2017年過去問

平成29年・2017|問36|商法・商行為

商人および商行為に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 商人とは、自己の計算において商行為をすることを業とする者をいう。
  2. 店舗によって物品を販売することを業とする者は、商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなされる。
  3. 商人の行為は、その営業のためにするものとみなされ、全て商行為となる。
  4. 商法は一定の行為を掲げて商行為を明らかにしているが、これらの行為は全て営業としてするときに限り商行為となる。
  5. 商行為とは、商人が営業としてする行為または営業のためにする行為のいずれかに当たり、商人でない者の行為は、商行為となることはない。

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【答え】:2

【解説】

1.商人とは、自己の計算において商行為をすることを業とする者をいう。
1・・・誤り
●商人とは → 「自己の名をもって」商行為をすることを業とする者商法において商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいいます(商法4条1項)。
したがって、「自己の計算において」が誤りです。正しくは「自己の名をもって」です。
自己の計算において」とは「自分の利益のために」という意味になります。一方、「自己の名をもって」とは、行為から生ずる権利義務の帰属主体になることを言います。

具体例 Aが、自分に利益がなかったとしても、自分Aの名義で商行為(商売としてモノの売り買い)を行う場合、買うことで生ずる代金の支払い義務は、Aに生ずる(帰属する)ため、Aは「商人」です。

「業」とは、商売を反復、継続して行うことです。つまり、何度も行うということです。上記事例でいうとAが何度もモノの売り買いをする場合、「業」にあたります。

2.店舗によって物品を販売することを業とする者は、商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなされる。
2・・・正しい
●「店舗による物品販売」や「鉱業」 → 商行為を業としない者であっても、 「商人」とみなす「店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者」又は「鉱業を営む者」は、商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなします(商法4条2項:擬制商人)。
商行為を業とする者が商人ですが、商行為を業としない者であっても商人とみなす場合があります。
それが本肢の内容です。
「店舗その他これに類似する設備によって物品を販売する者」は外見から見たら、商人にみえるため、商人として扱い、商法が適用されます。
また、「鉱業を営む者」(石油や石炭などの地下資源の採掘をする者)も、商人として扱います。

 
3.商人の行為は、その営業のためにするものとみなされ、全て商行為となる。
3・・・誤り
●商人の行為 → 「営業のためにするもの」と推定する / すべてが「商行為」とはならない商人の行為は、その営業のためにするものと推定します(503条2項)。
推定するとは、一応そのよう判断を下すことをいい、反対の事実が証明されれば、その判断は覆されます

一方、みなすは、判断を確定させること言い、反対の事実を証明して、判断を覆すことはできません
つまり、上記「商人の行為」について、営業のためにしないことを証明すれば、「商行為にならない」ということです。
よって、「すべて商行為」という記述が誤りです。分かりづらい文章ですが、商人Aが駄菓子を買ったとします。この場合、営業のためにするものと推定されるので、商行為となります。しかし、商人Aが単に自分が食べる目的と証明できれば、これは商行為ではないということです。

4.商法は一定の行為を掲げて商行為を明らかにしているが、これらの行為は全て営業としてするときに限り商行為となる。
4・・・誤り
●商行為とは、「絶対的商行為」と「営業的商行為」と「附属的商行為」の3つを指す●商行為の一つである「絶対的商行為」 → 「営業としてしたか否か」を問わず、「商行為」となる

商行為は、「絶対的商行為」と「営業的商行為」と「附属的商行為」の3つに分けることができます(詳細は選択肢2の表参照)。

商行為の一つである「絶対的商行為」は、「営業としてしたか否か」を問わず、「商行為」となるため、「全て営業としてするときに限り商行為となる」という記述は誤りです。

絶対的商行為 営業としてしたか否かを問わず、商行為となる
商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、商行為となる
営業的商行為 営利目的かつ反復継続して行うことで初めて商行為となる
附属的商行為 前提として「商人の行為」である
営業開始前であっても、商人資格を取得したとされれば、開業準備行為も商行為となる

絶対的商行為は、営業としてするかどうかは関係なく「常に」商行為となるので、本肢は誤りです。

5.商行為とは、商人が営業としてする行為または営業のためにする行為のいずれかに当たり、商人でない者の行為は、商行為となることはない。
5・・・誤り

●商行為とは、「絶対的商行為」と「営業的商行為」と「附属的商行為」の3つを指す
●商行為の一つである「絶対的商行為」 → 商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、「商行為」となる 

選択肢4にある「絶対的商行為」は、営業としてするかどうかは関係なく「常に」商行為となります。また、絶対的商行為は、商人が行うかどうかに関係なく、商行為になります。したがって、誤りです。

※ 商人とは、自己の名をもって「商行為」をすることを「業」とする者をいい、商行為を業として行わない者は商人ではありません。(ただし、選択肢2の解説の通り、「店舗による物品販売」や「鉱業」を行う者は、商行為をしなくても、「商人」とみなされます。)


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問35|民法・相続

改正民法に対応済
遺言に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.15歳に達した者は、遺言をすることができるが、遺言の証人または立会人となることはできない。

イ.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書してこれに押印しなければならず、遺言を変更する場合には、変更の場所を指示し、変更内容を付記して署名するか、または変更の場所に押印しなければ効力を生じない。

