民法の過去問

令和2年・2020|問27|民法

制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 未成年者について、親権を行う者が管理権を有しないときは、後見が開始する。
  2. 保佐人は、民法が定める被保佐人の一定の行為について同意権を有するほか、家庭裁判所が保佐人に代理権を付与する旨の審判をしたときには特定の法律行為の代理権も有する。
  3. 家庭裁判所は、被補助人の特定の法律行為につき補助人の同意を要する旨の審判、および補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
  4. 被保佐人が保佐人の同意を要する行為をその同意を得ずに行った場合において、相手方が被保佐人に対して、一定期間内に保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたが、その期間内に回答がなかったときは、当該行為を追認したものと擬制される。
  5. 制限行為能力者が、相手方に制限行為能力者であることを黙秘して法律行為を行った場合であっても、それが他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、詐術にあたる。

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【答え】:4

【解説】

1.未成年者について、親権を行う者が管理権を有しないときは、後見が開始する。
1・・・正しい

後見は、「①未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき」または「②後見開始の審判があったとき」に開始します(民法838条)

本肢は①の内容なので、正しいです。

2.保佐人は、民法が定める被保佐人の一定の行為について同意権を有するほか、家庭裁判所が保佐人に代理権を付与する旨の審判をしたときには特定の法律行為の代理権も有する。

2・・・正しい

被保佐人が重要な財産に関する行為(例えば、不動産の売買)をするには、その保佐人の同意を得なければなりません(民法13条1項)。
よって、保佐人は、民法が定める被保佐人の一定の行為について同意権を有します。

また、家庭裁判所は、本人等又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(876条の4第1項)。

よって、本肢は正しいです。

3.家庭裁判所は、被補助人の特定の法律行為につき補助人の同意を要する旨の審判、および補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
3・・・正しい

家庭裁判所は、本人等又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます(民法17条1項本文)。

また、家庭裁判所は、本人等又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(民法876条の9第1項)。

よって、本肢は正しいです。

【関連ポイント】

17条の「補助人の同意」について
上記、家庭裁判所の審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、被保佐人が保佐人の同意を必要とする「重要な財産上の行為(選択肢1の解説表参照)」の一部に限ります。

4.被保佐人が保佐人の同意を要する行為をその同意を得ずに行った場合において、相手方が被保佐人に対して、一定期間内に保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたが、その期間内に回答がなかったときは、当該行為を追認したものと擬制される。
4・・・誤り

被保佐人が保佐人の同意を要する行為をその同意を得ずに行った場合において、相手方が「被保佐人に対して」、一定期間内に保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたが、その期間内に回答がなかったときは、当該行為を「取消し」したものと擬制されます(民法20条4項)。

よって、本肢は誤りです。

制限行為能力者と取引した者は、いつ取消されるか分からない状態(法的に不安定な状態)です。
そのため、相手方は、1ヶ月以上の期間を定め、取消しするか追認するかを確答すべき旨を催告できます。
③ 相手方は未成年者」「成年被後見人に催告しても、催告を受領する能力がないため、催告自体無効となる。
⑤ 相手方が被保佐人」「被補助人に催告したにもかかわらず、確答がなかった場合、被保佐人・被補助人を保護して契約は取消しとみなされる。
①、②、④、⑥ 相手方が「保護者」「行為能力者に回復した者(元制限行為能力者)」に催告したにもかかわらず、確答がなかった場合、これらの者は行為能力があるにもかかわらず、確答しないことには落ち度があるので、相手方を保護して「追認」とみなされる。
5.制限行為能力者が、相手方に制限行為能力者であることを黙秘して法律行為を行った場合であっても、それが他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、詐術にあたる。
5・・・正しい

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません(民法21条)。

そして、判例(最判昭44.2.13)によると

「無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法20条にいう詐術にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にあたらない」

と判示しています。

よって、本肢は正しいです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問46|民法

Aは、自己所有の時計を代金50万円でBに売る契約を結んだ。その際、Aは、Cから借りていた50万円をまだ返済していなかったので、Bとの間で、Cへの返済方法としてBがCに50万円を支払う旨を合意し、時計の代金50万円はBがCに直接支払うこととした。このようなA・B間の契約を何といい、また、この契約に基づき、Cの上記50万円の代金支払請求権が発生するためには、誰が誰に対してどのようなことをする必要があるか。民法の規定に照らし、下線部について40字程度で記述しなさい。

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【問】
Aは、自己所有の時計を代金50万円でBに売る契約を結んだ。その際、Aは、Cから借りていた50万円をまだ返済していなかったので、Bとの間で、Cへの返済方法としてBがCに50万円を支払う旨を合意し、時計の代金50万円はBがCに直接支払うこととした。このようなA・B間の契約を何といい、また、この契約に基づき、Cの上記50万円の代金支払請求権が発生するためには、誰が誰に対してどのようなことをする必要があるか。民法の規定に照らし、下線部について40字程度で記述しなさい。

【答え】: 第三者のためにする契約といい、CがBに対して50万円を受け取る意思表示をする必要がある。(44字)

第三者のためにする契約といい、CがBに対して契約の利益を享受する意思を表示する必要がある。(45字)
【解説】

まず問題文の状況を確認します。

  1. Aは、自己所有の時計を代金50万円でBに売る契約を結んだ。
  2. その際、Aは、Cから借りていた50万円をまだ返済していなかった。
  3. そのため、Aは、Bとの間で、Cへの返済方法としてBがCに50万円を支払う旨を合意し、時計の代金50万円はBがCに直接支払うこととした。

このようなA・B間の契約を「第三者のためにする契約」と言います。

ある契約の当事者の一方Aが、第三者Cに対してある給付(50万円を給付)をすることを約束することを、「第三者のためにする契約」といいます(民法537条1項)。

そして、その第三者Cの権利は、その第三者Cが債務者Bに対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生します(民法537条3項)。

「享受する(きょうじゅする)」とは、受け取るということです。

つまり、Cの上記50万円の代金支払請求権が発生するためには、CがBに対して50万円を受け取る(享受する)意思表示をする必要があります。

よって、まとめると、下記のようになります。

【第三者のためにする契約といい、CがBに対して50万円を受け取る意思表示をする必要がある。(44字)

第三者のためにする契約といい、CがBに対して契約の利益を享受する意思を表示する必要がある。(45字)


