行政法の過去問

平成30年・2018|問23|地方自治法

地方公共団体の定める条例と規則に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.普通地方公共団体は、その事務に関し、条例を制定し、それに違反した者について、懲役などの刑罰の規定を設けることができる。

イ.普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務に関し、規則を制定し、それに違反した者について、罰金などの刑罰の規定を設けることができる。

ウ.普通地方公共団体の長は、普通地方公共団体の議会による条例の制定に関する議決について、再議に付すことができる。

エ.普通地方公共団体は、公の施設の設置およびその管理に関する事項につき、その長の定める規則でこれを定めなければならない。

オ.日本国民たる普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の条例の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の選挙に参与する権利を有する。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:2

【解説】

ア.普通地方公共団体は、その事務に関し、条例を制定し、それに違反した者について、懲役などの刑罰の規定を設けることができる。
ア・・・正しい
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができます(地方自治法14条1項)。
そして、普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、「2年以下の懲役若しくは禁錮」、「100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑」又は「5万円以下の過料」を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法14条1項3項)。

イ.普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務に関し、規則を制定し、それに違反した者について、罰金などの刑罰の規定を設けることができる。
イ・・・誤り
普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができます(地方自治法15条1項)。
そして、普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、「5万円以下の過料」を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法15条2項)。
長は、罰金などの刑罰の規定を設けることはできません

ウ.普通地方公共団体の長は、普通地方公共団体の議会による条例の制定に関する議決について、再議に付すことができる。
ウ・・・正しい
普通地方公共団体の議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、その議決の日(条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決については、その送付を受けた日)から10日以内に理由を示してこれを再議に付することができます(地方自治法176条1項)。

エ.普通地方公共団体は、公の施設の設置およびその管理に関する事項につき、その長の定める規則でこれを定めなければならない。
エ・・・誤り
普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければなりません(地方自治法244条の2第1項)。
「規則」で定めるという部分が誤りです。

オ.日本国民たる普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の条例の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の選挙に参与する権利を有する。
5・・・誤り
日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の選挙に参与する権利を有します(地方自治法11条)。当該普通地方公共団体の条例で定められていません。そもそも、憲法93条2項において
「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」と規定しています。
この憲法を受けて、地方自治法11条で、住民の参政権を具体的に規定します。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問22|地方自治法

地方自治法の定める特別区に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 特別区は、かつては特別地方公共団体の一種とされていたが、地方自治法の改正により、現在は、市町村などと同様の普通地方公共団体とされており、その区長も、公選されている。
  2. 特別区は、独立の法人格を有する地方公共団体である点においては、指定都市に置かれる区と相違はないが、議会や公選の区長を有すること、さらには条例制定権限を有する点で後者とは異なる。
  3. 特別区は、その財源を確保するために、区民税などの地方税を賦課徴収する権限が認められており、その行政の自主的かつ計画的な運営を確保するため、他の地方公共団体から交付金を受けることを禁じられている。
  4. 特別区は、地方自治法上は、都に設けられた区をいうこととされているが、新たな法律の制定により、廃止される関係市町村における住民投票などの手続を経て、一定の要件を満たす他の道府県においても設けることが可能となった。
  5. 特別区は、原則として、市町村と同様の事務を処理することとされているが、特別区相互間の事務の調整を確保する見地から、市町村と異なり、その事務の執行について、区長等の執行機関は、知事の一般的な指揮監督に服する。

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【答え】:4

【解説】

1.特別区は、かつては特別地方公共団体の一種とされていたが、地方自治法の改正により、現在は、市町村などと同様の普通地方公共団体とされており、その区長も、公選されている。
1・・・妥当ではない
特別地方公共団体は、「特別区」、「地方公共団体の組合」及び「財産区」を言います(地方自治法1条の3第3項)。
つまり特別区は、特別地方公共団体です。
したがって、本肢は「特別区は普通地方公共団体とされており」が妥当ではないです。
そして、特別区の区長は、知事や市長などと同様、公選(住民の投票による選挙で選ぶ)です。
そのため、この部分は妥当です

