憲法の過去問

平成22年・2010|問41|憲法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

・・・憲法以下の法令相互の効力関係を定めることも、憲法のなすべき事項の範囲に属する。憲法は、[ ア ]・[ イ ]などの制定権をそれぞれ特別の[ ウ ]に授権すると同時に、それらの法令の効力関係をも定めなければならない。明治憲法には、[ ア ]と[ イ ]との効力関係について、第九条但書に、「[ イ ]ヲ以テ[ ア ]ヲ変更スルコトヲ得ス」とあり、第八条に、緊急[ イ ]は、[ ア ]に代わる効力をもつ旨を示す規定があった。日本国憲法には、そのような明文の規定はない。政令と[ ア ]、最高裁判所規則と[ ア ]、地方公共団体の条例と[ ア ]・[ イ ]など、個々の場合について、憲法の趣旨を考えてみるより仕方がない。例えば、政令と[ ア ]との関係においては、憲法は、[ エ ]を唯一の立法[ ウ ]とし、また、政令としては、[ ア ]の規定を実施するための政令、いわゆる執行[ イ ]的政令と、[ ア ]の委任にもとづく政令・いわゆる委任[ イ ]的政令としか認めていないから、一般に政令の効力は[ ア ]に劣るとしているものと解せられ、最高裁判所規則と[ ア ]との関係においては、憲法は、国民の代表[ ウ ]であり、国権の最高[ ウ ]、かつ、唯一の立法[ ウ ]である[ エ ]の立法として、憲法に次ぐ形式的効力を与えている[ ア ]に優位を認めているものと解せられる。

(出典清宮四郎「憲法I〔第3版〕」より)

1:主体 2:内閣 3:条約 4:権力 5:慣習法 6:憲法付属法 7:機関 8:天皇 9:命令 10:判例 11:公務員 12:法規 13:国会 14:詔勅 15:習律 16:官職 17:内閣総理大臣 18:法律 19:通達 20:行政各部

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【答え】:ア:18、イ:9、ウ:7、エ:13
【解説】

・・・憲法以下の法令相互の効力関係を定めることも、憲法のなすべき事項の範囲に属する。憲法は、[ア:法律]・[イ:命令]などの制定権をそれぞれ特別の[ウ:機関]に授権すると同時に、それらの法令の効力関係をも定めなければならない。明治憲法には、[ア:法律]と[イ:命令]との効力関係について、第九条但書に、「[イ:命令]ヲ以テ[ア:法律]ヲ変更スルコトヲ得ス」とあり、第八条に、緊急[イ:命令]は、[ア:法律]に代わる効力をもつ旨を示す規定があった。日本国憲法には、そのような明文の規定はない。政令と[ア:法律]、最高裁判所規則と[ア:法律]、地方公共団体の条例と[ア:法律]・[イ:命令]など、個々の場合について、憲法の趣旨を考えてみるより仕方がない。例えば、政令と[ア:法律]との関係においては、憲法は、[エ:国会]を唯一の立法[ウ:機関]とし、また、政令としては、[ア:法律]の規定を実施するための政令、いわゆる執行[イ:命令]的政令と、[ア:法律]の委任にもとづく政令・いわゆる委任[イ:命令]的政令としか認めていないから、一般に政令の効力は[ア:法律]に劣るとしているものと解せられ、最高裁判所規則と[ア:法律]との関係においては、憲法は、国民の代表[ウ:機関]であり、国権の最高[ウ:機関]、かつ、唯一の立法[ウ:機関]である[エ:国会]の立法として、憲法に次ぐ形式的効力を与えている[ア:法律]に優位を認めているものと解せられる。

ア.イ.憲法は、[ ア ]・[ イ ]などの制定権をそれぞれ特別の[ ウ ]に授権すると同時に、それらの法令の効力関係をも定めなければならない。・・・

政令としては、[ ア ]の規定を実施するための政令、いわゆる執行[ イ ]的政令と、[ ア ]の委任にもとづく政令・いわゆる委任[ イ ]的政令としか認めていないから、一般に政令の効力は[ ア ]に劣るとしているものと解せられ

ア・・・法律
イ・・・命令

後半部分の方が分かりやすいです。
政令は、法律の規定を実施するための執行命令的政令法律の委任に基づく、委任命令的政令があります。

これは、執行命令と委任命令が分かれば、そこから導けます。

また、前半部分では、

「憲法は、ア・イなどの制定権をウに与える」と記述されており
「法律」と「命令」を入れても矛盾しません。

ウ.例えば、政令と[ ア ]との関係においては、憲法は、[ エ ]を唯一の立法[ ウ ]・・・

憲法は、国民の代表[ ウ ]であり、国権の最高[ ウ ]、かつ、唯一の立法[ ウ ]である[ エ ]の立法として、憲法に次ぐ形式的効力を与えている[ ア ]に優位を認めているものと解せられる。

ウ・・・機関
エ・・・国会

国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関です(憲法41条)。
ここから、上記は導けます。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問7|憲法・国会