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問45|民法

Aは、木造2階建ての別荘一棟(同建物は、区分所有建物でない建物である。)をBら4名と共有しているが、同建物は、建築後40年が経過したこともあり、雨漏りや建物の多くの部分の損傷が目立つようになってきた。そこで、Aは、同建物を建て替えるか、または、いくつかの建物部分を修繕・改良(以下「修繕等」といい、解答においても「修繕等」と記すること。)する必要があると考えている。これらを実施するためには、建替えと修繕等のそれぞれの場合について、前記共有者5名の間でどのようなことが必要か。「建替えには」に続けて、民法の規定に照らし、下線部について40字程度で記述しなさい(「建替えには」は、40字程度に数えない。)。

なお、上記の修繕等については民法の定める「変更」や「保存行為」には該当しないものとし、また、同建物の敷地の権利については考慮しないものとする。

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【答え】: (建替えには、)共有者全員の同意が必要で、修繕等には、各共有者の持分の価格の過半数による決定が必要。(42文字)
【解説】

問題文の状況は、
建物(共有物)は、建築後40年が経過したこともあり、雨漏りや建物の多くの部分の損傷が目立つようになってきたため、Aは、同建物を建て替えるか、または、いくつかの建物部分を修繕・改良(修繕等)する必要があると考えている状況です。

これに対して、「建替えと修繕等のそれぞれの場合について、前記共有者5名の間でどのようなことが必要か」を考えます。

なので、「建替え」と「修繕等」に分けて考えていきます。

建替え

「変更行為」については、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。

そして、「建物の建替え」は「変更行為」に当たるので

『(建替えには、)共有者全員の同意が必要』となります。

修繕等

問題文には「建物部分を修繕・改良(以下「修繕等」といい・・・」と書いてあるので
この修繕・改良は「管理行為」に当たります。

「管理行為」については、共有者の持分の価格により、その過半数で決定します(民法252条本文)。

なので
『修繕等には、各共有者の持分の価格の過半数による決定が必要。』
となります。

まとめると、

(建替えには、)共有者全員の同意が必要で、修繕等には、各共有者の持分の価格の過半数による決定が必要。(42文字)


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問35|民法

氏に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.甲山太郎と乙川花子が婚姻届に署名捺印した場合において、慣れ親しんだ呼称として婚姻後もそれぞれ甲山、乙川の氏を引き続き称したいと考え、婚姻後の氏を定めずに婚姻届を提出したときは、この婚姻届は受理されない。

イ.夫婦である乙川太郎と乙川花子が離婚届を提出し受理されたが、太郎が慣れ親しんだ呼称として、離婚後も婚姻前の氏である甲山でなく乙川の氏を引き続き称したいと考えたとしても、離婚により復氏が確定し、離婚前の氏を称することができない。

ウ.甲山太郎を夫とする妻甲山花子は、夫が死亡した場合において、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって婚姻前の氏である乙川を称することができる。

エ.夫婦である甲山花子と甲山太郎の間に出生した子である一郎は、両親が離婚をして、母花子が復氏により婚姻前の氏である乙川を称するようになった場合には、届け出ることで母と同じ乙川の氏を称することができる。

オ.甲山花子と、婚姻により改氏した甲山太郎の夫婦において、太郎が縁組により丙谷二郎の養子となったときは、太郎および花子は養親の氏である丙谷を称する。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:2
【解説】

ア.甲山太郎と乙川花子が婚姻届に署名捺印した場合において、慣れ親しんだ呼称として婚姻後もそれぞれ甲山、乙川の氏を引き続き称したいと考え、婚姻後の氏を定めずに婚姻届を提出したときは、この婚姻届は受理されない。

ア・・・正しい

●夫婦は夫又は妻の氏を使う → 婚姻の届出は、一定の法令を満たす場合に受理される → 法令違反があると受理されない

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称します(民法750条)。

婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第737条まで及び739条第2項の規定「その他の法令」の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができません(740条)。

本肢の場合、「婚姻後の氏を定めずに婚姻届を提出」しています。

これは、740条のその他の法令の規定に違反しています。

よって、本肢の婚姻届は受理されません。

イ.夫婦である乙川太郎と乙川花子が離婚届を提出し受理されたが、太郎が慣れ親しんだ呼称として、離婚後も婚姻前の氏である甲山でなく乙川の氏を引き続き称したいと考えたとしても、離婚により復氏が確定し、離婚前の氏を称することができない。

イ・・・誤り
●離婚 → 原則:婚姻前の氏に戻す / 例外:離婚の日から3か月以内に届出をすれば、離婚の際に称していた氏を使うことができる

婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復します(戻します)(民法767条1項)。

そして、上記により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができます(同条2項)。

つまり、離婚した場合、原則、婚姻前の名字に戻りますが、
3ヵ月以内に届出をすれば、離婚前の名字を引き続き使えます

よって、「離婚により復氏が確定し、離婚前の氏を称することができない」は誤りです。

【具体例】

甲山太郎Aは、乙川花子Bと結婚し、Aは乙川太郎になった(男性が女性側の姓を名乗る)。

その後、離婚した場合、原則、Aは婚姻前の名字である「甲山」に戻ります(甲山太郎に戻る)。

ただし、例外として、3ヵ月以内に届出をすれば、Aは「乙川」の名字を引き続き使えます。

ウ.甲山太郎を夫とする妻甲山花子は、夫が死亡した場合において、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって婚姻前の氏である乙川を称することができる。

ウ・・・正しい

●夫婦の一方が死亡 → 届出をして婚姻前の氏に戻すことができる

夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができます(民法751条)。

つまり、夫が死亡した場合、妻は、届出をすることで婚姻前の氏(名字)に戻す(称する)ことができます。

よって、正しいです。

エ.夫婦である甲山花子と甲山太郎の間に出生した子である一郎は、両親が離婚をして、母花子が復氏により婚姻前の氏である乙川を称するようになった場合には、届け出ることで母と同じ乙川の氏を称することができる。

エ・・・誤り

●離婚して「父又は母」の氏が別々となった場合、子は、家庭裁判所の許可を得て「父又は母」の氏に変更できる

子が「父又は母」と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その「父又は母」の氏を称することができます(民法791条1項)。

つまり、子どもが、現在の氏(名字)を変更して、父や母と同じ氏を使うには、「家庭裁判所の許可」が必要です。

本肢は「届出」で母と同じ氏を称することができるとなっているので誤りです。

上記解説だと、条文そのままで、分かりにくいと思います!