2.特別区は、独立の法人格を有する地方公共団体である点においては、指定都市に置かれる区と相違はないが、議会や公選の区長を有すること、さらには条例制定権限を有する点で後者とは異なる。
2・・・妥当ではない
地方公共団体は、法人として扱います(地方自治法2条1項)。
そして、特別区は、「地方公共団体」の中の「特別地方公共団体」なので、「地方公共団体」です。
したがって、特別区は法人です(法人格を有する)。
一方、
指定都市に置かれる区は、行政事務の便宜上のために存在するものであり、地方自治法上の「地方公共団体」ではなく、法人ではありません(法人格を有しない)。
したがって、「指定都市に置かれる区と相違はない」という記述は妥当ではありません。
3.特別区は、その財源を確保するために、区民税などの地方税を賦課徴収する権限が認められており、その行政の自主的かつ計画的な運営を確保するため、他の地方公共団体から交付金を受けることを禁じられている。
3・・・妥当ではない
は、都と特別区及び特別区相互間の財源の均衡化を図り、並びに特別区の行政の自主的かつ計画的な運営を確保するため、政令の定めるところにより、条例で、特別区財政調整交付金(区に交付するお金)を交付します(地方自治法282条)。
つまり、特別区(東京都の各区)が他の公共団体(東京都)から交付金を受けることもあります。
よって、妥当ではありません。
4.特別区は、地方自治法上は、都に設けられた区をいうこととされているが、新たな法律の制定により、廃止される関係市町村における住民投票などの手続を経て、一定の要件を満たす他の道府県においても設けることが可能となった。
4・・・妥当
本肢は「大都市地域における特別区の設置に関する法律」に関する内容です。
この法律は、道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設けるための手続並びに特別区と道府県の事務の分担並びに税源の配分及び財政の調整に関する意見の申出に係る措置について定めることにより、地域の実情に応じた大都市制度の特例を設けることを目的としています(大都市地域における特別区の設置に関する法律1条)
そして、関係市町村を廃止し、特別区の設置する場合、住民投票の手続きが必要です(同法7条)。よって、本肢は妥当です。
5.特別区は、原則として、市町村と同様の事務を処理することとされているが、特別区相互間の事務の調整を確保する見地から、市町村と異なり、その事務の執行について、区長等の執行機関は、知事の一般的な指揮監督に服する。
5・・・妥当ではない
特別区は、原則として、市町村が処理するものとされている事務を処理することとされています(地方自治法281条2項)
都知事は、特別区に対し、都と特別区及び特別区相互の間の調整上、特別区の事務の処理について、その処理の基準を示す等必要な助言又は勧告をすることができますが(地方自治法281条の6)、区長等の執行機関は、知事の一般的な指揮監督に服するわけではありません。 言い換えると、区長等は、知事が下で働きません。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問21|国家賠償法

道路用地の収用に係る損失補償に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 土地を収用することによって土地所有者が受ける損失は、当該道路を設置する起業者に代わり、収用裁決を行った収用委員会が所属する都道府県がこれを補償しなければならない。
  2. 収用対象となる土地が当該道路に関する都市計画決定によって建築制限を受けている場合、当該土地の権利に対する補償の額は、近傍において同様の建築制限を受けている類地の取引価格を考慮して算定した価格に物価変動に応ずる修正率を乗じて得た額となる。
  3. 収用対象の土地で商店が営まれている場合、商店の建築物の移転に要する費用は補償の対象となるが、その移転に伴う営業上の損失は補償の対象とはならない。
  4. 収用対象とはなっていない土地について、隣地の収用によって必要となった盛土・切土に要する費用は損失補償の対象になるが、それにより通路・溝等の工作物が必要となったときは、当該工作物の新築に係る費用は補償の対象とはならない。
  5. 収用対象の土地の所有者が収用委員会による裁決について不服を有する場合であって、不服の内容が損失の補償に関するものであるときは、土地所有者が提起すべき訴訟は当事者訴訟になる。

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【答え】:5

【解説】

1.土地を収用することによって土地所有者が受ける損失は、当該道路を設置する起業者に代わり、収用裁決を行った収用委員会が所属する都道府県がこれを補償しなければならない。
1・・・誤り

●土地収用による損失 → 起業者が補償

土地を収用し、又は使用することによって土地所有者及び関係人が受ける損失は、起業者が補償しなければなりません(土地収用法68条)。したがって、「都道府県が補償」という部分が誤りです。

※ 起業者とは、公益事業を行なう者を言い、公的機関だけでなく、大手の民間土木業者も事業の認定を受けて起業者になったりします。

【具体例】 道路の拡幅事業(道路の幅を広げる事業)について業者A(起業者A)が事業の認定を受けた。この場合、起業者Aは、補償金を支払って、その道路沿いの土地の一部を収用(強制的に買い取ること)していきます。このように、土地収用による損失は起業者が補償します。

2・・・誤り

●土地の収用における補償金の額 → 都市計画決定による建築制限を受けていても、そのことは考慮しない(建築制限はないものとして補償金の額を計算する)

これは、「最判昭48.10.18」の事案です。
まず、「収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利」に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とします(土地収用法71条)。

「所有権以外の権利」とは、土地の賃借権等を指します。そして、この「土地賃借権に対する補償金の額」は、近隣の土地の取引価格等を考慮し、また、権利を取得する裁決は、まだ先のことなので、それまでの物価の変動も考慮して決めるということです。
そして、本問は、収用する土地について、「都市計画決定によって建築制限を受けている」という条件が付いています。例えば、収用する土地に「建物を建築する場合、知事の許可が必要」といった制限がついている場合です。
この場合、判例では、「補償すべき相当な価格とは、被収用地(収用対象となる土地)が、都市計画事業の決定による建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである」と判示しています。
つまり、上記「建築する場合、知事の許可が必要」といった制限は考えないということです。したがって、本問は誤りです。

3.収用対象の土地で商店が営まれている場合、商店の建築物の移転に要する費用は補償の対象となるが、その移転に伴う営業上の損失は補償の対象とはならない。
3・・・誤り

●収用における補償の範囲 → 離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失も含む

収用における補償の範囲は、「損失の補償」以外に、「離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失」その他「土地を収用し、又は使用することによって土地所有者又は関係人が通常受ける損失」は、補償しなければなりません。(土地収用法88条)。したがって、本問のように、収用対象の土地で商店が営まれている場合、「商店の建築物を移転する費用」や「商店を移転するにあたって休業することによる損失」も補償の対象です。

