2013年過去問

平成25年・2013|問37|会社法・譲渡制限株式

取締役会設置会社が、その発行する全部の株式の内容として、譲渡による株式の取得について当該会社の承認を要する旨を定める場合(以下、譲渡制限とはこの場合をいう。)に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.会社が譲渡制限をしようとするときは、株主総会の決議により定款を変更しなければならず、この定款変更の決議は、通常の定款変更の場合の特別決議と同じく、定款に別段の定めがない限り、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行われる。

イ.譲渡制限の定めのある株式を他人に譲り渡そうとする株主は、譲渡による株式の取得について承認をするか否かの決定をすることを会社に対して請求できるが、この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがない場合を除き、当該株式を譲り受ける者と共同して行わなければならない。

ウ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得について承認をするか否かの決定をすることを請求された会社が、この請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に譲渡等の承認請求をした者に対して当該決定の内容について通知をしなかった場合は、当該会社と譲渡等の承認請求をした者との合意により別段の定めをしたときを除き、承認の決定があったものとみなされる。

エ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社は、対象となる株式の全部または一部を買い取る者を指定することができ、この指定は定款に別段の定めがない限り、取締役会の決議によって行う。

オ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社が当該株式を買い取る場合は、対象となる株式を買い取る旨、および会社が買い取る株式の数について、取締役会の決議により決定する。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:4
【解説】

ア.会社が譲渡制限をしようとするときは、株主総会の決議により定款を変更しなければならず、この定款変更の決議は、通常の定款変更の場合の特別決議と同じく、定款に別段の定めがない限り、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行われる。
ア・・・誤り
株式の取得に会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款変更を行う場合の株主総会決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければなりません(会社法309条3項1号:特殊決議)。
本肢は「過半数」が誤りです。
正しくは「半数」です。

イ.譲渡制限の定めのある株式を他人に譲り渡そうとする株主は、譲渡による株式の取得について承認をするか否かの決定をすることを会社に対して請求できるが、この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがない場合を除き、当該株式を譲り受ける者と共同して行わなければならない。
イ・・・誤り
譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法136条)。
したがって、「譲渡制限株式の株主」からの譲渡の承認請求は、単独でできます。
よって誤りです。

【理由】 譲渡制限株式を取得したと偽る(いつわる)者が現れ、真の株主が害される恐れがあるから。

ウ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得について承認をするか否かの決定をすることを請求された会社が、この請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に譲渡等の承認請求をした者に対して当該決定の内容について通知をしなかった場合は、当該会社と譲渡等の承認請求をした者との合意により別段の定めをしたときを除き、承認の決定があったものとみなされる。
ウ・・・正しい
株式会社が譲渡制限株式を譲り渡そうとする者からの承認請求又は譲受人からの承認請求の日から2週間以内に譲渡等の承認の決定等の通知をしなかった場合は、株式会社は、株式譲渡の承認をする旨の決定をしたものとみなします
ただし、株式会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、その定めに従います(会社法第145条1号)。
よって、本肢は正しいです。

エ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社は、対象となる株式の全部または一部を買い取る者を指定することができ、この指定は定款に別段の定めがない限り、取締役会の決議によって行う。
エ・・・正しい
株式会社は、譲渡承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡制限株式の全部又は一部を買取る者の指定をすることもできます(会社法140条4項)。
そして、この指定は、原則、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければなりません。(会社法140条5項)。
よって、本問は「取締役会設置会社」なので、取締役会決議で、買取者を指定できます。
オ.譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社が当該株式を買い取る場合は、対象となる株式を買い取る旨、および会社が買い取る株式の数について、取締役会の決議により決定する。
オ・・・誤り
株式会社は、株式譲渡の承認をしない旨の決定をしたときは、譲渡制限株式を買い取らなければなりません。
この場合においては、下記事項を株主総会決議(特別決議)により定めなければなりません会社法140条1項2項)。

  1. 対象株式を買い取る旨
  2. 株式会社が買い取る対象株式の数

本肢は「取締役会の決議」が誤りです。正しくは「株主総会の決議」です。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問36|商法・商行為

商法の定める契約に関する次のA~Cの文章の空欄[ ア ]~[ ウ ]に当てはまる語句の組合せとして、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。

A 商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が[ ア ]承諾をしなかったときは、その申込みは、効力を失う。

B 商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が[ イ ]承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、効力を失う。

C 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、遅滞なく契約の申込みに対する諾否の通知を発することを怠ったときは、その商人は当該契約の申込みを[ ウ ]ものとみなされる。

