民法の過去問

平成25年・2013|問34|民法

改正民法に対応済

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。
  2. 甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
  3. 甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することができる。
  4. A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。
  5. 贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

1.甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。

1・・・誤り

●公序良俗に反する行為 → 無効

具体例 不利関係を維持するための贈与契約 → 公序良俗に反する行為 → 無効

公の秩序又は善良の風俗(公序良俗)に反する法律行為は、無効です(民法90条)。そして、AB間での不倫関係を維持する目的の贈与契約は、公序良俗に反する法律行為にあたるので、無効です。

※ 「公の秩序又は善良の風俗」は、略して「公序良俗」というのですが、分かりやすく言えば「社会の秩序を守るための常識的な考え方」といったイメージです。

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

2.甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。

2・・・正しい

●不法な原因で、「未登記建物」の贈与契約を締結し、引渡した → 引渡しが「給付」にあたる → 引渡しが完了すると、不法原因給付が成立し、返還請求できなくなる

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができません (民法708条本文)。

具体例 「殺人依頼の対価として金銭を支払った場合」や、「不倫相手になること条件として家を与えた場合」です。殺人や不倫は、不法(反社会的)な事柄です。これを原因(理由)として、金銭や不動産等を与える場合が不法原因給付です。

そして、不法原因給付は、原則、返還請求できません(708条本文)。

理由 「返還請求できる」というルールにすると、不法原因を作った者を保護してしまうことになるからです。殺人依頼した者や、不倫相手を作ろうとした者を保護する必要はないから、原則、「返還請求できない」としています。

本問と判例 本問では、 AB間での不倫関係を維持する目的で、AがA所有の甲建(未登記)を贈与する契約を締結しています。そして、判例では、未登記建物の場合、「引渡し」は「給付」に当たるとしています。したがって、Aは不法原因給付を行っているため、返還請求できません。

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

3.甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することができる。

3・・・誤り

●不法な原因で、「未登記建物」の贈与契約を締結し、引渡した → 引渡しが「給付」にあたる → 引渡しが完了すると、不法原因給付が成立し、返還請求できなくなる / その後、贈与者が保存登記をしても返還請求できない

問252の解説の通り、不倫関係を維持する目的で、AがA所有の甲建物をBに贈与した場合、不法原因給付に当たります。そして、当該建物が未登記であっても、引渡しが完了することで、「給付」したことになるので、それ以降、Aが保存登記をしたとしても、給付した建物の返還を請求することができません。

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

4.A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。

4・・・誤り

●不法な原因で、「既登記建物」の贈与契約を締結した → 「引渡し」だけでは「給付」にあたらない → 「引渡し」+「移転登記」で「給付」したことになる

判例によると、不法原因給付の目的物が、「登記された建物(既登記建物)」の場合、「給付」とみなされるのは、「引渡し」と「移転登記」が完了したときとしています。「引渡し」だけでは「給付」には当たりません。よって、A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されただけであれば、Aはまだ「給付」を完了していないので、Bからの移転登記請求を拒むことはできます。

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

5.贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。

5・・・誤り

●不法原因給付において、「給付者」と「受益者」との不法の度合いを比べて、「給付者」の不法が微弱の場合(=受益者の不法性が著しく大きい場合) → 給付者の返還請求が認められる

不法原因給付のルールは、給付者がその不法原因にみずから積極的に関与した場合、不法原因の張本人を保護する必要性は低いため、返還請求を認めないこととしています。そのため、民法708条では、不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が「受益者についてのみ」に存在したときは、給付者は返還請求できる(民法708条)。としています。

では、給付者(本問では贈与者A)の不法が、受益者Bの不法と比べて微弱だった場合(受益者Bの不法が著しく大きい場合)、どうなるか?

判例 判例では、受益者Bの不法の方が著しく大きい場合には、給付者は民法708条ただし書きにより返還請求権を行使できるとしています。よって、AはBからの移転登記請求を拒むことはできます。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問33|民法・組合

改正民法に対応済

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成を得た上で行わなければならない。
  2. 組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、AとBだけの合意では決することはできない。
  3. 組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得ない事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。
  4. やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退することはできない。
  5. 組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求をすることができる。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

1.Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成を得た上で行わなければならない。

1・・・誤り

●組合の常務 → 各組合員は、原則、単独で行える

組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(670条1項)。しかし、組合の常務は、1項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことがでます。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、単独では行えません(5項)。