4.収用対象とはなっていない土地について、隣地の収用によって必要となった盛土・切土に要する費用は損失補償の対象になるが、それにより通路・溝等の工作物が必要となったときは、当該工作物の新築に係る費用は補償の対象とはならない。
4・・・誤り

●収用対象とはなっていない土地についても、隣地の収用によって必要となった盛土・切土に要する費用 → 損失補償の対象

本問は、「収用する土地以外の土地に関する損失の補償」の内容です。
土地を収用し、又は使用して、その土地を事業用として使うことにより、当該土地及び残地「以外の土地」について、「通路、溝、垣、さくその他の工作物」を「新築し、改築し、増築し、若しくは修繕し、又は盛土若しくは切土」をする必要があると認められるとき、起業者は、これらの工事をすることを必要とする者の請求により、
これに要する費用の全部又は一部を補償しなければなりません(土地収用法73条)。

具体例 道路の拡幅工事において、道路予定地のとなりに山があったら、きちんと切土をしないといけないですし、さらには擁壁(壁)など作って崩れないようにしないといけません。また、その隣地の中にある建物まで続く通路を壊した場合、その通路も新設しないといけません。そういった費用も保障の対象となります。
したがって、本問のように、収用対象とはなっていない土地についても、隣地の収用によって必要となった盛土・切土に要する費用は損失補償の対象になります。さらに、「通路・溝等の工作物」が必要となったときは、当該工作物の新築に係る費用も補償の対象になります。

5.収用対象の土地の所有者が収用委員会による裁決について不服を有する場合であって、不服の内容が損失の補償に関するものであるときは、土地所有者が提起すべき訴訟は当事者訴訟になる。
5・・・正しい

●「収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴え → 形式的当事者訴訟

「収用委員会の裁決のうち損失の補償」に関する訴えは、これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告として争わなければなりません(土地収用法133条2項3項)。
これは、「形式当事者訴訟」に該当します。したがって、本問の「当事者訴訟」という記述は正しいです。
当事者訴訟には、「実質的当事者訴訟」と「形式当事者訴訟」の2つがあります。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問20|国家賠償法

 

国家賠償法1条に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.建築主事は、建築主の申請に係る建築物の計画について建築確認をするに当たり、建築主である個人の財産権を保護すべき職務上の法的義務を負うものではないから、仮に当該建築主の委託した建築士が行った構造計算書の偽装を見逃したとしても、そもそもその点について職務上の法的義務違反も認められないことから、当該建築確認は国家賠償法1条1項の適用上違法にはならない。

イ.警察官が交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合において、当該追跡行為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否かについては、当該追跡の必要性、相当性に加え、当該第三者が被った損害の内容および性質ならびにその態様および程度などの諸要素を総合的に勘案して決せられるべきである。

ウ.法令に基づく水俣病患者認定申請をした者が、相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされないという利益は、内心の静穏な感情を害されない利益として、不法行為法上の保護の対象になるが、当該認定申請に対する不作為の違法を確認する判決が確定していたとしても、そのことから当然に、国家賠償法1条1項に係る不法行為の成立が認められるわけではない。

エ.所得金額を過大に認定して行われた所得税の更正は、直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることとなるが、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、過失があるとの評価を受けることとなる。

オ.公立学校における教師の教育活動も国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に該当するから、学校事故において、例えば体育の授業において危険を伴う技術を指導する場合については、担当教師の指導において、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務が尽くされたかどうかが問題となる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:5

【解説】

ア.建築主事は、建築主の申請に係る建築物の計画について建築確認をするに当たり、建築主である個人の財産権を保護すべき職務上の法的義務を負うものではないから、仮に当該建築主の委託した建築士が行った構造計算書の偽装を見逃したとしても、そもそもその点について職務上の法的義務違反も認められないことから、当該建築確認は国家賠償法1条1項の適用上違法にはならない。
ア・・・妥当ではない
本肢は「最判平25.3.26」の事案です。
一級建築士が、構造計算書を偽装して、建築確認の申請書を提出した。
この申請について、建築主事は、その偽装を見抜けずに建築確認の処分を行った。
この処分について、国賠法1条の適用上違法として損害賠償請求ができるか?という内容です。この点について判例によれば、
公務員の公権力の行使が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるためには、当該公務員が被害者個人に対して職務上の法的義務を負っており、当該公務員がその義務に違反したことが必要であるところ、そもそも、建築主事は建築主の申請に係る建築物の計画について建築確認をするに当たり建築主である個人の財産権を保護すべき職務上の法的義務を負うものとはいえない。」と示しており、
さらに、
建築主事による当該計画に係る建築確認は、例えば、当該計画の内容が建築基準関係規定に明示的に定められた要件に適合しないものであるときに、申請書類の記載事項における誤りが明らかで、当該事項の審査を担当する者として他の記載内容や資料と符合するか否かを当然に照合すべきであったにもかかわらずその照合がされなかったなど、建築主事が職務上通常払うべき注意をもって申請書類の記載を確認していればその記載から当該計画の建築基準関係規定への不適合を発見することができたにもかかわらずその注意を怠って漫然とその不適合を看過した結果当該計画につき建築確認を行ったと認められる場合に、国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である
と示しています。
つまり、仮に当該建築主の委託した建築士が、構造計算書の偽装を見逃した場合、国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合もあるので、本肢は、妥当ではないです。
イ.警察官が交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合において、当該追跡行為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否かについては、当該追跡の必要性、相当性に加え、当該第三者が被った損害の内容および性質ならびにその態様および程度などの諸要素を総合的に勘案して決せられるべきである。
イ・・・妥当ではない
本肢は「最判昭61.2.27」の事案です。
判例によると
警察官が交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合、
①追跡が現行犯逮捕、職務質問等の職務の目的を遂行するうえで不必要である」か、又は「②逃走車両の走行の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らして追跡の開始、継続若しくは方法が不相当である」場合、違法となります。
したがって、本肢は妥当ではないです。
ウ.法令に基づく水俣病患者認定申請をした者が、相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされないという利益は、内心の静穏な感情を害されない利益として、不法行為法上の保護の対象になるが、当該認定申請に対する不作為の違法を確認する判決が確定していたとしても、そのことから当然に、国家賠償法1条1項に係る不法行為の成立が認められるわけではない。

