2016年過去問

平成28年・2016|問36|商法・商行為

商法の適用に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、商法の定めるところによる。
  2. 商事に関し、商法に定めがない事項については、民法の定めるところにより、民法に定めがないときは、商慣習に従う。
  3. 公法人が行う商行為については、法令に別段の定めがある場合を除き、商法の定めるところによる。
  4. 当事者の一方のために商行為となる行為については、商法をその双方に適用する。
  5. 当事者の一方が2人以上ある場合において、その1人のために商行為となる行為については、商法をその全員に適用する。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、商法の定めるところによる。
1・・・正しい
商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによります(商法1条1項)。
つまり、商人の営業、商行為その他商事については、原則、商法のルールに従い、
特別に別の法律に定めがあれば、その時は別の法律を適用する、ということです。

2.商事に関し、商法に定めがない事項については、民法の定めるところにより、民法に定めがないときは、商慣習に従う。
2・・・誤り
商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによります(商法1条2項)。
つまり、商事に関して、適用する法律の優先順位は
商法→商慣習→民法」という順だということです。
本肢は、「商法→民法→商慣習」となっているので誤りです。
3.公法人が行う商行為については、法令に別段の定めがある場合を除き、商法の定めるところによる。
3・・・正しい
公法人が行う商行為については、原則、商法の定めるところによります。例外として、法令に別段の定めがある場合は、その法令に従います。(商法2条)。
「公法人」とは、国や地方公共団体、○○公社、○○公団、土地区画整理組合などです。
4.当事者の一方のために商行為となる行為については、商法をその双方に適用する。
4・・・正しい
当事者の一方のために商行為となる行為については、商法をその双方に適用します(商法3条1項)。
スーパーで買い物をする場合、売主にとっては商行為となるので、商法が適用されるということです。
5.当事者の一方が2人以上ある場合において、その1人のために商行為となる行為については、商法をその全員に適用する。
5・・・正しい
当事者の一方が2人以上ある場合において、その1人のために商行為となる行為については、商法をその全員に適用します(商法3条2項)。
個人所有の土地を、「宅建業者A」と「個人B」が共同して購入した場合、宅建業者Aにとっては商行為なので、全員、商法が適用されます。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問35|民法・養子

改正民法に対応済

養子に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 家庭裁判所の審判により後見に付されているAは、認知をするには後見人の同意が必要であるが、養子縁組をするには後見人の同意は必要でない。
  2. 16歳のBを養子とする場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要であるが、この場合には、Bの法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならない。
  3. C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。
  4. F(70歳)およびG(55歳)は夫婦であったところ、子がいないことからFの弟であるH(58歳)を養子とした場合に、この養子縁組の効力は無効である。
  5. Ⅰ・J夫婦が、K・L夫婦の子M(16歳)を養子とする旨の縁組をし、その届出が完了した場合、MとK・L夫婦との実親子関係は終了する。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:3

【解説】

1.家庭裁判所の審判により後見に付されているAは、認知をするには後見人の同意が必要であるが、養子縁組をするには後見人の同意は必要でない。

1・・・誤り

●「父母が未成年者や成年被後見人」の場合、法定代理人の同意なく認知できる
●成年被後見人が養子縁組 → 成年後見人の同意は不要

認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意は不要です(民法780条)。よって、この点が誤りです。

【具体例】 婚姻関係にないBとの間に、Aが子Cを出産した場合、父Bが未成年者であったとしても、Bの法定代理人の同意なく、Cを認知することができます。

また、成年被後見人が婚姻や養子縁組をするとき、その成年後見人の同意は不要です(738条、799条)。

【関連ポイント】 後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法794条)。

2.16歳のBを養子とする場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要であるが、この場合には、Bの法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならない。

2・・・誤り

●未成年者を養子とするには、原則、「家庭裁判所の許可」が必要

養子縁組は当事者の合意により行えます。そして、未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。ただし、「自己又は配偶者の直系卑属(子や孫)」を養子とする場合は、家庭裁判所の許可は不要です(民法798条)。

【関連ポイント】 養子となる者が15歳未満の場合、法定代理人が、養子となる者の代わりに養子縁組の承諾をすることができます(代諾養子縁組、797条)。一方。養子となる者が15歳以上の場合には、単独で養子縁組の承諾をすることができます。よって、Bの法定代理人の承諾は不要なので、誤りです。

3.C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。

3・・・正しい

●婚姻している者が養親となる場合、又は、養子になる場合には、原則、自分の配偶者の同意を得る必要がある

配偶者のある者が縁組をするには、原則、その配偶者の同意を得なければなりません(民法796条) 。分かりやすく言えば、婚姻している者が養親となる場合、又は、養子になる場合には、自分の配偶者の同意を得る必要があるということです。

【理由】 配偶者が知らない間に相続関係に影響が出ると配偶者は困るから。

ただし、上記原則には例外があり、「①配偶者とともに縁組をする場合(養親又は養子となる場合)」又は「②配偶者が病気や行方不明等の理由で同意の意思表示ができない場合」は、配偶者の同意は不要です。

【注意】 本問は「Cが、成年者Eを自己のみの養子とするとき」と書いてあるので、①には当たりません。①は、CとDがともに成年者Eを養子とする場合です。

4.F(70歳)およびG(55歳)は夫婦であったところ、子がいないことからFの弟であるH(58歳)を養子とした場合に、この養子縁組の効力は無効である。

4・・・誤り

●尊属又は年長者を養子とした場合 → 有効だが、裁判所に対して取消しの請求ができる

「尊属(父母や祖父母)」又は「年長者(自分より年齢が上の者)」を養子とすることができません(民法793条)。つまり、「55歳のG」は「58歳のH」を養子にすることはできません。このルールに違反して縁組を行った場合(例えば、年長者を養子とした場合)、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができます(805条)。よって、年長者を養子とする縁組は取消しされるまでは有効です。違反しているから直ちに、無効とはなりません。よって、本問は誤りです。

【関連ポイント】 養子縁組が無効となるのは、①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき、②当事者が縁組の届出をしないときです。

5.Ⅰ・J夫婦が、K・L夫婦の子M(16歳)を養子とする旨の縁組をし、その届出が完了した場合、MとK・L夫婦との実親子関係は終了する。

5・・・誤り

●特別養子縁組の場合、「養子」と「実の父母」との親族関係は終了
●普通養子縁組の場合、 「養子」と「実の父母」との親族関係は終了しない
●特別養子縁組の要件 : 養子となる者の年齢は「原則、15歳未満」、例外として「15歳に達する前から養親となる者に監護されている場合は18歳未満」

