商法・会社法の過去問

平成30年・2018|問40|会社法:剰余金の配当

剰余金の配当に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 株式会社は、剰余金の配当請求権および残余財産分配請求権の全部を株主に与えない旨の定款の定めを設けることができる。
  2. 株式会社は、分配可能額の全部につき、株主に対して、剰余金の配当を支払わなければならない。
  3. 株式会社より分配可能額を超える金銭の交付を受けた株主がその事実につき善意である場合には、当該株主は、当該株式会社に対し、交付を受けた金銭を支払う義務を負わない。
  4. 株式会社は、当該株式会社の株主および当該株式会社に対し、剰余金の配当をすることができる。
  5. 株式会社は、配当財産として、金銭以外に当該株式会社の株式、社債または新株予約権を株主に交付することはできない。

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【答え】:5

【解説】

1.株式会社は、剰余金の配当請求権および残余財産分配請求権の全部を株主に与えない旨の定款の定めを設けることができる。

1・・・誤り

●「剰余金の配当請求権」および「残余財産分配請求権」のいずれも一切与えないことはできない

株主は、その有する株式につき下記3つの権利を有する(会社法105条1項)。

  1. 剰余金の配当を受ける権利
  2. 残余財産の分配を受ける権利
  3. 株主総会における議決権

そして、株主に上記第1号(剰余金の配当を受ける権利)及び第2号(残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは、無効となります(会社法105条2項)。

2.株式会社は、分配可能額の全部につき、株主に対して、剰余金の配当を支払わなければならない。

2・・・誤り

●剰余金の配当 → 分配可能額を超えてはいけない

剰余金とは、簡単に言えば、会社が儲けて余ったお金です。この剰余金の中から、株主に配当を行います。

しかし、いくらでも株主に配当できるかというとそうではありません。

会社は、分配可能額の範囲内で、いつでも配当することができます(453条、461条1項2項)。
ただし、純資産額が300万円を下回る場合、剰余金を配当することができません(458条)。

本肢のような「分配可能額の全部につき、株主に対して、剰余金の配当を支払わなければならない」というルールはありません。よって誤りです。

また、剰余金があるからといって、そのすべてを配当に回すことができるのではなく、分配可能額の範囲で配当します。

※ 分配可能額の具体的な計算方法は分からなくても大丈夫です。

3.株式会社より分配可能額を超える金銭の交付を受けた株主がその事実につき善意である場合には、当該株主は、当該株式会社に対し、交付を受けた金銭を支払う義務を負わない。

3・・・誤り

●分配可能額を超えて剰余金の配当を行った →  「剰余金の交付を受けた株主」並びに「剰余金の配当を行った業務執行者等」は、連帯して返還義務を負う

選択肢2の解説にある分配可能額を超えて剰余金の配当を行った場合(違反した場合)、
「剰余金の交付を受けた株主」並びに「剰余金の配当を行った業務執行者等」は、当該株式会社に対し、連帯して、当該剰余金を会社に返還する義務を負います(会社法462条1項)。
上記株主については、善意であっても、無過失であっても関係なく、会社に返還する義務を負います。
ただし、「業務執行者等」は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、上記返還義務を負いません(免責される)(会社法462条2項)。

4.株式会社は、当該株式会社の株主および当該株式会社に対し、剰余金の配当をすることができる。

4・・・誤り

●株式会社自身に剰余金の配当はできません

株式会社は、その株主に対し、剰余金の配当をすることができます(453条)。
※ 株式会社自身が株主の場合、株式会社自身に剰余金の配当はできません。
言い換えると、保有する自己株式に対しては剰余金の配当を行うことはできない、ということです。
よって、「株式会社は、当該株式会社に対し、剰余金の配当をすることができる」という記述は誤りです。

5.株式会社は、配当財産として、金銭以外に当該株式会社の株式、社債または新株予約権を株主に交付することはできない。

5・・・正しい

●配当財産 → 「その会社の株式」「その会社の社債」「その会社の新株予約権」での配当は不可

株式会社は、剰余金の配当をするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければなりません(454条1項)。

そして、本肢のポイントは、上記第1号の「当該株式会社の株式等を除く」の部分です。

「当該株式会社の株式等を除く」とは、「その会社の株式、社債、新株予約権を除く」ということです。

したがって、剰余金の配当をする場合、「その会社の株式」、「その会社の社債」、「その会社の新株予約権」で配当することはできないということです。

現金で配当することは、もちろん可能です。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問39|会社法:社外取締役

