商法・会社法の過去問

平成25年・2013|問38|会社法・株主総会決議無効確認の訴え

会社法上の公開会社(指名委員会等設置会社を除く。)における株主総会の決議に関する次の記述のうち、会社法の規定および判例に照らし、株主総会の決議無効確認の訴えにおいて無効原因となるものはどれか。なお、定款に別段の定めはないものとする。

  1. 株主総会の招集手続が一切なされなかったが、株主が全員出席した総会において、取締役の資格を当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合
  2. 代表権のない取締役が取締役会の決議に基づかずに招集した株主総会において、当該事業年度の計算書類を承認する決議がなされた場合
  3. 取締役の任期を、選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする株主総会決議がなされた場合
  4. 株主に代わって株主総会に出席して議決権を代理行使する者を、当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合
  5. 特定の株主が保有する株式を当該株式会社が取得することを承認するための株主総会に、当該株主が出席して議決権を行使し決議がなされた場合

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【答え】:1【解説】

1.株主総会の招集手続が一切なされなかったが、株主が全員出席した総会において、取締役の資格を当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合
1・・・無効原因となる
株主総会等の決議については、「決議の内容が法令に違反」することを理由として、決議が無効であることの確認(決議無効確認)を、訴えをもって請求することができます(会社法830条2項)。
そして、公開会社である株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができません(会社法331条2項)。
よって、本肢の「取締役の資格を当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更」決議は、法令違反なので、無効原因となります。

2.代表権のない取締役が取締役会の決議に基づかずに招集した株主総会において、当該事業年度の計算書類を承認する決議がなされた場合
2・・・無効原因とはならない
取締役会設置会社の場合、株主総会を招集する際「取締役会決議」が必要です。
取締役会決議がなく株主総会の招集を行い、株主総会を開催して、決議をしても、「決議不存在」となります。
決議が無効以前の問題で、そもそも決議自体ないということです。

3.取締役の任期を、選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする株主総会決議がなされた場合
3・・・無効原因とはならない
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することは可能です(会社法332条1項)。
したがって、本肢の取締役の任期を、選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする株主総会決議は有効です。

4.株主に代わって株主総会に出席して議決権を代理行使する者を、当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合
4・・・無効原因とはならない
判例によると
議決権を行使する株主の代理人の資格を「当該会社の株主に制限する」旨の定款の規定は、有効
としています。
よって、本肢の決議は有効です。

5.特定の株主が保有する株式を当該株式会社が取得することを承認するための株主総会に、当該株主が出席して議決権を行使し決議がなされた場合
5・・・無効原因とはならない
株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされた場合、株主等は、株主総会等の決議の日から3ヵ月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができます(会社法831条1項3号)。
よって、特別利害関係人が議決権を行使した決議は、「無効原因」ではなく「取消原因」となります。

【詳細解説】

本肢の「特定の株主が保有する株式を当該株式会社が取得することを承認するための株主総会」における「特定の株主」は、この株主総会の決議について「特別利害関係を有する者」と言えます。なぜなら、決議されることによって、この株主が持っている株を会社が取得してお金をもらえるからです。そのため、原則、この決議に、 「特別利害関係を有する者」が議決権を行使することはできません(会社法160条4項)。

もし、 「特別利害関係を有する者」が議決権を行使した場合、著しく不当な決議であるとき(他の株主に著しい不利益が及ぶとき)は、決議取消事由となります(831条1項3号) 。

この場合、株主等は、株主総会等の決議の日から3ヵ月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができます。よって、特別利害関係人が議決権を行使した決議は、「無効原因」ではなく「取消原因」となります。

【具体例】

  • 会社: A株式会社
  • 株主: 特定の株主Xと他の株主たち
  • 状況: A株式会社がXから自己株式を買い取るかを株主総会で決議する。

もしXが議決権を行使できると仮定したら、Xは当然「自分の株式を買い取ってほしい」と賛成票を入れるでしょう。
これでは、他の株主たちが不公平に感じる可能性があります。
そこで法律は、「特定の株主Xは、この議題に関して議決権を行使できない」と定めています。

【考え方】 

「特別利害関係を有する者」が議決権を行使することは、決議の方法が法令違反なので、手続き上の瑕疵と言えます。そのため決議取消し事由に当たる


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問37|会社法・譲渡制限株式

取締役会設置会社が、その発行する全部の株式の内容として、譲渡による株式の取得について当該会社の承認を要する旨を定める場合(以下、譲渡制限とはこの場合をいう。)に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.会社が譲渡制限をしようとするときは、株主総会の決議により定款を変更しなければならず、この定款変更の決議は、通常の定款変更の場合の特別決議と同じく、定款に別段の定めがない限り、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行われる。

イ.譲渡制限の定めのある株式を他人に譲り渡そうとする株主は、譲渡による株式の取得について承認をするか否かの決定をすることを会社に対して請求できるが、この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがない場合を除き、当該株式を譲り受ける者と共同して行わなければならない。

