2015年過去問

平成27年・2015|問27|民法・制限行為能力者

改正民法に対応済

制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 家庭裁判所が後見開始の審判をするときには、成年被後見人に成年後見人を付するとともに、成年後見人の事務を監督する成年後見監督人を選任しなければならない。

イ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定められている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があったときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。

ウ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければならない。

エ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審判を取り消さなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

ア 家庭裁判所が後見開始の審判をするときには、成年被後見人に成年後見人を付するとともに、成年後見人の事務を監督する成年後見監督人を選任しなければならない。

ア・・・誤り

●後見監督人 → 家庭裁判所は必要があると認めるときに選任できる
●必ずしも後見監督人が選任されるわけではない

「後見監督人」とは、①後見人の事務を監督したり、②後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求したり、③急迫の事情がある場合に、必要な処分をしたり、④後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表したりする者です(民法851条)。簡単に言えば、後見人を監督する者です。つまり、被後見人を後見人が保護者として見守り、後見人を後見監督人が監督するということです。

そして、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、「被後見人、その親族若しくは後見人の請求」により又は「職権」で、後見監督人を選任することができます(民法849条)。つまり、必ず後見監督人が必要というわけではありません。必要に応じて家庭裁判所が「請求」または「職権」で選任します。

【具体例】 通常、弁護士などが後見人の場合は、後見監督人までは不要ですが、専門家ではない方が後見人の場合は、後見監督人を選任したりします。

イ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定められている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があったときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。

イ・・・誤り

●被保佐人が「一定の重要な財産上の行為」を行う場合、保佐人の同意が必要

●「一定の重要な財産上の行為」以外でも、家庭裁判所は、請求により、保佐人の同意を得なければならない旨の審判ができる

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」である者で、家庭裁判所が保佐開始の審判をしたものです(民法11条)。そして、被保佐人は、原則、単独有効に契約することができます。ただし、「一定の重要な財産上の行為」については、保佐人の同意を得なければ行うことができません(13条)。(下表参照)

また、 「一定の重要な財産上の行為」以外でも家庭裁判所は、本人、配偶者、後見人等の請求により、保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、被保佐人よりも症状の重い成年被後見人でも単独で行える行為なので、同意権付与の審判はできません(13条2項) 。

よって、「被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない」=「同意の必要な範囲を増やすことができない」というのは誤りです。

ウ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければならない。

ウ・・・正しい

●本人以外の者の請求によって代理権付与の審判をするには、本人の同意必要

被保佐人は、軽い認知症の方のイメージで、「一定の重要な財産上の行為」以外の多くの行為を単独で行うことができます。そのため、保佐人に代理権まで与える必要はありません。ただし、場合によっては保佐人に代理権を与える必要があるので、その場合、家庭裁判所は、保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(民法876条の4第1項)。そして、本人以外の者の請求によって上記代理権付与の審判をするには、本人の同意がなければなりません(民法876条の4第2項)。これは本人の意思を尊重するためです。

エ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

エ・・・正しい

●被補助人 → 事理弁識能力が不十分な者 かつ 補助開始の審判を受けた者
●「本人以外の者からの請求」により補助開始の審判をする場合、本人の同意が必要

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「不十分である者」で、家庭裁判所が、「本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官」の請求により、補助開始の審判をした者です(民法15条)。イメージとしては、保佐人よりも認知症の症状が軽い方です。そして、「本人以外の者の請求」により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければなりません(2項)。

【理由】 被補助人になりえる方は、ある程度自分自身で物事の判断ができるので、本人の意思を尊重するために、本人の同意が必要としています。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審判を取り消さなければならない。

オ・・・誤り

●別の審判を行う場合、前の審判の取消しが必要

被保佐人・被補助人が被後見人となるには、「保佐開始又は補助開始の審判」の取消しが必要で

成年被後見人が被保佐人にとなるには、「後見開始の審判」の取消しが必要です(民法19条)。

【理由】 複数の制度を重複させないためです。もし、重複していたら、成年被後見人なのか、被保佐人なのか、被補助人なのか分からなくなり、法律の適用ができなくなるからです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問26|行政法

国家公務員に対する制裁措置に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 一般職公務員に対する懲戒処分については、人事院がすべての職種について処分基準を定め、これに基づいて処分を行う。
  2. 一般職公務員に対する懲戒処分については、職務上の行為だけでなく、職務時間外の行為も処分理由となりうる。
  3. 一般職公務員について、勤務実績がよくない場合には、懲戒処分の対象となりうる。
  4. 一般職公務員に対する法律上の懲戒処分の種類は、免職・降任・休職・減給の4種類である。
  5. 一般職公務員に対して課されている政治的行為の制限に違反した場合、懲戒処分の対象となるが、罰則は定められていない。

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【答え】:2

【解説】

1.一般職公務員に対する懲戒処分については、人事院がすべての職種について処分基準を定め、これに基づいて処分を行う。
1・・・誤り
懲戒処分は、任命権者が、行います(国家公務員法84条)。
したがって、「人事院がすべての職種について処分基準を定め、これに基づいて処分を行う」というのは誤りです。職員が、下記のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができます(国家公務員法82条)。