議事手続は、最終的には各議院の自律権にゆだねられる問題だとしても、憲法が定める定足数のハードルの低さを考慮に入れると、ごく少数の議員のみによって議決が成立することのないよう配慮しつつ、多数決による議決の成立可能性を確保するよう慎重な考慮が求められる。次に掲げるのは、かつて衆議院における議事手続について争われた事例である。そこで採られるべき妥当な解決として、先例および通説の立場を示すのは、次の1~5の記述のうちどれか。

1948年10月14日、衆議院における内閣総理大臣指名の手続において、以下のような投票が行われた。

議員定数 466

吉田茂  184票

片山哲  87票

その他  43票

白票   86票

  1. 総議員の過半数に達したものがいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。
  2. 白票を投じたものも出席議員数に算入した上で、出席議員の過半数に達したものがいないため、上位2名による決選投票になる。
  3. 出席議員の3分の2以上の票を集めた候補がいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。
  4. 白票には賛否いずれの意思表示も含まれていないから、白票を除いて計算すると、出席議員の過半数に達した吉田茂が直ちに指名される。
  5. 衆議院ではいずれの候補も過半数に達しないため、参議院の指名を国会の指名とする。

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【答え】:2
【解説】

1.総議員の過半数に達したものがいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。
1・・・誤り
両議院の議事は、原則、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによります(憲法56条2項)。
したがって、総議員の過半数で決するわけではないので誤りです。
2.白票を投じたものも出席議員数に算入した上で、出席議員の過半数に達したものがいないため、上位2名による決選投票になる。
2・・・正しい
内閣総理大臣を指名するための投票の場合、白票を投じた者も出席議員に算入します。
そして、投票の過半数を得た者を「内閣総理大臣に指名された者」とします(衆議院規則18条2項)。一方、投票の過半数を得た者がいないときは、上位2名で決選投票が行われます(同条3項)。今回、出席議員(400)なので、出席議員の過半数は201票。吉田茂が184票で、過半数を得ていないので、上位2名(吉田茂と片山哲)で決選投票となります。

3.出席議員の3分の2以上の票を集めた候補がいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。
3・・・誤り
両議院の議事は、原則、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによります(憲法56条2項)。
内閣総理大臣の指名も出席議員の過半数で決するので、「3分の2以上」は誤りです。
4.白票には賛否いずれの意思表示も含まれていないから、白票を除いて計算すると、出席議員の過半数に達した吉田茂が直ちに指名される。
4・・・誤り
「白票には賛否いずれの意思表示も含まれていないから、白票を除いて計算する」は誤りです。内閣総理大臣を指名するための投票の場合、白票を投じた者も出席議員に算入します。
5.衆議院ではいずれの候補も過半数に達しないため、参議院の指名を国会の指名とする。
5・・・誤り
内閣総理大臣の指名について、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、①両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は②衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、

衆議院の議決国会の議決とします(憲法67条2項)。

上記は「衆議院の優越」に関するルールなので、
参議院の議決が国会の議決とはなりません。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問6|憲法・財政

次のア~エの記述のうち、租税法律主義を定める憲法84条についての最高裁判所の判例の考え方を示すものとして、正しいものの組合せはどれか。

ア.国または地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付として徴収する金銭は、その形式を問わず、憲法84条に規定する租税に当たる。

イ.市町村が行う国民健康保険の保険料は、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるから、憲法84条は直接適用される。

ウ.国民健康保険税は、目的税であって、反対給付として徴収されるものではあるが形式が税である以上は、憲法84条の規定が適用される。

エ.市町村が行う国民健康保険の保険料は、租税以外の公課ではあるが、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するので、憲法84条の趣旨が及ぶ。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:5【解説】

ア.国または地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付として徴収する金銭は、その形式を問わず、憲法84条に規定する租税に当たる。

ア・・・誤り

憲法84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

判例によると

「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たるというべきである。」

と判示しています。

そして、特別の給付に対する反対給付として徴収する金銭は上記に入らず、憲法84条の租税には当たりません。

【判例理解】 

「特別の給付」とは、国等が給付するモノを指し、具体的には、国民が医療サービスを受けた時に国等が診察料の一部を負担することを指します。 (国民が3割負担の場合は、国等が7割負担している)
この国が給付するモノ(上記事例では、国等による医療サービスの一部負担)に対して、国民が反対給付として、保険料を払っています。
このように、何かをしてもらって、それに対してお金を払っている場合は、憲法84条の租税に入らないということです。

【租税の具体例】 

消費税は、国等から何もしてもらっていないにも関わらず、モノを買ったらお金(消費税)を払わないといけません。これが憲法84条の租税です。

イ.市町村が行う国民健康保険の保険料は、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるから、憲法84条は直接適用される。
イ・・・誤り
選択肢1と同様の判例によると「市町村が行う国民健康保険の保険料は、これ(租税)と異なり、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものである。・・・したがって、上記保険料に憲法84条の規定が直接に適用されることはないというべきである」と判示しています。よって、憲法84条は直接適用されないので、誤りです。