  1. ア:直ちに イ:相当の期間内に ウ:拒絶した
  2. ア:相当の期間内に イ:遅滞なく ウ:拒絶した
  3. ア:直ちに イ:相当の期間内に ウ:承諾した
  4. ア:遅滞なく イ:遅滞なく ウ:拒絶した
  5. ア:相当の期間内に イ:相当の期間内に ウ:承諾した

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【答え】:3【解説】

ア.A 商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が[ ア ]承諾をしなかったときは、その申込みは、効力を失う。

ア・・・直ちに
商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が「直ちに」承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う(商法507条)。

イ.B 商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が[ イ ]承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、効力を失う。

イ・・・相当の期間内に
商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が「相当の期間内に」承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う(商法508条1項)。

ウ.C 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、遅滞なく契約の申込みに対する諾否の通知を発することを怠ったときは、その商人は当該契約の申込みを[ ウ ]ものとみなされる。

ウ・・・承諾した
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない(商法第509条1項)。
商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを「承諾した」ものとみなす(商法509条2項)。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問35|民法・親族

改正民法に対応済

婚姻および離婚に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか(改)。

1 未成年者が婚姻をするには、父母のいずれかの同意があれば足り、父母ともにいない未成年者の場合には、家庭裁判所の許可をもってこれに代えることができる。

2 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされる。したがって当該未成年者は、法定代理人の同意がなくても単独で法律行為をすることができ、これは当該未成年者が離婚をした後であっても同様である。

3 養親子関係にあった者どうしが婚姻をしようとする場合、離縁により養子縁組を解消することによって、婚姻をすることができる。

4 離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しない。

5 協議離婚をしようとする夫婦に未成年の子がある場合においては、協議の上、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることができる。

 

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改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

1 未成年者が婚姻をするには、父母のいずれかの同意があれば足り、父母ともにいない未成年者の場合には、家庭裁判所の許可をもってこれに代えることができる。

1・・・誤り

●未成年者 → 婚姻できない

未成年者(18歳未満の者)は、父母のどちらか一方の同意があったとしても、婚姻をすることはできません。よって、問題文全体が誤りです。婚姻は、成年者(18歳以上の者)しかできません。

2 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされる。したがって当該未成年者は、法定代理人の同意がなくても単独で法律行為をすることができ、これは当該未成年者が離婚をした後であっても同様である。

2・・・誤り

●未成年者 → 婚姻できない

未成年者は、そもそも婚姻することができません。よって、本問の内容は誤りです。

3 養親子関係にあった者どうしが婚姻をしようとする場合、離縁により養子縁組を解消することによって、婚姻をすることができる。

3・・・誤り

●養親子等の間の婚姻は禁止 → 離縁による親族関係が終了した後も婚姻できない

養親と養子との間での婚姻は禁止されています。また、養親と養子との親族関係が「離縁」により終了しても、その後も婚姻は禁止です(民法736条) 。

4 離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しない。

4・・・正しい

●離婚 → 姻族関係は終了

●夫婦一方が死亡 → 生存配偶者が姻族関係を終了させる意思表示をしたときに、姻族関係は終了

「姻族関係」とは、婚姻することで、血のつながりがない配偶者の血族と親戚関係になるということです。そして、この姻族関係は、離婚をすると、終了します(民法728条1項) 。また、夫婦の一方が死亡した場合、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに、姻族関係は終了します(2項)。つまり、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係(姻族関係)は、当然には終了しません。姻族関係終了の意思表示があって、始めて姻族関係が終了します。

※ 親族とは、「6親等内の血族」「配偶者」「3親等内の姻族」を指す(725条)。

姻族関係の終了

5 協議離婚をしようとする夫婦に未成年の子がある場合においては、協議の上、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることができる。

5・・・誤り

●親権者 → 夫婦の一方がなる / 第三者は親権者になれない

未成年者の子がいる場合、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項) 。そして、協議が調わないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、「夫婦の一方を親権者として定める」審判をすることができます(2項)。つまり、協議で決めようが、家庭裁判所が決めようが、父または母のどちらか一方が親権者となります。よって、第三者を親権者とすることを定めることはできません。

参考知識 「親権」の具体的な内容として「監護権」というものがあり、監護権は親権の一部なので、原則として親権者がこれを行使します。これは、親権者と監護権者は一致した方が、子どものためになるという考えが一般的だからです。しかし、親権者が子どもを監護できない事情がある場合や、親権者でない片方が監護権者として適当である場合には、親権者と監護権者を別々にすることも可能です。例えば、「親権者は収入のある父親だが、父親は海外出張で子どもの世話や教育がまったくできない場合」です。このような場合に、母親や祖父母が監護権者になることもあります。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問34|民法

改正民法に対応済

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。
  2. 甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
  3. 甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することができる。
  4. A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。
  5. 贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。

