株式会社(種類株式発行会社を除く。)の設立に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 株式会社の定款には、当該株式会社の目的、商号、本店の所在地、資本金の額、設立時発行株式の数、ならびに発起人の氏名または名称および住所を記載または記録しなければならない。
- 金銭以外の財産を出資する場合には、株式会社の定款において、その者の氏名または名称、当該財産およびその価額、ならびにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数を記載または記録しなければ、その効力を生じない。
- 発起人は、その引き受けた設立時発行株式について、その出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付した時に、設立時発行株式の株主となる。
- 設立時募集株式の引受人がその引き受けた設立時募集株式に係る出資を履行していない場合には、株主は、訴えの方法により当該株式会社の設立の取消しを請求することができる。
- 発起設立または募集設立のいずれの手続においても、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。
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【解説】
1.株式会社の定款には、当該株式会社の目的、商号、本店の所在地、資本金の額、設立時発行株式の数、ならびに発起人の氏名または名称および住所を記載または記録しなければならない。
1・・・誤り
●資本金の額 → 定款には記載不要
株式会社の定款には、下記事項を記載し、又は記録しなければなりません(会社法27条)。

株式会社の定款に「資本金の額」は記載しません。
【理由】
定款作成後、出資の履行(払い込み)をします。そして、払い込みをした金額の一部が資本金になります。払い込みがない場合もあるため、定款作成時に、資本金は確定していません。そのため、定款に「資本金の額」は記載しません。したがって、誤りです。
2.金銭以外の財産を出資する場合には、株式会社の定款において、その者の氏名または名称、当該財産およびその価額、ならびにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数を記載または記録しなければ、その効力を生じない。
2・・・正しい
●金銭以外の財産を出資(現物出資) → 相対的記載事項=定款に記載しないと効力が生じない
株式会社を設立する場合について、下記事項は、定款に記載しなければ、その効力は生じません(会社法28条:変態設立事項)。
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本肢は、上記「1号の現物出資」に関する内容です。
■「財産引受」とは
発起人が会社のために、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約を言います。会社はまだ設立していないので、発起人が会社の代わりに、譲り受けます。会社が設立すると、発起人が譲り受けた財産は、会社の財産となります。
【具体例】
A社を設立にあたり、発起人Bが、A社のために、Cとの間で、「会社が成立することを条件に」Cから事務所用の建物を2000万円で譲り受ける契約を締結した。この場合、譲渡人C、代金2000万円として定款に記載しなければなりません。
そして、もし、この建物が500万円の評価しかない場合、A社は1500万円の損害を受けてしまいます。そのため、「検査役の調査を受けるか」「価額の相当性につき弁護士等の証明を受ける」必要があります。
そして、定款に記載のない財産引受は無効です。
3.発起人は、その引き受けた設立時発行株式について、その出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付した時に、設立時発行株式の株主となる。
3・・・誤り
●発起人は、株式会社成立時に、設立時発行株式の株主となる
発起人は、株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となります(会社法50条1項)。
つまり、会社成立時に株主となるので、本肢の「出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付した時に、株主となる」という記述は誤りです。
会社設立までの流れについては、下図を使って頭に入れておきましょう!

4.設立時募集株式の引受人がその引き受けた設立時募集株式に係る出資を履行していない場合には、株主は、訴えの方法により当該株式会社の設立の取消しを請求することができる。
4・・・誤り
●株式会社 → 設立取消しの請求(訴え)はできない
設立取消しの請求(訴え)は、株式会社では行えません、持分会社であれば行えます(832条)。
設立時募集株式の引受人が、その引き受けた設立時募集株式に係る出資を履行しない場合、その引受人は、株主となる権利を失うだけです。
■設立取消しの訴えのポイント
- 持分会社でのみ行える
- 設立取消しの訴えができるのは下記2つの場合
①社員が詐欺や強迫等を受けて、持分会社を設立した場合、詐欺や強迫等を理由として、当該社員は、持分会社を被告として提起できる
②社員がその債権者を害することを知って持分会社を設立した場合に、債権者が持分会社およびその社員を被告として提起できる。
- 持分会社の成立の日から2年以内に行えます
- 判決の効力についても、「設立無効の訴え」と同じく、設立取消の判決の効力は将来に向かってのみ効力を生じます

5.発起設立または募集設立のいずれの手続においても、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。
5・・・誤り
●設立時取締役の選任 → 発起設立:定款 or 発起人の議決権の過半数で決定
発起設立の場合、設立時取締役の選任は、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく行います(発起人の議決権の過半数で決定)(会社法38条1項)。もしくは、定款で定めることも可能です(会社法38条3項)。
一方、募集設立の場合、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければなりません(会社法88条)
したがって、本肢は「発起設立において、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない」が誤りです。そもそも、創立総会は、募集設立のみ設置されるもので、発起設立の場合は存在しません。
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