行政法の過去問

平成27年・2015|問14|行政不服審査法

行政不服審査法に基づく審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、または審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する。
  2. 不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請を認める処分をすべき旨を命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。
  3. 処分についての審査請求に理由があり、審査庁が裁決で当該処分の変更を命ずることができる場合において、公の利益に著しい障害が生じることを防ぐため必要があると認めるときは、審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる。
  4. 事実上の行為についての審査請求に理由がある場合、上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨宣言するとともに、当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる(改)。
  5. 処分についての審査請求の裁決には、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様の事情裁決の制度があるが、事情裁決が行われるのは、処分が違法である場合に限られ、処分が不当である場合には行われない。

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【答え】:4

【解説】

1.処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、または審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する。
1・・・誤り
処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下します(行政不服審査法45条1項)。
一方、
処分についての審査請求に理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却します(同条2項)。よって、「審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する」が誤りです!

2.不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請を認める処分をすべき旨を命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。
2・・・誤り
不作為についての審査請求に理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言します。
この場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとります(行政不服審査法49条3項)。

  1. 不作為庁の上級行政庁である審査庁 → 当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。
  2. 不作為庁である審査庁 → 当該処分をすること。
3.処分についての審査請求に理由があり、審査庁が裁決で当該処分の変更を命ずることができる場合において、公の利益に著しい障害が生じることを防ぐため必要があると認めるときは、審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる。
3・・・誤り
処分についての審査請求があった場合に、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできません:不利益変更の禁止(行政不服審査法48条)。
よって、本肢は「審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる」が誤りです。

4.事実上の行為についての審査請求に理由がある場合、上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨宣言するとともに、当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる(改)。
4・・・正しい
事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、原則として、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、次の各号に掲げる審査庁の区分に応じ、当該各号に定める措置をとります(行政不服審査法47条)。

  1. 処分庁以外の審査庁(上級行政庁である審査庁等) → 当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること。
  2. 処分庁である審査庁 → 当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すること。

したがって、本肢は上記1号の内容なので正しいです。

5.処分についての審査請求の裁決には、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様の事情裁決の制度があるが、事情裁決が行われるのは、処分が違法である場合に限られ、処分が不当である場合には行われない。
5・・・誤り
審査請求に係る処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、
審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、処分を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、
審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができます(行政不服審査法45条3項)。
これを「事情裁決」と言い、行政事件訴訟法の定める「事情判決」に類似する制度です。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問13|行政手続法

X省では、ホームページに、「行政手続法、よくある質問と回答」の内容を掲載しようと検討している。以下はその原稿案である。これらのうち、誤りを含むものはどれか。

  1. Q「ある営業の許可のための申請をしようと思っています。役所でどのような点を審査することになるのか、事前に知ることはできますか?」
    →A「役所は、申請を認めるべきかどうか役所側が判断するときの基準をできる限り具体的に定め、誰でも見ることができるようにしておかなければなりません。この基準は、原則として公にされています。」
  2. Q「私がしようとしている許可申請については、A県知事が許可・不許可処分をすることになっています。処分の根拠は法律に定められているようです。行政手続法が適用されるのでしょうか?」
    →A「地方公共団体の役所がするそのような処分については、行政手続法の規定は適用されません。当該地方公共団体が行政手続条例を定めていれば、行政手続条例が適用されることになります。」
  3. Q「許可の申請をした結果はいつ頃わかるのか、目安を知りたいのですが?」
    →A「役所は、申請が届いてから結論を出すまでに通常の場合必要とする標準的な期間をあらかじめ定めるように努め、定めたときは公にしておかなければならないことになっています。ここで定められた期間が、申請の処理にかかる時間の目安となります。」
  4. Q「許可申請をしたのに、いつまでたっても返答がないのですが?」
    →A「申請書が役所に届いたら、役所は直ちに審査を開始することになっています。役所が申請を受け取らなかったり、審査をせずに放置しておくなどの取扱いは行政手続法上許されていません。申請先の役所に状況を問い合わせてみましょう。」
  5. Q「申請が不許可になった場合、その理由は教えてもらえるのでしょうか?」
    →A「役所は、申請を許可できない、不許可にする、という場合には、処分と同時に(書面でするときは書面で)その理由を示すことになっています。」

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【答え】:2

【解説】

1.
Q「ある営業の許可のための申請をしようと思っています。役所でどのような点を審査することになるのか、事前に知ることはできますか?」
→A「役所は、申請を認めるべきかどうか役所側が判断するときの基準をできる限り具体的に定め、誰でも見ることができるようにしておかなければなりません。この基準は、原則として公にされています。」
1・・・誤りを含まない
問題文は「営業の許可のための申請」という記述から、「申請に対する処分」についての出題と分かります。
そして、行政庁は、審査基準を必ず定めます(義務)(行政手続法5条1項)。
そして、行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければなりません(同条2項)。
さらに、行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければなりません(義務)(同条3項)。
したがって、本肢に誤りは含まれません。