  1. この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令に違反した場合
  2. 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
  3. 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
2.一般職公務員に対する懲戒処分については、職務上の行為だけでなく、職務時間外の行為も処分理由となりうる。
2・・・正しい
選択肢1の国家公務員法82条3号の「非行」について、
職務時間外の行為も対象となります。
したがって、本肢は正しいです。
3.一般職公務員について、勤務実績がよくない場合には、懲戒処分の対象となりうる。
3・・・誤り
選択肢1の国家公務員法82条が「懲戒処分」となる場合についてですが、その中に「勤務実績がよくない場合」は含まれません。
よって、本肢は誤りです。
勤務がよくない場合」は、「分限処分」の対象であり、降任又は免職の対象です(国家公務員法78条)。
4.一般職公務員に対する法律上の懲戒処分の種類は、免職・降任・休職・減給の4種類である。
4・・・誤り
懲戒処分とは「免職、停職、減給、戒告」を言います。
降任、休職、免職、降給」は分限処分なので、懲戒処分ではありません。
よって、誤りです。
5.一般職公務員に対して課されている政治的行為の制限に違反した場合、懲戒処分の対象となるが、罰則は定められていない。
5・・・誤り
職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又はその方法を問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはいけません国家公務員法102条1項)。
そして、上記規定に反し、政治的行為の制限に違反した場合は懲戒処分を受けるだけでなく、罰則も受けます(国家公務員法111条の2第2号)。
したがって、本肢は誤り。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問25|行政法

次に挙げる行政に関連する法令の規定の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

行政不服審査法 第21条 第1項 審査請求をすべき行政庁が処分庁と異なる場合における審査請求は、処分庁を経由してすることもできる。
(以下略)
第3項 第1項の場合における審査請求期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した時に、審査請求があったものと[ ア ]。

行政事件訴訟法 第7条 行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、[ イ ]。

行政事件訴訟法 第36条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者[ ウ ]当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分[ エ ]裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

  1. ア:推定する イ:民事訴訟の例による ウ:その他 エ:及び
  2. ア:推定する イ:民事訴訟法を準用する ウ:及び エ:若しくは
  3. ア:推定する イ:民事訴訟法を準用する ウ:及び エ:及び
  4. ア:みなす イ:民事訴訟の例による ウ:その他 エ:若しくは
  5. ア:みなす イ:民事訴訟の例による ウ:並びに エ:並びに

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【答え】:4

【解説】

行政不服審査法 第21条 第1項 審査請求をすべき行政庁が処分庁と異なる場合における審査請求は、処分庁を経由してすることもできる。
(以下略)
第3項 第1項の場合における審査請求期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した時に、審査請求があったものと[ ア:みなす ]。

行政事件訴訟法 第7条 行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、[ イ:民事訴訟の例による ]。

行政事件訴訟法 第36条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者[ ウ:その他 ]当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分[ エ:若しくは ]裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。


行政不服審査法 第21条 第1項 審査請求をすべき行政庁が処分庁と異なる場合における審査請求は、処分庁を経由してすることもできる。
(以下略)
第3項 第1項の場合における審査請求期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した時に、審査請求があったものと[ ア:みなす ]。
ア・・・みなす
「みなす」とは、判断を確定させること言い、反対の事実を証明して、判断を覆すことはできません。一方、
「推定する」とは、一応そのよう判断を下すことをいい、反対の事実が証明されれば、その判断は覆されます。上記を理解していても、条文を知らないと、解けない問題です。
ただ、行政不服審査法には「推定する」旨の規定は一つもありません。
したがって、本肢の「アにはみなす」が入ります。

行政事件訴訟法 第7条 行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、[ イ ]。
イ・・・民事訴訟の例による
「例による」「準用する」も、他の法令の規定を使って、その事案に当てはめるという点では同じです。違いは、
「例による」は他の法令「全般を包括的に」その事案に当てはめます。
一方
「準用する」「特定の条文」をその事案に当てはめます。したがって、当てはめる幅が異なるイメージです。そして、行政事件訴訟に関し、行政事件訴訟に定めがない事項については、民事訴訟の例によります。

したがって、「イには民事訴訟の例」が入ります。

ウ、エ
行政事件訴訟法 第36条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者[ ウ ]当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分[ エ ]裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる
ウ・・・その他
エ・・・若しくは
「その他」とは、その語の前後の語句は独立していて、後に続く語とは別個の概念として並列的に並べる場合に用いられます。
「A、Bその他C」であれ、AとBとCとを対等なものとして並べます。「及び」「並びに」はどちらも「and」の意味です。
言い換えれば、「AとB、A+B」ということです。
そして、「及び」は小さいグループに使い、「並びに」は大きいグループに使います。つまり
「AとB」というグループがあって、これに別のグループの「C」を加える場合は、

(A及びB)並びにC

となるわけです。

例えば、
「リンゴ、柿及び桃」
「リンゴ、柿及び桃並びにきゅうり」
といったイメージです。

「若しくは」とは、「or」という意味で、「どちらか一方」という意味です。

本肢では

行政事件訴訟法 第36条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者[ ウ:その他 ]当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分[ エ:若しくは ]裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

となります。

【詳細解説】 

①(処分又は裁決)に続く処分により損害を受けるおそれのある者
[ ウ:その他 ]
②(当該処分又は裁決)の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者

