憲法の過去問

平成29年・2017|問41|憲法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

その保障の根拠に照らして考えるならば、表現の自由といつても、そこにやはり一定の限界があることを否定し難い。[ ア ]が真実に反する場合、そのすべての言論を保護する必要性・有益性のないこともまた認めざるをえないのである。特に、その[ ア ]が真実に反するものであつて、他人の[ イ ]としての名誉を侵害・毀損する場合においては、[ イ ]の保護の観点からも、この点の考慮が要請されるわけである。私は、その限界は以下のところにあると考える。すなわち、表現の事前規制は、事後規制の場合に比して格段の慎重さが求められるのであり、名誉の侵害・毀損の被害者が公務員、公選による公職の候補者等の[ ウ ]人物であつて、その[ ア ]が[ ウ ]問題に関する場合には、表現にかかる事実が真実に反していてもたやすく規制の対象とすべきではない。しかし、その表現行為がいわゆる[ エ ]をもつてされた場合、換言すれば、表現にかかる事実が真実に反し虚偽であることを知りながらその行為に及んだとき又は虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切つた場合には、表現の自由の優越的保障は後退し、その保護を主張しえないものと考える。けだし、右の場合には、故意に虚偽の情報を流すか、[ ア ]の真実性に無関心であつたものというべく、表現の自由の優越を保障した憲法二一条の根拠に鑑み、かかる表現行為を保護する必要性・有益性はないと考えられるからである。

(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁・裁判官谷口正孝の補足意見)

1.差別的表現 2.不公正な論評 3.私的領域 4.相当な誤信 5.公益的 6.社会的 7.人物評価 8.自己決定権 9.公的 10.誹謗中傷 11.表現手段 12.ダブル・スタンダード 13.公的領域 14.公知の 15.自己実現 16.明白かつ現在の危険 17.人格権 18.論争的 19.現実の悪意 20.表現内容

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【答え】:ア:20、イ:17、ウ:9、エ:19

【解説】

その保障の根拠に照らして考えるならば、表現の自由といつても、そこにやはり一定の限界があることを否定し難い。[ ア:表現内容 ]が真実に反する場合、そのすべての言論を保護する必要性・有益性のないこともまた認めざるをえないのである。特に、その[ ア:表現内容 ]が真実に反するものであつて、他人の[ イ:人格権 ]としての名誉を侵害・毀損する場合においては、[ イ:人格権 ]の保護の観点からも、この点の考慮が要請されるわけである。私は、その限界は以下のところにあると考える。すなわち、表現の事前規制は、事後規制の場合に比して格段の慎重さが求められるのであり、名誉の侵害・毀損の被害者が公務員、公選による公職の候補者等の[ ウ:公的 ]人物であつて、その[ ア:表現内容 ]が[ ウ:公的 ]問題に関する場合には、表現にかかる事実が真実に反していてもたやすく規制の対象とすべきではない。しかし、その表現行為がいわゆる[ エ:現実の悪意 ]をもつてされた場合、換言すれば、表現にかかる事実が真実に反し虚偽であることを知りながらその行為に及んだとき又は虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切つた場合には、表現の自由の優越的保障は後退し、その保護を主張しえないものと考える。けだし、右の場合には、故意に虚偽の情報を流すか、[ ア:表現内容 ]の真実性に無関心であつたものというべく、表現の自由の優越を保障した憲法二一条の根拠に鑑み、かかる表現行為を保護する必要性・有益性はないと考えられるからである。

ア.
その保障の根拠に照らして考えるならば、表現の自由といつても、そこにやはり一定の限界があることを否定し難い。[ ア ]が真実に反する場合、そのすべての言論を保護する必要性・有益性のないこともまた認めざるをえないのである。
ア・・・表現内容
「その保障の根拠に照らして考えるならば、表現の自由といつても、そこにやはり一定の限界があることを否定し難い」ということから、「表現の自由といっても、なんでも保障されるのではなく、一定の限界がある」ということです。
そして、「[ ア ]が真実に反する場合、そのすべての言論を保護する必要性・有益性のない」ということなので「アには、表現内容」が入ります。
表現内容が真実に反する場合=うその場合、保護する必要性はないということです。
イ.
特に、その[ ア:表現内容 ]が真実に反するものであつて、他人の[ イ ]としての名誉を侵害・毀損する場合においては、[ イ ]の保護の観点からも、この点の考慮が要請されるわけである。
イ・・・人格権
表現内容がうそであることで、イとしての名誉を侵害・毀損する場合(傷つけられる場合)なので、「イには、人格権」が入ります。
ウ.
名誉の侵害・毀損の被害者が公務員、公選による公職の候補者等の[ ウ ]人物であつて、その[ ア:表現内容 ]が[ ウ ]問題に関する場合には、表現にかかる事実が真実に反していてもたやすく規制の対象とすべきではない。
ウ・・・公的
「名誉の侵害・毀損の被害者が公務員、公選による公職の候補者等の[ ウ ]人物であって」ということから、この人物は「公的な人物」であることが分かります。
よって、「ウには公的」が入ります。
エ.
その表現行為がいわゆる[ エ ]をもつてされた場合、換言すれば、表現にかかる事実が真実に反し虚偽であることを知りながらその行為に及んだとき又は虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切つた場合
エ・・・現実の悪意
「換言すれば」とは、「言い換えれば」ということなので
「その表現行為がいわゆる[ エ ]をもつてされた場合」と、その後ろの
「表現にかかる事実が真実に反し虚偽であることを知りながらその行為に及んだとき又は虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切つた場合」
は同じ内容と分かります。
そして、後者は「知りながら」とあります。
言い換えると法律用語で「悪意」です。
よって、「エには、現実の悪意」が入ります。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問7|憲法の概念