ウ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得について承認をするか否かの決定をすることを請求された会社が、この請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に譲渡等の承認請求をした者に対して当該決定の内容について通知をしなかった場合は、当該会社と譲渡等の承認請求をした者との合意により別段の定めをしたときを除き、承認の決定があったものとみなされる。

エ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社は、対象となる株式の全部または一部を買い取る者を指定することができ、この指定は定款に別段の定めがない限り、取締役会の決議によって行う。

オ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社が当該株式を買い取る場合は、対象となる株式を買い取る旨、および会社が買い取る株式の数について、取締役会の決議により決定する。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:4
【解説】

ア.会社が譲渡制限をしようとするときは、株主総会の決議により定款を変更しなければならず、この定款変更の決議は、通常の定款変更の場合の特別決議と同じく、定款に別段の定めがない限り、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行われる。
ア・・・誤り
株式の取得に会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款変更を行う場合の株主総会決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければなりません(会社法309条3項1号:特殊決議)。
本肢は「過半数」が誤りです。
正しくは「半数」です。

イ.譲渡制限の定めのある株式を他人に譲り渡そうとする株主は、譲渡による株式の取得について承認をするか否かの決定をすることを会社に対して請求できるが、この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがない場合を除き、当該株式を譲り受ける者と共同して行わなければならない。
イ・・・誤り
譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法136条)。
したがって、「譲渡制限株式の株主」からの譲渡の承認請求は、単独でできます。
よって誤りです。

【理由】 譲渡制限株式を取得したと偽る(いつわる)者が現れ、真の株主が害される恐れがあるから。

ウ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得について承認をするか否かの決定をすることを請求された会社が、この請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に譲渡等の承認請求をした者に対して当該決定の内容について通知をしなかった場合は、当該会社と譲渡等の承認請求をした者との合意により別段の定めをしたときを除き、承認の決定があったものとみなされる。
ウ・・・正しい
株式会社が譲渡制限株式を譲り渡そうとする者からの承認請求又は譲受人からの承認請求の日から2週間以内に譲渡等の承認の決定等の通知をしなかった場合は、株式会社は、株式譲渡の承認をする旨の決定をしたものとみなします
ただし、株式会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、その定めに従います(会社法第145条1号)。
よって、本肢は正しいです。

エ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社は、対象となる株式の全部または一部を買い取る者を指定することができ、この指定は定款に別段の定めがない限り、取締役会の決議によって行う。
エ・・・正しい
株式会社は、譲渡承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡制限株式の全部又は一部を買取る者の指定をすることもできます(会社法140条4項)。
そして、この指定は、原則、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければなりません。(会社法140条5項)。
よって、本問は「取締役会設置会社」なので、取締役会決議で、買取者を指定できます。
オ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社が当該株式を買い取る場合は、対象となる株式を買い取る旨、および会社が買い取る株式の数について、取締役会の決議により決定する。
オ・・・誤り
株式会社は、株式譲渡の承認をしない旨の決定をしたときは、譲渡制限株式を買い取らなければなりません。
この場合においては、下記事項を株主総会決議(特別決議)により定めなければなりません会社法140条1項2項)。

  1. 対象株式を買い取る旨
  2. 株式会社が買い取る対象株式の数

本肢は「取締役会の決議」が誤りです。正しくは「株主総会の決議」です。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問40|会社法・定款

株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)の次に掲げる事項のうち、会社法の規定に照らし、その事項について定款の定めを必要としないものはどれか。

  1. 公開会社でない株式会社が、剰余金の配当を受ける権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行うこと
  2. 譲渡制限株式を発行する株式会社が、相続その他の一般承継により当該会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当該会社に売り渡すことを請求すること
  3. 株券を発行していない株式会社が、その発行する全部の株式につき、株券を新たに発行すること
  4. 取締役の数が6人以上であって、そのうち1人以上が社外取締役である株式会社において、当該会社の代表取締役が当該会社を代表して多額の借財を行う場合に、当該行為についての取締役会の決議については、特別取締役による議決をもって行うこと
  5. 監査役会設置会社の取締役がその職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該取締役の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときに、当該会社の取締役がその決議によって、当該取締役の損害賠償責任額から最低責任限度額を控除した額の限度で当該損害賠償責任を免除すること

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【答え】:4

【解説】

1.公開会社でない株式会社が、剰余金の配当を受ける権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行うこと
1・・・定款の定めが必要
●非公開会社 → 剰余金の配当を受ける権利について株主ごとに異なる取り扱いをする場合 → 定款の定めが必要株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければなりません(109条1項)。
非公開会社は、①剰余金の配当を受ける権利、②残余財産の分配を受ける権利、③株主総会における議決権に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いをする場合、その旨を「定款」で定めることができます(同条2項)。
よって、本肢の事項を定める場合、定款による定めが必要です。

2.譲渡制限株式を発行する株式会社が、相続その他の一般承継により当該会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当該会社に売り渡すことを請求すること
2・・・定款の定めが必要
●相続・一般承継より譲渡制限株式を取得した場合、売渡請求できる旨 → 定款の定めが必要株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができます(174条)。
よって、本肢の事項を定める場合、定款による定めが必要です。

【理解】 

譲渡制限株式は、「譲渡」をする場合、会社の承認が必要となる株式を言います。
そして、相続や合併により株式を取得した者は、「譲渡」によって、株式を取得しているわけではないので、会社の承認なく、譲渡制限株式を取得します。

そのため、「会社にとって株式を持ってほしくない者」が、株式を持つことになる場合もあります。
そのような場合に備えて、「相続などで譲渡制限株式を取得した場合、会社は、その者に対して、譲渡制限株式の売渡請求ができる」ということを、定款に定めることができます。

こうすることで、「会社にとって株式を持ってほしくない者」が、株式を持った場合、会社は、その者に対して「株式を売ってください!」と請求できることができるようになります!

