民法の過去問

平成29年・2017|問31|民法・物権的請求権

改正民法に対応済
物権的請求権等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
  2. 第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
  3. 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
  4. 第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
  5. Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。

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改正民法に対応済
【答え】:5

【解説】

1.Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
1・・・妥当ではない
●建物収去・土地の明渡請求できる相手 →  「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者

原則として、建物収去・土地の明渡請求できる相手は、「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者」なので、現所有者Cに対して建物収去・土地の明渡請求ができます。

2.第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
2・・・妥当ではない

●不法占有によって抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるとき、抵当権者は、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められる
●また、所有者が適切に維持管理することが期待できない場合、抵当権者は、不法占有者に対して、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる

【具体例】 例えば、甲建物の所有者Aが債権者Bからお金を借りて、甲建物に抵当権を設定したとします。

抵当権者Bとしては、万一Aからお金が返ってこなかった時に備えて甲建物に抵当権を設定してもらっているわけです。

ただし、抵当権者は抵当不動産(甲建物)を使用する権利はありません。あくまでも抵当不動産を使用できるのは、所有者であるAです。そして、抵当権者としては、抵当不動産を使用することはできませんが、この抵当不動産(甲建物)の価値が下がってしまったら困ります。

■そして、この甲建物(対象不動産)に第三者Cが不法に占有している場合、このCがたちの悪い不法占有者だと「競売の進行が妨害したり」、「不動産の価値を下げるような行為(建物内のトイレや浴室やキッチンを壊す行為)をする」可能性もあります。こんなことをされたら、競売価格に影響が出て(=不動産の交換価値の実現が妨げられ)、抵当権を設定した意味がなくなってきます。このような場合、抵当権者は、抵当権を使って(抵当権に基づいて)、不法占有者Cに対して「出ていけ!」と主張することができます。これを妨害排除請求権といいます。

■また、抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者Aが、抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者Bは、不法占有者Cに対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができます。よって、本問の「抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない」は誤りです。

3.占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
3・・・妥当ではない

●占有回収の訴え → 占有を奪われたことが要件 / 「①物の返還」「②損害賠償」のどちらも請求できる

占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その「①物の返還」及び「②損害賠償」を請求することができます(①②のどちらもできる)。
占有回収の訴えは、下記一番下の内容です。

■占有保持の訴え

【具体例】 A所有の土地を賃借人Bが借りていた。そこに、Cが勝手に入ってきたとします。
Bは、土地の占有を妨害されたので、Cに対して「勝手に土地に入ってこないでください!」と①妨害停止の請求ができ、かつ、Cの占有妨害行為により、Aが一定期間使用できないといった損害を受けたのであれば、損害賠償請求も可能です。

■占有保全の訴え

占有保持の訴えとは異なり、まだ占有は妨害されていないが、占有が妨害される恐れのある場合に「占有保全の訴え」が適用されます。
【具体例】 A所有の甲地に隣接する乙地に立っている大きな木が、甲地側に倒れそうになってきている場合、まだ、木は倒れていないので、占有は妨害されていません。しかし、放っておくと、倒れてしまい、Aは甲地の占有が妨害される恐れがあります。そのような場合に、「①木が倒れてこないように何らかの措置をしてください!」と主張することができます。
また、現実に倒れてきて、Aが損害を受けた場合、損害賠償を請求することになりますが、その損害賠償請求に備えて担保を提供するように請求することもできます。

■占有回収の訴え

【具体例】 仕事用のパソコンを奪われた場合、奪った者に対して「①パソコン物を返せ!」と主張することもできるし、パソコンを奪われたことで、その期間仕事ができず、損害が発生したのであれば、その分の損害賠償請求を行うこともできます。
【注意】  「占有を奪われたとき」というのは、占有者の意思に基づくことなく占有が奪われた場合をいいます。 つまり、詐欺によって奪われた場合や、遺失してしまった場合は、「占有を奪われたとき」にはあたらないので、占有回収の訴えを提起することができません。

4.第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
4・・・妥当ではない

●妨害排除請求 → 不動産賃借人は対抗要件を備えておく必要がある

そもそも「賃借権」は「債権」なので、「特定の人(債務者)に対して請求できる権利」しかありません。言い換えると、「物権」のように、第三者に対して権利を主張することはできません。

【具体例】 貸金債権を考えます。AがBにお金を貸した場合、債権者Aは貸金債権を持ちますが、Aは債務者Bに対して「お金を返して!」と主張できますが、全く関係のないCに対して「お金を返して!」と主張することはできません。

一方、「物権」は絶対的な権利なので、誰に対しても主張できます。例えば、「所有権」です。所有権者は対抗要件を備えていれば誰に対しても所有者であることを主張できます。

【不動産賃借権はどうか?】 不動産賃借権は、「賃借権」であるものの、妨害排除請求権等の行使を認め、「物権」としての性質を有します。具体的には、不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合において、「①その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求(妨害排除請求に相当する)」ができ、また「②その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求」ができます(民法第605条の4)。

よって、「賃借権が対抗要件を具備していないと、その不法占有者に対して、賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができない」ので、誤りです。