ウ.公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授しなければならないが、遺言者が障害等により口頭で述べることができない場合には、公証人の質問に対してうなずくこと、または首を左右に振ること等の動作で口授があったものとみなす。

エ.秘密証書によって遺言をするには、遺言者が、証書に署名、押印した上、その証書を証書に用いた印章により封印し、公証人一人および証人二人以上の面前で、当該封書が自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述する必要があるが、証書は自書によらず、ワープロ等の機械により作成されたものであってもよい。

オ.成年被後見人は、事理弁識能力を欠いている場合には遺言をすることができないが、一時的に事理弁識能力を回復した場合には遺言をすることができ、その場合、法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもとで遺言書を作成しなければならない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済
【答え】:2

【解説】

ア.15歳に達した者は、遺言をすることができるが、遺言の証人または立会人となることはできない。
ア・・・正しい
15歳に達した者は、遺言をすることができます民法961条)。
これは、単独で有効な遺言を書くことができることを意味します。
また、未成年者は、遺言の証人又は立会人となることができません(民法974条1号)。つまり、15歳に達した者であっても未成年者の場合は、遺言の証人または立会人となることはできません。

よって、本肢は正しいです。

イ.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書してこれに押印しなければならず、遺言を変更する場合には、変更の場所を指示し、変更内容を付記して署名するか、または変更の場所に押印しなければ効力を生じない。
イ・・・誤り
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければなりません(民法968条1項本文)。
そして、自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じません(同条3項)。署名と押印は、どちらも行う必要があります。そのため、「署名または押印」となっているので誤りです。

ウ.公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授しなければならないが、遺言者が障害等により口頭で述べることができない場合には、公証人の質問に対してうなずくこと、または首を左右に振ること等の動作で口授があったものとみなす。
ウ・・・誤り
公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授して行う必要があります(民法969条2号)。
そして、口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、上記口授に代えなければなりません(民法969条の2の2項)。
つまり、「うなずくこと、または首を左右に振ること等の動作」だけで口授があったものとはみなされません。よって、誤りです。

エ.秘密証書によって遺言をするには、遺言者が、証書に署名、押印した上、その証書を証書に用いた印章により封印し、公証人一人および証人二人以上の面前で、当該封書が自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述する必要があるが、証書は自書によらず、ワープロ等の機械により作成されたものであってもよい。
エ・・・正しい
秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式すべてを満たす必要があります(民法970条)。

  1. 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
  2. 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること
  3. 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
  4. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

証書を自書で行うことは要件となっていないので、ワープロ等の機械により作成されたものであってもよいです。

よって、本肢は正しいです。

オ.成年被後見人は、事理弁識能力を欠いている場合には遺言をすることができないが、一時的に事理弁識能力を回復した場合には遺言をすることができ、その場合、法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもとで遺言書を作成しなければならない。
オ・・・誤り
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければなりません(民法973条1項)。
本肢は「法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもとで遺言書を作成しなければならない」となっているので誤りです。正しくは「医師二人以上立会い」が必要です


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問34|民法・不法行為

改正民法に対応済
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 景観の良否についての判断は個々人によって異なる主観的かつ多様性のあるものであることから、個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護される利益ではなく、当該利益を侵害しても、不法行為は成立しない。
  2. 人がその品性、徳行、名声、信用などについて社会から受けるべき客観的な社会的評価が低下させられた場合だけではなく、人が自己自身に対して与えている主観的な名誉感情が侵害された場合にも、名誉毀損による不法行為が成立し、損害賠償の方法として原状回復も認められる。
  3. 宗教上の理由から輸血拒否の意思表示を明確にしている患者に対して、輸血以外に救命手段がない場合には輸血することがある旨を医療機関が説明しないで手術を行い輸血をしてしまったときでも、患者が宗教上の信念に基づいて当該手術を受けるか否かを意思決定する権利はそもそも人格権の一内容として法的に保護に値するものではないので、不法行為は成立しない。
  4. 医師の過失により医療水準に適(かな)った医療行為が行われず患者が死亡した場合において、医療行為と患者の死亡との間の因果関係が証明されなくても、医療水準に適った医療行為が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、不法行為が成立する。
  5. 交通事故の被害者が後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合には、その後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないときでも、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害が認められる。

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改正民法に対応済
【答え】:4

【解説】

1.景観の良否についての判断は個々人によって異なる主観的かつ多様性のあるものであることから、個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護される利益ではなく、当該利益を侵害しても、不法行為は成立しない。
1・・・妥当ではない
判例によると「良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護に値するものと解するのが相当である」としています(最判平18.3.30)。
よって、本肢は「個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護される利益ではなく」が妥当ではありません。不法行為が成立する場合もあります。

2.人がその品性、徳行、名声、信用などについて社会から受けるべき客観的な社会的評価が低下させられた場合だけではなく、人が自己自身に対して与えている主観的な名誉感情が侵害された場合にも、名誉毀損による不法行為が成立し、損害賠償の方法として原状回復も認められる。
2・・・妥当ではない
他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができます(民法723条)。
そして、判例によると、
「民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち「名誉感情は含まない」ものと解すべきである」としています(最判昭45.12.18)。したがって、「名誉感情が侵害された場合にも、名誉毀損による不法行為が成立し」は妥当ではありません。