2.
Q「私がしようとしている許可申請については、A県知事が許可・不許可処分をすることになっています。処分の根拠は法律に定められているようです。行政手続法が適用されるのでしょうか?」
→A「地方公共団体の役所がするそのような処分については、行政手続法の規定は適用されません。当該地方公共団体が行政手続条例を定めていれば、行政手続条例が適用されることになります。」
2・・・誤りを含む
地方公共団体の機関がする

  1. 処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  2. 行政指導、
  3. 地方公共団体の機関に対する届出(根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  4. 地方公共団体の機関が命令等を定める行為

については、行政手続法の規定(申請に対する処分、不利益処分、行政指導、届出、意見公募手続等)は、適用されません(行政手続法3条3項)。
「処分の根拠は法律に定められている」という場合、上記1号に含まれません
つまり、上記適用除外にはなっていないので、行政手続法が適用されるということです。

適用されないのは、「処分の根拠が条例又は規則に定められている場合」です。

3.
Q「許可の申請をした結果はいつ頃わかるのか、目安を知りたいのですが?」
→A「役所は、申請が届いてから結論を出すまでに通常の場合必要とする標準的な期間をあらかじめ定めるように努め、定めたときは公にしておかなければならないことになっています。ここで定められた期間が、申請の処理にかかる時間の目安となります。」
3・・・誤りを含まない
行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間定めるよう努める(努力義務)とともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備え付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません(義務)行政手続法6条)。
したがって、本肢は誤りを含みません。

4.
Q「許可申請をしたのに、いつまでたっても返答がないのですが?」
→A「申請書が役所に届いたら、役所は直ちに審査を開始することになっています。役所が申請を受け取らなかったり、審査をせずに放置しておくなどの取扱いは行政手続法上許されていません。申請先の役所に状況を問い合わせてみましょう。」
4・・・誤りを含まない
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、
申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、
速やかに、申請者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません(行政手続法7条)。
したがって、本肢は誤りを含みません。
※細かいことをいうと、問題文は「直ちに」、法律上は「遅滞なく」となっており異なります。ただ、他の選択肢と比較した場合、2が昭からに誤りとなるので、そちらを選ぶ流れとなります。対話型の問題では、ニュアンスがあっていれば正しいとなることもあるので覚えておくとよいでしょう。)

5.
Q「申請が不許可になった場合、その理由は教えてもらえるのでしょうか?」
→A「役所は、申請を許可できない、不許可にする、という場合には、処分と同時に(書面でするときは書面で)その理由を示すことになっています。」
5・・・誤りを含まない
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分(申請に対する処分)をする場合は、原則、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければなりません
そして、上記処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければなりません(行政手続法8条)。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問12|行政手続法

次に掲げる行政手続法2条が定める定義の空欄[ ア ]~[ オ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

申請 ―― 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の[ ア ]に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が[ イ ]をすべきこととされているものをいう。

不利益処分 ―― 行政庁が、法令に基づき、[ ウ ]を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。

行政指導 ―― 行政機関がその任務又は[ エ ]の範囲内において一定の行政目的を実現するため[ オ ]に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

  1. ア:特定の者 イ:一定の処分 ウ:特定の者 エ:法律に基づく命令 オ:特定の者
  2. ア:自己 イ:諾否の応答 ウ:不特定の者 エ:法令 オ:不特定の者
  3. ア:利害関係を有する者 イ:諾否の応答 ウ:特定の者 エ:管轄 オ:特定の者
  4. ア:特定の者 イ:一定の処分 ウ:不特定の者 エ:職務命令 オ:不特定の者
  5. ア:自己 イ:諾否の応答 ウ:特定の者 エ:所掌事務 オ:特定の者

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【答え】:5

【解説】

ア.イ.
申請 ―― 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の[ ア ]に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が[ イ ]をすべきこととされているものをいう。
ア・・・自己
イ・・・諾否の応答
申請」とは、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(許認可等という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいいます(行政手続法2条3号)。よって、「アには自己」「イには諾否の応答」が入ります。

ウ.
不利益処分 ―― 行政庁が、法令に基づき、[ ウ ]を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。
ウ・・・特定の者
不利益処分」とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいいます。ただし、次のいずれかに該当するものを除きます(行政手続法2条4号)。

  • 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
  • 申請に対する処分
  • 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
  • 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

よって「ウには特定の者」が入ります。

エ.オ.
行政指導 ―― 行政機関がその任務又は[ エ ]の範囲内において一定の行政目的を実現するため[ オ ]に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
エ・・・所掌事務
オ・・・特定の者
行政指導」とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいいます(行政手続法2条6号)。よって、「エには所掌事務」「オには特定の者」が入ります。

所掌事務とは、法令で、その担当と決まっている事務を言います。
つまり、自分が担当している事務の範囲のことしか、行政指導を行えないということです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問11|行政手続法