5.Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。
5・・・妥当

●「他人の土地上の建物について、自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合の建物取得者」は、
建物を他に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者に対して建物収去・土地明渡しの義務を負う

【状況】

D:丙土地の所有者
E:丙土地上の丁建物の前所有者(保存登記済み)
(土地所有者Dに無断で建物を建築)
F:丙土地地上の丁建物の新所有者(買主)

【質問内容】

Dは、Eに対して、建物収去請求ができる、○か×か?です。

【判例】

判例では、「他人の土地上の建物の所有権を取得した者(E)が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとい建物を他(F)に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者Dに対し、右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である」としています。

つまり、Dは、Eに対して、建物収去・土地の明渡請求ができるので○です。

【関連知識】

原則として、建物収去・土地の明渡し請求できる相手は、「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者」なので、Dは、Fに対しても建物収去・土地の明渡請求ができます。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問30|民法・時効

改正民法に対応済
Aは、甲不動産をその占有者Bから購入し引渡しを受けていたが、実は甲不動産はC所有の不動産であった。BおよびAの占有の態様および期間に関する次の場合のうち、民法の規定および判例に照らし、Aが、自己の占有、または自己の占有にBの占有を併せた占有を主張しても甲不動産を時効取得できないものはどれか。

  1. Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
  2. Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
  3. Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
  4. Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間
  5. Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間

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改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

 

1.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
1・・・時効取得できる
●時効取得できる
●善意無過失で10年間占有 → 時効取得できる

【前提知識】

取得時効とは、他人の物(例:土地)であるにも関わらず、その物を自分の物と信じて、一定期間使用していると、本当に自分の物になってしまう制度のことです。そして、取得時効を主張するには(他の物を自分の物にするには)3つの要件を満たす必要があります(左表参照)。そして、③の「一定期間」とは、右表の内容です。ポイントは占有開始の時点で、善意無過失なのか、そうでないのかによって、必要な期間が変わるということです。善意無過失で占有を始めた者が、後になって、悪意に変わっても(つまり、他人の物だと気づいても)、あくまでも、占有開始の時点で判断するため、10年で取得時効が完成します。本問の解説 

問題文では、「占有者Bは悪意で5年間占有」し、「購入者Aは善意無過失で10年間占有」しています。

Aを基準に考えると、占有開始時に「善意無過失」であり、10年間占有しているため③の要件を満たしています。

また、①②の要件は問題文の内容から要件を満たします。

よって、Aは時効取得できます。

2.Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
2・・・時効取得できる
●「占有開始時の状態(善意・悪意)」と「占有期間」は引き継ぐことができる
問題文では「Bが悪意で18年間占有」し、その後「Aが善意無過失で2年間占有」
しています。そして、「占有開始の状態」と「占有期間」は、承継することができます。
※ 占有開始時の状態とは、
「占有している物が他人物であることを知っているかどうか?(善意 or 悪意)、また、知らない場合、過失があるかどうか(有過失 or 無過失)」を指します。
つまり、Aは、Bの悪意で18年間占有したことを引き継ぐことができます。これを引き継ぐと、Aは悪意で占有を開始し、18年+2年=20年間占有を継続したことになります。よって、Aは善意無過失でなく(悪意で)20年間占有し続けたことになるので、時効取得できます。
3.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
3・・・時効取得できない
 ●「占有開始時の状態(善意・悪意)」と「占有期間」は引き継ぐことができる
問題文では「Bが悪意で5年間占有」し、その後「Aが善意無過失で5年間占有」しています。そして、「占有開始の状態」と「占有期間」は、承継することができます。選択肢2と考え方は同じです。①Aを基準に考えると(占有開始の時期をAと考えると)、善意無過失なので、10年間の占有が必要ですが、5年しか占有していないので、取得時効の要件を満たしていません。②次に、Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、占有の状態を承継するので「悪意」、占有期間を承継するので、5+5=10年しか占有していません。よって、①でも②でも取得時効の要件を満たさないので、Aは時効取得できません。
4.Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間

4・・・時効取得できる

●善意無過失で10年間占有 → 時効取得できる

選択肢3と同じように考えます。

①Aを基準に考えると、悪意で3年間しか占有していないので、時効取得の要件を満たさないですが、②Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、Bの占有の状態を承継するので「善意無過失」、占有期間を承継するので、7+3=10年占有していることになります。善意無過失で10年間占有を継続しているので、Aは時効取得できます。

5.Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間

5・・・時効取得できる

●占有開始時の状態で判断する

問題文の状況としては、図の通りです。ポイントは占有開始の時点で、善意無過失なのか、そうでないのかによって、必要な期間が変わるということです。①Aを基準に考えると(占有開始の時期をAと考えると)、
善意無過失なので、10年間の占有が必要ですが、3+3=6年しか占有していないので、取得時効の要件を満たしていません。②次に、Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、占有の状態を承継するので「善意無過失」、占有期間を承継するので、3+2+3+3=11年間占有しています。よって、②の場合に、取得時効の要件を満たるので、Aは時効取得できます。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問29|民法・物権

