(先行行為)が行われ、建設のための用地の取得手続き(後行行為)が行われたとします。しかし、後になって、都市計画行為に違法性があることが判明し、その都市計画行為(先行行為)が取り消されることになった。この場合、先行行為として行われた都市計画行為が違法であることが判明したため、その後行行為である用地の取得手続きも違法とみなされる可能性があります。そして、用地の取得手続きが違法であることを理由に、後行行為である用地の取得の取消しを求める訴訟が起こされることがあります。

エ.行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。

エ・・・妥当でない

行政行為の瑕疵を理由とする取消しについては、「取消訴訟」や「行政上の不服申立てによる争訟取消し」、「職権取消し」の場合も、当該行政行為は、行為時当初に通って効力を失います。

職権取消しとは、上級行政庁や処分庁など行政機関が職権で行政行為を取り消すことを言います。

行政上の不服申立てによる争訟取消しとは、審査請求が行われて、裁決によって取り消すことを言います。

行政行為の瑕疵とは、行政機関が法律や規則に違反して行ったり、不適切な理由に基づいて行ったりした場合の欠陥や不備のことを指します。
【具体例】 例えば、行政手続法や地方自治法に基づく手続きが適切に行われなかった場合です。もっと具体的に言えば「公告期間が不足していた場合」等です。

オ.更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。

オ・・・妥当である

株式会社Xは青色申告の承認を受けたが、税務署長Yから増額更正(更正処分)を受けた。更正通知書には増額の理由が簡単に記載されていたが、詳細が欠けていた。Xは、国税局長(上級行政庁)に審査請求したが、国税局長は、裁決書に、処分の具体的根拠が明らかにした。この事案において、判例(最判昭47.12.5)によると、「更正処分で、理由が書かれていなかった不備(瑕疵)は、裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、当該不備(瑕疵)は治癒されない」と判示しています。よって、妥当です。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問7|憲法・財政

財政に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 国会が議決した予算の公布は、法律、政令、条約などの公布と同様に、憲法上、天皇の国事行為とされている。
  2. 国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もあるが、現行法には、予算の増額修正を予想した規定が置かれている。
  3. 予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる。
  4. 皇室の費用はすべて、予算に計上して国会の議決を経なければならないが、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合には、国会の議決に基く必要はない。
  5. 国の収入支出の決算は、内閣が、毎年そのすべてについて国会の承認の議決を得たうえで、会計検査院に提出し、その審査を受けなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】

1.国会が議決した予算の公布は、法律、政令、条約などの公布と同様に、憲法上、天皇の国事行為とされている。

1・・・妥当でない

「憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること」は天皇の国事行為とされています(憲法7条一号)。この中に「国会が議決した予算の公布」は含まれていません。そのほか「国会が議決した予算の公布が天皇の国事行為である」旨の規定はないため、本肢は妥当ではありません。

2.国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もあるが、現行法には、予算の増額修正を予想した規定が置かれている。

2・・・妥当

国会法57条の3には「各議院又は各議院の委員会は、予算総額の増額修正、委員会の提出若しくは議員の発議にかかる予算を伴う法律案又は法律案に対する修正で、予算の増額を伴うもの若しくは予算を伴うこととなるものについては、内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。」と規定しています。つまり、この条文から予算の増額修正を予想した規定が置かれていることが分かります。また、「国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もある」という記述も妥当です。

3.予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる。

3・・・妥当でない

「予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合でも、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる」わけではありません。よって妥当ではありません。予算が成立したとしても、その予算の支出について根拠となる法律が制定されていない場合、内閣は予算を執行することができません

【理由】 なぜなら、予算の支出は法的な根拠がなければ行うことができないからです。法律がなければ、予算を執行するための具体的な手続きや条件が定められていないため、支出の正当性や適法性が保証されません。 したがって、内閣は予算案が成立する際に、予算の支出に関する法律を同時に制定する必要があります。この法律には、予算の使途や条件、支出の範囲などが明確に定められます。

