民法の過去問

平成24年・2012|問33|賃貸借

改正民法に対応済

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し(以下、この賃貸借を「本件賃貸借」という。)、その際、BがAに対して敷金(以下、「本件敷金」という。)を交付した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 本件賃貸借において、Bが甲建物のために必要費および有益費を支出した場合、特約がない限り、Bはこれらの費用につき、直ちにAに対して償還請求することができる。
  2. BがAの承諾を得て本件賃貸借に基づく賃借権をCに譲渡した場合、特段の事情がない限り、AはBに対して本件敷金を返還しなければならない。
  3. BがAの承諾を得て甲建物をDに転貸したが、その後、A・B間の合意により本件賃貸借が解除された場合、B・D間の転貸借が期間満了前であっても、AはDに対して甲建物の明渡しを求めることができる。
  4. BがAの承諾を得て甲建物をEに転貸したが、その後、Bの賃料不払いにより本件賃貸借が解除された場合、B・E間の転貸借が期間満了前であれば、AはEに対して甲建物の明渡しを求めることはできない。
  5. AがFに甲建物を特段の留保なく売却した場合、甲建物の所有権の移転とともに賃貸人の地位もFに移転するが、現実にFがAから本件敷金の引渡しを受けていないときは、B・F間の賃貸借の終了時にFはBに対して本件敷金の返還義務を負わない。

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改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し、その際、BがAに対して敷金を交付した。

1.本件賃貸借において、Bが甲建物のために必要費および有益費を支出した場合、特約がない限り、Bはこれらの費用につき、直ちにAに対して償還請求することができる。

1・・・妥当ではない

●必要費 → 賃貸人負担 → 「直ちに」償還請求できる

●有益費 → 賃貸人負担 → 「賃貸借終了時に」償還請求できる

賃貸借における必要費 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、

直ちその償還を請求することができます(民法608条1項)。この点は正しいです。

対比:使用貸借における必要費 「借用物の通常の必要費」は借主が負担します(595条1項)。つまり、借主は貸主に償還請求できません。

賃貸借における有益費 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、償還をしなければなりません。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができます(2項)。本問は、「有益費」について「直ちに」償還できるとなっているので誤りです。

対比:使用貸借における有益費 賃貸借同様、貸主側が負担するのですが、償還期限については、規定されていません。

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し、その際、BがAに対して敷金を交付した。

2.BがAの承諾を得て本件賃貸借に基づく賃借権をCに譲渡した場合、特段の事情がない限り、AはBに対して本件敷金を返還しなければならない。

2・・・妥当

●賃貸借契約期間中に賃借人が変更した賃借権譲渡した)場合、敷金返還請求権は、原則、新賃借人には「承継されない」

賃貸人Aの承諾を得て賃借権が譲渡された場合でも、敷金返還請求権は、新賃借人Cには、原則として承継されません。つまり、新たな賃借人Cは、原則、退去後に、敷金を返還してもらうことはできません。

(下表の一番下の行参照)

※賃貸借契約期間終了後に、賃借人B(契約期間が終了しているので元賃借人になります)がずっと住み続けて、明渡し前に、建物譲渡により賃貸人が変わった場合は、旧所有者Aと新所有者C(新賃貸人)で合意したとしても、敷金返還義務は新所有者Cに承継しません。つまり、敷金は、AがCに対して返還する必要があります。

そして、賃借人Bが適法に賃借権を譲渡したときは賃貸人Aは、賃借人Bに、未払い賃料などの債務の額を差し引いて(控除して)、敷金を返還しなければなりません(民法622条の2の1項2号)。

【考え方】もともと敷金を預け入れる理由は、自分(B)の債務不履行を保証するためです。新賃借人Cの債務不履行を保証する責任は元賃借人Bにはありません。そのため、敷金返還請求権はDに承継されず、元賃借人Bは賃貸人Aに敷金の返還を請求できます

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し、その際、BがAに対して敷金を交付した。

3.BがAの承諾を得て甲建物をDに転貸したが、その後、A・B間の合意により本件賃貸借が解除された場合、B・D間の転貸借が期間満了前であっても、AはDに対して甲建物の明渡しを求めることができる。

3・・・妥当でない

●賃貸借契約が「合意解除」された場合、賃貸人Bは転借人Dに、賃貸借契約の終了を対抗できない

賃貸人と賃借人とが賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がない限り、賃貸人は転借人に対してこの合意解除の効果を主張できません(民法613条3項本文)。そのため、転貸借契約は当然(当たり前)には終了しません。どういうことかというと、賃貸借契約期間中にAB間の話合いによって、AB間の賃貸借契約を解除した場合、勝手にAB間で解除しているので、賃貸人Bは「賃貸借契約が終了したから、Dさん建物を返して!」と主張することはできないということです。つまり、転貸借契約は当然には終了しないです。(下表①参照)

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し、その際、BがAに対して敷金を交付した。

4.BがAの承諾を得て甲建物をEに転貸したが、その後、Bの賃料不払いにより本件賃貸借が解除された場合、B・E間の転貸借が期間満了前であれば、AはEに対して甲建物の明渡しを求めることはできない。

4・・・妥当ではない

●賃貸借契約が「債務不履行で解除」された場合、賃貸人が転借人に目的物の返還を請求したとき、転貸借契約は終了

図は選択肢3と同じで、転借人がDからEに変更となります。解除の原因が「Bの債務不履行」となります。そして、AB間の賃貸借契約がBの債務不履行(例:Bの賃料不払い)で解除された場合、賃貸人Aが転借人Eに目的物の返還を請求したとき転貸借契約は終了します。つまり、AはEに対して甲建物の明渡しを求めることはできます。よって、誤りです。

転借人Eは、AE間の転貸借契約に基づく転借権を賃貸人Aに対抗することができません(民法613条3項ただし書き)。(上表③参照)

そして、判例では、賃貸借契約を解除する際に、転借人Eに対して支払の機会を与える必要はないとしている点も覚えましょう。

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し、その際、BがAに対して敷金を交付した。

5.AがFに甲建物を特段の留保なく売却した場合、甲建物の所有権の移転とともに賃貸人の地位もFに移転するが、現実にFがAから本件敷金の引渡しを受けていないときは、B・F間の賃貸借の終了時にFはBに対して本件敷金の返還義務を負わない。

5・・・妥当でない

●賃貸借契約期間中に賃貸人が変更した場合、敷金返還債務は新賃貸人に承継される

賃貸人Aが賃貸借契約期間中に建物をF(新賃貸人)に譲渡し、所有権移転登記を経た場合は、賃借人Bの同意がなくても、敷金返還債務は旧賃貸人Aから新賃貸人Fに承継されます。

つまり、B・F間の賃貸借の終了時に、新賃貸人FはBに対して敷金の返還義務を負います。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問32|無償契約