改正民法に対応済
物権の成立に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済
【答え】:2

【解説】

ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
ア・・・妥当ではない

●地下又は空間を目的とする地上権も設定できる

地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができます。この場合、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができます(民法269条の2)。

具体例 地下鉄やモノレールを作る際に、地下や空間を目的とする地上権を設定できる

イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
イ・・・妥当
●判例によれば、一筆の土地の一部であっても時効取得できる

【判例】 判例では、一筆の土地の一部であっても取得時効の対象となるとしています。

【具体例】

上図のように、B所有の土地の一部(左端部分)をAが占有を継続することにより、Aは左端部分のみ時効取得できます。この場合、その部分のみ分筆(ぶんぴつ)して登記します。

※ 土地を数える場合、「筆:ふで」という単位で数えます。そして1つの土地を分けることを「分筆」と言います。

ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
ウ・・・妥当ではない
●構成部分の変動する集合動産 → 一括して譲渡担保の目的とすることができる

判例では「構成部分の変動する集合動産であっても、その種類・所在場所及び量の範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」としています。

具体例 例えば、ビール販売店Aが、Bからお金を借りて、倉庫内にあるアサヒの瓶ビール100本について譲渡担保を設定した場合、構成部分の変動する集合動産とは、「倉庫内にあるアサヒの瓶ビール100本」であり、種類・所在場所及び量の範囲が指定されているので、この100本のビールが一つの集合物です。

エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
エ・・・妥当

●土地に生育する樹木 → 明認方法を施した上で、土地とに売却できる

判例によると、土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められます。そして、「明認方法」とは、立木の所有者が誰なのかを公示する制度です。

明認方法の具体例 「立木の木の皮を削って所有者の名前を書く」「立札を立てておく」等の方法によって公示します。

※ 土地とともに立木を譲り受けた場合、対抗要件として、「明認方法」は不要で、「土地の登記」があれば足ります。

オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
5・・・妥当

●地役権の時効取得の要件 → ①継続的に行使 + ②外形上認識することができる

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます(民法283条)。よって、正しいです。
【簡単にいうと】 周りから見て、地役権を行使し続けている場合に限って、地役権を時効取得できるということです。

関連ポイント 通行地役権の時効取得に必要な「継続」の要件について、判例では、「要役地所有者が」、他人地(承役地)の上に通路の開設する必要があるとしています。つまり、土地を使いたい側(要役地所有者)が、開設することが要件です。 「承役地」とは「使用される側の土地」です。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問28|民法・錯誤

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。解かなくても大丈夫です。錯誤等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 要素の錯誤が成立する場合において、表意者に錯誤に基づく無効を主張する意思がないときであっても、表意者自身が錯誤を認めており、表意者に対する債権を保全する必要がある場合、表意者の債権者は、表意者の錯誤を理由とする無効を主張することができる。
  2. 売買代金に関する立替金返還債務のための保証において、実際には売買契約が偽装されたものであったにもかかわらず、保証人がこれを知らずに保証契約を締結した場合、売買契約の成否は、原則として、立替金返還債務を主たる債務とする保証契約の重要な内容であるから、保証人の錯誤は要素の錯誤に当たる。
  3. 婚姻あるいは養子縁組などの身分行為は錯誤に基づく無効の対象とならず、人違いによって当事者間に婚姻または縁組をする意思がないときであっても、やむを得ない事由がない限り、その婚姻あるいは養子縁組は無効とならない。
  4. 連帯保証人が、他にも連帯保証人が存在すると誤信して保証契約を締結した場合、他に連帯保証人があるかどうかは、通常は保証契約の動機にすぎないから、その存在を特に保証契約の内容とした旨の主張立証がなければ、連帯保証人の錯誤は要素の錯誤に当たらない。
  5. 離婚に伴う財産分与に際して夫が自己所有の不動産を妻に譲渡した場合において、実際には分与者である夫に課税されるにもかかわらず、夫婦ともに課税負担は専ら妻が負うものと認識しており、夫において、課税負担の有無を重視するとともに、自己に課税されないことを前提とする旨を黙示的に表示していたと認められるときは、要素の錯誤が認められる。

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【答え】:-

【解説】

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問27|民法・社団や組合

改正民法に対応済
自然人A(以下「A」という。)が団体B(以下「B」という。)に所属している場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。
イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。
ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。
エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。
オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済
【答え】:4

【解説】

自然人Aが団体Bに所属している。

ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。

ア・・・妥当ではない

●理事 → 社団法人の代表

理事は、一般社団法人を代表します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律77条)。

つまり、 理事Aは、法人Bの代表として法律行為を行います。「法人Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う」は誤りです。

自然人Aが団体Bに所属している。

イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。

イ・・・妥当

●権利能力なき社団 → 財産は「総有」

権利能力がなければ当然権利義務の帰属主体にはなれません(法人のように人格を持たない)。どういうことかというと、不動産を購入して登記をしようとしても権利能力がないと、登記ができません。そのため、権利能力なき社団の場合、「代表者の個人名義」や「構成員全員の共有名義」で登記をしたりします。