①②を対等な関係で並べています。

③当該処分[ エ:若しくは ]裁決の存否
又は
④その効力の有無を前提とする

「又は」は「or:どちから」という意味ですが、「又は」は一番大きなグループ(段階)で使い、
「若しくは」はそれより小さいグループ(段階)で使います。

よって、「③又は④」となり、③の中で、どちらか一方を意味する内容とする場合、「若しくは」を用います。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問24|行政法

国の行政組織に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア 国家行政組織法によれば、行政組織のために置かれる国の行政機関には、省、庁および独立行政法人があり、その設置・廃止は別に法律の定めるところによる。

イ 国家行政組織法によれば、同法の定める国の行政機関には、審議会等、合議により処理することが適当な事務をつかさどるための合議制機関を置くことができる。

ウ 内閣府設置法によれば、内閣総理大臣は、内閣府の長として、内閣府の事務を統括し、職員の服務について統督する。

エ 国家行政組織法によれば、各省大臣は、主任の行政事務について、それぞれの機関の命令として規則を発することができる。

オ 内閣府設置法によれば、政令のうち、特に内閣府に係る主任の事務に関わるものを内閣府令と称し、内閣総理大臣がこれを制定する。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:3

【解説】

ア 国家行政組織法によれば、行政組織のために置かれる国の行政機関には、省、庁および独立行政法人があり、その設置・廃止は別に法律の定めるところによる。
ア・・・誤り
行政組織のため置かれる国の行政機関は、①省、②委員会及び③庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによります(国家行政組織法3条2項)。つまり、「独立行政法人」は誤りです。
正しくは「委員会」です。

イ 国家行政組織法によれば、同法の定める国の行政機関には、審議会等、合議により処理することが適当な事務をつかさどるための合議制機関を置くことができる。
イ・・・正しい
国の行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができます(国家行政組織法8条)。したがって、本肢は正しいです。

宇宙政策委員会、税制調査会、運輸審議会等たくさんあります。

ウ 内閣府設置法によれば、内閣総理大臣は、内閣府の長として、内閣府の事務を統括し、職員の服務について統督する。

ウ・・・正しい
内閣府の長は、内閣総理大臣とします(内閣府設置法6条1項)。
そして、内閣総理大臣は、内閣府の事務を統括し、職員の服務について統督します(内閣府設置法7条1項)。
したがって、本肢は正しいです。
エ 国家行政組織法によれば、各省大臣は、主任の行政事務について、それぞれの機関の命令として規則を発することができる。
エ・・・誤り
各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができます。(国家行政組織法12条1項)。各省の大臣が発するのは「省令」であって、「規則」ではありません。
したがって、本肢は誤りです。
規則は「各庁の長官、委員会」が発する命令です。

オ 内閣府設置法によれば、政令のうち、特に内閣府に係る主任の事務に関わるものを内閣府令と称し、内閣総理大臣がこれを制定する。
オ・・・誤り
内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、内閣府の命令として内閣府令を発することができます(内閣府設置法7条3項)。内閣府令は「命令」であって、「政令」ではありません。
したがって、本肢は誤り。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問23|地方自治法

条例・規則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、刑罰を科す旨の規定を設けることができるが、法律の委任に基づかない条例を定める場合には、設けることができない。
  2. 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、刑罰を科す旨の規定を設けることができるが、行政上の強制執行が許される場合には、設けることができない。
  3. 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、刑罰を科す旨の規定を設けることができるが、刑罰の種類は、罰金及び科料に限られ、懲役や禁錮は、設けることができない。
  4. 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、刑罰を科す旨の規定を設けることができるが、過料を科す旨の規定は、設けることができない。
  5. 普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、過料を科す旨の規定を設けることはできるが、刑罰を科す旨の規定を設けることはできない。

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【答え】:5

【解説】

1.普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、刑罰を科す旨の規定を設けることができるが、法律の委任に基づかない条例を定める場合には、設けることができない。
1・・・誤り
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、「2年以下の懲役若しくは禁錮」、「100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑」又は「5万円以下の過料」を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法14条3項)。
つまり、法律の委任に基づかない場合でも、条例に刑罰等を定めることができます

2.普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、刑罰を科す旨の規定を設けることができるが、行政上の強制執行が許される場合には、設けることができない。
2・・・誤り
本肢は「行政上の強制執行が許される場合には、刑罰等を設けることができない」と記述されていますが、これは誤りです。
行政上の強制執行ができる場合でも、刑罰等を科す旨の条例を設けることができます(選択肢1参照)。
3.普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、刑罰を科す旨の規定を設けることができるが、刑罰の種類は、罰金及び科料に限られ、懲役や禁錮は、設けることができない。
3・・・誤り
選択肢1の通り、
条例中に「2年以下の懲役若しくは禁錮」の刑を科す旨の規定を設けることはできます。
よって、誤りです。
4.普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、刑罰を科す旨の規定を設けることができるが、過料を科す旨の規定は、設けることができない。
4・・・誤り
選択肢1の通り、
条例中に「5万円以下の過料」を科す旨の規定を設けることはできます。
よって、誤りです。
5.普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、過料を科す旨の規定を設けることはできるが、刑罰を科す旨の規定を設けることはできない。
5・・・正しい
普通地方公共団体のは、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、「5万円以下の過料」を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法15条2項)。
したがって、普通地方公共団体の長は、規則中に、「過料」を科す旨の規定を設けることはできるが、「刑罰」を科す旨の規定を設けることはできません。
よって、正しいです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問22|地方自治法