※ 5項の「組合の常務」とは、日常的に反復継続して行われる業務のことで、例えば、農業組合でいえば、農作物の売買や事務作業などです。

※ 1項の「組合の業務」とは、組合が行う借り入れ等です。

イメージとしては、日常業務ついては、組合員は単独で行うことができ、イレギュラーな業務については、組合員の過半数をもって決めるということです。

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

2.組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、AとBだけの合意では決することはできない。

2・・・誤り

●組合において、業務執行者が複数いる場合 → 「組合の業務」は、業務執行者の過半数をもって決定し、執行は業務執行者が単独で行える

組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(670条1項)。そして、組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができます(2項)。2項の委任を受けた者(業務執行者)は、組合の業務を決定し、これを執行します。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行します

よって、組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、2人の合意で決することができます。

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

3.組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得ない事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。

3・・・誤り

●組合の存続期間を定めなかった場合 → 各組合員は、原則、いつでも脱退することができるが、組合に不利な時期に脱退することができない。ただし、やむを得ない事由がある場合は、組合に不利な時期でも脱退することができる。

■組合契約で組合の存続期間を定めなかったときは、各組合員は、原則、いつでも脱退することができるが、組合に不利な時期に脱退することができません。だし、やむを得ない事由がある場合は、組合に不利な時期でも脱退することができます(678条1項) 。つまり、組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、組合員Aは、やむを得ない事由があれば、組合に不利な時期でも脱退できるので誤りです。

■組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができます(2項)。

組合の脱退

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

4.やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退することはできない。

4・・・誤り

●組合:やむを得ない事由があっても任意脱退できない特約 → 無効

問248の解説の通り、組合の脱退のルールでは、組合の存続期間を定めた場合も定めなかった場合も、やむをえない事由があるときは脱退できると規定します。そして、判例では、「やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨」の特約があっても上記ルールは強行法規なので、組合の脱退のルールに反する特約は無効としています。

よって、「やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨」の組合契約がある場合でも、組合員Aは、やむを得ない事由があれば、適任者を推薦しなくても、当該組合を脱退することができます。

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

5.組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求をすることができる。

5・・・正しい

●不法な保存登記をされた場合の抹消登記請求 → 保存行為 → 共有において保存行為は、共有者が単独で行える

各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有(厳密には共有の一種の「合有」)に属します(民法668条)。

そして、各共有者は、単独で保存行為をすることができます(252条)。

そして、組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、当該第三者に対して抹消登記請求をすることは「保存行為」に当たるので、組合員Aは単独で、抹消登記請求をすることができます。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問32|民法

改正民法に対応済

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

ア・・・誤り

●建物賃借人→ 土地の取得時効完成によって、取得時効を援用できない

問題文の状況 

右図の通り、Aは他人地(甲土地)に乙建物を建築して、建物をCに貸しているので、甲土地の占有者です。
一方、Cは、A所有の乙建物を賃借しています。

質問内容

乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。○か×か。

判例 判例では、「土地上の建物の賃借人Cは、賃貸人Aによる敷地所有権の取得時効を援用することができない」としています。

理由 土地上の建物の賃借人Cは、土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから。

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

イ・・正しい

●賃貸借期間中に、その目的物を譲り受けた者 → 登記を備えないと賃貸人の地位の取得を賃借人に対抗できない

問題文の状況 

右図の通り、Aは乙建物を所有しています。また、Aは乙建物をCに賃貸しています。ここで、Aが乙建物をBに売却した。つまり、乙建物の所有者が、AからBに代わったということです。

質問内容

Bは、乙建物についての移転登記をしないときは、

Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。○か×か。

結論 Bは登記を備えていないと、Cに対して賃料を請求できない(賃貸人の地位を主張できない)。

賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転します(民法605条の2)。そして、乙建物の賃貸人たる地位を取得するためには、Bが登記を備える必要があります。つまり、Bが登記を備えることで、Cに対して賃料を請求することができます。

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

ウ・・・誤り

●借地上建物の賃借人 → 地代の弁済をするについて正当な利益を有する → 借地権者に無断で地代の弁済(第三者弁済)ができる

問題文の状況 

右図の通り、AB間で土地の賃貸借契約を締結し、AC間で建物の賃貸借契約を締結しています。

質問内容

Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。○か×か。

結論 借地上の建物賃借人Cは、借地の地代を、借地人Aに無断で弁済できる。

理由 債務の弁済は、第三者もすることができます(民法474条1項)。

そして、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」は、債務者の意思に反して弁済をすることができません(2項)。本問の借地上建物の賃借人Cは、正当な利益を有する第三者なので、2項には当てはまらず、1項のとおり、地代の債務者Aの意思に反して(無断)で、地代を支払うことができます。

