会社法上の公開会社(指名委員会等設置会社を除く。)における株主総会の決議に関する次の記述のうち、会社法の規定および判例に照らし、株主総会の決議無効確認の訴えにおいて無効原因となるものはどれか。なお、定款に別段の定めはないものとする。
- 株主総会の招集手続が一切なされなかったが、株主が全員出席した総会において、取締役の資格を当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合
- 代表権のない取締役が取締役会の決議に基づかずに招集した株主総会において、当該事業年度の計算書類を承認する決議がなされた場合
- 取締役の任期を、選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする株主総会決議がなされた場合
- 株主に代わって株主総会に出席して議決権を代理行使する者を、当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更決議がなされた場合
- 特定の株主が保有する株式を当該株式会社が取得することを承認するための株主総会に、当該株主が出席して議決権を行使し決議がなされた場合
【答え】:1【解説】
株主総会等の決議については、「決議の内容が法令に違反」することを理由として、決議が無効であることの確認(決議無効確認)を、訴えをもって請求することができます(会社法830条2項)。
そして、公開会社である株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができません(会社法331条2項)。
よって、本肢の「取締役の資格を当該株式会社の株主に限定する旨の定款変更」決議は、法令違反なので、無効原因となります。
取締役会設置会社の場合、株主総会を招集する際「取締役会決議」が必要です。
取締役会決議がなく株主総会の招集を行い、株主総会を開催して、決議をしても、「決議不存在」となります。
決議が無効以前の問題で、そもそも決議自体ないということです。
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することは可能です(会社法332条1項)。
したがって、本肢の取締役の任期を、選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする株主総会決議は有効です。
判例によると
『議決権を行使する株主の代理人の資格を「当該会社の株主に制限する」旨の定款の規定は、有効』
としています。
よって、本肢の決議は有効です。
株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされた場合、株主等は、株主総会等の決議の日から3ヵ月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができます(会社法831条1項3号)。
よって、特別利害関係人が議決権を行使した決議は、「無効原因」ではなく「取消原因」となります。
【詳細解説】
本肢の「特定の株主が保有する株式を当該株式会社が取得することを承認するための株主総会」における「特定の株主」は、この株主総会の決議について「特別利害関係を有する者」と言えます。なぜなら、決議されることによって、この株主が持っている株を会社が取得してお金をもらえるからです。そのため、原則、この決議に、 「特別利害関係を有する者」が議決権を行使することはできません(会社法160条4項)。
もし、 「特別利害関係を有する者」が議決権を行使した場合、著しく不当な決議であるとき(他の株主に著しい不利益が及ぶとき)は、決議取消事由となります(831条1項3号) 。
この場合、株主等は、株主総会等の決議の日から3ヵ月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができます。よって、特別利害関係人が議決権を行使した決議は、「無効原因」ではなく「取消原因」となります。
【具体例】
- 会社: A株式会社
- 株主: 特定の株主Xと他の株主たち
- 状況: A株式会社がXから自己株式を買い取るかを株主総会で決議する。
もしXが議決権を行使できると仮定したら、Xは当然「自分の株式を買い取ってほしい」と賛成票を入れるでしょう。
これでは、他の株主たちが不公平に感じる可能性があります。
そこで法律は、「特定の株主Xは、この議題に関して議決権を行使できない」と定めています。
【考え方】
「特別利害関係を有する者」が議決権を行使することは、決議の方法が法令違反なので、手続き上の瑕疵と言えます。そのため決議取消し事由に当たる
平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 法の下の平等 | 問33 | 民法 |
| 問4 | 憲法と私法上の行為 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 権力分立 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法・精神的自由 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 法改正のより削除 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・経済 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 一般知識・社会 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・政治 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・情報通信 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |


















