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令和5年・2023|問24|地方自治法

地方自治法に定める事務の共同処理(普通地方公共団体相互間の協力)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 連携協約とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体と事務を処理するに当たっての連携を図るため、協議により、連携して事務を処理するための基本的な方針および役割分担を定める協約をいう。
  2. 協議会とは、普通地方公共団体が、事務の一部を共同して管理・執行し、もしくは事務の管理・執行について連絡調整を図り、または広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定めて設置するものをいう。
  3. 機関等の共同設置とは、協議により規約を定め、共同して、議会事務局、附属機関、長の内部組織等を置くことをいう。
  4. 事務の代替執行とは、協議により規約を定め、普通地方公共団体の事務の一部の管理および執行を、他の地方公共団体に委託する制度であり、事務を受託した地方公共団体が受託事務の範囲において自己の事務として処理することにより、委託した地方公共団体が自ら当該事務を管理および執行した場合と同様の効果が生じる。
  5. 職員の派遣とは、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるとき、当該普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員が、他の普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員に対し、職員の派遣を求めるものをいう。

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【答え】:4

【解説】

1.連携協約とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体と事務を処理するに当たっての連携を図るため、協議により、連携して事務を処理するための基本的な方針および役割分担を定める協約をいう。

1・・・正しい

普通地方公共団体は、「当該普通地方公共団体及び他の普通地方公共団体の区域」における「当該普通地方公共団体及び当該他の普通地方公共団体」の事務の処理に当たっての当該他の普通地方公共団体との連携を図るため、協議により、「当該普通地方公共団体及び当該他の普通地方公共団体」が連携して事務を処理するに当たっての基本的な方針及び役割分担を定める協約(連携協約)を当該他の普通地方公共団体と締結することができます(地方自治法252条の2第1項)。これを簡潔にまとめると、「連携協約とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体と事務を処理するに当たっての連携を図るため、協議により、連携して事務を処理するための基本的な方針および役割分担を定める協約をいいます」。
分かりやすく言うと、地方自治法252条の2第1項は、普通地方公共団体同士が連携して事務を処理するために連携協約を締結することができることを規定しています。具体的には、ある普通地方公共団体と他の普通地方公共団体が、共同で事務を処理する場合、両者は連携協約を締結することができます。この連携協約は、異なる地方公共団体同士が連携して共同で事務を処理する際のルールや取り決めを定めるものであり、効果的な地方自治の推進や事務の効率化を図るための枠組みとなっています。

2.協議会とは、普通地方公共団体が、事務の一部を共同して管理・執行し、もしくは事務の管理・執行について連絡調整を図り、または広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定めて設置するものをいう。

2・・・正しい

普通地方公共団体は、普通地方公共団体の事務の一部を共同して管理し及び執行し、若しくは普通地方公共団体の事務の管理及び執行について連絡調整を図り、又は広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定め、普通地方公共団体の協議会を設けることができます(地方自治法252条の2の2第1項)。つまり、協議会とは、普通地方公共団体が、事務の一部を共同して管理・執行し、もしくは事務の管理・執行について連絡調整を図り、または広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定めて設置するものをいいます。

協議会の具体例としては、以下のようなものがあります。

  • 地域振興協議会:複数の市町村が協力して地域の振興や活性化を図るための協議会。地域振興の計画策定やイベントの企画などが行われます。
  • 災害対策協議会:複数の自治体が協力して災害時の対策や復旧作業の計画を策定し、連携して行動するための協議会。災害時の対応や避難計画の策定などが主な活動です。
  • 交通安全協議会:複数の地域の交通安全を確保するために、警察や交通関連機関、地方自治体などが協力して設立される協議会。交通事故の予防策や安全キャンペーンの実施などが行われます。
  • 観光振興協議会:地域の観光資源を活用し、観光産業の振興を図るための協議会。観光施設の整備や観光プロモーションの計画が行われます。
  • 環境保全協議会:地域の環境保護や持続可能な開発を推進するための協議会。環境問題の調査研究や環境保護活動の計画が主な活動です。

これらの協議会は、地域の課題やニーズに応じて設立され、関係する自治体や関係機関が協力して問題解決や計画策定を行います。;