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改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

1.甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。

1・・・誤り

●公序良俗に反する行為 → 無効

具体例 不利関係を維持するための贈与契約 → 公序良俗に反する行為 → 無効

公の秩序又は善良の風俗(公序良俗)に反する法律行為は、無効です(民法90条)。そして、AB間での不倫関係を維持する目的の贈与契約は、公序良俗に反する法律行為にあたるので、無効です。

※ 「公の秩序又は善良の風俗」は、略して「公序良俗」というのですが、分かりやすく言えば「社会の秩序を守るための常識的な考え方」といったイメージです。

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

2.甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。

2・・・正しい

●不法な原因で、「未登記建物」の贈与契約を締結し、引渡した → 引渡しが「給付」にあたる → 引渡しが完了すると、不法原因給付が成立し、返還請求できなくなる

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができません (民法708条本文)。

具体例 「殺人依頼の対価として金銭を支払った場合」や、「不倫相手になること条件として家を与えた場合」です。殺人や不倫は、不法(反社会的)な事柄です。これを原因(理由)として、金銭や不動産等を与える場合が不法原因給付です。

そして、不法原因給付は、原則、返還請求できません(708条本文)。

理由 「返還請求できる」というルールにすると、不法原因を作った者を保護してしまうことになるからです。殺人依頼した者や、不倫相手を作ろうとした者を保護する必要はないから、原則、「返還請求できない」としています。

本問と判例 本問では、 AB間での不倫関係を維持する目的で、AがA所有の甲建(未登記)を贈与する契約を締結しています。そして、判例では、未登記建物の場合、「引渡し」は「給付」に当たるとしています。したがって、Aは不法原因給付を行っているため、返還請求できません。

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

3.甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することができる。

3・・・誤り

●不法な原因で、「未登記建物」の贈与契約を締結し、引渡した → 引渡しが「給付」にあたる → 引渡しが完了すると、不法原因給付が成立し、返還請求できなくなる / その後、贈与者が保存登記をしても返還請求できない

問252の解説の通り、不倫関係を維持する目的で、AがA所有の甲建物をBに贈与した場合、不法原因給付に当たります。そして、当該建物が未登記であっても、引渡しが完了することで、「給付」したことになるので、それ以降、Aが保存登記をしたとしても、給付した建物の返還を請求することができません。

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

4.A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。

4・・・誤り

●不法な原因で、「既登記建物」の贈与契約を締結した → 「引渡し」だけでは「給付」にあたらない → 「引渡し」+「移転登記」で「給付」したことになる

判例によると、不法原因給付の目的物が、「登記された建物(既登記建物)」の場合、「給付」とみなされるのは、「引渡し」と「移転登記」が完了したときとしています。「引渡し」だけでは「給付」には当たりません。よって、A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されただけであれば、Aはまだ「給付」を完了していないので、Bからの移転登記請求を拒むことはできます。

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。

5.贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。

5・・・誤り

●不法原因給付において、「給付者」と「受益者」との不法の度合いを比べて、「給付者」の不法が微弱の場合(=受益者の不法性が著しく大きい場合) → 給付者の返還請求が認められる

不法原因給付のルールは、給付者がその不法原因にみずから積極的に関与した場合、不法原因の張本人を保護する必要性は低いため、返還請求を認めないこととしています。そのため、民法708条では、不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が「受益者についてのみ」に存在したときは、給付者は返還請求できる(民法708条)。としています。

では、給付者(本問では贈与者A)の不法が、受益者Bの不法と比べて微弱だった場合(受益者Bの不法が著しく大きい場合)、どうなるか?

判例 判例では、受益者Bの不法の方が著しく大きい場合には、給付者は民法708条ただし書きにより返還請求権を行使できるとしています。よって、AはBからの移転登記請求を拒むことはできます。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問33|民法・組合

改正民法に対応済

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成を得た上で行わなければならない。
  2. 組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、AとBだけの合意では決することはできない。
  3. 組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得ない事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。
  4. やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退することはできない。
  5. 組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求をすることができる。

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改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

1.Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成を得た上で行わなければならない。

1・・・誤り

●組合の常務 → 各組合員は、原則、単独で行える

組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(670条1項)。しかし、組合の常務は、1項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことがでます。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、単独では行えません(5項)。

※ 5項の「組合の常務」とは、日常的に反復継続して行われる業務のことで、例えば、農業組合でいえば、農作物の売買や事務作業などです。

※ 1項の「組合の業務」とは、組合が行う借り入れ等です。

イメージとしては、日常業務ついては、組合員は単独で行うことができ、イレギュラーな業務については、組合員の過半数をもって決めるということです。

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

2.組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、AとBだけの合意では決することはできない。

2・・・誤り

●組合において、業務執行者が複数いる場合 → 「組合の業務」は、業務執行者の過半数をもって決定し、執行は業務執行者が単独で行える

組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(670条1項)。そして、組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができます(2項)。2項の委任を受けた者(業務執行者)は、組合の業務を決定し、これを執行します。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行します