【具体例】 例えば、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」です。補助金について予算が成立しても、執行するための法律がなければ執行できません。そのため、上記のような法律を作って、予算が正しくかつ適法に執行されるようにします。

4.皇室の費用はすべて、予算に計上して国会の議決を経なければならないが、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合には、国会の議決に基く必要はない。

4・・・妥当でない

【前半部分】 憲法88条には「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。」と規定しています。よって、前半部分は妥当です。

【後半部分】 憲法8条には「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。」と規定しています。そのため、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合にも、国会の議決に基く必要があります。よって、後半部分が妥当ではないので、本肢は妥当ではありません。

5.国の収入支出の決算は、内閣が、毎年そのすべてについて国会の承認の議決を得たうえで、会計検査院に提出し、その審査を受けなければならない。

5・・・妥当でない

憲法90条には「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」と規定しています。つまり、順番としては「会計検査院が検査」→「内閣が国会に報告・提出」です。本肢は「国会の承認の議決」→「会計検査院に提出し、審査」と順番になっています。順番が違うので妥当ではありません。なお、90条には「国会に提出しなければならない」とまでしか規定していませんが、毎年度の決算は、内閣から衆議院、参議院の両院に同時に提出され、それぞれの院で審査されます。そのため、「両院での審査」も必要となります。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問6|憲法

国政調査権の限界に関する次の文章の趣旨に照らして、妥当でないものはどれか。

ところで司法権の独立とは、改めていうまでもなく、裁判官が何らの「指揮命令」に服さないこと、裁判活動について何ら職務上の監督を受けないことを意味するが、単に「指揮命令」を禁止するにとどまらず、その実質的な意義は、身分保障その他、裁判官の内心における法的確信の自由な形成をつねに担保することにある。司法権の独立が、・・・(中略)・・・、「あらゆる現実の諸条件を考えた上で、社会通念上、裁判官が独立に裁判を行うことに対して、事実上重大な影響をおよぼす可能性ある行動」を排斥するのは、かような趣旨にもとづくものといえよう。その結果、第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止されるのみならず、第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されないという原則が要請される。

(出典 芦部信喜「憲法と議会政」から)

  1. 議院が刑事事件について調査する際には、その経済的・社会的・政治的意義などを明らかにすることで立法や行政監督に資する目的などで行われるべきである。
  2. 裁判への干渉とは、命令によって裁判官の判断を拘束することを意味するから、議院による裁判の調査・批判は何らの法的効果を持たない限り司法権の独立を侵害しない。
  3. 議院の国政調査権によって、裁判の内容の当否につきその批判自体を目的として調査を行うことは、司法権の独立を侵害する。
  4. 刑事裁判で審理中の事件の事実について、議院が裁判所と異なる目的から、裁判と並行して調査することは、司法権の独立を侵害しない。
  5. 議院の国政調査権によって、裁判所に係属中の事件につき裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査することは許されない。

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【答え】:2

【解説】

ところで司法権の独立とは、改めていうまでもなく、裁判官が何らの「指揮命令」に服さないこと、裁判活動について何ら職務上の監督を受けないことを意味するが、単に「指揮命令」を禁止するにとどまらず、その実質的な意義は、身分保障その他、裁判官の内心における法的確信の自由な形成をつねに担保することにある。司法権の独立が、・・・(中略)・・・、「あらゆる現実の諸条件を考えた上で、社会通念上、裁判官が独立に裁判を行うことに対して、事実上重大な影響をおよぼす可能性ある行動」を排斥するのは、かような趣旨にもとづくものといえよう。その結果、第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止されるのみならず、第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されないという原則が要請される。

(出典 芦部信喜「憲法と議会政」から)

1.議院が刑事事件について調査する際には、その経済的・社会的・政治的意義などを明らかにすることで立法や行政監督に資する目的などで行われるべきである。

1・・・妥当

問題文に「第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止される」と書いてあるので、議院(立法権)が刑事事件について調査する場合、現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉をすることは許されません、しかし、立法や行政監督に資する目的などで行われるのであれば、これは、裁判所に対する干渉は行っていないので、可能です。そして、その場合、経済的・社会的・政治的意義などを明らかにした上で行われるべきです。