改正民法に対応済

無償契約に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。すべて選べ。

  1. 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって、その効カを失う。
  2. 贈与契約においては対価性を維持する必要がないため、特別の定めがなければ、目的物に瑕疵があったとしても、贈与者は、目的物が特定した時の状態で引き渡し、又は移転すれば足りる。 (改)
  3. 使用貸借においては、借用物の通常の必要費については借主の負担となるのに対し、有益費については貸主の負担となり、その償還の時期は使用貸借の終了時であり、貸主の請求により裁判所は相当の期限を許与することはできない。
  4. 委任が無償で行われた場合、受任者は委任事務を処理するにあたり、自己の事務に対するのと同一の注意をもってこれを処理すればよい。
  5. 寄託が無償で行われた場合、受寄者は他人の物を管理するにあたり、善良なる管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない。

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改正民法に対応済

【答え】:1と2

【解説】

1.定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって、その効カを失う。

1・・・妥当

●定期贈与 → 贈与者または受贈者の死亡により終了

定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失います(民法552条)。

具体例 定期贈与とは、一定期間において一定額の給付を目的とする贈与です。例えば、「年に一回100万円を贈与し、20年かけて2000万円をあげます」というような贈与契約で、贈与者または受贈者のどちらかが死亡した場合、効力を失い、その契約の効力は相続人には及びません。(=定期贈与契約は相続されない)

理由 定期贈与は、贈与者が「受贈者がこの人だから」一定期間、一定額を贈与しようと思って贈与している場合がほとんどです。つまり、この人(受贈者)だからこそ、定期贈与しているのであって、その相続人に贈与してあげようとは思っていません。 逆に、贈与者が死亡した場合、贈与者は好意で定期贈与していたわけで、一定期間という長い期間贈与しなければならない義務を相続人にまで押し付けるのは妥当ではないので、贈与者死亡によっても定期贈与は終了します。

2・・・妥当

●贈与者の引渡義務 → 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転をすればよい

贈与者の引渡義務 → 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転をすればよい

贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定します(民法551条)。つまり、贈与する物を特定した時に既に瑕疵があったとしても、原則、その瑕疵について責任は負わず、その物を受贈者に引渡せばよいです。

ただし、「瑕疵がないものを引渡す」などの特約があった場合は、契約不適合責任を追及される余地はあります。

3.使用貸借においては、借用物の通常の必要費については借主の負担となるのに対し、有益費については貸主の負担となり、その償還の時期は使用貸借の終了時であり、貸主の請求により裁判所は相当の期限を許与することはできない。

3・・・妥当でない

●使用貸借における必要費 → 借主負担

●使用貸借における有益費 → 貸主負担 → 貸主は償還期限を延ばすよう裁判所に請求できる

使用貸借の場合、「借用物の通常の必要費」は借主が負担します(595条1項)。

「通常の必要費」とは、現状維持のために必要な修繕費等です。

「通常の必要費」以外の費用(例えば有益費)については、貸主が負担するため、借主が支出した場合、貸主に償還請求することができます。そして、有益費については、裁判所は、貸主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができます(2項) 。つまり、貸主が、すぐに有益費を支払えない場合、裁判所に償還期限を少し待ってもらうよう請求することができます。

4.委任が無償で行われた場合、受任者は委任事務を処理するにあたり、自己の事務に対するのと同一の注意をもってこれを処理すればよい。

4・・・妥当ではない

委任契約 → 有償・無償関係なく、受任者は善管注意義務を負う

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。有償・無償は関係ありません。つまり、無償で委任事務を任されたとしても、委任事務を任された人は、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理しなければなりません。

善管注意義務 / 自己のためにするのと同一の注意義務 / 自己の財産におけると同一の注意をなす義務

「善管注意義務」は、 「取引上、一般的・客観的に要求される程度の注意義務」を言い、イメージとしては、他人の物事と考えて、それなりの注意をしなさいということです。

一方、自己のためにすると同一の注意をなす義務 「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」は、自分の物事と考えて、相当の注意をしなさいということで、善管注意義務よりも軽い注意義務です。

5.寄託が無償で行われた場合、受寄者は他人の物を管理するにあたり、善良なる管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない。

5・・・妥当でない

●寄託 → 有償 : 預かる側(受寄者)は、「善管注意義務」を負う

●寄託 → 無償 : 受寄者は、「自己の財産におけると同一の注意」を負う

寄託とは 物を預かって、保管してもらうこと(契約)を言います。例えば、「銀行にお金を預けること」「友人に荷物を預けること」です。「預ける側を、寄託者(きたくしゃ)」、「預かる側を、受寄者(じゅきしゃ)」と言います。 

受寄者の義務 お金を払って預かってもらう場合(有償)、預かる側(受寄者)は、「善管注意義務」を負います(民法400条)。 無報酬の場合、受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負います(659条)。本問は無償(無報酬)なので、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管しなければなりません。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問31|債務不履行

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。

Aは甲土地についてその売主Bとの間で売買契約を締結したが、甲土地には権利等に瑕疵があった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 甲土地の全部の所有権がCに属していたことを知りながらBがこれをAに売却した場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、甲土地の全部の所有権がCに属していたことについて善意のAは、その事実を知った時から1年以内に限り、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる。
  2. 甲土地の全部の所有権がCに属していたことを知らずにBがこれをAに売却した場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、Bは、契約の時に甲土地の全部の所有権がCに属していたことについて善意のAに対して、単に甲土地の所有権を移転できない旨を通知して、契約の解除をすることができる。
  3. 甲土地の一部の所有権がCに属していた場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、Aは、甲土地の一部の所有権がCに属していたことについて善意であるか悪意であるかにかかわりなく、契約の時から1年以内に限り、Bに対して、その不足する部分の割合に応じて代金の減額請求をすることができる。
  4. 契約の時に一定の面積を表示し、この数量を基礎として代金額を定めてBがAに甲土地を売却した場合において、甲土地の面積が契約時に表示された面積よりも実際には少なく、表示された面積が契約の目的を達成する上で特段の意味を有しているために実際の面積であればAがこれを買い受けなかったときは、その面積の不足について善意のAは、その事実を知った時から1年以内に限り、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる。
  5. 甲土地についてCの抵当権が設定されていた場合において、Aがこれを知らずに買い受けたときに限り、Aは、Bに対して、契約を直ちに解除することができ、また、抵当権の行使により損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

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【答え】:-

【解説】

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問30|譲渡担保

改正民法に対応済

譲渡担保に関する次の記述のうち、判例に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 不動産の譲渡担保において、債権者はその実行に際して清算義務を負うが、清算金が支払われる前に目的不動産が債権者から第三者に譲渡された場合、原則として、債務者はもはや残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできず、このことは譲受人が背信的悪意者にあたるときであっても異ならない。
  2. 集合動産の譲渡担保において、債権者が譲渡担保の設定に際して占有改定の方法により現に存する動産の占有を取得した場合、その対抗要件具備の効力は、その構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産についても及ぶ。
  3. 集合動産の譲渡担保において、設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をしたときは、当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。
  4. 集合債権の譲渡担保において、それが有効と認められるためには、契約締結時において、目的債権が特定されていなければならず、かつ、将来における目的債権の発生が確実でなければならない。
  5. 集合債権の譲渡担保において、当該譲渡につき譲渡人から債務者に対して確定日付のある証書によって通知が行われた場合、その対抗要件具備の効力は、将来において発生する債権についても及ぶ。