よって、組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、2人の合意で決することができます。

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

3.組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得ない事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。

3・・・誤り

●組合の存続期間を定めなかった場合 → 各組合員は、原則、いつでも脱退することができるが、組合に不利な時期に脱退することができない。ただし、やむを得ない事由がある場合は、組合に不利な時期でも脱退することができる。

■組合契約で組合の存続期間を定めなかったときは、各組合員は、原則、いつでも脱退することができるが、組合に不利な時期に脱退することができません。だし、やむを得ない事由がある場合は、組合に不利な時期でも脱退することができます(678条1項) 。つまり、組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、組合員Aは、やむを得ない事由があれば、組合に不利な時期でも脱退できるので誤りです。

■組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができます(2項)。

組合の脱退

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

4.やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退することはできない。

4・・・誤り

●組合:やむを得ない事由があっても任意脱退できない特約 → 無効

問248の解説の通り、組合の脱退のルールでは、組合の存続期間を定めた場合も定めなかった場合も、やむをえない事由があるときは脱退できると規定します。そして、判例では、「やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨」の特約があっても上記ルールは強行法規なので、組合の脱退のルールに反する特約は無効としています。

よって、「やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨」の組合契約がある場合でも、組合員Aは、やむを得ない事由があれば、適任者を推薦しなくても、当該組合を脱退することができます。

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

5.組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求をすることができる。

5・・・正しい

●不法な保存登記をされた場合の抹消登記請求 → 保存行為 → 共有において保存行為は、共有者が単独で行える

各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有(厳密には共有の一種の「合有」)に属します(民法668条)。

そして、各共有者は、単独で保存行為をすることができます(252条)。

そして、組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、当該第三者に対して抹消登記請求をすることは「保存行為」に当たるので、組合員Aは単独で、抹消登記請求をすることができます。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問32|民法

改正民法に対応済

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

ア・・・誤り

●建物賃借人→ 土地の取得時効完成によって、取得時効を援用できない

問題文の状況 

右図の通り、Aは他人地(甲土地)に乙建物を建築して、建物をCに貸しているので、甲土地の占有者です。
一方、Cは、A所有の乙建物を賃借しています。

質問内容

乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。○か×か。

判例 判例では、「土地上の建物の賃借人Cは、賃貸人Aによる敷地所有権の取得時効を援用することができない」としています。

理由 土地上の建物の賃借人Cは、土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから。

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

イ・・正しい

●賃貸借期間中に、その目的物を譲り受けた者 → 登記を備えないと賃貸人の地位の取得を賃借人に対抗できない

問題文の状況 

右図の通り、Aは乙建物を所有しています。また、Aは乙建物をCに賃貸しています。ここで、Aが乙建物をBに売却した。つまり、乙建物の所有者が、AからBに代わったということです。

質問内容

Bは、乙建物についての移転登記をしないときは、

Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。○か×か。

結論 Bは登記を備えていないと、Cに対して賃料を請求できない(賃貸人の地位を主張できない)。

賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転します(民法605条の2)。そして、乙建物の賃貸人たる地位を取得するためには、Bが登記を備える必要があります。つまり、Bが登記を備えることで、Cに対して賃料を請求することができます。

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

ウ・・・誤り

●借地上建物の賃借人 → 地代の弁済をするについて正当な利益を有する → 借地権者に無断で地代の弁済(第三者弁済)ができる

問題文の状況 

右図の通り、AB間で土地の賃貸借契約を締結し、AC間で建物の賃貸借契約を締結しています。

質問内容

Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。○か×か。

結論 借地上の建物賃借人Cは、借地の地代を、借地人Aに無断で弁済できる。

理由 債務の弁済は、第三者もすることができます(民法474条1項)。

そして、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」は、債務者の意思に反して弁済をすることができません(2項)。本問の借地上建物の賃借人Cは、正当な利益を有する第三者なので、2項には当てはまらず、1項のとおり、地代の債務者Aの意思に反して(無断)で、地代を支払うことができます。

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

エ・・・正しい

●借地上の建物の譲渡(+土地賃借権の譲渡) → 地主の承諾が必要

問題文の状況 

右図の通り、AはBから甲土地を借りて、その土地上に乙建物を建築した。

質問内容

Aが当該建物をCに売却する場合、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについて地主Bの承諾を得る必要がある。○か×か。

