2014年過去問

平成26年・2014|問5|憲法・法の下の平等

投票価値の平等に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 議員定数配分規定は、その性質上不可分の一体をなすものと解すべきであり、憲法に違反する不平等を生ぜしめている部分のみならず、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。
  2. 投票価値の不平等が、国会の合理的裁量の範囲を超えると判断される場合には、選挙は違憲・違法となるが、不均衡の是正のために国会に認められる合理的是正期間を経過していなければ、事情判決の法理により選挙を有効とすることも許される。
  3. 衆議院議員選挙については、的確に民意を反映する要請が強く働くので、議員1人当たりの人口が平等に保たれることが重視されるべきであり、国会がそれ以外の要素を考慮することは許されない。
  4. 参議院議員選挙区選挙は、参議院に第二院としての独自性を発揮させることを期待して、参議院議員に都道府県代表としての地位を付与したものであるから、かかる仕組みのもとでは投票価値の平等の要求は譲歩・後退を免れない。
  5. 地方公共団体の議会の議員の定数配分については、地方自治の本旨にもとづき各地方公共団体が地方の実情に応じ条例で定めることができるので、人口比例が基本的な基準として適用されるわけではない。

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【答え】:1

【解説】

1.議員定数配分規定は、その性質上不可分の一体をなすものと解すべきであり、憲法に違反する不平等を生ぜしめている部分のみならず、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。
1・・・妥当
判例によると、議員定数配分規定が違憲となる場合、定数配分規定全体が違憲となる、としています。
具体的には
「選挙区割及び議員定数の配分は、議員総数と関連させながら、複雑、微妙な考慮の下で決定される。一旦このようにして決定されたものは、一定の議員総数の各選挙区への配分として、相互に有機的に関連し、一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有する。その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、定数配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招いている部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。」
と判示しています。よって、本肢は妥当です。

2.投票価値の不平等が、国会の合理的裁量の範囲を超えると判断される場合には、選挙は違憲・違法となるが、不均衡の是正のために国会に認められる合理的是正期間を経過していなければ、事情判決の法理により選挙を有効とすることも許される。
2・・・妥当ではない
選択肢1と同じ判例によると
「具体的な比率の偏差が選挙権の平等の要求に反する程度となつたとしても、これによって直ちに当該議員定数配分規定を憲法違反とすべきものではなく、人口の変動の状態をも考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われない場合に始めて憲法違反となる
と判示しています。
よって、「投票価値の不平等が、国会の合理的裁量の範囲を超えると判断される場合には、選挙は違憲・違法となる」が誤りです。判例では、合理的期間が経過したにも関わらず是正をしない場合憲法違反となるといっているからです。
3.衆議院議員選挙については、的確に民意を反映する要請が強く働くので、議員1人当たりの人口が平等に保たれることが重視されるべきであり、国会がそれ以外の要素を考慮することは許されない。
3・・・妥当ではない
選択肢1と同じ判例によると
「憲法は、投票価値の平等についても、これをそれらの選挙制度の決定について国会が考慮すべき唯一絶対の基準としているわけではなく、
国会は、衆議院及び参議院それぞれについて他にしんしゃくする(事情をくみ取る)ことのできる事項をも考慮して、公正かつ効果的な代表という目標を実現するために適切な選挙制度を具体的に決定することができるのであり、」
と判示しています。
したがって、「人口が平等に保たれること」だけでなく、他にくみ取ることができる事情があれば、その事情も考慮して決定することができます。よって、「国会がそれ以外の要素を考慮することは許されない。」は妥当ではありません。

4.参議院議員選挙区選挙は、参議院に第二院としての独自性を発揮させることを期待して、参議院議員に都道府県代表としての地位を付与したものであるから、かかる仕組みのもとでは投票価値の平等の要求は譲歩・後退を免れない。

