2020年過去問

令和2年・2020|問16|行政不服審査法

不作為についての審査請求について定める行政不服審査法の規定に関する次のア~エの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。

イ.不作為についての審査請求について理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。

ウ.不作為についての審査請求について理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法または不当である旨を宣言する。

エ.不作為についての審査請求について理由がある場合、不作為庁の上級行政庁ではない審査庁は、当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を勧告しなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:3

【解説】

ア.不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。

ア・・・誤り

(不作為についての審査請求の裁決)
不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下します(行政不服審査法49条1項)。

本肢は「棄却」となっているので誤りです。

正しくは、「却下」です。

※ 不作為の場合、直ちに違法となるのではなく、相当期間が経過してはじめて違法となります。

却下は、審査をせずに、あなたの審査請求は認めません!
と断ることです。

(考え方)
①申請をした

②行政の不作為があった

③審査請求をした

④②の不作為については、相当の期間が経過していなかった

⑤だから、却下

例えば、①の申請後、翌日までに処分が下されなかった(=不作為)
だから、③審査請求をした。

この場合、1日しか経過していないので、処分が下されていなくても仕方ないです。
=相当期間を経過していない

だから、却下処分となります。

イ.不作為についての審査請求について理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。

イ・・・正しい

不作為についての審査請求に理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却します(行政不服審査法49条2項)。

請求に「理由がない場合」は「棄却」なので、正しいです。

選択肢アと対比させて覚えておきましょう!

ウ.不作為についての審査請求について理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法または不当である旨を宣言する。

ウ・・・正しい

不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言します(行政不服審査法49条3項前段)。

よって、本肢は正しいです。

■上記の場合、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとります。
一 不作為庁の上級行政庁である審査庁 → 当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。

二 不作為庁である審査庁 → 当該処分をすること。

つまり、

一 「不作為庁の上級行政庁である審査庁」は、不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命じ、不作為庁が処分します。

二 「不作為庁である審査庁」は、自ら処分をします。

エ.不作為についての審査請求について理由がある場合、不作為庁の上級行政庁ではない審査庁は、当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を勧告しなければならない。

エ・・・誤り

不作為についての審査請求について理由がある場合、

一 不作為庁の上級行政庁である審査庁 → 当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずる。

二 不作為庁である審査庁 → 当該処分をする。(行政不服審査法49条3項後段)

「不作為庁の上級行政庁ではない審査庁」については規定されていないです。
よって、誤りです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問15|行政不服審査法

再審査請求について定める行政不服審査法の規定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 法律に再審査請求をすることができる旨の定めがない場合であっても、処分庁の同意を得れば再審査請求をすることが認められる。
  2. 審査請求の対象とされた処分(原処分)を適法として棄却した審査請求の裁決(原裁決)があった場合に、当該審査請求の裁決に係る再審査請求において、原裁決は違法であるが、原処分は違法でも不当でもないときは、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却する。
  3. 再審査請求をすることができる処分について行う再審査請求の請求先(再審査庁)は、行政不服審査会となる。
  4. 再審査請求をすることができる処分について、審査請求の裁決が既になされている場合には、再審査請求は当該裁決を対象として行わなければならない。
  5. 再審査請求の再審査請求期間は、原裁決があった日ではなく、原処分があった日を基準として算定する。

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【答え】:2
【解説】

1.法律に再審査請求をすることができる旨の定めがない場合であっても、処分庁の同意を得れば再審査請求をすることが認められる。
1・・・誤り

行政庁の処分につき「法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合」には、当該処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができます(行政不服審査法6条1項)。

つまり、「法律に再審査請求をすることができる旨の定めがない場合」は、再審査請求はできません。

よって、誤りです。

2.審査請求の対象とされた処分(原処分)を適法として棄却した審査請求の裁決(原裁決)があった場合に、当該審査請求の裁決に係る再審査請求において、原裁決は違法であるが、原処分は違法でも不当でもないときは、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却する。

2・・・正しい
再審査請求に係る原裁決(審査請求を却下し、又は棄却したものに限る。)が違法又は不当である場合において、当該審査請求に係る処分が違法又は不当のいずれでもないときは、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却します(行政不服審査法64条3項)。

よって、本肢は正しいです。

【具体例】

①宅建業者に対して営業停止処分をした
審査請求をした

②理由を付さずに裁決・・・違法

この場合①の処分が違法・不当でないなら、再審査庁は、請求棄却します!

3.再審査請求をすることができる処分について行う再審査請求の請求先(再審査庁)は、行政不服審査会となる。
3・・・誤り

行政庁の処分につき「法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合」には、当該処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができます(行政不服審査法6条1項)。
そして、再審査請求は、「原裁決(再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決をいう。)」又は「当該処分」を対象として、1項の法律に定める行政庁に対してします(6条2項)。

よって、「請求先(再審査庁)は、行政不服審査会となる」が誤りです。
再審査庁は、「法律で定められた行政庁」です。

4.再審査請求をすることができる処分について、審査請求の裁決が既になされている場合には、再審査請求は当該裁決を対象として行わなければならない。
4・・・誤り
審査請求の裁決が既になされている場合、再審査請求は当該「裁決」を対象として行う必要はなく「原処分」を対象と行うこともできます。