3.株券を発行していない株式会社が、その発行する全部の株式につき、株券を新たに発行すること
3・・・定款の定めが必要
●定款で定めた場合のみ株券を発行する

株式会社は株券を発行しないことが原則です。そして、株式会社は、定款で定めた場合のみ、株券を発行します(214条)。

よって、本肢の事項を定める場合、定款による定めが必要です。

4.取締役の数が6人以上であって、そのうち1人以上が社外取締役である株式会社において、当該会社の代表取締役が当該会社を代表して多額の借財を行う場合に、当該行為についての取締役会の決議については、特別取締役による議決をもって行うこと
4・・・定款の定めは不要
●指名委員会設置会社以外の取締役設置会社 → 特別取締役による取締役会により「重要な財産の処分及び譲受け」および「多額の借財」を決議できる

取締役会決議は、原則、取締役の過半数の出席とその過半数の議決を要します(369条1項)。しかし、特に迅速な意思決定が必要と考えられる「重要な財産の処分及び譲受け」および「多額の借財」についての決議は、一定の要件を満たしたときは、あらかじめ選定した3人以上の取締役(特別取締役という)だけで行う取締役会で決議することが可能です(373条1項)。この内容については、「定款による定めは不要」で、「取締役会」で決めます。

特別取締役による取締役会決議の要件

【指名委員会設置会社では特別取締役による議決の定めをすることができない理由】
指名委員会設置会社については、会社の執行機関として「執行役」が取締役会で選任され、業務執行を決定する権限を、取締役会が大幅に執行役に委任することができます。つまり、この執行役が上記特別取締役と同じ役割を果たします。そのため、指名委員会設置会社では特別取締役による議決の定めをすることができないです。
5.監査役会設置会社の取締役がその職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該取締役の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときに、当該会社の取締役がその決議によって、当該取締役の損害賠償責任額から最低責任限度額を控除した額の限度で当該損害賠償責任を免除すること
5・・・定款の定めが必要
●取締役が2人以上いる監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は、任務懈怠責任について、取締役による一部免除が可能 → 定款で定める必要がある また、登記事項でもある

①監査役設置会社(取締役が2人以上ある場合に限る。)、②監査等委員会設置会社又は③指名委員会等設置会社は、「役員等の株式会社に対する損害賠償責任」について、
当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、
責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、「責任の一部免除の規定」により免除することができる額を限度として
取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨定款で定めることができます(426条1項)。
よって、本肢の内容は、定款で定める必要があります。

取締役の任務懈怠責任について、善意かつ無重過失の取締役は、取締役の過半数の同意により、責任を一部免除する決議をすることができるということです。これは、定款に定める必要があります。また、登記事項でもあります。

【登記が必要な理由】 登記をして外部の人も分かるようにしないと、債権者に不測の不利益が生じることがあるから。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問39|会社法・株主総会

株主総会の決議に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 取締役会設置会社の株主総会は、法令に規定される事項または定款に定められた事項に限って決議を行うことができる。
  2. 取締役会設置会社以外の会社の株主総会においては、招集権者が株主総会の目的である事項として株主に通知した事項以外についても、決議を行うことができる。
  3. 取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったとみなされる。
  4. 株主総会の決議取消しの訴えにおいて、株主総会の決議の方法に関する瑕疵が重大なものであっても、当該瑕疵が決議に影響を及ぼさなかったものと認められる場合には、裁判所は、請求を棄却することができる。
  5. 会社を被告とする株主総会の決議取消しの訴え、決議の無効確認の訴え、および決議の不存在確認の訴えにおいて、請求認容の判決が確定した場合には、その判決は、第三者に対しても効力を有する。

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【答え】:4

【解説】

1.取締役会設置会社の株主総会は、法令に規定される事項または定款に定められた事項に限って決議を行うことができる。
1・・・妥当
株主総会は、「会社法に規定する事項」及び「株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項」について決議をすることができます(会社法295条1項)。
ただし、取締役会設置会社においては、株主総会は、「会社法に規定する事項」及び「定款で定めた事項」に限り、決議をすることができます(同条2項)。
本肢は、取締役会設置会社なので、「会社法に規定する事項」及び「定款で定めた事項」に限り、株式総会で決議できます
よって、本肢は妥当です。