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

エ・・・正しい

●借地上の建物の譲渡(+土地賃借権の譲渡) → 地主の承諾が必要

問題文の状況 

右図の通り、AはBから甲土地を借りて、その土地上に乙建物を建築した。

質問内容

Aが当該建物をCに売却する場合、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについて地主Bの承諾を得る必要がある。○か×か。

判例 判例では、「借地上にある建物の売買契約が締結された場合は、特別の事情のない限り、売主Aは、買主Cに対し、その建物の敷地の賃借権をも譲渡したことになるため、その賃借権譲渡につき賃貸人Bの承諾を得る義務を負うことになる」としています。

理由 「土地の賃借権」がなければ、「建物」は存在できません。つまり、「借地上の建物」と「土地の賃借権」はセットです。

よって、「借地上の建物」を譲渡するということは、セットとして、「土地の賃借権」も一緒に譲渡することになります。もし、土地の賃借権の譲渡がないとすれば、建物を購入したCは、地主Bからの建物収去請求・土地明渡請求に対抗できません。

そうならないために、土地の賃借権の譲渡について、地主Bの承諾が必要ということです。

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

オ・・・正しい

●土地の賃貸借を「合意解除」  → 地主Bは、借地上建物の賃借人Cに対抗できない

問題文の状況 

右図の通り、AB間で土地の賃貸借契約を締結し、Aは乙建物を所有しています。また、Aは乙建物をCに賃貸しています。

質問内容

A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

○か×か。

結論 土地の賃貸借を「合意解除」した場合、地主Bは、借地上建物の賃借人Cに対抗できない。つまり、地主Bは「借地上建物賃借人」に対して建物の明渡しを求めることはできません。

理由 「地主B」と「借地上建物賃借人C」との間には直接に契約上の法律関係がないけれど、 AB間で建物所有を目的として土地の賃貸借契約を締結したということは、土地賃貸人Bは、「土地賃借人Aが、その借地上に建物を建築所有して自らこれに居住することばかりでなく、当該建物を賃貸し、建物賃借人Cに敷地(甲土地)を占有使用させること」も当然に予想できるし、かつ認容しているものとみるべきです。

したがって、建物賃借人Cは、当該建物の使用に必要な範囲において、甲土地の使用收益をなす権利を有します。

そのため、AB間で、土地の賃貸借契約期間の満了前に、勝手に契約解除(合意解除)をしても、建物賃借人Cが有する甲土地を使用する権利は、消滅しません。つまり、AB間の合意解除によって、Bは、Cに対抗できません。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問31|民法・契約解除

改正民法に対応済

契約の解除に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

  1. ア・エ
  2. イ・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

ア・・・妥当ではない

債務の全部の履行が不能であるとき、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます(民法542条1項1号)。

よって、「引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない」は妥当ではありません。

イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

イ・・妥当ではない

判例によると、
期間を定めずに催告した場合、相当期間が経過すれば、債権者は改めて催告することなく、解除することができる」としています(大判昭2.2.2)。

よって、「Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない」は妥当ではありません。

ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

ウ・・・妥当

当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してしなければなりません(民法544条1項)。

よって、本肢は妥当です。

エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

エ・・・妥当ではない

判例によると、
「甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡って(さかのぼって)合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかった丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない」としています(最判昭33.6.14)。

つまり、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了していなかったとき、Cは、この土地の所有権を主張することができないです。

よって、本肢は妥当ではありません。

オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

オ・・・妥当

判例によると、
「売買契約に基づき目的物の引渡を受けていた買主Cは、売主Aがその売却した権利をBから取得して買主Cに移転することができず、右契約を解除した場合でも、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主Aに返還しなければならない」としています(最判昭51.2.13)。

したがって、Cは解除に伴う、原状回復義務があります。

よって、Cは、使用利益(Bの車に乗って得た利益)に相当する金額も、返還義務を負います。

上記から、本肢は妥当です。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問30|民法・詐害行為取消請求

改正民法に対応済

詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない。
  2. 相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。
  3. 離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする法律行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。
  4. 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。
  5. 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

1.遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない。

1・・・妥当ではない

●共同相続人の間で成立した「遺産分割協議」は、詐害行為取消権行使の対象となりえる 

具体例 Aは甲土地を有しており、妻Bと子Cがいた。債権者XはBに100万円を貸し付けていた、その後、Aが死亡することにより、BとCが遺産分割協議を行い、甲土地をCが相続することにした。

質問内容 上記遺産分割協議は、詐害行為取消権の対象となるか?