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改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

1.不動産の譲渡担保において、債権者はその実行に際して清算義務を負うが、清算金が支払われる前に目的不動産が債権者から第三者に譲渡された場合、原則として、債務者はもはや残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできず、このことは譲受人が背信的悪意者にあたるときであっても異ならない。

1・・・正しい

●譲渡担保 : 債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合、債権者は自由に処分(売却)できる機能も有する

●債務者は、清算金がある場合に債権者に対してその支払を求めることができるが、処分された目的物を受け戻すことはできない

譲渡担保(じょうとたんぽ)とは

譲渡担保とは、債権者が、「債権担保の目的で所有権をはじめとする財産権」を、債務者等から譲り受け、被担保債権の弁済をもってその権利を返還するというものです。

具体例 債権者Aが債務者Bにお金を貸した。その担保(保証)としてB所有の不動産の所有権を「債権者A」に移転(移転登記)させ、債務の弁済が完了した時点で不動産の所有権を債務者Bに戻すというものです。

もし、債務者Bが債務を弁済できないときは、暫定的に債権者に移っていた所有権は、確定的に債権者Aに帰属することになるというものです。抵当権設定では、「競売」にかけて競売代金から弁済を受けるのですが、競売にかけたりする手続きが面倒です。それを避けるために、お金返さなかったら、不動産をそのままもらいますよ!ということです。

そして、譲渡担保は、債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、自由に処分(売却)できる機能も有します。

判例 判例では、「不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者Bが弁済期に債務の弁済をしない場合、債権者Aが、目的物を第三者Cに譲渡したときは、原則として、譲受人Cは目的物の所有権を確定的に取得し、債務者Bは、清算金がある場合に債権者Aに対してその支払を求めることができるにとどまり、残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできない」としています。つまり、本問は正しいです。譲受人Cが背信的悪意者であろうが関係ありません。

理由 債務者Bが弁済期に債務の弁済をしない場合、この時点で、確定的に不動産の所有権は債権者Aに移るので、その後に所有権を譲り受けるCは、背信的悪意者であろうがなかろうが関係ありません。

【清算金とは】 例えば、1000万円お金を貸して、担保にとった動産の合計額が1050万円だったとします。

その場合、50万円多く、債権者がもらうことになるので、「50万円を清算金」として債務者に渡します!

 

2.集合動産の譲渡担保において、債権者が譲渡担保の設定に際して占有改定の方法により現に存する動産の占有を取得した場合、その対抗要件具備の効力は、その構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産についても及ぶ。

2・・・正しい

●構成部分が変動して新しく構成部分となった動産についても、占有改定により譲渡担保権者は対抗力を取得する

集合動産の譲渡担保の具体例 例えば、ビール販売店Aが、Bからお金を借りて、倉庫内にあるアサヒの瓶ビール100本(集合動産)について譲渡担保を設定した場合です。

占有改定とは ある目的物の占有者がそれを手元に置いたまま占有を他者に移す場合をいいます。上記事例では、譲渡担保を設定してもらった譲渡担保権者Bが、瓶ビール100本を占有します。しかし、Bが瓶ビール100本を保管するのが困難等の理由により、譲渡担保権設定者A(ビール販売店)のもとに(倉庫に)置いたまま、占有はBに移すということです。

構成部分の変動する集合動産とは、「倉庫内にあるアサヒの瓶ビール100本」であり、種類・所在場所及び量の範囲が指定されているので、この100本のビールが一つの集合物です。そして、瓶ビールを一本消費して、新たに同じ種類・量の瓶ビールを入れれば、新しい瓶ビールも集合動産となります。

判例 判例では、「構成部分(瓶ビール一部)が変動して、新しく構成部分となった動産(一本消費して新たに追加された瓶ビール)も、占有改定により、譲渡担保権者B(債権者)は対抗力を取得する」としています。

よって、「債権者Bが譲渡担保の設定に際して占有改定の方法により現に存する動産(瓶ビール100本)の占有を取得した場合、対抗要件具備の効力は、その構成部分(瓶ビールの一部)が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産(瓶ビール)についても及ぶ」という記述は正しいです。

3.集合動産の譲渡担保において、設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をしたときは、当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。

3・・・正しい

譲渡担保設定者には、その通常の営業の範囲内で、譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限がある

②通常の営業の範囲を超える売却処分する権限はもたず、もし、通常の営業の範囲を超える売却処分した場合、原則、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。例外として、「譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合」、処分の相手方に所有権が移転する

判例 構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては、集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されている。(つまり、問277の事例で、瓶ビール販売店Aが倉庫内の瓶ビールを販売して、仕入れをすることは予定されている) だから、通常の営業の範囲内でされた処分の相手方(瓶ビールの購入者)は、当該動産(瓶ビール)について、譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができる。

一方、対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者(ビール販売店A)が、通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は上記権限に基づかないものである以上、譲渡担保契約に定められた保管場所(倉庫等)から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。(つまり、瓶ビールが、倉庫から搬出され、集合物から離脱した場合、購入者は、瓶ビールの所有権を取得する。単に瓶ビールの売買契約をしただけで、瓶ビールが倉庫から搬出されていないのであれば、購入者は所有権を取得できない)

【具体例】家具メーカーの在庫を担保とした場合

ある家具メーカーA社は、銀行Bからの融資を受ける際、自社の在庫である大量の家具(椅子やテーブルなど)に譲渡担保を設定しました。つまり、A社の在庫家具は、銀行Bの融資を担保する目的で集合動産として設定され、原則として銀行Bがその集合動産に対する担保権を持つことになります。

<通常の営業の範囲での処分とは>
家具メーカーA社は通常、個々の家具を店舗やオンラインで一般消費者に販売しています。このような通常の営業行為で家具を販売する限り、A社は通常の範囲内で売却しているため、銀行Bの同意がなくても担保権が問題なく認められます。この場合、購入者は家具の所有権を取得できます。

<「通常の営業の範囲」を超える売却処分とは>
しかし、A社が財務的に苦しくなり、全在庫を一括で別の大口業者Cに売却しようとしたとします。この一括売却は通常の営業範囲を超えた特別な処分と見なされます。この場合、家具の一括売却を行うには銀行Bの同意が必要になりますが、それを得ずにA社が勝手に売却した場合、C社は売却された在庫家具の所有権を取得できない可能性があります。

このように、通常の営業範囲内であれば集合動産から離脱したものとして第三者が所有権を取得できますが、通常の営業の範囲を超えた場合、譲渡担保権の効力が優先されます。そのため、「通常の営業の範囲を超える売却処分」の場合には、集合物の離脱と認められず、担保設定者からの譲受人が所有権を取得できないことが生じます。