憲法の概念に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。
  2. 憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
  3. 憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。
  4. 憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。
  5. 憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。

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【答え】:2

【解説】

1.通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。
1・・・妥当ではない
硬性憲法とは、憲法改正について、通常の立法手続よりも厳格な手続を要求している憲法を言います。分かりやすくいえば、憲法改正をしにくい憲法です。
日本の憲法も、憲法改正については、
各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、
さらに国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票において過半数の賛成を得なければならない
とされている(憲法96条)ので、硬性憲法にあたります。
また、ドイツとフランスの憲法は、どちらも硬性憲法です。
一方、軟性憲法とは、憲法改正につき通常の立法手続で可能な憲法を言います。
イギリスは改正手続がしやすい軟性憲法に当たります。
2.憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
2・・・妥当
憲法の意味は「形式的意味の憲法」と「実質的意味の憲法」の2つがあります。
つまり、憲法とは?という問いに対して、2つの切り口から説明できるということです。形式的意味の憲法とは、
憲法という名前で呼ばれている成文の法典(日本国憲法のように文としてあらわされているか)を意味します。
つまり、憲法典という形式さえあれば、内容がどのようなものであるかは問いません。
極端なことを言えば、憲法が1条しかなかったとしても、成文として存在しているのであれば
形式的意味での憲法は存在することになります。
ちなみに、イギリスは主要国で唯一、憲法が法典として存在しない国です。実質的意味の憲法は、「成文」「不文」は関係なく、内容に着目しています。
内容のない憲法は、実質的意味での憲法は存在しないということになりますそして「実質的意味の憲法」には、さらに「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」に分類されます。

実質的意味の憲法には、さらに「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」に分類されます。明治憲法下の皇室典範は実質的意味の憲法には当たりますが、形式的には憲法ではないため、上記の形式的意味の憲法には当たりません。

固有の意味の憲法」とは、
国家統治の基本を定めた法としての憲法をいいます。

国があれば、当然に国家権力があります。
国家権力とは、国家統治の力です。

憲法は、国家統治の力についてルールで定めたものなので、
どんな国家でも、「固有の意味の憲法」は存在するわけですね。

立憲的意味の憲法」とは、
市民革命により、絶対的な存在である王様を倒して、国家(王様)による個人の自由への干渉を制限し、国民の権利を保障するという内容をもった憲法です。
つまり、権力を制限することで国民の自由を保障するための法という意味が「立憲的意味の憲法」です。

そして、問題文を見ると
憲法の定義をめぐっては、
①成文の憲法典という法形式だけでなく、
②国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、
後者②は実質的意味の憲法と呼ばれる。
②実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
これは妥当です。

3.憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。
3・・・妥当ではない
憲法は、「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員裁判官その他の公務員」を拘束する規範です。
国民(主権者)は含みません憲法99条)。
よって、本肢は「主権者が自らを拘束する規範でもある」という部分が妥当ではありません。
4.憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。
4・・・妥当ではない
憲法は、国の最高法規であって、その条規(憲法)に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しません(無効)憲法98条)。
条約と憲法の優劣については、明確な判例はありません。
したがって、「条約は国内法として憲法より強い効力を有する」が妥当ではありません。
5.憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。
5・・・妥当ではない
日本国憲法には前文があるが、この前文は憲法の一部だと考えられていて、法規範性も有しています。
したがって、前文を改正するためには、憲法改正の手続き(憲法第96条)が必要です。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問6|憲法・財政

次の文章の空欄[  ]に当てはまる語句(ア)と、本文末尾で述べられた考え方(イ)(現在でも通説とされる。)との組合せとして、妥当なものはどれか(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