特別区に関する次の文章の空欄[ ア ]~[ オ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

[ ア ]地方公共団体の一種である特別区は、地方自治法の規定では「都」に設置されるものとされている。指定都市に置かれる区が法人格を[ イ ]のに対して、特別区は法人格を[ ウ ]のが特徴であり、また、特別区は公選の議会と区長を有している。
近年では、大都市地域における二重行政を解消するための手段として、この特別区制度を活用することが提案され、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」が地方自治法の特例法として定められるに至った。
この「大都市地域における特別区の設置に関する法律」は、市町村を廃止し、特別区を設けるための手続を定めたものであり、「[ エ ]の区域内において」も特別区の設置が認められるようになった。手続に際しては、廃止が予定される市町村で「特別区の設置について選挙人の投票」が実施されるが、この投票で「有効投票の総数の[ オ ]の賛成があったとき」でなければ、特別区を設置することはできないと定められている。

  1. ア:特別 イ:有しない ウ:有する エ:府 オ:3分の2以上
  2. ア:特別 イ:有しない ウ:有する エ道府県 オ過半数
  3. ア:特別 イ:有する ウ:有しない エ府 オ過半数
  4. ア:普通 イ:有する ウ:有しない エ府 オ過半数
  5. ア:普通 イ:有しない ウ:有する エ道府県 オ3分の2以上

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】


[ ア ]地方公共団体の一種である特別区は、地方自治法の規定では「都」に設置されるものとされている。
ア・・・特別
特別地方公共団体」とは①特別区(東京都の23区)②地方公共団体の組合③財産区の3つを指します。
したがって、特別区は特別地方公共団体の一種なので「アには特別」が入ります。

イ、ウ
指定都市に置かれる区が法人格を[ イ ]のに対して、特別区は法人格を[ ウ ]のが特徴であり、また、特別区は公選の議会と区長を有している。
イ・・・有しない
ウ・・・有する
指定都市(政令指定都市)に置かれる「区」は、行政事務を効率的に行うために便宜上設置されるもので、法人格は有しません。一方、
「特別区」については、法人格を有しています。
また、特別区の「議会議員(区議会議員)」と「区長」は選挙で行うので「公選」です。よって、「イは有しない」「ウには有する」が入ります。

エ.オ
「大都市地域における特別区の設置に関する法律」は、市町村を廃止し、特別区を設けるための手続を定めたものであり、「[ エ ]の区域内において」も特別区の設置が認められるようになった。手続に際しては、廃止が予定される市町村で「特別区の設置について選挙人の投票」が実施されるが、この投票で「有効投票の総数の[ オ ]の賛成があったとき」でなければ、特別区を設置することはできないと定められている。
エ・・・道府県
オ・・・過半数
大都市地域における特別区の設置に関する法律」とは、
「道府県」の区域内において関係市町村を廃止し、
「特別区」を設けるための手続等を定めたものです。特別区を設置するためには、
住民投票で「有効投票の総数の過半数の賛成」が必要です。よって、「エには道府県」「オには過半数」が入ります。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問20|国家賠償法

A県に居住するXは、折からの豪雨により増水した河川Bの水流が堤防を越えて自宅敷地内に流れ込み、自宅家屋が床上浸水の被害を受けたことから、国家賠償法に基づく損害賠償を請求することとした。なお、この水害は、河川Bの堤防の高さが十分でなかったことと、河川Bの上流に位置する多目的ダムCにおいて、A県職員のDが誤った放流操作(ダムに溜まっている水を河川に流すこと)を行ったことの二つが合わさって起きたものである。また、河川BとダムCはA県が河川管理者として管理しているが、その費用の2分の1は国が負担している。この事例に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア 本件では、公の営造物たる河川の設置管理の瑕疵が問題となっており、Xが国家賠償法2条に基づく損害賠償を請求することができる以上、Dの放流操作に違法・過失があるとして国家賠償法1条に基づき損害賠償を請求することはできない。

イ 本件では、公の営造物たる河川の設置管理の瑕疵とDの違法な放流操作が問題となっていることから、Xは国家賠償法2条に基づく損害賠償を請求することもできるし、国家賠償法1条に基づき損害賠償を請求することもできる。

ウ 本件では、河川Bの管理費用を国も負担しているが、管理権者はA県であることから、Xが国家賠償法2条に基づき損害賠償を請求する際には、A県を被告としなければならず、国を被告とすることはできない。

エ 本件では、河川Bの管理費用を国も負担していることから、管理権者がA県であるとしても、Xが国家賠償法2条に基づき損害賠償を請求する際には、A県を被告とすることも国を被告とすることもできる。

オ 本件で、原告の請求が認容され、A県が国家賠償法2条に基づき賠償金の全額を支払った場合には、他にその損害を賠償する責任を有する者がいれば、その者に対して求償することができる。

