民法の過去問

平成30年・2018|問30|民法:抵当権

改正民法に対応済

抵当権の効力に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。
  2. 借地上の建物に抵当権が設定された場合において、その建物の抵当権の効力は、特段の合意がない限り借地権には及ばない。
  3. 買戻特約付売買の買主が目的不動産について買主の債権者のために抵当権を設定し、その旨の登記がなされたところ、その後、売主が買戻権を行使した場合、買主が売主に対して有する買戻代金債権につき、上記抵当権者は物上代位権を行使することができる。
  4. 抵当不動産が転貸された場合、抵当権者は、原則として、転貸料債権(転貸賃料請求権)に対して物上代位権を行使することができる。
  5. 抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。

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改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

1.抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。

1・・・妥当ではない

●抵当権設定時に存在していた従物には抵当権の効力が及ぶ → 主物(不動産)に抵当権の登記がされていれば、従物には抵当権を設定しなくても抵当権の効力は生じる

「付合物」は、別個の物が、くっ付いて1個の物になる物を指し、例えば、「立木」や「取り外しの困難な庭石」は、土地にくっついているので「付合物」です。

「従物」は別の物(主物)とは独立しているが、主物に付属して、主物の利用価値を高めるものです。例えば、「取り外しが簡単な庭石」は土地(主物)に設置して土地の見た目などよくする働きがあり、取り外しが簡単なため「従物」です。

下表の「雨戸・ドア」と「畳やふすま」について説明します。

建物は、雨風をしのぐためのものです。そのために、建物には、屋根や玄関のドア、ガラス戸・雨戸があるわけです。つまり、建物の機能を果たすためのもので建物と一体となっているので、「付合物」です。

一方、「畳やふすま」は建物になくても問題ないものなので、建物(主物)に設置することで建物の利用価値を高めるために備え付けられる物です。そのため、「従物」として扱います。

そして、従物抵当権設定前に取り付けた従物には抵当権の効力が及びますが、抵当権設定の従物には抵当権の効力が及びません(判例)。例えば、ガソリンスタンド店舗の地下タンク・洗車機です。

質問内容

問題文からは、従物を取り付けた時期が、抵当権設定前か後かが分かりませんが、質問内容が「別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない」○か×か?なので、

  • 別個に従物について対抗要件を具備しなければ第三者に対して対抗することができない場合は○
  • 別個に従物について対抗要件を具備しなくても第三者に対抗できる場合があれば×です。

上記の通り、従物抵当権設定前に取り付けていた場合、従物について対抗要件を備えていなくても、不動産の抵当権の効力が従物にも及ぶため、第三者に対抗できます。よって、×となります。

2.借地上の建物に抵当権が設定された場合において、その建物の抵当権の効力は、特段の合意がない限り借地権には及ばない。

2・・・妥当ではない

●土地賃借人が建物に抵当権設定 → 原則、抵当権の効力は当該土地の賃借権に及ぶ(判例)

具体例 土地所有者A、土地の賃借人Bという状況で、Bが、銀行Cからお金を借りて、借地上に建物を建築した。そして

Bは、抵当権者Cとして、建物に抵当権を設定した。この場合、抵当権を設定した建物だけでなく、敷地の賃借権にも抵当権の効力は及びます(判例)。

理由 建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となって一つの財産的価値を形成しているから。

3.買戻特約付売買の買主が目的不動産について買主の債権者のために抵当権を設定し、その旨の登記がなされたところ、その後、売主が買戻権を行使した場合、買主が売主に対して有する買戻代金債権につき、上記抵当権者は物上代位権を行使することができる。

3・・・妥当

●抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻し債権を差し押さえることができる

具体例 土地の売主Aが買主Bに対して「買戻特約付」で売却した。「買戻特約」とは、「売主Aが代金額および契約の費用を買主Bに返還することによって売買契約を解除し、目的物を取り戻すことができる」とする特約を言います。

そして、買主Bは、当該土地を購入するにあたって、銀行Cからお金を借りていた。そして、BはCを抵当権者として、購入した土地に抵当権を設定した。

その後、売主Aが買戻権を行使した場合、つまり、売主Aが買主Bに対して「代金等を返還させてください!そして土地を返してください!」と主張した場合、買主Bは、売主Aに対して、代金を返してもらう権利(買戻代金債権)を有します。