養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します(809条)。つまり、養子も実子と同じ扱いになります(法定相続分も実子と同じ)。そして、特別養子縁組の場合、「養子」と「実の父母」との親族関係は終了します。一方、普通養子縁組の場合、 「養子」と「実の父母」との親族関係は終了しません

そして、特別養子縁組の場合、養子となる者の年齢は「原則、15歳未満」です。本問を見ると16歳のMを養子にしているので、特別養子縁組はできません。よって、普通養子縁組です。したがって、「養子M」と「実の父母(K・L)」との親族関係は終了しません。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問34|民法・不法行為

改正民法に対応済

不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 使用者Aが、その事業の執行につき行った被用者Bの加害行為について、Cに対して使用者責任に基づき損害賠償金の全額を支払った場合には、AはBに対してその全額を求償することができる。

イ Dの飼育する猛犬がE社製の飼育檻から逃げ出して通行人Fに噛みつき怪我を負わせる事故が生じた場合において、Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったとしても、犬が逃げ出した原因がE社製の飼育檻の強度不足にあることを証明したときは、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができる。

ウ Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Ⅰの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはⅠに対して求償することができる。

エ 運送業者Jの従業員Kが業務として運転するトラックとLの運転する自家用車が双方の過失により衝突して、通行人Mを受傷させ損害を与えた場合において、LがMに対して損害の全額を賠償したときは、Lは、Kがその過失割合に応じて負担すべき部分について、Jに対して求償することができる。

オ タクシー会社Nの従業員Oが乗客Pを乗せて移動中に、Qの運転する自家用車と双方の過失により衝突して、Pを受傷させ損害を与えた場合において、NがPに対して損害の全額を賠償したときは、NはOに対して求償することはできるが、Qに求償することはできない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

ア 使用者Aが、その事業の執行につき行った被用者Bの加害行為について、Cに対して使用者責任に基づき損害賠償金の全額を支払った場合には、AはBに対してその全額を求償することができる。

ア・・・誤り

●使用者が賠償した場合、損害の公平な分担という見地から信義則上「相当と認められる限度」で従業員に求償できる

使用者Aが被害者Cに損害賠償金を支払った場合(=Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合)、使用者Aは被用者B(加害者)に対して求償することができますが、使用者が被用者に無制限に求償することはできず、判例では、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、使用者Aは被用者Bに対して求償することができるとしています。

※ 「相当と認められる限度」のイメージとしては、使用者Aの管理がしっかりしていないことで不法行為(例えば、過失による事故)が生じた場合は、従業員Bに対して求償できる金額は小さくなり、逆に従業員個人Bの責任が大きい場合は、従業員Bに対して求償できる額は大きくなるといった感じです。

【関連ポイント】

もし、被用者Bが賠償した場合、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、被用者Bは、使用者Aに対して求償することができる(賠償した者が使用者Aであっても被用者Bであっても、考え方は同じということ)

イ Dの飼育する猛犬がE社製の飼育檻から逃げ出して通行人Fに噛みつき怪我を負わせる事故が生じた場合において、Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったとしても、犬が逃げ出した原因がE社製の飼育檻の強度不足にあることを証明したときは、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができる。

イ・・・誤り

●動物が他人に損害を加えた → 動物の占有者は原則、賠償責任を負う
例外として、相当の注意をもってその管理をしたときは責任を免れる

状況としては、「猛犬の飼い主D」「檻の製造業者E」「猛犬に噛まれた被害者F」です。

動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、賠償責任を負いません(民法718条)。本問を見ると「Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかった」となっているので、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができません。

飼育檻の強度不足にあることを証明したときでも、飼い主Dが相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったら、Dは損害賠償責任を負います。

ウ Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Ⅰの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはⅠに対して求償することができる。

ウ・・・正しい

●工作物責任 → ①占有者が責任を負う → 占有者が必要な注意をしていた場合、②所有者が責任を負う

損害の原因が他の者にあれば、賠償した者は、その者に求償できる

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その「工作物の占有者」は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負います。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません(民法717条1項)。そして、この1項の規定は、竹木の栽植(植えること)又は支持に瑕疵がある場合についても準用します(2項)。1項2項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができます(3項)。

本問を見ると、 G所有の樹木が倒れて通行人Hに損害を負わせています。別に占有者がいる旨の記載はなく、 所有者GがHに損害を賠償しています。さらに、植栽工事を担当した請負業者 I の作業に瑕疵があったということなので、賠償したGは、請負業者 I に求償できます。

エ 運送業者Jの従業員Kが業務として運転するトラックとLの運転する自家用車が双方の過失により衝突して、通行人Mを受傷させ損害を与えた場合において、LがMに対して損害の全額を賠償したときは、Lは、Kがその過失割合に応じて負担すべき部分について、Jに対して求償することができる。

エ・・・正しい

●共同不法行為 → 「自己の負担部分を超えて」賠償した場合、その超える部分に対し、他の使用者J・他の共同不法行為者Kに対し求償することができる

判例によると、「被用者Kがその使用者Jの事業の執行につき第三者Lとの共同の不法行為により他人Mに損害を加えた場合において、当該第三者Lが自己Lと被用者Kとの過失割合に従って定められるべき自己Lの負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、当該第三者Lは、被用者Kの負担部分について使用者Jに対し求償することができるものと解するのが相当である」としています(最判昭和63年7月1日)。

ここで、Lが全額賠償をした場合、KとLの過失割合に従って、Lは、KおよびJに求償できます。よって、本問は正しいです。

オ タクシー会社Nの従業員Oが乗客Pを乗せて移動中に、Qの運転する自家用車と双方の過失により衝突して、Pを受傷させ損害を与えた場合において、NがPに対して損害の全額を賠償したときは、NはOに対して求償することはできるが、Qに求償することはできない。

オ・・・誤り

●使用者Nは、他の加害者Qに対して求償権を行使することができ、Qの負担部分は、OとQとの過失割合による
●使用者責任において、賠償した使用者は、被用者に対して、信義則上相当と認められる限度において求償できる

判例によると、「共同不法行為者たる被用者O及び使用者N、そして他の共同不法行為者Qは、被害者Pに対して、各自、被害者Pが蒙った全損害を賠賞する義務を負うものというべきであり、また、当該債務の弁済をした使用者Nは、他の共同不法行為者Qに対し、他の共同不法行為者Qと被用者Oとの過失の割合にしたがって定められるべき他の共同不法行為者Qの負担部分について求償権を行使することができるものと解する」としています(最判昭41.11.18)。