2.取締役会設置会社以外の会社の株主総会においては、招集権者が株主総会の目的である事項として株主に通知した事項以外についても、決議を行うことができる。
2・・・妥当
取締役会設置会社」においては、株主総会は、「株主に通知した事項」以外の事項については、決議をすることができません会社法309条5項)。
取締役会設置会社以外の会社」においては、上記規定はないので、株主に通知していない事項についても決議が可能です。
よって、本肢は妥当です。
3.取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったとみなされる。
3・・・妥当
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなします会社法319条1項)。
よって、本肢は妥当です。
4.株主総会の決議取消しの訴えにおいて、株主総会の決議の方法に関する瑕疵が重大なものであっても、当該瑕疵が決議に影響を及ぼさなかったものと認められる場合には、裁判所は、請求を棄却することができる。
4・・・妥当ではない
株主総会の決議取消しの訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、「その違反する事実が重大でなく」、かつ、「決議に影響を及ぼさない」ものであると認めるときは、同項の規定による「請求を棄却」することができます(会社法831条2項)。
本肢は、「株主総会の決議の方法に関する瑕疵が重大なものであっても、・・請求棄却できる」となっているので妥当ではありません。
瑕疵が重大の場合は、請求棄却はできないからです。
請求棄却ができるのは「①瑕疵が重大でなく」かつ「②決議に影響を及ぼさない」場合、つまり①②を同時に満たす場合のみです。
5.会社を被告とする株主総会の決議取消しの訴え、決議の無効確認の訴え、および決議の不存在確認の訴えにおいて、請求認容の判決が確定した場合には、その判決は、第三者に対しても効力を有する。
5・・・妥当
会社の組織に関する訴えに係る請求(株主総会の決議取消しの訴え、決議の無効確認の訴え、および決議の不存在確認の訴え)を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有します会社法838条)。
よって、本肢は妥当です。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問38|会社法・株式併合・株式分割

取締役会設置会社であり、種類株式発行会社でない株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)が行う株式の併合・分割等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、定款に別段の定めはないものとする。

  1. 株式を併合するには、その都度、併合の割合および株式の併合がその効力を生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
  2. 株式を分割するには、その都度、株式の分割により増加する株式の総数の分割前の発行済株式の総数に対する割合および当該株式の分割に係る基準日ならびに株式の分割がその効力を生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
  3. 株式の無償割当てをするには、その都度、割り当てる株式の数およびその効力の生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
  4. 株式の分割によって定款所定の発行可能株式総数を超過することになる場合は、あらかじめ株主総会の決議により発行可能株式総数を変更するのでなければ、このような株式の分割をすることはできない。
  5. 株券発行会社が株式の併合または分割をしようとするときは、いずれの場合であっても、併合または分割の効力が生ずる日までに、当該会社に対し当該株式に係る株券を提出しなければならない旨の公告を行い、併合または分割した株式に係る株券を新たに発行しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.株式を併合するには、その都度、併合の割合および株式の併合がその効力を生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
1・・・正しい
●株式併合 → 特別決議株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の特別決議によって、下記事項を定めなければなりません(180条2項)。

【具体例】 10株を1株にしたり、2株を1株にすることが株式併合です。なぜ、特別決議が必要かというと、もし、10株を1株にした場合、9株保有している株主は株主としての地位を失ってしまい、9株をお金に変えるしかなくなります。つまり、既存株主にとって不利益が生じるからです。

2.株式を分割するには、その都度、株式の分割により増加する株式の総数の分割前の発行済株式の総数に対する割合および当該株式の分割に係る基準日ならびに株式の分割がその効力を生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
2・・・誤り
株式分割 → 株主総会の普通決議 or 取締役会決議株式会社は、株式の分割をしようとするときは、その都度、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、下記事項を定めなければなりません(183条2項)。

本問は取締役会設置会社なので取締役会の決議で定めることができます。したがって、誤りです。

【理由】 株式分割の場合、株主としての地位を失うこともなく、また、議決権の割合も変化しません。つまり、既存株主は不利益を受けません。そのため、特別決議までは不要です。

■株式分割の際に定める内容(覚えなくてもよい)

  1. 株式の分割により増加する株式の総数の株式の分割前の発行済株式の総数に対する割合及び当該株式の分割に係る基準日
  2. 株式の分割がその効力を生ずる日
  3. 株式会社が種類株式発行会社である場合には、分割する株式の種類

「株式の分割により増加する株式の総数」の「株式の分割前の発行済株式の総数」に対する割合とは?(参考程度)

下記内容は覚えなくても大丈夫です!参考程度です!

