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行政行為の「取消し」と「撤回」の違い

取消しと撤回の違い

行政行為の取消しは、行政行為の成立当初から瑕疵があり、その瑕疵を理由として、行政行為がなされた時にさかのぼって、その効力を失われることです。例えば、不正手段を使って行政書士の登録を受けた場合、行政庁が登録した(行政行為の)時点で、すでに瑕疵があると言えます。そのため、その後、不正手段を行政庁が知った場合、登録を取り消さなければなりません。これは「取消し」です。

一方、行政行為の撤回は、成立当時は瑕疵はなく、その後の瑕疵によって、将来に向かって効力を失わせることです。例えば、行政書士の登録は正当な手段で受けたが、その後、強盗を行い、懲役刑を受けた場合、登録消除処分の対象となります。この場合、当初の行政書士の登録に瑕疵はなかったが、その後、懲役刑を受けることが瑕疵が生じ、登録取り消しとなります。これを法律上「撤回」と言います。「取消し」という文言があっても「撤回」になるので注意しましょう。

原因 効力
取消し 成立時に瑕疵 遡及的に効力消滅
撤回 成立後に瑕疵 将来に向かって効力消滅

行政行為の取消し

そもそも、行政行為が行われると、たとえ違法な行政行為であっても、取消しされるまで一応有効なものとして扱われます。これを「公定力」と言います。

行政行為の取消には、職権取消し争訟取消しの2つがあります。

職権取消し

職権取消しとは、行政行為の相手方からの取消しの主張を待たずに、行政庁が、違法又は不当であることを理由に行政庁自ら取り消しをすることです。上記事例でも解説しましたが、例えば、不正手段を使って行政書士の登録の申請を受けて、その不正を見抜けずに行政庁が登録の処分を下したとします。その後、「この登録は不正だ!」と見抜いて、「この登録は違法だったので、登録を取り消します!」というのが職権取消しです。

争訟取消し

争訟取消しとは、行政処分に対して、不服がある場合、審査請求や取消訴訟を行うことができます。これにより、審査庁や裁判所が取消しをすることを争訟取消しと言います。例えば、行政書士の登録を受けた者が、不正手段を理由に取り消し(職権取消し)をされ、その取消し処分に対して、「この取消処分はおかしい!取消処分を取り消せ!」と取消訴訟を行い、裁判所が、「この者は不正をしていない!だから取消処分は取消しなさい!」といった場合が争訟取消しです。

実際、行政書士試験では、上記2つの違いについては出題される可能性は低いので参考程度でよいでしょう。これより下の内容についても、判例だけ押さえておけば大丈夫でしょう!

取消しをする際の法律の根拠

行政庁が取消しを行う場合、法律の特別な根拠は不要です。なぜなら、行政行為の取消は、違法な行政行為の効力を失わせる行為であり、そもそも、取消さなければならないものだからです

ただし、授益的行政行為を取消すことは、相手方に対して大きな不利益を与える可能性があります。
例えば、営業許可を受けた後に飲食店の営業を準備のために色々機材を購入したにも関わらず、営業許可が突然取消されたら大きな損害を受けます。

そのため、授益的行政行為(相手に権利利益を与える行為)の職権取消しは一定の制限があります。

取消権者

取消権者とは、取消しすることができる者(職権取消しの権限を持つ者)を言います。そして、職権取消しの権限を持つのは、処分庁上級行政庁(処分庁を監督する行政庁)です。

職権取消しの制限(職権取消しは自由にできるか?)

  1. 不可変更力がある行政行為の職権取消しはできない
    不服申立てに対する裁決には、不可変更力が働きます。そのため、裁決した行政庁自身は職権取消しができません
    ※この点は行政不服審査法を勉強してから理解すれば大丈夫です!
  2. 侵害的行政行為の職権取消しは、自由に行える
    侵害的行政行為とは、私人の権利を侵害する行為で、例えば、Aさんの行政書士の登録を取り消す行為です。この取消し行為(取消処分)を職権取消しすることは、Aさんにとっては、不利益にはなりません。むしろ、利益です。そのため、自由に行えます。
  3. 授益的行政行為の職権取消しは、慎重な判断が必要
    授益的行政行為とは、私人に利益を与える行為です。例えば、Bさんに対する生活保護の支給決定処分です。これを取り消すとなると、Bさんは不利益を受けます。そのため、この支給決定処分を取り消す場合、慎重な判断が必要となります。慎重な判断とは、処分を取り消すだけの公益上必要性がある場合や、生活保護の申請内容に不正があったなどの場合です。

