商法・会社法の過去問

平成27年・2015|問36|商法・運送人・場屋営業

運送営業および場屋営業に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 運送人は、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明するのでなければ、その運送品に生じた損害を賠償する責任を負う。
  2. 運送品が高価品であるときに、荷送人が運送を委託するにあたり、運送品の種類および価額を通知していなければ、運送人はその運送品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
  3. 場屋の営業主は、客から寄託を受けた物品について、物品の保管に関して注意を怠らなかったことを証明すれば、その物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
  4. 客が特に寄託しない物品であっても、客が場屋内に携帯した物品が場屋の営業主またはその使用する者の不注意によって損害を受けたときは、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負う。
  5. 場屋の営業主が寄託を受けた物品が高価品であるときは、客がその種類および価額を通知してこれを場屋の営業主に寄託したのでなければ、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。

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【答え】:3

【解説】

1.運送人は、運送品の受取り、引渡し、保管および運送に関して注意を怠らなかったことを証明するのでなければ、その運送品に生じた損害を賠償する責任を負う。
1・・・正しい

●運送人 → 注意を怠らなかったことを証明したときは、損害賠償責任を負わなくてもよい

運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が「滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ」、又は「運送品が延着した」ときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。
ただし、運送人がその運送品の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、損害賠償責任を負わなくてもよいです(商法575条)。
本肢の「運送人は、注意を怠らなかったこと(注意をしていたこと)を証明するのでなければ(証明できない場合)、その運送品に生じた損害を賠償する責任を負う」というのは正しい記述です。

2.運送品が高価品であるときに、荷送人が運送を委託するにあたり、運送品の種類および価額を通知していなければ、運送人はその運送品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
2・・・正しい

●貨幣、有価証券その他の高価品 → 通知した場合のみ、運送人は損害賠償責任を負う

貨幣、有価証券その他の高価品」については、原則、荷送人(発送者)が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人(運ぶ人)は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負いません商法577条)。
よって、本肢は正しいです。

3.場屋の営業主は、客から寄託を受けた物品について、物品の保管に関して注意を怠らなかったことを証明すれば、その物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
3・・・誤り
旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者(場屋営業者)は、客から寄託を受けた物品(預かったモノ)の滅失又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができません商法596条1項)。
つまり、場屋の営業主が免責となるのは、不可抗力の場合であって、注意していたことを証明しても免責にはなりません。
したがって、本肢は誤りです。

4.客が特に寄託しない物品であっても、客が場屋内に携帯した物品が場屋の営業主またはその使用する者の不注意によって損害を受けたときは、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負う。
4・・・正しい
客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は損傷したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負います商法596条2項)。
したがって、本肢は正しいです。
5.場屋の営業主が寄託を受けた物品が高価品であるときは、客がその種類および価額を通知してこれを場屋の営業主に寄託したのでなければ、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負わない。
5・・・正しい

●寄託を受けていない場屋営業 → 注意を怠らなかったことを証明した場合、損害賠償責任を負わない(=責任を免れる)
●逆に注意していたことを証明できない場合、損害賠償責任を負う

貨幣、有価証券その他の高価品」については、客がその種類及び価額を通知してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き場屋営業者は、その滅失又は損傷によって生じた損害を賠償する責任を負いません商法597条)。
したがって、本肢「通知して寄託したのでない場合(=通知していない場合)、場屋の営業主はその物品に生じた損害を賠償する責任を負わない」ので、正しいです。

※ 本肢は、選択肢1の損害賠償責任を負わない(=免責となる)語呂合わせ「帰宅した女王の深田恭子、運送に注意、その他も注意」の「その他も注意」に当たります。(寄託していない物品=その他)


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問39|会社法・委員会設置会社

監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社は、いずれも監査役を設置することができない。
  2. 監査等委員会設置会社は、定款で定めた場合には、指名委員会または報酬委員会のいずれかまたは双方を設置しないことができる。
  3. 監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社は、いずれも取締役会設置会社である。
  4. 監査等委員会設置会社を代表する機関は代表取締役であるが、指名委員会等設置会社を代表する機関は代表執行役である。
  5. 監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社は、いずれも会計監査人を設置しなければならない。

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【答え】:2

【解説】

1.監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社は、いずれも監査役を設置することができない。
1・・・正しい
●監査等委員会設置会社 → 監査機関として「監査等委員会」を設置

●指名委員会等設置会社 → 監査機関として「監査委員会」を設置

監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社には、監査役を置くことはできません(会社法327条4項)。

【理由】監査役を置くことで、機能が重複し、責任の所在が不明確なるからです。
監査等委員会設置会社には「監査等委員会」が設置され、指名委員会等設置会社には「監査委員会」が設置されます。
この2つが監査役の役割を果たします。

2.監査等委員会設置会社は、定款で定めた場合には、指名委員会または報酬委員会のいずれかまたは双方を設置しないことができる。
2・・・誤り
監査等委員会設置会社 → 「監査等委員会」は設置されるが、「指名委員会」と「報酬委員会」は設置されな

監査等委員会設置会社には、そもそも「指名委員会」と「報酬委員会」はありません。そのため、定款で上記2つを設置しないということを定めることもできません。よって、誤りです。

3.監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社は、いずれも取締役会設置会社である。
3・・・正しい
●「監査等委員会設置会社」及び「指名委員会等設置会社」 → 取締役会は必ず置かれる