法の形式はその生産方法によって決定せられる。生産者を異にし、生産手続を異にするに従って異る法の形式が生ずる。国家組織は近代に至っていよいよ複雑となって来たから、国法の形式もそれに応じていよいよ多様に分化してきた・・・。
すべて国庫金の支出は必ず予め定められた準則――これを実質的意味の予算または予算表と呼ぼう――にもとづいてなされることを要し、しかもその予定準則の定立には議会の同意を要することは、近代立憲政に通ずる大原則である。諸外国憲法はかくの如き予算表は「[ ア ]」の形式をとるべきものとなし、予算表の制定をもって「[ ア ]」の専属的所管に属せしめている。わが国ではこれと異り「[ ア ]」の外に「予算」という特殊な形式をみとめ、予算表の制定をもって「予算」の専属的所管に属せしめている。
(出典 宮澤俊義「憲法講義案」1936年から)

  1. ア:法律 イ:予算法形式説
  2. ア:法律 イ:予算法律説
  3. ア:議決 イ:予算決定説
  4. ア:命令 イ:予算行政説
  5. ア:議決 イ:予算決算説

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【答え】: 1

【解説】

内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければなりません(憲法86条)。
つまり、予算は内閣が作成して国会の審議にかけるわけですが、
予算には、3つの考え方があります。

予算行政説:予算は「行政計画」であるという考え方
予算法律説:予算は「法律」であるという考え方
予算法形式説 :予算は「法律」とは異なる特殊の法形式であるという考え方(通説

予算法形式説 の考え方が通説となっているので、問題文の「本文末尾で述べられた考え方(イ)(現在でも通説とされる。)」という部分から、「イ」は予算法形式説となります。

予算行政説

予算行政説は、予算を「行政計画」としてとらえるため、
「予算は行政(政府)を拘束しません」。
そのため、財政民主主義に反するという意見があります。

憲法83条(財政民主主義)
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

予算法律説

予算法律説は、「財政民主主義」に重点を置いた考え方で、
「予算が、政府や国民を拘束する」ことになります。

予算法形式説

予算法形式説は、予算は行政のみ拘束し、国民は拘束しません
つまり、政府は、予算に反する支出等は違法となります。
そして、予算は法律そのものではなく、予算を執行するためには別に執行のための法律が必要となってきます。

本問の内容は「予算法形式説」なので、
イには、「予算法形式説」となります。

ア.
諸外国憲法はかくの如き予算表は「[ ア ]」の形式をとるべきものとなし、予算表の制定をもって「[ ア ]」の専属的所管に属せしめている。わが国ではこれと異り「[ ア ]」の外に「予算」という特殊な形式をみとめ、予算表の制定をもって「予算」の専属的所管に属せしめている。
ア・・・法律
イギリス、ドイツ、フランス等では予算は「法」として成立します。
一方、
日本の通説は、予算法律説ではなく、予算法形式説です。
わが国ではこれと異り「法」の外に「予算」という特殊な形式をみとめています。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問5|憲法・内閣

内閣に関する次の記述のうち、憲法の規定に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 内閣総理大臣は、国会の同意を得て国務大臣を任命するが、その過半数は国会議員でなければならない。
  2. 憲法は明文で、閣議により内閣が職務を行うべきことを定めているが、閣議の意思決定方法については規定しておらず、慣例により全員一致で閣議決定が行われてきた。
  3. 内閣の円滑な職務遂行を保障するために、憲法は明文で、国務大臣はその在任中逮捕されず、また在任中は内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない、と規定した。
  4. 法律および政令には、その執行責任を明確にするため、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
  5. 内閣の存立は衆議院の信任に依存するので、内閣は行政権の行使について、参議院に対しては連帯責任を負わない。

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【答え】: 4

【解説】

1.内閣総理大臣は、国会の同意を得て国務大臣を任命するが、その過半数は国会議員でなければならない。
1・・・妥当ではない
内閣総理大臣は、国務大臣を任命します(憲法68条1項)。
ただし、国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければなりません(憲法68条1項但し書き)。
つまり、本肢のような「国会の同意」は不要です。
2.憲法は明文で、閣議により内閣が職務を行うべきことを定めているが、閣議の意思決定方法については規定しておらず、慣例により全員一致で閣議決定が行われてきた。
2・・・妥当ではない
憲法には、「閣議」についての規定はありません
閣議により内閣が職務を行うべきことは、内閣法4条で定めています。
また、閣議の意思決定方法については規定しておらず慣例により全員一致で閣議決定が行われています。
3.内閣の円滑な職務遂行を保障するために、憲法は明文で、国務大臣はその在任中逮捕されず、また在任中は内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない、と規定した。
3・・・妥当ではない
国務大臣は、その在任中内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されません(検察官は刑事事件について公訴できない)。ただし、在任期間が切れると、訴追されます(=訴追の権利は、害されない)(憲法75条)。
その点は、妥当です。しかし、「国務大臣はその在任中(大臣であるときは)逮捕されず」という記述は妥当ではありません。似たようなルールが憲法50条で規定されています。国会議員は原則として国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならないという特権があります(憲法50条)。