これは選択肢3の「行政不服審査法6条2項」の解説の通り、

再審査請求は、「原裁決」又は「当該処分」を対象として、法律に定める行政庁に対してします(6条2項)。

5.再審査請求の再審査請求期間は、原裁決があった日ではなく、原処分があった日を基準として算定する。
5・・・誤り

再審査請求は、「原裁決があったことを知った日の翌日から起算して1月を経過したとき」または、「原裁決があった日の翌日から起算して1年を経過したとき」は、することができません。ただし、正当な理由があるときは、上記期間を経過した後も行えます(行政不服審査法62条)。

よって、再審査請求の再審査請求期間は、原「裁決」があった日を基準として算定するので、誤りです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問14|行政不服審査法

行政不服審査法に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査請求人の地位を承継することができるが、その場合は、審査庁の許可を得ることが必要である。

イ.処分についての審査請求に関する審査請求期間については、処分があったことを知った日から起算するものと、処分があった日から起算するものの2つが定められているが、いずれについても、その初日が算入される。

ウ.法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がなされないときは、当該行政庁の不作為について、当該処分をすることを求める審査請求をすることができる。

エ.一定の利害関係人は、審理員の許可を得て、参加人として当該審査請求に参加することができるが、参加人は、審査請求人と同様に、口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えられ、証拠書類または証拠物を提出することができる。

オ.多数人が共同して行った審査請求においては、法定数以内の総代を共同審査請求人により互選することが認められているが、その場合においても、共同審査請求人各自が、総代を通じることなく単独で当該審査請求に関する一切の行為を行うことができる。

  1. ア・エ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. ウ・エ

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【答え】:1

【解説】

ア.審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査請求人の地位を承継することができるが、その場合は、審査庁の許可を得ることが必要である。

ア・・・正しい
審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができます(行政不服審査法15条6項)。

【対比】

1.「審査請求人が死亡したとき」→「相続人」は、当然に審査請求人の地位を承継する(15条1項)。

2.「審査請求人について合併又は分割があったとき」→「合併後存続する法人又は分割により当該権利を承継した法人」は、当然に審査請求人の地位を承継する(15条2項)。

イ.処分についての審査請求に関する審査請求期間については、処分があったことを知った日から起算するものと、処分があった日から起算するものの2つが定められているが、いずれについても、その初日が算入される。

イ・・・誤り

審査請求は、「①処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月」、または、「②処分があった日の翌日から起算して1年」を経過したときは、することができません(行政不服審査法18条1項2項)。
これは、いずれも、「翌日」から起算するので、初日不算入です(初日は算入しません)。

よって、この点が誤りです。

【具体例】

2月10日に、処分があったのであれば、2月11日から数えて1年なので、翌年の2月10日までです。

【対比ポイント】

行政事件訴訟法14条(出訴期間)では、
取消訴訟は、「処分又は裁決があったことを知った日から6か月を経過したとき」または、「処分又は裁決の日から1年を経過したとき」は提起することができない。
となっています。

行訴法では「翌日」という文言はないですが、初日不算入なので、「知った日の翌日から起算し」また「処分又は裁決の日の翌日から起算し」ということになります。

ウ.法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がなされないときは、当該行政庁の不作為について、当該処分をすることを求める審査請求をすることができる。

ウ・・・誤り
「不作為」とは、「法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと」です(行政不服審査法3条)。

本問は、そもそも申請をしていないので、不作為にはあたりません。

【是正を求めるもの】

「民衆訴訟」は是正を求めるものです。

(民衆訴訟)
この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。(行政事件訴訟法5条)
エ.一定の利害関係人は、審理員の許可を得て、参加人として当該審査請求に参加することができるが、参加人は、審査請求人と同様に、口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えられ、証拠書類または証拠物を提出することができる。
エ・・・正しい

  • 利害関係人は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができます(行政不服審査法13条)。※ 審理員の許可がない場合、審理に参加できない / 「審査庁」の許可ではない!
  • 「審査請求人」又は「参加人」の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければなりません(行政不服審査法31条1項本文)。
  • 審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができます(行政不服審査法32条1項)

よって、本肢は正しいです。

オ.多数人が共同して行った審査請求においては、法定数以内の総代を共同審査請求人により互選することが認められているが、その場合においても、共同審査請求人各自が、総代を通じることなく単独で当該審査請求に関する一切の行為を行うことができる。
オ・・・誤り
多数人が共同して審査請求をしようとするときは、3人を超えない総代を互選することができます(行政不服審査法11条1項)。
そして、総代が選任されたときは、共同審査請求人は、総代を通じてのみ、審査請求に関する行為をすることができます(行政不服審査法11条4項)。

よって、「共同審査請求人各自が、総代を通じることなく単独で当該審査請求に関する一切の行為を行うことができる」は誤りです。「できない」が正しいです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問13|行政手続法

行政手続法の定める申請の取扱いに関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.申請がそれをすることができる期間内にされたものではない場合、当該申請は当然に不適法なものであるから、行政庁は、これに対して諾否の応答を行わず、その理由を示し、速やかに当該申請にかかる書類を申請者に返戻しなければならない。

イ.許認可等を求める申請に必要な書類が添付されていない場合、行政庁は、速やかに、相当の期間を定めて当該申請の補正を求めるか、あるいは当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

ウ.行政庁は、申請により求められた許認可等のうち行政手続法に列挙されたものについて、これを拒否する処分を行おうとするときは、予めその旨を申請者に対し通知し、当該申請者に弁明書の提出による意見陳述の機会を与えなければならない。