4・・・妥当ではない
判例によると、参議院議員も衆議院議員もいずれも、全国民の代表としての地位を付与されたとしており、本肢の「参議院議員に都道府県代表としての地位を付与したものである」という記述は誤りです。<「投票価値の平等の要求は譲歩・後退を免れない」とは?>譲歩・後退を免れない=譲歩・後退を避けることができない=譲歩する・後退する

という意味なので、

投票価値の平等の要求は譲歩・後退を免れない

=投票価値の平等の要求は、後退する

=投票価値の平等の要求は、小さくなる

ということです。

よって、

参議院議員選挙は、衆議院議員選挙よりも、投票価値の平等の要求は小さい

ということで、

参議院議員選挙の場合は、一票の価値の差が、衆議院議員選挙よりも、多少大きくても仕方がない

というイメージです。

5.地方公共団体の議会の議員の定数配分については、地方自治の本旨にもとづき各地方公共団体が地方の実情に応じ条例で定めることができるので、人口比例が基本的な基準として適用されるわけではない。
5・・・妥当ではない
判例によると
「地方公共団体の議会の議員の選挙に関し、当該地方公共団体の住民が選挙権行使の資格において平等に取り扱われるべきであるにとどまらず、その選挙権の内容、すなわち投票価値においても平等に取り扱われるべきであることは、憲法の要求するところであり、公選法15条7項は、憲法の右要請を受け、地方公共団体の議会の議員の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、各選挙人の投票価値が平等であるべきことを強く要求している」
と判示しています。つまり、地方公共団体の議会の議員の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準としているので、
本肢の「人口比例が基本的な基準として適用されるわけではない」は妥当ではありません。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問4|憲法・経済的自由

行政書士をめざすA君は、いくつかの最高裁判所判決を読みながら、その重要な部分を書き取ったカードを作成し、判例の論理をたどろうとしていたところ、うっかりしてカードをばらまいてしまった。その際に、要約ミスのため捨てるはずだった失敗カードが1枚混ざってしまったため、全体としてつじつまがあわなくなった。以下の1~5のうち、捨てるはずだった失敗カードの上に書かれていた文章はどれか。

  1. 一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によって、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合がある。
  2. 憲法22条1項は、国民の基本的人権の一つとして、職業選択の自由を保障しており、そこで職業選択の自由を保障するというなかには、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含しているものと解すべきであり、ひいては、憲法が、個人の自由な経済活動を基調とする経済体制を一応予定しているものということができる。
  3. しかし、憲法は、個人の経済活動につき、その絶対かつ無制限の自由を保障する趣旨ではなく、各人は、「公共の福祉に反しない限り」において、その自由を享有することができるにとどまり、公共の福祉の要請に基づき、その自由に制限が加えられることのあることは、右条項自体の明示するところである。
  4. のみならず、憲法の他の条項をあわせ考察すると、憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、その見地から、すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかである。
  5. おもうに、右条項に基づく個人の経済活動に対する法的規制は、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が社会公共の安全と秩序の維持の見地から看過することができないような場合に、消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいてのみ許されるべきである。

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【答え】:5

【解説】

1.一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によって、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合がある。
1・・・正しい
薬事法距離制限事件の判例によると
「一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によって、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、
これとの均衡上、役務提供者(薬局)に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合がある。しかし、薬事法その他の関係法令は、医薬品の供給の適正化措置として右のような強力な規
制を施してはいない。

したがって、その反面において既存の薬局等にある程度の独占的地位を与える必要も理由もなく、本件適正配置規制にはこのような趣旨、目的はなんら含まれていないと考えられる。」
と判示しています。

よって、本肢は、正しいです。

2.憲法22条1項は、国民の基本的人権の一つとして、職業選択の自由を保障しており、そこで職業選択の自由を保障するというなかには、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含しているものと解すべきであり、ひいては、憲法が、個人の自由な経済活動を基調とする経済体制を一応予定しているものということができる。
2・・・正しい
小売市場距離制限事件の判例によると
憲法22条1項は、国民の基本的人権の一つとして、職業選択の自由を保障しており、そこで職業選択の自由を保障するというなかには、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含しているものと解すべきでありひいては、憲法が、個人の自由な経済活動を基調とする経済体制を一応予定しているものということができる

