民法の過去問

平成27年・2015|問32|民法・債務不履行等

改正民法に対応済

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約(両債務に関する履行期日は同一であり、AがBのもとに電器製品を持参する旨が約されたものとする。以下、「本件売買契約」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

  1. Bが履行期日を過ぎたにもかかわらず売買代金を支払わない場合であっても、Aが電器製品をBのもとに持参していないときは、Aは、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできない。
  2. Aが履行期日に電器製品をBのもとに持参したが、Bが売買代金を準備していなかったため、Aは電器製品を持ち帰った。翌日AがBに対して、電器製品を持参せずに売買代金の支払を求めた場合、Bはこれを拒むことができる。
  3. Bが予め受領を拒んだため、Aは履行期日に電器製品をBのもとに持参せず、その引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告するにとどめた場合、Bは、Aに対して、電器製品の引渡しがないことを理由として履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできない。
  4. 履行期日にAが電器製品を持参したにもかかわらず、Bが売買代金を支払えなかった場合、Aは、相当期間を定めて催告した上でなければ、原則として本件売買契約を解除することができない。
  5. 履行期日になってBが正当な理由なく売買代金の支払をする意思がない旨を明確に示した場合であっても、Aは、電器製品の引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告しなければ、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことができない。

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改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

1.Bが履行期日を過ぎたにもかかわらず売買代金を支払わない場合であっても、Aが電器製品をBのもとに持参していないときは、Aは、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできない。

1・・・正しい

●同時履行の抗弁権を主張できる場合、債務不履行(履行遅滞)にならない

「売主Aの引渡債務」と「買主Bの支払債務」は同時履行の関係にあります。そのため、Aが電化製品をBのもとに持参しないとき(=履行提供しないとき)は、Bは代金の支払いを拒むことができます(民法533条)。

したがって、Bは債務不履行に陥っていないので、Aは、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできません。

よって、正しいです。

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

2.Aが履行期日に電器製品をBのもとに持参したが、Bが売買代金を準備していなかったため、Aは電器製品を持ち帰った。翌日AがBに対して、電器製品を持参せずに売買代金の支払を求めた場合、Bはこれを拒むことができる。

2・・・正しい

●相手方の履行の提供があっても、その提供が継続されないかぎり、同時履行の抗弁権は失わない

判例によると、「相手方の履行の提供があっても、その提供が継続されないかぎり、同時履行の抗弁権は失われない」としています(最判昭34.5.14)。

つまり、Aが一度電器製品をBのもとに持参しているので、Aは履行提供しています。

しかし、翌日Aが、電器製品を持参しなかったので、履行提供が継続されていません。

そのため、Bの同時履行の抗弁権は消滅しないので、Bは売買代金の支払いを拒むことができます。

よって、正しいです。

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

3.Bが予め受領を拒んだため、Aは履行期日に電器製品をBのもとに持参せず、その引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告するにとどめた場合、Bは、Aに対して、電器製品の引渡しがないことを理由として履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできない。

3・・・正しい

●債権者が弁済の受領を拒んでいる場合 → 口頭の提供で、弁済の提供をしたことになる
●弁済の提供の効果 → 債務不履行責任を免れる

弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければなりません。

ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足ります(民法493条)。

本肢の場合、Bが予め受領を拒んだため、Aは、引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告するだけで、弁済の提供をしたことになるので、履行遅滞になりません

よって、履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことはできないので正しいです。

■弁済の提供を行うとどうなるのか?(弁済の提供の効果)

弁済の提供をすると、本人(本問のA)は履行遅滞の責任(遅延損害金等)を免れます。よって、Bは、 Aに対して、電器製品の引渡しがないことを理由として債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償責任を問うことはできないので正しいです。

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

4.履行期日にAが電器製品を持参したにもかかわらず、Bが売買代金を支払えなかった場合、Aは、相当期間を定めて催告した上でなければ、原則として本件売買契約を解除することができない。

4・・・正しい

●催告に解除 → 契約解除するには、原則、相当期間を定めて催告する必要がある

当事者の一方がその債務を履行しない場合、原則、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができます(民法541条本文)。

よって、契約解除するには、原則、催告をする必要があります

したがって、本問は正しいです。

【注意】

ただし、例外としては債務不履行が軽微と認められる場合は、解除できないので、この点は注意しましょう!
また、催告解除の例外として、無催告解除(催告することなく解除)できる場合もあるので、併せて覚えておきましょう!

■催告をしなくても解除(無催告解除)ができる場合

AがBに対して電器製品を売却する旨の売買契約について、

5.履行期日になってBが正当な理由なく売買代金の支払をする意思がない旨を明確に示した場合であっても、Aは、電器製品の引渡しの準備をしたことをBに通知して受領を催告しなければ、Bに対して履行遅滞に基づく損害賠償責任を問うことができない。

5・・・誤り

●相手方が受領拒絶の意思を明確にしたとき → 弁済の提供なく、債務不履行を理由に損害賠償請求できる

「買主Bが正当な理由なく売買代金の支払をする意思がない旨を明確に示した場合」とは、売主Aの電器製品の受領を拒絶していることになります。

判例(最判昭32.6.5)では、受領拒絶の意思を明確にしたときは、債務者(売主A)は口頭の提供をする必要はないとして、Aは弁済の提供をしなくても、Bに対して債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償責任を問うことができるとしています。

【関連ポイント】

買主Bが正当な理由なく売買代金の支払をする意思がない旨を明確に示した場合」とは「代金支払債務の債務者が債務の全部の履行を拒絶している場合」に当たります。そのため、債権者A(売主)は、催告することなく、契約解除をすることも可能です。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問31|民法・代物弁済