4.集合債権の譲渡担保において、それが有効と認められるためには、契約締結時において、目的債権が特定されていなければならず、かつ、将来における目的債権の発生が確実でなければならない。

4・・・誤り

●将来債権でも集合債権の譲渡担保設定を有効に行える
●将来債権の発生の確実性は関係ない

本問は、「目的債権が特定されていなければならず、かつ、将来における目的債権の発生が確実でなければならない」が誤りです。

集合債権の譲渡担保とは 債務者Aが有する第三債務者に対する複数の特定された個々の債権を、一個の集合した債権として捉え、これに譲渡担保を設定することです。

判例 判例では、『「担保設定する債権」については、契約締結時において、発生していない債権(将来債権)であっても可能で(将来債権も担保設定することができる) 、債権発生の可能性が低かったことは、譲渡担保設定契約の効力を当然に左右するものではない』としています。つまり、債権発生の確実性については、譲渡担保設定契約の効力に関係ないということです。

【具体例】 例えば、新規取引先との売掛金を含む集合債権譲渡担保を考えます。

中小企業A社は銀行Bから融資を受けようとしており、担保として自社の「売掛金債権(物を売って、あとでお金をもらう債権)」を集合債権譲渡担保に設定します。

A社は既存の取引先に加えて、新たに開拓を進めている新規取引先からの売掛金も、将来発生する予定の債権として担保に含める予定です。

A社は、現時点で発生している売掛金債権(既存取引先からの売掛金)に加え、今後、新規取引先との取引で発生が予想される売掛金債権も集合債権として担保に含めました。

銀行Bは、これら将来発生する可能性のある債権も担保として確保することになります。

この時点で、新規取引先との取引が始まるかどうか、また売掛金債権が確実に発生するかは分かりませんが、銀行Bはそれらも含めて担保設定しています。

そして仮に新規取引先からの売掛金債権が思ったように発生しなかったとしても、それによって譲渡担保契約そのものが無効になるわけではありません。担保設定契約は、発生可能性が不確実でも有効とされています。

5.集合債権の譲渡担保において、当該譲渡につき譲渡人から債務者に対して確定日付のある証書によって通知が行われた場合、その対抗要件具備の効力は、将来において発生する債権についても及ぶ。

5・・・正しい

●集合債権の譲渡担保において、「将来債権」についても、債権譲渡の対抗要件を備えることができる

判例 判例では、「集合債権の譲渡担保において、将来発生する債権についても、債権譲渡の対抗要件(民法467条2項)の方法により、対抗要件を備えることができる」としています。

よって、本肢は正しいです。

具体例 債権者Aと債務者Bとの間で、「BのCに対する代金債権(既に発生している債権および将来発生する債権)」について譲渡担保設定契約を締結した。この場合、代金債権は、譲渡担保権者Aに移転するので、債権譲渡を似ています。

そのため、「確定日付のある証書による第三者債務者Cの承諾」もしくは「確定日付のある証書による譲渡人Bから第三債務者Cへの通知」により、Aが第三者に対抗要件を備えます(民法467条2項)。

※ 問題文の「債務者」は上記事例の「第三債務者C」を指します。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問29|囲繞地通行権等

改正民法に対応済

甲土地を所有するAは、甲土地に隣接するB所有の乙土地を通行している。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 甲土地が乙土地に囲まれて公道に通じていない場合、AがBに対して囲繞地通行権(※)を主張するためには、Aは甲土地の所有権の登記を具備していなければならない。
  2. 甲土地と乙土地は元々一筆の土地であったが、分筆によって他の土地に囲まれて公道に通じていない甲土地が生じ、これによりAが乙土地に対する無償の囲繞地通行権を有するに至った場合において、その後に乙土地がCに売却されたとしても、Aは当然にCに対してこの通行権を主張することができる。
  3. AがBとの間の賃貸借契約に基づいて乙土地を通行している場合において、その後に甲土地がCに売却されたときは、これによりCも当然に乙土地を通行することができる。
  4. Aは、少なくとも20年にわたって、自己のためにする意思をもって、平穏、かつ、公然と乙土地の一部を通行していれば、A自らが通路を開設していなくても、乙土地上に通行地役権を時効取得することができる。
  5. Aが地役権に基づいて乙土地の一部を継続的に通路として使用している場合において、その後にCが通路の存在を認識しながら、または認識可能であるにもかかわらず認識しないでBから乙土地を承継取得したときは、Cは背信的悪意者にあたるので、Aの地役権設定登記がなされていなくても、AはCに対して通行地役権を主張することができる。

(注)※ 囲繞地通行権とは、民法210条1項に規定されている「他の土地に囲まれて公道に通じていない土地」の通行権のことをいう。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済【答え】:2

【解説】

甲土地を所有するAは、甲土地に隣接するB所有の乙土地を通行している。

1.甲土地が乙土地に囲まれて公道に通じていない場合、AがBに対して囲繞地通行権(※)を主張するためには、Aは甲土地の所有権の登記を具備していなければならない。

1・・・妥当ではない

●囲繞地通行権 → 袋地の所有者は、所有権の登記不要

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者(A)は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地(乙土地)を通行することができます(民法210条)。

この権利を「囲繞地通行権」と言います。

「囲繞地(いにょうち)」とは、袋地(甲土地)を囲んでいる土地を言います。

判例 そして、判例では、袋地の所有権を取得した者Aは

甲地の所有者は所有権取得の登記なくして囲繞地通行権を主張することができる

としています。

理由 そもそも囲繞地通行権は、袋地と囲繞地の利用の調整を目的とする規定であり、囲繞地の所有者に一定の範囲の通行受忍義務(通行されることを我慢してもらう義務)を課し、袋地を利用できるようにするルールです。これは、「不動産取引の安全保護をはかるための公示制度」とは関係がない内容なので、登記は不要としています。登記が必要となってくるのは、対抗関係が問題となる場合の話です。

甲土地を所有するAは、甲土地に隣接するB所有の乙土地を通行している。

2.甲土地と乙土地は元々一筆の土地であったが、分筆によって他の土地に囲まれて公道に通じていない甲土地が生じ、これによりAが乙土地に対する無償の囲繞地通行権を有するに至った場合において、その後に乙土地がCに売却されたとしても、Aは当然にCに対してこの通行権を主張することができる。

2・・・妥当

●共有分割によって袋地が生じた場合、囲繞地通行権は、分割後の土地のみ行使できる
●その後、囲繞地の所有者が変わっても同様に、袋地の所有者は囲繞地通行権を行使できる

分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地(分割後の残余地)のみを通行することができます。この場合においては、償金(通行料)を支払う必要はありません(民法213条)。

具体例 もともと、上の左の図のように「AとBの共有地」は、道路に接しているので、袋地ではありません。その後、下の右の図のように共有分割をすると、Aの甲土地が袋地になります。土地の分割によって新たに袋地が生じた場合は、当該袋地の所有者は、公道に出るため、もう一方の土地(分割後の残余地)についてのみ無償で通行でき、必要であれば通路を開設することができます。