しかし、憲法は、個人の経済活動につき、その絶対かつ無制限の自由を保障する趣旨ではなく、

各人は、「公共の福祉に反しない限り」において、その自由を享有することができるにとどまり、

公共の福祉の要請に基づき、その自由に制限が加えられることのあることは、右条項自体の明示するところである(選択肢3)。
と判示しています。

よって、本肢は正しいです。

【判例解説】

上記憲法22条1項は「職業選択の自由」を保障していますが、この中に「営業の自由」も含まれ、これも保障しています。

つまり、憲法は、個人が自由に経済活動をしていいことを予定していると考えることができます。

しかし、個人の経済活動の自由について、無制限になんでも経済活動ができるわけではなく、
「公共の福祉に反する場合」は、経済活動に制限が加えられることもあります。

例えば、「誰でも医者になれる」とすると、知識も技術も人が、人の体にメスを入れることができ、生命の危険にさらされるかもしれません。

そのため、法律で、「手術するには、医師免許が必要」と規定されています。

これも、営業の自由における一種の制限といえます。

3.しかし、憲法は、個人の経済活動につき、その絶対かつ無制限の自由を保障する趣旨ではなく、各人は、「公共の福祉に反しない限り」において、その自由を享有することができるにとどまり、公共の福祉の要請に基づき、その自由に制限が加えられることのあることは、右条項自体の明示するところである。
3・・・正しい
選択肢2の解説の通り、本肢の内容も小売市場距離制限事件の判例に含まれています。
4.のみならず、憲法の他の条項をあわせ考察すると、憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、その見地から、すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかである。
4・・・正しい
選択肢の2の判例の続きに
「憲法22条1項に基づく個人の経済活動に対する法的規制は、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が社会公共の安全と秩序の維持の見地から看過することができないような場合に、消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいて許されるべきことはいうまでもない(選択肢5)のみならず、憲法の他の条項をあわせ考察すると、憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、

その見地から、すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかである

このような点を総合的に考察すると、憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、

個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なって、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当であり、

国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により(法令を定めて)、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるべきであって、決して、憲法の禁ずるところではない」
と判示しています。

よって、本肢も正しいです。

5.おもうに、右条項に基づく個人の経済活動に対する法的規制は、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が社会公共の安全と秩序の維持の見地から看過することができないような場合に、消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいてのみ許されるべきである。
5・・・誤り
選択肢4の内容から
「消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいて許されるべき」
と判示しており「消極的に、かような弊害を…合理的な規制である限りにおいて『のみ』許されるべきである」とは判示していません

「のみ」とは言っていません。
それ以外の場合でも、許される場合はあるので、誤りです。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問3|憲法・幸福追求権・プライバシー権

憲法13条に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 幸福追求権について、学説は憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であると解するが、判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとる。
  2. 幸福追求権の内容について、個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解があり、これを「一般的行為自由説」という。
  3. プライバシーの権利について、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという消極的側面と並んで、積極的に自己に関する情報をコントロールする権利という側面も認める見解が有力である。
  4. プライバシーの権利が、私法上、他者の侵害から私的領域を防御するという性格をもつのに対して、自己決定権は、公法上、国公立の学校や病院などにおける社会的な共同生活の中で生じる問題を取り扱う。
  5. 憲法13条が幸福追求権を保障したことをうけ、人権規定の私人間効力が判例上確立された1970年代以降、生命・身体、名誉・プライバシー、氏名・肖像等に関する私法上の人格権が初めて認められるようになった。