3.機関等の共同設置とは、協議により規約を定め、共同して、議会事務局、附属機関、長の内部組織等を置くことをいう。

3・・・正しい

普通地方公共団体は、協議により規約を定め共同して、事務局若しくはその内部組織(議会事務局)、委員会若しくは委員、附属機関、普通地方公共団体の議会、長、委員会若しくは委員の事務を補助する職員、専門委員又は監査専門委員を置くことができます(地方自治法252条の7第1項:機関等の共同設置)。つまり、機関等の共同設置とは、協議により規約を定め、共同して、議会事務局、附属機関、長の内部組織等を置くことをいいます。

4.事務の代替執行とは、協議により規約を定め、普通地方公共団体の事務の一部の管理および執行を、他の地方公共団体に委託する制度であり、事務を受託した地方公共団体が受託事務の範囲において自己の事務として処理することにより、委託した地方公共団体が自ら当該事務を管理および執行した場合と同様の効果が生じる。

4・・・誤り

普通地方公共団体は、他の普通地方公共団体の求めに応じて、協議により規約を定め、当該他の普通地方公共団体の事務の一部を、当該他の普通地方公共団体又は当該他の普通地方公共団体の長若しくは同種の委員会若しくは委員の名において管理し及び執行すること(事務の代替執行)ができます(地方自治法252条の16の2第1項)。つまり、事務の代替執行とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体の求めに応じて、協議により規約を定め、当該他の普通地方公共団体の事務の一部を、当該他の普通地方公共団体又は当該他の普通地方公共団体の長若しくは同種の委員会若しくは委員の名において管理し及び執行することです。

本肢の前半部分の「協議により規約を定め、普通地方公共団体の事務の一部の管理および執行を、他の地方公共団体に委託する制度」とは「事務の委託」のことです(地方自治法252条の14)。したがって誤りです。

事務の代替執行 権限は、代替執行される側に残る
事務の委託 権限は、委託者に残らない
5.職員の派遣とは、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるとき、当該普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員が、他の普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員に対し、職員の派遣を求めるものをいう。

5・・・正しい

普通地方公共団体の長又は委員会若しくは委員は、法律に特別の定めがあるものを除くほか、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるときは、他の普通地方公共団体の長又は委員会若しくは委員に対し、当該普通地方公共団体の職員の派遣を求めることができます(地方自治法252条の17第1項:職員の派遣)。つまり、職員の派遣とは、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるとき、当該普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員が他の普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員に対し職員の派遣を求めるものをいいます。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問23|地方自治法

地方自治法(以下「法」という。)が定める直接請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、以下「選挙権」とは、「普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権」をいう。

  1. 事務監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば、日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず、これを請求することができる。
  2. 普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。
  3. 市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるとき、関係人は、法定の期間内に総務大臣にこれを申し出ることができる。
  4. 議会の解散請求は、日本国民たる普通地方公共団体の住民であって選挙権を有する者の総数のうち、法所定の数以上の連署をもって成立するが、この総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられている。
  5. 議会の解散請求が成立した後に行われる解散の住民投票において、過半数の同意があった場合、議会は解散するが、選挙権を有する者の総数が一定以上の普通地方公共団体については、過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている。

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【答え】:4

【解説】

1.事務監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば、日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず、これを請求することができる。

1・・・誤り

選挙権を有する者は、政令で定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務の執行に関し、監查の請求(事務監査請求)をすることができます(地方自治法75条1項)。よって、「選挙権を有する者」とは、満18年以上の日本国民で、引き続き3ヵ月以上、その市町村の区域内に住所を有する者を指します(地方自治法18条)。したがって、「日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず」という記述が誤りです。日本国民で、かつ選挙権を有していないと事務監査請求はできません。

2.普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。

2・・・誤り

結論からいうと、本肢のような「普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。」という制限はありません。よって、誤りです。 「条例の制定改廃の直接請求」に関するルールは、下記の通りです。

選挙権を有する者は、政令で定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し条例の制定又は改廃の請求をすることができます。ただし、例外的に「地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関する条例」については、制定又は改廃の請求ができません(地方自治法74条1項)。

3.市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるとき、関係人は、法定の期間内に総務大臣にこれを申し出ることができる。