ウ・・・妥当

結論からいうと、これは正しいです。

つまり、「不作為の違法が確定」しても、直ちに、国賠法の不法行為が成立するわけではない
ということです。

そして、どのような場合に国賠法の不法行為が成立し
損害賠償請求ができるのか?

これは、「最判平3.4.26」の判例から分かります。

判例によると
水俣病患者の認定申請をした者が、相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされない利益は、不法行為法上の保護の対象になり、
①その期間に比してさらに長期間にわたり遅延が続き、かつ、②その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかった場合、国家賠償法1条等に基づく損害賠償請求ができる
としています。
したがって、本肢は妥当です。

【詳細解説】

水俣病患者が認定申請をし、この申請を受けた処分庁は、不当に長期間にわたらないうちに応答処分をすべき作為義務がある。
この作為義務違反というためには、下記事情が必要。
客観的に処分庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず、
①その期間に比べて更に長期間にわたり処分をしない状況が続き、かつ、②その間、処分庁として通常期待される努力を尽くさなかったことが必要である。
①②を満たす場合、国家賠償法1条等に基づく損害賠償請求ができる。
上記から、不作為の違法が認められたからといって、当然に国賠法1条1項の不法行為が成立するわけではありません。

エ.所得金額を過大に認定して行われた所得税の更正は、直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることとなるが、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、過失があるとの評価を受けることとなる。
エ・・・妥当ではない
本肢は「最判平5.3.11」の事案です。
判例によると
税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく
税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、違法の評価を受けるものと解するのが相当である。
と示しています。
【前半部分】 「直ちに違法評価を受けることにはならない」ので妥当ではありません。
【後半部分】 「税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合、」「違法となる」が正しいです。

オ.公立学校における教師の教育活動も国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に該当するから、学校事故において、例えば体育の授業において危険を伴う技術を指導する場合については、担当教師の指導において、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務が尽くされたかどうかが問題となる。
オ・・・妥当
本肢は「最判昭62.2.6」の事案です。
判例によると
国家賠償法1条1項にいう『公権力の行使』には、公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解するのが相当である
また、
学校の教師は、学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負つており、危険を伴う技術を指導する場合には、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務があることはいうまでもない
と示しているので、本肢は妥当です。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問19|行政事件訴訟法・差止訴訟

次の文章は、行政事件訴訟法の定める差止訴訟に関する最高裁判所判決の一節である。空欄[ A ]~[ D ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

行政事件訴訟法37条の4第1項の差止めの訴えの訴訟要件である、処分がされることにより『[ A ]を生ずるおそれ』があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分された後に[ B ]等を提起して[ C ]の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。・・・(中略)・・・。
・・・第1審原告らは、本件飛行場に係る第一種区域内に居住しており、本件飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や、不快感、健康被害への不安等を始めとする精神的苦痛を[ D ]受けており、その程度は軽視し難いものというべきであるところ、このような被害の発生に自衛隊機の運航が一定程度寄与していることは否定し難い。また、上記騒音は、本件飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり、上記被害もそれに応じてその都度発生し、これを[ D ]受けることにより蓄積していくおそれのあるものであるから、このような被害は、事後的にその違法性を争う[ B ]等による救済になじまない性質のものということができる。
(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)

A.ア 重大な損害  イ 回復の困難な損害
B.ア 民事訴訟   イ 取消訴訟
C.ア 仮処分    イ 執行停止
D.ア 一時的にせよ イ 反復継続的に

  1. A:ア B:ア C:ア D:ア
  2. A:ア B:ア C:イ D:ア
  3. A:ア B:イ C:イ D:イ
  4. A:イ B:ア C:ア D:イ
  5. A:イ B:イ C:イ D:イ

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【答え】:3

【解説】

行政事件訴訟法37条の4第1項の差止めの訴えの訴訟要件である、処分がされることにより『[A:重大な損害]を生ずるおそれ』があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分された後に[B:取消訴訟]等を提起して[C:執行停止]の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。・・・(中略)・・・。
・・・第1審原告らは、本件飛行場に係る第一種区域内に居住しており、本件飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や、不快感、健康被害への不安等を始めとする精神的苦痛を[D:反復継続的に]受けており、その程度は軽視し難いものというべきであるところ、このような被害の発生に自衛隊機の運航が一定程度寄与していることは否定し難い。また、上記騒音は、本件飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり、上記被害もそれに応じてその都度発生し、これを[D:反復継続的に]受けることにより蓄積していくおそれのあるものであるから、このような被害は、事後的にその違法性を争う[B:取消訴訟]等による救済になじまない性質のものということができる。