判例 判例では、「借地上にある建物の売買契約が締結された場合は、特別の事情のない限り、売主Aは、買主Cに対し、その建物の敷地の賃借権をも譲渡したことになるため、その賃借権譲渡につき賃貸人Bの承諾を得る義務を負うことになる」としています。

理由 「土地の賃借権」がなければ、「建物」は存在できません。つまり、「借地上の建物」と「土地の賃借権」はセットです。

よって、「借地上の建物」を譲渡するということは、セットとして、「土地の賃借権」も一緒に譲渡することになります。もし、土地の賃借権の譲渡がないとすれば、建物を購入したCは、地主Bからの建物収去請求・土地明渡請求に対抗できません。

そうならないために、土地の賃借権の譲渡について、地主Bの承諾が必要ということです。

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

オ・・・正しい

●土地の賃貸借を「合意解除」  → 地主Bは、借地上建物の賃借人Cに対抗できない

問題文の状況 

右図の通り、AB間で土地の賃貸借契約を締結し、Aは乙建物を所有しています。また、Aは乙建物をCに賃貸しています。

質問内容

A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

○か×か。

結論 土地の賃貸借を「合意解除」した場合、地主Bは、借地上建物の賃借人Cに対抗できない。つまり、地主Bは「借地上建物賃借人」に対して建物の明渡しを求めることはできません。

理由 「地主B」と「借地上建物賃借人C」との間には直接に契約上の法律関係がないけれど、 AB間で建物所有を目的として土地の賃貸借契約を締結したということは、土地賃貸人Bは、「土地賃借人Aが、その借地上に建物を建築所有して自らこれに居住することばかりでなく、当該建物を賃貸し、建物賃借人Cに敷地(甲土地)を占有使用させること」も当然に予想できるし、かつ認容しているものとみるべきです。

したがって、建物賃借人Cは、当該建物の使用に必要な範囲において、甲土地の使用收益をなす権利を有します。

そのため、AB間で、土地の賃貸借契約期間の満了前に、勝手に契約解除(合意解除)をしても、建物賃借人Cが有する甲土地を使用する権利は、消滅しません。つまり、AB間の合意解除によって、Bは、Cに対抗できません。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問31|民法・契約解除

改正民法に対応済

契約の解除に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

  1. ア・エ
  2. イ・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

ア・・・妥当ではない

債務の全部の履行が不能であるとき、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます(民法542条1項1号)。

よって、「引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない」は妥当ではありません。

イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

イ・・妥当ではない

判例によると、
期間を定めずに催告した場合、相当期間が経過すれば、債権者は改めて催告することなく、解除することができる」としています(大判昭2.2.2)。

よって、「Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない」は妥当ではありません。

ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

ウ・・・妥当

当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してしなければなりません(民法544条1項)。

よって、本肢は妥当です。

エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

エ・・・妥当ではない

判例によると、
「甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡って(さかのぼって)合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかった丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない」としています(最判昭33.6.14)。

つまり、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了していなかったとき、Cは、この土地の所有権を主張することができないです。

よって、本肢は妥当ではありません。

オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

オ・・・妥当

判例によると、
「売買契約に基づき目的物の引渡を受けていた買主Cは、売主Aがその売却した権利をBから取得して買主Cに移転することができず、右契約を解除した場合でも、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主Aに返還しなければならない」としています(最判昭51.2.13)。

したがって、Cは解除に伴う、原状回復義務があります。

よって、Cは、使用利益(Bの車に乗って得た利益)に相当する金額も、返還義務を負います。

上記から、本肢は妥当です。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問30|民法・詐害行為取消請求

改正民法に対応済

詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない。
  2. 相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。
  3. 離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする法律行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。
  4. 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。
  5. 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

1.遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない。

1・・・妥当ではない

●共同相続人の間で成立した「遺産分割協議」は、詐害行為取消権行使の対象となりえる 

具体例 Aは甲土地を有しており、妻Bと子Cがいた。債権者XはBに100万円を貸し付けていた、その後、Aが死亡することにより、BとCが遺産分割協議を行い、甲土地をCが相続することにした。

質問内容 上記遺産分割協議は、詐害行為取消権の対象となるか?