エ.行政庁が申請の取下げまたは内容の変更を求める行政指導を行うことは、申請者がそれに従う意思がない旨を表明したにもかかわらずこれを継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるものでない限り、直ちに違法とされるものではない。

オ.行政庁が、申請の処理につき標準処理期間を設定し、これを公表した場合において、当該標準処理期間を経過してもなお申請に対し何らの処分がなされないときは、当該申請に対して拒否処分がなされたものとみなされる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:3

【解説】

ア.申請がそれをすることができる期間内にされたものではない場合、当該申請は当然に不適法なものであるから、行政庁は、これに対して諾否の応答を行わず、その理由を示し、速やかに当該申請にかかる書類を申請者に返戻しなければならない。

ア・・・誤り
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、「申請をすることができる期間内にされたものであること」その他の法令に定められた「申請の形式上の要件に適合しない申請」については、速やかに、申請者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません。(行政手続法7条)。

よって、「申請がそれをすることができる期間内にされたものではない場合」とは、「申請の形式上の要件に適合しない申請」にあたるため、行政庁は「拒否」をしなければなりません。

※申請期間は過ぎているので「補正」を求めることはしません。

イ.許認可等を求める申請に必要な書類が添付されていない場合、行政庁は、速やかに、相当の期間を定めて当該申請の補正を求めるか、あるいは当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

イ・・・正しい

アの解説の「行政手続法7条」の内容の通り、
「申請に必要な書類が添付されていない場合」とは、「申請の形式上の要件に適合しない申請」にあたるため、行政庁は「拒否」をしなければなりません。

よって、本肢は正しいです。

ウ.行政庁は、申請により求められた許認可等のうち行政手続法に列挙されたものについて、これを拒否する処分を行おうとするときは、予めその旨を申請者に対し通知し、当該申請者に弁明書の提出による意見陳述の機会を与えなければならない。

ウ・・・誤り
行政手続法には、許認可を列挙した条文はありません。
したがって、「許認可等の申請を拒否する処分を行おうとするときは、予めその旨を申請者に対し通知し、当該申請者に弁明書の提出による意見陳述の機会を与えなければならない」という規定もないので誤りです。

エ.行政庁が申請の取下げまたは内容の変更を求める行政指導を行うことは、申請者がそれに従う意思がない旨を表明したにもかかわらずこれを継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるものでない限り、直ちに違法とされるものではない。
エ・・・正しい
「申請の取下げ」又は「内容の変更を求める行政指導」にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはなりません(行政手続法33条)。

つまり、「当該申請者の権利の行使を妨げるもの」は違法ですが、「当該申請者の権利の行使を妨げるものでない」ならば、それは、直ちに違法とはなりません。

よって、本肢は正しいです。

オ.行政庁が、申請の処理につき標準処理期間を設定し、これを公表した場合において、当該標準処理期間を経過してもなお申請に対し何らの処分がなされないときは、当該申請に対して拒否処分がなされたものとみなされる。
オ・・・誤り

標準処理期間を過ぎても処分がされない場合どうなるか?については、行政手続法に規定されていません。

標準処理期間については、下記条文があります。

行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない(行政手続法6条)。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問2|基礎法学

簡易裁判所に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.簡易裁判所は、禁固刑および懲役刑を科すことができず、これらを科す必要を認めたときは、事件を地方裁判所へ移送しなければならない。

イ.簡易裁判所における一部の民事事件の訴訟代理業務は、法務大臣の認定を受けた司法書士および行政書士にも認められている。

ウ.簡易裁判所で行う民事訴訟では、訴えは口頭でも提起することができる。

エ.少額訴訟による審理および裁判には、同一人が同一の簡易裁判所において同一の年に一定の回数を超えて求めることができないとする制限がある。

オ.簡易裁判所判事は、金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:4

【解説】

ア.簡易裁判所は、禁固刑および懲役刑を科すことができず、これらを科す必要を認めたときは、事件を地方裁判所へ移送しなければならない。

ア・・・誤り
簡易裁判所は、原則、禁錮以上の刑を科することができません(裁判所法33条2項本文)。ただし、下記については、3年以下の懲役を科することができます(2項ただし書)。

  • 刑法130条(住居侵入等)の罪若しくはその未遂罪
  • 刑法186条(常習賭博及び賭博場開張等図利)の罪
  • 刑法235条(窃盗)の罪若しくはその未遂罪
  • 刑法252条(横領)、254条(遺失物等横領)若しくは256条(盗品譲受け等)の罪
  • 古物営業法31条から33条までの罪若しくは質屋営業法30条から32条までの罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法54条1項の規定によりこれらの罪の刑をもって処断すべき事件

よって、懲役刑を科すことができる場合はあるので、誤りです。

イ.簡易裁判所における一部の民事事件の訴訟代理業務は、法務大臣の認定を受けた司法書士および行政書士にも認められている。

イ・・・誤り
司法書士の会の会員は、簡裁訴訟代理等関係業務を行えるが、行政書士簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができないので、誤りです。

簡裁訴訟代理等関係業務は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができます。(司法書士法3条2項)

  1. 簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であって法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。
  2. 前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。
  3. 司法書士会の会員であること。
ウ.簡易裁判所で行う民事訴訟では、訴えは口頭でも提起することができる。