【具体例】

被害額100万円、OとQの過失割合が3:7だったとします。この場合、OとNの負担部分は30万円、Qの負担部分は70万円です。ここで、使用者Nが100万円を弁済した場合、NはQに対して70万円を求償できます。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問33|民法・債務不履行

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。解かなくても大丈夫です。

債務不履行責任に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 不確定期限がある債務については、その期限が到来した時ではなく、債務者が履行期の到来を知った時から履行遅滞になる。
  2. 債務者が自己の債務を履行しない場合、その債務不履行につき帰責事由がないことを債務者の側において立証することができなければ、債務者は債務不履行責任を免れることができない。
  3. 賃借人が賃貸人の承諾を得て賃貸不動産を転貸したが、転借人の過失により同不動産を損傷させた場合、賃借人は転借人の選任および監督について過失がなければ、賃貸人に対して債務不履行責任を負わない。
  4. 受寄者が寄託者の承諾を得て寄託物を第三者に保管させたが、当該第三者の過失により寄託物を損傷させた場合、受寄者は当該第三者の選任および監督について過失がなければ、寄託者に対して債務不履行責任を負わない。
  5. 特別の事情によって生じた損害につき、債務者が契約締結時においてその事情を予見できなかったとしても、債務不履行時までに予見可能であったと認められるときは、債務者はこれを賠償しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:-

【解説】

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問32|民法・債権者代位権・詐害行為取消請求

改正民法に対応済

債権者代位権または詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。
  2. 債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。
  3. 債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。
  4. 甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。
  5. 詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

1.債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。

1・・・誤り

●債権者代位権の要件の一つ : 債権の弁済期が到来していること
ただし、保存行為については、弁済期が到来していなくても行える

●債権者代位権 :裁判外で行える(裁判所の許可は不要

債権者代位権とは、債権者が債務者の代わりに権利行使することを言います。

【具体例】 売主Aが建物を所有しており、未登記だったとします。
この建物を買主BがAから購入した。
この場合、AからBへ所有権移転登記をしないと、Bは対抗要件を備えることができません。

しかし、建物が未登記(保存登記がされていない)の場合、所有権移転登記ができません。

この場合、買主Bは、売主Aに代わって、Aの保存登記を行うことができます。

流れとしては、①A名義の保存登記(これを、Bが、Aの代わりに行う=債権者代位権を行使する)、その後②AからBへの移転登記を行う流れです。

債権者Bは、Aに対して「移転登記請求権」を持っており、これを保全するために、債務者Aの有する「保存登記をする権利」を代わりに行使するということです。

そして、今回の「BがAの代わりに保存登記を行うこと」は、「保存行為」に当たります。そのため、弁済期が到来していなくても行うことができます。また、債権者代位権は裁判所の許可も不要です(裁判外で行える)。

2.債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。

2・・・正しい

●債権者代位権 : 物権的請求権だけでなく形成権についてもの代位行使できる

【物権的請求権の具体例】 Aが、BにA所有の建物を賃貸した。当該建物に不法占拠者がいた場合、Aが有する「所有権に基づく妨害排除請求権」を賃借人Bが代わりに行使することができます。この妨害排除請求権は所有権という物権に基づく請求権です。

【形成権の具体例】 形成権とは、権利者の一方的な意思表示によって一定の法律関係を発生させることのできる権利を言います。例えば、取消権や解除権です。CがDに対して100万円を貸していた。Cは「貸金債権」を持つ。Dは、E生命保険会社と保険の契約をしてした。その後、Dが無資力となった場合、Cは「貸金債権」を保全するために、Dの有する保険契約の解除権を行使することができる。(Cは、解約返戻金から100万円を回収する)

3.債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。

3・・・誤り

●債権者代位権 : 債権者が自己の権利として行使する / 債務者の代理人として行使するのではない

債権者代位権は、債権者の有する権利です。債権者は「債務者の権利」を代わりに行使していますが、これは債務者の代理人という立場で権利行使しているのではなく、債権者の自己の権利として行使しています。よって、本問は誤りです。

4.甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。

4・・・誤り

●債務者が処分(譲渡)することにより無資力となった場合には、債権者はその処分行為を詐害行為として取り消すことができる

【問題文の状況】 Aは、BとCの二者に甲不動産を譲渡しています。

そして、Cが先に登記を備えているので、Cは対抗要件を備えます。

一方、Bは購入したため、Aに対して「引渡請求権」を持ちます。

そして、Cへの譲渡(例えば贈与)により、Aが無資力となった。

【前提知識】 詐害行為取消権における被保全債権は、原則、金銭債権でなければなりません。

【判例】 今回は「引渡請求権」なので、金銭債権ではないです。しかし、Aが引渡しができないことにより、損害賠償請求権という金銭債権に代わることから、AからCへの譲渡を詐害行為として、詐害行為取消権を行使できるとしています。

つまり、Bは、AC間の譲渡を詐害行為として譲渡契約を取消すことができます。

5.詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。

5・・・誤り

●詐害行為取消権における、「受益者の善意」は受益者が立証責任を負い、「転得者の悪意」は債権者が立証責任を負う

【前提知識と具体例】

①AはBに100万円を貸した(Aは貸金債権を有している)。その後、弁済期が到来したにも関わらず、BはAに100万円を弁済しなかった。Bは唯一の財産である2000万円の甲地を有していたが、そのまま所有し続けると、Aに差し押さえられてしまうので、②Bは甲地をCに売却した。この状況で、Aを債権者、Bを債務者、Cを受益者と呼びます。

※受益者は、「詐害行為によって利益を受けた者」という言い方もします。

ここで、AがBに100万円を貸したのは、Bが甲地を所有しており、万一返せなくても、この土地を差し押さえて、返してもらおうと期待できたからでしょう。

それにも関わらず、Bが甲地を売却してしまったら、Aは甲地を差し押さえて、100万円を回収するという事ができなくなってしまいます。それではAの利益を害するし、またBは明らかにAを害するためにこのような行為をしているわけなので、Bを保護する必要性は低いです。

※Aは貸金債権を保全したい:回収できるようにしたい→貸金債権を「被保全債権」と呼ぶ

そこで、民法では、債務者BがAを害することを知ってした行為(Cへの売却)について、債権者Aは、取り消すことができるとしています。これが「詐害行為取消権」です。具体的には、③債権者Aが裁判所に、詐害行為取消請求の訴えをし、④訴えが認められれば、取消判決となり、BC間の売買契約は取り消されます。

この「債務者BがAを害することを知ってした行為」を「詐害行為」と言います。

ただし、例外として、詐害行為について受益者Cが知らなかった場合(善意)、債権者Aは詐害行為取消権を行使できません。そして、詐害行為(BC間の売買契約)が取消された場合、受益者Cは、反対給付(Bに支払った代金)の返還を請求することができます。