監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、取締役会を置かなければなりません(327条1項3号第4号)
したがって、本肢は正しいです。

【理由】 監査等委員である取締役が3人以上いて(331条6項)、取締役会の監督機能を高めることを目的とした制度設計なので、取締役会を義務付けています。そもそも、取締役会とは、株主総会で選任された3人以上の取締役で構成されます。

【理由】 指名委員会等設置会社の各委員会の委員は、取締役の中から、取締役会の決議によって選定します(400条2項)。そして、各委員会(指名委員会・報酬委員会・監査委員会)は取締役会の機能の一部を代行する制度設計になっています。そのため、指名委員会等設置会社は、取締役会の設置を義務付けています。

4.監査等委員会設置会社を代表する機関は代表取締役であるが、指名委員会等設置会社を代表する機関は代表執行役である。
4・・・正しい
●業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者
→監査等委員会設置会社:代表取締役

→指名委員会等設置会社:代表執行

監査等委員会設置会社では、代表取締役が、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します(349条4項)。つまり、代表取締役が、会社の代表です。
指名委員会等設置会社では、代表執行役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します(420条3項、349条4項)。つまり、代表執行役が、会社の代表です。したがって、本肢は正しいです。

5.監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社は、いずれも会計監査人を設置しなければならない。
5・・・正しい
●「監査等委員会設置会社」及び「指名委員会等設置会社」 → 会計監査人必ず置かれる

監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければなりません(327条5項)
よって、本肢は正しいです。「監査等委員会設置会社の監査等委員会」や「指名委員会等設置会社の監査委員会」は、会社内部の監査機能としての役割を果たします。しかし、これらの人は、取締役ではあるものの会計のプロである必要はないので、会社から独立した形で、 「企業の財務報告の信頼性を確保する」ために、会計のプロである会計監査人(公認会計士等)が必要とされています。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問38|会社法・種類株式

会社法上の公開会社(指名委員会等設置会社を除く。)が発行する株式に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 会社は、その発行する全部の株式の内容として、株主総会の決議によってその全部を会社が取得する旨の定款の定めがある株式を発行することができる。

イ 会社は、その発行する全部の株式の内容として、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限がある旨の定款の定めがある株式を発行することができる。

ウ 会社は、譲渡による当該種類の株式の取得について、会社の承認を要する旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

エ 会社は、株主が当該会社に対して当該株主の有する種類株式を取得することを請求することができる旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

オ 会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において、取締役または監査役を選任する旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:4

【解説】

ア 会社は、その発行する全部の株式の内容として、株主総会の決議によってその全部を会社が取得する旨の定款の定めがある株式を発行することができる。

ア・・・誤り

株主総会の決議によってその全部を会社が取得する旨 → 全部取得条項付株式 → 種類株式に限り定めることができる

本肢は「株主総会の決議によってその全部を会社が取得する旨」の定めがある株式なので「全部取得条項付株式」です。よって、発行株式の全部を「全部取得条項付株式」にすることはできません。あくまでも種類株式としてしか発行できません。

似たようなもので「取得条項付株式」があり、これは、発行株式の全部についてすることができます。

違いは、「取得できる要件」です。下記の通り「一定事由の発生で取得→取得条項付」「株主総会決議で取得→全部取得条項付株式」です。

取得条項付株式と全部取得条項付株式の違い

取得条項付株式」とは、株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができる株式です。 そして、これは、株式の全部を「取得条項付株式」にすることは可能です。また、種類株式として、定めることもできます(取得条項付種類株式)(会社法107条1項3号、2項3号)。

全部取得条項付株式」とは、株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができる株式です。 そして、これは、種類株式として発行することができ、「取得条項付株式」のように株式の全部として発行することはできません(会社法108条1項7号)。なので、「全部取得条項付株式」は「全部取得条項付 種類 株式」と「種類」と入れて覚えるのもよいでしょう!

全部の株式について発行できるもの

全部の株式について発行できるものは下記3つです。

  1. 譲渡制限株式
    非公開会社のみ全部の株式で発行できる
    公開会社は、全部の株式で発行することはできず、一部の株式のみ、譲渡制限株式として発行できる
  2. 取得請求権付株式
  3. 取得条項付株式

取得条項付株式とは、一定事由が生じると、会社が株主に対して、取得条項付株式(種類株式)を売ってください!と強制的に買い取ることができます。そして、取得条項付株式(種類株式)は、会社が自己株式を消却するために用いられる制度です。自己株式を消却(株式を消滅させる)することにより、市場に出回っている株式数を減らしたり、株式配当を減らしたりできます。

「一定事由」とは、例えば、会社が債務超過になった場合です。事業再建のために、株式の全部を取得して、経営を再出発させる手段としても用いられたりもします。

イ 会社は、その発行する全部の株式の内容として、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限がある旨の定款の定めがある株式を発行することができる。

イ・・・誤り

●議決権制限株式  → すべての株式会社で全部の株式の内容として発行できない(種類株式として発行は可能)

本肢の「議決権を行使することができる事項について制限がある旨の定款の定めがある株式」とは、「議決権の制限に関する株式」です。問46の表の3つに含まれないので、すべての株式について、上記株式にすることはできません。よって、本肢は「その発行する全部の株式の内容として」というのが誤りです。