行政手続法による意見公募手続につき、妥当な記述はどれか。

  1. 意見公募手続に関する規定は、地方公共団体による命令等の制定については適用されないこととされているが、地方公共団体は、命令等の制定について、公正の確保と透明性の向上を確保するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
  2. 意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、結果を公示しなければならないが、意見の提出がなかったときは、その旨の公示は必要とされない。
  3. 意見公募手続においては、広く一般の意見が求められ、何人でも意見を提出することができるが、当該命令等について、特別の利害関係を有する者に対しては、意見の提出を個別に求めなければならない。
  4. 意見公募手続において提出された意見は、当該命令等を定めるに際して十分に考慮されなければならず、考慮されなかった意見については、その理由が意見の提出者に個別に通知される。
  5. 意見公募手続の対象である命令等には、法律に基づく命令又は規則のほか、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断する基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。

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【答え】:1

【解説】

1.意見公募手続に関する規定は、地方公共団体による命令等の制定については適用されないこととされているが、地方公共団体は、命令等の制定について、公正の確保と透明性の向上を確保するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
1・・・妥当

●地方公共団体による命令等の制定 → 行政手続法の適用はない=意見公募手続が不要
●地方公共団体は、公正の確保と透明性の向上を確保するために必要な措置を講ずるように努めなければならない

地方公共団体の機関がする

  1. 処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  2. 行政指導
  3. 地方公共団体の機関に対する届出(根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  4. 地方公共団体の機関が命令等を定める行為

については、行政手続法の規定(申請に対する処分、不利益処分、行政指導、届出、意見公募手続等)は、適用されません行政手続法3条3項)。
よって、「意見公募手続に関する規定は、地方公共団体による命令等の制定については適用されないこととされている」という部分は妥当です。
ただし、地方公共団体は、上記処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(努力義務)行政手続法46条)。
よって、後半部分も妥当です。

※ 上記覚えるのはなかなか難しいので、地方公共団体で行政手続法の適用があるもの(上段)のみ覚えると楽でしょう!

2.意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、結果を公示しなければならないが、意見の提出がなかったときは、その旨の公示は必要とされない。
2・・・妥当ではない

●意見公募手続を実施して命令等を定めた場合に公示すべきもの → 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)

命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければなりません(行政手続法43条)。

  1. 命令等の題名
  2. 命令等の案の公示の日
  3. 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨
  4. 提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由

上記3号の内容から、「提出意見がなかった場合にあっては、提出意見がなかった旨」を公示しなければなりません。
よって、本肢は妥当ではありません。

3.意見公募手続においては、広く一般の意見が求められ、何人でも意見を提出することができるが、当該命令等について、特別の利害関係を有する者に対しては、意見の提出を個別に求めなければならない。
3・・・妥当ではない

●命令等を定めようとする場合 → 広く一般の意見を求めなければならない
●特別の利害関係人に個別に意見の提出を求める義務はない

命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該「命令等の案」及び「これに関連する資料」をあらかじめ公示し、「意見の提出先」及び「意見の提出のための期間(意見提出期間)」を定めて広く一般の意見を求めなければなりません(行政手続法39条)。
本肢のように、「命令等について、特別の利害関係を有する者に対しては、意見の提出を個別に求めなければならない」というルールはないので、妥当ではありません。

4.意見公募手続において提出された意見は、当該命令等を定めるに際して十分に考慮されなければならず、考慮されなかった意見については、その理由が意見の提出者に個別に通知される。
4・・・妥当ではない

●意見公募手続を実施して命令等を定める場合 → 提出された当該命令等の案についての意見を十分に考慮しなければならない

命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見を十分に考慮しなければなりません(行政手続法42条)。
しかし、本肢のように「考慮されなかった意見については、その理由が意見の提出者に個別に通知される」というルールはないので妥当ではありません。

※行政手続法は、条文をある程度確認しておいた方がよいです。その理由は本問のように、法律に規定されていない内容が問題文に記載されることがあるからです。ある程度確認しておけば、「そんな内容なかったな、だから×」と答えを導けます。
行政手続法は、50条弱しなかいため、ネットなどで何度か確認しておきましょう。

5.意見公募手続の対象である命令等には、法律に基づく命令又は規則のほか、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断する基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。
5・・・妥当ではない

●命令等 = 意見公募手続の対象
●行政指導指針 → 命令等に含まれる

命令等」とは、内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいいます(行政手続法2条8号)。

よって、「行政指導に関する指針は含まれない」は妥当ではありません。

意見公募手続の対象である命令等の上記4つは必ず頭に入れておきましょう!