この2つとひっかける問題です。

国務大臣は過半数が国会議員であればよいので、国会議員でない可能性もあります。
そのため、「国務大臣はその在任中逮捕されず」という記述は妥当ではありません。

つまり、

  • 国会議員でない大臣の場合(例えば、小泉内閣時代の竹中平蔵)、逮捕はされるけど、検察官による公訴はされない
  • 国会議員である大臣の場合、会期中は、逮捕もされないし、検察官による公訴もされない
4.法律および政令には、その執行責任を明確にするため、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
4・・・妥当
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とします(憲法74条)。
したがって、妥当です。
5.内閣の存立は衆議院の信任に依存するので、内閣は行政権の行使について、参議院に対しては連帯責任を負わない。
5・・・妥当ではない
内閣は、行政権の行使について、国会(衆議院と参議院の両方)に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。
したがって、「内閣は、参議院に対しては連帯責任を負わない」という記述は妥当ではありません。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問4|憲法・経済的自由

次の記述は、ため池の堤とう(堤塘)の使用規制を行う条例により「ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は、ため池の破損、決かい等に因る災害を未然に防止するため、その財産権の行使を殆んど全面的に禁止される」ことになった事件についての最高裁判所判決に関するものである。判決の論旨として妥当でないものはどれか。

  1. 社会生活上のやむを得ない必要のゆえに、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、条例による制約を受忍する責務を負うというべきである。
  2. ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない。
  3. 憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。
  4. 事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切である。
  5. 憲法29条2項は、財産権の内容を条例で定めることを禁じているが、その行使については条例で規制しても許される。

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【答え】: 5

【解説】

1.社会生活上のやむを得ない必要のゆえに、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、条例による制約を受忍する責務を負うというべきである。
1・・・妥当
判例では、「ため池の保全に関する条例は、ため池の堤とうを使用する権利者に対しては、その使用のほとんどが全面的に禁止されるので、権利に著しい制限を加えるものである。しかし、それは「災害を未然に防止する」という社会生活上のやむを得ない必要からくることであって、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない(受け入れて耐える)責務を負うというべきである」
と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。

2.ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない。
2・・・妥当
判例では、「ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。
3.憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。
3・・・妥当
判例では、
「ため池の堤とうの使用権は、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外(らちがい:枠外)にある。
そして、この使用権を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に牴触またはこれを逸脱するものとはいえない」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。
4.事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切である。
4・・・妥当
判例では、「事柄によっては、特定または若干の地方公共団体の特殊な事情により、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに、その条例で定めることが、容易且つ適切なことがある
本件(奈良県ため池条例事件)のような、ため池の保全の問題は、まさにこの場合に該当するというべきである。」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件全文参照)。
5.憲法29条2項は、財産権の内容を条例で定めることを禁じているが、その行使については条例で規制しても許される。
5・・・妥当ではない
憲法29条2項とは「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定しており、「財産権の内容を条例で定めることを禁じている」とは規定していません。
したがって、妥当ではありません。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問3|憲法

人権の享有主体性をめぐる最高裁判所の判例に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすなど、外国人の地位に照らして認めるのが相当でないと解されるものを除き、外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶ。
  2. 会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。
  3. 公務員は政治的行為を制約されているが、処罰対象となり得る政治的行為は、公務員としての職務遂行の政治的中立性を害するおそれが、実質的に認められるものに限られる。
  4. 憲法上の象徴としての天皇には民事裁判権は及ばないが、私人としての天皇については当然に民事裁判権が及ぶ。
  5. 憲法が保障する教育を受ける権利の背後には、子どもは、その学習要求を充足するための教育を施すことを、大人一般に対して要求する権利を有する、との観念がある。

>解答と解説はこちら


【答え】: 4

【解説】

1.わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすなど、外国人の地位に照らして認めるのが相当でないと解されるものを除き、外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶ。
1・・・妥当
外国人の政治活動の自由が問題となった判例で「外国人の政治活動の自由はわが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等を除き保障される」と判示しています(最大判昭53.10.4:マクリーン事件)。

【具体例】
「わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動」とは、例えば、「外国人が政治家に対して献金をすること」です。

つまり、「外国人が政治家に対して献金をする自由」は例外的に、保障されていません。
外国人が政治家に対して献金をすることで政治家が外国人に有利な政治的意思決定をしかねないからです。
実際、外国人が政治家に対して献金をすることは政治資金規正法で原則禁止されています。

2.会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。
2・・・妥当
判例で「会社も、自然人と同じように、政治的行為をする自由がある」と判示しています(最大判昭45.6.24:八幡製鉄事件)。
3.公務員は政治的行為を制約されているが、処罰対象となり得る政治的行為は、公務員としての職務遂行の政治的中立性を害するおそれが、実質的に認められるものに限られる。
3・・・妥当
判例では、公務員が処罰される対象になる政治的行為は、政治的に中立でなくなる可能性が「実質的に」(実際に)あるものに限られる、と判示しています(最判平24.12.7:堀越事件)。
4.憲法上の象徴としての天皇には民事裁判権は及ばないが、私人としての天皇については当然に民事裁判権が及ぶ。
4・・・妥当ではない
判例では、天皇には民事裁判権が及ばない(民事訴訟の原告や被告にはならない)としています。(最判平元.11.20)
5.憲法が保障する教育を受ける権利の背後には、子どもは、その学習要求を充足するための教育を施すことを、大人一般に対して要求する権利を有する、との観念がある。
5・・・妥当
判例では、「みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる。」と判示しています(最大判昭51.5.21:旭川学力テスト事件全文参照)。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問41|憲法の判例(堀木訴訟)