カ 本件で、原告の請求が認容され、A県が国家賠償法2条に基づき賠償金の全額を支払った場合には、河川管理者がA県である以上、他にその損害を賠償する責任を有する者がいるとしても、その者に対して求償することはできない。

  1. ア・ウ・オ
  2. ア・ウ・カ
  3. ア・エ・カ
  4. イ・エ・オ
  5. イ・エ・カ

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【答え】:4

【解説】

ア 本件では、公の営造物たる河川の設置管理の瑕疵が問題となっており、Xが国家賠償法2条に基づく損害賠償を請求することができる以上、Dの放流操作に違法・過失があるとして国家賠償法1条に基づき損害賠償を請求することはできない。
ア・・・誤り
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責任があります(国賠法1条)。
また、道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責任があります(国賠法2条)。損害を受けたXは、
「国家賠償法第1条に基づく損害賠償請求」もできるし、
「国家賠償法第2条に基づく損害賠償請求」もできます。したがって、本肢は誤りです。

イ 本件では、公の営造物たる河川の設置管理の瑕疵とDの違法な放流操作が問題となっていることから、Xは国家賠償法2条に基づく損害賠償を請求することもできるし、国家賠償法1条に基づき損害賠償を請求することもできる。
イ・・・正しい
選択肢アの通り、損害を受けたXは、
「国家賠償法第1条に基づく損害賠償請求」もできるし、
「国家賠償法第2条に基づく損害賠償請求」もできます。したがって、本肢は正しいです。
ウ 本件では、河川Bの管理費用を国も負担しているが、管理権者はA県であることから、Xが国家賠償法2条に基づき損害賠償を請求する際には、A県を被告としなければならず、国を被告とすることはできない。
ウ・・・誤り
国賠法1条および2条によって国又は公共団体が損害賠償責任を負う場合、「①公務員の選任若しくは監督、又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者(選任・監督者、設置者・管理者)」と
「②公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者(費用負担者)」とが異なるときは、「選任・監督者、設置者・管理者」だけでなく「費用負担者」もまた、その損害賠償責任を負います国賠法3条1項)。よって、本肢の場合、国も管理費用を負担しているので、国も損害賠償責任を負います。
したがって、国を被告とすることもできるので、本肢は誤りです。

エ 本件では、河川Bの管理費用を国も負担していることから、管理権者がA県であるとしても、Xが国家賠償法2条に基づき損害賠償を請求する際には、A県を被告とすることも国を被告とすることもできる。
エ・・・正しい
選択肢ウの通り、
本肢の場合、
「A県が河川管理者」で、「国は管理費用を負担している」ので、
A県を被告とすることもできるし、国を被告とすることもできます。したがって、本肢は正しいです。
オ 本件で、原告の請求が認容され、A県が国家賠償法2条に基づき賠償金の全額を支払った場合には、他にその損害を賠償する責任を有する者がいれば、その者に対して求償することができる。
オ・・・正しい
選択肢ウの通り
国賠法1条および2条によって国又は公共団体が損害賠償責任を負う場合、「①公務員の選任若しくは監督、又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者(選任・監督者、設置者・管理者)」と
「②公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者(費用負担者)」とが異なるときは、「選任・監督者、設置者・管理者」だけでなく「費用負担者」もまた、その損害賠償責任を負います(国賠法3条1項)。そして、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有します(国賠法3条2項)。したがって、「A県が国家賠償法2条に基づき賠償金の全額を支払った場合には、他にその損害を賠償する責任を有する者がいれば、その者に対して求償することができる」ので、本肢は正しいです。
カ 本件で、原告の請求が認容され、A県が国家賠償法2条に基づき賠償金の全額を支払った場合には、河川管理者がA県である以上、他にその損害を賠償する責任を有する者がいるとしても、その者に対して求償することはできない。
カ・・・誤り
選択肢オの通り
「他にその損害を賠償する責任を有する者がいるとしても、その者に対して求償することはできない」という記述は誤りです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問19|国家賠償法

国家賠償法1条1項に関する最高裁判所の判例に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 非番の警察官が、もっぱら自己の利をはかる目的で、職務を装って通行人から金品を奪おうとし、ついには、同人を撃って死亡させるに至った場合、当該警察官は主観的に権限行使の意思をもってしたわけではないから、国家賠償法1条1項の適用は否定される。
  2. パトカーに追跡されたため赤信号を無視して交差点に進入した逃走車両に無関係の第三者が衝突され、その事故により当該第三者が身体に損害を被った場合であったとしても、警察官の追跡行為に必要性があり、追跡の方法も不相当といえない状況においては、当該追跡行為に国家賠償法1条1項の違法性は認められない。
  3. 飲食店の中でナイフで人を脅していた者が警察署まで連れてこられた後、帰宅途中に所持していたナイフで他人の身体・生命に危害を加えた場合、対応した警察官が当該ナイフを提出させて一時保管の措置をとるべき状況に至っていたとしても、当該措置には裁量の余地が認められるから、かかる措置をとらなかったことにつき国家賠償法1条1項の違法性は認められない。
  4. 旧陸軍の砲弾類が海浜に打ち上げられ、たき火の最中に爆発して人身事故が生じた場合、警察官は警察官職務執行法上の権限を適切に行使しその回収等の措置を講じて人身事故の発生を防止すべき状況に至っていたとしても、当該措置には裁量の余地が認められるから、かかる措置をとらなかったことにつき国家賠償法1条1項の違法性は認められない。
  5. 都道府県警察の警察官が交通犯罪の捜査を行うにつき故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合、犯罪の捜査が司法警察権限の行使であることにかんがみれば、国家賠償法1条1項によりその損害の賠償の責めに任ずるのは原則として司法権の帰属する国であり、都道府県はその責めを負うものではない。