3.宗教上の理由から輸血拒否の意思表示を明確にしている患者に対して、輸血以外に救命手段がない場合には輸血することがある旨を医療機関が説明しないで手術を行い輸血をしてしまったときでも、患者が宗教上の信念に基づいて当該手術を受けるか否かを意思決定する権利はそもそも人格権の一内容として法的に保護に値するものではないので、不法行為は成立しない。
3・・・妥当ではない
患者が宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有し、輸血を伴わないで肝臓の腫瘍を摘出する手術を受けることができるものと期待して入院した事案において、判例では、「このことを医師が知っており、右手術の際に輸血を必要とする事態が生ずる可能性があることを認識したにもかかわらず、ほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで右手術を施行し、患者に輸血をしたなど

判示の事実関係の下においては、

医師は、患者が右手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪われたことによって被った精神的苦痛を慰謝すべく不法行為に基づく損害賠償責任を負う」としています(最判平12.2.29)。

よって、「患者が宗教上の信念に基づいて当該手術を受けるか否かを意思決定する権利はそもそも人格権の一内容として法的に保護に値するものではないので、不法行為は成立しない」は妥当ではありません。

4.医師の過失により医療水準に適(かな)った医療行為が行われず患者が死亡した場合において、医療行為と患者の死亡との間の因果関係が証明されなくても、医療水準に適った医療行為が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、不法行為が成立する。
4・・・妥当
判例によると、
「医師が過失により医療水準にかなった医療を行わなかったこと」と「患者の死亡」との間の因果関係の存在は証明されないけれども、右医療が行われていたならば患者がその死亡の時点において なお生存していた相当程度の可能性の存在が証明される場合には、医師は、患者が右可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負う、としています(最判平12.9.22)。

つまり、本肢は妥当です。

5.交通事故の被害者が後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合には、その後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないときでも、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害が認められる。
5・・・妥当ではない
判例によると
「交通事故による後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合においても、後遺症の程度が比較的軽微であって、しかも被害者が従事する職業の性質からみて、現在又は将来における収入の減少も認められないときは、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害は認められない」としています(最判昭56.12.22)。

「後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないとき」は「財産上の損害は認められない」ので、本肢は妥当ではありません。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問33|民法・賃貸借

改正民法に対応済
Aは自己所有の甲機械(以下「甲」という。)をBに賃貸し(以下、これを「本件賃貸借契約」という。)、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Bは、本件賃貸借契約において、Aの負担に属するとされる甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、Aに対して償還を求めることはできない。
  2. CがBに対して甲を返還しようとしたところ、Bから修理代金の提供がなかったため、Cは甲を保管することとした。Cが甲を留置している間は留置権の行使が認められるため、修理代金債権に関する消滅時効は進行しない。
  3. CはBに対して甲を返還したが、Bが修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲につき、動産保存の先取特権を行使することができる。
  4. CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。
  5. CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。

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改正民法に対応済
【答え】:5

【解説】

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

1.Bは、本件賃貸借契約において、Aの負担に属するとされる甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、Aに対して償還を求めることはできない。

1・・・妥当ではない

●賃借物の必要費 → 貸主負担 / 直ちに償還請求できる

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができます(民法608条)。したがって、Bが支出した甲機械の修理費用は、賃貸人Aに対して、直ちに「立て替えたお金を返してください!」と償還請求できます。

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

2.CがBに対して甲を返還しようとしたところ、Bから修理代金の提供がなかったため、Cは甲を保管することとした。Cが甲を留置している間は留置権の行使が認められるため、修理代金債権に関する消滅時効は進行しない。

2・・・妥当ではない

●留置しているだけでは、債権の消滅時効について、時効の完成猶予もなければ、時効の更新もしない

留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げません(民法300条)。つまり、Bが修理代金を払わないことを理由にCが甲機械を留置していたとしても、「Cの有する修理代金債権」の時効は進行し続けます。よって、誤りです。

時効の更新をするためには、裁判上の請求等が必要です。

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

3.CはBに対して甲を返還したが、Bが修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲につき、動産保存の先取特権を行使することができる。

3・・・妥当ではない

●先取特権 → 債務者の財産から弁済を受ける権利
【先取特権とは】

先取特権とは、別の債権より優先して、先に弁済を受け取ることができる権利です。そして、先取特権は担保物権の中の一つで、その中でも法定担保物権の一つです(留置権も法定担保物権)。つまり、抵当権などとは異なり、当事者間で設定契約をしなくても、法律上一定の事由があれば当然に発生するものです。

【本問】

先取特権者は、債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有します(民法303条)。本問の場合、「債務者はB」です。そして、甲機械は、債務者Bの財産ではなく、「Aの財産」です。よって、甲機械につき、動産保存の先取特権を行使することができません。

【動産保存の先取特権とは】

動産の価値を維持するための行為をして債権を得た場合、その動産に付着するのが動産の先取特権です。本問のように、動産を修理した場合、動産の価値を維持するための行為をしています。そのため修理代金をもらっていない場合、その動産に、先取特権が付着します。ただし、要件としては、債務者所有の動産でなければいけません。