【質問内容】 買戻代金債権につき、抵当権者Cは物上代位権を行使することができる○か×か?です。

「物上代位」とは、簡単に言えば、「権利を差し押さえること(奪い取ること)」です。

判例では、「抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻し権の行使により買主が取得した買戻し債権を差し押さえることができる」 としているので、本問は○です。つまり、抵当権者である銀行Cは、売主AがBに返還する代金を差し押さえて、Bに貸したお金を回収できるということです。

4.抵当不動産が転貸された場合、抵当権者は、原則として、転貸料債権(転貸賃料請求権)に対して物上代位権を行使することができる。

4・・・妥当でない

●抵当権設定者Bが取得する賃料に対しては抵当権の効力を及ぼすことができるが、賃借人Cが取得する転貸賃料についてまでは抵当権の効力を及ぼすことはできない

具体例 ①AがBにお金を貸し、Bが建物を建築し、当該建物に抵当権を設定した。その後、建物所有者B(抵当権設定者でもある)が、建物をCに賃貸し、③さらに、CがDに建物を転貸した(又貸しをした)。

ここで、建物所有者(賃貸人B)は「賃料債権(Cから賃料をもらう権利)」を持ち、賃借人Cは「転貸料債権(Dから転貸料をもらう権利)」を持ちます。

質問内容 抵当権者Aは、原則、転貸料債権に対し物上代位権を行使することができる(転貸料債権を差押さえできる)○か×かです。

結論からいうと、賃料に対する物上代位について、抵当権設定者Bが取得する賃料に対しては抵当権の効力を及ぼすことができるが、賃借人Cが取得する転貸賃料についてまでは抵当権の効力を及ぼすことはできません判例

Bがお金を返さないからBがCからもらえるべき賃料(賃料債権)を、Aが物上代位することはできるのは予想がつきます。
一方、CがDからもらえる転貸料についてAが物上代位できるとなると、Bの責任に全く関係ないCには酷になります。
したがって、Aは、CのDに対する転貸料債権に当然に物上代位することはできません。

5.抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。

5・・・妥当でない

●抵当権 → 原則、満期となった最後の2年分の利息のみ担保(保証)される

具体例 会社員Aが、銀行Bからお金を借りてマイホームを建築し、マイホームに銀行Bを抵当権者として抵当権を設定した。この場合、利息についても、この抵当権により保証されています。ただし、抵当権により保証されるのは、原則、満期となった最後の2年分です。よって、本問は誤りです。

例外として、他に債権者がいない場合は、利息の全てについて、担保(保証)され、回収できます。

※「満期」とは「競売になった場合の配当日」です。この配当日の2年前から配当日までが「満期となった最後の2年分」です。

つまり、万一Aが期限内にお金を返してくれない場合、原則、銀行Bは抵当権を実行して(Aのマイホームを競売にかけて)、競売の落札代金から、「貸したお金+2年分の利息」を回収することができるということです。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問29|民法:対抗関係

改正民法に対応済

Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約(以下「本件売買契約」という。)をA・B間で締結した場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.甲土地は実際にはCの所有に属していたが、CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた場合において、Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結したときであっても、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない。

イ.甲土地はAの所有に属していたところ、Aの父であるDが、Aに無断でAの代理人と称して本件売買契約を締結し、その後Dが死亡してAがDを単独で相続したときは、Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。

ウ.甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していたところ、AがEに無断でAの単独所有名義の登記をしてBとの間で本件売買契約を締結し、Bが所有権移転登記をした場合において、Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する。

エ.甲土地はAの所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、Aが甲土地をその事情を知らないFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない。

オ.甲土地はAの所有に属していたところ、GがAに無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となったBは、Gが当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済
【答え】:5

【解説】

Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約をA・B間で締結した。
ア.甲土地は実際にはCの所有に属していたが、CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた場合において、Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結したときであっても、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない。

ア・・・妥当ではない

●「虚偽表示による第三者」は、善意であれば保護される(所有権を主張できる)

【問題文の状況理解】 『「Aが登記簿上の所有名義人である甲土地」をBが買い受ける旨の契約をA・B間で締結した』となっているので、Bが買主で、購入した物は「名義人がAとなっている甲土地」です。売主はAです。

「虚偽表示」とは、嘘の意思表示をすることです。本問の「CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた」「甲土地は実際にはCの所有に属していた」というのは、甲土地の真の所有者はCであるにも関わらず、何か理由があって、甲土地の所有権をAに移した(移転させた)状況です。これは、嘘の所有権移転を行っているわけなので、「虚偽表示」に当たります。

そして、本問の「Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結した」とは、「AがBと売買契約を締結し、虚偽表示の事情をBが知らない(善意)」という状況です。そして、第三者Bが善意の場合、第三者が保護され、契約は有効となります。

つまり、善意のBは、Cに対して所有権を主張することができるので「BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない」は誤りです。

■上記において、第三者Bがいない場合どうなるか?(=ACのみの場合)

虚偽表示による当事者間(AC間)の意思表示は無効なので、CはAに所有権を主張できます。

「当事者間の関係」と「第三者との関係」では扱い方が異なるので注意しましょう!

Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約をA・B間で締結した。
イ.甲土地はAの所有に属していたところ、Aの父であるDが、Aに無断でAの代理人と称して本件売買契約を締結し、その後Dが死亡してAがDを単独で相続したときは、Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。

イ・・・妥当ではない

●本人が無権代理人を単独相続 → 本人は追認拒絶できる しかし、損害賠償責任を免れることはできない

無権代理とは 代理権をもたない者(無権代理人)が、代理人と称して法律行為(売買等)をすることを「無権代理」と言います。無権代理が行われると、本人は困ってしまうので、下記のような権利を持ちます。

【問題文の状況】 ①無権代理人Dが、本人Aに無断でA所有の甲土地をBに売却します。②その後、無権代理人Dが死亡し、③本人Aが単独相続します。

本人Aが無権代理人Dを単独相続したとき、本人の有する追認拒絶権を行使することはできるが、無権代理人Dの債務も承継するため、無権代理人の責任を免れることはできない=損害賠償債務は負います。よって、本問は誤りです。

Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約をA・B間で締結した。
ウ.甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していたところ、AがEに無断でAの単独所有名義の登記をしてBとの間で本件売買契約を締結し、Bが所有権移転登記をした場合において、Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する。

ウ・・・妥当ではない

●相続人は自己の相続分(持分)については、登記をしなくても保護される

誰かが死亡して相続が発生すると、「遺産分割協議」を行い、その後、協議で合意されたとおりに財産を分けます。そして、本問には「甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していた」と記載されているので、遺産分割前と考えることができます。なぜなら、相続財産は、遺産分割前は、共有に属するからです。そして、各相続人は、個々の遺産上に共有持分権を有し、遺産分割の前でも、他の相続人の同意を得ずに、共有持分権(自己の持分)を処分(売買契約)することができます。

しかし、各相続人の有する共有持分権の範囲を超えた分についての移転登記無効です。つまり、Aの単独名義の所有権移転登記のうち、Aの持分については有効ですが、Eの持分については、無権利の登記で無効となります。この場合、相続人Eは自己の相続分登記なくして第三者に対抗できます

よって、「Bは甲土地の全部について所有権を取得する」は誤りで、「Bは、Aの持分についてのみ取得する」が正しいです。

※ 共有持分権の範囲を超えた分について、「売買契約は有効」ですが、「移転登記は無効」となります。売買契約自体は有効なので、Aが第三者Bに対して、契約通り「Eの持分権」について移転登記ができない場合、Aの債務不履行(契約不適合)となり、Bは、Aに対して、責任追求(「追完請求」「損害賠償請求」「代金減額請求」「契約解除」)ができます。

Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約をA・B間で締結した。
エ.甲土地はAの所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、Aが甲土地をその事情を知らないFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない。

エ・・・妥当

●仮登記 → 本登記をすることで始めて対抗要件を備える

仮登記は、あくまでも、登記の順位を保全する(確保する)効力しか持ちません(対抗力はない)。第三者に対抗するためには、仮登記を本登記することが必要です。よって、「Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない」は正しいです。

A→B(仮登記)

Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約をA・B間で締結した。
オ.甲土地はAの所有に属していたところ、GがAに無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となったBは、Gが当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。

オ・・・妥当

●「他人の土地上の建物について、自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合の建物取得者」は、
建物を他に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者に対して建物収去・土地明渡しの義務を負う

状況

A:甲土地の前所有者(売主)

B:甲土地の新所有者(買主)

G:甲土地上の建物所有者(保存登記済み)
(土地所有者Aに無断で建物を建築)

上記以外に、Gから建物を購入した「建物の買主」

もいます。仮に「H」とします。

質問内容

Bは、Gに対して、建物収去・土地の明渡し請求できる、○か×か?です。

判例

判例では、「他人の土地上の建物の所有権を取得した者(G)が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとい建物を他(H)に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者(新所有者B)に対し、右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である」としています。