A.行政事件訴訟法37条の4第1項の差止めの訴えの訴訟要件である、処分がされることにより『[ A ]を生ずるおそれ』があると認められるためには、・・・
A・・・「重大な損害(ア)」
差止めの訴え差止め訴訟)とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟を言います。

上記「処分や裁決がされようとしている場合」に行う訴訟なので、処分や裁決がされる前に提起するものだということです。

例えば、Aが建物を建築したが、甲県がこの建物は違法建築物ではないですか?と行政指導をAに対して行った。この建物は違法建築物ではないのですが、このまま放っておくと、除去命令の処分をされかねません。そのためAは甲県に対して、除去命令をしないように差止めの訴えを提起することができます。

そして、この差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができます(行政事件訴訟法37条の4第1項)。したがって、「Aには重大な損害(ア)」が入ります。

B.C.行政事件訴訟法37条の4第1項の差止めの訴えの訴訟要件である、処分がされることにより『[ A ]を生ずるおそれ』があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分された後に[ B ]等を提起して[ C ]の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。
B・・・「取消訴訟(イ)」
C・・・「執行停止(イ)」
「差止めの訴え」は、処分がなされる前の救済方法であり、
処分がなされた後については「取消訴訟等を提起して執行停止」の決定を受けることで救済を図れます

D.第1審原告らは、本件飛行場に係る第一種区域内に居住しており、本件飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や、不快感、健康被害への不安等を始めとする精神的苦痛を[ D ]受けており、その程度は軽視し難いものというべきであるところ、このような被害の発生に自衛隊機の運航が一定程度寄与していることは否定し難い。
D・・・「反復継続的に(イ)」
判決文と選択肢を比べると、「飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害などの精神的苦痛を[ D:どのくらいの頻度で ]受けているかを考えます。
その次の文で「その程度(精神的苦痛の程度)は軽視し難いものというべきである」ということから、「Dには反復継続的に」を入れる方が妥当です。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問18|行政事件訴訟法・民衆訴訟・機関訴訟

行政事件訴訟法の定める民衆訴訟と機関訴訟に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. A県知事に対してA県住民が県職員への条例上の根拠を欠く手当の支給の差止めを求める訴訟は、民衆訴訟である。
  2. A県県営空港の騒音被害について、被害を受けたと主張する周辺住民がA県に対して集団で損害の賠償を求める訴訟は、民衆訴訟である。
  3. A県が保管する国の文書について、A県知事が県情報公開条例に基づき公開の決定をした場合において、国が当該決定の取消しを求める訴訟は、機関訴訟である。
  4. A県議会議員の選挙において、その当選の効力に関し不服がある候補者がA県選挙管理委員会を被告として提起する訴訟は、機関訴訟である。
  5. A県がB市立中学校で発生した学校事故にかかわる賠償金の全額を被害者に対して支払った後、B市が負担すべき分についてA県がB市に求償する訴訟は、機関訴訟である。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.A県知事に対してA県住民が県職員への条例上の根拠を欠く手当の支給の差止めを求める訴訟は、民衆訴訟である。

1・・・妥当

●国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟 → 民衆訴訟

民衆訴訟とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいいます(行政事件訴訟法5条)
本問の内容は「住民が、地方自治体の執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求を行う」内容なので、地方自治法に基づく住民訴訟(地方自治法242条の2)にあたります。民衆訴訟については、下記2つの具体例を頭に入れておきましょう!

2.A県県営空港の騒音被害について、被害を受けたと主張する周辺住民がA県に対して集団で損害の賠償を求める訴訟は、民衆訴訟である。

2・・・ 妥当でない

●「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」による損害 → 国家賠償法2条の対象

本問は「国家賠償法2条」の損害賠償請求訴訟(国家賠償請求訴訟:民事訴訟)です。道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責任があります(国家賠償法2条1項)。本問はこれに該当します。

■民衆訴訟は、客観訴訟であり、自己の法律上の利益にかかわらない資格(内容)で提起するものをいいます。本問のような損害賠償訴訟は、自己の法律上の利益が害されているので、客観訴訟には該当しません。そのため民衆訴訟として提起はできません。

3.A県が保管する国の文書について、A県知事が県情報公開条例に基づき公開の決定をした場合において、国が当該決定の取消しを求める訴訟は、機関訴訟である。

3・・・妥当でない

● 「国・公共団体の機関」同士の「権限の存否・行使」の紛争 → 機関訴訟

本肢は、「抗告訴訟」の中の「取消訴訟」にあたります。

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいいます(行政事件訴訟法3条1項)。

一方、機関訴訟とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいいます(行政事件訴訟法6条)。

本肢は、沖縄県那覇市が、那覇市の情報公開条例に基づいて、「自衛隊対潜水艦戦作戦センター庁舎の建築計画書」を市民団体の請求に対して開示決定し、この決定に対して「国防上の支障が生じる」として国が当該開示決定の取消訴訟を提起したという事案です(最判平13.7.13)。

【理解】 本問は「国」が「A県知事の行った情報公開の決定」について取り消すよう訴えています。国とA県との紛争ですが、「権限の存否(権限のあるなし)・権限の行使」に関する紛争ではありません。