【判例】

上記受益者(もし、受益者が、さらに別の者に転売していた場合は転得者)が善意か悪意かは、受益者や転得者が立証責任を負います。つまり、受益者・転得者が善意を立証すれば、受益者・転得者が保護されます(Aは取消しできない)。

【理解】

原則として、立証責任は「権利を主張する側」にあります。

①債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。
ただし、その行為によって利益を受けた者(受益者)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。(民法424条)

ただし書きの部分から、「受益者が、債権者を害すべき事実を知らなかったときは、詐害行為取消権は行使できない」ということなので、「権利を主張する側」は「受益者」です。
したがって、「受益者が、債権者を害すべき事実を知らなかった」ことは、受益者が立証責任を負います。

一方
②転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき、債権者は、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる(民法424条の5)。

詐害行為取消請求を主張するのは、債権者です。したがって、「転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていた」ことについては、「債権者」が立証責任を負います。

よって、①の受益者に関する部分が誤りです。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問31|民法・根抵当権

改正民法に対応済

Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 元本確定前に、A・Bは協議により、被担保債権の範囲にA・B間の金銭消費貸借取引に係る債権を加えることで合意した。 A・Bがこの合意を後順位抵当権者であるCに対抗するためには、被担保債権の範囲の変更についてCの承諾が必要である。
  2. 元本確定前に、Bが、Aに対して有する継続的売買契約に係る売掛代金債権をDに対して譲渡した場合、Dは、その債権について甲土地に対する根抵当権を行使することはできない。
  3. 元本確定前においては、Bは、甲土地に対する根抵当権をAの承諾を得てEに譲り渡すことができる。
  4. 元本が確定し、被担保債権額が6,000万円となった場合、Aは、Bに対して甲土地に対する根抵当権の極度額1億円を、6,000万円と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金および債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求できる。
  5. 元本が確定し、被担保債権額が1億2,000万円となった場合、甲土地について地上権を取得したFは、Bに対して1億円を払い渡して根抵当権の消滅を請求することができる。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:1

【解説】

Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。

1.元本確定前に、A・Bは協議により、被担保債権の範囲にA・B間の金銭消費貸借取引に係る債権を加えることで合意した。 A・Bがこの合意を後順位抵当権者であるCに対抗するためには、被担保債権の範囲の変更についてCの承諾が必要である。

1・・・誤り

●元本の確定前に根抵当権の範囲を変更 → 後順位の抵当権者等の承諾は不要

元本の確定前においては、根抵当権の「担保すべき債権の範囲」の変更をすることができ、「債務者」についても変更できます(民法398条の4の1項)。

そして、上記変更をするために、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得る必要はないです(2項)。

【理由】 なぜ、後順位抵当権者などの承諾なく、根抵当権の「担保すべき債権の範囲」や「債務者」の変更ができるかというと、これらを変更したとしても、後順位抵当権者の優先弁済権に影響はないからです。

【具体例】 根抵当権者B(極度額1億円)の後順位に他の抵当権者C(被担保債権1000万円)がいたとします。もし、不動産が1億1000万円で売却されたら、後順位抵当権者Cは1000万円の配当を受けることができます。もし、根抵当権の「担保すべき債権の範囲」や「債務者」が変更したとしても、Cの配当額は変わらないので、承諾は不要です。

※ 上記理由から、「極度額」を変更する場合、利害関係を有する者の承諾を得る必要があります(398条の5)。

【関連ポイント】 上記変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなします(3項)。※ 元本確定後は、「担保すべき債権の範囲の変更」と「債務者の変更」はできません。

Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。

2.元本確定前に、Bが、Aに対して有する継続的売買契約に係る売掛代金債権をDに対して譲渡した場合、Dは、その債権について甲土地に対する根抵当権を行使することはできない。

2・・・正しい

●元本の確定前に「被担保債権」を譲渡 → 根抵当権は移転しない(元本確定前の根抵当権に随伴性はない)

元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者Dは、その債権について根抵当権を行使することができません(民法398条の7)。つまり、Dは、根抵当権の被担保債権を譲り受けても、根抵当権に基づいて、競売にかけることはできません。

【理由】 そもそも根抵当権は複数の債権を担保(保証)するためのものです

また、まだ発生していない債権も今後発生した時に担保されます。

つまり、特定の債権が譲渡されたかたといって、根抵当権がDに移ったら、根抵当権者Bが有するその他の債権、また今後担保されるはずの債権が担保されなくなり困るからです。

このように、被担保債権を譲渡に伴って、根抵当権が移転しないことを「随伴性(ずいはんせい)はない」と言います。

Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。

3.元本確定前においては、Bは、甲土地に対する根抵当権をAの承諾を得てEに譲り渡すことができる。

3・・・正しい

●元本の確定前に「根抵当権」を譲渡することができる → 根抵当権設定者の承諾が必要

元本の確定前においては、根抵当権者Bは、根抵当権設定者Aの承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができます(民法398条の12)。

これは、Bからみると、Bの債権を担保してくれるものがなくなることを意味するのであって、債権自体はBに残ります。

つまり、BのAに対する売掛代金債権については、Bが有します。保証がなくなったイメージです。

【注意】 選択肢2のように「被担保債権(売掛代金債権)」を譲渡したわけではないので注意!

Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。

4.元本が確定し、被担保債権額が6,000万円となった場合、Aは、Bに対して甲土地に対する根抵当権の極度額1億円を、6,000万円と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金および債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求できる。

4・・・正しい

●元本確定後、根抵当権設定者は、極度額の減額を請求できる
●減額できる額 : 現存する債務(元本)+以後2年間分の利息・遅延損害金

元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき「利息等」及び「債務の不履行による損害賠償の額(遅延損害金)」とを加えた額に減額することを請求することができます(民法398条の21)。

【具体例】 極度額が1億円で、元本確定時の債務の額が6000万円だったとします。その後、2年間の利息や遅延損害金等が500万円だったとすれば、根抵当権設定者は、極度額を1億円から6500万円まで減額することができます。

【理由】 根抵当権者としては、極度額1億円あれば、まだまだ何年にもわたって利息を担保することができるのですが、一方で、根抵当権設定者としては、元本が確定しているにもかかわらず、1億円の根抵当権がついていたら、他からお金を借りようとしても借りづらくなります。そのため、元本確定をしたのであれば、その後の2年分の利息と遅延損害金までの保証にしてください!と請求できるようにして、根抵当権設定者Aと根抵当権者Bの利害の調整を図っています。