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

4.CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。

4・・・妥当ではない

●事務管理の成立要件の一つ : 管理者に法律上の義務がないこと

本問を見ると、CはBから甲の修理を請け負っています。

つまり、請負契約を締結していることから、Cは甲機械を管理する義務を負います。よって、事務管理は成立しません。

したがって、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができません。よって、誤りです。

【前提知識】

事務管理とは、法律上の義務がない(契約がない)のに、他人のためにその事務を処理することを言います。

そして、事務管理にあたり、管理者が、本人のために、有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができます。

【具体例】

隣家の人Xが1ヶ月海外旅行に行っている間に台風が来て、隣家の屋根が飛ばされたとします。天気予報では大雨が長期間続くことから、あなたYはXから頼まれていないが、工務店に屋根の修理を頼みました。 この場合、あなたYを「(事務)管理者」で、Xを「本人」と呼びます。

5.CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。

5・・・妥当

●不当利得の成立要件の一つ : 利益に法律上の原因がないこと
【前提知識】

不当利得とは、法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負います(民法703条)。

【判例】

本問の事例で、甲機械の所有者Aは、④法律上の原因がなく利益を受けたかが問題となります。今回の場合、「修理費用をBの負担(Aの利益)」とする代わりに、「賃料を減額(Aの損失)」していたのだから、Aは「対価関係なしに利益を受けた」とはいえないとしています。Aは損失を被って、それを「原因」として、利益を受けているので、「利益に法律上の原因があり」、単に利益だけを受けているわけではないので、不当利得は成立しないと判示しています。

よって、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできません。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問32|民法・連帯債務

改正民法に対応済

共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務(以下「本件貸金債務」という。)を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 本件貸金債務につき、融資を受けるに際してAが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に陥っており、錯誤に基づく取消しを主張してこれが認められた場合であっても、これによってBが債務を免れることはない。
  2. 本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる。
  3. 本件貸金債務につき、弁済期到来後にAがCに対して弁済の猶予を求め、その後更に期間が経過して、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、Bは、Cに対して消滅時効を援用することはできない。
  4. 本件貸金債務につき、Cから履行を求められたAが、あらかじめ共同の免責を得ることをBに通知することなくCに弁済した。その当時、BはCに対して500万円の金銭債権を有しており、既にその弁済期が到来していた場合、BはAから500万円を求償されたとしても対抗することができる。
  5. 本件貸金債務につき、AがCに弁済した後にBに対してその旨を通知しなかったため、Bは、これを知らずに、Aに対して事前に弁済する旨の通知をして、Cに弁済した。この場合に、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができる。

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改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

1.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、融資を受けるに際してAが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に陥っており、錯誤に基づく取消しを主張してこれが認められた場合であっても、これによってBが債務を免れることはない。

1・・・妥当
●連帯債務 → 弁済・相殺・混同・更改の4つは絶対効で、それ以外は相対効

●錯誤による取消しは相対効 : 連帯債務者の一人が錯誤による取消しが認められると、その者は債務者から外れ、他の債務者が単独で債務負う

①AがCに対して、錯誤により取消しを主張し、それが認められた場合、②Aの債務はなかったことになります。この場合、Bの債務はどうなるかというと、「錯誤による取消し」は、相対効なので、「錯誤による取消しの効果(=債務がなかったことになる)」は、他の連帯債務者Bにはが生じません。つまり、Bの債務はなかったことにはならず、Bが単独で1000万円の債務を負います。

2.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる。

2・・・妥当
●連帯債務 → 弁済・相殺・混同・更改の4つは絶対効で、それ以外は相対効

●更改は絶対効 : 連帯債務者の一人との間で更改を行い、旧債務を消滅させると、他の債務者の債務も消滅する

「更改」とは、新しい契約によって、旧契約を消滅させる行為を言います。つまり、今回の事例でいうと、AC間で、新しい契約(AがCに対して甲建物を給付する契約)を締結することで、以前の契約(AがCに対して1000万円を返済する契約)を消滅させることを言います。そして、更改は絶対効です。そのため①更改をすることで、②Aの1000万円の貸金債務は消滅します。その結果、③Bの貸金債務も消滅します。

※ Aの新しい契約( AがCに対して甲建物を給付する契約)のみ残ります。Bの債務はありません。

3.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、弁済期到来後にAがCに対して弁済の猶予を求め、その後更に期間が経過して、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、Bは、Cに対して消滅時効を援用することはできない。

3・・・妥当ではない
●連帯債務 → 弁済・相殺・混同・更改の4つは絶対効で、それ以外は相対効

●弁済の猶予の請求(=債務の承認)は相対効 : 連帯債務者の一人が債務の承認により、時効が更新しても、他の連帯債務者は、時効の更新の効果は生じない

「弁済の猶予を求める」とは、「弁済期限を延長してください!」と主張することで、これは自らの「債務を承認」していることになります。「債務の承認(原因)」をすることで、「時効が更新(効果)」します。そのため①AがCに対して弁済の猶予を求めることにより、②Aの債務の時効が更新します。「債務の承認」は相対効なので、③Bの時効は更新しません。したがって、Bの時効は弁済期の到来から起算して進行し続けるため、時効期間が満了によって、Bは、Cに対して消滅時効を援用することができます(時効期間満了による債務の消滅を主張できる)。