公務員の政治的自由に関する次の文章の空欄[ア]~[エ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

〔国家公務員法〕102条1項は、公務員の職務の遂行の政治的[ア]性を保持することによって行政の[ア]的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持することを目的とするものと解される。
他方、国民は、憲法上、表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており、この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることに鑑みると、上記の目的に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである。
このような〔国家公務員法〕102条1項の文言、趣旨、目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え、同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると、同項にいう「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的[ア]性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして[イ]的に認められるものを指し、同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。・・・(中略)・・・。
・・・本件配布行為は、[ウ]的地位になく、その職務の内容や権限に[エ]の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的[ア]性を損なうおそれが[イ]的に認められるものとはいえない。そうすると、本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。
(最二小判平成24年12月7日刑集66巻12号1337頁)

1.従属 2.平等 3.合法 4.穏健 5.裁量 6.実質 7.潜在 8.顕在 9.抽象 10.一般 11.権力 12.現業 13.経営者 14.指導者 15.管理職 16.違法 17.濫用 18.逸脱 19.中立 20.強制

>解答と解説はこちら


【答え】:「ア:19」 「イ:6」 「ウ:15」 「エ:5」

【解説】

国家公務員法第102条(政治的行為の制限)
職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

〔国家公務員法〕102条1項、公務員の職務の遂行の政治的[ア:中立]性を保持することによって行政の[ア:中立]的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持することを目的とするものと解される。
他方、国民は、憲法上、表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており、この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることに鑑みると、上記の目的に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである。
このような〔国家公務員法〕102条1項の文言、趣旨、目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え、同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると、同項にいう「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的[ア:中立]性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして[イ:実質]的に認められるものを指し、同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。・・・(中略)・・・。
・・・本件配布行為は、[ウ:管理職]的地位になく、その職務の内容や権限に[エ:裁量]の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的[ア:中立]性を損なうおそれが[イ:実質]的に認められるものとはいえない。そうすると、本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。

本問の事案は、「最判平24.12.7:堀越事件」のページで解説しています。

ウについて、「権力」的地位も考えられますが、本件事案では「公務員」が管理職になかったことが前提となっております。そのため「管理職」が入ります。これは事案を覚えているかどうかの問題となります。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問7|天皇・内閣

次の文章の空欄[ア]~[オ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権は、[ア]においてこれを決定し・・・(中略)・・・、[イ]はこれを[ウ]することにした。ここにあげた[エ]権は、旧憲法では[イ]の[オ]に属していたが、新憲法において、その決定はこれを[ア]の権能とし、[イ]はただこれを[ウ]するに止まることになったのであるが、議会における審議に当って、[エ]は、栄典とともに[イ]の権能として留保すべきであるという主張があった。これに対して、政府は、[エ]は法の一般性又は裁判の法律に対する忠実性から生ずる不当な結果を調節する作用であり、立法権、司法権及び行政権の機械的分立から生ずる不合理を是正するための制度であって、その運用には、政治的批判を伴うものであることを理由として、その実質的責任はすべてこれを[ア]に集中するとともに、「それが国民にもたらす有難さを[ウ]の形式を以て表明する」こととしたと説明している。
(出典 法学協会編「註解日本国憲法上巻」1948年から)
  1. ア:最高裁判所 イ:国会 ウ:議決 エ:免訴 オ:自律権
  2. ア:内閣 イ:天皇 ウ:認証 エ:恩赦 オ:大権
  3. ア:内閣 イ:天皇 ウ:裁可 エ:免訴 オ:専権
  4. ア:内閣総理大臣 イ:内閣 ウ:閣議決定 エ:恩赦 オ:専権
  5. ア:国会 イ:天皇 ウ:認証 エ:恩赦 オ:大権

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権は、[ア:内閣]においてこれを決定し・・・(中略)・・・、[イ:天皇]はこれを[ウ:認証]することにした。ここにあげた[エ:恩赦]権は、旧憲法では[イ:天皇]の[オ:大権]に属していたが、新憲法において、その決定はこれを[ア:内閣]の権能とし、[イ:天皇]はただこれを[ウ:認証]するに止まることになったのであるが、議会における審議に当って、[エ:恩赦]は、栄典とともに[イ:天皇]の権能として留保すべきであるという主張があった。これに対して、政府は、[エ:恩赦]は法の一般性又は裁判の法律に対する忠実性から生ずる不当な結果を調節する作用であり、立法権、司法権及び行政権の機械的分立から生ずる不合理を是正するための制度であって、その運用には、政治的批判を伴うものであることを理由として、その実質的責任はすべてこれを[ア:内閣]に集中するとともに、「それが国民にもたらす有難さを[ウ:認証]の形式を以て表明する」こととしたと説明している。