ウ・・・正しい
簡易裁判所の訴訟手続については、口頭による訴えの提起が認められています。(民事訴訟法271条)
よって、正しいです。

エ.少額訴訟による審理および裁判には、同一人が同一の簡易裁判所において同一の年に一定の回数を超えて求めることができないとする制限がある。
エ・・・正しい
少額訴訟」とは、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えです。
そして、少額訴訟は、簡易裁判所に対して訴えを提起します。
また、1回の期日で審理を終えて判決をすることを原則とする特別な訴訟手続です。
【注意点】
少額訴訟は、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数(10回)を超えてこれを求めることができません
よって、本肢は正しいです。
オ.簡易裁判所判事は、金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。
オ・・・正しい
金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、「裁判所書記官」は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができます。(民事訴訟法382条本文)
よって、「簡易裁判所判事」ではないので誤り。「裁判所書記官」とは、裁判所において、裁判の記録や調書などを作成する事務職員です。「判事」とは、単独で裁判をし、また裁判長になることができる者です。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問12|行政手続法

行政手続法の規定する聴聞と弁明の機会の付与に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当事者は代理人を選任することができる。
  2. 聴聞は許認可等の取消しの場合に行われる手続であり、弁明の機会の付与は許認可等の拒否処分の場合に行われる手続である。
  3. 聴聞が口頭で行われるのに対し、弁明の機会の付与の手続は、書面で行われるのが原則であるが、当事者から求めがあったときは、口頭により弁明する機会を与えなければならない。
  4. 聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当該処分について利害関係を有する者がこれに参加することは、認められていない。
  5. 聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当事者は処分の原因に関するすべての文書を閲覧する権利を有する。

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【答え】:1
【解説】

1.聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当事者は代理人を選任することができる。

1・・・正しい

【聴聞について】
行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、一定事項を書面により通知しなければなりません(行政手続法15条1項)。
通知を受けた者は代理人を選任することができます(16条1項)。

【弁明の機会の付与について】
弁明の機会の付与においても、上記16条1項の規定を準用するので、弁明においても、代理人を選任できます。

2.聴聞は許認可等の取消しの場合に行われる手続であり、弁明の機会の付与は許認可等の拒否処分の場合に行われる手続である。

2・・・誤り

不利益処分を行う場合、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続(聴聞又は弁明の機会の付与)を執らなければなりません(行政手続法13条1項)。
「許認可等の取消し」の場合は、「聴聞」の手続きを行います(1項イ)。なので、この点は正しいです。

一方、「許認可等の拒否処分」は「不利益処分」に該当しないので、聴聞も弁明も不要です。
よって、この点が誤りです。

【詳細解説】

行政手続法では、「処分」について「不利益処分」と「申請に対する処分」に分けています。

■「申請に対する処分」は、「申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分」です。

分かりやすく言えば、「申請を前提」として、申請をした結果、行政からなされる処分です。

■一方、「不利益処分」は、「行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分」を言います。

「申請に対する処分」とは異なり、前提として「申請」はしていません。

例えば、宅建業者が、悪いことをして業務停止処分を受けたとします。この場合、申請をして、その申請の結果、業務停止処分を受けているわけではないです。

あくまで、「悪いことをした」から、業務停止処分を受けているわけです。

3.聴聞が口頭で行われるのに対し、弁明の機会の付与の手続は、書面で行われるのが原則であるが、当事者から求めがあったときは、口頭により弁明する機会を与えなければならない。

3・・・誤り

聴聞が口頭で行われるのに対し、弁明の機会の付与の手続は、書面で行われるのが原則です(29条1項)。ここまでは正しいです。

しかし、弁明の機会の付与の手続で、口頭により弁明できるのは、行政庁が口頭ですることを認めたときに限ります(29条1項)。

つまり、「当事者から求めがあったときは、口頭により弁明する機会を与えなければならない」が誤りです。

4.聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当該処分について利害関係を有する者がこれに参加することは、認められていない。

4・・・誤り

【聴聞について】
利害関係人の参加を認めています。

聴聞を主宰する者は、必要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者に対し、当該聴聞に関する手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる(行政手続法17条1項)。

【弁明の機会の付与】
利害関係人の参加を認めていません。

上記17条の規定は弁明の機会の付与には準用されていません。

【理由】
聴聞については、許認可等の取消のように名あて人となる者に及ぼす不利益が大きいため、口頭による意見陳述等の機関を保障する等手厚い手続きが保障されています。そのため、利害関係人がいる場合は、適正な判断をするために利害関係人を排除する理由はないので、利害関係人の参加を認めています。

一方、弁明の機会の付与については、営業停止処分といった不利益が小さい処分を行う手続きであり、聴聞よりも簡易迅速な手続き(原則、書面でのやり取り)で行います。そのため、利害関係人が参加するといった慎重な手続きまでは行いません。

5.聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当事者は処分の原因に関するすべての文書を閲覧する権利を有する。

5・・・誤り

【聴聞について】
当事者は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができます(行政手続法18条1項)。

【弁明の機会の付与】
上記規定を準用していません。

【理由】
許認可等を取り消す処分などの「はく奪処分」をする場合、当事者などの権利利益に重大な影響があります。そのため、より手厚い反論防御の機会を与える必要があります。
よって、聴聞手続のみ、「文書閲覧請求権」の規定を設けています。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問11|行政手続法

 