甲土地を所有するAは、甲土地に隣接するB所有の乙土地を通行している。

3.AがBとの間の賃貸借契約に基づいて乙土地を通行している場合において、その後に甲土地がCに売却されたときは、これによりCも当然に乙土地を通行することができる。

3・・・妥当ではない

●賃借権の譲渡 → 賃貸人の承諾が必要

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は、賃借物を転貸することができません(民法612条)。

そのため、賃借人Aが、賃貸人Bに無断で、甲土地をCに売却した場合、Cは、当然には乙土地を通行できないので、本問は誤りです。

甲土地を所有するAは、甲土地に隣接するB所有の乙土地を通行している。

4.Aは、少なくとも20年にわたって、自己のためにする意思をもって、平穏、かつ、公然と乙土地の一部を通行していれば、A自らが通路を開設していなくても、乙土地上に通行地役権を時効取得することができる。

4・・・妥当ではない

●地役権の時効取得 → 要役地所有者が、承役地に通路を開設すること要件の一つ

通行地役権は、通行の開始当時に通行地役権の存在について、
善意無過失の場合には10年間、悪意または有過失の場合には20年間、
「継続的」に、かつ、外形上認識することができる状態で通行する場合に限り、
時効取得できます(民法283条、162条、163条) 。

判例 そして、判例では、『「継続」とは、通路を開設していることを要求するものであり、また、この通路の開設は要役地の所有者によってなされることが必要である』としています。つまり、A自らが通路を開設しないと、通行地役権は時効取得できません。これはそのまま覚えましょう。

甲土地を所有するAは、甲土地に隣接するB所有の乙土地を通行している。
5.Aが地役権に基づいて乙土地の一部を継続的に通路として使用している場合において、その後にCが通路の存在を認識しながら、または認識可能であるにもかかわらず認識しないでBから乙土地を承継取得したときは、Cは背信的悪意者にあたるので、Aの地役権設定登記がなされていなくても、AはCに対して通行地役権を主張することができる。

5・・・妥当ではない

●地役権は物権なので、登記をしなければ第三者に対抗できない

●①通路として使用されている明らか、かつ②承役地の購入者Cが、通路使用について悪意or有過失の場合、第三者に当たらないため、要役地所有者Aは、Cに対抗できる

本問は、「背信的悪意者にあたる」が誤りです。

正しくは、「背信的悪意者にも第三者にもあたらない」です。

問題文の状況 地役権が設定された承役地をCがBから譲り受けた。

そして、Cは、 「通路の存在を認識していた(悪意)」または

「認識可能であるにもかかわらず認識しないで(有過失)」譲り受けた。

判例 判例では、「上記、登記されていない地役権について、

悪意または有過失のCは、背信的悪意者には当たらない」

また、「通行地役権の承役地(乙土地)が譲渡された場合において、

譲渡の時に、①承役地が要役地所有者Aによって継続的に通路として使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、②譲受人がそのことを認識していたか(悪意)又は認識することが可能であった(有過失の)ときは、譲受人Cは、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺(登記がないこと)を主張するについて正当な利益を有する第三者にあたらない」としています。

分かりやすく言えば Cが、地役権自体、設定されていることを知らなくても、①客観的にみて乙土地の一部が通行されていることが明らかで、②通行されている事実について悪意または有過失の場合、「地役権設定登記がないことを主張できる正当な利益を有する第三者」には当たらず、Aは、地役権の登記がなくても、Cに地役権を主張できるということです。

※ もし、Cが第三者にあたるとすれば、Aは地役権の登記がなければ、Cに対抗できない。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問28|代理・使者

改正民法に対応済

代理人と使者の違いに関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 代理人は本人のために法律行為を行う者であるから、代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは必ず委任契約によらなければならないが、使者は本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、使者の地位は、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく。
  2. 代理人は、本人のために法律行為を行う者であるから、代理権の授与のときに意思能力および行為能力を有することが必要であるのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、その選任のときに意思能力および行為能力を有することは必要ではない。
  3. 代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理行為の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。
  4. 代理人は、与えられた権限の範囲で本人のために法律行為を行うのであるから、権限を逸脱して法律行為を行った場合には、それが有効となる余地はないのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するのであるから、本人の真意と異なる意思を伝達した場合であってもその意思表示が無効となる余地はない。
  5. 代理人は、法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められないのに対し、使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、本人に無断で別の者を使者に選任することも認められる。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:3

【解説】

1.代理人は本人のために法律行為を行う者であるから、代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは必ず委任契約によらなければならないが、使者は本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、使者の地位は、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく。

1・・・妥当ではない

●代理人としての地位 → 「法律に基づく場合」「契約に基づく場合」がある

●使者としての地位 → 「契約に基づく場合」しかない

結論からいうと、「代理人は、必ず委任契約によらなければならない」が誤りです。雇用契約や請負契約等でも、仕事を任された者は、代理人として仕事をします。

■法律に基づく代理

【具体例】 成年後見人は、成年被後見人から代理権を授与されなくても、法律に基づいて代理権が与えられています。

■契約に基づく代理

【具体例】 委任契約、雇用契約、請負契約などを締結することで、代理権が与えられます。雇用契約をすれば、従業員は会社の仕事を会社の代理人として行い、請負契約をすれば、請負人は、注文者の代理人として仕事を行います。
また、建物建築の場合、使者として、建築確認の申請を行ったりします。

■代理と使者の違い

本人AがBに代わりにしてもらうように仕事を頼むという場合、代理と使者の2つがあります。

どちらも、仕事を行った法的責任は本人Aがとります(効果は本人Aに帰属する)。

違いは、意思決定をする人です。

  • 「代理」の場合、代理人Bがどのように仕事をするかの意思決定をして、仕事を行います。
  • 「使者」の場合、使者Bは、仕事の進め方について意思決定をしません。意思決定は本人Aが行い、使者は、それに従って動くだけです。上記建築確認の具体例でいうと、建築確認申請書の作成者は本人Aで、それを、請負人B(使者)が役所に提出しにいくだけといったイメージです。
2.代理人は、本人のために法律行為を行う者であるから、代理権の授与のときに意思能力および行為能力を有することが必要であるのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、その選任のときに意思能力および行為能力を有することは必要ではない。

2・・・妥当ではない

●代理人 → 行為能力は不要=制限行為能力者でも代理人になれる / 意思能力は必要

●使者 →  行為能力も意思能力も不要

本問は「代理人は、行為能力を有することが必要」となっているので誤りです。代理人は行為能力がなくてもなれます(民法102条)。

具体例 本人Aが、制限行為能力者B(行為能力が制限されている者)に、A所有の土地を売却する旨の代理権を与えた。この場合、Bは、買主Cと売買契約を締結することが可能です。そして、この契約は、Bが制限行為能力者であることを理由に取消しすることができません。