3・・・誤り

結論からいうと、「総務大臣に」という記述が誤りです。正しくは「当該市町村の選挙管理委員会」です。 市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるときは、関係人は、法定の期間内に「当該市町村の選挙管理委員会」にこれを申し出ることができます(地方自治法74条の2第4項)。つまり、「市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議」は、総務大臣ではなく当該市町村の選挙管理委員会に申し出るものです。

4.議会の解散請求は、日本国民たる普通地方公共団体の住民であって選挙権を有する者の総数のうち、法所定の数以上の連署をもって成立するが、この総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられている。

4・・・正しい

選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の3分の1(

①その総数が40万を超え80万以下の場合にあってはその40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

②その総数が80万を超える場合にあってはその80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

)以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができる(地方自治法76条1項)。よって、総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられています。

【具体例】 ①について、選挙権者の数が50万人とする。

40万円を超える数(10万)×1/6=1万6666人

40万に3分の1を乗じて得た数=40×1/3=13万3333人

よって、合計すると14万9999人です。

選挙権者の数(50万)×1/3=16万6666よりも、14万9999人は少ないので、①は成立要件を緩和する特例といえます。

②も同じように計算すれば、緩和していることが分かりますが、計算できなくても大丈夫です。

言いたいことは、①②は、成立要件を緩和する特例、つまり、人口が多い地方公共団体の方が、議会の解散しやすい要件になっているということです。

5.議会の解散請求が成立した後に行われる解散の住民投票において、過半数の同意があった場合、議会は解散するが、選挙権を有する者の総数が一定以上の普通地方公共団体については、過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている。

5・・・誤り

普通地方公共団体の議会を解散させるには、選挙権を持つ住民の一定数の署名総数の1/3、40万を超える場合は超える部分について6分の1を加算、80万を超える場合は超える部分について8分の1を加算)が必要です。そして、その署名を基に解散請求が行われ、住民投票で過半数の賛成があれば議会は解散します。

「過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている」という部分が誤りです。「過半数の同意」という緩和ではなく、「署名の数」について、「選挙権者が40万を超える場合は超える部分について6分の1を加算、80万を超える場合は超える部分について8分の1を加算」という緩和があります。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問22|地方自治法

地方自治法が定める普通地方公共団体に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 普通地方公共団体の区域は、地方自治法において「従来の区域」によるとされており、同法施行時の区域が基準となる。
  2. 市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基づき、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、国会が承認することによって成立する。
  3. 都道府県の境界変更は、関係都道府県がその旨を定めた協定を締結し、総務大臣に届け出ることによって成立する。
  4. 市となるべき普通地方公共団体の要件として、地方自治法それ自体は具体的な数を示した人口要件を規定していないが、当該都道府県の条例で人口要件を定めることはできる。
  5. 市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき又は職権で当該争論を裁判所の調停に付すことができる。

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【答え】:1
【解説】

1.普通地方公共団体の区域は、地方自治法において「従来の区域」によるとされており、同法施行時の区域が基準となる。

1・・・正しい

普通地方公共団体の区域は、従来の区域によります(地方自治法5条1項)。そして、これは地方自治法施行時の区域が基準となります。分かりやすく言えば地方自治体の区域は、その地域の歴史的な経緯や既存の制度に基づいて決定されるということを意味しています。具体的には、地方自治体の区域は従来から存在しており、その範囲や境界は歴史的な経緯や地理的な条件、人口分布、行政上の便宜などに基づいて形成されています。この規定は、地方自治体の区域を安定させ、一定の基準に基づいて変更されないようにするために設けられています。

2.市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基づき、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、国会が承認することによって成立する。

2・・・誤り

市町村の廃置分合又は市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基き、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を総務大臣に届け出なければなりません(地方自治法7条1項)。「国会が承認」は不要なので、誤りです。

3.都道府県の境界変更は、関係都道府県がその旨を定めた協定を締結し、総務大臣に届け出ることによって成立する。

3・・・誤り

都道府県の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定めます(地方自治法6条1項)。分かりやすくいうと、都道府県の廃止、新設、合併、または境界変更を行う場合には、それに関する具体的な手続きや条件を、法律で定める必要があるということです。つまり、協定の締結や総務大臣への届出で成立するわけではないので、誤りです。

4.市となるべき普通地方公共団体の要件として、地方自治法それ自体は具体的な数を示した人口要件を規定していないが、当該都道府県の条例で人口要件を定めることはできる。