改正民法に対応済

代物弁済(担保目的の代物弁済契約によるものは除く。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、土地所有権の移転の効果は、原則として代物弁済契約の意思表示によって生じる。
  2. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、債務消滅の効果は、原則として移転登記の完了時に生じる。
  3. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が占有する時計を引き渡した場合、当該時計が他人から借りた時計であったとしても、債権者が、善意、無過失で、平穏に、かつ、公然と占有を開始したときには、時計の所有権を取得できる。
  4. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する時計を引き渡した場合、その時計に契約内容に適合しない瑕疵があるときでも、債権者は、債務者に対し契約不適合責任を追及することはできない。
  5. 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて手形または小切手を交付した場合、これによって債務消滅の効果が生じるので、それらの不渡りがあっても、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできない。

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改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

1.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、土地所有権の移転の効果は、原則として代物弁済契約の意思表示によって生じる。

1・・・妥当

●代物弁済による所有権移転の効果 → 代物弁済契約の成立時に生ずる(本問)

●代物弁済による債務消滅の効果 → 所有権移転登記手続を完了した時に生ずる

お金を借りたらお金で返すのが筋ですが、民法ではお金以外のモノ(例えば不動産)で弁済しても有効としています。これを「代物弁済」と言います。漢字のとおり「代わりに物で弁済する」ということです。

そして、不動産を用いて代物弁済をした場合、「いつ所有権が移転するのか?」「いつ債務が消滅するのか?(いつ代物弁済が成立するか?)」が問題となります。

いつ所有権が移転するのか? → 原則、当事者間の代物弁済契約の成立した時に、所有権が移転します。よって、本問は正しいです。

いつ債務が消滅するのか?(いつ、代物弁済が成立するか? → 特段の事情のない限り、単に代物弁済契約の意思表示をするだけでは生ぜず、所有権移転登記手続を完了した時に生ずるとしています。

参考知識

「所有権の移転」については、「物権変動」なので「物権」に関する内容です。

一方、「代物弁済による債務消滅」は「債権債務」の話なので「債権」に関する内容です。

つまり、「物権」と「債権」を分けて考えることが重要です。

2.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、債務消滅の効果は、原則として移転登記の完了時に生じる。

2・・・妥当

●代物弁済による所有権移転の効果 → 代物弁済契約の成立時に生ずる

●代物弁済による債務消滅の効果 → 所有権移転登記手続を完了した時に生ずる(本問)

選択肢1の類題です。

いつ債務が消滅するのか?(いつ、代物弁済が成立するか? → 特段の事情のない限り、単に代物弁済契約の意思表示をするだけでは生ぜず、所有権移転登記手続を完了した時に生ずるとしています。

よって、本問は正しいです。

3.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が占有する時計を引き渡した場合、当該時計が他人から借りた時計であったとしても、債権者が、善意、無過失で、平穏に、かつ、公然と占有を開始したときには、時計の所有権を取得できる。

3・・・妥当

●即時取得の要件の一つ : 代物弁済契約も「取引行為」にあたる

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(「即時取得」という)(民法192条)。つまり、即時取得の成立要件をまとめると下表のとおりで、この要件をすべて満たすと、動産を占有した者は、その動産の所有権を取得します。「要件1」について、対象は時計なので動産です。「要件2」について、債務者(前主)は、時計の所有者ではなく他人から借りているだけです。つまり、代物弁済するについて無権利者です。「要件3」について、判例では、代物弁済も取引行為に当たるとしています。「要件4」について、債権者は、占有を開始しています。「要件5」について、債権者は、平穏・公然・善意・無過失です。よって、すべての要件を満たしているので、債権者は、即時に時計の所有権を取得します。

即時取得の要件

4.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する時計を引き渡した場合、その時計に契約内容に適合しない瑕疵があるときでも、債権者は、債務者に対し契約不適合責任を追及することはできない。

4・・・妥当ではない

●代物弁済も契約なので、契約不適合責任が適用される

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、代物弁済の債権者は、「①追完請求」「②代金減額請求」「③損害賠償請求や④契約解除」ができます(民法559、562~564条)。

よって、債権者は、債務者に対し、責任を追及することはできないというのは誤りです。責任追及の内容は①~④です。

>>契約不適合責任の解説はこちら

5.債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて手形または小切手を交付した場合、これによって債務消滅の効果が生じるので、それらの不渡りがあっても、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできない。

5・・・妥当

●手形・小切手の交付 = 代物弁済による債務消滅の効果が生ずる

判例によると、「弁済(支払い)に代えて、手形や小切手を交付した場合、代物弁済したことになる」としており、これによって、債権債務の効力が生じます。したがって、それらの不渡りがあっても(小切手を銀行に持っていってお金をもらえなかったとしても)、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできません。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問30|民法・留置権

改正民法に対応済

留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。
  2. Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。
  3. AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。
  4. Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。
  5. Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

1.Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。

1・・・妥当

●留置権 = 物権 → 債務者以外の者にも対抗できる

他人物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができます(民法295条)。

※ 留置権の成立要件は下表参照

■本問を見ると、建物は、AからB、BからCと売却されているので、「所有権」はCに移っています。しかし、Aはまだ、代金をもらっていないので建物の引き渡しをしていない状況です。つまり、「他人物の占有者=A」です。そして、代金債権は「建物に関して生じた債権」です(上表の成立要件の2参照)。よって、Aは、295条の留置権を持ちます。

留置権は、物権なので、「代金債権の債務者B」だけでなく、Cに対しても主張できます。つまり、Aは、Cから建物引渡請求に対して、「代金を支払ってもらうまで、建物は引渡しません!」と留置権を行使できます。