制限行為能力者を理由に取消しできない理由 本人Aが、あえて制限行為能力者であるBを選んで代理権を与えたのだから、その責任は本人Aが取るべきだからです。

■行為能力について

本人AがBに代わりにしてもらうように仕事を頼むという場合、代理と使者の2つがあります。どちらも、仕事を行った法的責任は本人Aがとります(効果は本人Aに帰属する)。何か仕事でミスがあっても、法的責任は本人Aがとるので、代理人も使者も

行為能力は不要としています。

■意思能力について

本人AがBに代わりにしてもらうように仕事を頼むという場合、

  • 「代理」の場合、代理人Bがどのように仕事をするかの意思決定をして、仕事を行います。つまり、代理人は意思能力が必要です。
  • 「使者」の場合、使者Bは、仕事の進め方について意思決定をしません。意思決定は本人Aが行い、使者は、それに従って動くだけです。つまり、「使者」は意思決定をしないため、意思能力は不要です。

3.代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理行為の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。

3・・・妥当

●「代理」の場合、意思決定は「代理人」が行う → 意思表示の瑕疵は、「代理人」について決する

●「使者」の場合、意思決定は「本人」が行う → 意思表示の瑕疵は「本人」について決する

本人AがBに代わりにしてもらうように仕事を頼むという場合、代理と使者の2つがあります。

どちらも、仕事を行った法的責任は本人Aがとります(効果は本人Aに帰属する)。

違いは、意思決定をする人です。

代理人の場合

代理人Bがどのように仕事をするかの意思決定をして、仕事を行います。つまり、意思決定をして、その後、意思表示をして契約をするのですが、意思表示に瑕疵(間違い・欠陥)があった場合、その意思決定をした「代理人」を基準に瑕疵があったかどうかを判断します。

具体例

本人Aが、Bに、A所有の「甲土地」を売却する旨の代理権を与えた。代理人Bが勘違いをして、「乙土地」を売却してしまった。この場合、原則、代理人Bが錯誤の要件を満たすかどうかを考えて、錯誤取消しができるかどうかを決めます。

使者の場合

使者Bは、仕事の進め方について意思決定をしません。意思決定は本人Aが行い、使者は、それに従って動くだけです。上記建築確認の具体例でいうと、建築確認申請書の作成者は本人Aで、それを、請負人B(使者)が役所に提出しにいくだけといったイメージです。つまり、使者は、「本人Aの意思決定」を、相手方に伝えるだけです。つまり、意思表示に瑕疵は、本人Aを基準にして、瑕疵があったかどうかを考えます。

具体例

本人Aが、A所有の「乙土地」を売却する旨の書面にサインをして、Bが使者として、当該書面を、買主Cに渡した。そして、本人Aは、本当は「甲土地」を売却するつもりだったが、勘違いをして、「乙土地」と記載してしまった書面を交付した。この場合、本人Aが錯誤の要件を満たすかどうかを考えて、錯誤取消しができるかどうかを決めます。

4.代理人は、与えられた権限の範囲で本人のために法律行為を行うのであるから、権限を逸脱して法律行為を行った場合には、それが有効となる余地はないのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するのであるから、本人の真意と異なる意思を伝達した場合であってもその意思表示が無効となる余地はない。

4・・・妥当ではない

●「代理人」が、権限外の行為を行った → 表見代理がすれば、権限外の代理行為も有効となる

●「使者」が、権限外の行為を行った → 「本人」を基準に「錯誤」が成立すれば、錯誤に基づいて取消しができる

代理人が権限外の行為を行った場合、無権代理として扱います。無権代理行為の効果は、原則、本人には帰属しません。しかし、それでは、相手方が困ります。そのため、表見代理というルールがあります。表見代理が成立すると、たとえ無権代理人の行った行為であったとしても、相手方を保護して、無権代理行為が有効になる(あとで本人は取消しできない)というルールです。

表見代理の1つとして、「権限外の行為の表見代理(民法110条)」があります。「無権代理人が権限外の行為」をし、かつ、相手方が善意無過失の場合、表見代理が成立して、無権代理人の行った行為が、確定的に有効となり、本人はあとで取消しすることができなくなります。よって、前半部分が誤りです。

具体例 本人Aは、代理人Bに、「A所有の甲土地に抵当権を設定する代理権」を与えた。それにもかかわらず、代理人Bは、「甲土地を相手方Cに売り渡す売買契約」をCと締結した。この場合、代理人Bが行った行為は、「権限外の行為」なので、この契約において、Bは無権代理行為を行っています。そして、相手方Cが、権限外の行為について善意無過失であれば、AC間の本件売買契約は有効となります。よって、前半部分は誤りです。

使者について

使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するだけです。そのため、 。もし、使者が「本人の真意と異なる意思を伝達した場合」、本人の基準に、錯誤取消しができるかどうかを判断します。錯誤の要件を満たす場合(錯誤が成立する場合)、錯誤により取消しが可能です。よって、後半部分も誤りです。

5.代理人は、法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められないのに対し、使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、本人に無断で別の者を使者に選任することも認められる。

5・・・妥当ではない

●代理人には、「法定代理人」と「任意代理人」が2つの種類がある法定代理人 → 本人に無断で復代理人を選任できる
任意代理人 → 「本人の許諾があるとき」または「やむを得ない事由があるとき

●使者の場合、復任についての制限はない → 本人に無断で、別の者を使者に選任することができる

結論からいうと、「法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められない」は誤りです。

代理の前提知識

代理人には、「法定代理人」と「任意代理人」が2つの種類があります。

  • 「法定代理人」とは、成年後見人や親権者など、法律で、成年被後見人や未成年者の代理人と決められた者を言います。本人の意思に関係なく、法律で、代理人を決められています。
  • 「任意代理人」とは、本人の意思に基づいて、選任された代理人です。例えば、あなたが、友人を代理人に選任した場合、あなたの意思で、友人を代理人と決めているのであって、法律で、「あなたの代理人は友人」と決められていません。

復代理人 復代理とは、代理人がさらに別の代理人を立てる(選任する)ことをいいます。そして、復代理人を選任しても、代理人がもともと有していた代理権は消滅しません。つまり、代理人も復代理人も代理権を持ちます。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問27|民法総則

改正民法に対応済

権利能力、制限行為能力および意思能力に関する次の記述のうち、民法および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 胎児に対する不法行為に基づく当該胎児の損害賠償請求権については、胎児は既に生まれたものとみなされるので、胎児の母は、胎児の出生前に胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができる。
  2. 失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされ、権利能力を喪失するため、生存することの証明がなされ失踪の宣告が取り消された場合でも、失踪の宣告後その取消し前になされた行為はすべて効力を生じない。
  3. 成年後見人は、正当な事由があるときは、成年被後見人の許諾を得て、その任務を辞することができるが、正当な事由がないときでも、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
  4. 成年被後見人の法律行為について、成年後見人は、これを取り消し、または追認することができるが、成年被後見人は、事理弁識能力を欠く常況にあるため、後見開始の審判が取り消されない限り、これを取り消し、または追認することはできない。
  5. 後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできないが、その者が当該法律行為の時に意思能力を有しないときは、意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができる。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