2つ以上の種類の株式の1つとして「議決権の制限に関する種類株式」とすることは可能です(会社法108条3号:種類株式)。

例えば、ある株式は議決権が付いている株式(普通の株式)で、もう一つの種類の株式として「議決権制限付株式」にすることは可能です。一般的には、経営に関心がない投資家に対して発行し、その代わりに配当や残余財産の分配が優先されたりする場合が多いです。ただし、会社法上、必ずしもこのような優先は不要で、単に議決権を制限するだけの株式の発行も可能です。

■公開会社における議決権制限株式

公開会社の場合、「議決権制限株式の数」が「発行済み株式総数」の2分の1を超えたときは、ただちに、「議決権制限株式の数」を「発行済み株式総数」の2分の1以下にするための必要な措置を講じなければなりません(115条)。

ウ 会社は、譲渡による当該種類の株式の取得について、会社の承認を要する旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

ウ・・・正しい

●公開会社 → 譲渡制限付き種類株式を発行することはできる

本肢の「譲渡による当該種類の株式の取得について、会社の承認を要する旨の定款の定めがある種類株式」とは、「譲渡制限付の種類株式」です。

「譲渡制限付き株式」については、「すべての株式」としても「種類株式」としても発行できます

ただし、公開会社については、「すべての株式を譲渡制限付き株式」にすることはできません。

【理由】 公開会社は、上場会社をイメージしていただくとわかりやすいですが、株式の売買は、一般に行われています。
ここから考えて、「すべての株式が譲渡制限付き株式」になると、公開会社ではなくなってしまいます。
(株式の売買の際に、都度、会社の承認が必要となるのはおかしい)

よって、公開会社については、「すべての株式を譲渡制限付き株式」にすることはできません。

公開会社については、一部の株式のみ「譲渡制限付きの種類株式」にすることは可能です。

よって、正しいです。

【具体例】 公開会社が「普通株式:1000万株、譲渡制限付き種類株式:1万株」とするのは可能です。

エ 会社は、株主が当該会社に対して当該株主の有する種類株式を取得することを請求することができる旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

エ・・・正しい

●公開会社 → 取得請求権付の種類株式を発行できる

本問の「株主が当該会社に対して当該株主の有する種類株式を取得することを請求することができる旨の定款の定めがある種類株式」とは、「取得請求権付の種類株式」です。

公開会社は「取得請求権付種類株式」を発行することはできるので、正しいです。

■取得請求権付とは?

これは、株主からの請求に基づいて、会社が自己株式を取得する制度です。

つまり、株主が会社に対して「持っている取得請求権付株式を買い取れ!」と請求できるわけです。

そして、取得請求権付株式は、発行する株式の一部の株式についてのみ、取得請求権を付けることも可能です。これを、取得請求権付種類株式と言います。

取得請求権付株式・取得請求権付種類株式を発行するには、定款で、株式1株を取得するのと引き換えに株主に何を与えるのか社債・新株予約権・新株予約権付社債・金銭等)を定める必要があります。

オ 会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において、取締役または監査役を選任する旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

オ・・・誤り

●取締役・監査役の選解任権付種類株式 →  「指名委員会等設置会社でない非公開会社」のみ発行できる

=「指名委員会等設置会社」及び「公開会社」では発行することはできない

本肢の「種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において、取締役または監査役を選任する旨の定款の定めがある種類株式」とは、「取締役・監査役の選解任権付種類株式」です。そして、「取締役・監査役の選解任権付種類株式」は、指名委員会等設置会社及び公開会社」では発行することはできません(会社法108条1項ただし書き)
よって、本肢は「公開会社」に関する問題なので、誤りです。

取締役・監査役の選解任権付種類株式とは、簡単に言えば、この株式を持つ株主総会(種類株主総会)で、取締役または監査役を選任することができる株式です。

例えば、A種株式とB種株式の2種類の株式を発行し、それぞれの種類株主総会で、取締役を各2名ずつ選任するといった場合です。これは、起業家がベンチャー企業を設立し、投資会社からお金の出資を受ける場合、起業家がA種株式を、投資会社がB種株式を取得し、投資会社にも経営権の一部を与える場合に使います。このようにベンチャー企業のために作られた株式なので、「指名委員会等設置会社でない非公開会社」のみ発行できるとしています。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問37|会社法・株式会社の設立

株式会社の設立における出資の履行等に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア 株式会社の定款には、株式会社の設立に際して出資される財産の額またはその最低額を記載または記録しなければならない。

イ 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならないが、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他の権利の設定または移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることができる。

ウ 発起人は、その引き受けた設立時発行株式について金銭の払込みを仮装した場合には、仮装した出資に係る金銭の全額を会社に対して支払う義務を負い、この義務は、総株主の同意がなければ免除することができない。

エ 発起設立または募集設立のいずれの場合においても、発起人は、払込みの取扱いをした銀行等に対して、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができ、この証明書を交付した銀行等は、当該証明書の記載が事実と異なること、または当該金銭の返還に関して制限があることをもって、成立後の株式会社に対抗することはできない。

オ 設立時発行株式の株主となる者が払込みをした金銭の額および給付した財産の額は、その全額を資本金として計上しなければならないが、設立時発行株式の株主となる者の全員の同意があるときに限り、その額の2分の1を超えない額を剰余金として計上することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:5

【解説】

ア 株式会社の定款には、株式会社の設立に際して出資される財産の額またはその最低額を記載または記録しなければならない。
ア・・・正しい

●設立に際して出資される財産の額またはその最低額 → 定款に必ず記載

下表の通り、「設立に際して出資される財産の額またはその最低額」は、必ず、定款に記載または記録しなければなりません。

イ 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならないが、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他の権利の設定または移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることができる。
イ・・・正しい