行政手続法の用語に関する次の記述のうち、同法の定義に照らし、正しいものはどれか。

  1. 「不利益処分」とは、申請により求められた許認可等を拒否する処分など、申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分のほか、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、またはその権利を制限する処分をいう。
  2. 「行政機関」には、国の一定の機関およびその職員が含まれるが、地方公共団体の機関はこれに含まれない。
  3. 「処分基準」とは、不利益処分をするかどうか、またはどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。
  4. 「申請」とは、法令に基づき、申請者本人または申請者以外の第三者に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
  5. 「届出」とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為であって、当該行政庁にそれに対する諾否の応答が義務づけられているものをいう。

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【答え】:3
【解説】

1.「不利益処分」とは、申請により求められた許認可等を拒否する処分など、申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分のほか、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、またはその権利を制限する処分をいう。

1・・・誤り

●申請により求められた許認可等を拒否する処分 → 「不利益処分」ではなく、「申請に対する処分」

本肢は「申請により求められた許認可等を拒否する処分」は「不利益処分」ではないので誤りです。

「申請により求められた許認可等を拒否する処分など、申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分のほか、」を削除すると正しい記述となります。

「不利益処分」とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、またはその権利を制限する処分を言います。(行政手続法2条4号本文)

上記例外として、下記イ~二は、不利益処分には当たりません。(行政手続法2条4号)

イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分(強制執行・即時強制・行政調査・事務所への立入り等、強制執行を行うにあたってあらかじめ相手方にその旨を通知すること)
ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分(申請に対する処分)
ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの(例えば、死亡等による届出があり、その届出に基づいて許認可を取消しする処分)

本肢は上記「ロ」の内容です。

2.「行政機関」には、国の一定の機関およびその職員が含まれるが、地方公共団体の機関はこれに含まれない。

2・・・誤り

●地方公共団体の機関 → 行政手続法上の行政機関に当たる

「地方公共団体の機関」も行政機関に当たるので、本肢は誤りです。

行政機関 次に掲げる機関をいう。(行政手続法2条5号)
イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、・・・、会計検査院若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
ロ 地方公共団体の機関(議会を除く。)。

【イについて】
内閣に置かれる機関:内閣府、復興庁、内閣官房等
内閣の所轄の下に置かれる機関:人事院
これらに置かれる機関:上記機関の内部の部局(各細かい機関)

3.「処分基準」とは、不利益処分をするかどうか、またはどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。

3・・・正しい

●処分基準 → 不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準
「処分基準」とは、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準を言います。(行政手続法2条8号ハ)

例えば、どのような行為を行った場合に、営業停止処分となるのか?それても免許取消処分になるのか?
といった基準です。

4.「申請」とは、法令に基づき、申請者本人または申請者以外の第三者に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

4・・・誤り

●申請 → 自己に対し利益を付与する処分を求める行為 + 行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの

本肢は「または申請者以外の第三者」が誤りです、この部分を削除すれば、正しい記述となります。

「申請」とは、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものを言う(行政手続法2条3号)。
【具体例】

あなたが、宅建業を営もうと思った場合、知事等に対して「宅建業を営ませてください!」と免許の申請をします。
これは、「自己(あなた)に対して免許」を与えてください!と求める行為です。
それに対して、免許権者である知事等が、免許を与えます!と許可したり、免許を与えませんと不許可にしたりします。これが「諾否の応答」です。

5.「届出」とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為であって、当該行政庁にそれに対する諾否の応答が義務づけられているものをいう。

5・・・誤り

●「届出」 → 行政庁の諾否の応答はない

本肢は「行政庁にそれに対する諾否の応答が義務づけられているもの」が誤りです。「行政庁にそれに対する諾否の応答すべきものとされているもの」は、「申請」です!

「届出」とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう(行政手続法2条7号)。

つまり、私人が行政庁に対して、一方的に通知するだけで、行政庁はそれに対して、何ら返答はしません。
本問は「行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの」が誤りです。
「行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの」は「申請」に当たります。

【具体例】

宅建業の免許を受けた者が破産手続開始決定を受けた場合、免許権者に届出が必要です。そして、届出をすることで、免許権者の諾否の応答なく、免許が失効するという効果が生じます。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問10|行政法,地方自治法

普通地方公共団体が締結する契約に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。

  1. 売買、賃借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約、せり売りのほか、条例で定める方法によっても締結することができる。
  2. 売買、賃借、請負その他の契約を、指名競争入札、随意契約またはせり売りの方法により締結することができるのは、政令が定める場合に該当するときに限られる。
  3. 一般競争入札により契約を締結する場合においては、政令の定めるところにより、契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高または最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするものとされており、この点についての例外は認められていない。
  4. 随意契約の手続に関し必要な事項は、当該普通地方公共団体が条例でこれを定める。
  5. 契約を締結する場合に議会の議決を要するのは、種類および金額について政令で定める基準に従い条例で定めるものを締結するときであって、かつ指名競争入札による場合に限られる。

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【答え】:2
【解説】

1.売買、賃借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約、せり売りのほか、条例で定める方法によっても締結することができる。
1・・・妥当ではない
売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結します(地方自治法234条1項)。
「条例で定める方法」で契約締結することができるとする規定はないので妥当ではありません。