【具体例】

乙川花子が甲山太郎と結婚し、「甲山」花子となる
(乙川花子→甲山花子)

2人に子「甲山一郎」君が誕生

甲山花子と甲山太郎が離婚

花子が旧姓「乙川」に復氏し、乙川花子となる
(甲山花子→乙川花子)

一郎君の氏を「甲山」から母と同じ「乙川」に変更するには家庭裁判所の許可が必要(民法719条1項)
オ.甲山花子と、婚姻により改氏した甲山太郎の夫婦において、太郎が縁組により丙谷二郎の養子となったときは、太郎および花子は養親の氏である丙谷を称する。

オ・・・誤り

●養子の氏 → 原則:養親の氏を使う / 例外:既婚者が養子となる場合、婚姻の時に定めた氏を使う

養子は、養親の氏を称します。(原則:単身者が養子となる場合

ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、養親の氏を称しません(例外:既婚者が養子となる場合)(民法810条)。

つまり、養親の氏を称することなく、婚姻の際に定めた氏を称します。

よって、本肢は誤りです。

【ただし書の具体例:既婚者が養子となる場合】

乙川太郎Aは、甲山花子Bと結婚し、Aは甲山太郎になった(男性が女性側の姓を名乗る)。
(乙川太郎→甲山太郎)

その後、甲山太郎が縁組により丙谷二郎の養子となった。
この場合、丙谷の養子となっても、太郎はすでに婚姻しているので、引き続き「甲山」の名字を使います。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問34|民法

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 精神障害者と同居する配偶者は法定の監督義務者に該当しないが、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行い、その態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、当該配偶者は法定の監督義務者に準ずべき者として責任無能力者の監督者責任を負う。
  2. 兄が自己所有の自動車を弟に運転させて迎えに来させた上、弟に自動車の運転を継続させ、これに同乗して自宅に戻る途中に、弟の過失により追突事故が惹起された。その際、兄の同乗後は運転経験の長い兄が助手席に座って、運転経験の浅い弟の運転に気を配り、事故発生の直前にも弟に対して発進の指示をしていたときには、一時的にせよ兄と弟との間に使用関係が肯定され、兄は使用者責任を負う。
  3. 宅地の崖地部分に設けられたコンクリートの擁壁の設置または保存による瑕疵が前所有者の所有していた際に生じていた場合に、現所有者が当該擁壁には瑕疵がないと過失なく信じて当該宅地を買い受けて占有していたとしても、現所有者は土地の工作物責任を負う。
  4. 犬の飼主がその雇人に犬の散歩をさせていたところ、当該犬が幼児に噛みついて負傷させた場合には、雇人が占有補助者であるときでも、当該雇人は、現実に犬の散歩を行っていた以上、動物占有者の責任を負う。
  5. 交通事故によりそのまま放置すれば死亡に至る傷害を負った被害者が、搬入された病院において通常期待されるべき適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもって救命されていたときには、当該交通事故と当該医療事故とのいずれもが、その者の死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係がある。したがって、当該交通事故における運転行為と当該医療事故における医療行為とは共同不法行為に当たり、各不法行為者は共同不法行為の責任を負う。

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【答え】:4
【解説】

1.精神障害者と同居する配偶者は法定の監督義務者に該当しないが、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行い、その態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、当該配偶者は法定の監督義務者に準ずべき者として責任無能力者の監督者責任を負う。

1・・・正しい

判例によると「精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。

しかし、法定の監督義務者に該当しない者であっても,責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし,第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には,法定の監督義務者に準ずべき者として,民法714条1項(責任無能力者の監督義務者等の責任)が類推適用される。」としています(最判平28.3.1)。

よって、本肢は正しいです。

【判例解説】

責任無能力者Aが不法行為を行った場合、原則、その責任無能力者を監督する義務者B(法定の監督義務者)が、被害者に損害を賠償する責任を負う(民法714条1項本文)

精神障害者と同居する配偶者だからといって、その人は民法714条1項の「法定の監督義務者」には該当しない。

どういった場合に「法定の監督義務者」には該当するかというと、
Bが、第三者に対する加害行為の防止に向けて、Aの監督を現に行い、その状況が単なる事実上の監督を超えているなど、Bが監督義務を引き受けたというような特段の事情が認められる場合に限って、Bは「法定の監督義務者」には該当する
2.兄が自己所有の自動車を弟に運転させて迎えに来させた上、弟に自動車の運転を継続させ、これに同乗して自宅に戻る途中に、弟の過失により追突事故が惹起された。その際、兄の同乗後は運転経験の長い兄が助手席に座って、運転経験の浅い弟の運転に気を配り、事故発生の直前にも弟に対して発進の指示をしていたときには、一時的にせよ兄と弟との間に使用関係が肯定され、兄は使用者責任を負う。

2・・・正しい

兄が弟に兄所有の自動車を運転させこれに同乗して自宅に帰る途中で発生した交通事故の事例において
判例によると「兄が、その出先から自宅に連絡して弟に兄所有の自動車で迎えに来させたうえ、弟に右自動車の運転を継続させ、これに同乗して自宅に帰る途中で交通事故が発生した場合において、兄が右同乗中助手席で運転上の指示をしていた等判示の事情があるときは、兄と弟との間には右事故当時兄を自動車により自宅に送り届けるという仕事につき、民法七一五条一項にいう使用者・被用者の関係が成立していたと解するのが相当である」としています(最判昭56.11.27)。

よって、本肢は正しいです。

【判例解説】

兄Aが弟Bに自動車で迎えに来させ自宅に戻る途中で事故が生じた。

兄Aが助手席で弟Bに運転の指示をしていた等の事情があるときは、
兄Aは一時的にせよBを指揮監督して、自動車で兄Aを自宅に送り届けるという仕事(事業)に従事させていたものとする(要件2)。

そのため、AB間の使用関係を認められため(要件1)、弟Bの運転により事故が発生した場合(要件3)、兄Aには使用者責任が生じる。

■使用者責任が認められる要件(下記3つをすべて満たす場合に使用責任が生じる)

  1. 被用者と使用者の使用関係がある
  2. 事業の執行について被用者の行為がなされること(事業執行性
  3. 被用者の行為により第三者に損害が生じること
3.宅地の崖地部分に設けられたコンクリートの擁壁の設置または保存による瑕疵が前所有者の所有していた際に生じていた場合に、現所有者が当該擁壁には瑕疵がないと過失なく信じて当該宅地を買い受けて占有していたとしても、現所有者は土地の工作物責任を負う。

3・・・正しい

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負います(民法717条)。

所有者は無過失でも責任を負うため、現所有者が当該擁壁には瑕疵がないと過失なく信じて当該宅地を買い受けて占有していたとしても、現所有者は土地の工作物責任を負います。

よって、正しいです。

本問は「占有者」=「所有者」となっているので、所有者は、無過失でも責任を負います。

▼本肢は工作物責任の内容ですが、工作物責任は考え方があり、
その考え方をすれば、ほとんどの問題が解けます!