判例 判例では、上記遺産分割協議は詐害行為取消権の対象となる。

>>詐害行為取消請求の解説はこちら

2.相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。

2・・妥当

●「相続放棄」は詐害行為取消権行使の対象とはならない → 理由は、相続放棄は身分行為だから

判例では、「相続の放棄のような身分行為については、詐害行為取消権行使の対象とならない」としています。

「身分行為」とは、他人の干渉を受けるべきでない行為を言います。そのため、第三者が、他人の相続放棄を妨げることはできません。

3.離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする法律行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。

3・・・妥当ではない

●「離婚における財産分与」 → 特段の事情がなければ、詐害行為取消権行使の対象とはならない

●不相当に過大である場合は、特段の事情として詐害行為取消権行使の対象となりえる

判例では、「不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為取消権行使の対象とならない」としています。

「財産分与に仮託してされた財産処分」とは、「財産分与を利用した財産処分」という意味です。

特段の事情の具体例 夫Aと妻Bが婚姻しており、Aが、複数の不動産を所有しており、また、多額の借金を抱えていた。その後、AとBが離婚して、Aが複数の不動産を、財産分与としてBに譲渡した場合、これは、財産分与を利用して、財産を処分したとみなされます。債権者から見れば、上記が不当であることは当然です。そのため詐害行為取消権行使の対象となる可能性があります。

4.詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。

4・・・妥当ではない

●取消債権者が複数いる場合 → 取消債権者の自己の債権額のすべてについて取り消すことができる

債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為(詐害行為)の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができます(民法424条の8)。本問は「総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ」となっているので誤りです。取消債権者は自己の有する債権の全額について、詐害行為を理由として取消しできます。

また、詐害行為の目的が不可分であり、受益者が財産を返還することが困難なときは、債権者は、受益者に対してその価額を償還請求できます(424条の6)。

具体例 債権者Xは、Aに対して1000万円を貸し、債権者Yは、Aに対して9000円を貸していた。そして、債務者Aは、現金2000万円を有しており、この2000万円を、Bに贈与した。その結果、Aは無資力となった。この場合、債権者Xの有する債権額は、1000万円なので、1000万円を限度に、AB間の贈与契約の取り消しが可能です(424条の8)。

もし、債務者Aが現金(可分な目的物)ではなく、2000万円の建物のような不可分な目的物をBに贈与した場合、建物を物理的に分解して、半分だけ返還するとうのは困難です。このような場合、債権者Xは、受益者Bに対して、自己の債権額1000万円を限度に、お金で返還するように請求できます(424条の6)。

5.詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。

5・・・妥当ではない

●詐害行為取消権に基づく返還すべき財産が「金銭・動産」である場合、債権者は、受益者・転得者に対して自己に引き渡すよう求めることができる

債権者は、詐害行為取消請求により「受益者又は転得者」に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が「金銭の支払又は動産の引渡し」を求めるものであるときは、「受益者・転得者」に対してその支払又は引渡しを、自己に対してすることを求めることができます(424条の9)。

具体例 問88の事例で、詐害行為の目的物が「甲土地(不動産)」ではなく「金銭や動産」だった場合、債権者Aは、受益者Cに対して、「直接、私Aに金銭や動産を返還してください!」と請求することができます。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問29|民法

改正民法に対応済

Aが自己所有の事務機器甲(以下、「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。
  2. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。
  3. 本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。
  4. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。
  5. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

1.Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。

1・・・妥当ではない

●先取特権 → 目的物が第三者に引き渡されると行使できなくなる

動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在します(民法321条)。そして、先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができません(民法333条)。

具体例  Aが自己所有の事務機器甲をBに売却した。Bが代金を払わない場合、Aの代金債権を担保(保証)するために、事務機器甲に先取特権が付着します。つまり、Aは、先取特権に基づいて、甲を競売にかけて、その代金からお金を回収することができます。しかし、Bが甲を第三者Cに売却し、引き渡しをしてしまうと、Aは先取特権を行使することができなくなります。これは、第三者Cが悪意であっても、同様に先取特権を行使できません。

理由 動産の先取特権は公示方法がないので、動産取引の安全を図るために、第三者に引き渡した場合は、第三者を保護するルールにしています。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

2.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。

2・・妥当ではない

●同時履行の抗弁権 → 「債権」として扱う → 契約の相手方には主張できるが、契約相手以外の者には主張できない

同時履行の抗弁権は、1つの双務契約から生じた権利であり「債権」として扱います。

■「双務契約」とは、お互いが債務を負担する契約で、例えば、売買契約において、売主は物を引き渡す義務を負い、買主はこれに対し代金支払義務を負うというのも一例です。そして、買主Bが代金を支払わない場合(債務を履行しない場合)、売主Aは、同時履行の抗弁権を主張して、買主に対して物の引き渡しを拒むことができます。そしてこの「同時履行の抗弁権」は「債権」なので、契約の相手方にしか権利を主張できません。買主が別の第三者Cに物を転売して、Aが、第三者Cから、所有権に基づいて引き渡しを求められた場合、Aは同時履行の抗弁権をCに主張することはできません。よって、本問は誤りです。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