そして、権利能力なき社団の財産は実質的には社団を構成する総社員の総有に属するものである」とされています。

※1 「共有」の持分については、持分を自由に処分(譲渡)することができ、目的物の分割請求もできることから「具体的」と記しています。

※2 「合有」の持分については、各人が持分を持つのですが、共有とは異なり、持分を自由に処分(譲渡)することができず、清算前に、目的物の分割請求もできないことから「持分を潜在的には有する」と言います。

自然人Aが団体Bに所属している。

ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。

ウ・・・妥当ではない

●組合の財産=共有(厳密には合有) → 持分を自由に処分(譲渡)することができない

●目的物(財産)の分割請求もできない

各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属します(民法668条)。そして、組合における財産の共有は「合有」を意味します。つまり、「狭義の共有」とは異なり、①持分を自由に処分(譲渡)することができません。また、財産の分割請求もできません。

自然人Aが団体Bに所属している。

エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。

エ・・・妥当ではない

●組合の業務を執行する組合員 → 特約がある場合に報酬を請求できる

組合の業務を執行する組合員は、特約がなければ、組合に対して報酬を請求することができません(民法671条、648条)。

自然人Aが団体Bに所属している。

オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。

オ・・・妥当

●組合規約等で内部的に業務執行者の代理権限を制限しても、その制限は善意・無過失の第三には対抗できない

組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(民法670条1項) 。

また、組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することもできます(2項)。そして、この委任を受けたものを「業務執行者」と言います。本問の「Aが業務執行者」です。そして、組合に業務執行者がいる場合は、業務執行者のみが組合員を代理することができる(670条の2)。

そして、判例では、この業務執行者の代理権限について、制限を加えても、善意無過失の第三者には対抗できないとしています。

【具体例】 

例えば、「業務執行者Aは、10万円以上の取引はできない」と組合の規約で定めていたとします。
これが、「組合規約等で内部的に業務執行者の代理権限を制限」している状況です。

そして、第三者は、業務執行者A(組合)と取引した者Bです!

この場合、第三者Bが上記規約について、過失なく知らない場合(善意・無過失)、
第三者Bは、組合に対して対抗できるので、業務執行者A(組合)との取引の有効を主張することができます!


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問35|民法:後見

改正民法に対応済
後見に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する。
  2. 未成年後見人は自然人でなければならず、家庭裁判所は法人を未成年後見人に選任することはできない。
  3. 成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判によって開始する。
  4. 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務のほか、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。
  5. 後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

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改正民法に対応済
【答え】:5

【解説】

1.未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する。

1・・・妥当でない

●未成年後見:①未成年者に対して親権を行う者がないとき、又親権を行う者が管理権を有しないときに開始す

未成年後見人とは、未成年者について親権者がないとき等、この未成年者の監護養育や財産の保護を行うものを言います。そして、未成年後見は、①未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は②親権を行う者が管理権を有しないときに開始します(民法838条)。

よって「未成年後見は、①未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する」というのは誤りです。

②親権を行う者が管理権を有しないときも未成年後見は開始します。

「親権」とは、未成年者の子どもを監護・養育し、その財産を管理し、その子どもの代理人として法律行為をする権利や義務のことをいいます。

「親権を行う者がないとき」とは、①親権者が亡くなったとき、②親権者が失踪宣告を受けたとき、

「親権を行う者が管理権を有しないとき」とは、「親権喪失の審判を受けたとき」などです。
例えば、親権者が、子の財産を使い込んでいる場合や親権者が制限行為能力者の場合に、管理権を喪失します。

2.未成年後見人は自然人でなければならず、家庭裁判所は法人を未成年後見人に選任することはできない。

2・・・妥当でない

●未成年後見人 → 法人もなることができる

後見人には本人の親族や弁護士、司法書士などのイチ個人がなることが多いのですが、福祉協議会・福祉公社や司法書士法人・弁護士法人などの法人も後見人になることが可能です(民法840条3項)。

法人が成年後見人になることのメリットは、①個人ではなく、組織として動くことができるので、効率よく後見人の仕事を進めていくことが可能です。また、②個人の場合だと、その個人の健康上の理由などで責任を果たせなくなると職務が滞ってしまい、後見を受けている人(被後見人)の生活に支障が出ることもあります。法人が未成年後見人であれば、それを防ぐことが可能です。

3.成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判によって開始する。

3・・・妥当でない

●事理を弁識する能力を欠く常況にある → 後見開始

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができます(民法7条)。「事理を弁識する能力を欠く常況にある」とは、常に、物事の判断ができない状況にあるということです。

4.成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務のほか、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。

4・・・妥当でない

●法定監督義務者は、原則、責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う
●成年後見人であるというだけでは、法定監督義務者には当たらない

■ 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(民法858条)。つまり、成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務があるので、前半部分は正しいです。

■ 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について、当該未成年者は賠償責任を負いません(712条)。そして、当該未成年者が責任を負わない場合、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(法定監督義務者)は、原則、その責任無能力者(未成年者)が第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(714条)。そして、判例では、成年後見人であるというだけでは、法定監督義務者には当たらないとしています。つまり、「当然に法定の監督義務者として責任を負う」という記述は誤りです