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問10|行政法・行政立法

行政立法に関する次の会話の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

  • 教員A 「今日は行政立法に関して少し考えてみましょう。B君、行政立法の具体例をいくつか挙げることができますか?」
  • 学生B 「そうですね。建築基準法施行規則や所得税基本通達があります。」
  • 教員A 「よく知っていますね。建築基準法施行規則はその名のとおり建築基準法の委任に基づき定められた[ ア ]ですね。国民の権利義務に関わる規定を含むものですから、講学上は[ イ ]に分類されます。Cさん、所得税基本通達は何に分類されるでしょうか?」
  • 学生C 「所得税基本通達は、国税庁内部で上級機関が下級機関に発する事務処理の取決めのことですから、[ ウ ]でしょうか?」
  • 教員A 「そのとおりですね。では、[ イ ]の中には、性質の異なる二種類のものがあることを知っていますか?」
  • 学生B・C 「どういうことでしょうか?」
  • 教員A 「質問の仕方を変えると、[ イ ]の中には、新たに権利義務を設定するのではなく、法律を実施するための技術的細目を定めるものがありますよね。」
  • 学生B 「[ エ ]のことですね。申請書の様式を定める規定がこれにあたると言われています。」
  • 教員A 「正解です。ただ、このような分類枠組みについては今日では疑問視されていることにも注意してください。」
  1. ア:省令 イ:法規命令 ウ:行政規則 エ:執行命令
  2. ア:省令 イ:行政規則 ウ:法規命令 エ:委任命令
  3. ア:政令 イ:法規命令 ウ:行政規則 エ:委任命令
  4. ア:政令 イ:行政規則 ウ:法規命令 エ:執行命令
  5. ア:政令 イ:法規命令 ウ:行政規則 エ:独立命令

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【答え】:1

【解説】

本問は「行政立法」に関する出題です。


教員A 「今日は行政立法に関して少し考えてみましょう。B君、行政立法の具体例をいくつか挙げることができますか?」

学生B 「そうですね。建築基準法施行規則や所得税基本通達があります。」

教員A 「よく知っていますね。建築基準法施行規則はその名のとおり建築基準法の委任に基づき定められた[ ア ]ですね。

ア・・・省令
「建築基準法施行規則」は「国土交通大臣の定める省令」です。ちなみに〇〇施行令・・・政令
〇〇施行規則・・・省令

です。


教員A 「よく知っていますね。建築基準法施行規則はその名のとおり建築基準法の委任に基づき定められた[ ア:省令 ]ですね。国民の権利義務に関わる規定を含むものですから、講学上は[ イ ]に分類されます。」
イ・・・法規命令
国民の権利義務に関わる規定を含む」ということは、「イには法規命令」が入ります。

教員A 「Cさん、所得税基本通達は何に分類されるでしょうか?」学生C 「所得税基本通達は、国税庁内部で上級機関が下級機関に発する事務処理の取決めのことですから、[ ウ ]でしょうか?」教員A 「そのとおりですね。」

ウ・・・行政規則
国税庁内部で上級機関が下級機関に発する事務処理の取決め」ということは、国民の権利義務に関わらない内容なので、「ウには行政規則」が入ります。

教員A 「質問の仕方を変えると、[ イ:法規命令 ]の中には、新たに権利義務を設定するのではなく、法律を実施するための技術的細目を定めるものがありますよね。」学生B 「[ エ ]のことですね。申請書の様式を定める規定がこれにあたると言われています。」教員A 「正解です。ただ、このような分類枠組みについては今日では疑問視されていることにも注意してください。」

エ・・・執行命令
法規命令には「執行命令」と「委任命令」の2つがあります。
執行命令とは、法律を実施するための具体的細目(細かい内容)を定めたルールです。
委任命令とは、新たに権利義務を設定する命令です。よって、「新たに権利義務を設定するのではなく、法律を実施するための技術的細目を定めるものがありますよね」
という記述から
「エには執行命令」が入ります。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問9|行政法

国と国家公務員との法律関係に関する次の記述のうち、最高裁判所の判決に照らし、正しいものはどれか。

  1. 国と国家公務員は特別な社会的接触の関係にあるので、公務災害の場合、国は、一般的に認められる信義則上の義務に基づいて賠償責任を負うことはない。
  2. 安全配慮義務は私法上の義務であるので、国と国家公務員との間の公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。
  3. 公務災害に関する賠償は、国の公法上の義務であるから、これに民法の規定を適用する余地はない。
  4. 公務災害に関する賠償については、国家賠償法に基づく不法行為責任が認められる場合に限られ、上司等の故意過失が要件とされる。
  5. 公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間については、早期決済の必要性など行政上の便宜を考慮する必要がないので、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用される。