4・・・誤り

となるべき普通地方公共団体は、下記要件を備えなければなりません(地方自治法8条1項)。

  1. 人口が5万人以上であること。
  2. 当該普通地方公共団体の中心の市街地を形成している区域内に存在戸数が、全戸数の6割以上であること。
  3. 商工業その他の都市的業態に従事する者及びその者と同一世帯に属する者の数が、全人口の6割以上であること。
  4. 上記1~3に定めるものの他、当該都道府県の条例で定める都市的施設その他の都市としての要件を具えていること。

よって、「地方自治法それ自体は具体的な数を示した人口要件を規定していない」というのは誤りです。市となる人口要件として5万人以上と定めています。

5.市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき又は職権で当該争論を裁判所の調停に付すことができる。

5・・・誤り

市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき、調停に付することができます(地方自治法9条)。本肢は「又は職権で当該争論を裁判所の調停に付すことはできる」となっているので誤りです。「職権」では調停に付することはできません。

この規定は、市町村間の境界に関する争いを効果的に解決するための手段を提供しています。関係市町村が都道府県知事に対して、「知事が判断してください!」と申し立てをすることで、知事が調停に付することで、公平な判断や解決策を導き出すことが期待されます。これにより、争いが長期化したり、市民や自治体の間で不和が生じることを防ぐことができます。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問21|国家賠償法

次の文章は、国家賠償法1条2項に基づく求償権の性質が問われた事件において、最高裁判所が下した判決に付された補足意見のうち、同条1項の責任の性質に関して述べられた部分の一部である(文章は、文意を損ねない範囲で若干修正している)。空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

国家賠償法1条1項の性質については[ ア ]説と[ イ ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ ]がない場合に、[ ア ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ ]説では生じ得る点に求められていた。しかし、最一小判昭和57年4月1日民集36巻4号519頁は、[ ア ]説か[ イ ]説かを明示することなく、「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は損害賠償責任を免れることができない」と判示している。さらに、公務員の過失を[ エ ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ ]を問題にする必要はないと思われる。したがって、[ ア ]説、[ イ ]説は、解釈論上の道具概念としての意義をほとんど失っているといってよい。

None.(最三小判令和2年7月14日民集74巻4号1305頁、字賀克也裁判官補足意見)

  1. ア:代位責任 イ:自己責任 ウ:有責性 エ:組織的
  2. ア:代位責任 イ:自己責任 ウ:有責性 エ:重大な
  3. ア:代位責任 イ:自己責任 ウ:職務関連性 エ:重大な
  4. ア:自己責任 イ:代位責任 ウ:有責性 エ:組織的
  5. ア:自己責任 イ:代位責任 ウ:職務関連性 エ:重大な

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【答え】:1(ア:代位責任 イ:自己責任 ウ:有責性 エ:組織的)

国家賠償法1条1項の性質については[ ア:代位責任 ]説と[ イ:自己責任 ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ:有責性 ]がない場合に、[ ア:代位責任 ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ:自己責任 ]説では生じ得る点に求められていた。しかし、最一小判昭和57年4月1日民集36巻4号519頁は、[ ア:代位責任 ]説か[ イ:自己責任 ]説かを明示することなく、「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は損害賠償責任を免れることができない」と判示している。さらに、公務員の過失を[ エ:組織的 ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はないと思われる。したがって、[ ア:代位責任 ]説、[ イ:自己責任 ]説は、解釈論上の道具概念としての意義をほとんど失っているといってよい。

【解説】

ア.イ.国家賠償法1条1項の性質については[ ア ]説と[ イ ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合・・・に、[ ア ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ ]説では生じ得る点に求められていた。

ア・・・代位責任、イ・・・自己責任

国家賠償法1条1項では、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責任を負う。」としています。これは、公務員が、その職務の執行にともなって国民に損害を与えた場合に、国又は公共団体がその賠償責任を負うという意味です。そして、この公務員と国家との責任関係を説明するために「代位責任説」と「自己責任説」があります。