5.後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

5・・・妥当

●後見監督人 → 後見人の配偶者」、「直系血族」及び「兄弟姉妹」は、後見監督人となることができない

後見監督人の仕事は、「後見人の事務を監督すること」、「後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること」、「急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること」、「後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること」です(民法851条)。
後見人に近しい者が後見監督人であると、公平に後見人を監督できないかのうせいがあるので、後見監督人になることはできないことになっています。
したがって、妥当である。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問34|民法:離婚

改正民法に対応済
離婚に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.離婚における財産分与は、離婚に伴う精神的苦痛に対する損害の賠償も当然に含む趣旨であるから、離婚に際し財産分与があった場合においては、別途、離婚を理由とする慰謝料の請求をすることは許されない。

イ.離婚に際して親権者とならず子の監護教育を行わない親には、子と面会・交流するためのいわゆる面接交渉権があり、この権利は親子という身分関係から当然に認められる自然権であるから、裁判所がこれを認めない判断をすることは憲法13条の定める幸福追求権の侵害に当たる。

ウ.父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかったにもかかわらず、誤って離婚届が受理されたときであっても、当該離婚は有効に成立する。

エ.民法の定める離婚原因がある場合には、当事者の一方は、その事実を主張して直ちに家庭裁判所に対して離婚の訴えを提起することができ、訴えが提起されたときは、家庭裁判所は直ちに訴訟手続を開始しなければならない。

オ.夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及び、その夫婦の間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により極めて苛酷な状態に置かれる等著しく社会的正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚が許されないとすることはできない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済
【答え】:4(ウとオが妥当)

【解説】

ア.離婚における財産分与は、離婚に伴う精神的苦痛に対する損害の賠償も当然に含む趣旨であるから、離婚に際し財産分与があった場合においては、別途、離婚を理由とする慰謝料の請求をすることは許されない。

ア・・・妥当でない

●離婚の財産分与に「精神的苦痛に対する損害賠償」が含まれない場合、財産分与とは別に、慰謝料を請求できる

判例によると
「すでに財産分与がなされた場合においても、・・・その額および方法において分与請求者の精神的苦痛を慰籍するに足りないと認められるものであるときは、右請求者は、別個に、相手方の不法行為を理由として離婚による慰籍料を請求することができる」としています(最判昭46.7.23)。
つまり、
離婚の財産分与には、「精神的苦痛に対する損害賠償」が含まれない場合もあり、
「精神的苦痛に対する損害賠償」が含まれない場合、財産分与とは別に、慰謝料を請求できます。よって、本肢は妥当ではありません。

イ.離婚に際して親権者とならず子の監護教育を行わない親には、子と面会・交流するためのいわゆる面接交渉権があり、この権利は親子という身分関係から当然に認められる自然権であるから、裁判所がこれを認めない判断をすることは憲法13条の定める幸福追求権の侵害に当たる。
イ・・・妥当でない

●協議離婚をした際に親権者とされなかった親が、子どもと面会交渉することについて、裁判所が、親の面接交渉権を認めない判断をすること→幸福追求権の侵害に当たらない

協議離婚をした際に親権者とされなかった親が、子どもと面会交渉することについて
裁判所が、親の面接交渉権を認めない判断をすることは、憲法13条に違反するかどうかの問題ではないとしています(最判昭59.7.6)。
つまり、本肢の「幸福追求権の侵害に当たる」というのは妥当ではありません。

これはそのまま覚えればよいでしょう!

ウ.父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかったにもかかわらず、誤って離婚届が受理されたときであっても、当該離婚は有効に成立する。
ウ・・・妥当

●父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかった + 誤って離婚届が受理された → 離婚は有効に成立

父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。
そして、離婚の届出は、上記規定等の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができません(民法765条1項)。だたし、離婚の届出が、上記に違反して受理された場合、離婚は、有効に成立してしまいます(同条3項)。つまり、父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかった場合であっても、誤って離婚届が受理されたときは、当該離婚は有効に成立します。したがって、本肢は妥当です。

エ.民法の定める離婚原因がある場合には、当事者の一方は、その事実を主張して直ちに家庭裁判所に対して離婚の訴えを提起することができ、訴えが提起されたときは、家庭裁判所は直ちに訴訟手続を開始しなければならない。
エ・・・妥当でない
離婚の裁判をしようとする場合、事前に離婚調停をしなければなりません家事事件手続法257条:調停前置主義)。
よって、本肢は妥当ではありません。
オ.夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及び、その夫婦の間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により極めて苛酷な状態に置かれる等著しく社会的正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚が許されないとすることはできない。
オ・・・妥当
「有責配偶者」とは、離婚の原因を作った側を指します。そして、判例では、
「有責配偶者からされた離婚請求であっても、
夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、
その間に未成熟子がいない場合には、
相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない」としています(最大判昭62.9.2)。つまり、特段の事情がない限り、有責配偶者からでも、離婚請求ができるということです。よって、本肢は妥当です。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問33|民法:不法行為