>>工作物責任の考え方はこちら

4.犬の飼主がその雇人に犬の散歩をさせていたところ、当該犬が幼児に噛みついて負傷させた場合には、雇人が占有補助者であるときでも、当該雇人は、現実に犬の散歩を行っていた以上、動物占有者の責任を負う。

4・・・誤り

動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います(民法718条本文)。

そして、雇人(雇われている人)はこの動物の占有者にあたるのか?

判例によると「運送会社がその使用人(=雇人・雇われている人)に荷馬車を引かせていた場合、本来の占有者は運送会社であり、占有補助者たる使用人は、占有者でも保管者でもない」としています。(大判大10.12.15)。

つまり、当該雇人は、動物の占有者に当たらず、現実に犬の散歩を行っていたとしても責任を負いません

よって、誤りです。

5.交通事故によりそのまま放置すれば死亡に至る傷害を負った被害者が、搬入された病院において通常期待されるべき適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもって救命されていたときには、当該交通事故と当該医療事故とのいずれもが、その者の死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係がある。したがって、当該交通事故における運転行為と当該医療事故における医療行為とは共同不法行為に当たり、各不法行為者は共同不法行為の責任を負う。

5・・・正しい

判例によると「本件交通事故により,Eは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの,事故後搬入された被上告人病院において,Eに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば,高度の蓋然性をもってEを救命できたということができる。そのため、本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが,Eの死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果について相当因果関係を有する関係にある。

したがって,本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。」としています(最判平13.3.13)。

よって、本肢は正しいです。

【判例解説】

「交通事故」が起こり、その後「医療事故」が起こった。
(適切な治療が施されなかったこと=医療事故)

死亡という結果(不可分の一個の結果)になったのは、「交通事故」も「医療事故」もどちらもが原因である。(=「2つの事故」と「死亡」との間には、相当の因果関係がある)

つまり、「運転行為」と「医療行為」とが共同不法行為に当たる。

この場合、各不法行為者は連帯責任(両者損害の全額について責任)を負うべきである

言い換えると、結果発生に対する寄与の割合(過失割合)によって損害額を案分し、その分だけ責任を負うというように、損害額を限定することはできない。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問33|民法

甲建物(以下「甲」という。)を所有するAが不在の間に台風が襲来し、甲の窓ガラスが破損したため、隣りに住むBがこれを取り換えた場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. BがAから甲の管理を頼まれていた場合であっても、A・B間において特約がない限り、Bは、Aに対して報酬を請求することができない。
  2. BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合であっても、Bは、Aに対して窓ガラスを取り換えるために支出した費用を請求することができる。
  3. BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合であっても、Bが自己の名において窓ガラスの取換えを業者Cに発注したときは、Bは、Aに対して自己に代わって代金をCに支払うことを請求することができる。
  4. BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合においては、BがAの名において窓ガラスの取換えを業者Dに発注したとしても、Aの追認がない限り、Dは、Aに対してその請負契約に基づいて代金の支払を請求することはできない。
  5. BがAから甲の管理を頼まれていた場合であっても、A・B間において特約がなければ、窓ガラスを取り換えるに当たって、Bは、Aに対して事前にその費用の支払を請求することはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】

1.BがAから甲の管理を頼まれていた場合であっても、A・B間において特約がない限り、Bは、Aに対して報酬を請求することができない。

1・・・正しい

前提知識

本問は「委任契約」の内容であり。「事務管理」の問題ではありません。

「委任契約」は、頼まれて、ある事務を行うことをいいます。

「事務管理」は、頼まれてないのに他人のためにするある事務を行うことをいいます。

本問

本問は、「管理を頼まれていた」と書いてあるので、「準委任契約(詳細は、選択肢5参照)」の内容です。

委任契約において、受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができません(民法648)。

そして、委任の規定は、法律行為でない事務の委託について準用します(民法656条:準委任)。

本肢の「BがAから甲の管理を頼まれていた場合」とは「法律行為でない事務の委託(準委任)」に当たります。

よって、A・B間において特約がない限り、Bは、Aに対して報酬を請求することができないので、正しいです。

【法律行為とは?】
法律行為とは、権利や義務という効果を発生させる行為を言います。
例えば、土地の売買契約を締結したら、「売主は、土地を引渡す義務・代金をもらう権利」が発生し、「買主は、代金を引渡す義務・土地をもらう権利」が発生します。
【法律行為ではない行為とは?】
法律行為ではない行為は、権利や義務という効果を発生させない行為を言います。
例えば、デートの約束をしたとしても、デートに行く義務は発生しません。
もし、約束の日に、相手が来なかったとしても、再度デートをするよう強制することは出来ませんし、裁判所に訴える事も出来ません。
2.BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合であっても、Bは、Aに対して窓ガラスを取り換えるために支出した費用を請求することができる。

2・・・正しい

本肢の場合、「管理を頼まれてない」ので、「事務管理」のルールが適用されます(民法697条)。

そして、事務管理において、管理者Bが本人Aのために有益な債務を負担した場合、
本人Aに対して、支出した費用を請求できます(民法702条

よって、本肢は正しいです。

【費用の償還に伴う利息請求権】

「委任契約」の場合、受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用だけでなく利息も請求することができます。
一方、「事務管理」の場合、有益な費用(有益費・必要費)のみ償還請求でき、利息は請求できません。