代位責任説(通説・判例)
もともと加害行為(不法行為)を行ったのは、公務員(個人)だから、①公務員個人の不法行為責任が発生する。しかし、公務員個人に賠償させるとなると、多額となる場合、賠償できず、結果として、被害者を十分に救済できない可能性が出てくる。そのため、公務員個人の代わりに、国や公共団体が賠償責任を負うという考え方です。つまり、①初めに、加害行為を行った公務員個人の不法行為責任が成立する②その責任を国または公共団体が代わりに負う。という考え方、だから「代位責任説」と呼びます。

自己責任説)
もともと不法行為を行ったのは、公務員(個人)だけれども、これは、国や公共団体の職務執行として行った行為だから、公務員個人が行った不法行為であっても、はじめから国や公共団体の責任として損害賠償責任を負うという考え方。この場合、公務員個人の不法行為責任とはとらえない

ここで問題文を見ると「加害公務員又は加害行為が特定できない場合・・・に、[ ア ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ ]説では生じ得る」と書いてあります。代位責任説で考えると、加害公務員を特定できない場合①不法行為責任が発生しません。誰に不法行為責任が生じるか判断できないからです。そのため、国または公共団体には、責任が発生しません(賠償責任を負わない)。そのため、「ア」には「代位責任」が入ります。

逆に、自己責任説で考えると、加害公務員を特定できない場合でも、公務員の誰かしらが加害行為行ったのであれば、その時点で、国または公共団体の責任となります。そのため、「イ」には「自己責任」が入ります。

ウ.国家賠償法1条1項の性質については[ ア:代位責任 ]説と[ イ:自己責任 ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ ]がない場合に、[ ア:代位責任 ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ:自己責任 ]説では生じ得る点に求められていた。

ウ・・・有責性

問題文を見ると「害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ ]がない場合に、[ ア:代位責任 ]説では国家賠償責任が生じ得ない」と書いてあります。つまり、代位責任説に立った場合、どんな場合に、国家賠償責任が生じないのかを考えればよいです。選択肢は「有責性」又は「職務関連性」です。

【有責性を入れた場合】 加害公務員に「有責性」がないと仮定すると、『加害公務員に「有責性(故意または過失)」がない場合、国家賠償責任は生じない』となります。これは正しいです。なぜなら、不法行為責任が成立するのは、「故意または過失によって、他人の権利や法律上保護される利益を違法に侵害した場合」だからです(民法709条)。公務員に有責性がないと、公務員に不法行為責任は発生せず、結果として、国家賠償責任も生じない、ということです。そのため、「有責性」を入れれば妥当な記述となります。

【職務執行性を入れた場合】 加害公務員に「職務執行性」がないと仮定すると、公務員は、プライベートで加害行為を行ったことになります。この場合、そもそも、国家賠償責任の対象ではなくなるので、代位責任説でも自己責任説を考える理由がなくなります。よって、職務執行性は入りません。

エ.公務員の過失を[ エ ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はないと思われる。

エ・・・組織的

問題文を見ると「公務員の過失を[ エ ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はない」と言っています。選択肢は「組織的」又は「重大な」です。

【重大を入れた場合】 「公務員の過失を[ エ:重大な ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はない」となります。公務員に重過失があるのであれば、当然に、この公務員に有責性があることになるのですが、何か意味が通じません。

【組織的を入れた場合】 「公務員の過失を[ エ:組織的 ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はない」となります。公務員の過失が組織的過失ととらえると、その前の判例の文章

「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は損害賠償責任を免れることができない

つまり、加害行為に、複数の公務員が関わっていて、誰が加害行為をしたか特定できない場合であっても、「組織的」な過失ととらえることで、国家賠償責任を認めるということです。つまり、組織としての有責性をもとに不法行為責任を考えるので、「個々の公務員の有責性を問題にする必要はない」ということです。よって、「エ」には、組織的が入ります。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問20|国家賠償法

道路をめぐる国家賠償に関する最高裁判所の判決について説明する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその予算措置に困却するであろうことが推察できる場合には、そのことを理由として、道路管理者は、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得るものと解するのが相当である。
  2. 事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず、それが夜間の事故発生直前に生じたものであり、道路管理者において時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当である。
  3. 防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものであったとしても、当該転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であった場合、その行動が当該道路および防護柵の設置管理者において通常予測することができなくとも、営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがあったと評価され、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である。
  4. 道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が周辺住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたとしても、当該道路が道路の周辺住民に一定の利益を与えているといえるときには、当該道路の公共性ないし公益上の必要性のゆえに、当該道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当である。
  5. 走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきであって、金網の柵をすき間なく設置して地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、当該道路には動物注意の標識が設置され自動車の運転者に対して道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができるなどの事情の下においては、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして起こした自損事故において、当該道路に設置または管理の瑕疵があったとはいえない。