判例 判例では、上記遺産分割協議は詐害行為取消権の対象となる。

>>詐害行為取消請求の解説はこちら

2.相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。

2・・妥当

●「相続放棄」は詐害行為取消権行使の対象とはならない → 理由は、相続放棄は身分行為だから

判例では、「相続の放棄のような身分行為については、詐害行為取消権行使の対象とならない」としています。

「身分行為」とは、他人の干渉を受けるべきでない行為を言います。そのため、第三者が、他人の相続放棄を妨げることはできません。

3.離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする法律行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。

3・・・妥当ではない

●「離婚における財産分与」 → 特段の事情がなければ、詐害行為取消権行使の対象とはならない

●不相当に過大である場合は、特段の事情として詐害行為取消権行使の対象となりえる

判例では、「不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為取消権行使の対象とならない」としています。

「財産分与に仮託してされた財産処分」とは、「財産分与を利用した財産処分」という意味です。

特段の事情の具体例 夫Aと妻Bが婚姻しており、Aが、複数の不動産を所有しており、また、多額の借金を抱えていた。その後、AとBが離婚して、Aが複数の不動産を、財産分与としてBに譲渡した場合、これは、財産分与を利用して、財産を処分したとみなされます。債権者から見れば、上記が不当であることは当然です。そのため詐害行為取消権行使の対象となる可能性があります。

4.詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。

4・・・妥当ではない

●取消債権者が複数いる場合 → 取消債権者の自己の債権額のすべてについて取り消すことができる

債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為(詐害行為)の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができます(民法424条の8)。本問は「総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ」となっているので誤りです。取消債権者は自己の有する債権の全額について、詐害行為を理由として取消しできます。

また、詐害行為の目的が不可分であり、受益者が財産を返還することが困難なときは、債権者は、受益者に対してその価額を償還請求できます(424条の6)。

具体例 債権者Xは、Aに対して1000万円を貸し、債権者Yは、Aに対して9000円を貸していた。そして、債務者Aは、現金2000万円を有しており、この2000万円を、Bに贈与した。その結果、Aは無資力となった。この場合、債権者Xの有する債権額は、1000万円なので、1000万円を限度に、AB間の贈与契約の取り消しが可能です(424条の8)。

もし、債務者Aが現金(可分な目的物)ではなく、2000万円の建物のような不可分な目的物をBに贈与した場合、建物を物理的に分解して、半分だけ返還するとうのは困難です。このような場合、債権者Xは、受益者Bに対して、自己の債権額1000万円を限度に、お金で返還するように請求できます(424条の6)。

5.詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。

5・・・妥当ではない

●詐害行為取消権に基づく返還すべき財産が「金銭・動産」である場合、債権者は、受益者・転得者に対して自己に引き渡すよう求めることができる

債権者は、詐害行為取消請求により「受益者又は転得者」に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が「金銭の支払又は動産の引渡し」を求めるものであるときは、「受益者・転得者」に対してその支払又は引渡しを、自己に対してすることを求めることができます(424条の9)。

具体例 問88の事例で、詐害行為の目的物が「甲土地(不動産)」ではなく「金銭や動産」だった場合、債権者Aは、受益者Cに対して、「直接、私Aに金銭や動産を返還してください!」と請求することができます。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問29|民法

改正民法に対応済

Aが自己所有の事務機器甲(以下、「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。
  2. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。
  3. 本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。
  4. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。
  5. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

1.Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。

1・・・妥当ではない

●先取特権 → 目的物が第三者に引き渡されると行使できなくなる

動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在します(民法321条)。そして、先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができません(民法333条)。

具体例  Aが自己所有の事務機器甲をBに売却した。Bが代金を払わない場合、Aの代金債権を担保(保証)するために、事務機器甲に先取特権が付着します。つまり、Aは、先取特権に基づいて、甲を競売にかけて、その代金からお金を回収することができます。しかし、Bが甲を第三者Cに売却し、引き渡しをしてしまうと、Aは先取特権を行使することができなくなります。これは、第三者Cが悪意であっても、同様に先取特権を行使できません。

理由 動産の先取特権は公示方法がないので、動産取引の安全を図るために、第三者に引き渡した場合は、第三者を保護するルールにしています。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

2.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。

2・・妥当ではない

●同時履行の抗弁権 → 「債権」として扱う → 契約の相手方には主張できるが、契約相手以外の者には主張できない

同時履行の抗弁権は、1つの双務契約から生じた権利であり「債権」として扱います。

■「双務契約」とは、お互いが債務を負担する契約で、例えば、売買契約において、売主は物を引き渡す義務を負い、買主はこれに対し代金支払義務を負うというのも一例です。そして、買主Bが代金を支払わない場合(債務を履行しない場合)、売主Aは、同時履行の抗弁権を主張して、買主に対して物の引き渡しを拒むことができます。そしてこの「同時履行の抗弁権」は「債権」なので、契約の相手方にしか権利を主張できません。買主が別の第三者Cに物を転売して、Aが、第三者Cから、所有権に基づいて引き渡しを求められた場合、Aは同時履行の抗弁権をCに主張することはできません。よって、本問は誤りです。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