つまり、Bは、Gに対して、建物収去・土地の明渡請求ができるので○です。

関連知識

原則として、建物収去・土地の明渡し請求できる相手は、「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者」なので、Hに対しても建物収去・土地の明渡請求ができます。

「建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく、単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合」、その建物所有名義人に建物収去・土地の明渡し請求できない。

例えば、建物名義人がXだが、Xは建物を使用したことがなく、実際にはYが使用している場合、Xに対して建物収去・土地の明渡し請求できません。この場合、実際に使用しているYに対して建物収去・土地の明渡し請求できます。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問28|民法:停止条件

改正民法に対応済

A・B間で締結された契約(以下「本件契約」という。)に附款がある場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.本件契約に、経済情勢に一定の変動があったときには当該契約は効力を失う旨の条項が定められている場合、効力の喪失時期は当該変動の発生時が原則であるが、A・Bの合意により、効力の喪失時期を契約時に遡らせることも可能である。

イ.本件契約が売買契約であり、買主Bが品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項が定められている場合、この条項はその条件の成就が代金債務者であるBの意思のみに係る随意条件であるから無効である。

ウ.本件契約が和解契約であり、Bは一定の行為をしないこと、もしBが当該禁止行為をした場合にはAに対して違約金を支払う旨の条項が定められている場合、Aが、第三者Cを介してBの当該禁止行為を誘発したときであっても、BはAに対して違約金支払の義務を負う。

エ.本件契約が農地の売買契約であり、所有権移転に必要な行政の許可を得られたときに効力を生じる旨の条項が定められている場合において、売主Aが当該許可を得ることを故意に妨げたときであっても、条件が成就したとみなされることはない。

オ.本件契約が金銭消費貸借契約であり、借主Bが将来社会的に成功を収めた場合に返済する旨の条項(いわゆる出世払い約款)が定められている場合、この条項は停止条件を定めたものであるから、Bは社会的な成功を収めない限り返済義務を負うものではない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済
【答え】:2(ア・エが妥当)

【解説】

ア.本件契約に、経済情勢に一定の変動があったときには当該契約は効力を失う旨の条項が定められている場合、効力の喪失時期は当該変動の発生時が原則であるが、A・Bの合意により、効力の喪失時期を契約時に遡らせることも可能である。

ア・・・妥当

●停止条件・解除条件 → 条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思表示も有効

「経済情勢に一定の変動があったときには当該契約は効力を失う旨の条項」とは、「解除条件」です。

「経済情勢に一定の変動があったとき」が条件で、この条件が成就した時に「効力が消滅する」ものを解除条件と言います(民法127条2項)。したがって、本問の「効力の喪失時期は当該変動の発生時(経済情勢に一定の変動があったとき)が原則である」は正しいです。そして、条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる合意をしたときは、その合意に従います(3項)。つまり、 A・Bの合意により、効力の喪失時期を契約時に遡らせることも可能です。

具体例 大学生Aが親Bと「大学生の期間中、毎月1万円を贈与(仕送りを)し、万一、大学4年間で就職先が決まらなかったら贈与契約を解除する(仕送りをやめる)」契約をした場合、これは解除条件付きの贈与契約です。

そして、さらにAB間で「大学4年間で就職先が決まらなかったら、契約時にさかのぼって贈与契約の効力を消滅させ、4年分の仕送り分を返還しなければならない」との合意もできるということです。

※ 上記は解除条件ですが、停止条件も同じようにA・Bの合意により、効力の発生時期を契約時に遡らせることも可能です。

イ.本件契約が売買契約であり、買主Bが品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項が定められている場合、この条項はその条件の成就が代金債務者であるBの意思のみに係る随意条件であるから無効である。

イ・・・妥当ではない

●停止条件付法律行為 → その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする
●「買主が品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項が定められている停止条件」 → 無効ではない

民法134条では、「停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする」と規定しています。

具体例 CD間の贈与契約で、「Cの気が向いたら、Dに10万円贈与する」という停止条件が付いていたとします。

この場合、Cの気が向くか向かないかで、条件が成就するか否かが決まります。このように債務者Cの意思に依存する条件は、法的な拘束力があるとはいえず、無効となります。

本問 本問の「買主Bが品質良好と認めた場合には代金を支払う」というのが、「債務者の意思のみにかかる停止条件付法律行為」に当たるかが問題となります。この点について、判例(最判昭31.4.6)では、「鉱業権の売買契約において、買主が排水探鉱(石炭等の鉱物の埋蔵量の調査)の結果、品質良好と認めたときは代金を支払い品質不良と認めたときは代金を支払わない旨を約しても、右売買契約は、民法第134条の条件が単に債務者の意思のみにかかる停止条件附法律行為とはいえない。」としています。つまり、「買主Bが品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項が定められている停止条件」も無効ではありません。