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【答え】:2

【解説】

1.非番の警察官が、もっぱら自己の利をはかる目的で、職務を装って通行人から金品を奪おうとし、ついには、同人を撃って死亡させるに至った場合、当該警察官は主観的に権限行使の意思をもってしたわけではないから、国家賠償法1条1項の適用は否定される。
1・・・誤り
判例によると
「公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合にかぎらず自己の利をはかる意図をもってする場合でも、
客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによって、他人に損害を加えた場合には、
国又は公共団体に損害賠償の責を負わせる」
と判示しています。
つまり、「主観的に権限行使の意思をもって」行ったかどうかは関係なく、
「客観・外形上(客観的にみて)」職務執行(仕事上の行為)と認められる場合は、国家賠償法第1条が適用されます。
したがって、本肢は誤り。

2.パトカーに追跡されたため赤信号を無視して交差点に進入した逃走車両に無関係の第三者が衝突され、その事故により当該第三者が身体に損害を被った場合であったとしても、警察官の追跡行為に必要性があり、追跡の方法も不相当といえない状況においては、当該追跡行為に国家賠償法1条1項の違法性は認められない。
2・・・正しい
判例によると
「警察官が目的のために交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、
逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合において、
当該追跡行為が違法であるというためには、①当該追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は
逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることが必要である」
と判示しています。
したがって、警察官の追跡行為に必要性があり、追跡の方法も不相当といえない状況においては、当該追跡行為に国家賠償法1条1項の違法性は認められないです。
本肢は正しいです。

3.飲食店の中でナイフで人を脅していた者が警察署まで連れてこられた後、帰宅途中に所持していたナイフで他人の身体・生命に危害を加えた場合、対応した警察官が当該ナイフを提出させて一時保管の措置をとるべき状況に至っていたとしても、当該措置には裁量の余地が認められるから、かかる措置をとらなかったことにつき国家賠償法1条1項の違法性は認められない。
3・・・誤り
判例によると、
「警察官が、同人(ナイフを持っていた人)に、本件ナイフを携帯したまま帰宅することを許せば、
帰宅途中当該ナイフで他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれが著しい状況にあったというべきである。よって、同人に帰宅を許す以上少なくとも、銃砲刀剣類所持等取締法第24条の2第2項の規定により本件ナイフを提出させて一時保管の措置をとるべき義務があった。そのため当該警察官が、上記措置をとらなかったことは、その職務上の義務に違背し違法であるというほかはない」
と判示しています。
したがって、本肢は誤り。

4.旧陸軍の砲弾類が海浜に打ち上げられ、たき火の最中に爆発して人身事故が生じた場合、警察官は警察官職務執行法上の権限を適切に行使しその回収等の措置を講じて人身事故の発生を防止すべき状況に至っていたとしても、当該措置には裁量の余地が認められるから、かかる措置をとらなかったことにつき国家賠償法1条1項の違法性は認められない。
4・・・誤り
判例によると
「警察官は、単に島民等に対して砲弾類の危険性についての警告や砲弾類を発見した場合における届出の催告等の措置をとるだけでは足りず、更に進んで自ら又は他の機関に依頼して砲弾類を積極的に回収するなどの措置を講ずべき職務上の義務がある。そのため、当該警察官が、上記措置をとらなかったことは、その職務上の義務に違背し、違法であるといわなければならない」
と判示しています。
したがって、本肢は誤り。

5.都道府県警察の警察官が交通犯罪の捜査を行うにつき故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合、犯罪の捜査が司法警察権限の行使であることにかんがみれば、国家賠償法1条1項によりその損害の賠償の責めに任ずるのは原則として司法権の帰属する国であり、都道府県はその責めを負うものではない。
オ・・・誤り
判例によると、
都道府県警察の警察官がいわゆる交通犯罪の捜査を行うにつき故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた場合において国家賠償法第1条1項によりその損害の賠償責任があるのは、原則として当該都道府県であり、国は原則としてその責めを負うものではない」
と判示しています。つまり、本肢の場合、原則、都道府県が国家賠償責任を負うので、本肢は誤りです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問17|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の定める執行停止に関する次の記述のうち、妥当な記述はどれか。

  1. 処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。
  2. 処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。
  3. 本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。
  4. 処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
  5. 処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。

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【答え】:5

【解説】

1.処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。
1・・・妥当ではない
●差止め訴訟 → 執行停止は準用されない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、「処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者」は可能です。
一方、差止め訴訟に、執行停止の規定が準用されていません(行政事件訴訟法38条)。