●原則:発起人は設立時の株式を引受け後遅滞なく、全額払い込む・現物出資する
●例外:発起人の全員の同意があれば、移転登記等は、会社成立後でもよい

発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産(現物出資財産)の全部給付しなければなりません。
ただし、例外として、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることができます(34条1項)。
よって、本肢は正しいです。

■現物出資とは、金銭以外の財産による出資を言い、車や不動産等があります。会社成立前だと、会社名義への移転登記ができないので、発起人全員の同意により、成立後に移転登記ができます。

■出資の履行

金銭の払込みは、発起人が定めた払込取扱機関において行わなければなりません(34条2項)。つまり、指定された口座に振り込むわけです。

ウ 発起人は、その引き受けた設立時発行株式について金銭の払込みを仮装した場合には、仮装した出資に係る金銭の全額を会社に対して支払う義務を負い、この義務は、総株主の同意がなければ免除することができない。
ウ・・・正しい

●出資の履行の仮装 → 出資の履行義務を負う

発起人は、出資の履行の仮装をした場合、株式会社に対し、出資の履行義務を負います(52条の2)。

ただし、総株主の同意があれば、出資の履行義務は免除されます(55条)。(選択肢イの表参照)

エ 発起設立または募集設立のいずれの場合においても、発起人は、払込みの取扱いをした銀行等に対して、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができ、この証明書を交付した銀行等は、当該証明書の記載が事実と異なること、または当該金銭の返還に関して制限があることをもって、成立後の株式会社に対抗することはできない。
エ・・・誤り

●保管証明の請求 → 募集設立のみ行える

募集設立の場合には、発起人は、出資金の払込みの取扱いをした銀行等に対し、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができます(64条)。
これは、募集設立のみのルールで、発起設立では適用されません。
したがって「発起設立または募集設立のいずれの場合においても」が誤りです。
「募集設立の場合において」であれば正しいです。

【当該証明書の記載が事実と異なること、または当該金銭の返還に関して制限があることをもって、成立後の株式会社に対抗することはできない。とは?】

例えば、
「記載が事実と異なる場合」です。

銀行が保管証明書に「払い込まれた金額:1,000万円」と記載したが、
実際には払い込まれた金額が500万円だった場合です。

この場合、銀行は成立後の株式会社に対して
「実際には500万円しか払い込まれていない」と主張することはできません。

証明書に記載された1,000万円が有効とされます。

オ 設立時発行株式の株主となる者が払込みをした金銭の額および給付した財産の額は、その全額を資本金として計上しなければならないが、設立時発行株式の株主となる者の全員の同意があるときに限り、その額の2分の1を超えない額を剰余金として計上することができる。
オ・・・誤り

●資本金の額 → 原則:払込み又は給付をした財産の額
●例外:払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は資本準備金として計上できる

株式会社の資本金の額は、原則、「設立又は株式の発行に際して株主となる者」が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額となります(445条1項)。
ただし、上記払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができ、資本金に計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければなりません(445条2項3項)。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問36|商法・商行為

商法の適用に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、商法の定めるところによる。
  2. 商事に関し、商法に定めがない事項については、民法の定めるところにより、民法に定めがないときは、商慣習に従う。
  3. 公法人が行う商行為については、法令に別段の定めがある場合を除き、商法の定めるところによる。
  4. 当事者の一方のために商行為となる行為については、商法をその双方に適用する。
  5. 当事者の一方が2人以上ある場合において、その1人のために商行為となる行為については、商法をその全員に適用する。

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【答え】:2

【解説】

1.商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、商法の定めるところによる。
1・・・正しい
商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによります(商法1条1項)。
つまり、商人の営業、商行為その他商事については、原則、商法のルールに従い、
特別に別の法律に定めがあれば、その時は別の法律を適用する、ということです。

2.商事に関し、商法に定めがない事項については、民法の定めるところにより、民法に定めがないときは、商慣習に従う。
2・・・誤り
商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによります(商法1条2項)。
つまり、商事に関して、適用する法律の優先順位は
商法→商慣習→民法」という順だということです。
本肢は、「商法→民法→商慣習」となっているので誤りです。
3.公法人が行う商行為については、法令に別段の定めがある場合を除き、商法の定めるところによる。
3・・・正しい
公法人が行う商行為については、原則、商法の定めるところによります。例外として、法令に別段の定めがある場合は、その法令に従います。(商法2条)。
「公法人」とは、国や地方公共団体、○○公社、○○公団、土地区画整理組合などです。
4.当事者の一方のために商行為となる行為については、商法をその双方に適用する。
4・・・正しい
当事者の一方のために商行為となる行為については、商法をその双方に適用します(商法3条1項)。
スーパーで買い物をする場合、売主にとっては商行為となるので、商法が適用されるということです。
5.当事者の一方が2人以上ある場合において、その1人のために商行為となる行為については、商法をその全員に適用する。
5・・・正しい
当事者の一方が2人以上ある場合において、その1人のために商行為となる行為については、商法をその全員に適用します(商法3条2項)。
個人所有の土地を、「宅建業者A」と「個人B」が共同して購入した場合、宅建業者Aにとっては商行為なので、全員、商法が適用されます。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問40|会社法・株式会社