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【答え】:5

本問は「最判昭50.2.25」に関する出題です。

【解説】

1.国と国家公務員は特別な社会的接触の関係にあるので、公務災害の場合、国は、一般的に認められる信義則上の義務に基づいて賠償責任を負うことはない。
1・・・誤り
判例によると
「国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている」
と判示しています。
つまり、国と公務員との間であっても、安全配慮義務(信義則上の義務)が認められ、これに基づいて賠償責任を負うことがあります。
2.安全配慮義務は私法上の義務であるので、国と国家公務員との間の公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。
2・・・誤り
判例によると、
「安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負う
としています。
よって、「公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。」は誤りです。
3.公務災害に関する賠償は、国の公法上の義務であるから、これに民法の規定を適用する余地はない。
3・・・誤り
判例によると
「国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、・・・私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではない。
よって、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法の5年と解すべきではなく、(旧)民法の10年と解すべき
として、民法を適用しているため、「民法の規定を適用する余地はない」は妥当ではありません。
※ 現行の民法では、「(権利を行使することができるときから)20年」という消滅時効が適用されます。
>>人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効
4.公務災害に関する賠償については、国家賠償法に基づく不法行為責任が認められる場合に限られ、上司等の故意過失が要件とされる。
4・・・誤り
公務災害に関する賠償については、「国家賠償法に基づく不法行為責任が認められない場合」でも、安全配慮義務違反によって賠償してもらえます。
また、上司の故意過失は要件とされていません。
5.公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間については、早期決済の必要性など行政上の便宜を考慮する必要がないので、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用される。
5・・・正しい
選択肢3の通り、「公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間」は民法の消滅時効(10年)が適用されるので、正しいです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問8|行政法

裁判による行政上の義務履行確保について、最高裁判所の判決に照らし、妥当な記述はどれか。

  1. 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、法令の適用により終局的に解決することができないから、法律上の争訟に該当しない。
  2. 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、このような訴訟を提起することを認める特別の規定が法律にあれば、適法となりうる。
  3. 国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、終局的には、公益を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟には該当しない。
  4. 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、行政上の義務履行確保の一般法である行政代執行法による代執行が認められる場合に限り、不適法である。
  5. 国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではないが、現行法上、こうした訴訟を認める特別の規定があるため、提起することが許されている。

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【答え】:2

【解説】

本問はすべて「宝塚市パチンコ条例事件」に関する内容です。

1.国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、法令の適用により終局的に解決することができないから、法律上の争訟に該当しない。

1・・・妥当ではない

●財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合 → 法律上の争訟に該当する
●行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするもの → 法律上の争訟に該当しない
【事案】

宝塚市Xの条例に「パチンコ店等の建築物を建築するためには市長の同意を必要とし、この規定に違反して建築しようとする者に対し、市長は建築の中止、原状回復その他必要な措置を講じるよう命じることができる」旨の規定があった。

宝塚市長は、上記規定に違反してパチンコ店を建築しようとするYに対して、その建築工事の中止を命じた。

しかし、Yがこれに従わなかったため、宝塚市Xは、Yに対して、建築工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起した。

①法律上の争訟にあたるか?

②この民事訴訟は適法か?不適法か?

判例

判例では、下記のように言っています。

行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象(=裁判の対象)は、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる。
そうだとすると、国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきである。

分かりやすくいうと、「裁判の対象は、法律上の争訟である必要がある。法律上の争訟とは、1)当事者間の所有権等の対抗関係や所有権等の存否に関する紛争で、かつ、2)法令を使って最終的に解決できるものです

そうだとすると、国などが提起した訴訟で、財産権(所有権など)を対象として、所有権を主張するような場合は、法律上の争訟に当たるというべき」ということです。

さらに、続いて、今回の裁判については、下記のように判示しています(判例で示しています)。

国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではない

分かりやすくいうと、今回の宝塚市Yの裁判は、「行政権(建築工事の続行禁止を求める権利)」を対象として、国民Xに対して、義務履行を求める訴訟です。この訴訟は、「法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的」である。

上記に記載した、「財産権(所有権)などを主張して、自己の権利利益の保護救済を目的」とするものではない。

したがって、法律上の争訟に該当せず、裁判所で裁判するものではないと言っています。

ここで、問題文を見ると、「法律上の争訟に該当しない理由」は「法令の適用により終局的に解決することができないから」と書いてありますが、これは誤りです。今回の宝塚市の訴訟において、 「法律上の争訟に該当しない理由」は「法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的」とするからです。よって、妥当ではありません。

また、問題にはなっていませんが、②法律上の争訟ではないので、今回の宝塚市の訴訟は、不適法です。

2.国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、このような訴訟を提起することを認める特別の規定が法律にあれば、適法となりうる。
2・・・妥当
●行政権を主体通して、国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟 → 法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される

判例では、下記のように示しています。

国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。

つまり、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、このような訴訟を提起することを認める特別の規定が法律にあれば、適法となる可能性があります。(=原告適格や被告適格、提訴期間の要件を満たせば適用になる)

3.国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、終局的には、公益を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟には該当しない。

3・・・妥当ではない

●財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求める場合 → 法律上の争訟に当たる

判例では「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たる」としています。よって本問は「法律上の争訟に該当しない」となっているので誤りです。

4.国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、行政上の義務履行確保の一般法である行政代執行法による代執行が認められる場合に限り、不適法である。
4・・・妥当ではない
●「行政権」の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟 → 法律に特別の規定がある場合に限り、適法「行政代執行法による代執行が認められる場合に限り、不適法」という記述は妥当ではありません。
正しくは、「法律に特別の規定がない場合、不適法」言い方を変えると、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、「法律に特別の規定がある場合に限り、適法」と言うことです。5.国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではないが、現行法上、こうした訴訟を認める特別の規定があるため、提起することが許されている。