3.本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。

3・・・妥当ではない

●所有権留保 → 代金が完済されない場合、契約解除をし、所有権に基づいて第三者に返還請求できる

「所有権留保」とは、引き渡しだけ終えて、代金を全額支払ってもらうまで、所有権は移転させないというものです。つまり、買主は代金を全額弁済すれば所有権を移転してもらえます。そして、もし、買主Bが売主Aに代金を支払わない場合、売主は所有権を留保しているので、契約解除をして、「所有権」に基づいて返還請求ができます。「所有権(物権)」に基づいた返還請求なので、第三者Cにも対抗できます。

ここで問題文の「所有権留保が、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない」とは「所有権留保があっても、Cが甲の所有権取得の妨げにもならない」つまり、「Aは、所有権を留保していても、Cに対抗できない」ことを意味します。よって、本問は誤りです。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

4.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。

4・・・妥当

●留置権 → 物権 → 第三者に対抗できる

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができます(民法295条:留置権)。そして、「留置権」は、物権なので、第三者にも主張できます。そのため、 甲が、AからB、BからCへと売却され、Aが代金を受領していない場合、Aは、甲(物)を引渡していないとき、留置権を主張して、BだけでなくCにも、甲の引き渡しを拒むことができます。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

5.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。

5・・・妥当ではない

●動産の対抗要件=引き渡し 

●契約解除をした場合、原状回復義務を負うが、対抗要件を備えた者の権利を害することはできない 

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、原状回復義務を負います。ただし、第三者の権利を害することはできません(民法545条)。

具体例  Aが自己所有の事務機器甲をBに売却した。Bが代金を払わないことを理由に契約解除をした。その場合、売主Aは、代金を買主Bに返還する義務を負い、一方、買主Bは、売主Aに事務機器甲を返還する義務を負います。これが545条本文の内容です。ただし書きについて、「第三者の権利」とは、「対抗要件を備えた第三者の権利」という意味で、動産の場合、引渡しを受けることで対抗要件を備えます。つまり、BがCに、事務機器甲を転売して、Cが引き渡しを受けているのであれば、Cは、Aに所有権を主張できるが、Cが引渡しを受けていない場合、Cは対抗要件を備えていないので、Aに所有権を主張できません。本問の場合、Aは甲(目的物)を引渡していないので、Aが所有権を主張できます。よって、AはCからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできます。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問28|民法・時効

改正民法に対応済

不動産の取得時効と登記に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。
  2. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。
  3. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない。
  4. 不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。
  5. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後にその不動産を譲り受けて登記をした者に対して、その譲受人が背信的悪意者であるときには、登記がなくても時効取得をもって対抗することができるが、その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:1

【解説】

1.不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。

1・・・妥当

●時効期間満了 → 抵当権を設定される → 再度その後、時効期間が満了 → 時効取得し、抵当権消滅

具体例 A所有の土地をBが占有し、時効期間が満了した。その後、Aが第三者Cからお金を借り、Cのために抵当権を設定した。その後もBは占有を続けて、再度時効期間が満了した。

質問内容 上記の場合、特段の事情がない限り、占有者Bはその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。○か×か。

判例 判例では、「上記において、再度時効期間の経過後に取得時効を授用したときは、「上記占有者Bが上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り」、上記占有者が、上記不動産を時効取得する結果、上記抵当権は消滅する。」としています。

【詳細解説】  ①の時効完成では、登記をしないうちに抵当権を設定されているので、占有者Bは抵当権者に「抵当権を消滅させてください!」と主張することはできません。しかし、その後、②再度時効完成した場合、占有者Bは再度時効取得するので、時効取得前の抵当権者に対して「抵当権を消滅させてください!」と主張することができます!

2.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。

2・・妥当ではない

●時効取得者は、時効完成の第三者に対して、登記がなくても、時効取得を理由に所有権を対抗できる

具体例 A所有の甲地をBが占有していた。Bの取得時効が完成する前に、①Aが甲地を第三者Cに譲渡し、Cが登記を備えた。その後、②Bの取得時効が完成した。

質問内容 時効取得者Bは、取得時効完成前のCに対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。○か×か。

判例 判例では、上記具体例について「時効取得者Bは時効完成前の第三者に対して、登記がなくても、時効取得を主張できとしています。

理由 始めに、A所有の甲地をBが占有し、その後、①AがCに甲地を売却し、(まだBが占有中)、その後、②Bの時効が完成したという流れです。時系列を図にすると下のようになります。(左から右に時間が流れている)