次の記述のうち、全ての株式会社に共通する内容として、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

ア.株主の責任の上限は、その有する株式の引受価額である。
イ.株主は、その有する株式を譲渡することができる。
ウ.募集株式の発行に係る募集事項は、株主総会の決議により決定する。
エ.株主総会は、その決議によって取締役を1人以上選任する。
オ.株式会社の最低資本金は、300万円である。

  1. ア・イ
  2. イ・ウ
  3. ウ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:4

【解説】

ア.株主の責任の上限は、その有する株式の引受価額である。
ア・・・正しい
●株主の責任 → 株式の引受価額が限度(出資した分を限度に責任を負う)株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とします(104条)。つまり、株主(会社の出資者)は、株主となる際に、会社に対して「出資する義務」を負うだけで、会社が会社債権者に対して負っている債務について、株主は弁済する義務を負いません。これを「有限責任」と言います。株式会社はすべての株主が有限責任です。よって、本問は正しいです。

■持分会社については、無限責任の者(社員)もいます。無限責任社員は、会社債権者に対して債務の全額を負います。

イ.株主は、その有する株式を譲渡することができる。
イ・・・正しい
●株式 → 譲渡自由の原則株主は、その有する株式を譲渡することができます(会社法127条)。株の売買をしている人をイメージしたら、答えを導けると思います。また、投下資本(出資したお金)の回収は、株式の譲渡(売却)により行えます。

※ 譲渡制限がついている場合は、譲渡の際に会社の承認が必要となる

ウ.募集株式の発行に係る募集事項は、株主総会の決議により決定する。
ウ・・・誤り
●募集株式の発行に係る募集事項の決定 → 株主総会の特別決議(公開会社は取締役会決議)募集株式の発行(株主割当or第三者割当)にかかる募集事項の決定は、株主総会の決議(特別決議)によらなければなりません(会社法199条2項)。ただし、公開会社においては、上記決定を「取締役会の決議」で行います(201条1項)。つまり、
募集株式の発行にかかる募集事項の決定は、

  • 非公開会社の場合、株主総会の特別決議で行い、
  • 公開会社の場合、取締役会の決議で行う

ということです。よって、公開会社の場合(下表の真ん中の行)は、株主総会決議で行わないので誤りです。

  • 公開会社における募集株式の募集事項は、株主に対しては通知すること。第三者に対しては公告でよい。

【株主割当とは】 すべての株主にその持株割合に応じて株式を割り当てること

【第三者割当とは】 特定の者(既存株主でもよい)を引受人として募集株式を発行すること

【関連】 新株予約権付き社債の発行について無効を主張する場合、「新株予約権の発行」の無効の訴えをしなければならない。「社債発行」の無効の訴えではない!

エ.株主総会は、その決議によって取締役を1人以上選任する。
エ・・・正しい
●取締役 → 株主総会決議で決める

株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければなりません(326条1項)
そして「役員(取締役、会計参与及び監査役)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任します(329条1項)
したがって、「株主総会は、株主総会の決議によって取締役を1人以上選任する」は正しいです。

株式会社では「所有」と「経営」は分離されており、会社の「所有者」である「株主(株主総会)」が、経営者(取締役)を選ぶ形になっています。

オ.株式会社の最低資本金は、300万円である。
オ・・・誤り

●資本金について制限はない = 最低資本金は定められていない

株式会社の最低資本金が300万円であるという条文はありません。
2006年5月に新会社法が施行されて、最低資本金制度はなくなりました
そのため現在では、株式会社の資本金は、0円でも法律上は可能です。
したがって本肢は誤り。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問39|会社法・取締役の報酬

株式会社の取締役の報酬等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

ア.取締役の報酬等は、当該株式会社の分配可能額の中から剰余金の処分として支給され、分配可能額がない場合には、報酬等を支給することはできない。

イ.指名委員会等設置会社でない株式会社において、取締役の報酬等として当該株式会社の株式または新株予約権を取締役に付与する場合には、取締役の報酬等に関する定款の定めも株主総会の決議も要しない。
ウ.監査等委員会設置会社において、監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員以外の取締役の報酬等について、監査等委員会の意見を述べることができる。
エ.指名委員会等設置会社において、報酬委員会は取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければならず、当該方針に従って、報酬委員会は取締役の個人別の報酬等の内容を決定する。
オ.監査等委員会設置会社において、監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:1

【解説】

ア.取締役の報酬等は、当該株式会社の分配可能額の中から剰余金の処分として支給され、分配可能額がない場合には、報酬等を支給することはできない。
ア・・・誤り

●取締役の報酬 → 経費の一部 . 剰余金から支払うものではない

取締役の報酬については、上記のように、分配可能額の中から剰余金の処分として支払われるものではありません。よって、誤りです。

ざっくりとした考え方として、1億円の売上があって、経費(テナント料、仕入れ代金、人件費)として7000万円かかるとすると、利益は3000万円です。

上記「人件費」に、取締役の報酬は含まれます。

そして、上記利益(3000万円)が、剰余金となるイメージです。

ちなみに、株主配当は、この剰余金から分配可能額の範囲で支払うことができます。

「株主配当」と「取締役の報酬」は異なるので注意しましょう。

イ.指名委員会等設置会社でない株式会社において、取締役の報酬等として当該株式会社の株式または新株予約権を取締役に付与する場合には、取締役の報酬等に関する定款の定めも株主総会の決議も要しない。
イ・・・誤り