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【答え】:3

【解説】

1.幸福追求権について、学説は憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であると解するが、判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとる。
1・・・誤り
判例によると、肖像権について
「憲法13条は、国民の私生活上の自由が、国家権力に対しても保護されることを規定している。
そして、個人の私生活上の自由として、承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由をする。
よって、肖像権は憲法13条によって保障されている」
と判示しています。つまり、判例は、新しい人権(肖像権)は、「一般的かつ包括的な権利」とは言っておらず、「裁判上の救済を受けることのできる具体的権利」と言っています。したがって、判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとるという点は、誤りです。

2.幸福追求権の内容について、個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解があり、これを「一般的行為自由説」という。
2・・・誤り
幸福追求権については、憲法13条後段において「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」として保障しています。
つまり、具体的に、憲法で保障されているということです。
その具体的な権利の内容については、2つの考え方(一般的行為自由説人格的利益説)があります。

  • 一般的行為自由説あらゆる生活領域に関する行為の自由を保障するという考え方
  • 人格的利益説:個人の人格的生存に不可欠な行為の自由を保障するという考え方(通説)

本肢の「個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解」は「人格的利益説」なので誤りです。

3.プライバシーの権利について、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという消極的側面と並んで、積極的に自己に関する情報をコントロールする権利という側面も認める見解が有力である。

3・・・正しい
プライバシーの権利は、「消極的な権利としての側面」と「積極的な権利としての側面」2つの側面を持っています。

  • 消極的側面:受動的な権利で、誰かに侵害されたときに損害賠償などをすることができる権利を言います。
  • 積極的側面:能動的な権利(自分の情報をコントロールする権利)で、積極的に情報公開や削除などを求める権利を言います。

よって、本肢は正しいです。

4.プライバシーの権利が、私法上、他者の侵害から私的領域を防御するという性格をもつのに対して、自己決定権は、公法上、国公立の学校や病院などにおける社会的な共同生活の中で生じる問題を取り扱う。
4・・・誤り
自己決定権とは、個人が一定の私的事項について、公権力の干渉を受けずに、自ら決定することができる権利をいいます。つまり、本肢は「公法上、国公立の学校や病院などにおける社会的な共同生活の中で生じる問題を取り扱う」という記述は誤りです。
5.憲法13条が幸福追求権を保障したことをうけ、人権規定の私人間効力が判例上確立された1970年代以降、生命・身体、名誉・プライバシー、氏名・肖像等に関する私法上の人格権が初めて認められるようになった。
5・・・誤り
昭和48年(1973年)12月12日の「三菱樹脂事件」の最高裁判決により、人権規定の私人間効力が判例上確立されました。
具体的には、「私人間において、憲法の人権規定を直接適用できない」と判示されました。そして、昭和44年(1969年)12月24日の「京都府学連事件」では肖像権(人格権)を認めています。
つまり、1960年代にも、人格権が認められているので、
「1970年代以降、生命・身体、名誉・プライバシー、氏名・肖像等に関する私法上の人格権が初めて認められるようになった」が誤りです。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問2|基礎法学

法令における通常の用語法等に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. 「及び」と「並びに」は、いずれもその前後の語句を並列させる接続語であり、並列される語句に段階がある場合には、一番小さな並列的連結にだけ「及び」を用い、他の大きな並列的連結には全て「並びに」を用いる。
  2. 「又は」と「若しくは」は、いずれも前後の語句を選択的に連結する接続語であり、選択される語句に段階がある場合には、一番大きな選択的連結にだけ「又は」を用い、他の小さな選択的連結には全て「若しくは」を用いる。
  3. 法令に「A、Bその他のX」とある場合には、AとBは、Xの例示としてXに包含され、「C、Dその他Y」とある場合は、C、D、Yは、並列の関係にある。
  4. 法令に「適用する」とある場合は、その規定が本来の目的としている対象に対して当該規定を適用することを意味し、「準用する」とある場合は、他の事象に関する規定を、それに類似する事象について必要な修正を加えて適用することを意味する。なお、解釈により準用と同じことを行う場合、それは「類推適用」と言われる。
  5. 「遅滞なく」、「直ちに」、「速やかに」のうち、時間的即時性が最も強いのは「直ちに」であり、その次が「遅滞なく」である。これらのうち、時間的即時性が最も弱いのは「速やかに」である。

