会社法の過去問

令和2年・2020|問40|会社法

公開会社であり、かつ大会社に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 譲渡制限株式を発行することができない。
  2. 発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍を超えることはできない。
  3. 株主総会の招集通知は書面で行わなければならない。
  4. 会計監査人を選任しなければならない。
  5. 取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。

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【答え】:1【解説】

公開会社であり、かつ大会社について

1.譲渡制限株式を発行することができない。

1・・・誤り

「公開会社」とは、その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社を言います(会社法2条5号)。

つまり、1株でも「譲渡制限のない株式」を発行している会社は「公開会社」です。

言い換えると、公開会社は、譲渡制限株式を発行できます。

したがって、「公開会社であり、かつ大会社は、譲渡制限株式を発行できない」というのは誤りです。

※大会社とは、「資本金が5億円以上」又は「貸借対照表の負債額が200億円以上」の株式会社のことをいいます。負債が大きい=それだけ借り入れができる大きい会社ということ。

ただ、これは覚えなくてもいいかなと思います。

大きな会社というイメージでよいでしょう!

公開会社であり、かつ大会社について

2.発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍を超えることはできない。

2・・・正しい

公開会社に限り、設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができません(会社法37条3項)。

よって、本肢は正しいです。

【理由】

このルールは、既存株主の利益を保護するためのルールです。

非公開会社の場合、株を売買することはあまりありませんが、公開会社は、頻繁に売買され株主もよく変更します。

そして、公開会社の場合、取締役会決議で株式を発行することが可能です。

そして、もし、上記制限がないならば、発行可能株式総数を極端に増やし、たくさん株式を発行することで、既存株主の議決権を減らすことができます。

そうすると、取締役にとって既存株主が煩わしい場合、たくさん株式を発行してそれを防ぐことができてしまいます。これは、既存株主にとって不利益なことなので、それができないように、発行できる株式に一定の制限を設けているのです。

■例えば、1000株発行するのであれば、発行可能株式総数は最大で4000株です。

つまり既存株主は、今後、株式を増やしたとしても最大4000株までしか発行できないので、既存株主だけでも合計して25%の議決権は保障されます。

公開会社であり、かつ大会社について

3.株主総会の招集通知は書面で行わなければならない。

3・・・正しい

株式会社が取締役会設置会社である場合、株主総会の招集通知は、書面でしなければなりません(会社法299条2項2号)。

よって、本肢は正しいです!

■取締役会「非」設置会社の多くは、株主が取締役(社長等)の場合が多いため、株主総会の招集通知は、あえて書面で行う必要はありません。

一方、取締役会設置会社では、大きな会社の場合も多く、取締役でない株主の場合も多いです。

そのため、株主総会を行う場合は、書面できちんと通知するよう求めています。

公開会社であり、かつ大会社について

4.会計監査人を選任しなければならない。

4・・・正しい

会計監査人が必要な会社とは、①大会社、②監査等委員会設置会社、③指名委員会等設置会社です(会社法328条1項、327条5項)。

よって、公開会社であり、かつ大会社は、大会社なので、会計監査人を選任しなければなりません。

■まず、会計参与が、取締役と共同して計算書類を作成します。
そして、この計算書類等の監査するのが「会計監査人」です。
つまり、会計監査人は「外部監査人」といったイメージです!

このような会計監査人(外部監査)が必要な会社とは、
①大会社、②監査等委員会設置会社、③指名委員会等設置会社といった大きな会社です。

公開会社であり、かつ大会社について

5.取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。

5・・・正しい

公開会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができません(会社法331条2項)。

よって、公開会社であり、かつ大会社の株主会社は、公開会社なので、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができません。