4.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、Cから履行を求められたAが、あらかじめ共同の免責を得ることをBに通知することなくCに弁済した。その当時、BはCに対して500万円の金銭債権を有しており、既にその弁済期が到来していた場合、BはAから500万円を求償されたとしても対抗することができる。

4・・・妥当
●共同の免責を得ることを他の連帯債務者Bに通知することなく、Aが弁済等をした → 他の連帯債務者は債権者に対抗することができる事由(相殺できる権利等)を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってAに対抗することができる

「共同の免責を得る」とは、他の債務者の債務を消滅・減少させたことを言います。具体的には、弁済・相殺・混同・更改をした場合です。この場合、絶対効なので、他の連帯債務者の債務は消滅したり減少したりします。

本問の「Cから履行を求められたAが、あらかじめ共同の免責を得ることをBに通知することなくCに弁済した」とは、AがCに弁済する前に、その旨をBに伝えていなかった場合です。Aは弁済することで、他の連帯債務者Bに対して求償権を持つが、もし、他の連帯債務者Bが反対債権を有していた場合、Bは負担部分(本問の場合500万円)を限度に、Aに対抗することができます。つまり、Bは500万円を限度にAからの求償を拒むことができます(民法443条)。

理解 連帯債務者が弁済等をする場合、他の連帯債務者に通知をするようにして、二重に弁済しないようにしています。

例えば、下図のようにBがCに対して500万円の反対債権を有しており、AがBに通知することなく1000万円を弁済したとします。この場合、AはBに対して500万円を求償できる権利を持ちますが、Bは、通知を受けていないため、求償を拒むことができます。その後、Bが500万円の反対債権で相殺をした場合、債権者Cの立場に立つと、Aから1000万円の弁済を受け、Bから500万円の弁済(相殺)を受けています。つまり、1000万円を貸して、1500万円の弁済を受けることになります。そのため、AはBに対して有していた求償権500万円をCに対して主張し、AはCから500万円を返してもらう流れになります。

5.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、AがCに弁済した後にBに対してその旨を通知しなかったため、Bは、これを知らずに、Aに対して事前に弁済する旨の通知をして、Cに弁済した。この場合に、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができる。

5・・・妥当
●弁済をした連帯債務者Aが、他の連帯債務者Bがあることを知りながら他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が「善意」で弁済等をしたときは、当該他の連帯債務者Bは、弁済等の行為を有効とみなすことができる

具体例  AがCに1000万円を弁済する前に、Bにその旨を通知しなかったため、Bは、これを知らずに、Aに対して事前に弁済する旨の通知をして、Cに1000万円を弁済した。この場合に、何も知らずに二重に弁済してしまったBを保護する必要があります。そのため、Bは、Aからの求償を拒み、Bの1000万円の弁済が有効となるため、BがAに対して500万円を求償することができます。よって、本問は正しいです。

そして、この場合、その後どうなるのか?債権者Cの立場からすると、1000万円の債権に対して、2000万円の弁済を受けているので1000万円余分にもらっています。一方、Aは、1000万円弁済した上に、Bに対して500万円も支払っています。結果として負担部分500万円にも関わらず、1500万円を支払っていることになり、1000万円を余分に支払っています。

よって、CはAに1000万円を返還することになります。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問31|民法・物権的請求権

改正民法に対応済
物権的請求権等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
  2. 第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
  3. 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
  4. 第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
  5. Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:5

【解説】

1.Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
1・・・妥当ではない
●建物収去・土地の明渡請求できる相手 →  「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者

原則として、建物収去・土地の明渡請求できる相手は、「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者」なので、現所有者Cに対して建物収去・土地の明渡請求ができます。

2.第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
2・・・妥当ではない

●不法占有によって抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるとき、抵当権者は、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められる
●また、所有者が適切に維持管理することが期待できない場合、抵当権者は、不法占有者に対して、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる

【具体例】 例えば、甲建物の所有者Aが債権者Bからお金を借りて、甲建物に抵当権を設定したとします。

抵当権者Bとしては、万一Aからお金が返ってこなかった時に備えて甲建物に抵当権を設定してもらっているわけです。

ただし、抵当権者は抵当不動産(甲建物)を使用する権利はありません。あくまでも抵当不動産を使用できるのは、所有者であるAです。そして、抵当権者としては、抵当不動産を使用することはできませんが、この抵当不動産(甲建物)の価値が下がってしまったら困ります。

■そして、この甲建物(対象不動産)に第三者Cが不法に占有している場合、このCがたちの悪い不法占有者だと「競売の進行が妨害したり」、「不動産の価値を下げるような行為(建物内のトイレや浴室やキッチンを壊す行為)をする」可能性もあります。こんなことをされたら、競売価格に影響が出て(=不動産の交換価値の実現が妨げられ)、抵当権を設定した意味がなくなってきます。このような場合、抵当権者は、抵当権を使って(抵当権に基づいて)、不法占有者Cに対して「出ていけ!」と主張することができます。これを妨害排除請求権といいます。