また、「元本確定した根抵当権」は「抵当権」とほぼものとなるので、そこからもイメージできると思います。

Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。

5.元本が確定し、被担保債権額が1億2,000万円となった場合、甲土地について地上権を取得したFは、Bに対して1億円を払い渡して根抵当権の消滅を請求することができる。

5・・・正しい

●元本確定後に極度額に相当する金額を払えば、根抵当権消滅請求ができる

元本の確定後に、現存する債務の額が極度額を超えるときは、物上保証人、不動産の第三取得者、地上権者、永小作権者、対抗力を具備した賃借権者は、極度額に相当する金額を払い渡すか又は供託して根抵当権の消滅を請求することができます(民法398条の22)。

【具体例】 根抵当権の「極度額」が1億円で、「現存する債務の額」が1億2000万円だったとします。この場合、根抵当権者としては、根抵当権で保証される部分は最大で1億円です。そのため、この部分だけ、弁済してもらえれば、根抵当権者として不利益は生じないので、地上権者が1億円を払ってくれれば、根抵当権を消滅させることができます。

もちろん、残債2000万円は残ります。この部分については無担保となるだけで、債権自体は残るので、別途請求することは可能です。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問30|民法・不動産先取特権

改正民法に対応済

不動産先取特権に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 不動産の保存の先取特権は、保存行為を完了後、直ちに登記をしたときはその効力が保存され、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先する。
  2. 不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
  3. 不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に、不動産の代価またはその利息の弁済がされていない旨を登記したときでも、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先しない。
  4. 債権者が不動産先取特権の登記をした後、債務者がその不動産を第三者に売却した場合、不動産先取特権者は、当該第三取得者に対して先取特権を行使することができる。
  5. 同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

1.不動産の保存の先取特権は、保存行為を完了後、直ちに登記をしたときはその効力が保存され、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先する。

1・・・正しい

●不動産保存の先取特権 → 保存行為が完了した後直ちに登記をすることで対抗力を持つ
●「不動産保存の先取特権」は登記することで先順位の抵当権にも優先する

不動産の保存の先取特権の効力を保存(対抗)するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければなりません(民法337条)。つまり、保存行為完了後、直ちに不動産保存の先取特権を登記することで、対抗要件を備えます。

そして、「不動産保存の先取特権」については、 「抵当権」が先に登記されていても、後に登記した「不動産保存の先取特権」が勝ちますよって、本肢は正しいです。

【関連ポイント】 不動産工事の先取特権も同様、 「抵当権」が先に登記されていても、後に登記した「不動産工事先取特権」が勝ちます

2.不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。

2・・・正しい

●不動産工事の先取特権 → 工事によって生じた現存する増価額分についてのみ存在する

不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在します(民法327条1項)。

そして、不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在します(2項)。よって、本肢は正しいです。

【具体例】 価格が1000万円の山林があり、造成工事を行うことにより、価格が1800万円となった場合、増価額は800万円となります。

【関連ポイント】 不動産工事の先取特権の効力を保存(対抗)するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければなりません。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しません(338条)。つまり、登記をした予算額が先取特権の上限となり、また、327条2項から工事によって増価額も上限となります。
言い換えると、 「予算額」と「増加額分」の小さい方が、先取特権の範囲となります
例えば、上記具体例において、予算額を700万円で登記をしていたら、700万円までが先取特権の範囲となり、予算額を900万円と登記していれば、800万円が先取特権の範囲となります。

3.不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に、不動産の代価またはその利息の弁済がされていない旨を登記したときでも、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先しない。

3・・・正しい

●不動産売買の先取特権 → 売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記することで対抗力を持つ
●「不動産売買の先取特権」と「抵当権」の優劣 → 登記の先後によって決まる

不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければなりません(民法340条)。

また、「不動産売買の先取特権」と「抵当権」の優劣は、登記の先後によって決まるので、先に登記をした方が勝ちます。

よって、「不動産売買の先取特権は、既存の抵当権に優先しない」という記述は正しいです。

4.債権者が不動産先取特権の登記をした後、債務者がその不動産を第三者に売却した場合、不動産先取特権者は、当該第三取得者に対して先取特権を行使することができる。
4・・・正しい
●「不動産先取特権者」と「第三取得者」の優劣 → 登記の先後によって決まる「不動産先取特権者」と「第三取得者」の優劣については、民法に特別な規定はありません。よって、不動産に関する物権の得喪及び変更は先に登記した方が対抗力を持つというルールに従います(民法177条)。
5.同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。

5・・・誤り

●「不動産保存の先取特権」「不動産工事の先取特権」「不動産売買の先取特権」の優劣
●→  ①不動産保存 ②不動産工事 ③不動産売買となる(不動産保存が一番強い)

同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、①不動産保存→②不動産工事→③不動産売買の順序に従います(民法331条)。よって、本肢は誤りです。「不動産保存の先取特権」が優先します。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問29|民法・物権

改正民法に対応済
A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア DがA、BおよびCに無断で甲土地上に乙建物を建てて甲土地を占有使用している場合、Aは、Dに対し、単独で建物の収去および土地の明渡しならびに土地の占拠により生じた損害全額の賠償を求めることができる。

イ Eが、A、BおよびCが共有する乙建物をAの承諾のもとに賃借して居住し、甲土地を占有使用する場合、BおよびCは、Eに対し当然には乙建物の明渡しを請求することはできない。

ウ Fが賃借権に基づいて甲土地上に乙建物を建てた場合において、A、BおよびCが甲土地の分割協議を行うとするときは、Fに対して分割協議を行う旨を通知しなければならず、通知をしないときは、A、BおよびCの間でなされた分割の合意は、Fに対抗することができない。

エ Aが乙建物を所有し居住している場合において、Aが、BおよびCに対して甲土地の分割請求をしたときは、甲土地をAに単独所有させ、Aが、BおよびCに対して持分に相当する価格の賠償を支払う、いわゆる全面的価額賠償の方法によって分割しなければならない。

オ A、BおよびCが乙建物を共有する場合において、Aが死亡して相続人が存在しないときは、Aの甲土地および乙建物の持分は、BおよびCに帰属する。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。

ア DがA、BおよびCに無断で甲土地上に乙建物を建てて甲土地を占有使用している場合、Aは、Dに対し、単独で建物の収去および土地の明渡しならびに土地の占拠により生じた損害全額の賠償を求めることができる。

ア・・・誤り

●保存行為(不法占有者に対する明渡請求・建物収去請求) → 共有者は単独で行える

●損害賠償請求 → 共有者、自己の共有持分の割合に応じて請求できる(他の共有者の分までは請求できない)■「建物の収去」及び「土地の明渡し」請求について保存行為は、各共有者が単独ですることができます(民法252条)。保存行為とは、共有物の現状を維持する行為を指し、共有の土地に不法占拠者が建物を

無断で建築していた場合、「建物の収去」及び「土地の明渡し」の請求は保存行為に当たります。

よって、「Aは、Dに対し、単独で建物の収去および土地の明渡しを求めることができる」

ので、前半部分は正しいです。

■損害賠償請求はどうか?