2.Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。

2・・・妥当ではない

●二重譲渡により、売主が履行不能になったことに基づく損害賠償請求権 → 「目的物に関して生じた債権」に当たらない → 留置権は成立しない

判例によると、不動産の二重譲渡において、「登記を得られなかった者Bが取得した損害賠償請求債権」を担保するために、留置権を行使することはできないとしています。

【理由】 Bの有する損害賠償請求権は、成立要件の2の「目的物(建物)に関して生じた債権」ではありません。Aの債務不履行(履行不能)によって生じた債権です。選択肢1の代金債権は、「建物」が「代金」に価値を替えたもので、

損害賠償請求とは違います。そのため、当該損害賠償請求権では、留置権は成立せず(Bは留置権を行使できない) 、BはCからの明渡請求を拒むことができません。

3.AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。

3・・・妥当

●他人物売買により、売主が履行不能になったことに基づく損害賠償請求権 → 「目的物に関して生じた債権」に当たらない → 留置権は成立しない

判例によると、他人物売買の買主Bは、所有者Cの目的物の返還請求に対し、所有権を移転するはずであった売主Aの債務不履行による損害賠償債権のために、留置権を主張できないとしています。

【理由】 考え方は選択肢2と同じです。Bの有する損害賠償請求権は、

成立要件の2の「目的物(建物)に関して生じた債権」ではありません。

Aの債務不履行によって生じた債権です。

そのため、留置権は成立せず(Bは留置権を行使できない)、BはCからの明渡請求を拒むことができません。

4.Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。

4・・・妥当

●必要費・有益費の償還請求権に基づいて留置できる → 賃貸人への明渡しを拒むことができる

ただし、賃料不払いによる契約解除後に支出した必要費・有益費の場合、償還請求権に基づいて留置できない

「有益費」とは、物件の価値を増加させる費用を指し、例えば、トイレのウォシュレットへの変更に要した費用です。

そして、契約解除前に、賃借人Bが有益費を支払ったにもかかわらず、賃貸人Aが有益費を支払ってくれない場合、賃借人Bは、賃貸借契約が終了しても、留置権に基づいて、建物の明渡しを拒むことができます。つまり、賃借人Bが有益費を支出した場合は、その償還(弁済)を受けるまで留置権により、建物の返還を拒否できます。(ただし、その際、契約終了後の賃料相当額は賃貸人Aに支払う必要はあります。)

一方、賃料不払いを理由に契約解除となった後に支出した有益費については、留置権は成立せず、建物の明け渡しを拒むことはできません(判例)。

【理由】 賃料不払いを理由として契約解除となった後は、 建物の占有が不法行為によって始まったことになります。

つまり、選択肢1の「留置権の成立要件の4」を満たさないので、留置権は成立しない。

※ 必要費とは、建物を保存する費用のことで、例えば、雨漏りの修理費用などです。

5.Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。

5・・・妥当

建物明渡債務と敷金返還債務とは、同時履行の関係にない

賃借人の建物明渡債務の履行が先 → その後に、賃貸人は敷金を返還すればよい

【判例と理由】 判例によると、「賃借人の建物の明渡し」と「賃貸人の敷金返還」は、 「賃借人の建物の明渡し」が先で、その後に「賃貸人は敷金を返還すればよい」としています。つまり、「建物明渡債務」と「敷金返還債務」とは、同時履行の関係にありません。上記理由から、賃借人Bは、留置権を行使することはできません。

【別の考え方】

また、上記に付随した考え方として、敷金返還請求権は、建物の明渡し後に発生するものなので、明渡し前は、敷金返還請求権は発生していないので、敷金返還請求権に基づいて建物を留置することはできない


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問29|民法・相隣関係

改正民法に対応済

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関する記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、次の各場合において、別段の慣習は存在しないものとする。

  1. Aは、境界線から1メートル未満の距離(注)において乙土地を見通すことができる窓または縁側(ベランダも含む)を設けることができるが、その場合には、目隠しを付さなければならない。
  2. 甲土地に所在するAの竹木の枝が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、原則、自らその枝を切除することができる。(改)
  3. 甲土地に所在するAの竹木の根が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、その根を切除することはできず、Aにその根を切除させなければならない。
  4. AおよびBが甲土地および乙土地を所有する前から甲土地と乙土地の境界に設けられていた障壁は、AとBの共有に属するものと推定されるが、その保存の費用は、A・B間に別段の約定がない限り、AとBが、甲土地と乙土地の面積の割合に応じて負担する。
  5. 甲土地内のAの建物の屋根から雨水が直接に乙土地に注がれる場合に、Bは、その雨水が注がれることを受忍しなければならない。

(注)その距離は、窓または縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

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改正民法に対応済
【答え】:1

【解説】

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

1.Aは、境界線から1メートル未満の距離(注)において乙土地を見通すことができる窓または縁側(ベランダも含む)を設けることができるが、その場合には、目隠しを付さなければならない。

1・・・正しい

●境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける → 目隠しが必要

境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む)を設ける者は、目隠しを付けなければなりません(民法235条)。

【具体例】 目隠しとは、例えば、開閉できない窓であれば曇りガラスにしたりすることが挙げられます。

境界線近くに建物を建てられて、隣の家から覗かれてしまうのは、気分が良くありません。そのための最低限のルールです。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

2.甲土地に所在するAの竹木の枝が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、原則、自らその枝を切除することができる。(改)