例えば、100株を発行している会社が、1株を100株に分割する場合、株式分割後の発行済み株式総数は10,000株になります。

増加する株式数は9,900株ですので、「株式の分割により増加する株式の総数」は9,900です。

「株式の分割前の発行済株式の総数」は100株なので、100です。

よって、割合は9,900/100の99になります。

3.株式の無償割当てをするには、その都度、割り当てる株式の数およびその効力の生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
3・・・誤り
●株式無償割当て → 株主総会の普通決議 or 取締役会決議「株式無償割当て」とは、既存株主に対して、保有株式数に応じて、無償で新株の割当をすることを言います(185条)。例えば、1株あたり、0.5株を無償で交付するといった場合です。この場合、既存の株式1株を1.5株にする株式分割と実質的に同じです(違いは下表参照)。

株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、下記事項を定めなければなりません(186条1項)。
そして、下記事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければなりません(無償割当については、既存株主に不利益は生じないので、特別決議は不要です)。ただし、定款に別段の定めがある場合は、定款に従います(同条3項)。

本問は取締役会設置会社なので取締役会の決議で定めることができます。したがって、誤りです。

株式無償割当のポイント

  1. 異なる種類株式の割当もOK
  2. 自己株式には割当できない=自己株式は増えない
  3. 割り当てる株式は自己株式でもOK=自己株式を他の者に割り当てる
株式分割と無償割当の違い
4.株式の分割によって定款所定の発行可能株式総数を超過することになる場合は、あらかじめ株主総会の決議により発行可能株式総数を変更するのでなければ、このような株式の分割をすることはできない。
4・・・誤り
●株式分割による発行済株式総数増加の定款変更 → 例外的に、取締役会決議・取締役の決定で行える(株主総会決議は不要)

発行済株式総数は、発行可能株式総数を超えることはできません。そして、発行済株式総数を変更する場合、定款変更が必要なので、原則、株主総会の特別決議が必要です。しかし、株式分割の場合は、例外的に、「株主総会の決議による発行可能株式総数の変更」をしなくても、取締役会決議(非取締役会設置会社は、取締役の決定)で行えます。

そのため、本問の「株主総会の決議により発行可能株式総数を変更するのでなければ」という記述が誤りです。

理由 例えば、当初の発行可能株式総数300株で、発行済株式総数が50株だったとします。
そして、発行済株式について、1株を10株に株式分割をするとなると、発行済株式総数は500株に増えます。
しかし、この場合、取締役会決議・取締役の決定で当初の発行可能株式総数300株を10倍にすることは許されます

これは、既存株主の株式の保有割合は、変わらないため、既存株主に不利益が生じないからです。

5.株券発行会社が株式の併合または分割をしようとするときは、いずれの場合であっても、併合または分割の効力が生ずる日までに、当該会社に対し当該株式に係る株券を提出しなければならない旨の公告を行い、併合または分割した株式に係る株券を新たに発行しなければならない。

5・・・誤り
●株式併合 → 株券発行会社の場合、株券発行は義務

株券発行会社が「株式の併合」をする場合には、当該行為の効力が生ずる日までに当該株券発行会社に対し株券を提出しなければならない旨を当該日の1か月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければなりません(219条1項2号)。
そして、株式の併合をしたときは、株券発行会社は、併合した株式に係る株券を発行しなければなりません(215条)
これは株式併合のルールであり、株式分割については、公告・通知のルールはありません
よって、本肢は「株式分割」の部分が誤りです。

なぜ、株式分割と株式併合で、株券の提出のルールが異なるのか?

例えば10株券を持っていた場合、2株→1株への株式併合が行われると、現在持っている株券は5株券になるので、「実際の株数」と「株券に記載されている株数」が異なるので、困ります。
なので、一度提出してもらって、新しく株券を発行します。

例えば10株券を持っていた場合、1株→2株への株式分割が行われても、現在持っている株券は10株券なので、新たに10株を無償で発行すればよいです。会社が、追加で株主に株式を郵送すればよいので、株主に提出してもらう必要はないです。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問37|会社法・株式会社の設立

株式会社の設立における出資等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア 株主となる者が設立時発行株式と引換えに払込み、または給付した財産の額は、その全額を資本金に計上することは要せず、その額の2分の1を超えない額を資本準備金として計上することができる。

イ 錯誤、詐欺または強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。(改)

ウ 設立時発行株式を引き受けた発起人が出資の履行をしない場合には、当該発起人は当然に設立時発行株式の株主となる権利を失う。

エ 発起人または設立時募集株式の引受人が払い込む金銭の額および給付する財産の額の合計が、定款に定められた設立に際して出資される財産の価額またはその最低額に満たない場合には、発起人および設立時取締役は、連帯して、その不足額を払い込む義務を負う。

オ 設立時発行株式の総額は、設立しようとする会社が公開会社でない場合を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下ることはできない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

ア 株主となる者が設立時発行株式と引換えに払込み、または給付した財産の額は、その全額を資本金に計上することは要せず、その額の2分の1を超えない額を資本準備金として計上することができる。
ア・・・妥当
●設立時に払込み、または給付した財産 → その額の2分の1準備金として計上できる株式会社の資本金の額は、原則、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額です(445条1項)。
ただし、上記払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額については、資本金として計上せずに、資本準備金にできます(同条2項3項)。よって、本肢は妥当です。

イ 発起人は、会社の成立後は、錯誤、詐欺または強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。(改)
イ・・・妥当
●株式会社 → 錯誤・詐欺・強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しはできない発起人は、株式会社の成立後は、錯誤、詐欺または強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができません(51条2項)。よって本肢は妥当です。募集設立においては、株式引受人が創立総会において議決権を行使した後は上記取消しを主張することができなくなります。