2.売買、賃借、請負その他の契約を、指名競争入札、随意契約またはせり売りの方法により締結することができるのは、政令が定める場合に該当するときに限られる。

2・・・妥当
売買、賃借、請負その他の契約は、原則、一般競争入札です。
「指名競争入札、随意契約又はせり売り」は、政令で定める場合に該当するときに限り、行うことができます(地方自治法234条2項)。

よって、本肢は妥当です。

3.一般競争入札により契約を締結する場合においては、政令の定めるところにより、契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高または最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするものとされており、この点についての例外は認められていない。
3・・・妥当ではない

普通地方公共団体は、一般競争入札に付する場合においては、契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするものとします(地方自治法234条3項)
ただし、例外として、普通地方公共団体の支出の原因となる契約については、予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることができます(3項ただし書き)

つまり、一般競争入札は、原則「最高又は最低の価格」で申し込んだ人と契約しますが、例外として、普通地方公共団体の支出の原因となる契約については「最低の価格以外」で申し込んだ人と契約をしてもよいということです。

【理解】
一般競争入札とは、いわゆるオークションです。
地方公共団体が、モノを売るときは、最も高い金額で申し込んだ者と契約し、
モノ・サービスを買うときは、最も安い金額で申し込んだ者と契約します(3項本文)。

そして、モノ・サービスを買うときには、例外的な場合があり、最も安い金額で申し込んだ者「以外」のものと契約する場合もあります。

例えば、「低入札価格調査制度」です。
公社の建設について、一定の金額を安い基準価格(低入札価格調査基準価格)を定め、これより低い金額で入札した者についてきちんと建設が行えるかを調査する制度です。

あまりにも安い金額で入札して契約したとしても、公社の建設がきちんとできないと困ります。
そのため調査を行い、きちんと行うことができない場合、その者は最低落札者であっても、契約できません。

4.随意契約の手続に関し必要な事項は、当該普通地方公共団体が条例でこれを定める。
4・・・妥当ではない
随意契約及びせり売りの手続その他契約の締結の方法に関し必要な事項は、「政令」で定めます(地方自治法234条6項)。つまり「条例」で定めるわけではないので妥当ではありません。

5.契約を締結する場合に議会の議決を要するのは、種類および金額について政令で定める基準に従い条例で定めるものを締結するときであって、かつ指名競争入札による場合に限られる。
5・・・妥当ではない

普通地方公共団体が契約締結をする場合、普通地方公共団体の議会は、『その種類及び金額について政令で定める基準に従い「条例で定める契約」を締結すること』を議決しなければなりません(地方自治法96条1項5号)。
この「条例で定める契約」は、指名競争入札だけでなく、その他の「一般競争入札、随意契約又はせり売り」による場合も含みます。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問9|行政法

行政行為(処分)に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 処分に重大かつ明白な瑕疵があり、それが当然に無効とされる場合において、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきである。
  2. 行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、その意思表示が相手方に到達した時ではなく、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である。
  3. 課税処分における内容の過誤が課税要件の根幹にかかわる重大なものである場合であっても、当該瑕疵に明白性が認められなければ、当該課税処分が当然に無効となることはない。
  4. 相手方に利益を付与する処分の撤回は、撤回の対象となる当該処分について法令上の根拠規定が定められていたとしても、撤回それ自体について別途、法令上の根拠規定が定められていなければ、適法にすることはできない。
  5. 旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決は、これを実質的に見れば、その本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、それが処分である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことを妨げない。

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【答え】:1
【解説】

1.処分に重大かつ明白な瑕疵があり、それが当然に無効とされる場合において、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきである。
1・・・妥当
判例(最判昭36.3.7)によると、「瑕疵が明白であるというのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解すべきである」としています。
よって、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るもの(一目で分かるもの)であるかどうかにより決すべきということなので妥当です。
2.行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、その意思表示が相手方に到達した時ではなく、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である。

2・・・妥当ではない
判例(最判昭29.8.24)によると、「行政庁の処分は、特定の規程のない限り、意思表示の一般的法理に従い、その意思表示が相手方に到達した時に、その効果を生ずるものと解すべき」としています。
つまり、本肢の「行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である」というのは妥当ではありません。
「発信されたとき」ではなく、「到達した時」です。

3.課税処分における内容の過誤が課税要件の根幹にかかわる重大なものである場合であっても、当該瑕疵に明白性が認められなければ、当該課税処分が当然に無効となることはない。

3・・・妥当ではない

本肢は「当該瑕疵に明白性が認められなければ」が妥当ではありません。

判例(最判昭48.4.26)によると、「課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであって、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である」としています。

よって、課税処分が当然に無効となる要件が上記の判例と問題文では異なるので妥当はありません。

【判例解説】
上記判決文は、「課税処分が当然に無効となる要件」についての内容です。

課税処分は「課税庁と被課税者」との間にのみの話である。
だから、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のない。
↓このことから考えると
①当該課税処分における内容上の過誤(課税処分の間違い)が、課税要件を満たしていない場合であって、
かつ、
②税金に関する行政の安定と円滑な運営を考慮しても、不服申立期間が過ぎて、争えなくなることを理由に、税金を課された人がその課税処分で不利益を受けることが著しく不当と認められる
といった例外的な事情がある場合に限って、課税処分が当然に無効となる