まず、Cが存在しない場合を考えてみましょう!基本的な取得時効の問題です。

Aは所有権を持っているにも関わらず、占有しているBに対して裁判上の請求等の時効の更新行為を行わず、一定期間が過ぎるとBの時効が完成します。そのことにより、は登記を備えていなくても」、時効取得者Bは、Aに時効取得を主張できます。

次に、Cが出現した場合を考えます。

CはAから甲地を譲り受けた時点から、Bに対して時効の更新行為を行える立場にあります。

つまり、CもAと同様の立場にあると考えることができます。したがって、CもAと同様に時効の更新を行うことができます。

しかし、それを怠って、時効の更新を行わなかった結果、Bの時効が完成したら、Bは「Aに対して主張できていた時効取得」をCに対しても主張できます。つまり、時効完成前に所有者が変わっても、占有者に何ら影響を与えないということです。AもCも同じ立場として、ひとくくりとみなすわけです。

まとめると、Bは時効完成前の第三者に対して登記がなくても時効取得を主張できます。

3.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない。

3・・・妥当ではない

①時効完成に第三者が現れた場合、「時効取得者A」と「第三者C」は二重譲渡の対抗関係とみなされるので、登記を備えた方が対抗力を持つ

②そして、第三者が先に登記を備えた後、再度、Aが占有を続けて時効期間が満了すれば、Aは登記なくして時効取得をもってCに対抗できる

具体例 

  • 乙不動産の旧所有者:A
  • 時効完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者(=占有者、時効取得者):B
  • 時効完成後に不動産を譲り受けた者(第三者):C(登記済みなので、図に〇をしています)

とします。

前半部分  ①について、Aを基点に「A→C」「A→B」と二重譲渡の対抗関係になっているので登記を備えた方が勝ちます。したがって、本問の前半部分「不動産を時効により取得した占有者Bは、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者Cに対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない」という記述は正しいです。

 後半部分 ②について、もし、上記において、Cが先に登記を備え、Cが対抗要件を備えたとします。その後もBが占有を続け、時効取得に必要な期間を継続した場合(再度、時効完成した場合)、Bは時効取得するため、登記なくしてCに対抗できます。よって、後半部分は誤りです。

4.不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。

4・・・妥当ではない

●時効取得しようとする者は、時効期間の起算点を任意に選択することはできない

具体例 選択肢2や選択肢3の解説の通り、「時効完成前に第三者が現れた場合、時効取得者は登記なくして第三者に対抗でき」、「時効完成後に第三者が現れた場合は登記をしないと、時効取得者は第三者に対抗できません」。

もし、占有者Bが、1970年にA所有地について占有を開始し、1990年に時効完成するとします。その後、登記を備えず、1995年にAが第三者Cに当該土地を売却し、Cが登記を備えた。この場合、Cは時効完成後の第三者にあたるので、CはBに所有権を主張できます。

質問内容 ここで、占有者Bは、1970年から占有を開始しているのですが、1980年も占有を継続しているので、「1980年を占有開始時」と考えたら、2000年に時効が完成するため、1995年に土地を購入したCは時効完成前の第三者に当たります。このように考えることで、BはCに対して、登記なくして所有権を主張できるか?

判例 判例では、「時効援用をする者は、任意にその起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり、遅らせたりすることはできない」としています。つまり、上記のように、占有開始時の時期を好き勝手選択することはできないということです。

よって、本問の「起算点を自由に選択して取得時効を援用することを妨げない」=「起算点を自由に選択して取得時効を援用することができる」というのは誤りです。

5.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後にその不動産を譲り受けて登記をした者に対して、その譲受人が背信的悪意者であるときには、登記がなくても時効取得をもって対抗することができるが、その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。

5・・・妥当ではない

●時効完成後に不動産を譲り受けた者が背信的悪意者の場合、時効取得者は、登記なくして背信的悪意者に対抗できる

●不動産を譲り受けた者が、取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても、背信的悪意者と認められる場合もある

具体例 

A所有の乙不動産をBが占有し、その後、時効が完成した。
時効完成後、Aが背信的悪意者Cに乙不動産を売却した。

前半部分 上記において、Cが背信的悪意者であるときには、Bは登記がなくても時効取得をもって対抗することができます。よって、前半部分は正しいです。

理由 背信的悪意者は「第三者」として扱わないから。

後半部分 乙不動産の譲受人Cが、背信的悪意者であると認められるためには、Cが当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、「その占有者Bが取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していた」ことを必要である。○か×かという質問です。この点について判例では、「取得時効が成立しているか否かは、容易に認識・判断することができないことから考えると、成立要件すべてを認識していていなくても、背信的悪意者に該当する場合もある」としています。

つまり、「背信的悪意者と認められるために、少なくとも(最低限)、取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことが必要」というのは誤りです。


平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略