【関連ポイント】

設立取消の訴えは、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の場合に、持分会社の社員や債権者が提起できます(832条)。

【参考】
「持分会社」の内部関係は民法上の組合に類似しているため、民法のルールが適用され、設立取消も可能としています。

ウ 設立時発行株式を引き受けた発起人が出資の履行をしない場合には、当該発起人は当然に設立時発行株式の株主となる権利を失う。
ウ・・・妥当ではない
●発起人が出資していない → 期日を定めて通知 → 期日までに出資の履行をしないときは株主となる権利が喪失発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければなりません(36条1項)。
上記通知を受けた発起人は、上記定められた期日までに出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失います(同条3項)。つまり、出資をしない場合、いきなり、株主の権利を失うわけではないので、本肢は妥当ではありません。【対比】 「発起人」と「募集設立における株式引受人」とでは出資を履行しない場合の扱い方が異なるので下表で確認しましょう!

エ 発起人または設立時募集株式の引受人が払い込む金銭の額および給付する財産の額の合計が、定款に定められた設立に際して出資される財産の価額またはその最低額に満たない場合には、発起人および設立時取締役は、連帯して、その不足額を払い込む義務を負う。

エ・・・妥当ではない

●不足額を払い込む義務があるのは → 現物出資・財産引受の場合(金銭については不足額についての払込義務はない)
●定款に定められた設立に際して出資される財産の価額またはその最低額に満たない場合 → 設立無効となる

株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければなりません(会社法27条)。

  1. 目的
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所

そして、現物出資・財産引受の目的財産の価額が「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」に満たない場合(定款に定めた価額に著しく不足する場合)、発起人及び設立時取締役は、会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負います。(会社法52条1項)

したがって、本問は「払い込む金銭の額(金銭)」も含まれて記述されているので、誤りとなります。

ちなみに、出資された財産の価額が「会社の設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」に満たない場合、「設立無効の原因」となります。

 

オ 設立時発行株式の総額は、設立しようとする会社が公開会社でない場合を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下ることはできない。
オ・・・妥当
●設立時発行株式の総額 → 公開会社:発行可能株式総数の4分の1以上
非公開会社:上記制限はない
設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができません。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合(非公開会社の場合)は、4分の1を下回っても大丈夫です(37条3項)。
よって、本肢は妥当です。【4倍規制が存在する理由】 このルールは、既存株主の利益を保護するためのルールです。非公開会社の場合は、株を売買することはあまりありませんが、公開会社は、頻繁に売買され株主もよく変更します。そして、公開会社の場合、取締役会決議で株式を発行することが可能です。そして、もし、上記制限がないならば、発行可能株式総数を極端に増やし、たくさん株式を発行することで、既存株主の議決権を減らすことができます。そうすると、取締役にとって既存株主が煩わしい場合、たくさん株式を発行してそれを防ぐことができてしまいます。これは、既存株主にとって不利益なので、それができないように、発行できる株式に一定の制限を設けているのです。例えば、1000株発行するのであれば、発行可能株式総数は最大で4000株です。つまり既存株主は、今後、株式を増やしたとしても最大4000株までしか発行できないので、既存株主だけでも合計して25%の議決権は保障されます。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問36|商法・支配人

商法上の支配人に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならず、この登記の完了により支配人も商人資格を取得する。
  2. 支配人は、商人の営業所の営業の主任者として選任された者であり、他の使用人を選任し、または解任する権限を有する。
  3. 支配人の代理権の範囲は画一的に法定されているため、商人が支配人の代理権に加えた制限は、悪意の第三者に対しても対抗することができない。
  4. 支配人は、商人に代わり営業上の権限を有する者として登記されるから、当該商人の許可を得たとしても、他の商人の使用人となることはできない。
  5. 商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、支配人として選任されていなくても、当該営業所の営業に関しては、支配人とみなされる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならず、この登記の完了により支配人も商人資格を取得する。
1・・・誤り

商人が支配人を選任 → 登記しなければならない(義務)

商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければなりません(商法22条)。
しかし、支配人が商人の資格を取得するわけではないので、誤りです。
商人の資格を取得するとは、イメージとしては、個人事業主になるということです。

2.支配人は、商人の営業所の営業の主任者として選任された者であり、他の使用人を選任し、または解任する権限を有する。
2・・・正しい

商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができます(商法20条)。
そして、商人から選任された支配人は、他の使用人(従業員)を選任し、又は解任することができます(商法21条2項)。
よって、本肢は正しいです。

3.支配人の代理権の範囲は画一的に法定されているため、商人が支配人の代理権に加えた制限は、悪意の第三者に対しても対抗することができない。
3・・・誤り
支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができません商法21条3項)。
逆に、商人が支配人の代理権に加えた制限は、悪意の第三者に対しては対抗することができるので、本肢は誤りです。
4.支配人は、商人に代わり営業上の権限を有する者として登記されるから、当該商人の許可を得たとしても、他の商人の使用人となることはできない。
4・・・誤り
支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはいけません(商法23条)。

  1. 自ら営業を行うこと。
  2. 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。
  3. 他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。
  4. 会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