ウ.国民健康保険税は、目的税であって、反対給付として徴収されるものではあるが形式が税である以上は、憲法84条の規定が適用される。
ウ・・・正しい
国民健康保険「料」の場合は、選択肢アイの通り、憲法84条の規定が適用されないですが国民健康保険「税」の場合は、税金である以上、憲法84条の規定が適用されます。よって、正しいです。
エ.市町村が行う国民健康保険の保険料は、租税以外の公課ではあるが、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するので、憲法84条の趣旨が及ぶ。
エ・・・正しい
選択肢1と同様の判例によると「租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるが、その場合であっても、租税以外の公課は、租税とその性質が共通する点や異なる点があり、また、賦課徴収の目的に応じて多種多様であるから、賦課要件が法律又は条例にどの程度明確に定められるべきかなどその規律の在り方については、当該公課の性質、賦課徴収の目的、その強制の度合い等を総合考慮して判断すべきものである。」
と判示しています。つまり、租税以外の公課ではあるが、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するので、憲法84条の趣旨が及びます。憲法84条が適用されるのではないが、
憲法84条の趣旨は及びます(=憲法84条の考え方が使われる)


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問5|憲法・精神的自由

表現の自由の保障根拠に関する次の記述のうち、他と異なる考え方に立脚しているものはどれか。

  1. 広告のような営利的な表現活動もまた、国民一般が消費者として様々な情報を受け取ることの重要性に鑑み、表現の自由の保護が及ぶものの、その場合でも保障の程度は民主主義に不可欠な政治的言論の自由よりも低い、とする説がある。
  2. 知る権利は、「国家からの自由」という伝統的な自由権であるが、それにとどまらず、参政権(「国家への自由」)的な役割を演ずる。個人は様々な事実や意見を知ることによって、はじめて政治に有効に参加することができるからである。
  3. 表現の自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法の合憲性と同等の基準によって審査されなければならない、とする説が存在するが、その根拠は個人の自律にとっては経済活動も表現活動も同等な重要性を有するためである。
  4. 名誉毀損的表現であっても、それが公共の利害に関する事実について公益を図る目的でなされた場合には、それが真実であるか、真実であると信じたことに相当の理由があるときは処罰されないが、これは政治的な言論を特に強く保護する趣旨と解される。
  5. 報道機関の報道の自由は、民主主義社会において、国民が国政に関与するために重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであり、表現の自由の保障内容に含まれる。

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【答え】:3【解説】
「表現の自由を支える価値(表現の自由の保障根拠)」とは、分かりやすく言うと、「表現の自由を保障する理由」「表現の自由で保障すべき権利」ということです。これには2つの価値(保障理由)があります。

  1. 自己実現の価値個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させる個人的な価値(権利)
  2. 自己統治の価値政治に参加する価値(権利)
1.広告のような営利的な表現活動もまた、国民一般が消費者として様々な情報を受け取ることの重要性に鑑み、表現の自由の保護が及ぶものの、その場合でも保障の程度は民主主義に不可欠な政治的言論の自由よりも低い、とする説がある。
1・・・自己統治の価値を重視(他と異ならない)
「広告のような営利的な表現活動もまた、国民一般が消費者として様々な情報を受け取ることの重要性に鑑み、表現の自由の保護が及ぶ」というのは、「自己実現の価値」に関する内容です。一方で「民主主義に不可欠な政治的言論の自由」は「自己統治の価値」に関する内容です。つまり、問題文は、「自己実現の価値」は「自己統治の価値」よりも保障の程度が低い、という内容です。言い換えると「政治的言論の自由(自己統治の価値)」の方が高いということです。つまり、自己統治の価値を重視した考え方です。

2.知る権利は、「国家からの自由」という伝統的な自由権であるが、それにとどまらず、参政権(「国家への自由」)的な役割を演ずる。個人は様々な事実や意見を知ることによって、はじめて政治に有効に参加することができるからである。
2・・・自己統治の価値を重視(他と異ならない)
「政治に有効に参加することができる」というのは「自己統治の価値」です。
つまり、「自己統治の価値」を重視しています。
3.表現の自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法の合憲性と同等の基準によって審査されなければならない、とする説が存在するが、その根拠は個人の自律にとっては経済活動も表現活動も同等な重要性を有するためである。
3・・・自己実現の価値を重視(他と異なる)
「経済的自由を規制する立法の合憲性と同等の基準によって審査されなければならない」「経済活動も表現活動も同等な重要性を有する」というのは、「自己実現の価値」を重視しています。
4.名誉毀損的表現であっても、それが公共の利害に関する事実について公益を図る目的でなされた場合には、それが真実であるか、真実であると信じたことに相当の理由があるときは処罰されないが、これは政治的な言論を特に強く保護する趣旨と解される。
4・・・自己統治の価値を重視(他と異ならない)
「政治的な言論を特に強く保護する趣旨」ということは「自己統治の価値」を重視しています。
5.報道機関の報道の自由は、民主主義社会において、国民が国政に関与するために重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであり、表現の自由の保障内容に含まれる。
5・・・自己統治の価値を重視(他と異ならない)
「国民が国政に関与するために重要な判断の資料を提供し」ということから「自己統治の価値」を重視しています。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問4|憲法・法の下の平等

次の文章は、平等原則について、先例として引用されることの多い最高裁判所判決の一部である。文中の空欄[ア]~[エ]にあてはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