3.BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合であっても、Bが自己の名において窓ガラスの取換えを業者Cに発注したときは、Bは、Aに対して自己に代わって代金をCに支払うことを請求することができる。

3・・・正しい

本肢の場合、「管理を頼まれてない」ので、「事務管理」のルールが適用されます(民法697条)。

そして、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合、管理者Bは、本人Aに対し、自己(管理者B)に代わって、Cに弁済をすることを請求することができます(民法702条2項、650条2項)。

よって、本肢は正しいです。

【具体例】

隣家の人Aが1ヶ月海外旅行に行っている間に台風が来て、隣家の屋根が飛ばされたとします。
天気予報では大雨が長期間続くことから、あなたBはAから頼まれていないが、工務店Cに屋根の修理を頼みました。
(あなたBを「(事務)管理者」で、Aを「本人」と呼ぶ)この場合、管理者Bは、本人Aのために有益な債務(屋根の修理費用)を負担しています。そして、管理者Bは、本人Aに対し、「自己(管理者B)に代わって、工務店Cに修理費用を支払ってください!」と請求することができます。
※契約上はBC間であっても、この契約は、緊急だからBがAのために契約したものです。そのため、建物の所有者Aに修理費用を請求するよう工務店Cに求めることができます。
4.BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合においては、BがAの名において窓ガラスの取換えを業者Dに発注したとしても、Aの追認がない限り、Dは、Aに対してその請負契約に基づいて代金の支払を請求することはできない。

4・・・正しい

判例によると、「事務管理者Bが本人Aの名でした法律行為の効果は、当然には本人Aに及ぶものではない」としています(最判昭36.11.30)。

よって、業者Dは、本人Aに対してその請負契約に基づいて代金の支払を請求することはできないので、本肢は正しいです。

【選択肢3と4の違い】

■3は、「管理者Bが自己の名において窓ガラスの取換えを業者Cに発注したとき」の話です。

つまり、契約では、「BとCとが請負契約をする」という内容になっています。

この場合、管理者Bは、本人Aに対して「私Bに代わって代金を業者Cに支払ってください!」と請求することができます。

■4は、「管理者Bが本人Aの名において窓ガラスの取換えを業者Dに発注したとき」の話です。

つまり、契約では、「AとCとが請負契約をする」という内容になっています。

しかし、管理者Bが勝手に行ったということで、上記契約をしたとしても、Aは支払い義務を負いません。=「契約の効果は、本人Aに及ばない」

よって、業者Dは、本人Aに対してその代金を請求することはできないです。

5.BがAから甲の管理を頼まれていた場合であっても、A・B間において特約がなければ、窓ガラスを取り換えるに当たって、Bは、Aに対して事前にその費用の支払を請求することはできない。

5・・・誤り

本肢の「BがAから甲の管理を頼まれていた場合」とは「法律行為でない事務の委託(準委任)」に当たります。

準委任においても委任同様、費用の前払い請求ができます(民法649条656条)。

よって、AB間で特約がなくても、Bは、Aに対して事前にその費用の支払を請求することはできるので、誤りです。

委任契約と準委任契約の違い

ある事務を、任せる点では同じですが、委任契約の場合、「法律行為に関する事務」を受任者に依頼し、「準委任契約」の場合「法律行為に関すること以外」の事務を受注者に依頼します。
【委任契約の具体例】 土地の売買契約を委任する場合 → 売買契約を締結すること(「意思表示」をすること)で、「引渡し義務や引渡し請求権」「代金支払義務や代金支払請求権」という「効果」が発生するため、売買契約は法律行為です。
【準委任契約の具体例】 不在中に建物の管理を任せる場合 → 管理すること自体、法律行為ではないです。管理すること自体に、何ら意思表示をすることもないからです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問32|民法

建物が転貸された場合における賃貸人(建物の所有者)、賃借人(転貸人)および転借人の法律関係に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.賃貸人の承諾がある転貸において、賃貸人が当該建物を転借人に譲渡し、賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰属したときであっても、賃借人と転借人間に転貸借関係を消滅させる特別の合意がない限り、転貸借関係は当然には消滅しない。

イ.賃貸人の承諾がある転貸において、賃借人による賃料の不払があったときは、賃貸人は、賃借人および転借人に対してその支払につき催告しなければ、原賃貸借を解除することができない。

ウ.賃貸人の承諾がある転貸であっても、これにより賃貸人と転借人間に賃貸借契約が成立するわけではないので、賃貸人は、転借人に直接に賃料の支払を請求することはできない。

エ.無断転貸であっても、賃借人と転借人間においては転貸借は有効であるので、原賃貸借を解除しなければ、賃貸人は、転借人に対して所有権に基づく建物の明渡しを請求することはできない。

オ.無断転貸において、賃貸人が転借人に建物の明渡しを請求したときは、転借人は建物を使用収益できなくなるおそれがあるので、賃借人が転借人に相当の担保を提供していない限り、転借人は、賃借人に対して転貸借の賃料の支払を拒絶できる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】

ア.賃貸人の承諾がある転貸において、賃貸人が当該建物を転借人に譲渡し、賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰属したときであっても、賃借人と転借人間に転貸借関係を消滅させる特別の合意がない限り、転貸借関係は当然には消滅しない。

ア・・・正しい

判例によると「賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰した場合であっても、転貸借は、当事者間にこれを消滅させる合意の成立しない限り、消滅しないものと解すべきである」としています(最判昭35.6.23)。

つまり、転貸借契約は当然には消滅しないので、正しいです。

【具体例】

AがBに建物を「賃貸」し、BがCに建物を転貸した。

その後、Aが死亡し、CがAを「相続」した。
(例えば、AがCの親だった場合)
これにより、C→B→Cとなり、
賃貸人と転借人が同一人物となります。



この場合でも、転貸借契約は、当事者の間で契約を消滅させる合意が成立しない限り、消滅しない。

【理由】

C→B→Cについて、
転借権を消滅させると賃借人の賃借権だけが残るため、転借人Cは物を使用できなくなり、妥当ではないです。
また、賃貸借契約と転貸借契約の両方を消滅させると考えると、賃料と転貸料の差を賃借人がもらえなくなり、賃借人Bに不利益が生じます。
そのため、賃貸借契約と転貸借契約を残しておくことは意味があるので、残すルールとなっています。