[ア]について

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権は、[ア]においてこれを決定し・・・

ア・・・内閣
「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権の決定」を行うのは、内閣です。
内閣の権能は、憲法73条に規定されています。

憲法73条(内閣の職務)
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。

  1. 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
  2. 外交関係を処理すること。
  3. 条約を締結すること。但し、事前に時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
  4. 法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること。
  5. 予算を作成して国会に提出すること。
  6. この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令は、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  7. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

「内閣の権能」に関する解説はこちら>>

[イ]について

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権は、[ア:内閣]においてこれを決定し・・・(中略)・・・、[イ]はこれを[ウ]することにした。ここにあげた[エ:]権は、旧憲法では[イ]の[オ]に属していたが、新憲法において、その決定はこれを[ア:内閣]の権能とし、[イ]はただこれを[ウ]するに止まることになったのであるが、議会における審議に当って、[エ]は、栄典とともに[イ]の権能として留保すべきであるという主張があった。

イ・・・天皇
内閣が決定した大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権について、天皇が認証します。
したがって、『[イ:天皇]はこれを[ウ:認証]することにした。』となります。
また、『栄典とともに[イ]の権能として留保すべき』という記述からも「イが天皇」と分かります。
天皇の国事行為は憲法7条で規定されています。

憲法7条(天皇の国事行為)
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。

  1. 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
  2. 国会を召集すること。
  3. 衆議院を解散すること。
  4. 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
  5. 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
  6. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
  7. 栄典を授与すること。
  8. 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
  9. 外国の大使及び公使を接受すること。
  10. 儀式を行うこと。

「天皇」に関する解説はこちら>>

[ウ]について

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権は、[ア:内閣]においてこれを決定し・・・(中略)・・・、[イ:天皇]はこれを[ウ]することにした。

ウ・・・認証
イの解説の通り、
内閣が決定した大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権について、天皇が認証します。
したがって、『[イ:天皇]はこれを[ウ:認証]することにした。』となります。
最後の文章に『「それが国民にもたらす有難さを[ウ:認証]の形式を以て表明する」こととしたと説明している。』とありますが、「認証」が形式的な行為であることが分かれば、ここからも答えを導けます。

[エ]について

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権は、[ア:内閣]においてこれを決定し・・・(中略)・・・、[イ:天皇]はこれを[ウ:認証]することにした。ここにあげた[エ]権は、旧憲法では[イ:天皇]の[オ]に属していたが、新憲法において、その決定はこれを[ア:内閣]の権能とし

エ・・・恩赦
「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権」は、まとめて「恩赦」と言います。
したがって、「エは恩赦」となります。

[オ]について

[エ:恩赦]権は、旧憲法では[イ:天皇]の[オ]に属していたが、新憲法において、その決定はこれを[ア:内閣]の権能とし、[イ:天皇]はただこれを[ウ:認証]するに止まることになった

オ・・・大権
大権とは、明治憲法(大日本帝国憲法)で規定されていた、天皇による政治的な権限を指し、天皇は統帥権、宣戦布告、戒厳令、条約の締結、法案への認可権・拒否権、恩赦などの大権を保持していた。
つまり、旧憲法(明治憲法)では、恩赦も天皇の権限で行うことができていました。
しかし、新憲法(日本国憲法)では、恩赦の決定は内閣が行い、天皇がそれを認証するだけとなりました。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問6|参政権

デモクラシーの刷新を綱領に掲げる政党Xは、衆議院議員選挙の際の選挙公約として、次のア~エのような内容を含む公職選挙法改正を提案した。

ア.有権者の投票を容易にするために、自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入する。家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき、身近な人々の間での政治的な議論が活性化することが期待される。

イ.有権者の投票率を高めるため、選挙期間中はいつでも投票できるようにするとともに、それでも3回続けて棄権した有権者には罰則を科するようにする。

ウ.過疎に苦しむ地方の利害をより強く国政に代表させるため、参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める。

エ.地方自治と国民主権を有機的に連動させるため、都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり、国会で地方の立場を主張できるようにする。

この提案はいくつか憲法上論議となり得る点を含んでいる。以下の諸原則のうち、この提案による抵触が問題となり得ないものはどれか。

  1. 普通選挙
  2. 直接選挙
  3. 自由選挙
  4. 平等選挙
  5. 秘密選挙

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

【選択肢1】

ア.有権者の投票を容易にするために、自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入する。家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき、身近な人々の間での政治的な議論が活性化することが期待される。

イ.有権者の投票率を高めるため、選挙期間中はいつでも投票できるようにするとともに、それでも3回続けて棄権した有権者には罰則を科するようにする。

ウ.過疎に苦しむ地方の利害をより強く国政に代表させるため、参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める。

エ.地方自治と国民主権を有機的に連動させるため、都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり、国会で地方の立場を主張できるようにする。

この提案はいくつか憲法上論議となり得る点を含んでいる。以下の諸原則のうち、この提案による抵触が問題となり得ないものはどれか。

1.普通選挙

1・・・提案に抵触が問題となりえない

まず、問題文の意味ですが、問題と「なり得ない」=問題と「ならない」という意味です!