思うに、憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解されるから、高令(齢)であるということは右の社会的身分に当らないとの原審の判断は相当と思われるが、右各法条は、国民に対し、法の下の平等を保障したものであり、右各法条に列挙された事由は[ ア ]なものであって、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当であるから、原判決が、高令(齢)であることは社会的身分に当らないとの一事により、たやすく上告人の・・・主張を排斥したのは、必ずしも十分に意を尽したものとはいえない。しかし、右各法条は、国民に対し[ イ ]な平等を保障したものではなく、差別すべき[ ウ ]な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、[ エ ]に即応して[ ウ ]と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない。

(最大判昭和39年5月27日民集18巻4号676頁以下)

  1. ア:具体的 イ:形式的 ウ:客観的 エ:事柄の性質
  2. ア:例示的 イ:絶対的 ウ:合理的 エ:公共の福祉
  3. ア:例示的 イ:相対的 ウ:合理的 エ:事柄の性質
  4. ア:具体的 イ:一般的 ウ:実質的 エ:公共の福祉
  5. ア:例示的 イ:絶対的 ウ:合理的 エ:事柄の性質

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【答え】:5

【解説】

思うに、憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解されるから、高令(齢)であるということは右の社会的身分に当らないとの原審の判断は相当と思われるが、右各法条は、国民に対し、法の下の平等を保障したものであり、右各法条に列挙された事由は[ア:例示的]なものであって、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当であるから、原判決が、高令(齢)であることは社会的身分に当らないとの一事により、たやすく上告人の・・・主張を排斥したのは、必ずしも十分に意を尽したものとはいえない。しかし、右各法条は、国民に対し[イ:絶対的]な平等を保障したものではなく、差別すべき[ウ:合理的]な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、[エ:事柄の性質]に即応して[ウ:合理的]と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない。

ア.右各法条に列挙された事由は[ ア ]なものであって、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当である

ア・・・例示的
憲法第14条1項には、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定されています。必ずしもそれ(人種、信条、性別、社会的身分又は門地)に限るものではない、と上記問題文(判例)に記載されているので、これらは、一例に過ぎないということです。よって、「アには例示的」が入ります。

イ.ウ.エ.しかし、右各法条は、国民に対し[ イ ]な平等を保障したものではなく、差別すべき[ ウ ]な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、[ エ ]に即応して[ ウ ]と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない。

イ・・・絶対的
ウ・・・合理的
エ・・・事柄の性質
「右各法条」とは、「憲法14条1項及び地方公務員法13条」を指すのですが、
憲法14条1項の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」を考えてみても、
この平等は、絶対的な平等を保障しているわけではありません。人それぞれ違いはあります。そのため、合理的な理由がなく差別することはダメ!だということです。そして、事柄の性質に応じて合理的な差別かどうかを判断する必要があるいうことです。よって「右各法条は、国民に対し[イ:絶対的]な平等を保障したものではなく、差別すべき[ウ:合理的]な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、[エ:事柄の性質]に即応して[ウ:合理的]と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない。」
となります。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問3|憲法・基本的人権

基本的人権の限界に関して、次の文章のような見解が主張されることがある。この見解と個別の人権との関係に関わる次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

日本国憲法は、基本的人権に関する総則的規定である13条で、国民の権利については「公共の福祉に反しない限り」国政の上で最大の尊重を必要とすると定めている。これは、それぞれの人権規定において個別的に人権の制約根拠や許される制約の程度を規定するのではなく、「公共の福祉」による制約が存する旨を一般的に定める方式をとったものと理解される。したがって、個別の人権規定が特に制約について規定していない場合でも、「公共の福祉」を理由とした制約が許容される。

ア.憲法36条は、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。

イ.憲法15条1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の制限を許さない絶対的権利とする立場を明らかにしている。

ウ.憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした制限を許容する立場を明らかにしている。

エ.憲法21条2項前段は、「検閲は、これをしてはならない」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の例外を許さない絶対的禁止とする立場を明らかにしている。

オ.憲法18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】

ア.憲法36条は、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。
ア・・・誤り
判例によると、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」について、公共の福祉を理由とした例外を一切認めず、何があっても禁止と言っています。よって、本肢は誤りです。

イ.憲法15条1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の制限を許さない絶対的権利とする立場を明らかにしている。
イ・・・誤り
判例によると、国民の選挙権について、一定の犯罪者等の選挙権について一定の制限を許しています
つまり、「最高裁判例はこれを一切の制限を許さない絶対的権利とする立場を明らかにしている」は誤りです。

ウ.憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした制限を許容する立場を明らかにしている。
ウ・・・正しい
判例によると、「国民はまた、憲法が国民に保障する基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うのである。それ故、新憲法の下における言論の自由といえども、国民の無制約な恣意のままに許されるものではなく、常に公共の福祉によって調整されなければならぬのである。」

と判示しており、「公共の福祉」を理由として、集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由を制限することを認めています。

エ.憲法21条2項前段は、「検閲は、これをしてはならない」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の例外を許さない絶対的禁止とする立場を明らかにしている。