「A県知事の情報公開の決定(公権力の行使)」に関して取り消すよう訴えているので「取消訴訟」です。

<機関訴訟における権限の存否とは?> 権限が誰にあるかについての争いを指し、

例えば、地方自治法において、
「地方自治体の長」と「議会」とが「議会の議決」について対立した場合、
どちらが権限を持つのかを解決するために
「地方自治体の長」または「議会」は裁判所に出訴することができます(地方自治法176条7項)。

4.A県議会議員の選挙において、その当選の効力に関し不服がある候補者がA県選挙管理委員会を被告として提起する訴訟は、機関訴訟である。

4・・・妥当でない

● 選挙の効力に関する訴訟 → 民衆訴訟

選挙の効力に関する訴訟は「民衆訴訟」の典型例です。これはそのまま覚えておきましょう!したがって、本問は民衆訴訟なので妥当ではありません。民衆訴訟とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいいます(行政事件訴訟法5条)。

本問の内容は民衆訴訟の具体例として適切なので、この具体例も覚えましょう!

「A県議会議員の選挙において、その当選の効力に関し不服がある候補者がA県選挙管理委員会を被告として提起する訴訟」=「民衆訴訟」

機関訴訟は、「国又は公共団体の機関相互間」における「権限の存否又はその行使に関する紛争」についての訴訟をいいます(行政事件訴訟法6条)(選択肢3参照)。

【ちなみに、抗告訴訟でない理由】

抗告訴訟を提起できるのは、「法律上の利益を有する者」です。「法律上の利益を有する者」とは、「処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されるおそれのある者」です。

ここで、「処分=落選処分」を指します。

「当選する権利」は、そもそも「自己の権利」でもなければ「法律上保護された利益」でもありません。なぜなら、絶対に当選するわけではないからです。

落選した人は、「法律上の利益を有する者」とは言えないので
抗告訴訟の対象者ではないです。

5.A県がB市立中学校で発生した学校事故にかかわる賠償金の全額を被害者に対して支払った後、B市が負担すべき分についてA県がB市に求償する訴訟は、機関訴訟である。

5・・・妥当でない

●営造物の設置者・管理者と費用の負担者が異なる場合の求償(国家賠償法3条に基づく国家賠償訴訟)

本問は、国家賠償法(国賠法)3条1項の「国家賠償訴訟」です。国賠法3条1項では、

①公務員による違法な公権力の行使により、他人に損害を与えた場合、「公務員の選任・監督者」と「給与負担者」が異なる場合、この二者は連帯債務を負います。そして、損害を賠償した者は、 「公務員の選任・監督者」と「給与負担者」との内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有します。

また、②営造物の設置・管理の瑕疵により他人に損害を与えた場合、「公の営造物の設置・管理者」と「設置・管理の費用負担者」が異なる場合、この二者は連帯債務を負います。そして、損害を賠償した者は、 「公務員の選任・監督者」と「給与負担者」との内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有します。

本問は、「B市立中学校で発生した学校事故にかかわる賠償金」についてと書いてありますが、①か②かは分からないです。いずれにしても、B市とA県の両者の連帯債務となり、今回A県が賠償しているので、A県はB市に対して、国賠法3条に基づく求償を行えます(国家賠償訴訟) 。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問17|行政事件訴訟法・判決の効力

許認可等の申請に対する処分について、それに対する取消訴訟の判決の効力に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 申請を認める処分を取り消す判決は、原告および被告以外の第三者に対しても効力を有する。
  2. 申請を認める処分についての取消請求を棄却する判決は、処分をした行政庁その他の関係行政庁への拘束力を有さない。
  3. 申請を拒否する処分が判決により取り消された場合、その処分をした行政庁は、当然に申請を認める処分をしなければならない。
  4. 申請を認める処分が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合、その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない。
  5. 申請を拒否する処分に対する審査請求の棄却裁決を取り消す判決は、裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

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【答え】:3

【解説】

1.申請を認める処分を取り消す判決は、原告および被告以外の第三者に対しても効力を有する。

1・・・正しい

●取消判決の効力 → 第三者に対しても効力が生じる(第三者効)

処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有します(行政事件訴訟法32条1項)。
したがって、本問は正しいです。第三者に対しても効力を有することを「第三者効」と言います。

2.申請を認める処分についての取消請求を棄却する判決は、処分をした行政庁その他の関係行政庁への拘束力を有さない。

2・・・ 正しい

●取消判決(認容判決)の効力 → 処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する(拘束力)

●棄却判決(=処分を取り消しない判決) → 拘束力はない → 処分は有効のまま:本肢

処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)。
一方、棄却判決は、拘束力を有しないので、本肢は正しいです。
このように、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する効力を「拘束力」と言います。

【具体例】

例えば、マンション建設のための建築確認を求める申請をして、確認処分をした=申請を認める処分をした

周辺住民が、マンション建設によって、日当たりが悪くなる!だから確認処分を取消してください!
と取消請求をする。

しかし、裁判所は、建築確認に違法性はないとして、請求棄却。

この場合、処分は取り消されずにそのまま有効なので、
(処分の変更も不要なので)
関係行政庁を拘束する必要性はありません。

よって、
関係行政庁への拘束力を有しません。

3.申請を拒否する処分が判決により取り消された場合、その処分をした行政庁は、当然に申請を認める処分をしなければならない。

3・・・誤り

●「申請に対する拒否処分」について取消判決 → 行政庁は、改めて申請に対して処分する義務を負う(拘束力)