■また、抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者Aが、抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者Bは、不法占有者Cに対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができます。よって、本問の「抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない」は誤りです。

3.占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
3・・・妥当ではない

●占有回収の訴え → 占有を奪われたことが要件 / 「①物の返還」「②損害賠償」のどちらも請求できる

占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その「①物の返還」及び「②損害賠償」を請求することができます(①②のどちらもできる)。
占有回収の訴えは、下記一番下の内容です。

■占有保持の訴え

【具体例】 A所有の土地を賃借人Bが借りていた。そこに、Cが勝手に入ってきたとします。
Bは、土地の占有を妨害されたので、Cに対して「勝手に土地に入ってこないでください!」と①妨害停止の請求ができ、かつ、Cの占有妨害行為により、Aが一定期間使用できないといった損害を受けたのであれば、損害賠償請求も可能です。

■占有保全の訴え

占有保持の訴えとは異なり、まだ占有は妨害されていないが、占有が妨害される恐れのある場合に「占有保全の訴え」が適用されます。
【具体例】 A所有の甲地に隣接する乙地に立っている大きな木が、甲地側に倒れそうになってきている場合、まだ、木は倒れていないので、占有は妨害されていません。しかし、放っておくと、倒れてしまい、Aは甲地の占有が妨害される恐れがあります。そのような場合に、「①木が倒れてこないように何らかの措置をしてください!」と主張することができます。
また、現実に倒れてきて、Aが損害を受けた場合、損害賠償を請求することになりますが、その損害賠償請求に備えて担保を提供するように請求することもできます。

■占有回収の訴え

【具体例】 仕事用のパソコンを奪われた場合、奪った者に対して「①パソコン物を返せ!」と主張することもできるし、パソコンを奪われたことで、その期間仕事ができず、損害が発生したのであれば、その分の損害賠償請求を行うこともできます。
【注意】  「占有を奪われたとき」というのは、占有者の意思に基づくことなく占有が奪われた場合をいいます。 つまり、詐欺によって奪われた場合や、遺失してしまった場合は、「占有を奪われたとき」にはあたらないので、占有回収の訴えを提起することができません。

4.第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
4・・・妥当ではない

●妨害排除請求 → 不動産賃借人は対抗要件を備えておく必要がある

そもそも「賃借権」は「債権」なので、「特定の人(債務者)に対して請求できる権利」しかありません。言い換えると、「物権」のように、第三者に対して権利を主張することはできません。

【具体例】 貸金債権を考えます。AがBにお金を貸した場合、債権者Aは貸金債権を持ちますが、Aは債務者Bに対して「お金を返して!」と主張できますが、全く関係のないCに対して「お金を返して!」と主張することはできません。

一方、「物権」は絶対的な権利なので、誰に対しても主張できます。例えば、「所有権」です。所有権者は対抗要件を備えていれば誰に対しても所有者であることを主張できます。

【不動産賃借権はどうか?】 不動産賃借権は、「賃借権」であるものの、妨害排除請求権等の行使を認め、「物権」としての性質を有します。具体的には、不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合において、「①その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求(妨害排除請求に相当する)」ができ、また「②その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求」ができます(民法第605条の4)。

よって、「賃借権が対抗要件を具備していないと、その不法占有者に対して、賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができない」ので、誤りです。

5.Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。
5・・・妥当

●「他人の土地上の建物について、自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合の建物取得者」は、
建物を他に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者に対して建物収去・土地明渡しの義務を負う

【状況】

D:丙土地の所有者
E:丙土地上の丁建物の前所有者(保存登記済み)
(土地所有者Dに無断で建物を建築)
F:丙土地地上の丁建物の新所有者(買主)

【質問内容】

Dは、Eに対して、建物収去請求ができる、○か×か?です。

【判例】

判例では、「他人の土地上の建物の所有権を取得した者(E)が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとい建物を他(F)に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者Dに対し、右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である」としています。

つまり、Dは、Eに対して、建物収去・土地の明渡請求ができるので○です。

【関連知識】

原則として、建物収去・土地の明渡し請求できる相手は、「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者」なので、Dは、Fに対しても建物収去・土地の明渡請求ができます。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問30|民法・時効

改正民法に対応済
Aは、甲不動産をその占有者Bから購入し引渡しを受けていたが、実は甲不動産はC所有の不動産であった。BおよびAの占有の態様および期間に関する次の場合のうち、民法の規定および判例に照らし、Aが、自己の占有、または自己の占有にBの占有を併せた占有を主張しても甲不動産を時効取得できないものはどれか。

  1. Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
  2. Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
  3. Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
  4. Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間
  5. Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

 

1.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
1・・・時効取得できる
●時効取得できる
●善意無過失で10年間占有 → 時効取得できる

【前提知識】

取得時効とは、他人の物(例:土地)であるにも関わらず、その物を自分の物と信じて、一定期間使用していると、本当に自分の物になってしまう制度のことです。そして、取得時効を主張するには(他の物を自分の物にするには)3つの要件を満たす必要があります(左表参照)。そして、③の「一定期間」とは、右表の内容です。ポイントは占有開始の時点で、善意無過失なのか、そうでないのかによって、必要な期間が変わるということです。善意無過失で占有を始めた者が、後になって、悪意に変わっても(つまり、他人の物だと気づいても)、あくまでも、占有開始の時点で判断するため、10年で取得時効が完成します。本問の解説 