エ・・・正しい
判例によると、『憲法21条2項前段は、「検閲は、これをしてはならない。」と規定する。憲法が、表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を同条一項に置きながら、別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、

検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共の福祉を理由とする例外の許容をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである』

と判示しています。

つまり、検閲は何があっても禁止だということです。

オ.憲法18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。
オ・・・誤り
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない(憲法18条)。
これは、例外なく、奴隷等を行ってはいけない、という意味です。
よって、本肢のような判例はなく、誤りです。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問41|憲法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

ある主張や意見を社会に伝達する自由を保障する場合に、その表現の[ ア ]を確保することが重要な意味をもっている。特に表現の自由の行使が行動を伴うときには表現の[ ア ]が必要となってくる。表現の[ ア ]が提供されないときには、多くの意見は受け手に伝達することができないといってもよい。[ イ ]が自由に出入りできる[ ア ]は、それぞれその本来の利用目的を備えているが、それは同時に表現の[ ア ]として役立つことが少なくない。道路、公園、広場などは、その例である。これを[ ウ ]と呼ぶことができよう。この[ ウ ]が表現の[ ア ]として用いられるときには、[ エ ]に基づく制約を受けざるをえないとしても、その機能にかんがみ、表現の自由の保障を可能な限り配慮する必要があると考えられる。
もとより、道路のような公共用物と、[ イ ]が自由に出入りすることのできる[ ア ]とはいえ、私的な[ エ ]に服するところとは、性質に差異があり、同一に論ずることはできない。しかし、後者にあっても、[ ウ ]たる性質を帯有するときには、表現の自由の保障を無視することができないのであり、その場合には、それぞれの具体的状況に応じて、表現の自由と[ エ ]とをどのように調整するかを判断すべきこととなり、前述の較量の結果、表現行為を規制することが表現の自由の保障に照らして是認できないとされる場合がありうるのである。(最三小判昭和59年12月18日刑集38巻12号3026頁以下に付された伊藤正己裁判官の補足意見をもとに作成した)
1:手段 2:とらわれの聴衆 3:ガバメント・スピーチ 4:時間 5:一般公衆 6:プライバシー 7:公共の福祉 8:敵対的聴衆 9:フェア・コメント 10:デモ参加者 11:パブリック・フォーラム 12:内容 13:警察官 14:思想の自由市場 15:方法論 16:管理権  17:権力関係 18:社会的権力 19:場 20:現実的悪意の法理

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【答え】:ア:19、イ:5、ウ:11、エ:16

【解説】

ある主張や意見を社会に伝達する自由を保障する場合に、その表現の[ア:場]を確保することが重要な意味をもっている。特に表現の自由の行使が行動を伴うときには表現の[ア:場]が必要となってくる。表現の[ア:場]が提供されないときには、多くの意見は受け手に伝達することができないといってもよい。[イ:一般公衆]が自由に出入りできる[ア:場]は、それぞれその本来の利用目的を備えているが、それは同時に表現の[ア:場]として役立つことが少なくない。道路、公園、広場などは、その例である。これを[ウ:パブリック・フォーラム]と呼ぶことができよう。この[ウ:パブリック・フォーラム]が表現の[ア:場]として用いられるときには、[エ:管理権]に基づく制約を受けざるをえないとしても、その機能にかんがみ、表現の自由の保障を可能な限り配慮する必要があると考えられる。
もとより、道路のような公共用物と、[イ:一般公衆]が自由に出入りすることのできる[ア:場]とはいえ、私的な[エ:管理権]に服するところとは、性質に差異があり、同一に論ずることはできない。しかし、後者にあっても、[ウ:パブリック・フォーラム]たる性質を帯有するときには、表現の自由の保障を無視することができないのであり、その場合には、それぞれの具体的状況に応じて、表現の自由と[エ:管理権]とをどのように調整するかを判断すべきこととなり、前述の較量の結果、表現行為を規制することが表現の自由の保障に照らして是認できないとされる場合がありうるのである。

ア.イ.ある主張や意見を社会に伝達する自由を保障する場合に、その表現の[ ア ]を確保することが重要な意味をもっている。特に表現の自由の行使が行動を伴うときには表現の[ ア ]が必要となってくる。表現の[ ア ]が提供されないときには、多くの意見は受け手に伝達することができないといってもよい。[ イ ]が自由に出入りできる[ ア ]は、それぞれその本来の利用目的を備えているが、それは同時に表現の[ ア ]として役立つことが少なくない。道路、公園、広場などは、その例である。

ア・・・場
「表現の[ ア ]が提供されないときには、多くの意見は受け手に伝達することができないといってもよい。」
上記から、表現をする「場所や手段」がなければ、相手に表現を伝達することができません。
そして、その例として「道路、公園、広場」となっているので、「手段」ではなく「アには場」が入ることが分かります。さらに、「[ イ ]が自由に出入りできる[ ア ]は、それぞれその本来の利用目的を備えているが、それは同時に表現の[ ア ]として役立つことが少なくない。道路、公園、広場などは、その例である。」
ということから、「イには一般公衆」が入ります。道路や公園、広場は、誰でも自由に出入りできる場所だからです。