社外取締役に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 社外取締役は、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人を兼任することができない。
  2. 監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役の過半数は、社外取締役でなければならない。
  3. 公開会社であり、かつ、大会社である監査役会設置会社であって、発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、1名以上の社外取締役を選任しなければならない。
  4. 株式会社が特別取締役を選定する場合には、当該株式会社は、特別取締役による議決の定めがある旨、選定された特別取締役の氏名および当該株式会社の取締役のうち社外取締役であるものについては社外取締役である旨を登記しなければならない。
  5. 株式会社は、社外取締役の当該株式会社に対する責任について、社外取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、当該社外取締役が負う責任の限度額をあらかじめ定める旨の契約を締結することができる旨を定款で定めることができる。

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【答え】:誤りはない(法改正により誤りがなくなってしまいました)

【解説】

1.社外取締役は、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人を兼任することができない。

1・・・正しい

●社外取締役 → 「当該会社またはその子会社」の「業務執行取締役」もしくは「執行役」または「支配人その他の使用人」を兼任することができない

社外取締役とは、「株式会社の取締役」であって、「当該株式会社又はその子会社」の「業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人」でなく、かつ、過去10年以内に「当該株式会社又はその子会社」の「業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人」となったことがないものをいいます(会社法2条1項15号のイ)。したがって、社外取締役は、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人を兼任することができません。上記社外取締役になれない者(兼任できない者)を列挙すると下記の通りです。いずれかに該当すると、社外取締役になれません。

  • 当該会社の「業務執行取締役」、「執行役」、「支配人などの使用人」
  • 過去10年以内の当該会社の「業務執行取締役」、「執行役」、「支配人などの使用人」
  • 子会社の「業務執行取締役」、「執行役」、「支配人などの使用人」
  • 過去10年以内の子会社の「業務執行取締役」、「執行役」、「支配人などの使用人」
2.監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役の過半数は、社外取締役でなければならない。

2・・・正しい

●監査等委員会設置会社:監査等委員である取締役の人数は3人以上、過半数は、社外取締役

監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、会社・子会社の業務執行取締役や使用人などと兼任できず(331条3項)、また、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければなりません(同条6項)。

3.公開会社であり、かつ、大会社である監査役会設置会社であって、発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、1名以上の社外取締役を選任しなければならない。

3・・・正しい

●公開会社かつ大会社の監査役会設置会社で、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社 → 社外取締役を置かなければならない

公開会社であり、かつ、大会社である監査役会設置会社であって、発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、1名以上の社外取締役を置く義務があります(会社法327条の2)。

したがって、「1名以上の社外取締役を選任しなければならない」は正しいです。

■「有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社」とは、「株式を証券取引所に上場した会社」および「有価証券届出書を提出した会社」です。イメージとしては、大会社です!

■「有価証券報告書」とは、投資家が投資を行う際に十分投資判断ができるように、事業の状況、財務状態、経営成績などの財務諸表を記載したものです。

4.株式会社が特別取締役を選定する場合には、当該株式会社は、特別取締役による議決の定めがある旨、選定された特別取締役の氏名および当該株式会社の取締役のうち社外取締役であるものについては社外取締役である旨を登記しなければならない。

4・・・正しい

●特別取締役による議決の定めがあるとき → 登記が必要

特別取締役による議決の定めがあるときは、次のことを登記しなければなりません(会社法911条3項21号)。

1.特別取締役による議決の定めがある

2.特別取締役の氏名

3.取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である

特別取締役による取締役会決議の要件

【指名委員会設置会社では特別取締役による議決の定めをすることができない理由】
指名委員会設置会社については、会社の執行機関として「執行役」が取締役会で選任され、業務執行を決定する権限を、取締役会が大幅に執行役に委任することができます。つまり、この執行役が上記特別取締役と同じ役割を果たします。そのため、指名委員会設置会社では特別取締役による議決の定めをすることができないです。
5.株式会社は、社外取締役の当該株式会社に対する責任について、社外取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、当該社外取締役が負う責任の限度額をあらかじめ定める旨の契約を締結することができる旨を定款で定めることができる。

5・・・正しい

●定款で定めれば、万一、社外取締役が、任務を怠って誰かに損害を与えても、社外取締役自身が取るべき賠償額の上限を、事前に決めておくことができる

株式会社は、「社外取締役、会計参与、社外監査役又は会計監査人(社外取締役等)」の任務懈怠責任について、当該社外取締役等が職務を行うにつき善意かつ重大な過失がないときの損害賠償の限度額を、社外取締役等と契約締結することができる旨を定款で定めることができます(会社法427条1項)。分かりやすく言えば、定款で定めれば、万一、社外取締役が、任務を怠って誰かに損害を与えても、社外取締役自身が取るべき賠償額の上限を、事前に決めておくことができるということです。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問38|会社法:譲渡制限株式