4.相手方に利益を付与する処分の撤回は、撤回の対象となる当該処分について法令上の根拠規定が定められていたとしても、撤回それ自体について別途、法令上の根拠規定が定められていなければ、適法にすることはできない。
4・・・妥当ではない
本肢は「定められていなければ、適法にすることはできない」が妥当ではありません。
「定められていなくても、適法にすることができる」が妥当です。判例(最判昭和63.6.17)によると、
「指定医師の指定の撤回によって上告人(医師)の被る不利益を考慮しても、なおそれを撤回すべき公益上の必要性が高いと認められるから、法令上その撤回について直接明文の規定がなくとも、指定医師の指定の権限を付与されている被上告人医師会は、その権限において上告人(医師)に対する右指定を撤回することができる」としています。つまり、撤回すべき公益上の必要性が高い場合、「撤回できる」という規定が明文化されていなくても(法令上の根拠がなくても)、処分の権限があれば、その権限で撤回できるということです。

5.旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決は、これを実質的に見れば、その本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、それが処分である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことを妨げない。

5・・・妥当ではない

【自作農創設特別措置法の背景】
戦前、大地主が小作人に農地を貸して、農業を行われていたが、戦後、国が全国の大地主(たくさん土地を持つ人達)から土地を買い上げ、安い価格で小作人に売渡し、自作農民を増やす改革を行いました。
本肢は、国が全国の大地主の農地について、「農地買収計画の決定」をし、それに対して、この計画を取り消してください!と願い出て、それに対して、国はその願いを認めて、取消裁決をしました。

※訴願とは、現在の不服申立てのようなもので、現在は廃止されてありません。

【問題文】
この取消裁決の本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、
あくまで取消裁決は「処分」である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことができる〇か×か
という質問内容です。

本肢は「取り消すことを妨げない(取り消すことができる)」が妥当ではありません。
「原則、取り消すことはできない」が妥当です。

判例(最判昭29.1.21)によると、
「旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決が行政処分であることは言うまでもないが、実質的に見ればその本質は法律上の争訟を裁判するものである。憲法76条2項後段によれば、「行政機関は、終審として裁判を行うことができない」のであって、終審としては、裁判所が裁判を行うが、行政機関をして前審として裁判を行わせることは、何等差支えないのである。
本件裁決のごときは、行政機関である上告人が実質的には裁判を行っているのであるが、行政機関がするのでるから行政処分に属するわけである。
かかる(このような)性質を有する裁決は、他の一般行政処分とは異り、特別の規定がない限り、原判決のいうように裁決庁自らにおいて取消すことはできないと解するを相当とする。」としている。

つまり、訴願に対して裁決を出した後に、裁決庁が自分でその裁決を取り消すことは原則できないということです。

【分かりやすく言うと】

1.農地買収計画の決定(処分)
2.農地所有者が、上記計画を取り消してください!と願い出る(訴願、今でいう審査請求)
3.上記訴願(審査請求)に対して、国(審査庁:裁決庁)はその願いを認めて、取消裁決をする

ここで、審査庁は、一度裁決を下した「取消裁決」を取り消すことができるか?

答えは、できない。

なぜなら、自分で裁決をした後に、やっぱりその裁決をやめるということは、できないから。

いわゆる「不可変更力」のことです!


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問8|行政法

次の文章は、食中毒事故の原因食材を厚生大臣(当時)が公表したこと(以下「本件公表」という。)について、その国家賠償責任が問われた訴訟の判決文である。この判決の内容に明らかに反しているものはどれか。

食中毒事故が起こった場合、その発生原因を特定して公表することに関して、直接これを定めた法律の規定が存在しないのは原告の指摘するとおりである。しかし、行政機関が私人に関する事実を公表したとしても、それは直接その私人の権利を制限しあるいはその私人に義務を課すものではないから、行政行為には当たらず、いわゆる非権力的事実行為に該当し、その直接の根拠となる法律上の規定が存在しないからといって、それだけで直ちに違法の問題が生じることはないというべきである。もちろん、その所管する事務とまったくかけ離れた事項について公表した場合には、それだけで違法の問題が生じることも考えられるが、本件各報告の公表はそのような場合ではない。すなわち、厚生省は、公衆衛生行政・食品衛生行政を担い、その所管する食品衛生法は、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与すること」を目的としている(法1条)のであるから、本件集団下痢症の原因を究明する本件各報告の作成・公表は、厚生省及び厚生大臣の所管する事務の範囲内に含まれることは明らかである。このように、厚生大臣がその所管する事務の範囲内において行い、かつ、国民の権利を制限し、義務を課すことを目的としてなされたものではなく、またそのような効果も存しない本件各報告の公表について、これを許容する法律上の直接の根拠がないからといって、それだけで直ちに法治主義違反の違法の問題が生じるとはいえない。

(大阪地裁平成14年3月15日判決・判例時報1783号97頁)

  1. 法律の留保に関するさまざまな説のうち、いわゆる「侵害留保説」が前提とされている。
  2. 行政庁がその所掌事務からまったく逸脱した事項について公表を行った場合、当該公表は違法性を帯びることがありうるとの立場がとられている。
  3. 義務違反に対する制裁を目的としない情報提供型の「公表」は、非権力的事実行為に当たるとの立場がとられている。
  4. 集団下痢症の原因を究明する本件各報告の公表には、食品衛生法の直接の根拠が存在しないとの立場がとられている。
  5. 本件公表は、国民の権利を制限し、義務を課すことを直接の目的とするものではないが、現実には特定の国民に重大な不利益をもたらす事実上の効果を有するものであることから、法律上の直接の根拠が必要であるとの立場がとられている。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