●取締役の報酬を、金銭以外で与える → 定款 or 株主総会 で定める

取締役の報酬等として、「金銭でないもの(例えば新株予約権)」を取締役に与える場合については、定款もしくは株主総会の決議で定めます(361条1項3号)。したがって、「定款の定めも株主総会の決議も要しない」は誤りです。
「定款の定め、もしくは、株主総会の決議が必要」です。

ウ.監査等委員会設置会社において、監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員以外の取締役の報酬等について、監査等委員会の意見を述べることができる。
ウ・・・正しい

●監査等委員 → 「監査等委員以外の取締役(業務執行専門の取締役)」の報酬について、株主総会で、監査等委員会の意見を言える

監査等委員会設置会社では、取締役は「監査等委員(監査専門の取締役)」と「監査等委員以外の取締役(業務執行専門の取締役) 」の2種類に分かれます。そして、「監査等委員」は、株主総会で、「監査等委員以外の取締役」の報酬について、監査等委員会の意見を言えます。(会社法361条6項)

エ.指名委員会等設置会社において、報酬委員会は取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければならず、当該方針に従って、報酬委員会は取締役の個人別の報酬等の内容を決定する。
エ・・・正しい

●報酬委員会 → 執行役等の個人別の報酬などの内容を決定する

指名委員会等設置会社の一つの機関である「報酬委員会」は、執行役等(取締役含む)の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければなりません(409条1項)。
そして上記方針にしたがって、取締役の個人別の報酬の内容を決定します(409条2項)。よって正しいです。

指名委員会等設置会社の各委員会は、3人以上の委員(取締役)で構成され、各委員会の委員の過半数が社外取締役です。つまり、指名委員会等設置会社では、社外取締役中心になって、執行役の個人別の報酬を監督の一環として決定します。

オ.監査等委員会設置会社において、監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。

オ・・・正しい

●監査等委員 → 自分たち(監査等委員)の報酬について意見を述べることができる

監査等委員である取締役(監査専門の取締役)は、「株主総会」において、監査等委員である取締役(自分たち)の報酬等について意見を述べることができます(361条5項)

選択肢ウでは、「監査等委員以外の取締役(業務執行専門の取締役)」の報酬について
選択肢オでは、「監査等委員である取締役(自分たち)」の報酬について、株主総会で意見を述べることができるということです。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問38|会社法・株式

発行済株式の総数の増減に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 発行済株式の総数は、会社が反対株主の株式買取請求に応じることにより減少する。
  2. 発行済株式の総数は、会社が自己株式を消却することにより減少する。
  3. 発行済株式の総数は、会社が単元株式数を定款に定めることにより減少する。
  4. 発行済株式の総数は、会社が自己株式を処分することにより増加する。
  5. 発行済株式の総数は、会社が募集新株予約権を発行することにより増加する。

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【答え】:2

【解説】

1.発行済株式の総数は、会社が反対株主の株式買取請求に応じることにより減少する。
1・・・誤り

●自己株式を取得しても発行済株式総数は変化しない

会社が、反対株主の株式買取請求に応じて自己の株式を取得した場合、会社の自己株式は増えますが、「発行済株式の総数」は変動しません。単に、株主が、反対株主から会社自身に変わるだけです。したがって、本肢は誤りです。

発行済株式総数とは、会社が実際に発行している株式の総数で、会社自身が保有する株式も含みます。例えば、発行済株式の総数が10万株あり、2万株が自己株式(会社が保有する株式)で、その他の株主が8万株を持っていたとします。その他の株主の一部が反対株主として株式買取請求権を行使し、会社が1万株を取得した場合、自己株式が3万株、その他の株主が保有する株式が7万株で、合計すると10万株で発行済株式総数は変わりません。

■「反対株主」とは、「株主総会に先立って反対する旨を通知し、かつ株主総会において反対した株主等」を指します。

この問題文からは具体的にどのような状況かまでは分からないですが

例えば、株式の内容を変更して譲渡制限や全部取得条項に関する定めを設けるために株主総会を開き、
事前に反対する旨の通知をして、実際の株主総会において反対した株主は
その後、議案が可決されてても、その後、会社に対して株式買い取り請求ができます。

2.発行済株式の総数は、会社が自己株式を消却することにより減少する。
2・・・正しい

●自己株式を消却 → 発行済株式総数は減少する

株式会社は、自己株式を消却する(自己株式を消滅させる)ことができます(178条1項)。消却とは、発行していた株式をこの世から消滅させてしまうことを指します。その結果、発行済株式の総数は、消却した分だけ減ります
したがって、本肢は正しいです。

3.発行済株式の総数は、会社が単元株式数を定款に定めることにより減少する。
3・・・誤り

●単元株を採用 → 議決権が減少。発行済株式総数は変化なし

会社が単元株式数を定款に定めても、発行済株式の総数は減少しません単元株式数を定款に定めた場合、議決権数は減少します。

具体例 10万株を発行する会社があったとします。通常(単元株を採用していない場合)、10万個の議決権が存在します。

株主A:2万5,600株と保有していたとします。この場合、株主Aの議決権数は2万5,600個です。ここで、単元株を採用し、1000株をひとまとまりにしたとします。そうすると、1000株に対して1つの議決権を持つことになり、1000株未満の株については議決権がなくなります。つまり、株主Aは、2万5000株について25個の議決権があり、1000株未満の端数600株については、議決権がなくなります。つまり、議決権は減っています。しかし、発行済みの株式自体、消却していないので残っています。よって発行済株式総数は変化しません。ちなみに1000株を1つにまとめても1000株であることに変わりはありません。