2・・・誤り

●隣地から入り込んだ、隣地の竹木の「枝」は、原則、勝手に切ることができない

土地の所有者は、隣地の竹木の「枝」が境界線を越えてきたときは、その竹木の所有者(隣人)に、その枝を切除させることができます。他人所有の「枝」を、無断で切り取ることはできません(民法233条1項) 例外として、下記1~3に該当する場合は、自ら、隣地から伸びてきた枝を切ることができます。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

3.甲土地に所在するAの竹木の根が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、その根を切除することはできず、Aにその根を切除させなければならない。

3・・・誤り

●隣地から入り込んだ、隣地の竹木の「根」は、勝手に切ることができる

土地の所有者は、隣地の竹木の「根」が境界線を越えてきたときは、その根を、勝手に切り取って処分することができます(民法233条2項) 。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

4.AおよびBが甲土地および乙土地を所有する前から甲土地と乙土地の境界に設けられていた障壁は、AとBの共有に属するものと推定されるが、その保存の費用は、A・B間に別段の約定がない限り、AとBが、甲土地と乙土地の面積の割合に応じて負担する。

4・・・誤り

●障壁・境界標は共同で設置することができ、負担額は折半(半分ずつ)

土地の所有者は、隣地の所有者と共同して、障壁や境界標を設けることができます。そして、設置費用や保存費用(維持管理費用)は、折半です(民法226条)。

※境界標とは、境界がどこかを表すために境界上に埋められるプレートなどです。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

5.甲土地内のAの建物の屋根から雨水が直接に乙土地に注がれる場合に、Bは、その雨水が注がれることを受忍しなければならない。

5・・・誤り

●直接に雨水を隣地に注ぐ屋根 → ダメ!

土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはなりません(民法218条)

右図では、A所有の建物の屋根を見ると、雨が降ると、直接隣地(乙土地)に流れ込んでしまいます。Aは、このような建物を建ててはいけません。

つまり、Bは、雨水が注がれることを受忍(我慢)する必要はありません。

※ ちなみに、隣地所有者Bは、Aに対して、雨どいなどの防止設備の設置の請求ができ、また損害があれば損害賠償請求もできます。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問28|民法・意思表示

改正民法に対応済

心裡留保および虚偽表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。
  2. 財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。
  3. 土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。
  4. 仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。
  5. 金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済【答え】:5

【解説】

1.養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。

1・・・妥当ではない

●当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合 → 養子縁組は無効

養子縁組が無効となるのは、①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき、②当事者が縁組の届出をしないときです(民法802条)。そして、判例では、真に養親子関係の設定を欲する効果意思がない場合(つまり、養親子関係を設定する気持ちがない場合)には、①に該当するとして、無効であるとしています。

よって、「相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたとき」も、その養子縁組は無効です。

2.財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。
2・・・妥当ではない

●虚偽表示 → 当事者間では無効
●出捐の意思がないにも関わらず、出捐を仮装して財団法人を設立 → 虚偽表示のルールが適用され、設立の意思表示は無効

出捐者(しゅつえんしゃ)とは、金銭や品物を寄付する者です。そして、財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員が通謀して(グルになって)、出捐者が出捐(寄付)の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐(寄付)を仮装して虚偽の意思表示を行った場合、(通謀)虚偽表示のルールが適用されます。

よって、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であっても虚偽表示にあたり、財団法人の設立の意思表示は無効です。

3.土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。

3・・・妥当ではない

●「土地」の仮装譲渡について、「建物」の賃借人は、法律上の利害関係人ではないので、「第三者」には当たらない
●虚偽表示の第三者に当たらない → 虚偽表示は無効

問題文の状況は上図の通りです。分かりやすいように
「土地の仮装譲渡人A」「土地の仮装譲受人をB(建物賃貸人)」「建物賃借人をC」としています。

ここで、建物賃借人CがAB間の仮装譲渡における第三者に当たるのかを考えます。

もし、第三者に当たれば、Cが仮装譲渡について善意のとき、Cは保護され、土地の仮装譲渡人Aは、Cに対して、建物からの退去および土地の明渡しを求めることができないです。

【判例と理由】 判例では、「第三者」とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいうとしています。ここで、「表示の目的」とは「土地」を指しています。今回建物賃借人Cはあくまでも「建物」を借りているだけにすぎず、「土地」は借りていません。よって、「表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者」とは言えないので、土地の仮装譲渡の第三者には当たらないとしています。

したがって、虚偽表示は当事者間では無効なので、Aは、AB間の①仮装譲渡の無効を主張し、Cに対して、建物からの退去および土地の明渡しを求めることができます。

また、判決の理由についても解説します!

4.仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。
4・・・妥当ではない

●虚偽表示おける 「第三者」とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいう
●仮装債権の譲受人=第三者にあたる
●虚偽表示 : 善意の第三者は保護される

判例では、仮装譲渡されたことが原因で発生した「売買代金債権(仮装債権)」の譲受人(上図のC)は、①仮装譲渡の第三者に当たるとしているので、Cが善意であれば、Cは保護されCは、「代金債権の債務者B」に対して、代金の支払いを求めることができます。

5.金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。

5・・・妥当

●仮装債権の譲受人=第三者にあたる
●虚偽表示 : 善意の第三者は保護される

考え方は選択肢4と同じです。

①金銭消費貸借契約が仮装され、Aは「ウソの貸金債権(仮装債権)」を有します。それを、Cに債権譲渡した場合、Cは①の虚偽表示の第三者に当たります。

よって、Cは善意であれば保護され、Cは借主Bに対して貸金の返済を請求できます。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問27|民法・制限行為能力者

改正民法に対応済

制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 家庭裁判所が後見開始の審判をするときには、成年被後見人に成年後見人を付するとともに、成年後見人の事務を監督する成年後見監督人を選任しなければならない。

イ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定められている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があったときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。