ウ.表現の[ア:場]として役立つことが少なくない。道路、公園、広場などは、その例である。これを[ ウ ]と呼ぶことができよう。

ウ・・・パブリック・フォーラム
公園、広場、公会堂、道路などの公の施設は、それぞれ本来の目的をもっているが、同時に集会により一定の表現を行う場所としても有用であり、これをパブリック・フォーラムと言います。よって、「ウにはパブリック・フォーラム」が入ります。

エ.道路のような公共用物と、[イ:一般公衆]が自由に出入りすることのできる[ア:場]とはいえ、私的な[ エ ]に服するところとは、性質に差異があり、同一に論ずることはできない。しかし、後者にあっても、[ウ:パブリック・フォーラム]たる性質を帯有するときには、表現の自由の保障を無視することができないのであり、その場合には、それぞれの具体的状況に応じて、表現の自由と[ エ ]とをどのように調整するかを判断すべきこととなり、前述の較量の結果、表現行為を規制することが表現の自由の保障に照らして是認できないとされる場合がありうるのである。

エ・・・管理権
公共の場を、私的に利用することは、パブリックフォーラムとしての性質が異なります。私的に利用するということは、私的な管理権に服すると言い換えることができます。よって、「エには管理権」が入ります。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問7|憲法・法の下の平等

次の文章は、衆議院議員選挙の効力を争った、ある高等裁判所判決の一節である。当時の公職選挙法別表に定められた選挙区への定数配分については、先の総選挙に関し、最高裁判所が、客観的には違憲状態であるが、なお選挙時には改正に必要な合理的期間を徒過していなかったことを理由に、合憲判断を下していた。高裁判決では、こうした状態の下で解散総選挙が行われた事案に関して、憲法判断が求められている。そこで扱われた問題を論じた文章として、妥当なものはどれか。

被告は、本件選挙は内閣の衆議院解散権の行使によるものであるところ、このような選挙については、投票価値の較差を是正したうえでこれを行うかどうかは立法政策の問題である旨主張する。

本件選挙が内閣の衆議院解散権の行使に基づくものであることは公知の事実であるが、前記の較差是正を行うべき合理的期間は、選挙権の平等を害するような較差を生ぜしめる議員定数配分規定がその間において改正されることを合理的に期待しうるに足る期間なのであるから、右期間が経過した以上、右規定は憲法に違反するものといわざるをえないのであり、右期間経過後に行われる選挙の効力については、それが内閣の解散権の行使によるものであつても、法律上他の事由に基づく選挙と異なつた取扱いをすべき理由はない。その結果として内閣の解散権が事実上制約されることが起こりうるとしても、それは事柄の性質上やむをえないことであり、以上とは逆に、内閣の解散権を確保するために違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するものとのそしりを免れないであろう。

(東京高判昭和59年10月19日行集35巻10号1693頁以下)

  1. この判決は、内閣の解散権行使の前提として、衆議院での内閣不信任決議案の可決が必要的だ、という立場にたっている。
  2. 内閣の解散権行使の結果行われた総選挙について、その無効を争う選挙訴訟は三審制であって、本件は控訴審判決である。
  3. この判決は、政治上の必要があれば、本件のような事案で内閣が解散権を行使しても総選挙は適法だ、という立場にたっている。
  4. 本件訴訟は、公職選挙法の定める選挙訴訟として行われているので、いわゆる機関訴訟の1形態と位置づけられるものである。
  5. この判決は、現時点ではすでに改正に必要な合理的期間を徒過しており、判例によれば当該議員定数配分規定は違憲だ、という立場にたっている。

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【答え】:5【解説】

被告は、本件選挙は内閣の衆議院解散権の行使によるものであるところ、このような選挙については、投票価値の較差を是正したうえでこれを行うかどうかは立法政策の問題である旨主張する。

本件選挙が内閣の衆議院解散権の行使に基づくものであることは公知の事実であるが、前記の較差是正を行うべき合理的期間は、選挙権の平等を害するような較差を生ぜしめる議員定数配分規定がその間において改正されることを合理的に期待しうるに足る期間なのであるから、右期間が経過した以上、右規定は憲法に違反するものといわざるをえないのであり、右期間経過後に行われる選挙の効力については、それが内閣の解散権の行使によるものであつても、法律上他の事由に基づく選挙と異なつた取扱いをすべき理由はない。その結果として内閣の解散権が事実上制約されることが起こりうるとしても、それは事柄の性質上やむをえないことであり、以上とは逆に、内閣の解散権を確保するために違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するものとのそしりを免れないであろう。