判例では、共有物が不法に占有されたことを理由として、不法占有者に対して損害賠償を求める場合、共有者は、それぞれその共有持分の割合に応じて請求をすべきものであり、その割合を超えて請求をすることは許されないとしています。

つまり、損害賠償請求については、自己の共有持分の割合しか請求できず、他の共有者の分も併せて請求することはできません。

具体例

ABCの持分が各1/3で、損害額が全体として90万円であった場合、Aは30万円までしか損害賠償請求できないということです。

A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。

イ Eが、A、BおよびCが共有する乙建物をAの承諾のもとに賃借して居住し、甲土地を占有使用する場合、BおよびCは、Eに対し当然には乙建物の明渡しを請求することはできない。

イ・・・正しい

●共有者の一人の承諾を得て共有物を占有使用 → 共有者の持分に基づいて共有物を使用する権利がある → 他の共有者は明渡請求できない

1つのモノ(共有物)を複数の者が共有した場合、各共有者は共有物の全部について、その持分の割合に応じて使用することができます。少し分かりにくいのですが、例えば、ある事務所の1室を、ABCが共有していて、Aの持分が2分の1、 B・Cの持分がそれぞれ4分の1だったと仮定します。この場合、Aは建物全てを使用できます。ただし、持分の割合が2分の1なので、1ヶ月のうち2週間だけ使用できるというイメージです。では、共有者の一人Aが他の共有者の同意なくEに建物の使用を認めた場合、ただちに、他の共有者BCは、Eに対して明渡請求ができるか?が本問の質問内容です。

判例 では、他の共有者BCは、Eに対して明渡請求できないとしています。

理由 Eは共有者の一人Aの持分の範囲内であれば、建物を使用することはできるからです。したがって、他の共有者BCはAに対して、当然に明け渡し請求はできません。

A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。

ウ Fが賃借権に基づいて甲土地上に乙建物を建てた場合において、A、BおよびCが甲土地の分割協議を行うとするときは、Fに対して分割協議を行う旨を通知しなければならず、通知をしないときは、A、BおよびCの間でなされた分割の合意は、Fに対抗することができない。

ウ・・・誤り

●分割協議を行うとするときは、債権者に対して分割協議を行う旨を通知する義務はない

前提知識 共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用(交通費等)で、分割に参加することができます(民法260条1項)。上記参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができません(2項)。そして、分割協議を行うとするときは、債権者に対して分割協議を行う旨を通知する必要はありません。

本問の内容 「Fが賃借権に基づいて甲土地上に乙建物を建てた場合」なので、Fは甲土地(共有物)を使用できる権利を持ちます。言い換えると、共有物の使用に関して、Fは債権者で、ABCは債務者です。したがって、Fは共有分割参加することはできます。しかし、ABCは、Fに対して分割協議を行う旨を通知する義務はないので、この点が誤りです。また、通知をしなかったとしても、Fが参加請求をしなければ、ABC間でなされた分割の合意は、Fに対抗することができるので、この点も誤りです。

A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。

エ Aが乙建物を所有し居住している場合において、Aが、BおよびCに対して甲土地の分割請求をしたときは、甲土地をAに単独所有させ、Aが、BおよびCに対して持分に相当する価格の賠償を支払う、いわゆる全面的価額賠償の方法によって分割しなければならない。

エ・・・誤り

●共有物の分割を請求がされた場合、「(全面的)価格賠償」を選択することもできる(任意)

分割の方法は下記3つありますが、事情に応じて裁判所の裁量で分割方法を選択します。また、当事者の話し合いで決める場合もどの分割方法を選択しても構いません。判例でも、裁判所は、共有者の実質的公平を害しない特段の事情があれば、共有者のうちの1人の単独所有として、他の共有者にその持分の価格を賠償させる方法で分割させることができるとしています。よって、「全面的価額賠償の方法によって分割しなければならない」と義務になっている点は誤りです。あくまでも「全面的価額賠償の方法によって分割することもできる」という任意です。

※ 全面的価額賠償とは、下表の「価額賠償」のことです。

※ 分割請求は、初めは当事者の話し合いで行いますが、それでも解決できない場合は、訴訟により解決します。

A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。

オ A、BおよびCが乙建物を共有する場合において、Aが死亡して相続人が存在しないときは、Aの甲土地および乙建物の持分は、BおよびCに帰属する。

オ・・・正しい

●「共有者の一人が持分放棄」「共有者の一人が相続人なく死亡」 → 他の共有者に帰属

共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属します(民法255条)。 よって、本問は正しいです。

■もし相続人がいたらどうなるか?

死亡した共有者の持分は、相続人が相続する

■相続人がおらず、特別縁故者がいた場合どうなるか?

判例では、共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、民法958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法255条により他の共有者に帰属するとしています。つまり、相続人がおらず、特別縁故者がいた場合、特別縁故者に帰属する場合があります。

※ 民法958条の3 一定期間内に相続する権利を主張する者がいないとき、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者という)の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問28|民法・代理

改正民法に対応済
Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した(以下「本件売買契約」という。)。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aが死亡してBが単独相続した場合、Bは本人の資格に基づいて本件売買契約につき追認を拒絶することができない。
  2. Bが死亡してAの妻DがAと共に共同相続した後、Aも死亡してDが相続するに至った場合、Dは本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はない。
  3. Aが本件売買契約につき追認を拒絶した後に死亡してBが単独相続した場合、Bは本件売買契約の追認を拒絶することができないため、本件売買契約は有効となる。
  4. Bが死亡してAが相続した場合、Aは本人の資格において本件売買契約の追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任を免れることはできない。
  5. Aが死亡してBがAの妻Dと共に共同相続した場合、Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、Bの相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではない。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。

1.Aが死亡してBが単独相続した場合、Bは本人の資格に基づいて本件売買契約につき追認を拒絶することができない。

1・・・正しい

●無権代理人が本人を単独相続 → 無権代理人は追認拒絶できない(下表の下段参照)

①無権代理人Bが、本人Aに無断でA所有の甲土地をCに売却します。②その後、本人Aが死亡し、③無権代理人Bが単独相続します。

無権代理人Bが本人Aを単独相続したとき、無権代理人が行った契約は有効となります。自分(無権代理人)でやったことは、自分で責任をとるのが当然です。そのため、「本人Aの権利(追認拒絶権)」を相続したことを理由に追認拒絶することは許されません。よって、本問は正しいです。