ウ.本件契約が和解契約であり、Bは一定の行為をしないこと、もしBが当該禁止行為をした場合にはAに対して違約金を支払う旨の条項が定められている場合、Aが、第三者Cを介してBの当該禁止行為を誘発したときであっても、BはAに対して違約金支払の義務を負う。

ウ・・・妥当ではない

●不正に条件を成就させた → 相手方は、条件は成就しなかったとみなすことができる

民法130条2項には「条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる」と規定されています。この具体例が本問です。

具体例 AB間で争いごとがあり、和解する契約をした。その契約の中に「Bがやってはいけない禁止行為があり、もしその禁止行為をBが行ったら、BはAに違約金を払う」旨の条項があった。

この場合、「禁止行為を行ったならば=停止条件」です。

Aとしては、もしBが禁止行為をすれば違約金をもらえるので、Aが悪だくみをして、Cを利用して、Bが当該禁止行為を行うように仕向けて(誘発して)Bがその禁止行為を行ってしまった。

この場合、Aは「不正にその条件を成就させたとき」にあたるので、相手方Bは、その条件が成就しなかったものとみなすことができます。つまり、Bは違約金を支払う義務はありません。

関連ポイント 上記とは逆の事例で、民法130条1項には「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる」と規定しています。

具体例 「Aは、Bが行政書士の試験に合格したら甲土地を贈与する」旨の契約をした。

この場合、「Bが行政書士試験に合格したならば=停止条件」です。

そして、契約はしたものの、Aが甲土地をあげたくないことから、Bが行政書士試験に合格しないよう、夜中に電話をかけるなどして、勉強をできないようにすると、「条件の成就を妨げた」とみなすことができます。この場合、Bは試験に合格したものとみなし、Aに土地を引渡すよう請求することができます。

エ.本件契約が農地の売買契約であり、所有権移転に必要な行政の許可を得られたときに効力を生じる旨の条項が定められている場合において、売主Aが当該許可を得ることを故意に妨げたときであっても、条件が成就したとみなされることはない。

エ・・・妥当

●農地法の知事の許可(行政学上の認可) → 条件には当たらない
●農地売買において、農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、条件が成就したとみなすことはできない

前提知識 日本の農業を守るために、農地法では、「農地の売買契約をする場合、原則、知事の許可が必要」「許可のない農地の売買契約は効力が生じない」と定めています。これは、農地の購入者が農業のノウハウを持っているかを審査するためです。

判例 判例(最判昭36.5.26)では、「農地の所有権移転を目的とする法律行為は都道府県知事の許可を受けない以上 法律上の効力を生じないものであり、この場合、知事の許可は右法律行為の効力発生要件であるから、農地の売買契約を締結した当事者が知事の許可を得ることを条件としたとしても、それは法律上当然必要なことを約定したに止まり、売買契約にいわゆる停止条件を附したものということはできない」としています。つまり、知事の許可は法律上当然に必要なことで、条件には当たらないということです。そのため、条件に関するルールは適用されないので、条件の成就を妨げる行為があったとしても、条件が成就したとみなすことはできません。

オ.本件契約が金銭消費貸借契約であり、借主Bが将来社会的に成功を収めた場合に返済する旨の条項(いわゆる出世払い約款)が定められている場合、この条項は停止条件を定めたものであるから、Bは社会的な成功を収めない限り返済義務を負うものではない。

オ・・・妥当ではない

●出世払い → 「不確定期限」であり、「停止条件」ではない =「条件」ではなく、「期限」にあたる

「金銭消費貸借契約」とは、お金の貸し借りの契約です。そして、

判例(大判大正4.3.24)によると、『借主Bが将来社会的に成功を収めた場合に返済する旨の条項(=出世払いの約束)は、「条件」に当たらず、「期限」に当たるとしています。厳密には、「不確定期限」であり、出世できないことが明らかになったときは、貸主は借金の返済を請求できる』としています。

■「期限」とは、いつか必ず到来するものに使い、「条件」は、必ず到来するわけではなく、到来するか否か未定であるものに使います。そして、判例では、出世できるかどうかは不確実な事実(条件)ではなく、出世できるかできないかはいずれ確実に決まる事実(期限)であると判断しました。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問27|民法:公序良俗・強行規定等