行政行為の取消しに関する判例

  • 処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては、みずからその違法または不当を認めて、処分の取消しによって生じる不利益と、取消しをしないことによってかかる処分に基づきすでに生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、しかもその処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときに限り、これを取り消すことができる。(最判昭43.11.7:農地の買収売渡計画職権取消し)

行政行為の撤回

撤回をする際の法律の根拠

行政庁が撤回を行う場合、法律の特別な根拠は不要です(最判昭63.6.17)。なぜなら、撤回の原因は、私人にあるため、それを理由に撤回することは私人の権利の侵害には当たらないからです。例えば、運転免許をCさん与えて、その後、Cさんが、飲酒運転を行って運転免許の取消し(撤回)を行う場合、撤回するかどうか行政庁の裁量によります。法律に飲酒運転をした場合、撤回しなければならないと規定されていなくても、撤回をすることができます。もちろん、ほんのちょっとの飲酒で捕まえたとしても、それだけで撤回というのは厳しすぎるので、そういった場合は、免許取消ではなく、罰金くらいでしょう。つまり、比例原則は適用されます。

撤回権者

撤回権者とは、撤回することができる者(撤回できる権限を持つ者)を言います。そして、撤回権者は、処分庁のみです。

撤回の制限(撤回は自由にできるか?)

撤回の場合も、職権取消しと同じように、不可変更力がある行政行為は撤回できません。」「侵害的行政行為の場合、自由に撤回できます。」一方、「授益的行政行為の撤回は、原則、できません。

行政行為の撤回に関する判例

  • 【要旨】都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向つて取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。【判決理由】使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。(最判昭49.2.5:撤回にかかる損失補償の要否)

行政手続法14条:不利益処分の理由の提示

行政庁が不利益処分をする場合、原則、その名あて人に対し、同時に不利益処分を行う理由を示さなければなりません
ただし、例外として、処分をすべき差し迫った必要がある場合は、「処分と同時に」理由を示すことは不要です。

もっとも、上記処分をすべき差し迫った必要がある場合でも、原則、処分後相当の期間内に、不利益処分の理由を示さなければなりません
名あて人の所在が判明しなくなったときは、理由を示すことができないので、理由を示す必要はありません

そして、不利益処分を書面で行う場合、理由の提示も書面で行わないといけません。

原則 その名あて人に対し、同時に不利益処分を行う理由を示さなければなりません
例外 処分をすべき差し迫った必要がある場合は、「処分と同時に」理由を示すことは不要
もっとも、処分後相当の期間内に、不利益処分の理由を示さなければならないが
名あて人の所在が判明しなくなったときは、理由を示すことができないので、理由を示す必要はない

行政書士試験におけるポイント

13条の意見陳述の手続き」は、不利益処分前の手続きで
公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、意見陳述のための手続を執ることができないとき、意見陳述(聴聞・弁明の機会)の手続きが不要です。
「14条の不利益処分の理由提示」とは異なり、あとで意見陳述の手続きを取る必要はありません

14条の不利益処分の理由提示」は、上記例外の通り、原則、あとで、不利益処分の理由を示さなければなりません

(不利益処分の理由の提示)
第14条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。

<<行政手続法13条:不利益処分をしようとする場合の手続 | 行政手続法15条:聴聞の通知の方式>>

行政手続法13条:不利益処分をしようとする場合の手続(意見陳述=聴聞・弁明の機会の付与)

行政庁が不利益処分を行おうとする場合、その不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続き(聴聞または弁明の機会の付与)を執らなければなりません。

聴聞と弁明の機会付与の違い

処分内容 審理方法
聴聞 許認可等の取消し
名あて人の資格又は地位のはく奪
役員の解任命令・除名命令等
口頭審理
弁明の機会の付与 上記、聴聞に該当しない不利益処分 書面審理

聴聞が必要な不利益処分

上表の通り、聴聞が必要な不利益処分は下記の3つです。3つ以外にもありますが、行政書士試験では、3つ覚えておけばよいでしょう!