上記を分かりやすく解説すると、

  1. 「内閣の衆議院解散権の行使に基づいて、選挙は行われる」ということは誰もが知る事実です。
  2. 一票の較差の是正を行うべき合理的期間は、合理的に十分だと判断できる期間内にすべきである
  3. だから、その期間が経過した以上、憲法に違反するものといわざるをえない。
  4. 上記期間経過後に行われる選挙の効力については、それが内閣の解散権の行使によるものであつても、無効である。
  5. その結果として内閣の解散権が事実上制約されることが起こりうるとしても、それは仕方がない。
  6. 上記とは逆に、「内閣の解散権を確保するため」に、上記無効である選挙を、あえて、有効にすることは本末転倒だから、非難されるであろう。
1.この判決は、内閣の解散権行使の前提として、衆議院での内閣不信任決議案の可決が必要的だ、という立場にたっている。
1・・・妥当ではない
上記解説の通り、「衆議院での内閣不信任決議案の可決が必要的だ」とは言っていません。
よって、妥当ではないです。
2.内閣の解散権行使の結果行われた総選挙について、その無効を争う選挙訴訟は三審制であって、本件は控訴審判決である。
2・・・妥当ではない
選挙の効力に関する訴訟は、高等裁判所が第一審を管轄します(公職選挙法217条)、本肢の事案は「高等裁判所の判決文」の一節なので、本件は「第一審判決」です。
よって、妥当ではないです。
3.この判決は、政治上の必要があれば、本件のような事案で内閣が解散権を行使しても総選挙は適法だ、という立場にたっている。
3・・・妥当ではない
「政治上の必要があれば、本件のような事案で内閣が解散権を行使しても総選挙は適法だ」とは言っていません。選挙自体無効なのだから、内閣の解散権が事実上制約されても仕方がない、と言っています。
よって、妥当ではないです。
4.本件訴訟は、公職選挙法の定める選挙訴訟として行われているので、いわゆる機関訴訟の1形態と位置づけられるものである。
4・・・妥当ではない
公職選挙法の定める選挙訴訟」は「民衆訴訟」です。
よって、妥当ではありません。「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいいます(行政事件訴訟法5条)。

5.この判決は、現時点ではすでに改正に必要な合理的期間を徒過しており、判例によれば当該議員定数配分規定は違憲だ、という立場にたっている。
5・・・妥当
一番上の解説の2、3から「一票の較差の是正を行うべき合理的期間は、合理的に十分だと判断できる期間内にすべきである」「だから、その期間が経過した以上、憲法に違反するものといわざるをえない。

と解説した通り、
この判決は、現時点ではすでに改正に必要な合理的期間を徒過しており、判例によれば当該議員定数配分規定は違憲だ、という立場にたっています。

よって、妥当です。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問6|憲法・国会

憲法43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」、と定める。この「全国民の代表」に関わる次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. これと同様の定式は近代憲法に広く見られ、大日本帝国憲法でも採用されている。
  2. この定式は、近代の国民代表議会の成立に伴い、国民とその代表者との政治的意思の一致を法的に確保する目的で、命令委任の制度とともに導入されたものである。
  3. 政党は国民の中の一党派であり、全国民を代表するものではないため、議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されないものとされている。
  4. 議員は議会で自己の信念のみに基づいて発言・表決すべきであり、選挙区など特定の選出母体の訓令に法的に拘束されない、との原則は、自由委任の原則と呼ばれる。
  5. 選挙は現代では政党間の選択としての意味を持つため、現行法上、議員は所属政党から離脱した時は自動的に議員としての資格を失うものとされている。

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

1.憲法43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」、と定める。これと同様の定式は近代憲法に広く見られ、大日本帝国憲法でも採用されている。
1・・・妥当ではない
明治憲法(大日本帝国憲法)では、議会及び議員が「全国民の代表」という考え方はしていませんでした。むしろ、「天皇」中心の考え方です。
2.憲法43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」、と定める。この定式は、近代の国民代表議会の成立に伴い、国民とその代表者との政治的意思の一致を法的に確保する目的で、命令委任の制度とともに導入されたものである。
2・・・妥当ではない
憲法43条1項の「全国民の代表」は命令委任ではなく、自由委任と解されています。
よって、誤りです。

  • 自由委任とは「選挙区や後援団体の意思に拘束されず、自己の信念に従って行動できる」ということです。
  • 命令委任とは「選挙区や後援団体の意思に拘束され、それらの意思を忠実に行動する」ということです。
3.政党は国民の中の一党派であり、全国民を代表するものではないため、議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されないものとされている。
3・・・妥当ではない
「議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されない」は誤りです。実際、「党議拘束」というものがあります。党議拘束とは、議案の賛否について政党、会派の決めた方針に議員が拘束されることを言います。
ただ、これは、法律で定められているのでなく、政党内部のルールですが実際、重要案件でこれに反した行動をとると党内懲罰の対象となったりするケースもあります。

4.議員は議会で自己の信念のみに基づいて発言・表決すべきであり、選挙区など特定の選出母体の訓令に法的に拘束されない、との原則は、自由委任の原則と呼ばれる。
4・・・妥当
選択肢2でも触れた内容です。
憲法43条の「代表」の意味については、全国民のためを思って行動をすれば、それが国民の意思と異なっていたとしてもよい、つまり、選挙区や後援団体の意思に拘束されず、自己の信念に従って行動できるということです。これを「自由委任の原則」と言います。よって、本肢は妥当です。
5.選挙は現代では政党間の選択としての意味を持つため、現行法上、議員は所属政党から離脱した時は自動的に議員としての資格を失うものとされている。
5・・・妥当ではない
議員は所属政党から離脱しただけでは議員としての資格は失いません
よって、妥当ではありません。議院の資格を失うのは、例えば、比例代表選出議員が当選後、当選時の所属政党以外の政党に所属することとなったとき等です(国会法109条、公職選挙法99条の2)