改正民法に対応済
Aに雇われているBの運転する車が、Aの事業の執行中に、Cの車と衝突して歩行者Dを負傷させた場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。なお、Aには使用者責任、BおよびCには共同不法行為責任が成立するものとする。

  1. AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、Bに故意または重大な過失があったときに限ってBに対して求償することができる。
  2. AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってCに対して求償することができる。
  3. CがDに対して損害を全額賠償した場合、Cは、Bに対してはB・C間の過失の割合によるBの負担部分について求償することができるが、共同不法行為者でないAに対しては求償することができない。
  4. Cにも使用者Eがおり、その事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、AとEがそれぞれ指揮監督するBとCの過失の割合によるCの負担部分についてEに対して求償することができる。
  5. BがAのほかFの指揮監督にも服しており、BがAとFの事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってFに対して求償することができる。

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改正民法に対応済
【答え】:4

【解説】

1.AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、Bに故意または重大な過失があったときに限ってBに対して求償することができる。

1・・・妥当でない

●使用者が賠償した場合、損害の公平な分担という見地から信義則上「相当と認められる限度」で従業員に求償できる

上図では、質問内容に関係のないCは省略しています。そして、使用者Aが被害者Dに損害賠償金を支払った場合(=Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合)、使用者Aは被用者B(加害者)に対して求償することができますが、使用者が被用者に無制限に求償することはできず、判例では、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、使用者Aは被用者Bに対して求償することができるとしています。

被用者Bに故意または重大な過失があったときに限らず、賠償した使用者Aは、Bに求償できます。

※ 「相当と認められる限度」のイメージとしては、使用者Aの管理がしっかりしていないことで不法行為(例えば、過失による事故)が生じた場合は、従業員Bに対して求償できる金額は小さくなり、逆に従業員個人Bの責任が大きい場合は、従業員Bに対して求償できる額は大きくなるといった感じです。

【関連ポイント】
もし、被用者Bが賠償した場合、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、被用者Bは、使用者Aに対して求償することができる(賠償した者が使用者Aであっても被用者Bであっても、考え方は同じということ)

2.AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってCに対して求償することができる。

2・・・妥当でない

●使用者Aが「自己の負担部分を超えて」賠償した場合、その超える部分に対し、他の使用者Cに対し求償することができる

判例によると、「共同不法行為者たる被用者B及び使用者A、そして他の共同不法行為者Cは、被害者Dに対して、各自、被害者Dが蒙った全損害を賠賞する義務を負うものというべきであり、また、当該債務の弁済をした使用者Aは、他の共同不法行為者Cに対し、他の共同不法行為者Cと被用者Bとの過失の割合にしたがって定められるべき他の共同不法行為者Cの負担部分について求償権を行使することができるものと解する」としています(最判昭41.11.18)。

具体例

被害額100万円、BとCの過失割合が3:7だったとします。この場合、Bの負担部分は30万円、Cの負担部分は70万円です。ここで、使用者Aが100万円を弁済した場合、AはCに対して70万円を求償できます。

3.CがDに対して損害を全額賠償した場合、Cは、Bに対してはB・C間の過失の割合によるBの負担部分について求償することができるが、共同不法行為者でないAに対しては求償することができない。

3・・・妥当でない

●共同不法行為を行った者が、過失割合で決められた自分の負担部分を超えて賠償したときは、他の共同不法行為者Bの負担部分(Cの負担部分を超えた部分)について、使用者に対して求償できる

本問では、加害者Cが全額賠償(負担部分を超えて賠償)しています。この場合、Cは、被用者Bに対しては、過失割合に応じて求償でき、使用者Aに対しては、自己の負担部分を超えた部分について求償できます。よって「共同不法行為者でないAに対しては求償することができない」は誤りです。

4.Cにも使用者Eがおり、その事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、AとEがそれぞれ指揮監督するBとCの過失の割合によるCの負担部分についてEに対して求償することができる。

4・・・妥当

●使用者Aが「自己の負担部分を超えて」賠償した場合、その超える部分に対し、他の使用者Eに対し求償することができる

状況は上図の通りです。例えば、BとCの加害割合を6:4として10万円の損害賠償債務を負ったとすると、B及び使用者Aの負担部分が6万円、C及び使用者Eの負担部分が4万円となります。もちろん被害者DはAにもBにも、また、CにもEにも10万円を請求できます。ここで、Aが10万円を被害者Dに賠償した場合、4万円(A・Bの負担部分6万円を超える部分)までEに対して求償することができます。

5.BがAのほかFの指揮監督にも服しており、BがAとFの事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってFに対して求償することができる。

5・・・妥当でない

●使用者が複数いる場合 → 加害者の過失割合に従って定められる負担部分のうち、使用者の責任の割合に応じて債務を負担し、自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、使用者の他方に対し、求償することができる。