【理由】

そもそも、株式会社は、オーナー(株主)と経営者は分離されています。

例えば、トヨタ自動車の株式を「あなた」が購入したとします。「あなた」は「オーナー(株主)」ですが、経営者(取締役)ではなりません。

このように、株式会社は、オーナー(株主)と経営者は分離されており株主の数も非常に多いです。

つまり、公開会社については、多くの株主に不利益がでないように、会社運営をする能力がある人について間口を広くする必要があります。

そのため、公開会社については「取締役が株主でなければならない旨」を定款で定めることができません。

一方、非公開会社については、オーナー(株主)と経営者が同じ場合が多いです。

一般的な家族経営の会社です。

この場合、自分で出資して自分が株主となり、自分が会社の社長(取締役)となります。

このように非公開会社の株主は、親族や知り合いといった限られた人なので、「取締役が株主でなければならない旨」を定款で定めていたしても、不利益を受ける範囲も限定されるので、このような定めも可能です。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問39|会社法

株主総会に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 株式会社は、基準日を定めて、当該基準日において株主名簿に記載または記録されている株主(以下、「基準日株主」という。)を株主総会において議決権を行使することができる者と定めることができる。
  2. 株式会社は、基準日株主の権利を害することがない範囲であれば、当該基準日後に株式を取得した者の全部または一部を株主総会における議決権を行使することができる者と定めることができる。
  3. 株主は、株主総会ごとに代理権を授与した代理人によってその議決権を行使することができる。
  4. 株主総会においてその延期または続行について決議があった場合には、株式会社は新たな基準日を定めなければならず、新たに定めた基準日における株主名簿に記載または記録されている株主が当該株主総会に出席することができる。
  5. 株主が議決権行使書面を送付した場合に、当該株主が株主総会に出席して議決権を行使したときには、書面による議決権行使の効力は失われる。

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【答え】:4【解説】

1.株式会社は、基準日を定めて、当該基準日において株主名簿に記載または記録されている株主(以下、「基準日株主」という。)を株主総会において議決権を行使することができる者と定めることができる。

1・・・正しい

株式会社は、一定の日(「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができます(会社法124条1項)。

分かりやすくいうと、株式会社は基準日を決めて、「基準日に株主名簿に載っている株主が、株主総会で議決権を行使(投票)できる」と定めることができます。

2.株式会社は、基準日株主の権利を害することがない範囲であれば、当該基準日後に株式を取得した者の全部または一部を株主総会における議決権を行使することができる者と定めることができる。

2・・・正しい

基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができます(会社法124条4項本文)。

ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができません(会社法124条4項ただし書)。

つまり、基準日に株主になっている人の権利を侵害しなければ、基準日より後に株主になった人に、株主総会での議決権を行使できるよう、定めることができます。

3.株主は、株主総会ごとに代理権を授与した代理人によってその議決権を行使することができる。

3・・・正しい

株主は、代理人によってその議決権を行使することができます。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければなりません(会社法310条1項)。

そして、上記の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければなりません(会社法310条2項)。

つまり、株主は、代理人に議決権の行使を任せることができますが、代理権の授与は株主総会ごとに行う必要があり、数回分の株主総会についてまとめて代理権授与というのはダメだということです!

4.株主総会においてその延期または続行について決議があった場合には、株式会社は新たな基準日を定めなければならず、新たに定めた基準日における株主名簿に記載または記録されている株主が当該株主総会に出席することができる。

4・・・誤り

本肢のような規定はないので、誤りです。

株主総会が延期・続行された場合に、新たな基準日を定めるという条文は会社法にありません。

延期・続行された場合に、株主総会の招集規定は適用されません(会社法317条)。
延期・続行された株主総会(株主総会の議事に入ったものの、審議を終わらないまま後日に継続した株主総会)は、もとの株主総会と一体として扱い、「継続会」と呼ばれます。

5.株主が議決権行使書面を送付した場合に、当該株主が株主総会に出席して議決権を行使したときには、書面による議決権行使の効力は失われる。

5・・・正しい

取締役は、株主総会を招集する場合に、「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするとき」は、その旨を定めなければなりません(会社法298条1項3号)。

つまり、書面によって議決権を行使できるのは、「株主総会に出席しない株主」です。

もし、出席して議決権を行使すると、「書面による議決権行使」と「株主総会による議決権行使」の2回権利行使していることになります。この場合、「書面による議決権行使」の効力は失われ、「株主総会による議決権行使」が優先します。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問38|会社法