許認可等の取消し

例えば、「宅建業の免許取消処分」「運転免許取消処分」「営業許可取消処分」です。

ちなみに、上記取消し処分はすべて、行政法学上の「撤回」に当たるので、併せて確認しておきましょう!

名あて人の資格又は地位のはく奪

例えば、「帰化をしないで取得した国籍」をはく奪する不利益処分です。日本人父と外国人母との婚姻前に生まれた子は、出生後に,父から認知された場合、一定要件を満たしている場合には,法務大臣に届け出ることによって,日本国籍を取得することができます。この取得した国籍をはく奪する場合、聴聞が必要となります。

役員の解任命令・除名命令

例えば、株式会社A社に対して、「役員Bを解任しなさい!」と命ずる処分をする場合、聴聞が必要となります。

意見陳述の手続きが不要な場合

上記の通り、聴聞や弁明の機会の付与が必要な場合であっても、公益上、緊急に不利益処分をする必要がある場合は、例外的に、意見陳述(聴聞や弁明の機会の付与)の手続きを執らずに、不利益処分をすることができます。

(不利益処分をしようとする場合の手続)
行政手続法第13条 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
一 次のいずれかに該当するとき 聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与

2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。
一 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないとき。
二 法令上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分であって、その資格の不存在又は喪失の事実が裁判所の判決書又は決定書、一定の職に就いたことを証する当該任命権者の書類その他の客観的な資料により直接証明されたものをしようとするとき。
三 施設若しくは設備の設置、維持若しくは管理又は物の製造、販売その他の取扱いについて遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明確にされている場合において、専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足の事実が計測、実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき。
四 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき。
五 当該不利益処分の性質上、それによって課される義務の内容が著しく軽微なものであるため名あて人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを要しないものとして政令で定める処分をしようとするとき。

<<行政手続法12条:処分の基準 | 行政手続法14条:不利益処分の理由の提示>>

行政手続法12条:処分の基準

このページでは、「不利益処分の処分基準」について解説します。

まず、押さえていただきたいのは「不利益処分の定義」です。

>>不利益処分の条文はこちら

不利益処分の処分基準

不利益処分の処分基準は下記のように規定されています。

(処分の基準)
行政手続法第12条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

そして、行政庁が、不利益処分を行う際の基準が「処分基準」です。前に学習した申請に対して許可するのか不許可にするかの基準である「審査基準」と異なるので注意しましょう!

また、行政庁が「処分基準を定めること」および「公にしておくこと」は、努力義務です。つまり、「処分基準を定めなければならない」は誤りですし、「処分基準を公にしておかなければならない」という記述も誤りです。

この点は行政書士試験でも出題されやすいので注意しましょう!

また、処分基準については、できる限り具体的なものとしなければなりません(義務)

この点は「審査基準」も同じです。審査基準についても、できる限り具体的なものとしなければなりません(義務)

行政手続法第2条4号:不利益処分
行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

<<行政手続法11条:複数の行政庁が関与する処分 | 行政手続法13条:不利益処分をしようとする場合の手続>>

行政手続法11条:複数の行政庁が関与する処分

例えば、申請者Aが、X市とY市に関連する申請を行った。X市とY市は互いに、他の行政庁の判断を見て、処分をしようと思い、どちらの処分も遅延することがあると、申請者Aとしては困ります。そのため、他の関連申請が審査中であることを理由に、許認可等を遅延させることをしてはならないとしています。

また、関連する複数の行政庁は、お互いが協力しながら申請に対する審査するよう努力義務としています。

(複数の行政庁が関与する処分)
行政手続法第11条 行政庁は、申請の処理をするに当たり、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることをもって自らすべき許認可等をするかどうかについての審査又は判断を殊更に遅延させるようなことをしてはならない。
2 一の申請又は同一の申請者からされた相互に関連する複数の申請に対する処分について複数の行政庁が関与する場合においては、当該複数の行政庁は、必要に応じ、相互に連絡をとり、当該申請者からの説明の聴取を共同して行う等により審査の促進に努めるものとする。