具体例 BC間の過失割合が6:4でBが悪いとします。そして、AとFについて1:2の割合で責任がある(Fの方が責任が重い)とします。ここで、10万円の損害賠償債務を負ったとして、Aが10万円を賠償した場合、「加害者Bの過失割合にしたがって定められる負担部分」は6万円です。そして、AとFの責任の割合は1:2なので、この6万円のうち、Aの負担部分は2万円です。

そのため、2万円を超える部分=4万円をAはFに求償できます。

本問は「損害の公平な分担という見地から均等の割合に限って」が誤りです。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問32|民法:使用貸借・賃貸借

改正民法に対応済
物の貸借に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、それが、使用貸借の場合にも賃貸借の場合にも当てはまるものの組合せはどれか。

ア.借主は、契約またはその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用および収益をしなければならない。

イ.借主は、目的物の使用および収益に必要な修繕費を負担しなければならない。

ウ.借主は、目的物を返還するときに、これに附属させた物を収去することはできない。

エ.貸借契約は、借主の死亡によって、その効力を失う。

オ.契約の本旨に反する使用または収益によって生じた損害の賠償および借主が支出した費用の償還は、貸主が借主から目的物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済
【答え】:2

【解説】

ア.借主は、契約またはその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用および収益をしなければならない。

ア・・・両方当てはまる
使用貸借借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければなりません(民法594条)。
上記ルールは「賃貸借」でも準用されます(民法616条)。
よって、本肢の内容は、使用貸借にも賃貸借にも当てはまります。
イ.借主は、目的物の使用および収益に必要な修繕費を負担しなければならない。
イ・・・使用貸借に当てはまるが、賃貸借に当てはまらない
使用貸借の場合
借主は、借用物の通常の必要費を負担します(民法595条)。一方、賃貸借の場合、
賃貸人が、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います民法606条1項本文)。
よって、本肢の内容は、使用貸借には当てはまるが、賃貸借には当てはまりません。
ウ.借主は、目的物を返還するときに、これに附属させた物を収去することはできない。
ウ・・・両方当てはまらない
使用貸借の場合
借主は、借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負います。
そして、借用物の返還の際借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができます民法599条2項)。
上記ルールは「賃貸借」でも準用されます(民法622条)。
よって、本肢の内容は、使用貸借にも賃貸借にも当てはまりません。
エ.貸借契約は、借主の死亡によって、その効力を失う。
エ・・・使用貸借に当てはまるが、賃貸借に当てはまらない
使用貸借は、借主の死亡によって終了します(民法597条3項)。
一方、賃貸借の場合、借主が死亡したら、賃貸借契約は相続されます(大判大13.3.13)。
よって、本肢の内容は、使用貸借には当てはまるが、賃貸借には当てはまりません。
オ.契約の本旨に反する使用または収益によって生じた損害の賠償および借主が支出した費用の償還は、貸主が借主から目的物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
オ・・・両方当てはまる
使用貸借の場合、
契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません(民法600条1項)。
上記ルールは「賃貸借」でも準用されます(民法622条)。
よって、本肢の内容は、使用貸借にも賃貸借にも当てはまります。※使用貸借の場合、通常の必要費は、借主負担ですが、有益費については、貸主負担となります。
600条の「借主が支出した費用」については「有益費」を指すので、この費用は、貸主に償還請求が可能です。

  • 有益費とは、「目的物の価値を上げるための費用」で、例えば、トイレをぼっとん便所から水洗便所に変更する費用等です。
  • 通常の費用は、「目的物のもともとの価値を維持するための費用」で、例えば、台風で屋根が壊れた場合の屋根の修理費用です。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問31|民法:弁済

改正民法に対応済
弁済に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 債務者が元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済として給付した金銭の額がその債務の全部を消滅させるのに足りないときは、債務者による充当の指定がない限り、これを順次に費用、利息および元本に充当しなければならない。
  2. 同一の債権者に対して数個の金銭債務を負担する債務者が、弁済として給付した金銭の額が全ての債務を消滅させるのに足りない場合であって、債務者が充当の指定をしないときは、債権者が弁済を受領する時に充当の指定をすることができるが、債務者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
  3. 金銭債務を負担した債務者が、債権者の承諾を得て金銭の支払に代えて不動産を給付する場合において、代物弁済が成立するためには、債権者に所有権を移転させる旨の意思表示をするだけでは足りず、所有権移転登記がされなければならない。
  4. 債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をすれば債務不履行責任を免れるが、債権者において契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、口頭の提供をしなくても同責任を免れる。
  5. 債権者があらかじめ金銭債務の弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をした上で弁済の目的物を供託することにより、債務を消滅させることができる。

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改正民法に対応済
【答え】:1

【解説】

1.債務者が元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済として給付した金銭の額がその債務の全部を消滅させるのに足りないときは、債務者による充当の指定がない限り、これを順次に費用、利息および元本に充当しなければならない。
1・・・妥当ではない