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【答え】:5

【解説】

1.「及び」と「並びに」は、いずれもその前後の語句を並列させる接続語であり、並列される語句に段階がある場合には、一番小さな並列的連結にだけ「及び」を用い、他の大きな並列的連結には全て「並びに」を用いる。
1・・・妥当
及び」と「並びに」はどちらも「and」の意味です。 言い換えれば、「AとB、A+B」ということです。 そして、「及び」は小さいグループに使い、「並びに」は大きいグループに使います。
つまり、「AとB」というグループがあって、これに別のグループの「C」を加える場合は、(A及びB)並びにCとなります。

【及びの例】 「リンゴ、柿及び桃」

リンゴも柿も桃もすべて「果物」です。同じグループをまとめるために用います。

【並びにの例】 「リンゴ、柿及び桃並びにきゅうり」

「リンゴ、柿及び桃」はすべて「果物」で、きゅうりは「野菜」です。
「果物」と「野菜」は異なるグループで「並びに」は大きな異なるグループをまとめるために用います。

2.「又は」と「若しくは」は、いずれも前後の語句を選択的に連結する接続語であり、選択される語句に段階がある場合には、一番大きな選択的連結にだけ「又は」を用い、他の小さな選択的連結には全て「若しくは」を用いる。
2・・・妥当
若しくはもしくは)」と「又は」は、「or」という意味で、「どちらか一方」という意味です。
そして、「若しくは」は一番小さいグループに使い、「又は」は一番大きいグループに使います。(1グループしかない場合、「又は」を使う)
「(A若しくはB)又はC」と使います。

【又はの例】  
「リンゴ、柿又は桃」
リンゴも柿も桃もすべて「果物」です。同じグループ中のどれか一つという意味です。

【もしくはの例】 
「リンゴ、柿若しくは桃又はきゅうり」 「リンゴ、柿若しくは桃」はすべて「果物」で一番小さいグループ、きゅうりは「野菜」で別グループです。「果物」と「野菜」は異なるグループで「又は」は小さな異なるグループ同士を並べて、その中でどれか一つという意味です。

つまり、 「リンゴ、柿、桃、きゅうり」の中のどれか一つという意味です。

3.法令に「A、Bその他のX」とある場合には、AとBは、Xの例示としてXに包含され、「C、Dその他Y」とある場合は、C、D、Yは、並列の関係にある。
3・・・妥当
その他」とは、その語の前後の語句は独立していて、後に続く語とは別個の概念として並列的に並べる場合に用いられます。 「A、Bその他C」であり、AとBとCとを対等なものとして並べます。
一方、「その他の」とは、その語の直前に置かれた語句が、後に続く語句の例示(具体例)となっている場合に用いられます。
4.法令に「適用する」とある場合は、その規定が本来の目的としている対象に対して当該規定を適用することを意味し、「準用する」とある場合は、他の事象に関する規定を、それに類似する事象について必要な修正を加えて適用することを意味する。なお、解釈により準用と同じことを行う場合、それは「類推適用」と言われる。
4・・・妥当
適用」とは、Aという事項について規定される法令をそのままAに当てはまめるということです。
一方、「準用する」は、ある事項Aに関する規定を、他の類似事項Bについて、必要な修正を加えてあてはめるという意味です。

【具体例】  
売買契約を締結したにも関わらず、買主が期限に代金を支払えなかった場合、民法第412条1項「債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。」という規定を使って(適用して)、売主は買主に責任追及できます。
「準用する」は、ある事項Aに関する規定を、他の類似事項Bについて、必要な修正を加えてあてはめるという意味です。