<<行政手続法10条:公聴会の開催等 | 行政手続法12条:処分の基準>>

行政手続法10条:公聴会の開催等

例えば、原子力発電所の原子炉の設置許可をすると、周辺住民の権利利益に影響を及ぼす場合があります。そういった場合、周辺住民の意見を聴くために、公聴会等を開くよう努力しなければなりません。

努力義務なので、必ずしも公聴会を開く必要はありません。必要に応じて公聴会を開きます。

公聴会とは、意見を聴くための会合・集会のことを言います。

(公聴会の開催等)
行政手続法第10条 行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。

<<行政手続法9条:情報の提供 | 行政手続法11条:複数の行政庁が関与する処分>>

行政手続法9条:情報の提供

国民が、申請を行ったらいつ頃までに処分されるのかを知りたいですよね?

そのため、申請者が「いつまでに処分が下されますか?」と聞くと、行政庁は、「審査がどれくらい進んでいるのか」および「いつごろ処分が下されるのか」を示すよう努力しなければなりません。つまり絶対に示さなければならないわけではないので注意しましょう!=義務ではない。

行政手続法(情報の提供)
第9条 行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。
2 行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない。

<<行政手続法8条:理由の提示 | 行政手続法10条:公聴会の開催等>>

行政手続法8条:理由の提示

行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合原則として、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければなりません
つまり、なぜ、申請が拒否されるのかを申請者に理由を伝える必要があります

ただし、例外として、「許認可の要件や審査基準」が明確で、かつ、申請が、この要件や審査基準に適合しないことが明らかな場合、申請者の求めがあったときにこれを示せば足ります。
言いかえると、適合しないことが明らかなときは、求めがない場合は理由を示さなくてよいです。

そして、拒否する処分を書面で行う場合理由の提示も書面で行わなければなりません。

(理由の提示)
第8条 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。

<<行政手続法7条:申請に対する審査、応答 | 行政手続法9条:情報の提供>>

 

行政手続法7条:申請に対する審査、応答

例えば、あなたが、宅建業の免許の申請を東京都知事に申請した場合、東京都知事は、申請が事務所に到達したら遅滞なく審査をしなければなりません。

審査については、審査基準に基づいて行います。

そして、「申請書の記載事項に不備がない」「法律で定められた期間内に申請された」といった形式上の要件に適合している場合、東京都知事(行政庁)は、審査基準にしたがって、許可や不許可の処分を行います。

一方、上記形式上の要件に適合しない場合、例えば、記載事項に漏れがあったり、添付書類が不足している場合、「相当の期間を定めて当該申請の補正を求めるか」又は「申請を拒否しなければなりません」

申請に対する審査、応答のポイント

  • 行政庁は、申請が事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならない
  • 申請に不備があれば、行政庁は、「補正」or「拒否」を選択して、どちらかを行う

行政手続法と行政不服審査法の補正の違い

行政手続法 補正を求めるもしくは申請拒否
行政不服審査法 相当期間を定め補正を命じなければならない(行政不服審査法23条

(申請に対する審査、応答)
第7条 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

<<行政手続法6条:標準処理期間 | 行政手続法8条:理由の提示>>

行政手続法6条:標準処理期間

ここで解説する標準処理期間とは、行政庁が申請を受けて(申請が事務所に到達して)から、許可・不許可の処分を下すまでの期間のことです。

そして、行政手続法では、次の内容がポイントとして行政書士試験で問われます。

申請に対する処分を下すまでの標準処理期間のポイント

  • 申請に対する処分の標準処理期間の起算点は「申請が事務所に到達してから」である
  • 申請に対する処分の標準処理期間は、必ずしも定める必要はない(任意)
    ただし、定めた場合は、必ず、公にしなければならない
  • 法令により当該行政庁と異なる機関Aが当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関Aの事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間も定めるよう努める(任意)。

行政手続法(標準処理期間)
第6条 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない

<<行政手続法5条:審査基準 | 行政手続法7条:申請に対する審査、応答>>