ウ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければならない。

エ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審判を取り消さなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

ア 家庭裁判所が後見開始の審判をするときには、成年被後見人に成年後見人を付するとともに、成年後見人の事務を監督する成年後見監督人を選任しなければならない。

ア・・・誤り

●後見監督人 → 家庭裁判所は必要があると認めるときに選任できる
●必ずしも後見監督人が選任されるわけではない

「後見監督人」とは、①後見人の事務を監督したり、②後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求したり、③急迫の事情がある場合に、必要な処分をしたり、④後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表したりする者です(民法851条)。簡単に言えば、後見人を監督する者です。つまり、被後見人を後見人が保護者として見守り、後見人を後見監督人が監督するということです。

そして、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、「被後見人、その親族若しくは後見人の請求」により又は「職権」で、後見監督人を選任することができます(民法849条)。つまり、必ず後見監督人が必要というわけではありません。必要に応じて家庭裁判所が「請求」または「職権」で選任します。

【具体例】 通常、弁護士などが後見人の場合は、後見監督人までは不要ですが、専門家ではない方が後見人の場合は、後見監督人を選任したりします。

イ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定められている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があったときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。

イ・・・誤り

●被保佐人が「一定の重要な財産上の行為」を行う場合、保佐人の同意が必要

●「一定の重要な財産上の行為」以外でも、家庭裁判所は、請求により、保佐人の同意を得なければならない旨の審判ができる

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」である者で、家庭裁判所が保佐開始の審判をしたものです(民法11条)。そして、被保佐人は、原則、単独有効に契約することができます。ただし、「一定の重要な財産上の行為」については、保佐人の同意を得なければ行うことができません(13条)。(下表参照)

また、 「一定の重要な財産上の行為」以外でも家庭裁判所は、本人、配偶者、後見人等の請求により、保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、被保佐人よりも症状の重い成年被後見人でも単独で行える行為なので、同意権付与の審判はできません(13条2項) 。

よって、「被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない」=「同意の必要な範囲を増やすことができない」というのは誤りです。

ウ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければならない。

ウ・・・正しい

●本人以外の者の請求によって代理権付与の審判をするには、本人の同意必要

被保佐人は、軽い認知症の方のイメージで、「一定の重要な財産上の行為」以外の多くの行為を単独で行うことができます。そのため、保佐人に代理権まで与える必要はありません。ただし、場合によっては保佐人に代理権を与える必要があるので、その場合、家庭裁判所は、保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(民法876条の4第1項)。そして、本人以外の者の請求によって上記代理権付与の審判をするには、本人の同意がなければなりません(民法876条の4第2項)。これは本人の意思を尊重するためです。

エ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

エ・・・正しい

●被補助人 → 事理弁識能力が不十分な者 かつ 補助開始の審判を受けた者
●「本人以外の者からの請求」により補助開始の審判をする場合、本人の同意が必要

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「不十分である者」で、家庭裁判所が、「本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官」の請求により、補助開始の審判をした者です(民法15条)。イメージとしては、保佐人よりも認知症の症状が軽い方です。そして、「本人以外の者の請求」により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければなりません(2項)。

【理由】 被補助人になりえる方は、ある程度自分自身で物事の判断ができるので、本人の意思を尊重するために、本人の同意が必要としています。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審判を取り消さなければならない。

オ・・・誤り

●別の審判を行う場合、前の審判の取消しが必要

被保佐人・被補助人が被後見人となるには、「保佐開始又は補助開始の審判」の取消しが必要で

成年被後見人が被保佐人にとなるには、「後見開始の審判」の取消しが必要です(民法19条)。

【理由】 複数の制度を重複させないためです。もし、重複していたら、成年被後見人なのか、被保佐人なのか、被補助人なのか分からなくなり、法律の適用ができなくなるからです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問35|民法・養子

改正民法に対応済

養子に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 家庭裁判所の審判により後見に付されているAは、認知をするには後見人の同意が必要であるが、養子縁組をするには後見人の同意は必要でない。
  2. 16歳のBを養子とする場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要であるが、この場合には、Bの法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならない。
  3. C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。
  4. F(70歳)およびG(55歳)は夫婦であったところ、子がいないことからFの弟であるH(58歳)を養子とした場合に、この養子縁組の効力は無効である。
  5. Ⅰ・J夫婦が、K・L夫婦の子M(16歳)を養子とする旨の縁組をし、その届出が完了した場合、MとK・L夫婦との実親子関係は終了する。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:3

【解説】

1.家庭裁判所の審判により後見に付されているAは、認知をするには後見人の同意が必要であるが、養子縁組をするには後見人の同意は必要でない。

1・・・誤り

●「父母が未成年者や成年被後見人」の場合、法定代理人の同意なく認知できる
●成年被後見人が養子縁組 → 成年後見人の同意は不要

認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意は不要です(民法780条)。よって、この点が誤りです。

【具体例】 婚姻関係にないBとの間に、Aが子Cを出産した場合、父Bが未成年者であったとしても、Bの法定代理人の同意なく、Cを認知することができます。

また、成年被後見人が婚姻や養子縁組をするとき、その成年後見人の同意は不要です(738条、799条)。

【関連ポイント】 後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法794条)。

2.16歳のBを養子とする場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要であるが、この場合には、Bの法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならない。

2・・・誤り

●未成年者を養子とするには、原則、「家庭裁判所の許可」が必要

養子縁組は当事者の合意により行えます。そして、未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。ただし、「自己又は配偶者の直系卑属(子や孫)」を養子とする場合は、家庭裁判所の許可は不要です(民法798条)。