したがって、無権代理人Bは、相手方Cと契約したとおり、相手方Cに甲土地を引き渡さなければなりません。引き渡すことができなければ、債務不履行となり、損害賠償責任を負います。

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。

2.Bが死亡してAの妻DがAと共に共同相続した後、Aも死亡してDが相続するに至った場合、Dは本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はない。

2・・・正しい

●無権代理人が死亡 → 「本人」と「他の相続人」が共同相続 → その後、本人死亡で、「他の相続人」が本人を相続 → 「他の相続人」は追認拒絶できない
状況

①無権代理人Bが、Cに甲土地を売却する(無権代理行為をする)。

②無権代理人Bが死亡し、③本人AとDが共同相続する。

④その後、本人Aが死亡し、⑤Dが相続する。

質問

Dは、本人Aの資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はない。

○か×か?

判例

無権代理人が死亡し、本人とともに相続した者(D)が、その後、本人を相続した場合、当該相続人Dは、本人の有する追認拒絶権を行使する余地はないとしています。

理由

③で、共同相続人Dは無権代理人Bの地位を承継しており、この時点で追認拒絶できないことが確定するため。

これは深く考えず、そのまま覚えてしまった方が良いでしょう。

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。
3.Aが本件売買契約につき追認を拒絶した後に死亡してBが単独相続した場合、Bは本件売買契約の追認を拒絶することができないため、本件売買契約は有効となる。

3・・・誤り

①本人が追認拒絶 → ②その後、無権代理人が本人を単独相続 → ①の時点で追認拒絶=契約の効力は及ばないことが確定

本問は、無権代理人Bが無権代理行為(Cへの無断売却)を行い、その後、①本人Aが追認拒絶をしています。

この時点で、無権代理行為の効果は本人Aに及ばないことが確定します。つまり、BC間の契約は有効ではなくなります。

その後、②本人Aが死亡し、無権代理人が本人Aを相続しているので、 上記のとおり、BC間の契約は有効ではありません。

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。

4.Bが死亡してAが相続した場合、Aは本人の資格において本件売買契約の追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任を免れることはできない。

4・・・正しい

●無権代理人が死亡 → 本人が単独相続 → 本人は追認拒絶できるが、無権代理人の責任は承継する

状況

選択肢1とは逆で、無権代理行為が行われた後に、無権代理人Bが死亡し、本人が単独相続した場合です。

質問

本人Aは、無権代理人の責任を免れることはできない。○か×か?

判例

本人の有する追認拒絶権を行使することはできるが、無権代理人の債務も承継するため、無権代理人の責任を免れることはできない=損害賠償債務は負います。

【関連ポイント】

本人は、無権代理人の無権代理行為について追認拒絶しても信義則に反しないため、履行拒絶はできる。

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。

5.Aが死亡してBがAの妻Dと共に共同相続した場合、Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、Bの相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではない。

5・・・正しい

本人が死亡 → 「無権代理人」と「他の相続人」が共同相続 → 共同相続人全員が追認しない限り、無権代理行為は有効とはならない
状況

①無権代理人Bが、Cに甲土地を売却する(無権代理行為をする)。

②本人Aが死亡し、③無権代理人BとDが共同相続する。

質問

Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、
Bの相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではない。 ○か×か?

判例

「無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属する」としています。分かりやすくいうと、共同相続人のうち一人でも追認しない者がいた場合、追認とはならず、一部だけ有効とはならないということです。追認する場合、全員が追認しなければなりません。そして、無権代理人Bは追認拒絶することは信義則上許されないが、他の共同相続人Dは、本人Aの地位を承継し、追認拒絶することが許されます。
つまり、 Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、 Bの相続分においても当然に有効となるものではないので正しいです。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問27|民法・時効

改正民法に対応済

AのBに対する甲債権につき消滅時効が完成した場合における時効の援用権者に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

ア Aが甲債権の担保としてC所有の不動産に抵当権を有している場合、物上保証人Cは、Aに対して債務を負っていないが、甲債権が消滅すれば同不動産の処分を免れる地位にあるため、甲債権につき消滅時効を援用することができる。

イ 甲債権のために保証人となったDは、甲債権が消滅すればAに対して負っている債務を免れる地位にあるため、甲債権につき消滅時効を援用することができる。

ウ Bの詐害行為によってB所有の不動産を取得したEは、甲債権が消滅すればAによる詐害行為取消権の行使を免れる地位にあるが、このような利益は反射的なものにすぎないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

エ Aが甲債権の担保としてB所有の不動産に抵当権を有している場合、Aの後順位抵当権者Fは、Aの抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当しないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

オ Aが甲債権の担保としてB所有の不動産に抵当権を有している場合、同不動産をBから取得したGは、甲債権が消滅すれば抵当権の負担を免れる地位にあるが、このような利益は反射的なものにすぎないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:5

【解説】

AのBに対する甲債権につき消滅時効が完成した場合について、

ア Aが甲債権の担保としてC所有の不動産に抵当権を有している場合、物上保証人Cは、Aに対して債務を負っていないが、甲債権が消滅すれば同不動産の処分を免れる地位にあるため、甲債権につき消滅時効を援用することができる。

ア・・・正しい

●物上保証人 : 消滅時効を援用できる

結論からいうと、物上保証人Cは、Aに対して債務を負っていないが、甲債権が消滅すれば同不動産の処分(競売)を免れる地位にあるため、甲債権につき消滅時効を援用することができます。 「物上保証人は消滅時効を援用できる」とそのまま覚えて大丈夫です。

【前提知識】

まず、物上保証人とは、他人の債務のために自分の財産の上に抵当権等を設定した者を言います。

【具体例】

債権者Aが債務者Bに対して1000万円を貸したとします。Bは保証のための不動産を持っていないので、Bの親であるCが所有する土地を担保としました(土地に抵当権を設定)。この場合、Cが物上保証人です。万一、Bが期限までに1000万円を返さない場合、Aは抵当権を実行して(競売にかけて)Cの土地の競売代金からお金を回収することができます。

【注意点】

物上保証人は、保証人と異なり自分で債務を負担しません。

言い換えると、物上保証人は「債務者ではない」です。

つまり、Bがお金を返さないからといって、物上保証人Cは、Aから請求される債務を負いません。

単に土地が競売にかけられて売られてしまうだけです。

もし、この土地が400万円にしかならなくても、物上保証人Cはそれ以上の責任を負うわけではありません。

時効を援用できる当事者とは、具体的には、「取得時効により権利を取得する者」「消滅時効により義務を免れる者」を指し、さらに、消滅時効では「債務者以外に以下の4者」も含みます。