【具体例】 
例えば、HP制作会社の役員をしているAがいます。

  1. Aが、自分でHP制作を事業として行う場合が「1」
  2. 自分または他のHP制作会社のために、HP制作の営業活動を行うことが「2」
  3. HP制作に関係なく、他の会社の従業員になることが「3」
  4. HP制作に関係なく、他の会社の役員になることが「4」

したがって、商人の許可を得たのであれば、上記行為を行うことは可能です。

5.商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、支配人として選任されていなくても、当該営業所の営業に関しては、支配人とみなされる。
5・・・誤り
商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなします(商法24条:表見支配人)。
「支配人とみなされる」わけではなく、その営業所における裁判外の行為をする権限を有するだけです。

【具体例】 Aが、営業所長でもないにもかかわらず、「営業所長」と記載した名刺を、取引相手に渡していた場合、Aは支配人(営業所長)とはみなされません。しかし、その営業所における裁判外の行為(例えば、営業行為や採用行為)を行うことは可能です。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問40|会社法

次の事項のうち、会社法の規定に照らし、登記を必要とする事項はどれか。

  1. 支配人以外の重要な使用人を選任するときは、その者の氏名
  2. 補欠取締役を選任するときは、その者の氏名
  3. 代表取締役について、その権限を制限するときは、その者の氏名と制限の内容
  4. 株式交換をするときは、完全子会社となる会社については株式交換により完全子会社となる旨
  5. 会計参与について、その責任の限度に関する契約の締結につき定款で定めるときは、その旨

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.支配人以外の重要な使用人を選任するときは、その者の氏名
1・・・登記は不要
支配人以外の重要な使用人の氏名 → 登記できない

会社が支配人を選任し、又はその代理権が消滅したときは、その本店の所在地において、その登記をしなければなりません(第918条) 。つまり、支配人については、登記事項となっています。
一方、支配人以外の重要な使用人については、登記事項とはなっていません。よって、本肢は登記不要です。

2.補欠取締役を選任するときは、その者の氏名
2・・・登記は不要
補欠取締役の氏名 → 登記できない

取締役の氏名については、登記事項です(911条3項13号)。
一方、補欠取締役の氏名は、登記事項とはなっていないです。
よって、本肢は登記不要です。

3.代表取締役について、その権限を制限するときは、その者の氏名と制限の内容
3・・・登記は不要
●代表取締役について、その権限を制限するときは、その者の氏名と制限の内容 → 登記できない

結論からいえば、本肢の内容は登記不要です。関連するルールとして次のルールがあります。
代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します(349条4項)。
そして、上記の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができません(同条5項)。

つまり、代表取締役の権限を制限する旨について、社内規定で定めても、取引相手がその規定(権限の制限)を知らない場合は、取引相手に対抗できないということです。

4.株式交換をするときは、完全子会社となる会社については株式交換により完全子会社となる旨

4・・・登記は不要
●株式交換によって完全子会社になる旨 → 登記できない

株式交換によって完全子会社になる旨は登記事項ではありません
したがって、本肢は登記不要です。

5.会計参与について、その責任の限度に関する契約の締結につき定款で定めるときは、その旨
5・・・登記は必要
●取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人の「責任免除」についての定款の定めがあるときは、その定め → 登記が必要

取締役の過半数の同意(取締役会の決議)によって、任務懈怠責任を一部免除することができる旨を定款で定めることができます(426条1項)。そして、締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人の責任の免除についての定款の定めがあるときは、その定めは、登記事項です(911条3項24号)。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問39|会社法・監査役

種類株式発行会社ではない取締役会設置会社で、複数の監査役が選任されている監査役設置会社の監査役の選任および解任に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款には別段の定めがないものとする。

  1. 監査役を選任するには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し、出席した当該株主の議決権の過半数の決議をもって行わなければならない。
  2. 代表取締役が監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役全員の同意を得なければならない。
  3. 監査役は、取締役に対して、監査役の選任を株主総会の目的とすること、または監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる。
  4. 監査役を解任するには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数の決議をもって行わなければならない。
  5. 監査役は、株主総会に当該監査役の解任議案が提出された場合のほか、他の監査役の解任議案が提出された場合も、株主総会において、当該解任について意見を述べることができる。

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【答え】:2

【解説】

1.監査役を選任するには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し、出席した当該株主の議決権の過半数の決議をもって行わなければならない。
1・・・正しい

●取締役・監査役の選任 → 株主総会の普通決議

役員(監査役を含む)をする株主総会の決議は、
原則、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(普通決議)をもって行わなければなりません(会社法341条)。

よって、本肢は正しいです。

取締役・監査役の選任・解任のまとめ

【監査役の解任のみ特別決議が必要な理由】

監査役の業務は、取締役の職務執行の監査です(会社法381条1項)。

監査される側である取締役にとって都合の悪い監査役を排除することを目的として、監査役を容易に排除できては、監査役の意味がありません。

そのため、監査役の職務執行の公正性を保障するために、株主総会の特別決議が必要としています。

>>累積投票とは?