3.本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。

3・・・妥当ではない

●所有権留保 → 代金が完済されない場合、契約解除をし、所有権に基づいて第三者に返還請求できる

「所有権留保」とは、引き渡しだけ終えて、代金を全額支払ってもらうまで、所有権は移転させないというものです。つまり、買主は代金を全額弁済すれば所有権を移転してもらえます。そして、もし、買主Bが売主Aに代金を支払わない場合、売主は所有権を留保しているので、契約解除をして、「所有権」に基づいて返還請求ができます。「所有権(物権)」に基づいた返還請求なので、第三者Cにも対抗できます。

ここで問題文の「所有権留保が、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない」とは「所有権留保があっても、Cが甲の所有権取得の妨げにもならない」つまり、「Aは、所有権を留保していても、Cに対抗できない」ことを意味します。よって、本問は誤りです。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

4.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。

4・・・妥当

●留置権 → 物権 → 第三者に対抗できる

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができます(民法295条:留置権)。そして、「留置権」は、物権なので、第三者にも主張できます。そのため、 甲が、AからB、BからCへと売却され、Aが代金を受領していない場合、Aは、甲(物)を引渡していないとき、留置権を主張して、BだけでなくCにも、甲の引き渡しを拒むことができます。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

5.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。

5・・・妥当ではない

●動産の対抗要件=引き渡し 

●契約解除をした場合、原状回復義務を負うが、対抗要件を備えた者の権利を害することはできない 

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、原状回復義務を負います。ただし、第三者の権利を害することはできません(民法545条)。

具体例  Aが自己所有の事務機器甲をBに売却した。Bが代金を払わないことを理由に契約解除をした。その場合、売主Aは、代金を買主Bに返還する義務を負い、一方、買主Bは、売主Aに事務機器甲を返還する義務を負います。これが545条本文の内容です。ただし書きについて、「第三者の権利」とは、「対抗要件を備えた第三者の権利」という意味で、動産の場合、引渡しを受けることで対抗要件を備えます。つまり、BがCに、事務機器甲を転売して、Cが引き渡しを受けているのであれば、Cは、Aに所有権を主張できるが、Cが引渡しを受けていない場合、Cは対抗要件を備えていないので、Aに所有権を主張できません。本問の場合、Aは甲(目的物)を引渡していないので、Aが所有権を主張できます。よって、AはCからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできます。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問28|民法・時効

改正民法に対応済

不動産の取得時効と登記に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。
  2. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。
  3. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない。
  4. 不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。
  5. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後にその不動産を譲り受けて登記をした者に対して、その譲受人が背信的悪意者であるときには、登記がなくても時効取得をもって対抗することができるが、その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:1

【解説】

1.不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。

1・・・妥当

●時効期間満了 → 抵当権を設定される → 再度その後、時効期間が満了 → 時効取得し、抵当権消滅

具体例 A所有の土地をBが占有し、時効期間が満了した。その後、Aが第三者Cからお金を借り、Cのために抵当権を設定した。その後もBは占有を続けて、再度時効期間が満了した。

質問内容 上記の場合、特段の事情がない限り、占有者Bはその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。○か×か。

判例 判例では、「上記において、再度時効期間の経過後に取得時効を授用したときは、「上記占有者Bが上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り」、上記占有者が、上記不動産を時効取得する結果、上記抵当権は消滅する。」としています。

【詳細解説】  ①の時効完成では、登記をしないうちに抵当権を設定されているので、占有者Bは抵当権者に「抵当権を消滅させてください!」と主張することはできません。しかし、その後、②再度時効完成した場合、占有者Bは再度時効取得するので、時効取得前の抵当権者に対して「抵当権を消滅させてください!」と主張することができます!