株式会社が自己の発行する株式を取得する場合に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 株式会社は、その発行する全部または一部の株式の内容として、当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができることを定めることができる。
  2. 株式会社は、その発行する全部または一部の株式の内容として、当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてその取得を請求することができることを定めることができる。
  3. 株式会社が他の会社の事業の全部を譲り受ける場合には、当該株式会社は、当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得することができる。
  4. 取締役会設置会社は、市場取引等により当該株式会社の株式を取得することを取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることができる。
  5. 株式会社が、株主総会の決議に基づいて、株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得する場合には、当該行為の効力が生ずる日における分配可能額を超えて、株主に対して金銭等を交付することができる。

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【答え】:5【解説】

1.株式会社は、その発行する全部または一部の株式の内容として、当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができることを定めることができる。

1・・・正しい

下記3つについては、株式会社は全部の株式の内容に特別な定めを置くことができ(会社法107条)、また一部の株式の内容に対しても特別な定めを置くことができます(会社法108条)。

「全部の株式」にも定めることができ、また、「一部の株式」にのみ定めることができるのは下記3つです。

  1. 譲渡制限株式 : 株式を譲渡により取得する場合に、会社の承認が必要な株式
  2. 取得請求権付株式 : 会社に対して株式を取得するよう、株主から請求する事のできる株式
  3. 取得条項権付株式 : 一定の条件が発生すると、会社が株主から株式を取得できる株式
2.株式会社は、その発行する全部または一部の株式の内容として、当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてその取得を請求することができることを定めることができる。

2・・・正しい

選択肢1の解説の通り、「当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてその取得を請求することができることを定める」ことは「取得条項付株式」です。

これは、株式会社の発行する全部または一部の株式の内容として定めることができるので正しいです。

3.株式会社が他の会社の事業の全部を譲り受ける場合には、当該株式会社は、当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得することができる。

3・・・正しい

株式会社は、他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得するとき、当該株式会社の株式を取得することができます(会社法155条10号)。

よって、正しいです。

例えば、 B社がA社の株式を持っていたとします。そして、A社が、B社の事業を全部譲り受ける場合、A社は、「B社が持っているA社の株(A社からみれば自己株式)」を取得できる、ということです。法律の条文では難しく見えるのですが、内容は簡単です!

法律の条文では難しく見えるのですが、内容は簡単です!

4.取締役会設置会社は、市場取引等により当該株式会社の株式を取得することを取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることができる。

4・・・正しい

取締役会設置会社は、市場取引等により当該株式会社の株式を取得すること(=自社株買い)を取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることができます(会社法165条2項)。

市場取引であれば、誰もが取引をしている市場で取引をするわけなので、既存株主に不利益を与えません。

そのため、取締役会の決議によって定めることができます。(=株主総会決議は不要)

5.株式会社が、株主総会の決議に基づいて、株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得する場合には、当該行為の効力が生ずる日における分配可能額を超えて、株主に対して金銭等を交付することができる。

5・・・誤り

株式会社が、株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得する場合、分配可能額を超えて、自己株式を取得するということはできません(会社法461条1項2号)。

よって、本肢は誤りです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問37|会社法

株式会社の設立等に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.発起設立または募集設立のいずれの場合であっても、各発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。

イ.株式会社の設立に際して作成される定款について、公証人の認証がない場合には、株主、取締役、監査役、執行役または清算人は、訴えの方法をもって、当該株式会社の設立の取消しを請求することができる。

ウ.現物出資財産等について定款に記載または記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士または税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合は、当該証明および不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合には、現物出資財産等については検査役による調査を要しない。

エ.株式会社が成立しなかったときは、発起人および設立時役員等は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為について、その責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。

オ.発起設立または募集設立のいずれの場合であっても、発起人は、設立時発行株式を引き受けた発起人または設立時募集株式の引受人による払込みの取扱いをした銀行等に対して、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができる。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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【答え】:1

【解説】

ア.発起設立または募集設立のいずれの場合であっても、各発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。

ア・・・正しい

各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければなりません(会社法25条2項)。

これは、発起設立も募集設立も同じです。

よって、本肢は正しいです!