4.発行済株式の総数は、会社が自己株式を処分することにより増加する。
4・・・誤り

●自己株式の処分 → 発行済株式総数は変化なし

会社が自己株式を処分しても、発行済株式の総数に変動はありません。処分するとは、「誰かに売る」といったイメージです。
具体例 会社が自己株式をAさんに売ったら、株の名義人(所有者)が「会社からA」に変わるだけです。

5.発行済株式の総数は、会社が募集新株予約権を発行することにより増加する。
5・・・誤り

●新株予約権の発行 → 発行した発行済株式総数は変化なし

新株予約権とは、「株の引換券」といったイメージです。この新株予約権を発行しただけでは、新たに株式が発行されません。したがって、新株予約権を発行しても発行済株式総数は変化しません。もし、会社が新株予約権を行使した人(使った人)に対して、新たに株式を発行して渡したのであれば、発行済株式総数は増加します。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問37|会社法・株式会社の設立

株式会社(種類株式発行会社を除く。)の設立に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 株式会社の定款には、当該株式会社の目的、商号、本店の所在地、資本金の額、設立時発行株式の数、ならびに発起人の氏名または名称および住所を記載または記録しなければならない。
  2. 金銭以外の財産を出資する場合には、株式会社の定款において、その者の氏名または名称、当該財産およびその価額、ならびにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数を記載または記録しなければ、その効力を生じない。
  3. 発起人は、その引き受けた設立時発行株式について、その出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付した時に、設立時発行株式の株主となる。
  4. 設立時募集株式の引受人がその引き受けた設立時募集株式に係る出資を履行していない場合には、株主は、訴えの方法により当該株式会社の設立の取消しを請求することができる。
  5. 発起設立または募集設立のいずれの手続においても、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。

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【答え】:2

【解説】

1.株式会社の定款には、当該株式会社の目的、商号、本店の所在地、資本金の額、設立時発行株式の数、ならびに発起人の氏名または名称および住所を記載または記録しなければならない。

1・・・誤り

●資本金の額 → 定款には記載不要

株式会社の定款には、下記事項を記載し、又は記録しなければなりません(会社法27条)。

株式会社の定款に「資本金の額」は記載しません。

【理由】

定款作成後、出資の履行(払い込み)をします。そして、払い込みをした金額の一部が資本金になります。払い込みがない場合もあるため、定款作成時に、資本金は確定していません。そのため、定款に「資本金の額」は記載しません。したがって、誤りです。

2.金銭以外の財産を出資する場合には、株式会社の定款において、その者の氏名または名称、当該財産およびその価額、ならびにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数を記載または記録しなければ、その効力を生じない。
2・・・正しい

●金銭以外の財産を出資(現物出資) → 相対的記載事項=定款に記載しないと効力が生じない

株式会社を設立する場合について、下記事項は、定款に記載しなければ、その効力は生じません(会社法28条:変態設立事項)。

本肢は、上記「1号の現物出資」に関する内容です。

■「財産引受」とは

発起人が会社のために、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約を言います。会社はまだ設立していないので、発起人が会社の代わりに、譲り受けます。会社が設立すると、発起人が譲り受けた財産は、会社の財産となります。

【具体例】

A社を設立にあたり、発起人Bが、A社のために、Cとの間で、「会社が成立することを条件に」Cから事務所用の建物を2000万円で譲り受ける契約を締結した。この場合、譲渡人C、代金2000万円として定款に記載しなければなりません。

そして、もし、この建物が500万円の評価しかない場合、A社は1500万円の損害を受けてしまいます。そのため、「検査役の調査を受けるか」「価額の相当性につき弁護士等の証明を受ける」必要があります。

そして、定款に記載のない財産引受は無効です。

3.発起人は、その引き受けた設立時発行株式について、その出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付した時に、設立時発行株式の株主となる。
3・・・誤り

●発起人は、株式会社成立時に、設立時発行株式の株主となる

発起人は、株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となります(会社法50条1項)。

つまり、会社成立時に株主となるので、本肢の「出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付した時に、株主となる」という記述は誤りです。

会社設立までの流れについては、下図を使って頭に入れておきましょう!

4.設立時募集株式の引受人がその引き受けた設立時募集株式に係る出資を履行していない場合には、株主は、訴えの方法により当該株式会社の設立の取消しを請求することができる。
4・・・誤り

●株式会社 → 設立取消しの請求(訴え)はできない

設立取消しの請求(訴え)は、株式会社では行えません持分会社であれば行えます(832条)。
設立時募集株式の引受人が、その引き受けた設立時募集株式に係る出資を履行しない場合、その引受人は、株主となる権利を失うだけです。

■設立取消しの訴えのポイント
  • 持分会社でのみ行える
  • 設立取消しの訴えができるのは下記2つの場合
    ①社員が詐欺や強迫等を受けて、持分会社を設立した場合、詐欺や強迫等を理由として、当該社員は、持分会社を被告として提起できる
    社員がその債権者を害することを知って持分会社を設立した場合に、債権者が持分会社およびその社員を被告として提起できる。
  • 持分会社の成立の日から2年以内に行えます
  • 判決の効力についても、「設立無効の訴え」と同じく、設立取消の判決の効力は将来に向かってのみ効力を生じます

5.発起設立または募集設立のいずれの手続においても、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。
5・・・誤り