つまり、ア~エの提案が、「普通選挙」の内容に抵触する記述があるか?(違反する記述があるか?)

という意味です!

普通選挙とは、身分、財産、納税額、学歴、性別等にかかわらず、成年者全員の選挙権を認める選挙制度を言います。
言い換えると、普通選挙は、年齢でのみ、選挙権の有無が決まるということです。
また、憲法15条3項で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と規定されています。
上記ア~エの提案は、普通選挙に抵触する記述はありません。

【選択肢2】

ア.有権者の投票を容易にするために、自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入する。家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき、身近な人々の間での政治的な議論が活性化することが期待される。

イ.有権者の投票率を高めるため、選挙期間中はいつでも投票できるようにするとともに、それでも3回続けて棄権した有権者には罰則を科するようにする。

ウ.過疎に苦しむ地方の利害をより強く国政に代表させるため、参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める。

エ.地方自治と国民主権を有機的に連動させるため、都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり、国会で地方の立場を主張できるようにする。

この提案はいくつか憲法上論議となり得る点を含んでいる。以下の諸原則のうち、この提案による抵触が問題となり得ないものはどれか。

2.直接選挙

2・・・エの提案に抵触する
直接選挙とは、選挙人が直接に被選挙人を選挙する制度です。
衆議院議員選挙でいうと、有権者が、衆議院議員を直接選挙で選ぶ、ということです。
そして、エの提案をみると、
「都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり」
と記述されています。
これは直接選挙に抵触(矛盾)します。なお、憲法93条2項では、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙すると規定されています。また、地方公共団体の議会の議員は、都道府県議会議員選挙や市議会議員選挙等の直接選挙で、都道府県や市町村の代表として選ばれ、この議員が議会で意思決定を行います。

【選択肢3】

ア.有権者の投票を容易にするために、自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入する。家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき、身近な人々の間での政治的な議論が活性化することが期待される。

イ.有権者の投票率を高めるため、選挙期間中はいつでも投票できるようにするとともに、それでも3回続けて棄権した有権者には罰則を科するようにする。

ウ.過疎に苦しむ地方の利害をより強く国政に代表させるため、参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める。

エ.地方自治と国民主権を有機的に連動させるため、都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり、国会で地方の立場を主張できるようにする。

この提案はいくつか憲法上論議となり得る点を含んでいる。以下の諸原則のうち、この提案による抵触が問題となり得ないものはどれか。

3.自由選挙

3・・・イの提案に抵触する
自由選挙自由投票)とは、誰にも干渉されず、選挙人(有権者)の自由な意思によって行われる制度を言います。
言い換えると、有権者の自由意思によって選挙できない仕組みは、自由選挙とは言えないということです。
そして、イの提案を見ると、「3回続けて棄権した有権者には罰則を科する」という内容は、自由選挙に抵触します。
投票をする・しないについても自由でなければ、自由選挙とは言えません。

【選択肢4】

ア.有権者の投票を容易にするために、自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入する。家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき、身近な人々の間での政治的な議論が活性化することが期待される。

イ.有権者の投票率を高めるため、選挙期間中はいつでも投票できるようにするとともに、それでも3回続けて棄権した有権者には罰則を科するようにする。

ウ.過疎に苦しむ地方の利害をより強く国政に代表させるため、参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める。

エ.地方自治と国民主権を有機的に連動させるため、都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり、国会で地方の立場を主張できるようにする。

この提案はいくつか憲法上論議となり得る点を含んでいる。以下の諸原則のうち、この提案による抵触が問題となり得ないものはどれか。

4.平等選挙

4・・・ウの提案に抵触する
平等選挙は、選挙人(有権者)の投票の価値をすべて平等に取扱う制度を言います。
つまり、有権者一人に対して一票を与えることを意味し、
諸条件を考慮して、有権者一人に対して、一票より多く与えたり、少なく与えたりすることはできないということです。
ウの提案をみると、「参議院が都道府県代表としての性格をもつ」となっています。
これは、平等選挙に抵触します。

【なぜ、平等選挙に抵触するのか?】

A県の人口は100万人で定数が1人とします。B県の人口は300万人で定数が6人とすれば、B県の方が、当選しやすく、A県の方が当選しにくくなります。これは平等ではありません。平等であるなら、B県の定数は3人とすべきです。