イ.株式会社の設立に際して作成される定款について、公証人の認証がない場合には、株主、取締役、監査役、執行役または清算人は、訴えの方法をもって、当該株式会社の設立の取消しを請求することができる。

イ・・・誤り

「株式会社の設立の取消しの訴え」という制度はありません。よって、本肢は誤りです。
ちなみに、持分会社では「持分会社の設立の取消しの訴え」があります(会社法832条)。

株式会社については「設立無効の訴え」という制度はあります(会社法828条)。
本肢の場合、「定款認証がない」ので、「設立無効の訴え」を提起することは可能です。

ウ.現物出資財産等について定款に記載または記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士または税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合は、当該証明および不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合には、現物出資財産等については検査役による調査を要しない。

ウ・・・正しい

現物出資財産等について、「定款に記載され、又は記録された価額」が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明を受けた場合、現物出資財産等については検査役による調査は不要です(会社法33条10項3号)。

よって、正しいです。

【現物出資財産等で検査役の調査が不要な場合】

  1. 現物出資・財産引受の定款記載価額の総額が500万円を超えない場合
  2. 市場価格のある有価証券で、定款記載の価額がその市場価格を超えない場合
  3. 弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けている場合。(不動産については不動産鑑定士)

【検査役とは?】

「検査役」とは、相対的記載事項がある場合に、発起人は、公証人の認証の後遅滞なく、相対的記載事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをし、裁判所によって選任された者です(33条1項2項)。

【2の具体例】2の市場価格とは、株価を指します。例えば、ソフトバンクの株価が1株5,000円とします。この場合、100株で50万円です。ソフトバンクの株100株を出資金額50万円以下として出資するのであれば、検査役の検査は不要ということです。

エ.株式会社が成立しなかったときは、発起人および設立時役員等は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為について、その責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。

エ・・・誤り

株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、発起人は、株式会社の設立に関して支出した費用を負担します(会社法56条)。

本肢は「設立時役員等」となっているので誤りです。

「設立時役員等」は含みません!

【設立時役員等が負担しない理由】

そもそも「設立時役員等」とは、設立時取締役等を指しますが

設立時取締役は、出資の履行が完了しているか等の設立事項の調査をするだけで、通常の会社の取締役とは異なり、業務の執行機関(実際の業務に携わる機関)ではないです。

言い換えると、経営陣ではないでの、株式会社の設立に関して支出した費用を負担しません。

【会社不成立の具体例】 創立総会で設立廃止の決議がなされた場合等です。

この場合、発起人が全責任を負うため、発起人は、設立に関して支出した費用を負担しないといけません(56条)。

【会社法56条の具体例】 発起人A・Bがおり、募集設立を行い、引受人から出資を受けた場合、A・Bは、無過失でも、引受人に対する出資されたお金について、連帯して返還義務を負います。

オ.発起設立または募集設立のいずれの場合であっても、発起人は、設立時発行株式を引き受けた発起人または設立時募集株式の引受人による払込みの取扱いをした銀行等に対して、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができる。

オ・・・誤り

設立時発行株式を引き受ける者の募集をした場合には、発起人は、出資金の払込みの取扱いをした銀行等に対し、これらの規定により払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができます(会社法64条1項)。

これは「募集設立の場合」のみの規定であり「発起設立」については対象外です。

よって、本肢は誤りです。

【募集設立のみ保管証明制度がある理由】

募集設立の場合、発起人以外の出資者は、直接設立事務に関与しません。

そのため、出資したお金が発起人等に不当に使われてしまう可能性もあります。

それを防ぐために払込金保管証明制度があります。

■なぜ、「発起人が」払込金保管証明書の交付請求ができるかというと、設立をする際に、払込金保管証明書が添付書類として必要になるため、設立手続きを行う発起人が交付請求できるようにしています。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略