2.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。

2・・妥当ではない

●時効取得者は、時効完成の第三者に対して、登記がなくても、時効取得を理由に所有権を対抗できる

具体例 A所有の甲地をBが占有していた。Bの取得時効が完成する前に、①Aが甲地を第三者Cに譲渡し、Cが登記を備えた。その後、②Bの取得時効が完成した。

質問内容 時効取得者Bは、取得時効完成前のCに対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。○か×か。

判例 判例では、上記具体例について「時効取得者Bは時効完成前の第三者に対して、登記がなくても、時効取得を主張できとしています。

理由 始めに、A所有の甲地をBが占有し、その後、①AがCに甲地を売却し、(まだBが占有中)、その後、②Bの時効が完成したという流れです。時系列を図にすると下のようになります。(左から右に時間が流れている)

まず、Cが存在しない場合を考えてみましょう!基本的な取得時効の問題です。

Aは所有権を持っているにも関わらず、占有しているBに対して裁判上の請求等の時効の更新行為を行わず、一定期間が過ぎるとBの時効が完成します。そのことにより、は登記を備えていなくても」、時効取得者Bは、Aに時効取得を主張できます。

次に、Cが出現した場合を考えます。

CはAから甲地を譲り受けた時点から、Bに対して時効の更新行為を行える立場にあります。

つまり、CもAと同様の立場にあると考えることができます。したがって、CもAと同様に時効の更新を行うことができます。

しかし、それを怠って、時効の更新を行わなかった結果、Bの時効が完成したら、Bは「Aに対して主張できていた時効取得」をCに対しても主張できます。つまり、時効完成前に所有者が変わっても、占有者に何ら影響を与えないということです。AもCも同じ立場として、ひとくくりとみなすわけです。

まとめると、Bは時効完成前の第三者に対して登記がなくても時効取得を主張できます。

3.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない。

3・・・妥当ではない

①時効完成に第三者が現れた場合、「時効取得者A」と「第三者C」は二重譲渡の対抗関係とみなされるので、登記を備えた方が対抗力を持つ

②そして、第三者が先に登記を備えた後、再度、Aが占有を続けて時効期間が満了すれば、Aは登記なくして時効取得をもってCに対抗できる

具体例 

  • 乙不動産の旧所有者:A
  • 時効完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者(=占有者、時効取得者):B
  • 時効完成後に不動産を譲り受けた者(第三者):C(登記済みなので、図に〇をしています)

とします。

前半部分  ①について、Aを基点に「A→C」「A→B」と二重譲渡の対抗関係になっているので登記を備えた方が勝ちます。したがって、本問の前半部分「不動産を時効により取得した占有者Bは、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者Cに対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない」という記述は正しいです。

 後半部分 ②について、もし、上記において、Cが先に登記を備え、Cが対抗要件を備えたとします。その後もBが占有を続け、時効取得に必要な期間を継続した場合(再度、時効完成した場合)、Bは時効取得するため、登記なくしてCに対抗できます。よって、後半部分は誤りです。

4.不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。

4・・・妥当ではない

●時効取得しようとする者は、時効期間の起算点を任意に選択することはできない

具体例 選択肢2や選択肢3の解説の通り、「時効完成前に第三者が現れた場合、時効取得者は登記なくして第三者に対抗でき」、「時効完成後に第三者が現れた場合は登記をしないと、時効取得者は第三者に対抗できません」。

もし、占有者Bが、1970年にA所有地について占有を開始し、1990年に時効完成するとします。その後、登記を備えず、1995年にAが第三者Cに当該土地を売却し、Cが登記を備えた。この場合、Cは時効完成後の第三者にあたるので、CはBに所有権を主張できます。

質問内容 ここで、占有者Bは、1970年から占有を開始しているのですが、1980年も占有を継続しているので、「1980年を占有開始時」と考えたら、2000年に時効が完成するため、1995年に土地を購入したCは時効完成前の第三者に当たります。このように考えることで、BはCに対して、登記なくして所有権を主張できるか?

判例 判例では、「時効援用をする者は、任意にその起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり、遅らせたりすることはできない」としています。つまり、上記のように、占有開始時の時期を好き勝手選択することはできないということです。

よって、本問の「起算点を自由に選択して取得時効を援用することを妨げない」=「起算点を自由に選択して取得時効を援用することができる」というのは誤りです。

5.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後にその不動産を譲り受けて登記をした者に対して、その譲受人が背信的悪意者であるときには、登記がなくても時効取得をもって対抗することができるが、その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。

5・・・妥当ではない

●時効完成後に不動産を譲り受けた者が背信的悪意者の場合、時効取得者は、登記なくして背信的悪意者に対抗できる

●不動産を譲り受けた者が、取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても、背信的悪意者と認められる場合もある

具体例 

A所有の乙不動産をBが占有し、その後、時効が完成した。
時効完成後、Aが背信的悪意者Cに乙不動産を売却した。

前半部分 上記において、Cが背信的悪意者であるときには、Bは登記がなくても時効取得をもって対抗することができます。よって、前半部分は正しいです。

理由 背信的悪意者は「第三者」として扱わないから。

後半部分 乙不動産の譲受人Cが、背信的悪意者であると認められるためには、Cが当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、「その占有者Bが取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していた」ことを必要である。○か×かという質問です。この点について判例では、「取得時効が成立しているか否かは、容易に認識・判断することができないことから考えると、成立要件すべてを認識していていなくても、背信的悪意者に該当する場合もある」としています。