5・・・妥当ではない
●財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合 → 法律上の争訟に当たる判例では「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たる」と判示しています。
つまり、本問の「法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではない(=当たり前に裁判所の審判の対象とはならない)」は妥当ではありません。

平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問43|行政法

 

次の文章は、ある最高裁判所判決の一節である。空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

旧行政事件訴訟特例法のもとにおいても、また、行政事件訴訟法のもとにおいても、行政庁の[ ア ]に任された[ イ ]の[ ウ ]を求める訴訟においては、その[ ウ ]を求める者において、行政庁が、右[ イ ]をするにあたってした[ ア ]権の行使がその範囲をこえまたは濫用にわたり、したがって、右[ イ ]が違法であり、かつ、その違法が[ エ ]であることを主張および立証することを要するものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、本件・・・売渡処分は、旧自作農創設特別措置法四一条一項二号および同法施行規則二八条の八に基づいてなされたものであるから、右売渡処分をするにあたって、右法条に規定されたものの相互の間で、いずれのものを売渡の相手方とするかは、政府の[ ア ]に任されているものというべきである。しかるに、上告人らは、政府のした右[ ア ]権の行使がその範囲をこえもしくは濫用にわたり、したがって違法視されるべき旨の具体的事実の主張または右違法が[ エ ]である旨の具体的事実の主張のいずれをもしていない・・・。

(最二小判昭和42年4月7日民集21巻3号572頁)

1.命令 2.無効確認 3.許可 4.重大 5.監督 6.取消し 7.承認 8.重大かつ明白 9.指揮 10.行政処分 11.明らか 12.裁決 13.真実 14.支給 15.明確 16.救済 17.釈明処分 18.審判 19認定 20.裁量

>解答と解説はこちら


【答え】:ア:20(裁量)、イ:10(行政処分)、ウ:2(無効確認)、エ:8(重大かつ明白)

【解説】

旧行政事件訴訟特例法のもとにおいても、また、行政事件訴訟法のもとにおいても、行政庁の[ ア:裁量 ]に任された[ イ:行政処分 ]の[ ウ:無効確認 ]を求める訴訟においては、その[ ウ:無効確認 ]を求める者において、行政庁が、右[ イ:行政処分 ]をするにあたってした[ ア:裁量 ]権の行使がその範囲をこえまたは濫用にわたり、したがって、右[ イ:行政処分 ]が違法であり、かつ、その違法が[ エ:重大かつ明白 ]であることを主張および立証することを要するものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、本件・・・売渡処分は、旧自作農創設特別措置法四一条一項二号および同法施行規則二八条の八に基づいてなされたものであるから、右売渡処分をするにあたって、右法条に規定されたものの相互の間で、いずれのものを売渡の相手方とするかは、政府の[ ア:裁量 ]に任されているものというべきである。しかるに、上告人らは、政府のした右[ ア:裁量 ]権の行使がその範囲をこえもしくは濫用にわたり、したがって違法視されるべき旨の具体的事実の主張または右違法が[ エ:重大かつ明白 ]である旨の具体的事実の主張のいずれをもしていない・・・。

「最判昭42.4.7」の判決文の全文はこちら>>

ア.イ.ウ.エ
「[ イ ]の[ ウ ]を求める訴訟においては、その[ ウ ]を求める者において、行政庁が、右[ イ ]をするにあたってした[ ア ]権の行使がその範囲をこえまたは濫用にわたり、したがって、右[ イ ]が違法であり、かつ、その違法が[ エ ]であることを主張および立証することを要するものと解するのが相当である。」

ア・・・裁量
イ・・・行政処分
ウ・・・無効確認
エ・・・重大かつ明白

「[ ア ]権の行使がその範囲をこえまたは濫用にわたり」という記述から
「アには裁量」が入ります。すると、「行政庁が、右[ イ ]をするにあたってした[ ア:裁量 ]権の行使がその範囲をこえまたは濫用にわたり、したがって、右[ イ ]が違法であり、かつ、その違法が[ エ ]であることを主張および立証することを要するものと解するのが相当である。」
という記述から、

  1. 行政庁が[ イ ]をする
  2. 右[ イ ]が違法

という2つから
「イには行政処分」が入ることが分かります。

そして、

  1. 行政処分の[ ウ ]を求める訴訟
  2. 右行政処分が違法であり、かつ、その違法が[ エ ]であることを主張および立証することを要するものと解するのが相当

という2つの記述から

「ウには無効確認」が入り、「エには、重大かつ明白」が入ることが分かります。

 重大かつ明白な瑕疵とは?