【理由】 差止め訴訟は、まだ処分がされていない状況です。つまり、執行停止するための処分がなされていないので、執行停止の規定する意味がないです。

したがって、「差止訴訟」を提起した者は、処分の執行停止の申立てはできません。

2.処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。
2・・・妥当ではない
●執行停止の申立て → 処分に関する取消訴訟の提起後であればよい / 取消訴訟の提起と同時に執行停止の申立てをする必要はない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、「処分の取消しの訴えの提起」の「後」であれば、執行停止の申立ては行えます
よって、「本案訴訟の提起と同時になさなければならず」が妥当ではありません。

3.本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。
3・・・妥当ではない
執行停止 → 申立てが必要 / 裁判所の職権では行えない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、執行停止をするには「申立て」が必要です。
裁判所の職権で、処分の執行停止は行えません

注意点:行政不服審査法では、「審査庁の職権」でも「申立て」でも執行停止ができます

【違いの理由】

これは、三権分立の考えから来ています。

審査庁は、あくまでの行政機関なので、行政機関内での話となります。

一方、裁判所は、司法機関なので、三権分立の観点から
司法機関が行政機関の職務を侵害することはできるだけ避ける考えがあります。

そのため、行政機関の行為を尊重するために、裁判所(司法機関)は
職権では、執行停止できないとしています。

4.処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
4・・・妥当ではない
効力の停止 → 処分の執行」又は「手続の続行の停止」によって目的を達することができる場合には、することができない

「処分の効力の停止」は、処分執行」又は「手続の続行の停止」によって目的を達することができる場合には、することができません(行政事件訴訟法25条2項ただし書)。
一方「処分の執行停止」についてこのような制限はないので、誤りです。

5.処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。
5・・・妥当
●執行停止の決定 → 口頭弁論は不要 / ただし、当事者の意見を聞く必要はある

処分の執行停止の決定は、口頭弁論を経ないですることができます
ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければなりません(行政事件訴訟法25条6項)。よって、本問は妥当です。

「口頭弁論」とは、口頭で意見を聞くということなのですが、一定の手続に従って行ないます。上記「当事者の意見を聞く」というのは、口頭弁論のような細かい手続は必要なく、意見を聞くだけで良いです。つまり、簡易的な方法でよいということです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問16|行政事件訴訟法

事情判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 事情判決は、処分取消しの請求を棄却する判決であるが、その判決理由において、処分が違法であることが宣言される。
  2. 事情判決においては、公共の利益に著しい影響を与えるため、処分の取消しは認められないものの、この判決によって、損害の賠償や防止の措置が命じられる。
  3. 事情判決に関する規定は、義務付け訴訟や差止訴訟にも明文で準用されており、これらの訴訟において、事情判決がなされた例がある。
  4. 事情判決に関する規定は、民衆訴訟に明文では準用されていないが、その一種である選挙の無効訴訟において、これと同様の判決がなされた例がある。
  5. 土地改良事業が完了し、社会通念上、原状回復が不可能となった場合、事業にかかる施行認可の取消訴訟は、訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない。

>解答と解説はこちら


【答え】:正解の選択肢なし(出題ミス)

【解説】

1.事情判決は、処分取消しの請求を棄却する判決であるが、その判決理由において、処分が違法であることが宣言される。
1・・・妥当ではない
事情判決 = 処分・裁決は違法ではあるが、処分を取消すこと公の利益に著しい障害を生ずる場合、棄却できる取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、
原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができます事情判決という)。
この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければなりません(行政事件訴訟法31条)。
本問は「判決理由において」が妥当ではありません。正しくは「主文において」です。

2.事情判決においては、公共の利益に著しい影響を与えるため、処分の取消しは認められないものの、この判決によって、損害の賠償や防止の措置が命じられる。
2・・・妥当ではない
●事情裁決 → 処分・裁決の違法は認められるが、処分・裁決の取消しは認められない
また、損害賠償を命じられることはない
選択肢1の解説の通り、事情判決については、「処分または裁決が違法」であることの宣言を受けます。しかし、公共の利益に著しい影響があるため、処分または裁決の取り消しはされません。つまり、行政側の処分・裁決を優先することになります。
そして、事情判決の中で、「損害の賠償や防止の措置が命じられる」ことはありません。損害賠償を求めるのであれば、別途、国家賠償請求をする必要があります。
3.事情判決に関する規定は、義務付け訴訟や差止訴訟にも明文で準用されており、これらの訴訟において、事情判決がなされた例がある。

3・・・妥当ではない

●事情判決 → 義務付け訴訟・差止め訴訟には準用されない

事情判決(31条)については、義務付け訴訟や差止め訴訟には準用されていません(行政事件訴訟法38条)。

【理由】 義務付け訴訟・差止め訴訟は、「処分・裁決前」に起こす訴訟です。

  • 義務付け訴訟は、申請or審査請求をしたにも関わらず「申請が拒否」されたり、処分・裁決を行なわない場合(不作為状態が続く場合)に「処分をしてください!」と訴えるものです。
  • 差止め訴訟は、処分・裁決されると重大な損害を生ずるおそれがあるため「処分をしないでください!」と訴えるものです。