【関連ポイント】 養子となる者が15歳未満の場合、法定代理人が、養子となる者の代わりに養子縁組の承諾をすることができます(代諾養子縁組、797条)。一方。養子となる者が15歳以上の場合には、単独で養子縁組の承諾をすることができます。よって、Bの法定代理人の承諾は不要なので、誤りです。

3.C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。

3・・・正しい

●婚姻している者が養親となる場合、又は、養子になる場合には、原則、自分の配偶者の同意を得る必要がある

配偶者のある者が縁組をするには、原則、その配偶者の同意を得なければなりません(民法796条) 。分かりやすく言えば、婚姻している者が養親となる場合、又は、養子になる場合には、自分の配偶者の同意を得る必要があるということです。

【理由】 配偶者が知らない間に相続関係に影響が出ると配偶者は困るから。

ただし、上記原則には例外があり、「①配偶者とともに縁組をする場合(養親又は養子となる場合)」又は「②配偶者が病気や行方不明等の理由で同意の意思表示ができない場合」は、配偶者の同意は不要です。

【注意】 本問は「Cが、成年者Eを自己のみの養子とするとき」と書いてあるので、①には当たりません。①は、CとDがともに成年者Eを養子とする場合です。

4.F(70歳)およびG(55歳)は夫婦であったところ、子がいないことからFの弟であるH(58歳)を養子とした場合に、この養子縁組の効力は無効である。

4・・・誤り

●尊属又は年長者を養子とした場合 → 有効だが、裁判所に対して取消しの請求ができる

「尊属(父母や祖父母)」又は「年長者(自分より年齢が上の者)」を養子とすることができません(民法793条)。つまり、「55歳のG」は「58歳のH」を養子にすることはできません。このルールに違反して縁組を行った場合(例えば、年長者を養子とした場合)、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができます(805条)。よって、年長者を養子とする縁組は取消しされるまでは有効です。違反しているから直ちに、無効とはなりません。よって、本問は誤りです。

【関連ポイント】 養子縁組が無効となるのは、①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき、②当事者が縁組の届出をしないときです。

5.Ⅰ・J夫婦が、K・L夫婦の子M(16歳)を養子とする旨の縁組をし、その届出が完了した場合、MとK・L夫婦との実親子関係は終了する。

5・・・誤り

●特別養子縁組の場合、「養子」と「実の父母」との親族関係は終了
●普通養子縁組の場合、 「養子」と「実の父母」との親族関係は終了しない
●特別養子縁組の要件 : 養子となる者の年齢は「原則、15歳未満」、例外として「15歳に達する前から養親となる者に監護されている場合は18歳未満」

養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します(809条)。つまり、養子も実子と同じ扱いになります(法定相続分も実子と同じ)。そして、特別養子縁組の場合、「養子」と「実の父母」との親族関係は終了します。一方、普通養子縁組の場合、 「養子」と「実の父母」との親族関係は終了しません

そして、特別養子縁組の場合、養子となる者の年齢は「原則、15歳未満」です。本問を見ると16歳のMを養子にしているので、特別養子縁組はできません。よって、普通養子縁組です。したがって、「養子M」と「実の父母(K・L)」との親族関係は終了しません。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問34|民法・不法行為

改正民法に対応済

不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 使用者Aが、その事業の執行につき行った被用者Bの加害行為について、Cに対して使用者責任に基づき損害賠償金の全額を支払った場合には、AはBに対してその全額を求償することができる。

イ Dの飼育する猛犬がE社製の飼育檻から逃げ出して通行人Fに噛みつき怪我を負わせる事故が生じた場合において、Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったとしても、犬が逃げ出した原因がE社製の飼育檻の強度不足にあることを証明したときは、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができる。

ウ Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Ⅰの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはⅠに対して求償することができる。

エ 運送業者Jの従業員Kが業務として運転するトラックとLの運転する自家用車が双方の過失により衝突して、通行人Mを受傷させ損害を与えた場合において、LがMに対して損害の全額を賠償したときは、Lは、Kがその過失割合に応じて負担すべき部分について、Jに対して求償することができる。

オ タクシー会社Nの従業員Oが乗客Pを乗せて移動中に、Qの運転する自家用車と双方の過失により衝突して、Pを受傷させ損害を与えた場合において、NがPに対して損害の全額を賠償したときは、NはOに対して求償することはできるが、Qに求償することはできない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

ア 使用者Aが、その事業の執行につき行った被用者Bの加害行為について、Cに対して使用者責任に基づき損害賠償金の全額を支払った場合には、AはBに対してその全額を求償することができる。

ア・・・誤り

●使用者が賠償した場合、損害の公平な分担という見地から信義則上「相当と認められる限度」で従業員に求償できる

使用者Aが被害者Cに損害賠償金を支払った場合(=Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合)、使用者Aは被用者B(加害者)に対して求償することができますが、使用者が被用者に無制限に求償することはできず、判例では、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、使用者Aは被用者Bに対して求償することができるとしています。

※ 「相当と認められる限度」のイメージとしては、使用者Aの管理がしっかりしていないことで不法行為(例えば、過失による事故)が生じた場合は、従業員Bに対して求償できる金額は小さくなり、逆に従業員個人Bの責任が大きい場合は、従業員Bに対して求償できる額は大きくなるといった感じです。

【関連ポイント】

もし、被用者Bが賠償した場合、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、被用者Bは、使用者Aに対して求償することができる(賠償した者が使用者Aであっても被用者Bであっても、考え方は同じということ)

イ Dの飼育する猛犬がE社製の飼育檻から逃げ出して通行人Fに噛みつき怪我を負わせる事故が生じた場合において、Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったとしても、犬が逃げ出した原因がE社製の飼育檻の強度不足にあることを証明したときは、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができる。