  1. 行政行為の違法性が重大であり
  2. 行政行為の違法性の存在が明白であるということです。

1.の「重大性」は、相手方の事情などを考えた上で、個別的に判断します。

2.の「明白性」には、一般的に外観から見て当然分かることを言います。

細かい理解は不要なので、「重大かつ明白な瑕疵がある場合、行政行為は無効である」と覚えれば十分です。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問42|行政法・川崎民商事件

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

[ ア ]について[ イ ]の規定を設けない立法の合憲性が問われた事件において、最高裁は、次のように述べてこれを合憲と判断した。すなわち、憲法31条による保障は、「直接には[ ウ ]に関するものであるが、[ エ ]については、それが[ ウ ]ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない」。「しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、[ エ ]は、[ ウ ]とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、[ ア ]の相手方に・・・告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、[ ア ]により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、[ ア ]により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である」。また、この判決に付された意見も、「[ エ ]がそれぞれの行政目的に応じて多種多様である実情に照らせば、・・・[ ア ]全般につき・・・告知・聴聞を含む[ イ ]を欠くことが直ちに違憲・無効の結論を招来する、と解するのは相当でない」と述べて、法廷意見の結論を是認した(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)。とはいえ、この判決では、[ エ ]の重要な一部をなす[ イ ]が憲法31条に照らしてどのようなものであるべきかは、示されなかった。

1.立法手続 2.行政立法 3.行政訴訟 4.刑事手続 5.行政裁量 6.行政手続 7.司法権 8.営業の自由 9.財産権 10.基本的人権 11.司法手続 12.事前手続 13.適正手続 14.立法権 15.行政権 16.権利救済 17.破壊活動 18.人身の自由 19.行政処分 20.犯罪行為

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【答え】:ア:19(行政処分)、イ:12(事前手続)、ウ:4(刑事手続)、エ:6(行政手続)

【解説】

ア:行政処分 ]について[ イ:事前手続 ]の規定を設けない立法の合憲性が問われた事件において、最高裁は、次のように述べてこれを合憲と判断した。すなわち、憲法31条による保障は、「直接には[ ウ:刑事手続 ]に関するものであるが、[ エ:行政手続 ]については、それが[ ウ:刑事手続 ]ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない」。「しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、[ エ:行政手続 ]は、[ ウ:刑事手続 ]とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、[ ア:行政処分 ]の相手方に・・・告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、[ ア:行政処分 ]により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、[ ア:行政処分 ]により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である」。また、この判決に付された意見も、「[ エ:行政手続 ]がそれぞれの行政目的に応じて多種多様である実情に照らせば、・・・[ ア:行政処分 ]全般につき・・・告知・聴聞を含む[ イ:事前手続 ]を欠くことが直ちに違憲・無効の結論を招来する、と解するのは相当でない」と述べて、法廷意見の結論を是認した(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)。とはいえ、この判決では、[ エ:行政手続 ]の重要な一部をなす[ イ:事前手続 ]が憲法31条に照らしてどのようなものであるべきかは、示されなかった。

「行政目的に応じて多種多様であるから、[ ア ]の相手方に・・・告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、[ ア ]により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、[ ア ]により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である」
ア・・・行政処分

  1. [ア]の相手方に告知、弁解、防御の機会を与える
  2. [ア]により制限を受ける権利利益の内容
  3. [ア]により達成しようとする公益の内容

という3の内容から、「アには行政処分」が入ります。


「告知・聴聞を含む[ イ ]を欠くことが直ちに違憲・無効の結論を招来する、と解するのは相当でない」
イ・・・事前手続
行政手続法の内容ですが、
「聴聞」は、「行政処分」を行う「前」に行う手続きです。
よって、「イには事前手続」が入ります。

ウ、エ
[ ア:行政処分 ]について[ イ:事前手続 ]の規定を設けない立法の合憲性が問われた事件において、最高裁は、次のように述べてこれを合憲と判断した。すなわち、憲法31条による保障は、「直接には[ ウ ]に関するものであるが、[ エ ]については、それが[ ウ ]ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。
ウ・・・刑事手続
エ・・・行政手続
憲法31条では、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と規定されています。
これは、この規定は、直接には「刑事手続」に関するものです。
しかし、刑事手続ではないからいう理由だけで、憲法31条の保障の枠外にあると判断することは相当ではありません。
よって、「ウには刑事手続」「エには行政手続」が入ります。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問26|行政事件訴訟法

いわゆる朝日訴訟最高裁判所大法廷判決(最大判昭和42年5月24日民集21巻5号1043頁)の事案は、次のようなものであった。この判決の結論のうち、正しいものはどれか。