改正民法に対応済
公序良俗および強行規定等の違反に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。
  2. 債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。
  3. 組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行規定ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。
  4. 契約が公序に反することを目的とするものであるかどうかは、当該契約が成立した時点における公序に照らして判断すべきである。
  5. 男子の定年年齢を60歳、女子の定年年齢を55歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

1.食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。

1・・・妥当

●公序良俗に反する契約 → 無効
●食品衛生法に反することを知りながら,有毒性物質が混入した食品を継続販売 → 公序良俗に反し無効

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効です(民法90条)。

そして、判例では、「アラレ菓子の製造販売業者が、有毒性物質を混入して製造したアラレ菓子の販売を食品衛生法が禁止していることを知りながら、あえてこれを製造のうえ、その販売業者に継続的に売り渡す契約は、民法第90条(公序良俗に反する法律行為)により無効である。 」としました(最判昭39.1.23)。

※ 「公の秩序又は善良の風俗」は、略して「公序良俗」というのですが、分かりやすく言えば「社会の秩序を守るための常識的な考え方」といったイメージです。

2.債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。
2・・・妥当

●債権管理・債権回収の委託を受けた弁護士が、当該債権を譲り受ける行為 → 公序良俗に反しない → 債権の譲り受けは有効

判例によると、「債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が、その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、他人間の法的紛争に介入し、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど、公序良俗に反するような事情があれば格別、仮にこれが弁護士法28に違反するものであったとしても、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。」としています。よって、債権管理・債権回収の委託を受けた弁護士が、当該債権を譲り受ける行為は、公序良俗に反しないので、債権譲り受けの契約は有効です。

判例理解

「格別」とは、事情が違うから、別扱いをするという意味です。つまり、「司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど、公序良俗に反するような事情の場合」は、通常の場合とは別扱いをして、公序良俗に反し無効となるということです。つまり、例外的な扱いをするということです。

債権管理・債権回収の委託を受けた弁護士が、当該債権を譲り受ける行為は、原則、有効です。

3.組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行規定ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。
3・・・妥当ではない

●組合契約 : やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨 → 無効

判例(最判平11.2.23)によると、「民法678条は、組合員は、やむを得ない事由がある場合には、組合の存続期間の定めの有無にかかわらず、常に組合から任意に脱退することができる旨を規定しているものと解されるところ、同条のうち右の旨を規定する部分は、強行であり、これに反する組合契約における約定は効力を有しないものと解するのが相当である。けだし(=なぜならば)、やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約は、組合員の自由を著しく制限するものであり、公の秩序に反するものというべき」としています。

つまり、やむを得ない事由があっても脱退できない旨の約定(特約)は、無効です。

判例理解

民法678条には、やむを得ない事由がある場合、組合員の希望により組合を脱退することができると解されていて、これは強行法規(=条文にする特約はできない・無効となる)である。なぜならば、「やむを得ない事由があっても脱退できない旨の約定(特約)」は、組合員の自由を著しく制限するものであり、公の秩序に反するから。

問題文は「効力が否定されるものではない」=「効力は否定されない」=有効となっています。

よって、誤りです。

4.契約が公序に反することを目的とするものであるかどうかは、当該契約が成立した時点における公序に照らして判断すべきである。
4・・・妥当

●公序良俗に反し無効となるかどうか → 法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべき

判例(最判平15.4.18)によると、「法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは、法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである」としています。

「公序良俗」とは、 「社会の秩序を守るための常識的な考え方」であり、「契約が成立した時点」と「一定期間後」では、常識的な考え方が変わっていることもあります。そのようなことも踏まえて、公序良俗に反し無効となるかどうかは、「法律行為がされた時点」の公序に照らして判断するとしています。

5.男子の定年年齢を60歳、女子の定年年齢を55歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。
5・・・妥当

●就業規則において、定年年齢について男女間で差をつけること → 合理的な理由が認められない場合、公序良俗に反し無効

判例(最判昭56.3.24)によると、「会社がその就業規則中に定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である」としています。言い換えると、

  • 合理的な理由があれば、定年年齢を男女間で差をつけても公序良俗に違反しないが
  • 合理的な理由がないのであれば、公序良俗に反し、無効となる

本問は、「合理的理由が認められない場合」なので、公序良俗に反して無効です。

注意点

就業規則全体が無効となるのではなく、「女子の定年年齢を男子より低く定めた部分」のみ無効となる


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略