●債務者が元本のほか利息および費用を支払うべき場合 : 原則、①費用→②利息→③元本の順に充当される

債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない(民法489条)。

つまり、一部を弁済した場合、「費用」→「利息」→「元本」の順に充てられます。

本肢は「債務者による充当の指定がない限り」が誤りです。

債務者や債権者が一方的に充当の順番を決めることはできません。

当事者間で合意があれば、その合意した順序で充当します。

具体例 例えば、AがBに100万円を貸し、その際の費用(例えば、契約書に貼る印紙税等)が1万円、利息が5万円だった。そして、債務者が、100万円しか支払わなかった場合、先に費用1万円に充てられ(充当し)、その後、利息5万円に充てられ、残り94万円が元本に充てられます。つまり、元本6万円が残るということです。

上記事例は、「弁済として給付した金銭の額がその債務の全部を消滅させるのに6万円足りないとき」に当たります。

2.同一の債権者に対して数個の金銭債務を負担する債務者が、弁済として給付した金銭の額が全ての債務を消滅させるのに足りない場合であって、債務者が充当の指定をしないときは、債権者が弁済を受領する時に充当の指定をすることができるが、債務者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
2・・・妥当

●弁済者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる

債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができます。弁済をする者が上記規定による指定をしないときは、弁済を受領する者(債権者)は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができます。ただし、弁済者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。

具体例 例えば、AがBに対して、「①100万円の貸金債権」と「②50万円の代金債権」を有していたとします。そして、弁済者Bが50万円を弁済する場合、①の貸金債権について弁済するのか、②の代金債権について弁済するのかを指定することができます。もし、債務者Bが指定をしない場合、債権者Aが指定をすることができるのですが、もし、債権者Aが指定して充当した後、直ちに異議を述べた場合は、この異議が優先し、その後、Bが指定した方に充当されます。

3.金銭債務を負担した債務者が、債権者の承諾を得て金銭の支払に代えて不動産を給付する場合において、代物弁済が成立するためには、債権者に所有権を移転させる旨の意思表示をするだけでは足りず、所有権移転登記がされなければならない。
3・・・妥当

●代物弁済による所有権移転の効果 → 代物弁済契約の成立時に生ずる
●代物弁済による債務消滅の効果 → 所有権移転登記手続を完了した時に生ずる

お金を借りたらお金で返すのが筋ですが、民法ではお金以外のモノ(例えば不動産)で弁済しても有効としています。これを「代物弁済」と言います。漢字のとおり「代わりに物で弁済する」ということです。

そして、不動産を用いて代物弁済をした場合、「いつ所有権が移転するのか?」「いつ債務が消滅するのか?(いつ代物弁済が成立するか?)」が問題となります。

いつ所有権が移転するのか → 原則、当事者間の代物弁済契約の成立した時に、所有権が移転します。

■いつ債務が消滅するのか?(いつ、代物弁済が成立するか?) → 特段の事情のない限り、単に代物弁済契約の意思表示をするだけでは生ぜず、所有権移転登記手続を完了した時に生ずるとしています。

4.債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をすれば債務不履行責任を免れるが、債権者において契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、口頭の提供をしなくても同責任を免れる。
4・・・妥当

●債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合 → 口頭の提供をすることで、債務不履行責任を免れる
●債権者が契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合 → 口頭の提供をしなくとも債務不履行責任を免れる

弁済とは 弁済は、債務者が弁済を提供して、債権者が受領することで行われます。例えば、お金の貸し借りについて考えれば、債務者が借りたお金を持参して、債権者がそのお金を受領することで弁済が完成します。このように一般的に弁済を完成させるには、「債権者が受領」するという債権者の協力が必要です。このような場合に、弁済の実現に必要な準備をして債権者の協力を求めることを「弁済の提供」といいます。弁済の提供をすることで、債務者は債務不履行の責任(遅延損害金等)を免れることができます。

■そして、弁済の提供は、原則として「現実の提供」が必要です。現実の提供とは、例えば、借りたお金を返す場合、お金を現実に債権者の住所地に持参することです。

ただし、①債権者が事前に受領しないと言っている場合や、②債務の履行につき債権者の行為を要するときは、「口頭の提供」で足ります(民法493条)。

■さらに、判例では、「債権者が契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は口頭の提供をしなくとも債務不履行の責任を免れる」として、口頭の提供すら必要がない場合もあります。

5.債権者があらかじめ金銭債務の弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をした上で弁済の目的物を供託することにより、債務を消滅させることができる。
5・・・妥当

●債権者(受領する側)が弁済の受領を拒んだとき → 供託することで、債務を消滅させることができる

弁済者は、下記1~3の場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができ、供託した時に、その債権は、消滅します(民法494条)。

1.債権者(受領する側)が弁済の受領を拒んだとき

2.債権者が弁済を受領することができないとき

3.弁済者(債務者)が「過失なく債権者が誰か分からない時(債権者を確知できない時)」

よって、本問は「1」に該当するので、債務者は、口頭の提供をした上で弁済の目的物を供託することにより、債務を消滅させることができます。

※ 供託とは、債権者に代わって「国の機関(法務局)」に弁済することを言います。例えば、債権者A、債務者Bで、債権額が100万円とし、Bが供託所に100万円を供託した場合、債権者Aは、法務局から100万円を還付してもらう流れになります。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略