譲渡制限株式に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 株式会社は、定款において、その発行する全部の株式の内容として、または種類株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨を定めることができる。
  2. 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を当該株式会社以外の他人に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認するか否かを決定することを請求することができる。
  3. 譲渡制限株式を取得した者は、当該株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認するか否かの決定をすることを請求することができるが、この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがない一定の場合を除き、その取得した譲渡制限株式の株主として株主名簿に記載もしくは記録された者またはその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
  4. 株式会社が譲渡制限株式の譲渡の承認をするには、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会の特別決議によらなければならない。
  5. 株式会社は、相続その他の一般承継によって当該株式会社の発行した譲渡制限株式を取得した者に対し、当該譲渡制限株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。

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【答え】:4

【解説】

1.株式会社は、定款において、その発行する全部の株式の内容として、または種類株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨を定めることができる。

1・・・正しい

●株式の譲渡制限 → 定款で定める(全部の株式、種類株式どちらでも発行できる)

株式会社は、その発行する①全部の株式の内容として、または②種類株式の内容として、「譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨(=譲渡制限)」を定めることができます(会社法107条1項1号、108条1項4号) 。よって、本肢は正しいです。

家族で経営している会社等のように、株式が自由に譲渡され、好ましくない者が株主なることを排除したい場合もあります。そのような場合に、会社が、定款に「株式の譲渡による取得は会社の承認を要する」と定めて、株式の譲渡制限をすることができます。

【 ①全部の株式の内容として定めることができるもの】

発行する全部の株式に共通する内容として特別な定めを設けることができるのは、下記3つです(107条1項)。

下記3つが特別な定めのある株式です。

  1. 譲渡制限株式
  2. 取得請求権付株式
  3. 取得条項付株式
【 ②種類株式の内容として定めることができるもの】

株式会社は定款で定めることにより、内容の異なる2種類以上の株式を発行することができます(108条1項)。

つまり、普通株式のみを発行している会社が、発行済株式の一部を下記の内容の株式に変更する場合、「普通株式」と「他の種類株式」の2種類となります。

  1. 剰余金配当に関する種類株式
  2. 残余財産の分配に関する種類株式
  3. 議決権の制限に関する種類株式
  4. 譲渡制限付種類株式(全部の株式に共通する株式にもできる)
  5. 取得請求権付種類株式(全部の株式に共通する株式にもできる)
  6. 取得条項付種類株式(全部の株式に共通する株式にもできる)
  7. 全部取得条項付種類株式
  8. 拒否権付種類株式
  9. 種類株主総会において取締役または監査役を選任する株式
2.譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を当該株式会社以外の他人に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認するか否かを決定することを請求することができる。

2・・・正しい

(1)株主Aが、譲渡制限株式を他人Bに譲り渡そうとする → 株主Aは会社に対して譲渡承認請求ができる(本肢)
(2)株主Aが譲渡制限株式を他人Bに譲り渡した → 取得者Bは会社に対して譲渡承認請求ができる(株主と共同して請求する)

(1)株主Aが譲渡制限株式を他人Bに譲り渡そうとするときは、株主Aは会社に対し、当該譲渡を承認するか否かの決定をすることを請求することができます(会社法136条)。よって、本肢は正しいです。

(2)また、譲渡制限株式を取得した株式取得者Bは、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

(1)は譲渡前で、(2)は譲渡後の内容です。

3.譲渡制限株式を取得した者は、当該株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認するか否かの決定をすることを請求することができるが、この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがない一定の場合を除き、その取得した譲渡制限株式の株主として株主名簿に記載もしくは記録された者またはその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
3・・・正しい
(1)株主Aが、譲渡制限株式を他人Bに譲り渡そうとする → 株主Aは会社に対して譲渡承認請求ができる(2)株主Aが譲渡制限株式を他人Bに譲り渡した → 取得者Bは会社に対して譲渡承認請求ができる(株主と共同して請求する)・・・本肢

譲渡制限株式を取得した株式取得者は、会社に対し、当該株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(137条1項)。
上記「株式取得者からの承認の請求」は、株主名簿上の株主又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければなりません(同条2項)。

4.株式会社が譲渡制限株式の譲渡の承認をするには、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会の特別決議によらなければならない。
4・・・誤り
●譲渡承認の決定 → 株主総会の普通決議(取締役会設置会社にあっては、取締役会決議)株式会社が、譲渡制限株式の譲渡の承認をするか否かの決定をする場合、
定款に定めがあれば、その内容に従い、
定款に定めがなければ、株主総会の普通決議(取締役会設置会社にあっては、取締役会決議)によらなければなりません(139条1項)。
よって、「特別決議」が誤りです。