「申請に対する拒否処分」が判決により取り消された場合、改めて、申請に対する処分等を行う必要があります(行政事件訴訟法33条2項)。

本問のように、当然に「申請を認める処分(=許可)」をしなければならないわけではありません。申請の内容によっては別の理由で、拒否処分(不許可)もあり得ます。

4.申請を認める処分が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合、その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない。

4・・・正しい

●「申請に対する処分」「審査請求に対する裁決」について取消判決 → 行政庁は、改めて申請に対して処分・裁決する義務を負う(拘束力)

「申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決」が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければなりません(行政事件訴訟法33条2項3項)。したがって、本問は正しいです。

ちなみに、「申請に対する処分」とは、拒否処分(却下・棄却)を想定しております。申請が拒否されたから取消訴訟を提起するイメージです。

5.申請を拒否する処分に対する審査請求の棄却裁決を取り消す判決は、裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

5・・・正しい

●取消判決の効力 → 関係行政庁を拘束する(拘束力)

処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)(選択肢1参照)。したがって、本問は正しいです。本問の状況は下図の通りで、裁決について取消し判決があったということです。結果として、行政庁は再度裁決をしなければなりません(=拘束力)。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問16|行政不服審査法

次に掲げる行政不服審査法の条文の空欄[ ア ]~[ オ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

第18条第1項 処分についての審査請求は、[ ア ]から起算して3月・・・(中略)・・・を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

第26条 執行停止をした後において、[ イ ]が明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。

第45条第1項 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合・・・(中略)・・・には、審査庁は、[ ウ ]で、当該審査請求を[ エ ]する。

第59条第1項 処分(事実上の行為を除く。)についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、[ オ ]で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。

  1.  ア:処分があったことを知った日の翌日 イ:当該審査請求に理由がないこと ウ:裁決 エ:棄却 オ:裁決
  2.  ア:処分があったことを知った日 イ:執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすこと ウ:決定 エ:棄却 オ:裁決
  3.  ア:処分があったことを知った日の翌日 イ:執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすこと ウ:裁決 エ:却下 オ:決定
  4.  ア:処分があったことを知った日 イ:当該審査請求に理由がないこと ウ:決定 エ:棄却 オ:裁決
  5.  ア:処分があったことを知った日の翌日 イ:執行停止が公の利益に著しい障害を生ずること ウ:裁決 エ:却下 オ:決定

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【答え】:3

【解説】

ア.第18条第1項 処分についての審査請求は、[ ア ]から起算して3月・・・(中略)・・・を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
ア・・・「処分があったことを知った日の翌日」
行政不服審査法18条1項は、下記の通り規定されています。
「処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して1か月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」
つまり、「ア」には「処分があったことを知った日の翌日」が入ります。

【注意点】 下記と対比して頭に入れておきましょう!

イ.第26条 執行停止をした後において、[ イ ]が明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。
イ・・・「執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすこと」
行政不服審査法26条は、下記の通り規定されています。
「執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。」
つまり、「イ」には「執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすこと」が入ります。

ウ.エ.第45条第1項 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合・・・(中略)・・・には、審査庁は、[ ウ ]で、当該審査請求を[ エ ]する。
ウ・・・「裁決」
エ・・・「却下」
行政不服審査法45条1項は、下記の通り規定されています。
「処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。」
つまり、「ウ」には「裁決」が入り「エ」には「却下」が入ります。

参考 下記内容は覚えなくても大丈夫です。

①「公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき」とは

例えば、違法建築物の所有者が、市長から除去命令を受けた。当該命令に不満を持ち、執行停止の申立てを行いました。

しかし、違法建築物が今にも倒壊しそうで、近隣住宅の被害や前面道路の通行人に被害が及ぶことが明らかな場合、執行停止の取消しを行うことができ、除去命令に従わない場合、代執行を行うことも可能です。

②「事情変更」とは

例えば、あなたが、自分の住む市の施設の使用許可を申請して、不許可処分を受けた。その処分に不満を持ち、執行停止の申立てを行いました。

その施設は、その市に住む住民しか使うことができない条例がありました。

その後、あなたが別の市に引っ越した場合(=事情変更)、使用許可申請自体できないこととなるので、執行停止の取消が行うことができます。

オ.第59条第1項 処分(事実上の行為を除く。)についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、[ オ ]で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
オ・・・「決定」
行政不服審査法59条1項は、下記の通り規定されています。
「処分(事実上の行為を除く。)についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。」
つまり、「オ」には「決定」が入ります。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問15|行政不服審査法・審査請求

行政不服審査法の定める審査請求に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.審査請求は、代理人によってもすることができ、その場合、当該代理人は、各自、審査請求人のために、原則として、当該審査請求に関する一切の行為をすることができるが、審査請求の取下げは、代理人によってすることはできない。

イ.審査庁となるべき行政庁は、必ず標準審理期間を定め、これを当該審査庁となるべき行政庁および関係処分庁の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

ウ.審理員は、審査請求人または参加人の申立てがあった場合において、審理の進行のため必要と認めるときに限り、当該申立てをした者に、口頭で意見を述べる機会を与えることができる。

エ.審査請求人が死亡したときは、相続人その他法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者は、審査請求人の地位を承継する。