イ・・・誤り

●動物が他人に損害を加えた → 動物の占有者は原則、賠償責任を負う
例外として、相当の注意をもってその管理をしたときは責任を免れる

状況としては、「猛犬の飼い主D」「檻の製造業者E」「猛犬に噛まれた被害者F」です。

動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、賠償責任を負いません(民法718条)。本問を見ると「Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかった」となっているので、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができません。

飼育檻の強度不足にあることを証明したときでも、飼い主Dが相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったら、Dは損害賠償責任を負います。

ウ Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Ⅰの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはⅠに対して求償することができる。

ウ・・・正しい

●工作物責任 → ①占有者が責任を負う → 占有者が必要な注意をしていた場合、②所有者が責任を負う

損害の原因が他の者にあれば、賠償した者は、その者に求償できる

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その「工作物の占有者」は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負います。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません(民法717条1項)。そして、この1項の規定は、竹木の栽植(植えること)又は支持に瑕疵がある場合についても準用します(2項)。1項2項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができます(3項)。

本問を見ると、 G所有の樹木が倒れて通行人Hに損害を負わせています。別に占有者がいる旨の記載はなく、 所有者GがHに損害を賠償しています。さらに、植栽工事を担当した請負業者 I の作業に瑕疵があったということなので、賠償したGは、請負業者 I に求償できます。

エ 運送業者Jの従業員Kが業務として運転するトラックとLの運転する自家用車が双方の過失により衝突して、通行人Mを受傷させ損害を与えた場合において、LがMに対して損害の全額を賠償したときは、Lは、Kがその過失割合に応じて負担すべき部分について、Jに対して求償することができる。

エ・・・正しい

●共同不法行為 → 「自己の負担部分を超えて」賠償した場合、その超える部分に対し、他の使用者J・他の共同不法行為者Kに対し求償することができる

判例によると、「被用者Kがその使用者Jの事業の執行につき第三者Lとの共同の不法行為により他人Mに損害を加えた場合において、当該第三者Lが自己Lと被用者Kとの過失割合に従って定められるべき自己Lの負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、当該第三者Lは、被用者Kの負担部分について使用者Jに対し求償することができるものと解するのが相当である」としています(最判昭和63年7月1日)。

ここで、Lが全額賠償をした場合、KとLの過失割合に従って、Lは、KおよびJに求償できます。よって、本問は正しいです。

オ タクシー会社Nの従業員Oが乗客Pを乗せて移動中に、Qの運転する自家用車と双方の過失により衝突して、Pを受傷させ損害を与えた場合において、NがPに対して損害の全額を賠償したときは、NはOに対して求償することはできるが、Qに求償することはできない。

オ・・・誤り

●使用者Nは、他の加害者Qに対して求償権を行使することができ、Qの負担部分は、OとQとの過失割合による
●使用者責任において、賠償した使用者は、被用者に対して、信義則上相当と認められる限度において求償できる

判例によると、「共同不法行為者たる被用者O及び使用者N、そして他の共同不法行為者Qは、被害者Pに対して、各自、被害者Pが蒙った全損害を賠賞する義務を負うものというべきであり、また、当該債務の弁済をした使用者Nは、他の共同不法行為者Qに対し、他の共同不法行為者Qと被用者Oとの過失の割合にしたがって定められるべき他の共同不法行為者Qの負担部分について求償権を行使することができるものと解する」としています(最判昭41.11.18)。

【具体例】

被害額100万円、OとQの過失割合が3:7だったとします。この場合、OとNの負担部分は30万円、Qの負担部分は70万円です。ここで、使用者Nが100万円を弁済した場合、NはQに対して70万円を求償できます。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問33|民法・債務不履行

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。解かなくても大丈夫です。

債務不履行責任に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 不確定期限がある債務については、その期限が到来した時ではなく、債務者が履行期の到来を知った時から履行遅滞になる。
  2. 債務者が自己の債務を履行しない場合、その債務不履行につき帰責事由がないことを債務者の側において立証することができなければ、債務者は債務不履行責任を免れることができない。
  3. 賃借人が賃貸人の承諾を得て賃貸不動産を転貸したが、転借人の過失により同不動産を損傷させた場合、賃借人は転借人の選任および監督について過失がなければ、賃貸人に対して債務不履行責任を負わない。
  4. 受寄者が寄託者の承諾を得て寄託物を第三者に保管させたが、当該第三者の過失により寄託物を損傷させた場合、受寄者は当該第三者の選任および監督について過失がなければ、寄託者に対して債務不履行責任を負わない。
  5. 特別の事情によって生じた損害につき、債務者が契約締結時においてその事情を予見できなかったとしても、債務不履行時までに予見可能であったと認められるときは、債務者はこれを賠償しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:-

【解説】

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問32|民法・債権者代位権・詐害行為取消請求

改正民法に対応済

債権者代位権または詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。
  2. 債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。
  3. 債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。
  4. 甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。
  5. 詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

1.債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。

1・・・誤り

●債権者代位権の要件の一つ : 債権の弁済期が到来していること
ただし、保存行為については、弁済期が到来していなくても行える

●債権者代位権 :裁判外で行える(裁判所の許可は不要

債権者代位権とは、債権者が債務者の代わりに権利行使することを言います。

【具体例】 売主Aが建物を所有しており、未登記だったとします。
この建物を買主BがAから購入した。
この場合、AからBへ所有権移転登記をしないと、Bは対抗要件を備えることができません。