AのBに対する甲債権につき消滅時効が完成した場合について、

イ 甲債権のために保証人となったDは、甲債権が消滅すればAに対して負っている債務を免れる地位にあるため、甲債権につき消滅時効を援用することができる。

イ・・・正しい

●保証人 : 消滅時効を援用できる

選択肢アの通り、保証人は消滅時効を援用できるので、正しいです。これもそのまま覚えてしまって大丈夫です。

【参考知識】

時効を援用できる者とは、「時効により直接に利益を受ける者」です。選択肢アの表の1~4は、被担保債権が消滅することで、直接、利益を受ける者です。

AのBに対する甲債権につき消滅時効が完成した場合について、

ウ Bの詐害行為によってB所有の不動産を取得したEは、甲債権が消滅すればAによる詐害行為取消権の行使を免れる地位にあるが、このような利益は反射的なものにすぎないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

ウ・・・誤り

●詐害行為取消請求における受益者 : 消滅時効を援用できる

結論からいうと、詐害行為取消権を行使する債権者Aの被保全債権が消滅すれば、債権者Aは詐害行為取消権を行使することができなくなり、受益者Eは利益喪失を免れることができる地位にあるといえます。つまり、受益者Eは被保全債権(本問の甲債権)の消滅によって直接利益を受ける者にあたり、この債権について消滅時効を援用することができます。 「詐害行為取消請求における受益者は消滅時効を援用できる」とそのまま覚えて大丈夫です。

【前提知識】

詐害行為取消請求について具体例を出して解説します。

①AはBに100万円を貸した(Aは貸金債権を有している)。その後、弁済期が到来したにも関わらず、BはAに100万円を弁済しなかった。Bは唯一の財産である2000万円の甲地を有していたが、そのまま所有し続けると、Aに差し押さえられてしまうので、②Bは甲地をCに売却した。

この状況で、Aを債権者、Bを債務者、Cを受益者と呼びます。

※受益者は、「その行為によって利益を受けた者」という言い方もします。

ここで、AがBに100万円を貸したのは、Bが甲地を所有しており、万一返せなくても、この土地を差し押さえて、返してもらおうと期待できたからでしょう。

それにも関わらず、Bが甲地を売却してしまったら、Aは甲地を差し押さえて、100万円を回収するという事ができなくなってしまいます。それではAの利益を害するし、またBは明らかにAを害するためにこのような行為をしているわけなので、Bを保護する必要性は低いです。

※Aは貸金債権を保全したい:回収できるようにしたい→貸金債権を「被保全債権」と呼ぶ

そこで、民法では、債務者BがAを害することを知ってした行為(Cへの売却)について、債権者Aは、取り消すことができるとしています。これが「詐害行為取消権」です。具体的には、③債権者Aが裁判所に、詐害行為取消請求の訴えをし、④訴えが認められれば、取消判決となり、BC間の売買契約は取り消されます。

この「債務者BがAを害することを知ってした行為」を「詐害行為」と言います。

ただし、例外として、詐害行為について受益者Cが知らなかった場合(善意)、債権者Aは詐害行為取消権を行使できません。

そして、詐害行為(BC間の売買契約)が取消された場合、受益者Cは、反対給付(Bに支払った代金)の返還を請求することができます。

【判例】

上の事例で考えると、判例では「詐害行為取消権を行使する債権者Aの被保全債権(貸金債権)が消滅すれば、受益者Cは利益喪失を免れることができる地位にあるから、受益者は被保全債権の消滅によって直接利益を受ける者にあたり、この債権について消滅時効を援用することができる」としています。

AのBに対する甲債権につき消滅時効が完成した場合について、

エ Aが甲債権の担保としてB所有の不動産に抵当権を有している場合、Aの後順位抵当権者Fは、Aの抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当しないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

エ・・・正しい

●後順位抵当権者 : 消滅時効を援用できない

結論からいうと、後順位抵当権者は、抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当しない(反射的利益にすぎない)ため、甲債権につき消滅時効を援用することができません。「後順位抵当権者は消滅時効を援用できない」とそのまま覚えて大丈夫です。

【前提知識】

後順位抵当権者とは、一番抵当権者を基準とした場合の、二番抵当権者です。簡単に言えば、あとから抵当権を設定した者です。

①AはBに1000万円を貸し、B所有の土地に抵当権を設定した。・・・Aが1番抵当権者となる

②その後、FがBに400万円を貸し、同じ土地に抵当権を設定した。・・・Bが2番抵当権者となる

この状況で、競売にかかり、土地が1000万円で競落(落札)された場合、1番抵当権者Aが1000万円の配当を受け、2番抵当権者Fは1円も配当を受けることができません。

もし、1番抵当権者Aの①被担保債権が消滅時効にかかって、①の被担保債権が消滅したと仮定すると、1番抵当権者がいなくなり、Fが1番抵当権者となります。その結果、Fは400万円の配当を受けることができます。

【判例】 しかし、判例では、先順位抵当権者Aの被担保債権(上図の①:甲債権)が時効によって消滅し、その結果として、後順位抵当権者の順位が上がり(Fが2番抵当権者から1番抵当権者に上がり)、配当額が増加するという利益はあるが、この利益は、直接的な利益ではなく、抵当権の順位上昇によってもたらされる反射的(間接的)な利益にすぎないとして、後順位抵当権者は消滅時効を援用できないとしています。

AのBに対する甲債権につき消滅時効が完成した場合について、

オ Aが甲債権の担保としてB所有の不動産に抵当権を有している場合、同不動産をBから取得したGは、甲債権が消滅すれば抵当権の負担を免れる地位にあるが、このような利益は反射的なものにすぎないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

オ・・・誤り

●抵当不動産の第三取得者 → 消滅時効を援用できる

結論から言えば、「抵当権が設定された不動産」を取得した者Gは、抵当権の被担保債権(甲債権)が消滅することで、抵当権も消滅し、競売にかけられることがなくなるという、直接的な利益を受けるため、消滅時効を援用できます。

【具体例】

AがBに対して、お金を貸し、①B所有の土地に、抵当権者をAとして抵当権を設定した、その後、②抵当権が付着した土地を、GがBから購入した。

もし、Aの被担保債権が消滅時効により消滅したら結果として、抵当権が消滅し、Gは、競売にかけられることがなくなるという直接的な利益を受けるため、Gは、消滅時効を援用できます。

※「被担保債権」とは、抵当権等によって保証されている債権を言います。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略