行政法

行政立法(法規命令と行政規則)

立法とは、ルール(法規範)を定めることで、憲法では、「国会が唯一の立法機関」と定めており、「法律」は国会が定めます。例えば、「建築基準法(法律)」です。しかし、法律は、最低限のルールを定めるだけで、これだけでは不十分です。そのため、「建築基準法施行令(政令)」や「建築基準法施行規則」といった付属のルールが付いてきます。この「建築基準法施行令(政令)」や「建築基準法施行規則」が「行政立法」です。
そして、行政立法には、「法規命令」と「行政規則」の2つがあります。


法規命令とは?

法規命令とは、国民の権利義務に関わる命令を言います。
そして、法規命令には「内閣が制定する政令」「内閣総理大臣が制定する内閣府令」「各省大臣が制定する省令」「各庁の長官や委員会等が制定する規則」があります。そして、法規命令は「執行命令」と「委任命令」に分けることができます。

名称 制定する者
政令(~施行令) 内閣
内閣府令 内閣総理大臣
省令(~施行規則) 各省の大臣
規則 各庁の長官、委員会

執行命令とは?

執行命令とは、法律を実施するための具体的細目(細かい内容)を定めたルールです。

宅建業法施行規則が執行命令です。

例えば、

宅建業法第三条第三項では
「免許の有効期間の満了後、引き続き宅建業を営もうとする者は、免許の更新を受けなければならない。」
と規定しています。

しかし、上記法律では、いつまでに更新を受けたらいいのか分かりません。

そこで、宅建業法施行規則の第三条で
「免許の更新を受けようとする者は、免許の有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に免許申請書を提出しなければならない。」
細かくルールを定めています。

つまり、宅建業法施行規則が執行命令ということが分かります。

委任命令とは?

委任命令とは、新たに権利義務を設定する命令です。

上記でも解説しましたが「国会が国の唯一の立法機関」と憲法で定められているので、国会が作った「法律」の中に、別のルールで細かいルールを定めていいですよ!という委任がないといけません。
そして、法律は命令に対して、白紙委任をしてはいけません。
どういうことかというと、委任するときは具体的に委任しなさい!抽象的な委任ではダメですよ!ということです。
個別具体的に委任する必要があります。

例えば、宅建業法33条で、宅建業者が広告を出せる時期を制限しています。
33条では、建築前の建物については、建築確認後であれば広告を出していいですよ。とか、宅地造成前(工事前)については、開発許可を受けた後であれば広告を出していいよ。と定めており、その他「政令で定めるものがあった後でなければ広告してはならない」と追加で義務を、政令に委任しています。

そして、政令(宅建業法施行令)では、上記以外にも農地法の許可が必要な場合は、許可を得た後でないと広告できないという風に、新たに義務を設定しています。

行政規則とは?

行政規則は、行政組織内部における命令で、国民の権利義務には関係してきません。そして、行政規則には「訓令」や「通達」があり、それ以外にも行政手続法で出てくる「審査基準」「処分基準」「行政指導指針」も行政規則に含まれます。

訓令とは?

上級行政機関が下級行政機関に対して、指揮・監督するために発する命令です。
例えば、知事が、都道府県の担当部署に発する命令です。

通達とは?

訓令が書面となっているものが通達です。
つまり、訓令と通達と内容自体は同じです。

試験に出やすいポイント

  • 行政規則である審査基準や処分基準は、違反しても直ちに違法とはならない

行政機関とは?

行政機関とは?

行政主体のために意思決定、意思表示、執行などを行う担当者や部署を言います。

行政機関には、上記の通り、行政庁、諮問機関、参与機関、監査機関、執行機関、補助機関があります。勉強を進める中ですべて覚えていきましょう!

行政庁とは?

行政庁とは、行政主体の法律上の意思を決定し、外部に表示する権限を有する機関を言います。これは、行政書士試験でそのまま出題される場合もあるので、上記文言を覚えておきましょう!

行政庁とは、例えば、都道府県知事市町村長、財務大臣、金融庁長官、警察署長、税務署長、建築主事等です。イメージとしては、各組織のトップです。会社で言えば、社長や支店長です。何らかの意思決定をするのは、組織の下の人ではなく、トップですよね!このトップが行政庁です。

そして、行政庁には、独任制合議制の2つがあります。

独任制の行政庁

上記事例は、すべて「独任制の行政庁」です。なぜなら、知事や市町村長、財務大臣などは、すべて一人の人が担当しているからです。そして、この一人の人が決断をして決定したことを外部に表示します。

合議制の行政庁

一方、「合議制の行政庁」もあります。例えば、公正取引委員会、公安委員会、教育委員会、人事院、会計検査院等です。これらの行政庁は、複数の人が集まった組織で、意見交換(話し合い)をして、意思決定を行います。

諮問機関とは?

諮問(しもん)とは、専門家に意見を求めることを言います。つまり、諮問機関とは、特定の問題に関して審議や調査を行い、行政庁に対して意見を言う機関(組織)です。

そして、諮問機関の意見は、行政庁を拘束しません。つまり、知事等が、諮問機関に意見を求めて、諮問機関がそれに対してアドバイス(答申)をしたとしても、そのアドバイスと違った意思決定をしてもよいということです。

この点は、参与機関と違う点なので、行政書士試験でも出題されます。

諮問機関の例として、法制審議会、中央教育審議会、社会保障制度審議会、地方制度調査会等がありますが、覚える必要はありません。

参与機関とは?

参与機関とは、専門家の集まりで、特定の行政業務に精通している有識者の集まりで、この点は諮問機関と同様です。

違うところは、参与機関の意見は、行政庁を拘束します。つまり、知事等は、参与機関の意見を無視した意思決定を行うことができないということです。

参与機関の例として、電波監理審議会、検察官適格審査会等がありますが、これも覚えなくて大丈夫です。

諮問機関 行政庁を拘束しない
参与機関 行政庁を拘束する

監査機関とは?

監査機関とは、行政機関の事務や会計などを検査し、業務が適正に行われているかを監査する機関です。例えば、国の会計監査を行う会計監査院、地方公共団体の監査委員等があります。

行政書士試験の問題として、監査機関がどこかを問う問題が出題される確率は低いので、覚える必要はないです。

執行機関とは?

執行機関とは、行政庁が決定した事柄を「実力行使」する機関です。

実力行使とは、①税金を滞納する国民に対して、資産の差押えをしたり、②火災が発生している建物に放水したり、③悪いことをしている人を現行犯逮捕したりすることを言います。
執行機関の具体例として、①の徴税職員、②の消防官、③の警察官等がいます。

行政書士試験対策としては、頭の片隅に置いておくくらいで大丈夫です。

補助機関とは?

補助機関とは、行政庁やその他の行政機関の職務の補助する機関を指し、日常的な事務仕事を行う担当者のイメージです。行政庁以外(トップ以外)の人とも言えます。

補助機関の具体例としては、副大臣、副知事、副市長、課長、一般職員です。

執行機関とよく似ていますが、補助機関は実力行使をしない点で異なります。

「行政機関」の行政書士試験対策

行政機関について、詳しく出題される問題はあまりないですが、イメージとして持っておかないと行政書士の過去問を解いて行く中でまったく理解できない状況に陥ってしまいます。

そのため、基礎知識として、ある程度頭に入れておきましょう。

過去問を解きながら、分からないときはこのページで確認すればよいでしょう!