2.代表取締役が監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役全員の同意を得なければならない。
2・・・誤り
取締役による「監査役選任」に関する議案提出 → 監査役の同意(監査役が二人以上の場合は、その過半数が必要

取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければなりません(343条1項)。
よって、監査役全員の同意は不要です。
監査役が2人以上なのであれば、監査役の過半数の同意があれば、代表取締役は監査役の選任の議案を株主総会に提出できます。

3.監査役は、取締役に対して、監査役の選任を株主総会の目的とすること、または監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる。
3・・・正しい
監査役による「他の監査役選任」に関する議案提出請求 → 監査役が、取締役に対して請求する

監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすること又は監査役の選任に関する議案株主総会に提出することを請求することができます(343条2項)。よって、本肢は正しいです。

4.監査役を解任するには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数の決議をもって行わなければならない。
4・・・正しい
●監査役の解任 → 特別決議

監査役の解任についての株主総会の決議」は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数(特別決議)をもって行わなければならないとされている(309条2項7号)。よって、本肢は正しいです。

5.監査役は、株主総会に当該監査役の解任議案が提出された場合のほか、他の監査役の解任議案が提出された場合も、株主総会において、当該解任について意見を述べることができる。
5・・・正しい

●監査役の選任若しくは解任又は辞任 → 監査役は意見は述べることができる

監査役は、株主総会において、監査役の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができます(345条1項4項)。よって、本肢は正しいです。他の監査役の選任について賛成・反対の意見を述べる場合のほか、自己が再任されないことについて意見を述べることも可能です。また、辞任した元監査役は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨およびその理由を述べることができます(345条4項・2項)。

【理由】   これらは、監査役の独立性を高め、監査役と取締役とのパワーバランスを監査役に有利にするためのルールと言えます。監査役の力が強くないと、会社をきちんと監査できないからです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問38|会社法・単元株式

取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く。)であり、種類株式発行会社でない株式会社の単元株式に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる。
  2. 株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について残余財産の分配を受ける権利を行使することができない旨を定款で定めることができない。
  3. 単元未満株主は、定款にその旨の定めがあるときに限り、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。
  4. 単元未満株主は、定款にその旨の定めがあるときに限り、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式と併せて単元株式となる数の株式を売り渡すことを請求することができる。
  5. 株式会社が単元株式数を減少し、または単元株式数についての定款の定めを廃止するときは、取締役会の決議によりこれを行うことができる。

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【答え】:3

【解説】

1.株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる。
1・・・正しい
株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができます会社法188条)。
これを「単元株」と言います。
例えば、1000株をひとまとまりとして、1個の議決権を持つということです。
この場合、2000株を保有する株主は、2個の議決権を持つということです。

2.株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について残余財産の分配を受ける権利を行使することができない旨を定款で定めることができない。
2・・・正しい
■単元株未満株主とは、単元に満たない数の株式しか有しない株主のことです。

【具体例】 
1000株を一単元とした場合、999株以下の株式しか持っていない株主は「単元株未満株主」です。そして、単元株未満株主は議決権(議決権を前提とした株主提案権も含む)がありません(会社法189条1項)。それ以外の権利は有するのですが、下記権利について、「行使することができない旨」を定めることができません(同条2項)。

  1. 取得対価の交付を受ける権利
  2. 株式会社による取得条項付株式の取得と引換えに金銭等の交付を受ける権利
  3. 株式無償割当てを受ける権利
  4. 単元未満株式を買い取ることを請求する権利
  5. 残余財産の分配を受ける権利等

本肢は「上記5号」にあたるので、
株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について残余財産の分配を受ける権利を行使することができない旨を定款で定めることはできません

【理由】

上記1~5の内容については、株主の経済的利益を受ける権利と言えます。単元株未満株主は、株主総会での議決権を持たないため、最低限、お金等をもらえる権利だけは保障してあげようということです。
また、株主が投資したお金(投下資本)を回収するための権利(4、5)も含みます。これらの権利がなくなってしまうと、単元株未満の株主は投資した資本を回収できなくなり、困ってしまいます。

3.単元未満株主は、定款にその旨の定めがあるときに限り、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。
3・・・誤り
単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができます(会社法192条1項)。
これは定款に定めがなくても単元株未満の株式の買取請求はできるので、本肢は誤りです。
4.単元未満株主は、定款にその旨の定めがあるときに限り、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式と併せて単元株式となる数の株式を売り渡すことを請求することができる。
4・・・正しい
株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求をすることができる旨を定款で定めることができます(会社法194条1項)。
そして、単元未満株式売渡請求を受けた株式会社は、原則、自己株式を当該単元未満株主に売り渡さなければなりません(同条3項)。
よって、本肢は正しいです。
売渡請求は、買い取り請求と異なり、「定款の定め」がないと請求できないので注意しましょう!
5.株式会社が単元株式数を減少し、または単元株式数についての定款の定めを廃止するときは、取締役会の決議によりこれを行うことができる。
5・・・正しい
株式会社は、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、定款を変更して単元株式数を減少し、又は単元株式数についての定款の定めを廃止することができます(会社法195条)。
よって、本肢は正しいです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略