●設立時取締役の選任 → 発起設立:定款 or 発起人の議決権の過半数で決定

発起設立の場合、設立時取締役の選任は、発起人、出資の履行が完了した後、遅滞なく行います(発起人の議決権の過半数で決定)(会社法38条1項)。もしくは、定款で定めることも可能です(会社法38条3項)。

一方、募集設立の場合、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければなりません(会社法88条)
したがって、本肢は「発起設立において、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない」が誤りです。そもそも、創立総会は、募集設立のみ設置されるもので、発起設立の場合は存在しません


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問36|商法・商行為

商人および商行為に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 商人とは、自己の計算において商行為をすることを業とする者をいう。
  2. 店舗によって物品を販売することを業とする者は、商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなされる。
  3. 商人の行為は、その営業のためにするものとみなされ、全て商行為となる。
  4. 商法は一定の行為を掲げて商行為を明らかにしているが、これらの行為は全て営業としてするときに限り商行為となる。
  5. 商行為とは、商人が営業としてする行為または営業のためにする行為のいずれかに当たり、商人でない者の行為は、商行為となることはない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.商人とは、自己の計算において商行為をすることを業とする者をいう。
1・・・誤り
●商人とは → 「自己の名をもって」商行為をすることを業とする者商法において商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいいます(商法4条1項)。
したがって、「自己の計算において」が誤りです。正しくは「自己の名をもって」です。
自己の計算において」とは「自分の利益のために」という意味になります。一方、「自己の名をもって」とは、行為から生ずる権利義務の帰属主体になることを言います。

具体例 Aが、自分に利益がなかったとしても、自分Aの名義で商行為(商売としてモノの売り買い)を行う場合、買うことで生ずる代金の支払い義務は、Aに生ずる(帰属する)ため、Aは「商人」です。

「業」とは、商売を反復、継続して行うことです。つまり、何度も行うということです。上記事例でいうとAが何度もモノの売り買いをする場合、「業」にあたります。

2.店舗によって物品を販売することを業とする者は、商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなされる。
2・・・正しい
●「店舗による物品販売」や「鉱業」 → 商行為を業としない者であっても、 「商人」とみなす「店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者」又は「鉱業を営む者」は、商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなします(商法4条2項:擬制商人)。
商行為を業とする者が商人ですが、商行為を業としない者であっても商人とみなす場合があります。
それが本肢の内容です。
「店舗その他これに類似する設備によって物品を販売する者」は外見から見たら、商人にみえるため、商人として扱い、商法が適用されます。
また、「鉱業を営む者」(石油や石炭などの地下資源の採掘をする者)も、商人として扱います。

 
3.商人の行為は、その営業のためにするものとみなされ、全て商行為となる。
3・・・誤り
●商人の行為 → 「営業のためにするもの」と推定する / すべてが「商行為」とはならない商人の行為は、その営業のためにするものと推定します(503条2項)。
推定するとは、一応そのよう判断を下すことをいい、反対の事実が証明されれば、その判断は覆されます

一方、みなすは、判断を確定させること言い、反対の事実を証明して、判断を覆すことはできません
つまり、上記「商人の行為」について、営業のためにしないことを証明すれば、「商行為にならない」ということです。
よって、「すべて商行為」という記述が誤りです。分かりづらい文章ですが、商人Aが駄菓子を買ったとします。この場合、営業のためにするものと推定されるので、商行為となります。しかし、商人Aが単に自分が食べる目的と証明できれば、これは商行為ではないということです。

4.商法は一定の行為を掲げて商行為を明らかにしているが、これらの行為は全て営業としてするときに限り商行為となる。
4・・・誤り
●商行為とは、「絶対的商行為」と「営業的商行為」と「附属的商行為」の3つを指す●商行為の一つである「絶対的商行為」 → 「営業としてしたか否か」を問わず、「商行為」となる

商行為は、「絶対的商行為」と「営業的商行為」と「附属的商行為」の3つに分けることができます(詳細は選択肢2の表参照)。

商行為の一つである「絶対的商行為」は、「営業としてしたか否か」を問わず、「商行為」となるため、「全て営業としてするときに限り商行為となる」という記述は誤りです。

絶対的商行為 営業としてしたか否かを問わず、商行為となる
商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、商行為となる
営業的商行為 営利目的かつ反復継続して行うことで初めて商行為となる
附属的商行為 前提として「商人の行為」である
営業開始前であっても、商人資格を取得したとされれば、開業準備行為も商行為となる

絶対的商行為は、営業としてするかどうかは関係なく「常に」商行為となるので、本肢は誤りです。

5.商行為とは、商人が営業としてする行為または営業のためにする行為のいずれかに当たり、商人でない者の行為は、商行為となることはない。
5・・・誤り

●商行為とは、「絶対的商行為」と「営業的商行為」と「附属的商行為」の3つを指す
●商行為の一つである「絶対的商行為」 → 商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、「商行為」となる 

選択肢4にある「絶対的商行為」は、営業としてするかどうかは関係なく「常に」商行為となります。また、絶対的商行為は、商人が行うかどうかに関係なく、商行為になります。したがって、誤りです。

※ 商人とは、自己の名をもって「商行為」をすることを「業」とする者をいい、商行為を業として行わない者は商人ではありません。(ただし、選択肢2の解説の通り、「店舗による物品販売」や「鉱業」を行う者は、商行為をしなくても、「商人」とみなされます。)


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略