イ.賃貸人の承諾がある転貸において、賃借人による賃料の不払があったときは、賃貸人は、賃借人および転借人に対してその支払につき催告しなければ、原賃貸借を解除することができない。

イ・・・誤り

転貸があり、賃借人に賃料不払いがあった場合において、
判例によると、「適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に対して右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。」としています(最判昭37.3.29)。

つまり、賃借人にのみ催告すればよく、「賃借人および転借人に対して催告をする必要はない」ので、本肢は誤りです。

【具体例】


賃借人Bが賃貸人Aに対して、家賃を払わなかった(債務不履行の)場合、Aは賃貸借契約を解除できます。

そして、賃貸借契約を解除する際に、Aは「転借人Cに対して支払の機会を与える必要はありません。

また、賃借人Bの債務不履行による解除の場合、賃貸人Aが転借人Cに目的物(建物)の返還を請求したときに転貸借は終了します。つまり、転借人Cはすぐにでも建物を明渡さないといけなくなります。

ウ.賃貸人の承諾がある転貸であっても、これにより賃貸人と転借人間に賃貸借契約が成立するわけではないので、賃貸人は、転借人に直接に賃料の支払を請求することはできない。

ウ・・・誤り

賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負います(民法613条本文)。

よって、賃貸人は、転借人に直接に賃料の支払を請求することはできるので、誤りです。

少し理解しづらい部分なので、理解の仕方は下記をご覧ください!

>>>転借人Cの賃貸人Aに対する義務

エ.無断転貸であっても、賃借人と転借人間においては転貸借は有効であるので、原賃貸借を解除しなければ、賃貸人は、転借人に対して所有権に基づく建物の明渡しを請求することはできない。

エ・・・誤り

無断転貸があった場合において
判例によると、「賃借権の譲渡または転貸を承諾しない家屋の賃貸人は、賃貸借契約を解除しなくても、譲受人または転借人に対しその明渡を求めることができる」としています(最判昭26.5.31)。

よって、本肢は誤りです。

無断転貸と解除

上表を言い換えると
  • 背信的行為と認めるに足りない事情(裏切り行為と認められない事情)によって無断転貸した場合・・・賃貸人は解除できない
  • 背信的行為と認めるに足りる事情(裏切り行為と認められる事情)によって無断転貸した場合・・・賃貸人は解除できる
オ.無断転貸において、賃貸人が転借人に建物の明渡しを請求したときは、転借人は建物を使用収益できなくなるおそれがあるので、賃借人が転借人に相当の担保を提供していない限り、転借人は、賃借人に対して転貸借の賃料の支払を拒絶できる。

オ・・・正しい

判例によると「土地又は建物の賃借人は、賃借物に対する権利に基づき自己に対して明渡を請求することができる第三者からその明渡を求められた場合には、それ以後、賃料の支払を拒絶することができる」としています(最判昭50.4.25)。よって、本肢は正しいです。

無断転貸において、賃貸人Aが転借人Cに建物の明渡しを請求したとき、転借人Cは建物を使用収益できなくなるおそれがあります。

無断転貸をすることにより、賃借人Bは、Cに転貸する権利がなくなってしまいます。

転貸する権利がないBからCは借りているので転借人Cは建物を使用収益できなくなるおそれがあるということです。

そのため、転借人Cは、賃借人Bに対して転貸借の賃料の支払を拒絶できます。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問31|民法

質権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができず、また、質物の占有を第三者によって奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
  2. 不動産質権は、目的不動産を債権者に引き渡すことによってその効力を生ずるが、不動産質権者は、質権設定登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
  3. 債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債権者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。
  4. 不動産質権者は、設定者の承諾を得ることを要件として、目的不動産の用法に従ってその使用収益をすることができる。
  5. 質権は、債権などの財産権の上にこれを設定することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】

1.動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができず、また、質物の占有を第三者によって奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。

1・・・正しい

動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができません(民法352条)。

そして、動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができます(民法353条)。

よって、正しいです。

>>質権とは?

2.不動産質権は、目的不動産を債権者に引き渡すことによってその効力を生ずるが、不動産質権者は、質権設定登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

2・・・正しい

質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生じます(民法344条)。

これは、不動産質権も動産質権も同じです。

そして、不動産質権(物権)は登記をしなければ、第三者に対抗することはできない(民法177条)ので、本肢は正しいです。

【対比】

■成立要件:
不動産質権も質権なので、その成立には、「設定合意」のほか、「目的物の引渡し」が必要です。

■対抗要件:
また、不動産質権は、「登記」が対抗要件になります。

3.債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債権者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。

3・・・正しい

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(民法192条)。

質権の設定は、上記の「取引行為」に含まれるので、質権も即時取得の対象です。

よって、本肢は「動産」について、「善意無過失で」質権を設定してもらっているので、即時取得できます。

よって、正しいです。

4.不動産質権者は、設定者の承諾を得ることを要件として、目的不動産の用法に従ってその使用収益をすることができる。

4・・・誤り

不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができます(民法356条)。

よって、設定者の承諾を得ることは要件ではありません。

よって、誤りです。

動産質権と不動産質権の違い

※「使用」とは、目的物を自ら使用することで、「収益」とは、賃貸して利益を得ることです。

5.質権は、債権などの財産権の上にこれを設定することができる。

5・・・正しい

質権の対象は、動産および不動産ですが、財産権も質権の目的とすることができます(民法362条)。

したがって、本肢は正しいです。

財産権とは、債権、株式、地上権等です。

そして、債権に質権を設定することを「債権質」と言います。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問30|民法

A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣接し、甲土地の上にはC所有の丙建物が存在している。この場合における次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.Bが、甲土地に乙土地からの排水のための地役権をA・B間で設定し登記していた場合において、CがAに無断で甲土地に丙建物を築造してその建物の一部が乙土地からの排水の円滑な流れを阻害するときは、Bは、Cに対して地役権に基づき丙建物全部の収去および甲土地の明渡しを求めることができる。

イ.A・B間で、乙土地の眺望を確保するため、甲土地にいかなる工作物も築造しないことを内容とする地役権を設定し登記していた場合において、Cが賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造したときは、Bは地役権に基づき建物の収去を求めることができる。