しかし、建物が未登記(保存登記がされていない)の場合、所有権移転登記ができません。

この場合、買主Bは、売主Aに代わって、Aの保存登記を行うことができます。

流れとしては、①A名義の保存登記(これを、Bが、Aの代わりに行う=債権者代位権を行使する)、その後②AからBへの移転登記を行う流れです。

債権者Bは、Aに対して「移転登記請求権」を持っており、これを保全するために、債務者Aの有する「保存登記をする権利」を代わりに行使するということです。

そして、今回の「BがAの代わりに保存登記を行うこと」は、「保存行為」に当たります。そのため、弁済期が到来していなくても行うことができます。また、債権者代位権は裁判所の許可も不要です(裁判外で行える)。

2.債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。

2・・・正しい

●債権者代位権 : 物権的請求権だけでなく形成権についてもの代位行使できる

【物権的請求権の具体例】 Aが、BにA所有の建物を賃貸した。当該建物に不法占拠者がいた場合、Aが有する「所有権に基づく妨害排除請求権」を賃借人Bが代わりに行使することができます。この妨害排除請求権は所有権という物権に基づく請求権です。

【形成権の具体例】 形成権とは、権利者の一方的な意思表示によって一定の法律関係を発生させることのできる権利を言います。例えば、取消権や解除権です。CがDに対して100万円を貸していた。Cは「貸金債権」を持つ。Dは、E生命保険会社と保険の契約をしてした。その後、Dが無資力となった場合、Cは「貸金債権」を保全するために、Dの有する保険契約の解除権を行使することができる。(Cは、解約返戻金から100万円を回収する)

3.債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。

3・・・誤り

●債権者代位権 : 債権者が自己の権利として行使する / 債務者の代理人として行使するのではない

債権者代位権は、債権者の有する権利です。債権者は「債務者の権利」を代わりに行使していますが、これは債務者の代理人という立場で権利行使しているのではなく、債権者の自己の権利として行使しています。よって、本問は誤りです。

4.甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。

4・・・誤り

●債務者が処分(譲渡)することにより無資力となった場合には、債権者はその処分行為を詐害行為として取り消すことができる

【問題文の状況】 Aは、BとCの二者に甲不動産を譲渡しています。

そして、Cが先に登記を備えているので、Cは対抗要件を備えます。

一方、Bは購入したため、Aに対して「引渡請求権」を持ちます。

そして、Cへの譲渡(例えば贈与)により、Aが無資力となった。

【前提知識】 詐害行為取消権における被保全債権は、原則、金銭債権でなければなりません。

【判例】 今回は「引渡請求権」なので、金銭債権ではないです。しかし、Aが引渡しができないことにより、損害賠償請求権という金銭債権に代わることから、AからCへの譲渡を詐害行為として、詐害行為取消権を行使できるとしています。

つまり、Bは、AC間の譲渡を詐害行為として譲渡契約を取消すことができます。

5.詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。

5・・・誤り

●詐害行為取消権における、「受益者の善意」は受益者が立証責任を負い、「転得者の悪意」は債権者が立証責任を負う

【前提知識と具体例】

①AはBに100万円を貸した(Aは貸金債権を有している)。その後、弁済期が到来したにも関わらず、BはAに100万円を弁済しなかった。Bは唯一の財産である2000万円の甲地を有していたが、そのまま所有し続けると、Aに差し押さえられてしまうので、②Bは甲地をCに売却した。この状況で、Aを債権者、Bを債務者、Cを受益者と呼びます。

※受益者は、「詐害行為によって利益を受けた者」という言い方もします。

ここで、AがBに100万円を貸したのは、Bが甲地を所有しており、万一返せなくても、この土地を差し押さえて、返してもらおうと期待できたからでしょう。

それにも関わらず、Bが甲地を売却してしまったら、Aは甲地を差し押さえて、100万円を回収するという事ができなくなってしまいます。それではAの利益を害するし、またBは明らかにAを害するためにこのような行為をしているわけなので、Bを保護する必要性は低いです。

※Aは貸金債権を保全したい:回収できるようにしたい→貸金債権を「被保全債権」と呼ぶ

そこで、民法では、債務者BがAを害することを知ってした行為(Cへの売却)について、債権者Aは、取り消すことができるとしています。これが「詐害行為取消権」です。具体的には、③債権者Aが裁判所に、詐害行為取消請求の訴えをし、④訴えが認められれば、取消判決となり、BC間の売買契約は取り消されます。

この「債務者BがAを害することを知ってした行為」を「詐害行為」と言います。

ただし、例外として、詐害行為について受益者Cが知らなかった場合(善意)、債権者Aは詐害行為取消権を行使できません。そして、詐害行為(BC間の売買契約)が取消された場合、受益者Cは、反対給付(Bに支払った代金)の返還を請求することができます。

【判例】

上記受益者(もし、受益者が、さらに別の者に転売していた場合は転得者)が善意か悪意かは、受益者や転得者が立証責任を負います。つまり、受益者・転得者が善意を立証すれば、受益者・転得者が保護されます(Aは取消しできない)。

【理解】

原則として、立証責任は「権利を主張する側」にあります。

①債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。
ただし、その行為によって利益を受けた者(受益者)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。(民法424条)

ただし書きの部分から、「受益者が、債権者を害すべき事実を知らなかったときは、詐害行為取消権は行使できない」ということなので、「権利を主張する側」は「受益者」です。
したがって、「受益者が、債権者を害すべき事実を知らなかった」ことは、受益者が立証責任を負います。

一方
②転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき、債権者は、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる(民法424条の5)。

詐害行為取消請求を主張するのは、債権者です。したがって、「転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていた」ことについては、「債権者」が立証責任を負います。

よって、①の受益者に関する部分が誤りです。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略