立法・行政が、裁判に干渉することは禁止される、ということなので、調査をする際はそれ以外の目的(例:その事件の経済的意義などを明らかにする)で行われる必要があります。

2. 裁判への干渉とは、命令によって裁判官の判断を拘束することを意味するから、議院による裁判の調査・批判は何らの法的効果を持たない限り司法権の独立を侵害しない。

2・・・妥当ではない

裁判への干渉とは、命令によって裁判官の判断を拘束することを意味します。この点は妥当です。そして、問題文に「第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されない」と書いてあるので、議院による裁判の調査・批判は、何らの法的効果を持たなくても、司法権の独立を侵害するので、許されません。よって、妥当ではありません。

3.議院の国政調査権によって、裁判の内容の当否につきその批判自体を目的として調査を行うことは、司法権の独立を侵害する。

3・・・妥当

問題文に「第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されない」と書いてあるので、他の国会機関である「議院」が、判決の内容を批判することは許されません。今回、選択肢には、「裁判の内容の当否につきその批判自体を目的」としているので、司法権の独立を侵害します。

4.刑事裁判で審理中の事件の事実について、議院が裁判所と異なる目的から、裁判と並行して調査することは、司法権の独立を侵害しない。

4・・・妥当

議院が、裁判所と「異なる目的」で調査するのであれば、裁判に干渉しているわけではないので、司法権の独立を侵害しません。

5.議院の国政調査権によって、裁判所に係属中の事件につき裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査することは許されない。

5・・・妥当

問題文に「第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止される」と書いてあるので、「議院の国政調査権によって、裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査する」ということは、「訴訟手続への干渉」に当たります。そのため議院の国政調査権によって、裁判所に係属中の事件につき裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査することは許されません。よって、妥当です。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問5|憲法

罷免・解職に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。
  2. 議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。
  3. 閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。
  4. 最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。
  5. 裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。

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【答え】:3
【解説】

1.衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。

1・・・妥当でない

国会法109条の2によると、衆議院や参議院の比例代表選挙において、政党が名簿を提出して選挙に参加し、その名簿から当選した議員が、除名や離党などの事由によってその政党に所属しなくなった場合でも、他の政党に所属しなかった場合、当該議員は当選を失わないとされています。よって、本肢は妥当でないです。

国会法109条の2では、衆議院や参議院の比例代表選挙で政党名簿から当選した議員が、離党して、他の政党に所属した場合当選を失うとしています。

(※)他の政党とは、その比例代表選挙で、名簿を届け出た他の政党を指します。

2.議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。

2・・・妥当でない

議員の資格争訟の裁判は、両議院に認められた権能です(憲法55条)。本肢は「国権の最高機関である国会に認められた権能」となっているので妥当ではありません。

なお、資格争訟の裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない点は正しいです。

憲法55条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。

3.閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。

3・・・妥当である

内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。そのため、閣議による内閣の意思決定は、慣例上、全員一致で行うものとされてきました。そして、内閣総理大臣は任意に大臣を罷免することができるため(憲法68条2項)、衆議院の解散の決定に反対する大臣がいる場合、内閣総理大臣は、その大臣を罷免して、内閣としての意思決定を行うことになります。

4.最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。

4・・・妥当でない

最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されます(憲法79条2項)。しかし、その後、最高裁判所の「長官に任命」された場合に、任命後最初の衆議院議員総選挙で、「長官として改めて国民審査」を受けるわけではありません。よって、妥当ではないです。

憲法79条2項 
最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。

5.裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。

5・・・妥当でない

裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾(弾劾裁判)によらなければ罷免されません(憲法78条)。

したがって、裁判官は、心身の故障のために職務を執ることができないと決定があれば、公の弾劾によらずに罷免されます。よって、本肢は「裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず」が妥当ではないです。

また、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決で、著しい非行があった裁判官を懲戒免職することはできません。この点も妥当ではありません。著しい非行があった裁判官についても、国会に設けられた弾劾裁判によって罷免するどうか決めます。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略