食中毒事故が起こった場合、その発生原因を特定して公表することに関して、直接これを定めた法律の規定が存在しないのは原告の指摘するとおりである。しかし、行政機関が私人に関する事実を公表したとしても、それ(公表する行為)は直接その私人の権利を制限しあるいはその私人に義務を課すものではないから、行政行為には当たらず、いわゆる非権力的事実行為に該当し、その直接の根拠となる法律上の規定が存在しないからといって、それだけで直ちに違法の問題が生じることはないというべきである。もちろん、その所管する事務とまったくかけ離れた事項について公表した場合には、それだけで違法の問題が生じることも考えられるが、本件各報告の公表はそのような場合ではない。すなわち、厚生省は、公衆衛生行政・食品衛生行政を担い、その所管する食品衛生法は、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与すること」を目的としている(法1条)のであるから、本件集団下痢症の原因を究明する本件各報告の作成・公表は、厚生省及び厚生大臣の所管する事務の範囲内に含まれることは明らかである。このように、厚生大臣がその所管する事務の範囲内において行い、かつ、国民の権利を制限し、義務を課すことを目的としてなされたものではなく、またそのような効果も存しない本件各報告の公表について、これを許容する法律上の直接の根拠がないからといって、それだけで直ちに法治主義違反の違法の問題が生じるとはいえない。

(大阪地裁平成14年3月15日判決・判例時報1783号97頁)

1.法律の留保に関するさまざまな説のうち、いわゆる「侵害留保説」が前提とされている。
侵害留保説とは、「国民の自由」や「財産」を侵害する行政活動のみ、法律の根拠が必要ということです。逆を言えば、「国民の自由」や「財産」を侵害しない行政活動は、法律の根拠は不要です。

上記判例の下記部分は「侵害留保説」を前提としています。
よって、判決の内容と反していません。

「それ(公表する行為)は、直接その私人の権利を制限しあるいはその私人に義務を課すものではないから、行政行為には当たらず、いわゆる非権力的事実行為に該当し、その直接の根拠となる法律上の規定が存在しないからといって、それだけで直ちに違法の問題が生じることはない」

【上記内容を分かりやすくいうと】

「公表」は、直接、その人の権利を制限したり、義務を課すものではない
↓だから
非権力的な行政行為である

直接の根拠となる法律上の規定が存在しなくても、それだけで直ちに違法とはならない

となります。つまり、「国民の自由」や「財産」を侵害しない行政活動は、法律の根拠は不要ということなので、侵害留保説を前提にしているということです。

1・・・反していない

2.行政庁がその所掌事務からまったく逸脱した事項について公表を行った場合、当該公表は違法性を帯びることがありうるとの立場がとられている。

2・・・反していない
判決文の下記部分
「その(行政機関・行政庁の)所管する事務とまったくかけ離れた事項について公表した場合には、それだけで違法の問題が生じることも考えられる」
という内容から
行政庁がその所掌事務からまったく逸脱した事項について公表を行った場合、当該公表は違法性を帯びることがありうるとの立場がとられています。

よって、判決の内容と反しません。

3.義務違反に対する制裁を目的としない情報提供型の「公表」は、非権力的事実行為に当たるとの立場がとられている。

3・・・反していない
判決文の下記部分
「行政機関が私人に関する事実を公表したとしても、それ(公表する行為)は直接その私人の権利を制限しあるいはその私人に義務を課すものではないから、行政行為には当たらず、いわゆる非権力的事実行為に該当し」
という記述から、義務違反に対する制裁を目的としない情報提供型の「公表」は、非権力的事実行為に当たるとの立場がとられていることが分かります。

よって、判決の内容と反していません。

4.集団下痢症の原因を究明する本件各報告の公表には、食品衛生法の直接の根拠が存在しないとの立場がとられている。
4・・・反していない
判決文の下記部分

「本件各報告の公表について、これを許容する法律上の直接の根拠がないからといって、それだけで直ちに法治主義違反の違法の問題が生じるとはいえない」
という記述から、
集団下痢症の原因を究明する本件各報告の公表には、食品衛生法の直接の根拠が存在しないとの立場がとられています。

よって、判決の内容と反していません。

5.本件公表は、国民の権利を制限し、義務を課すことを直接の目的とするものではないが、現実には特定の国民に重大な不利益をもたらす事実上の効果を有するものであることから、法律上の直接の根拠が必要であるとの立場がとられている。
5・・・反している
判決文の下記部分
「(本件公表は)国民の権利を制限し、義務を課すことを目的としてなされたものではなく、またそのような効果も存しない本件各報告の公表について、これを許容する法律上の直接の根拠がないからといって、それだけで直ちに法治主義違反の違法の問題が生じるとはいえない」
という記述から、
本件公表については、法律上の直接の根拠がなくても問題ない、という立場をとっています。
したがって、「法律上の直接の根拠が必要である」との立場ではないので、本肢は判決の内容と明らかに反します。

【上記内容を分かりやすくいうと】
(本件公表は)国民の権利を制限し、義務を課すことを目的としてなされたものではなく、
また、公表してもなんら「効果」はない(=公表によってなんら権利制限や義務の発生はない)。

そのため、法律上の直接の根拠がなく公表しても、それだけで直ちに違法とはならない

といっています。

つまり、「本件公表については、法律上の直接の根拠がなくても問題ない」ということです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略