オ.審査請求人以外の者であって、審査請求に係る処分または不作為に係る処分の根拠となる法令に照らし当該処分につき利害関係を有するものと認められる利害関係人は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:5

【解説】

ア.審査請求は、代理人によってもすることができ、その場合、当該代理人は、各自、審査請求人のために、原則として、当該審査請求に関する一切の行為をすることができるが、審査請求の取下げは、代理人によってすることはできない。
ア・・・誤り
審査請求は、代理人によってすることができます(行政不服審査法12条1項)。
そして、代理人は、各自、審査請求人のために、当該審査請求に関する一切の行為をすることができます。
ただし、審査請求の取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができます(行政不服審査法12条2項)。
したがって、「審査請求の取下げは代理人によってすることはできない」とする本肢は誤りです。

イ.審査庁となるべき行政庁は、必ず標準審理期間を定め、これを当該審査庁となるべき行政庁および関係処分庁の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。
イ・・・誤り
審査庁となるべき行政庁は、審査請求がその事務所に到達してから当該審査請求に対する裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません(行政不服審査法16条)。
したがって、標準審理期間を定めることは、努力義務なので、必ずしも定める必要はありません。
よって、本肢は誤りです。

ウ.審理員は、審査請求人または参加人の申立てがあった場合において、審理の進行のため必要と認めるときに限り、当該申立てをした者に、口頭で意見を述べる機会を与えることができる。
ウ・・・誤り
審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(申立人)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければなりません。
ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、口頭意見陳述は不要です(行政不服審査法31条1項)。したがって、「審理の進行のため必要と認めるときに限り、口頭で意見を述べる機会を与えることができる」としている本肢は誤りです。
審理員は、原則、申立てがあった場合、口頭で意見を述べる機会を与えないといけません。

エ.審査請求人が死亡したときは、相続人その他法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者は、審査請求人の地位を承継する。
エ・・・正しい
審査請求人が死亡したときは、相続人その他法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者は、審査請求人の地位を承継します(行政不服審査法15条1項)。
よって、本肢は正しいです。

オ.審査請求人以外の者であって、審査請求に係る処分または不作為に係る処分の根拠となる法令に照らし当該処分につき利害関係を有するものと認められる利害関係人は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができる。
オ・・・正しい
利害関係人(審査請求人以外の者であって審査請求に係る処分又は不作為に係る処分の根拠となる法令に照らし当該処分につき利害関係を有するものと認められる者)は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができます(行政不服審査法13条1項)。
よって、本肢は正しいです。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問14|行政不服審査法・審査請求

行政不服審査法の定める不作為についての審査請求に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 不作為についての審査請求は、当該処分についての申請をした者だけではなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者がなすことができる。
  2. 不作為についての審査請求は、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がなされていないときにも、なすことができる。
  3. 不作為についての審査請求の審査請求期間は、申請がなされてから「相当の期間」が経過した時点から起算される。
  4. 不作為についての審査請求の審理中に申請拒否処分がなされた場合については、当該審査請求は、拒否処分に対する審査請求とみなされる。
  5. 不作為についての審査請求がなされた場合においても、審査庁は、原則として、その審理のために、その職員のうちから審理員を指名しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.不作為についての審査請求は、当該処分についての申請をした者だけではなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者がなすことができる。
1・・・妥当でない
法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為がある場合には、当該不作為についての審査請求をすることができる(行政不服審査法3条)。
したがって、「法律上の利益を有する者」ができる、としている本肢は妥当ではありません。 「申請をした者」のみ、不作為についての審査請求ができます

2.不作為についての審査請求は、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がなされていないときにも、なすことができる。
2・・・妥当でない
不作為についての審査請求は、行政庁が法令に基づく申請に対して当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず何らの処分をもしない場合にすることができます(行政不服審査法3条)。したがって、本肢は妥当ではありません。

3.不作為についての審査請求の審査請求期間は、申請がなされてから「相当の期間」が経過した時点から起算される。
3・・・妥当でない
結論からいうと、不作為についての審査請求の請求期間については、起算点がありません。

なぜなら、不作為状態が続く限りずっと審査請求ができるからです。

起算点があるのは、期間の最後が決められている場合です。

処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヵ月(正当な理由がある場合を除く)を経過したときは、することができません。(行政不服審査法18条1項)
一方、不作為についての審査請求にはこのような審査請求期間の規定はなく、不作為状態が続く限り、審査請求をすることができます
したがって、本肢は妥当ではありません。

【不作為に対する審査請求はいつからできるか?】

申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為がある場合に、当該不作為についての審査請求をすることができる(行政不服審査法3条)。

4.不作為についての審査請求の審理中に申請拒否処分がなされた場合については、当該審査請求は、拒否処分に対する審査請求とみなされる。
4・・・妥当でない
本肢のような規定は、行政不服審査法には、存在しません。
5.不作為についての審査請求がなされた場合においても、審査庁は、原則として、その審理のために、その職員のうちから審理員を指名しなければならない。
5・・・妥当
審査請求がされた行政庁(審査庁)は、審査庁に所属する職員のうちから審理手続を行う者を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等に通知しなければなりません(行政不服審査法9条1項)。
この審査請求には、処分に対する審査請求だけでなく、不作為に対する審査請求も含まれます
したがって、本肢は妥当です。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略