1.胎児に対する不法行為に基づく当該胎児の損害賠償請求権については、胎児は既に生まれたものとみなされるので、胎児の母は、胎児の出生前に胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができる。

1・・・妥当ではない

●「胎児」も不法行為に基づく損害賠償請求権を持つ

●母は、生まれる前に、胎児の代理人として、損害賠償請求権を行使できない

「胎児」とは、おなかの中の子どものことです。権利能力は出生(生まれること)によって発生するため(民法3条1項)、出生前の胎児の段階では原則として権利能力はありません。しかし、不法行為に基づく損害賠償請求権については、例外的に、胎児も既に生まれたものとみなして、胎児も取得できるようにしています(721条)。そして、判例では、胎児が生まれることによって、不法行為等の時にさかのぼって「不法行為に基づく損害賠償請求権」を取得すると考え、胎児のときに、母が、胎児の代理人として、損害賠償請求権を行使することはできないとしています。

具体例 胎児を持つ母と父がおり、父が交通事故で亡くなった。母と胎児は加害者に対して損害賠償請求権を持つが、胎児の持つ損害賠償請求権は、胎児が生まれてくるまでは行使できないので、胎児が生まれる前に、母が、胎児の代理人として、損害賠償請求権を行使できません。

出生までは権利能力がないので、胎児に法定代理人は付けられません。よって、「胎児の母は、胎児の出生前に胎児を代理して・・・」が妥当ではありません。

2.失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされ、権利能力を喪失するため、生存することの証明がなされ失踪の宣告が取り消された場合でも、失踪の宣告後その取消し前になされた行為はすべて効力を生じない。

2・・・妥当ではない

●失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされるが、権利能力は有する

●失踪宣告が取り消されても、取消し前に当事者全員が善意で行われた行為については、取消しの影響を受けない

失踪の宣告後その取消し前になされた「失踪者の行為」についても原則有効です。よって、妥当ではありません。

失踪の宣告を受けた者Aは、死亡したものとみなします(民法31条)。しかし、その者Aは権利能力は喪失しません。つまり、もし、Aがどこかで生きていた場合、Aは、物の売買などの法律行為を行えます。よって、誤りです。そして、失踪者Aが生存することの証明があったときは、家庭裁判所は、本人A又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければなりません。この場合において、失踪の宣告後その取消し前に善意で(どこかで生きていることを知らずに)した行為は有効です(32条) 。よって、本問は「失踪の宣告を受けた者は、権利能力を喪失する」と「失踪の宣告後その取消し前になされた行為はすべて効力を生じない」は誤りです。

関連ポイント 判例では、失踪宣告取消し前に行為については、当事者全員が善意でなければならないとしています。

具体例 失踪宣告を受けたAの所有する不動産を、Aの妻Bが相続し、Bが第三者Cに売却した。その後、Aが生存していることが分かり、失踪宣告の取消しがなされた。この場合、BとCがともに善意(失踪宣告が真実でなかったことを知らなかった)であれば、BC間の売買契約には影響しないので、Cは所有権を主張できます。

3.成年後見人は、正当な事由があるときは、成年被後見人の許諾を得て、その任務を辞することができるが、正当な事由がないときでも、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

3・・・妥当ではない

●成年後見人 : 正当な事由が「ある」とき → 家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる

●成年後見人 : 正当な事由が「ない」とき → 任務を辞することができない

後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができます(民法844条)。よって、前半部分は「成年被後見人の許諾を得て」となっているので誤りです。

また、正当な事由がない場合、任務を辞することができません。この点も誤りです。

4.成年被後見人の法律行為について、成年後見人は、これを取り消し、または追認することができるが、成年被後見人は、事理弁識能力を欠く常況にあるため、後見開始の審判が取り消されない限り、これを取り消し、または追認することはできない。

4・・・妥当ではない

●取消し → 成年後見人・成年被後見人どちらも行える

●追認 → 成年後見人は追認できる / 成年被後見人は、行為能力者になった後であれば追認できる

成年被後見人が行った法律行為について、取消しをする場合、「成年被後見人(制限行為能力者)」も「成年後見人(保護者)」もどちらも行えます(民法120条)。

理由 取消しすることによって、成年被後見人に不利益は生じないから

成年被後見人が行った法律行為の追認について、「成年後見人(保護者)」は行えるが、「成年被後見人(制限行為能力者)」は行えません。成年被後見人が、行為能力者になった後でないと追認はできません(124条2項)。

理由 成年被後見人は、重度の認知症の方等です。取消しできる行為について、追認できるとしてしまったら、本人に不利益が生じる恐れがあるから、追認できないとしています。ただし、行為能力者になった後は、物事の判断能力があるので追認できます。

5.後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできないが、その者が当該法律行為の時に意思能力を有しないときは、意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができる。

5・・・妥当

●意思無能力者の行為 → 無効

後見開始の審判を受ける前に、Aが法律行為を行った場合、Aは、制限行為能力者ではないので、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできません。しかし、別の理由を考えることができます。例えば、法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効となります(3条)。つまり、Aが当該法律行為の時に意思能力を有しないとき、無効を主張できます。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問46|民法・記述式

改正民法に対応済

Aの指輪が、Bによって盗まれ、Bから、事情を知らない宝石店Cに売却された。Dは、宝石店Cからその指輪を50万円で購入してその引渡しを受けたが、Dもまたそのような事情について善意であり、かつ無過失であった。盗難の時から1年6か月後、Aは、盗まれた指輪がDのもとにあることを知り、同指輪をDから取り戻したいと思っている。この場合、Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができるか否かについて、必要な、または関係する要件に言及して、40字程度で記述しなさい。

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改正民法に対応済

【答え】:Aは、盗難の時から2年以内に、Dに50万円を弁償すれば、Dに指輪の返還請求ができる。(42字)

【解説】

問題文の状況は、

  • Aの指輪が、Bによって盗まれた
  • Bが、盗んだ指輪を、事情を知らない宝石店Cに売却した
  • Dは、宝石店Cからその指輪を50万円で購入してその引渡しを受けた(Dは善意無過失)

上記状況で、

盗難の時から1年6か月後、Aは、盗まれた指輪がDのもとにあることを知り、同指輪をDから取り戻したいと思っている。

この場合、Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができるか否かについて、必要な、または関係する要件を考えます。

盗まれたAがDから指輪を取り戻そうとしているので、下記条文を考えます。

占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間占有者に対してその物の回復を請求することができる民法193条)。

占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない民法194条)。

要件を考える

Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができる要件を考えると、

  1. 盗難又は遺失の時から2年以内に、返還請求をすること
  2. 占有者Dが支払った代価を弁償すること

この2つが要件です。

問題文では、「盗難の時から1年6か月後」となっているので、返還請求が可能です。

そのため、上記2つの要件をまとめると

Aは、盗難の時から2年以内に、Dに50万円を弁償すれば、Dに指輪の返還請求ができる。(42字)