問題文では、「占有者Bは悪意で5年間占有」し、「購入者Aは善意無過失で10年間占有」しています。

Aを基準に考えると、占有開始時に「善意無過失」であり、10年間占有しているため③の要件を満たしています。

また、①②の要件は問題文の内容から要件を満たします。

よって、Aは時効取得できます。

2.Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
2・・・時効取得できる
●「占有開始時の状態(善意・悪意)」と「占有期間」は引き継ぐことができる
問題文では「Bが悪意で18年間占有」し、その後「Aが善意無過失で2年間占有」
しています。そして、「占有開始の状態」と「占有期間」は、承継することができます。
※ 占有開始時の状態とは、
「占有している物が他人物であることを知っているかどうか?(善意 or 悪意)、また、知らない場合、過失があるかどうか(有過失 or 無過失)」を指します。
つまり、Aは、Bの悪意で18年間占有したことを引き継ぐことができます。これを引き継ぐと、Aは悪意で占有を開始し、18年+2年=20年間占有を継続したことになります。よって、Aは善意無過失でなく(悪意で)20年間占有し続けたことになるので、時効取得できます。
3.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
3・・・時効取得できない
 ●「占有開始時の状態(善意・悪意)」と「占有期間」は引き継ぐことができる
問題文では「Bが悪意で5年間占有」し、その後「Aが善意無過失で5年間占有」しています。そして、「占有開始の状態」と「占有期間」は、承継することができます。選択肢2と考え方は同じです。①Aを基準に考えると(占有開始の時期をAと考えると)、善意無過失なので、10年間の占有が必要ですが、5年しか占有していないので、取得時効の要件を満たしていません。②次に、Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、占有の状態を承継するので「悪意」、占有期間を承継するので、5+5=10年しか占有していません。よって、①でも②でも取得時効の要件を満たさないので、Aは時効取得できません。
4.Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間

4・・・時効取得できる

●善意無過失で10年間占有 → 時効取得できる

選択肢3と同じように考えます。

①Aを基準に考えると、悪意で3年間しか占有していないので、時効取得の要件を満たさないですが、②Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、Bの占有の状態を承継するので「善意無過失」、占有期間を承継するので、7+3=10年占有していることになります。善意無過失で10年間占有を継続しているので、Aは時効取得できます。

5.Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間

5・・・時効取得できる

●占有開始時の状態で判断する

問題文の状況としては、図の通りです。ポイントは占有開始の時点で、善意無過失なのか、そうでないのかによって、必要な期間が変わるということです。①Aを基準に考えると(占有開始の時期をAと考えると)、
善意無過失なので、10年間の占有が必要ですが、3+3=6年しか占有していないので、取得時効の要件を満たしていません。②次に、Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、占有の状態を承継するので「善意無過失」、占有期間を承継するので、3+2+3+3=11年間占有しています。よって、②の場合に、取得時効の要件を満たるので、Aは時効取得できます。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問29|民法・物権

改正民法に対応済
物権の成立に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:2

【解説】

ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
ア・・・妥当ではない

●地下又は空間を目的とする地上権も設定できる

地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができます。この場合、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができます(民法269条の2)。

具体例 地下鉄やモノレールを作る際に、地下や空間を目的とする地上権を設定できる

イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
イ・・・妥当
●判例によれば、一筆の土地の一部であっても時効取得できる

【判例】 判例では、一筆の土地の一部であっても取得時効の対象となるとしています。

【具体例】

上図のように、B所有の土地の一部(左端部分)をAが占有を継続することにより、Aは左端部分のみ時効取得できます。この場合、その部分のみ分筆(ぶんぴつ)して登記します。

※ 土地を数える場合、「筆:ふで」という単位で数えます。そして1つの土地を分けることを「分筆」と言います。

ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
ウ・・・妥当ではない
●構成部分の変動する集合動産 → 一括して譲渡担保の目的とすることができる

判例では「構成部分の変動する集合動産であっても、その種類・所在場所及び量の範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」としています。

具体例 例えば、ビール販売店Aが、Bからお金を借りて、倉庫内にあるアサヒの瓶ビール100本について譲渡担保を設定した場合、構成部分の変動する集合動産とは、「倉庫内にあるアサヒの瓶ビール100本」であり、種類・所在場所及び量の範囲が指定されているので、この100本のビールが一つの集合物です。

エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
エ・・・妥当

●土地に生育する樹木 → 明認方法を施した上で、土地とに売却できる

判例によると、土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められます。そして、「明認方法」とは、立木の所有者が誰なのかを公示する制度です。

明認方法の具体例 「立木の木の皮を削って所有者の名前を書く」「立札を立てておく」等の方法によって公示します。

※ 土地とともに立木を譲り受けた場合、対抗要件として、「明認方法」は不要で、「土地の登記」があれば足ります。

オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
5・・・妥当

●地役権の時効取得の要件 → ①継続的に行使 + ②外形上認識することができる

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます(民法283条)。よって、正しいです。
【簡単にいうと】 周りから見て、地役権を行使し続けている場合に限って、地役権を時効取得できるということです。