原告Xは、以前からA県にある国立B療養所に単身の肺結核患者として入所し、厚生大臣(当時)の設定した生活扶助基準で定められた最高金額である月600円の日用品費の生活扶助と現物による全部給付の給食付医療扶助とを受けていた。ところが、Xが実兄Cから扶養料として毎月1,500円の送金を受けるようになったために、所轄のA県のD市社会福祉事務所長は、月額600円の生活扶助を打ち切り、Cからの上記送金額から日用品費を控除した残額900円を医療費の一部としてXに負担させる旨の保護変更決定(以下「本件保護変更決定」という。)をした。これに対してXは、A県知事、ついで厚生大臣に対して不服の申立てを行ったが、いずれにおいても違法はないとして本件保護変更決定が是認されたので、上記600円の基準金額は生活保護法の規定する健康で文化的な最低限度の生活水準を維持するにたりない違法なものであると主張して、取消訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起した。しかしその後、Xは本件訴訟係属中に死亡した。

(参照条文)
生活保護法第59条(当時)
被保護者は、保護を受ける権利を譲り渡すことができない。

  1. 保護受給権はX個人に与えられた一身専属の権利であり、他の者にこれを譲渡することはできず、相続の対象にもなりえないが、裁判所は、本件保護変更決定の前提となる生活扶助基準の適法性について判断する必要があるので、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。
  2. 生活保護法の規定に基づきXが国から生活保護を受けるのは、これを保護受給権と称されることがあるとしても、その法的性格は国の社会政策の実施に伴う反射的利益というべきであり、Xの死亡後においてそれが相続の対象となることもないから、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了する。
  3. Xの生存中の扶助ですでに遅滞しているものの給付を求める権利は、医療扶助についてはもちろん、金銭給付を内容とする生活扶助も、もっぱらXの最低限度の生活の需要を満たすことを目的とするものであるから、相続の対象となりえず、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了する。
  4. 本件保護変更決定によってXは医療費の一部自己負担をせざるをえなくなるが、本件保護変更決定が違法であるとすれば、かかる負担についてXは国に対して不当利得返還請求権を有することになるから、当該請求権は相続の対象となり、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。
  5. 生活保護法の規定に基づき被保護者が国から生活保護を受けるのは法的権利であり、同法が、被保護者は、保護を受ける権利を譲り渡すことができないと規定するのは、被保護者の生存中についての定めであるから、Xの保護請求権は相続の対象となり、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.保護受給権はX個人に与えられた一身専属の権利であり、他の者にこれを譲渡することはできず、相続の対象にもなりえないが、裁判所は、本件保護変更決定の前提となる生活扶助基準の適法性について判断する必要があるので、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。
1・・・誤り
判例では
「生活保護法に基づく保護受給権は、法的権利である。しかし、この権利は、被保護者個人に与えられた一身専属の権利である。したがって、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了し、相続人が保護受給権を承継する余地はない。」
と判示しています。
したがって、「訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。」という記述は誤りです。
訴訟は、Xの死亡と同時に終了します。

2.生活保護法の規定に基づきXが国から生活保護を受けるのは、これを保護受給権と称されることがあるとしても、その法的性格は国の社会政策の実施に伴う反射的利益というべきであり、Xの死亡後においてそれが相続の対象となることもないから、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了する。
2・・・誤り
本肢は「反射的利益というべき」という点が誤りです。
判例では、
「生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であって、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。」
と判示しています。

3.Xの生存中の扶助ですでに遅滞しているものの給付を求める権利は、医療扶助についてはもちろん、金銭給付を内容とする生活扶助も、もっぱらXの最低限度の生活の需要を満たすことを目的とするものであるから、相続の対象となりえず、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了する。
3・・・正しい
判例では
被保護者の生存中の扶助ですでに遅滞にあるものの給付を求める権利についても、医療扶助の場合はもちろんのこと、金銭給付を内容とする生活扶助の場合でも、それは当該被保護者の最低限度の生活の需要を満たすことを目的とするものであって、法の予定する目的以外に流用することを許さないものであるから、当該被保護者の死亡によつて当然消滅し、相続の対象となり得ない。」
と判示しています。
したがって、本肢は正しいです。

4.本件保護変更決定によってXは医療費の一部自己負担をせざるをえなくなるが、本件保護変更決定が違法であるとすれば、かかる負担についてXは国に対して不当利得返還請求権を有することになるから、当該請求権は相続の対象となり、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。
4・・・誤り
判例では
不当利得返還請求権は、保護受給権を前提としてはじめて成立するものであり、
その保護受給権が右に述べたように一身専属の権利である以上、相続の対象となり得ない
と判示しています。
したがって、「不当利得返還請求権を有することになるから、当該請求権は相続の対象となり」という記述は誤りです。

5.生活保護法の規定に基づき被保護者が国から生活保護を受けるのは法的権利であり、同法が、被保護者は、保護を受ける権利を譲り渡すことができないと規定するのは、被保護者の生存中についての定めであるから、Xの保護請求権は相続の対象となり、本件訴訟は、Xの死亡と同時にその相続人に承継される。
5・・・誤り
判例では
「生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、
単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、
法的権利であって、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。しかし、この権利は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられ一身専属の権利であって、他にこれを譲渡し得ないし、相続の対象ともなり得ない
と判示しています。したがって、「Xの保護請求権は相続の対象となり」という記述は誤りです。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略