株式会社の設立における出資等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。
ア 株主となる者が設立時発行株式と引換えに払込み、または給付した財産の額は、その全額を資本金に計上することは要せず、その額の2分の1を超えない額を資本準備金として計上することができる。
イ 錯誤、詐欺または強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。(改)
ウ 設立時発行株式を引き受けた発起人が出資の履行をしない場合には、当該発起人は当然に設立時発行株式の株主となる権利を失う。
エ 発起人または設立時募集株式の引受人が払い込む金銭の額および給付する財産の額の合計が、定款に定められた設立に際して出資される財産の価額またはその最低額に満たない場合には、発起人および設立時取締役は、連帯して、その不足額を払い込む義務を負う。
オ 設立時発行株式の総額は、設立しようとする会社が公開会社でない場合を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下ることはできない。
- ア・イ
- ア・オ
- イ・ウ
- ウ・エ
- エ・オ
【解説】
●設立時に払込み、または給付した財産 → その額の2分の1まで資本準備金として計上できる株式会社の資本金の額は、原則、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額です(445条1項)。
ただし、上記払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額については、資本金として計上せずに、資本準備金にできます(同条2項3項)。よって、本肢は妥当です。
●株式会社 → 錯誤・詐欺・強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しはできない発起人は、株式会社の成立後は、錯誤、詐欺または強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができません(51条2項)。よって本肢は妥当です。募集設立においては、株式引受人が創立総会において議決権を行使した後は上記取消しを主張することができなくなります。
【関連ポイント】
設立取消の訴えは、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の場合に、持分会社の社員や債権者が提起できます(832条)。
【参考】
「持分会社」の内部関係は民法上の組合に類似しているため、民法のルールが適用され、設立取消も可能としています。
●発起人が出資していない → 期日を定めて通知 → 期日までに出資の履行をしないときは株主となる権利が喪失発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければなりません(36条1項)。
上記通知を受けた発起人は、上記定められた期日までに出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失います(同条3項)。つまり、出資をしない場合、いきなり、株主の権利を失うわけではないので、本肢は妥当ではありません。【対比】 「発起人」と「募集設立における株式引受人」とでは出資を履行しない場合の扱い方が異なるので下表で確認しましょう!
エ 発起人または設立時募集株式の引受人が払い込む金銭の額および給付する財産の額の合計が、定款に定められた設立に際して出資される財産の価額またはその最低額に満たない場合には、発起人および設立時取締役は、連帯して、その不足額を払い込む義務を負う。
エ・・・妥当ではない
株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければなりません(会社法27条)。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
そして、現物出資・財産引受の目的財産の価額が「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」に満たない場合(定款に定めた価額に著しく不足する場合)、発起人及び設立時取締役は、会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負います。(会社法52条1項)
したがって、本問は「払い込む金銭の額(金銭)」も含まれて記述されているので、誤りとなります。
ちなみに、出資された財産の価額が「会社の設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」に満たない場合、「設立無効の原因」となります。
●設立時発行株式の総額 → 公開会社:発行可能株式総数の4分の1以上
非公開会社:上記制限はない設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができません。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合(非公開会社の場合)は、4分の1を下回っても大丈夫です(37条3項)。
よって、本肢は妥当です。【4倍規制が存在する理由】 このルールは、既存株主の利益を保護するためのルールです。非公開会社の場合は、株を売買することはあまりありませんが、公開会社は、頻繁に売買され株主もよく変更します。そして、公開会社の場合、取締役会決議で株式を発行することが可能です。そして、もし、上記制限がないならば、発行可能株式総数を極端に増やし、たくさん株式を発行することで、既存株主の議決権を減らすことができます。そうすると、取締役にとって既存株主が煩わしい場合、たくさん株式を発行してそれを防ぐことができてしまいます。これは、既存株主にとって不利益なので、それができないように、発行できる株式に一定の制限を設けているのです。例えば、1000株発行するのであれば、発行可能株式総数は最大で4000株です。つまり既存株主は、今後、株式を増やしたとしても最大4000株までしか発行できないので、既存株主だけでも合計して25%の議決権は保障されます。
平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 幸福追求権など | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 投票価値の平等 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 内閣 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政調査 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・社会 |
| 問20 | 損失補償 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・経済 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 行政法 | 問54 | 一般知識・社会 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |





