【選択肢5】

ア.有権者の投票を容易にするために、自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入する。家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき、身近な人々の間での政治的な議論が活性化することが期待される。

イ.有権者の投票率を高めるため、選挙期間中はいつでも投票できるようにするとともに、それでも3回続けて棄権した有権者には罰則を科するようにする。

ウ.過疎に苦しむ地方の利害をより強く国政に代表させるため、参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める。

エ.地方自治と国民主権を有機的に連動させるため、都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり、国会で地方の立場を主張できるようにする。

この提案はいくつか憲法上論議となり得る点を含んでいる。以下の諸原則のうち、この提案による抵触が問題となり得ないものはどれか。

5.秘密選挙

5・・・アの提案に抵触する
秘密選挙とは、誰が誰に投票したのかを秘密にする制度をいいます。
憲法15条4項で「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」と保障されています。
アの記述をみると、「家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき」となっています。
これだと、誰が誰に投票したかが、分かるため、秘密選挙に抵触(矛盾)します。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問5|生存権

生存権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利のうち、「最低限度の生活」はある程度明確に確定できるが、「健康で文化的な生活」は抽象度の高い概念であり、その具体化に当たっては立法府・行政府の広い裁量が認められる。
  2. 行政府が、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等、憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を越えた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となり得る。
  3. 憲法25条2項は、社会的立法および社会的施設の創造拡充により個々の国民の生活権を充実すべき国の一般的責務を、同条1項は、国が個々の国民に対しそうした生活権を実現すべき具体的義務を負っていることを、それぞれ定めたものと解される。
  4. 現になされている生活保護の減額措置を行う場合には、生存権の自由権的側面の侵害が問題となるから、減額措置の妥当性や手続の適正さについて、裁判所は通常の自由権の制約と同様の厳格な審査を行うべきである。
  5. 生活保護の支給額が、「最低限度の生活」を下回ることが明らかであるような場合には、特別な救済措置として、裁判所に対する直接的な金銭の給付の請求が許容される余地があると解するべきである。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利のうち、「最低限度の生活」はある程度明確に確定できるが、「健康で文化的な生活」は抽象度の高い概念であり、その具体化に当たっては立法府・行政府の広い裁量が認められる。
1・・・妥当ではない
最大判昭57.7.7:堀木訴訟」の判例によると、下記のように判示しています。
『「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができない。』
したがって、本肢の、『「最低限度の生活」はある程度明確に確定できる』について、妥当ではありません。その他の部分は妥当です。
2.行政府が、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等、憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を越えた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となり得る。
2・・・妥当
最大判昭42.5.24:朝日訴訟」の判例によると下記のように判示しています。
『何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されている。
そして、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない。
ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、①法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または②裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となる。』
したがって、本肢の内容は上記の内容の通りなので、妥当です。
3.憲法25条2項は、社会的立法および社会的施設の創造拡充により個々の国民の生活権を充実すべき国の一般的責務を、同条1項は、国が個々の国民に対しそうした生活権を実現すべき具体的義務を負っていることを、それぞれ定めたものと解される。
3・・・妥当ではない
最大判昭57.7.7:堀木訴訟」の判例によると、下記のように判示しています。
『憲法25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定している。
この規定は、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものである。また、同条2項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定している。
この規定は、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものである。そして、同条1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に右のような義務を有することを規定したものではなく、同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充(法令)により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものである。』
つまり、1項と2項の説明が逆になっているので妥当ではないです。

憲法251

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

→ いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものである。

憲法252

国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」

→ 1項と同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものである。

4.現になされている生活保護の減額措置を行う場合には、生存権の自由権的側面の侵害が問題となるから、減額措置の妥当性や手続の適正さについて、裁判所は通常の自由権の制約と同様の厳格な審査を行うべきである。
4・・・妥当ではない
「最判平24.2.28:生活保護変更決定取消請求事件 」の判例によると、下記のように判示しています。
「保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、
最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か
及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か
を判断するに当たっては、
厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである」
厚生労働大臣に一定の裁量権が認められているということは、裁判所は、厳格な審査をするのではなく、緩やかな基準で審査をすべきということです。つまり、「裁判所は通常の自由権の制約と同様の厳格な審査を行うべき」という本肢は妥当ではないです。
5.生活保護の支給額が、「最低限度の生活」を下回ることが明らかであるような場合には、特別な救済措置として、裁判所に対する直接的な金銭の給付の請求が許容される余地があると解するべきである。
5・・・妥当ではない
最大判昭42.5.24:朝日訴訟」の判例によると下記のように判示しています。
『憲法25条1項はすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではない。
具体的権利としては、生活保護法によりはじめて与えられる。』
したがって、生活保護の支給額が、「最低限度の生活」を下回ることが明らかであるような場合でも、裁判所に対する直接的な金銭の給付の請求が許容される余地はなく、生活保護法に基づくということです。
よって、本肢は妥当ではないです。

関連ページ

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略