※条文では「回復」という文言が使われているので「回復請求」を使うことも可能ですが、問題文に「Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができるか否かについて、必要な、または関係する要件に言及して、40字程度で記述しなさい」と書かれているので、「返還請求」という文言を使った方が良いでしょう。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問45|民法・記述式

改正民法に対応済

Aは、Bに対し、Cの代理人であると偽り、Bとの間でCを売主とする売買契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。ところが、CはAの存在を知らなかったが、このたびBがA・B間で締結された本件契約に基づいてCに対して履行を求めてきたので、Cは、Bからその経緯を聞き、はじめてAの存在を知るに至った。他方、Bは、本件契約の締結時に、AをCの代理人であると信じ、また、そのように信じたことについて過失はなかった。Bは、本件契約を取り消さずに、本件契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えている。このような状況で、AがCの代理人であることを証明することができないときに、Bは、Aに対して、どのような要件の下で(どのようなことがなかったときにおいて)、どのような請求をすることができるか。「Bは、Aに対して、」に続けて、下線部について、40字程度で記述しなさい(「Bは、Aに対して、」は、40字程度の字数には入らない)。

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改正民法に対応済
【答え】:Aが行為能力を有し、Cの追認がなかったとき、履行又は損害賠償の請求をすることができる。(43字) 

【解説】

問題文の状況は、

  • 無権代理人A、本人C(売主)、相手方B(買主)
  • 本人Cは、無権代理人Aの存在を知らなかった
  • 相手方Bが、本人Cに対して履行を求めてきた
  • 相手方Bは、本件契約の締結時に、AをCの代理人であることについて、善意無過失

上記状況で
相手方Bは、上記AB間の契約を取り消さずに、AB間の契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えています。

このような状況で、AがCの代理人であることを証明することができないときに、

  • ①相手方Bは、無権代理人Aに対して、
  • ②どのような要件の下で(どのようなことがなかったときにおいて)、
  • ③どのような請求をすることができるか?

善意無過失相手方が無権代理人に何らかの請求をすることから、下記民法117条を考えます。

他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う(民法117条)。

前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない(同条2項)。

  1. 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
  2. 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
  3. 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたときは上記責任を負わない。

①については、問題文から「Bは、Aに対して、・・・」となっているので考えなくても大丈夫です。

②について、

民法117条1項の通り、
無権代理人Aが自己の代理権を証明したとき」又は「本人Cの追認を得たとき」は、
履行又は損害賠償の責任を負わないので

無権代理人が、「履行又は損害賠償の責任」を負うためには

「無権代理人Aが自己の代理権を証明できず」かつ「本人Cの追認を得なかったこと」が必要です。

前者については、問題文に記載されているので、

②には「本人Cの追認を得なかったこと」を入れる必要があります

さらに、2項についてみると、

1号2号は問題文に「相手方が善意無過失」である旨の記載があるので、考えなくても大丈夫です。

3号については考える必要があります。

無権代理人Aが行為能力がないと、無権代理人Aに責任追及できないので

②には、「行為能力を有する」旨を記載する必要があります

③について、

1項の通り、「履行又は損害賠償の請求をすることができる」で締めくくればよいでしょう!

まとめると

Aが行為能力を有し、Cの追認がなかったとき、履行又は損害賠償の請求をすることができる。(43字)


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問35|民法・親族

改正民法に対応済

婚姻および離婚に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか(改)。

1 未成年者が婚姻をするには、父母のいずれかの同意があれば足り、父母ともにいない未成年者の場合には、家庭裁判所の許可をもってこれに代えることができる。

2 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされる。したがって当該未成年者は、法定代理人の同意がなくても単独で法律行為をすることができ、これは当該未成年者が離婚をした後であっても同様である。

3 養親子関係にあった者どうしが婚姻をしようとする場合、離縁により養子縁組を解消することによって、婚姻をすることができる。

4 離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しない。

5 協議離婚をしようとする夫婦に未成年の子がある場合においては、協議の上、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることができる。

 

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改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

1 未成年者が婚姻をするには、父母のいずれかの同意があれば足り、父母ともにいない未成年者の場合には、家庭裁判所の許可をもってこれに代えることができる。

1・・・誤り

●未成年者 → 婚姻できない

未成年者(18歳未満の者)は、父母のどちらか一方の同意があったとしても、婚姻をすることはできません。よって、問題文全体が誤りです。婚姻は、成年者(18歳以上の者)しかできません。

2 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされる。したがって当該未成年者は、法定代理人の同意がなくても単独で法律行為をすることができ、これは当該未成年者が離婚をした後であっても同様である。

2・・・誤り

●未成年者 → 婚姻できない

未成年者は、そもそも婚姻することができません。よって、本問の内容は誤りです。

3 養親子関係にあった者どうしが婚姻をしようとする場合、離縁により養子縁組を解消することによって、婚姻をすることができる。

3・・・誤り

●養親子等の間の婚姻は禁止 → 離縁による親族関係が終了した後も婚姻できない

養親と養子との間での婚姻は禁止されています。また、養親と養子との親族関係が「離縁」により終了しても、その後も婚姻は禁止です(民法736条) 。

4 離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しない。

4・・・正しい

●離婚 → 姻族関係は終了

●夫婦一方が死亡 → 生存配偶者が姻族関係を終了させる意思表示をしたときに、姻族関係は終了

「姻族関係」とは、婚姻することで、血のつながりがない配偶者の血族と親戚関係になるということです。そして、この姻族関係は、離婚をすると、終了します(民法728条1項) 。また、夫婦の一方が死亡した場合、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに、姻族関係は終了します(2項)。つまり、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係(姻族関係)は、当然には終了しません。姻族関係終了の意思表示があって、始めて姻族関係が終了します。

※ 親族とは、「6親等内の血族」「配偶者」「3親等内の姻族」を指す(725条)。

姻族関係の終了

5 協議離婚をしようとする夫婦に未成年の子がある場合においては、協議の上、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることができる。

5・・・誤り

●親権者 → 夫婦の一方がなる / 第三者は親権者になれない

未成年者の子がいる場合、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項) 。そして、協議が調わないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、「夫婦の一方を親権者として定める」審判をすることができます(2項)。つまり、協議で決めようが、家庭裁判所が決めようが、父または母のどちらか一方が親権者となります。よって、第三者を親権者とすることを定めることはできません。

参考知識 「親権」の具体的な内容として「監護権」というものがあり、監護権は親権の一部なので、原則として親権者がこれを行使します。これは、親権者と監護権者は一致した方が、子どものためになるという考えが一般的だからです。しかし、親権者が子どもを監護できない事情がある場合や、親権者でない片方が監護権者として適当である場合には、親権者と監護権者を別々にすることも可能です。例えば、「親権者は収入のある父親だが、父親は海外出張で子どもの世話や教育がまったくできない場合」です。このような場合に、母親や祖父母が監護権者になることもあります。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略