【具体例】 
「聴聞に関する手続の準用」について、行政手続法第31条「第15条第3項及び第16条の規定は、弁明の機会の付与について準用する。」と規定しています。

(聴聞の通知の方式)行政手続法15条3項
「行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合においては、聴聞に関する通知を、一定事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から2週間を経過したときに、当該通知がその者に到達したものとみなす。」

上記規定が、弁明の機会の付与についても使われるということです。その際、「聴聞」に関する内容が「弁明の機会の付与」に関する内容に修正を加えて使います。

5.「遅滞なく」、「直ちに」、「速やかに」のうち、時間的即時性が最も強いのは「直ちに」であり、その次が「遅滞なく」である。これらのうち、時間的即時性が最も弱いのは「速やかに」である。
5・・・妥当ではない
直ちに」が時間的に即時性が最も強く、最も時間が短いです。
速やかに」が、その次に、即時性が強いです。
遅滞なく」が、最も時間的即時性が弱いです。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問1|基礎法学

第二次世界大戦後の日本の法制度に関する次のア~オの出来事を年代順に並べたものとして正しいものはどれか。

ア 行政事件訴訟特例法にかわって、新たに行政事件訴訟法が制定され、その際、無効等確認訴訟や不作為の違法確認訴訟に関する規定が新設された。

イ それまでの家事審判所と少年審判所が統合され、裁判所法の規定に基づき、家庭裁判所が創設された。

ウ 環境の保全について、基本理念を定め、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることなどを目的とする環境基本法が制定された。

エ 民法の改正により、従来の禁治産・準禁治産の制度にかわって、成年後見制度が創設された。

オ 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律が制定され、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与する裁判員制度が導入された。

  1. ア→エ→イ→オ→ウ
  2. ア→イ→エ→ウ→オ
  3. ア→イ→ウ→エ→オ
  4. イ→ア→ウ→エ→オ
  5. イ→エ→オ→ア→ウ

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

ア 行政事件訴訟特例法にかわって、新たに行政事件訴訟法が制定され、その際、無効等確認訴訟や不作為の違法確認訴訟に関する規定が新設された。
ア・・・行政事件訴訟法:1962年(昭和37年)
行政事件訴訟ができるまでの流れについては
1890年に大日本帝国憲法第61条に基づき「行政裁判法」が制定され、
その後、戦後になり
1948年(昭和23年)に「行政事件訴訟特例法」が制定。ただ、全文でわずか12条のみの簡単なものであり、運用・解釈上多くの問題が発生した。
その後、特例法が改正され、
1962年(昭和37年)に現行の「行政事件訴訟法」が制定されました。
イ それまでの家事審判所と少年審判所が統合され、裁判所法の規定に基づき、家庭裁判所が創設された。
イ・・・家庭裁判所の設置:1949年(昭和24年)
1949年(昭和24年)1月1日、従来の家事審判所と少年審判所が統合されることによって、家庭裁判所が設置されました。
ウ 環境の保全について、基本理念を定め、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることなどを目的とする環境基本法が制定された。
ウ・・・環境基本法:1993年(平成5年)
もともと、公害対策について「公害対策基本法(1967年)」で、
自然環境対策について「自然環境保全法(1972年)」で対応していました。しかし、複雑化・地球規模化する環境問題に対応できないことから
1993年(平成5年)環境基本法が制定されました。

そして、環境基本法の施行により、「公害対策基本法」は廃止され、「自然環境保全法」も環境基本法の趣旨に沿って改正されました。

エ 民法の改正により、従来の禁治産・準禁治産の制度にかわって、成年後見制度が創設された。
エ・・・成年後見制度:1999年(平成11年)
1999年の民法改正で従来の禁治産・準禁治産制度に代わって、成年後見制度が制定され、翌2000年4月1日に施行されました。
オ 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律が制定され、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与する裁判員制度が導入された。
オ・・・裁判員制度:2004年制定、2009年施行
裁判員制度は、国民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決める制度です。この裁判員制度は、2004年(平成16年)に成立し、2009年(平成21年)施行されました。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略