ウ.甲土地が乙土地を通らなければ公道に至ることができない、いわゆる袋地である場合において、Cが、Aとの地上権設定行為に基づいて甲土地に丙建物を建築し乙土地を通行しようとするときは、Cは、甲土地の所有者でないため、Bとの間で乙土地の通行利用のため賃貸借契約を結ぶ必要がある。

エ.Aは、自己の債務の担保として甲土地に抵当権を設定したが、それ以前に賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造していたCからAが当該抵当権の設定後に丙建物を買い受けた場合において、抵当権が実行されたときは、丙建物のために、地上権が甲土地の上に当然に発生する。

オ.Cが、地上権設定行為に基づいて甲土地上に丙建物を築造していたところ、期間の満了により地上権が消滅した場合において、Aが時価で丙建物を買い取る旨を申し出たときは、Cは、正当な事由がない限りこれを拒むことができない。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・エ

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】

A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣接し、甲土地の上にはC所有の丙建物が存在している。
ア.Bが、甲土地に乙土地からの排水のための地役権をA・B間で設定し登記していた場合において、CがAに無断で甲土地に丙建物を築造してその建物の一部が乙土地からの排水の円滑な流れを阻害するときは、Bは、Cに対して地役権に基づき丙建物全部の収去および甲土地の明渡しを求めることができる。

ア・・・誤り

地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有します(民法280条本文)。

上記の意味合いとしては、地役権者は承役地(他人地)を排他的に占有するのではなく、承役地(他人地)の所有者も地役権者の権利を妨げない範囲で使用できます。

つまり、地役権者Bは、丙建物が、排水の妨害になるのであれば、「妨害排除請求」及び「妨害予防請求」は行えます。

つまり、地役権者Bは、Cに対して「排水できるようにするよう請求」することはできますが「甲土地(承役地)上の丙建物の収去請求」や「甲土地の明渡請求」まではできません

 

よって、誤りです。

■妨害排除請求

排水を妨害する工作物が現にある場合、それを除去してください!と請求することです!

■妨害予防請求

排水を妨害する工作物を建設しようとしている場合(まだ存在しない)、
それは、建設しないでください!と請求することです!

>>地役権とは?

A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣接し、甲土地の上にはC所有の丙建物が存在している。
イ.A・B間で、乙土地の眺望を確保するため、甲土地にいかなる工作物も築造しないことを内容とする地役権を設定し登記していた場合において、Cが賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造したときは、Bは地役権に基づき建物の収去を求めることができる。

イ・・・正しい

地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有します(民法280条本文)。

そして、「A・B間で、乙土地の眺望を確保するため、甲土地にいかなる工作物も築造しないことを内容とする地役権を設定し登記している」ので、この登記の通り、地役権者Bは地役権に基づき建物の収去を求めることができます。

【詳細解説】

地役権は物権で
賃借権は債権です。

物権(地役権)は、誰に対しても対抗する強い権利です。

一方、債権は、債務者にのみ主張できる権利です。

つまり、賃借人Cは賃貸人Aに対して、土地を使う権利を主張できますが
原則として、第三者に対してその権利はありません。

よって、Cは、Bに対して土地を使う権利を主張できない
ということです。

逆を言えば、地役権者Bが勝つということです。

■ただ、土地の賃借権については、①「賃借権の登記」または「土地上の建物を登記」することで、物権と同じような対抗力を持ちます。

そのため、地役権と同じ対抗力を持つわけです。

この場合、「地役権の登記」と①にうち、早い方が勝ちます。

今回、地役権の設定登記→賃借権に基づいて建物建築という流れなので

地役権が先に登記されているため、地役権が勝ちます。

【アとイの違い】

アとイの違いは、地役権を設定した目的です!

・アでは、「排水のため」に地役権を設定しているので

排水ができないよう場合は、排水ができるようにするために
地役権に基づいて一定の請求ができます。

これについて、建物の収去請求や明渡請求までしなくても
排水確保は可能なので
そこまではできないです。

・イでは「眺望確保のため」に地役権を設定しています。
また、契約で、「土地上に建物建築不可として登記」されているので

建物収去請求も可能です!

A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣接し、甲土地の上にはC所有の丙建物が存在している。
ウ.甲土地が乙土地を通らなければ公道に至ることができない、いわゆる袋地である場合において、Cが、Aとの地上権設定行為に基づいて甲土地に丙建物を建築し乙土地を通行しようとするときは、Cは、甲土地の所有者でないため、Bとの間で乙土地の通行利用のため賃貸借契約を結ぶ必要がある。

ウ・・・誤り

他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地という)を通行することができます(民法210条1項:囲繞地通行権)。

袋地の地上権者Cも、袋地の所有者A同様、当然に囲繞地(乙土地)を通行する権利を有します。

よって、地上権者Cは、Bとの間で乙土地の賃貸借を結ぶ必要はないので誤りです。

A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣接し、甲土地の上にはC所有の丙建物が存在している。
エ.Aは、自己の債務の担保として甲土地に抵当権を設定したが、それ以前に賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造していたCからAが当該抵当権の設定後に丙建物を買い受けた場合において、抵当権が実行されたときは、丙建物のために、地上権が甲土地の上に当然に発生する。

エ・・・誤り

法定地上権の成立要件

【問題文の理解】

まず、今回の問題文は「B所有の乙土地」は関係ないので、この点は無視していただいて大丈夫です!

  1. Aが自己所有の甲土地をCに賃貸(甲地の所有者A)
  2. Cが借りた土地上に丙建物を建築(丙建物の所有者C)
  3. その後、Aが抵当権を設定(抵当者は誰かは記載されていない)
  4. AがCから丙建物を購入(甲土地に抵当権設定、丙建物所有者はAとなる)

ここで、甲土地が競売にかけられた場合、建物に地上権が成立するか?という問題です。

【解説】

「土地」及び「その土地上に建物」が存在し、土地と建物の所有者が同一である場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により、土地と建物の所有者を異なることとなったときは、その建物について、地上権(法定地上権という)が設定されたものとみなします(民法388条)。

つまり、法定地上権が成立するのは、「抵当権設定当時に、土地と建物の所有者が同一」であることが要件の一つです。

本肢は、抵当権設定当時、「甲土地の所有者はA」「丙建物の所有者はC」で異なるため、法定地上権の要件を満たしていません。

よって、法定地上権は成立しない(発生しない)ので誤りです。

>>法定地上権とは?