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問5|憲法・表現の自由

写真家Aが自らの作品集をある出版社から発売したところ、これに収録された作品のいくつかが刑法175条にいう「わいせつ」な図画に該当するとして、検察官によって起訴された。自分が無罪であることを確信するAは、裁判の場で自らの口から「表現の自由」を主張できるように、慌てて憲法の勉強を始め、努力の甲斐あって次の1~5のような考え方が存在することを知ることができた。このうち、本件の事案において主張するものとして、最も適しない考え方はどれか。

  1. わいせつ表現についても、表現の自由の価値に比重を置いてわいせつの定義を厳格にしぼり、規制が及ぶ範囲をできるだけ限定していく必要がある。
  2. 表現の自由は「公共の福祉」によって制約されると考える場合であっても、これは他人の人権との矛盾・衝突を調整するための内在的制約と解すべきである。
  3. 憲法21条2項前段が「検閲の禁止」を定めているように、表現活動の事前抑制は原則として憲法上許されない。
  4. 表現の自由に対する規制が過度に広汎な場合には、当事者は、仮想の第三者に法令が適用されたときに違憲となりうることを理由に、法令全体の違憲性を主張できる。
  5. 文書の芸術的・思想的価値と、文書によって生じる法的利益の侵害とを衡量して、前者の重要性が後者を上回るときにまで刑罰を科するのは違憲である。

>解答と解説はこちら


【答え】:3【解説】

1.わいせつ表現についても、表現の自由の価値に比重を置いてわいせつの定義を厳格にしぼり、規制が及ぶ範囲をできるだけ限定していく必要がある。
1・・・Aの主張に適する
「わいせつ表現」の範囲を限定して狭くすることで、Aの作品集が「わいせつ表現」に該当しない可能性が高くなります。その結果、
規制される範囲の中に作品集が入らなければ当然Aは無罪だから、この内容を主張するのは理にかなっています。自分が無罪であることを確信するAは、「表現の自由」を主張できるようになります。よって、本肢はAの主張に適します。

2.表現の自由は「公共の福祉」によって制約されると考える場合であっても、これは他人の人権との矛盾・衝突を調整するための内在的制約と解すべきである。
2・・・Aの主張に適する
人権と人権とが矛盾衝突する場合に、それぞれの人権を一定の限度で制約せざるを得えません。その最小限度の制約が「内在的制約」です。つまり、「公共の福祉」によって制約される場合に「内在的制約」と解することで、
最小限度の制約にとどめることができ、そうすることで、写真家Aが自らの作品集も表現の自由によって、保護される可能性も高まります。よって、
自分が無罪であることを確信するAは、「表現の自由」を主張できるようになります。よって、本肢はAの主張に適します。

3.憲法21条2項前段が「検閲の禁止」を定めているように、表現活動の事前抑制は原則として憲法上許されない。
3・・・Aの主張に適しない
憲法上、検閲は禁止されています。そして、検閲とは、「発表前に審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止すること」です。本問の場合「写真家Aが自らの作品集をある出版社から発売したところ」という記述から、写真集をすでに発表しています。したがって、検閲の禁止を主張しても意味はありません。

よって、本肢はAの主張に適しません。

4.表現の自由に対する規制が過度に広汎な場合には、当事者は、仮想の第三者に法令が適用されたときに違憲となりうることを理由に、法令全体の違憲性を主張できる。
4・・・Aの主張に適する
処分根拠や規制範囲について条文が過度に広範な場合、その条文全部が違憲無効となります(過度広汎性ゆえに無効の法理)。これをAが主張すれば、Aを罰する根拠がなくなるので、Aの主張に適します。

【過度の広汎性故に無効とは】

例えば、他人を威嚇するような目的で「ひげ禁止」という法律を作ったとします。

「ひげ禁止」だけだと、「他人を威嚇しないような、かわいらしいひげ」も禁止となってしまいます。

この場合、「ひげ禁止」という法律は、過度の広汎性故に、無効となります。

■「別の第三者に法令が適用された時に違憲となることもある」とは

上記事例でいうと、自分自身は、「他人を威嚇するようなひげ」だった場合は、上記、「ひげ禁止」の法律の目的に照らして違法となるのですが

別の第三者が「かわいらしいひげ」を持っていた場合、この人も「ひげ禁止」の対象となり、違法となります。

これは、法律の作った目的に適していないにもかかわらず違法となります。

これはおかしいでしょ!と主張するのが、本肢の内容です。

5.文書の芸術的・思想的価値と、文書によって生じる法的利益の侵害とを衡量して、前者の重要性が後者を上回るときにまで刑罰を科するのは違憲である。
5・・・Aの主張に適する
「文書の芸術的・思想的価値」と、「文書によって生じる法的利益の侵害」とを衡量して(比べて)、前者(芸術的・思想的価値)の重要性が後者を上回る場合、Aは「表現の自由」を主張できるようになり、刑罰を科するのは違憲であると主張もできます。よって、本肢はAの主張に適します。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略