関連ポイント 通行地役権の時効取得に必要な「継続」の要件について、判例では、「要役地所有者が」、他人地(承役地)の上に通路の開設する必要があるとしています。つまり、土地を使いたい側(要役地所有者)が、開設することが要件です。 「承役地」とは「使用される側の土地」です。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問28|民法・錯誤

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。解かなくても大丈夫です。錯誤等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 要素の錯誤が成立する場合において、表意者に錯誤に基づく無効を主張する意思がないときであっても、表意者自身が錯誤を認めており、表意者に対する債権を保全する必要がある場合、表意者の債権者は、表意者の錯誤を理由とする無効を主張することができる。
  2. 売買代金に関する立替金返還債務のための保証において、実際には売買契約が偽装されたものであったにもかかわらず、保証人がこれを知らずに保証契約を締結した場合、売買契約の成否は、原則として、立替金返還債務を主たる債務とする保証契約の重要な内容であるから、保証人の錯誤は要素の錯誤に当たる。
  3. 婚姻あるいは養子縁組などの身分行為は錯誤に基づく無効の対象とならず、人違いによって当事者間に婚姻または縁組をする意思がないときであっても、やむを得ない事由がない限り、その婚姻あるいは養子縁組は無効とならない。
  4. 連帯保証人が、他にも連帯保証人が存在すると誤信して保証契約を締結した場合、他に連帯保証人があるかどうかは、通常は保証契約の動機にすぎないから、その存在を特に保証契約の内容とした旨の主張立証がなければ、連帯保証人の錯誤は要素の錯誤に当たらない。
  5. 離婚に伴う財産分与に際して夫が自己所有の不動産を妻に譲渡した場合において、実際には分与者である夫に課税されるにもかかわらず、夫婦ともに課税負担は専ら妻が負うものと認識しており、夫において、課税負担の有無を重視するとともに、自己に課税されないことを前提とする旨を黙示的に表示していたと認められるときは、要素の錯誤が認められる。

>解答と解説はこちら


【答え】:-

【解説】

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問27|民法・社団や組合

改正民法に対応済
自然人A(以下「A」という。)が団体B(以下「B」という。)に所属している場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。
イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。
ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。
エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。
オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:4

【解説】

自然人Aが団体Bに所属している。

ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。

ア・・・妥当ではない

●理事 → 社団法人の代表

理事は、一般社団法人を代表します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律77条)。

つまり、 理事Aは、法人Bの代表として法律行為を行います。「法人Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う」は誤りです。

自然人Aが団体Bに所属している。

イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。

イ・・・妥当

●権利能力なき社団 → 財産は「総有」

権利能力がなければ当然権利義務の帰属主体にはなれません(法人のように人格を持たない)。どういうことかというと、不動産を購入して登記をしようとしても権利能力がないと、登記ができません。そのため、権利能力なき社団の場合、「代表者の個人名義」や「構成員全員の共有名義」で登記をしたりします。

そして、権利能力なき社団の財産は実質的には社団を構成する総社員の総有に属するものである」とされています。

※1 「共有」の持分については、持分を自由に処分(譲渡)することができ、目的物の分割請求もできることから「具体的」と記しています。

※2 「合有」の持分については、各人が持分を持つのですが、共有とは異なり、持分を自由に処分(譲渡)することができず、清算前に、目的物の分割請求もできないことから「持分を潜在的には有する」と言います。

自然人Aが団体Bに所属している。

ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。

ウ・・・妥当ではない

●組合の財産=共有(厳密には合有) → 持分を自由に処分(譲渡)することができない

●目的物(財産)の分割請求もできない

各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属します(民法668条)。そして、組合における財産の共有は「合有」を意味します。つまり、「狭義の共有」とは異なり、①持分を自由に処分(譲渡)することができません。また、財産の分割請求もできません。

自然人Aが団体Bに所属している。

エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。

エ・・・妥当ではない

●組合の業務を執行する組合員 → 特約がある場合に報酬を請求できる

組合の業務を執行する組合員は、特約がなければ、組合に対して報酬を請求することができません(民法671条、648条)。

自然人Aが団体Bに所属している。

オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。

オ・・・妥当

●組合規約等で内部的に業務執行者の代理権限を制限しても、その制限は善意・無過失の第三には対抗できない

組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(民法670条1項) 。

また、組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することもできます(2項)。そして、この委任を受けたものを「業務執行者」と言います。本問の「Aが業務執行者」です。そして、組合に業務執行者がいる場合は、業務執行者のみが組合員を代理することができる(670条の2)。

そして、判例では、この業務執行者の代理権限について、制限を加えても、善意無過失の第三者には対抗できないとしています。

【具体例】 

例えば、「業務執行者Aは、10万円以上の取引はできない」と組合の規約で定めていたとします。
これが、「組合規約等で内部的に業務執行者の代理権限を制限」している状況です。

そして、第三者は、業務執行者A(組合)と取引した者Bです!

この場合、第三者Bが上記規約について、過失なく知らない場合(善意・無過失)、
第三者Bは、組合に対して対抗できるので、業務執行者A(組合)との取引の有効を主張することができます!


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略