A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣接し、甲土地の上にはC所有の丙建物が存在している。

オ.Cが、地上権設定行為に基づいて甲土地上に丙建物を築造していたところ、期間の満了により地上権が消滅した場合において、Aが時価で丙建物を買い取る旨を申し出たときは、Cは、正当な事由がない限りこれを拒むことができない。

オ・・・正しい
地上権者は、地上権が消滅した時に、土地を原状に戻してその工作物及び竹木を収去することができます。

ただし、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができません民法269条)。

よって、本肢は正しいです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問29|民法

動産物権変動に関する次の記述のうち、民法等の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aは自己所有の甲機械をBに譲渡したが、その引渡しをしないうちにAの債権者であるCが甲機械に対して差押えを行った。この場合において、Bは、差押えに先立って甲機械の所有権を取得したことを理由として、Cによる強制執行の不許を求めることはできない。
  2. Dは自己所有の乙機械をEに賃貸し、Eはその引渡しを受けて使用収益を開始したが、Dは賃貸借期間の途中でFに対して乙機械を譲渡した。FがEに対して所有権に基づいて乙機械の引渡しを求めた場合には、Eは乙機械の動産賃借権をもってFに対抗することができないため、D・F間において乙機械に関する指図による占有移転が行われていなかったとしても、EはFの請求に応じなければならない。
  3. Gは自己所有の丙機械をHに寄託し、Hがその引渡しを受けて保管していたところ、GはIに対して丙機械を譲渡した。この場合に、HがGに代って一時丙機械を保管するに過ぎないときには、Hは、G・I間の譲渡を否認するにつき正当な利害関係を有していないので、Iの所有権に基づく引渡しの請求に応じなければならない。
  4. Jは、自己所有の丁機械をKに対して負っている貸金債務の担保としてKのために譲渡担保権を設定した。動産に関する譲渡担保権の対抗要件としては占有改定による引渡しで足り、譲渡担保権設定契約の締結後もJが丁機械の直接占有を継続している事実をもって、J・K間で占有改定による引渡しが行われたものと認められる。
  5. 集合動産譲渡担保が認められる場合において、種類、量的範囲、場所で特定された集合物を譲渡担保の目的とする旨の譲渡担保権設定契約が締結され、占有改定による引渡しが行われたときは、集合物としての同一性が損なわれない限り、後に新たにその構成部分となった動産についても譲渡担保に関する対抗要件の効力が及ぶ。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】

1.Aは自己所有の甲機械をBに譲渡したが、その引渡しをしないうちにAの債権者であるCが甲機械に対して差押えを行った。この場合において、Bは、差押えに先立って甲機械の所有権を取得したことを理由として、Cによる強制執行の不許を求めることはできない。

1・・・正しい

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができません民法178条)。

本肢は「引渡しをしないうち差押えをされている」ため、BはCによる強制執行の不許を求めることはできません。

よって、本肢は正しいです。

2.Dは自己所有の乙機械をEに賃貸し、Eはその引渡しを受けて使用収益を開始したが、Dは賃貸借期間の途中でFに対して乙機械を譲渡した。FがEに対して所有権に基づいて乙機械の引渡しを求めた場合には、Eは乙機械の動産賃借権をもってFに対抗することができないため、D・F間において乙機械に関する指図による占有移転が行われていなかったとしても、EはFの請求に応じなければならない。
2・・・誤り
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができません(民法178条)。そして、判例(大判大8.10.16)では、「動産の賃借人は第三者にあたる」としています。本肢では、「Eはその引渡しを受けています」。そして、この引渡しについて、「指図による占有移転ではない」となっているので
EはFの引渡し請求に応じる必要はないので誤りです。

■「指図に占有移転」があれば、「乙機械(動産)」は、譲受人Fに引き渡されたことになります。そのため、Fが対抗要件を備えることになり、Fは所有権に基づく、返還請求ができ、EはFの請求に応じなければなりません。

「指図による占有移転」とは?>>

3.Gは自己所有の丙機械をHに寄託し、Hがその引渡しを受けて保管していたところ、GはIに対して丙機械を譲渡した。この場合に、HがGに代って一時丙機械を保管するに過ぎないときには、Hは、G・I間の譲渡を否認するにつき正当な利害関係を有していないので、Iの所有権に基づく引渡しの請求に応じなければならない。
3・・・正しい
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができません(民法178条)。判例(最判昭29.8.31)によると、「動産の寄託を受け、一時それを保管するにすぎない者は第三者にあたらない」としています。つまり、Hは第三者に当たりません。よって、HはIの所有権に基づく引渡しの請求に応じなければならないので正しいです。>>寄託とは?
4.Jは、自己所有の丁機械をKに対して負っている貸金債務の担保としてKのために譲渡担保権を設定した。動産に関する譲渡担保権の対抗要件としては占有改定による引渡しで足り、譲渡担保権設定契約の締結後もJが丁機械の直接占有を継続している事実をもって、J・K間で占有改定による引渡しが行われたものと認められる。

4・・・正しい

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができません(民法178条)。

動産の売渡担保権者の所有権取得の対抗要件について
判例(最判昭30.6.2)によると、「動産について譲渡担保設定契約成立と同時に占有改定による引渡があるとされた」としています。

よって、動産に関する譲渡担保権の対抗要件としては占有改定による引渡しで足ります。

また譲渡担保権設定契約の締結後もJが丁機械の直接占有を継続している事実をもって、J・K間で占有改定による引渡しが行われたものと認められるので

本肢は正しいです。

>>譲渡担保とは?

5.集合動産譲渡担保が認められる場合において、種類、量的範囲、場所で特定された集合物を譲渡担保の目的とする旨の譲渡担保権設定契約が締結され、占有改定による引渡しが行われたときは、集合物としての同一性が損なわれない限り、後に新たにその構成部分となった動産についても譲渡担保に関する対抗要件の効力が及ぶ。

5・・・正しい

判例によると、
「構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によって占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となった動産を包含する集合物に及ぶ。」としています(最判昭62.11.10)そして、
「構成部分の変動する集合動産」とは、「倉庫にあるモノ」です。これら全部について譲渡担保権の設定をして、占有改定の方法で引渡しをすれば

その後、この倉庫に新たに持ち込まれたモノについても、譲渡担保の効力が及ぶということです。

よって、本肢は正しいです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略