つまり、「背信的悪意者と認められるために、少なくとも(最低限)、取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことが必要」というのは誤りです。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問27|民法・意思表示

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。

錯誤による意思表示に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 法律行為の要素に関する錯誤というためには、一般取引の通念にかかわりなく、当該表意者のみにとって、法律行為の主要部分につき錯誤がなければ当該意思表示をしなかったであろうということが認められれば足りる。

イ 法律行為の相手方の誤認(人違い)の錯誤については、売買においては法律行為の要素の錯誤となるが、賃貸借や委任においては法律行為の要素の錯誤とはならない。

ウ 動機の錯誤については、表意者が相手方にその動機を意思表示の内容に加えるものとして明示的に表示したときは法律行為の要素の錯誤となるが、動機が黙示的に表示されるにとどまるときは法律行為の要素の錯誤となることはない。

エ 表意者が錯誤による意思表示の無効を主張しないときは、相手方または第三者は無効の主張をすることはできないが、第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めたときは、第三者たる債権者は債務者たる表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することができる。

オ 表意者が錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は、自ら意思表示の無効を主張することができない。この場合には、相手方が、表意者に重大な過失があったことについて主張・立証しなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:-

【解説】

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問35|民法・親族

改正民法に対応済

利益相反行為に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。

イ 親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

ウ 親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。

エ 親権者が、自ら債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。

オ 親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

ア 親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。

ア・・・妥当ではない

●共同相続人である数人の子の代理人として親権者が、遺産分割協議をすることは、利益相反に当たる 

具体例 右図のように、Aが死亡し、BEFの三者が相続人であった。(Cが死亡し、EFが代襲相続する)EFは未成年者であり、EFの母Dが、EFの代わりに遺産分割協議に参加してBとDで遺産分割協議を行った。

判例 上記の場合、Dの行為は利益相反に当たるとしています。

理由 EとFとの間を考えると、利害の対立が生ずるおそれがあるから。Eの相続財産が増えれば、Fの相続財産が減り、逆もあり得ます。そのため、利益相反に当たるとしています。

関連ポイント

親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない(民法826条2項)。

具体 夫が亡くなり相続人が、妻と未成年の子が2人の場合、子にはそれぞれ特別代理人を選任する必要があります。

よって、本肢は妥当ではありません。

イ 親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

イ・・・妥当ではない

●親権者である母が、その子の継父である父の債務を担保するため、子の不動産に抵当権を設定する行為 → 利益相反に当たらない

具体例 右図のように、Dが継父Aにお金を貸し、「Cの親権者(母)B」が、継父Aの債務を担保するためCの土地に抵当権が設定した。

【質問内容】 上記抵当権設定行為は利益相反行為にあたるか?

判例 上記の場合、利益相反行為に当たらない

理由 お金を借りたのはAであり、また、抵当権設定行為もAのためです。つまり、利益を受けているのはAであり、母Bは抵当権設定を行うことで、B自身何の利益も得ていません。つまり、母Bと子Cとの間には利益相反は発生していないから、利益相反には当たりません。

ウ 親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。

ウ・・・妥当ではない

●利益相反行為 → 無権代理として扱う

代理人と本人との利益が相反する行為については、無権代理行為とみなします。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、本人に効果が帰属します(代理行為は有効となる)(108条2項)。

本問をみると、「親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為」となっています。親が自己所有の財産を、子に売却するということは、親はお金を得て、子はお金を支払うという風に利益相反が発生します。高い物でも安い物でも関係ありません。よって、「当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたる」点は正しいです。

そして、利益相反行為は無権代理として扱います。無権代理とは、直ちに無効となるわけではなく、有効でも無効でもない不安定な状態です。子が成年に達した後に追認すれば、有効になりますし、追認拒絶をすれば無効となります。よって「その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である」というのは誤りです。

エ 親権者が、自ら債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。

エ・・・妥当

●親が養育費のためにお金を借り、その担保として、「子が所有する不動産」に抵当権を設定する行為は、利益相反あたる

判例では、養育費にあてる意図であったとしても、親権者自身が金員を借受け、その債務につき「子の所有不動産」に抵当権を設定することは、利益相反行為にあたるとしています。

オ 親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

オ・・・妥当

●第三者の債務について、親が連帯保証人となり、また、親が子を代理して、子も連帯保証人とし、さらに親と子が共有する不動産に抵当権を設定する行為 → 利益相反行為にあたる

具体例 第三者Cには債務があった。この債務について、Aが連帯保証人となった。また、親権者Aが、Bの代理人として、連帯保証契約を締結した。さらに、親権者Aが、Bの代理人となって、AB共有の不動産に債権者のために抵当権を設定した。

質問内容 上記、Bに代理して行ったAの連帯保証契約や抵当権設定行為が

利益相反にあたるか?