 
→譲渡制限株式を、会社が買い取るということは、「特定の株主から」「自己株式を」取得することと同じです。 つまり、「特別決議」が必要となります。
自己株式を取得する場合、すべての株主に譲渡の機会を与えるのが原則(この場合、普通決議)。そのため、他の株主との間に不公平とならないように特に配慮する必要があるから
※ 会社が自己株式を取得することになるので、財源規制(分配可能額を超えてはいけない)が適用される
※ 子会社から自己株式を取得する場合は、例外として、「普通決議」でよい!
※ 発行株式の全部を譲渡制限株式にする定款変更 → 株主の半数以上 かつ 議決権の2/3以上特殊決議
5.株式会社は、相続その他の一般承継によって当該株式会社の発行した譲渡制限株式を取得した者に対し、当該譲渡制限株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。
5・・・正しい
●相続などの一般承継により譲渡制限株式を取得 → 会社は売渡請求できる旨を定款で定めることができる選択肢1~4は、「譲渡(売買や贈与)」によって譲渡制限株式を取得された場合、会社の承認が必要と定款で定めて、好ましくない者への株式譲渡を阻止する内容です。一方、本問は「相続等の一般承継」によって譲渡制限株式を取得された場合の内容です。この場合でも、会社に取って好ましくない者が取得する可能性もあります。そこで、会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができます(会社法174条)。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問36|商法:商行為

商人または商行為に関する次のア~オの記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

ア.商行為の委任による代理権は、本人の死亡によって消滅する。

イ.商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

ウ.数人の者がその一人または全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。

エ.保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるときは、その債務は当該債務者および保証人が連帯して負担する。

オ.自己の営業の範囲内で、無報酬で寄託を受けた商人は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:2

【解説】

ア.商行為の委任による代理権は、本人の死亡によって消滅する。

ア・・・誤り
●商行為の委任による代理権 → 本人死亡、消滅しない

本人が死亡したとしても、商行為の委任による代理権は消滅しません(商法506条)。

例えば、商行為を行う個人A(本人)がいて、支配人Bを用いて商行為を代理させていたとき、Aが死亡しても、支配人Bの代理権は消滅せず、そのまま営業を続けられます。

イ.商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

イ・・・正しい

●営業の範囲内の商人の行為 → 商人は相当な報酬を請求することができる

商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができます(商法512条)。

【注意点】 「報酬の契約」をしていなくても、相当の報酬を請求できます。

ウ.数人の者がその一人または全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。
ウ・・・正しい
●数人の者が「一人又は全員」のために商行為を行う → 連帯債務となる

数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担します(商法511条1項)。例えば、A社とB社が共同して、建設の仕事を受けたとします。その仕事を、下請業者C社に任せて、C社が建設工事を行う場合、工事代金は、A社とB社どちらに対して請求してもよいです(A社とB社の連帯債務となる)。

エ.保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるときは、その債務は当該債務者および保証人が連帯して負担する。
エ・・・正しい
●債務が「主たる債務者の商行為」によって生じたもの → 保証人は連帯保証人となる

保証人がある場合において、「①債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき」又は「②保証が商行為であるとき」は、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担します(商法511条2項)。

①については、主たる債務者Aが商行為を行って、債務を負担し、一般人であるBが保証人となった場合、Bの保証は、自動的に連帯保証になるということです。例えば、子Aが飲食店を営んでおり、業務用冷蔵庫を購入する契約をして、親Bが、それを保証した場合、親Bは、連帯保証人となるということです。

②については、会社員がマイホーム購入のために住宅ローンを組むこと(借り入れをすること)は、商行為ではありませんが、保証人が保証会社の場合、その保証は連帯保証になります(保証会社は連帯保証人となる)。

オ.自己の営業の範囲内で、無報酬で寄託を受けた商人は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。

オ・・・誤り
●商人がその営業の範囲内において寄託を受けたとき → 報酬の有無にかかわらず、善管注意義務を負う

商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けなくとも善良な管理者の注意をしなければなりません(商法595条)。寄託とは、モノを預かることを言いますが、商法の対象となってくるのは、他人のためにモノを倉庫に保管することを業(仕事)する者の取引です。例えば、倉庫業者の倉庫寄託契約です。倉庫業者は、もし、お金をもらってなくても商売の範囲内で物を預かったなら、モノの保管のプロとして善管注意義務を負うということです。

■「自己の財産に対するのと同一の注意義務」と「善良な管理者の注意義務(他人の物を扱う場合の注意義務)」とでは、後者の方が、より細かい注意義務が求められます。
前者は、「自分の財産と同じくらいの注意義務」でよいので、後者ほどの注意義務は求められません。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略