上記の通り、「処分・裁決がなされる前」の話です。

事情判決は、「処分・裁決が違法」を前提として、処分・裁決を取消すことで公の利益に著しい障害を生ずる場合に棄却することです。つまり、事情判決は「処分・裁決後」の話なので、「処分・裁決前」の義務付け訴訟や差止め訴訟は準用されません。

4.事情判決に関する規定は、民衆訴訟に明文では準用されていないが、その一種である選挙の無効訴訟において、これと同様の判決がなされた例がある。
4・・・妥当ではない
●事情判決 → 民衆訴訟には準用される●具体例:衆議院議員定員不均衡訴訟(選挙無効訴訟)事情判決(31条)については、民衆訴訟には準用されています(行政事件訴訟法43条)。よって、妥当ではありません。具体的には、下記「最大判昭51.4.14:衆議院議員定員不均衡訴訟(選挙の無効訴訟)」で、事情判決の法理が適用されて無効となっています。【事案】昭和47年の衆議院議員選挙につき、千葉県第1区の選挙人Xは、

衆議院議員選挙当時、各選挙区の議員1人あたりの有権者数の最大値と最小値との比率に4.99対1の明白かつ多大な較差があり、この較差は平等選挙において当然許される程度を超えているため、

選挙区別議員定数を定めた公職選挙法の各規定は、憲法14条(法の下の平等)に反し無効であり、本件選挙も無効であると主張した。

4.991の較差が生じ、8年間是正されなかった議員定数配分の規定は違憲か?

② 違憲となる場合、定数配分規定全体が違憲となるか?

③ 違憲となる場合、選挙自体無効となるか?

判例

4.991の較差が生じ、8年間是正されなかった議員定数配分の規定は違憲か?

違憲である

一般に、制定当時憲法に適合していた法律が、その後における事情の変化により、その合憲性の要件を欠くに至つたときは、原則として憲法違反の瑕疵を帯びることになるというべきである。

しかし、右の要件の欠如が漸次的な事情の変化によるものである場合には、いかなる時点において当該法律が憲法に違反するに至ったものと断ずべきかについて慎重な考慮が払われなければならない。

本件の場合についていえば、人口の異動は不断に生じ、したがって選挙区における人口数と議員定数との比率も絶えず変動するのに対し、選挙区割と議員定数の配分を頻繁に変更することは、必ずしも実際的ではなく、また、相当でもないことを考えると、右事情によって具体的な比率の偏差が選挙権の平等の要求に反する程度となったとしても、これによって直ちに当該議員定数配分規定を憲法違反とすべきものではない。

人口の変動の状態をも考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われない場合に始めて憲法違反と断ぜられるべきものと解するのが、相当である。
そして、本件事案については、憲法の要求するところに合致しない状態になっていたにもかかわらず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったものと認めざるをえない。

それ故、本件議員定数配分規定は、本件選挙当時、憲法の選挙権の平等の要求に違反し、違憲と断ぜられるべきものであったというべきである。

② 違憲となる場合、定数配分規定全体が違憲となるか?

定数配分規定全体が違憲となる

選挙区割及び議員定数の配分は、議員総数と関連させながら、複雑、微妙な考慮の下で決定される。

一旦このようにして決定されたものは、一定の議員総数の各選挙区への配分として、相互に有機的に関連し、一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有する。

その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、定数配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招いている部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。

③ 違憲となる場合、選挙自体無効となるか?

事情判決の法理により、選挙を無効とはしない

定数配分規定及びこれに基づく選挙を当然に無効であると解した場合、当該選挙により選出された議員がすべて当初から議員としての資格を有しなかったこととなる結果、すでにこれらの議員によって組織された衆議院の議決を経た上で成立した法律等の効力にも問題が生ずる。

また、今後における衆議院の活動が不可能となり、明らかに憲法の所期しない結果を生ずる。

そのため、事情判決の法理により(事情判決の考え方を用いて) 、選挙は無効とはならない。

5.土地改良事業が完了し、社会通念上、原状回復が不可能となった場合、事業にかかる施行認可の取消訴訟は、訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない。
5・・・妥当ではない
●土地改良事業が完了し、原状回復が不可能となったとしても、施行認可の取消訴訟の訴えの利益は消滅しない

●また、事情判決の余地もある

事案A町は、町営の土地改良事業を計画し、事業計画を定め、B県知事に対して、本件土地改良事業の施行の認可申請をした。その後、本件事業地内の土地所有者であるXは、本件認可の取消しを求めて出訴した。そして、裁判の係属中に本件事業計画にかかる工事はすべて完了した。

① 土地改良事業の工事が完了して、原状回復が不可能となった場合、当該事業の施行認可の取消しを求める訴えの利益は消滅するか?

(参考知識) 複数の土地について、土地改良事業を行なう計画が認可されると、その土地の所有者は、一時的にその土地から出ていかないといけません。そして、改良事業が終わった後に、新しい土地(換地という)を割当てられます。イメージはP139問22の土地区画整理事業です。

判決:最判平4.1.24 】

→ 訴えの利益は消滅しない

本件認可処分は、本件事業の施行者であるA町に対し、本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものである。そして、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。

そして、本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条(事情判決)の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求めるXの法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。

したがって、本問の場合、訴えの利益は消滅しないし、事情判決の余地もあるので、「訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない」は、妥当ではありません。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略