判例 上記行為は利益相反に当たるとしています。

理由 連帯保証人が増えることにより、負担部分を超える部分を求償できるようになります。結果として、親権者Aの責任が軽減され、逆に子Bの責任が増えます。そのため、利益相反に当たります。

利益相反行為は、無権代理として扱うので、Bに対して効果は帰属しません。つまり、Bが追認拒絶をすれば、連帯保証人から外れます。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問34|民法・不法行為

改正民法に対応済

生命侵害等に対する近親者の損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできない。
  2. 他人の不法行為により夫が死亡した場合には、その妻は、相続によって夫本人の慰謝料請求権を行使できるので、妻には固有の慰謝料請求権は認められていない。
  3. 他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合には、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできない。
  4. 他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。
  5. 他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をその両親が受けた場合でも、被害者本人は生存しており本人に慰謝料請求権が認められるので、両親には固有の慰謝料請求権は認められていない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

1.他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできない。

1・・・妥当ではない

●即死の場合も損害賠償請求権は発生する
●逸失利益も損害賠償請求できる
 

判例では、「被害者が即死した場合も、「傷害を負った時」と「死亡」との間には時間があるとして、「傷害を負った時」に損害賠償請求権が発生し、その後の死亡により、当該損害賠償請求権が相続される」としました。また、逸失利益も、損害賠償請求できます。そのため、他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできます。

※ 逸失利益(いっしつりえき)」とは、不法行為(交通事故)がなかったら当然に得られるはずだった収入をいう。

2.他人の不法行為により夫が死亡した場合には、その妻は、相続によって夫本人の慰謝料請求権を行使できるので、妻には固有の慰謝料請求権は認められていない。

2・・・妥当ではない

他人を死亡させたり、重い後遺障害を負わせた場合 → 加害者は、近親者に対しても損害賠償しなければならない 

「他人の生命を侵害した者」は、「被害者の父母、配偶者及び子」に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害(例:慰謝料)の賠償をしなければなりません(民法711条)。よって、他人の不法行為により夫が死亡した場合、その妻は、固有の慰謝料請求権は認められます。

※ 「他人の生命を侵害した者」とは、①他人を死亡させた者や、②重い後遺障害を負わせて、被害者に生命を害されたときと同じくらいの精神上の苦痛を与えた者(判例)を指します。

3.他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合には、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできない。

3・・・妥当ではない

●本人が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡 : 慰謝料請求権 → 相続の対象

判例によると、他人の不法行為によって慰謝料請求権を取得した者Aが死亡した場合、当該請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり、「Aの相続人」に当然に相続されるとしています。よって、他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合でも、その妻(相続人)は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできます。

4.他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。

4・・・妥当

●被害者との間に「被害者の父母、配偶者及び子」と同視できる者は、加害者に対して慰謝料請求権できる

「他人の生命を侵害した者」は、「被害者の父母、配偶者及び子」に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害(例:慰謝料)の賠償をしなければなりません(民法711条)。つまり、711条では、慰謝料請求権を行使できるのは、 「被害者の父母、配偶者及び子」と規定しています。ただし、判例では、 「被害者の父母、配偶者及び子」以外の者でも、 「被害者の父母、配偶者及び子」と実質的に同視できる身分関係がある場合、その者も711条を類推適用して、慰謝料請求権を有するとしています。

5.他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をその両親が受けた場合でも、被害者本人は生存しており本人に慰謝料請求権が認められるので、両親には固有の慰謝料請求権は認められていない。

5・・・妥当ではない

●「他人の生命を侵害した者」とは、①他人を死亡させた者や、②重い後遺障害を負わせて、被害者に生命を害されたときと同じくらいの精神上の苦痛を与えた者(判例)を指す

「他人の生命を侵害した者」は、「被害者の父母、配偶者及び子」に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害(例:慰謝料)の賠償をしなければなりません(民法711条)。そして、「他人の生命を侵害した者」とは、①他人を死亡させた者や、②重い後遺障害を負わせて、被害者に生命を害されたときと同じくらいの精神上の苦痛を与えた者(判例)を指します。つまり、他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき(匹敵する)精神上の苦痛をその両親が受けた場合、被害者本人は生存していたとしても、その両親には固有の慰謝料請求権は認められます。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略