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【答え】:5
【解説】

1.落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその予算措置に困却するであろうことが推察できる場合には、そのことを理由として、道路管理者は、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得るものと解するのが相当である。

1・・・妥当でない

判例(最判昭45.8.20)によると、「落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県として、その予算措置に困却するであろうことは推察できる(予算的な制約があり、困ってしまうことは考えられる)が、だからといって、直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れることができると考えることはできない」と判示しています。

分かりやすく言えば
県が予算的な制約を理由に安全対策を講じるのが難しいからといって、損害の賠償責任が免除されるわけではない、ということです。

2.事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず、それが夜間の事故発生直前に生じたものであり、道路管理者において時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当である。

2・・・妥当でない

判例(最判昭50.6.26)によると、「事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえないが、それが夜間の事故発生の直前に先行した他車によって惹起されたものであり、時間的に、遅滞なくこれを原状回復させ道路を安全良好な状態に保つことが困難であったときは、道路管理に瑕疵がなかったと認めるのが相当である」と判示しています。

分かりやすく言うと
倒れた標識等が、道路上に放置されていることは、道路の安全性に欠如があるといえる。しかし、事故発生直前に他の車両によって標識等が倒され、その復旧が直ちに行って、安全な状態に保つことが困難であった場合には、道路管理者は免責されるということです。 本肢は「事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず」という部分は妥当です。後半部分の「時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当」が妥当ではありません。

3.防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものであったとしても、当該転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であった場合、その行動が当該道路および防護柵の設置管理者において通常予測することができなくとも、営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがあったと評価され、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である。

3・・・妥当でない

判例(最判昭53.7.4)によると、「防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみれば、その安全性に欠けるところがないものであれば、転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であったとしても、道路及び防護柵の設置管理者が通常予測することのできない行動に起因するものであった場合、営造物につき本来それが具有すべき安全性に欠けるところがあったとはいえず、道路管理者はその設置管理者としての責任を負うべき理由はない」と判示しています。

分かりやすく言うと防護柵は通行者や車両の転落を防止するために設置されるものであり、その安全性が通常の通行時において欠けていない場合、転落事故の被害者が幼児であったとしても、防護柵の設置管理者は予測できない行動によって事故が発生した場合には責任を負わない、ということです。つまり、防護柵が本来の安全性を備えており、通常の状況では安全性に問題がない場合には、その設置管理者は事故の責任を負わないということです。

本肢は「通常予測することができなくとも、・・・、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である」と書いてあるので妥当ではありません。

4.道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が周辺住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたとしても、当該道路が道路の周辺住民に一定の利益を与えているといえるときには、当該道路の公共性ないし公益上の必要性のゆえに、当該道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当である。

4・・・妥当でない

判例(最判平7.7.7)によると「道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が右住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたときは、当然に当該住民との関係において道路が他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあったことが認定判断されたことになる」と判示しています。

分かりやすくいうと道路からの騒音や排気ガスが、住民に実際に受け入れられるべき限度を超える被害をもたらしたと認定された場合道路は他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあったと判断され道路設置者や管理者は被害の責任を負うということです。よって、本肢は「道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当」と書いてあるので妥当ではありません。

5.走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきであって、金網の柵をすき間なく設置して地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、当該道路には動物注意の標識が設置され自動車の運転者に対して道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができるなどの事情の下においては、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして起こした自損事故において、当該道路に設置または管理の瑕疵があったとはいえない。

5・・・妥当

判例(最判平22.3.2)によると「北海道内の高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において、(1)走行中の自動車が上記道路に侵入したキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではないこと、(2)金網の柵を地面との透き間無く設置し、地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであること、(3)上記道路には動物注意の標識が設置されていたことなどの事情の下においては、上記(2)のような対策が講じられていなかったからといって、上記道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえない。」と判示しています。

分かりやすく言うと、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において、

  1. 道路上での小動物との接触により、自動車の運転者が死傷する危険性は高くない
  2. 小動物の侵入を防ぐための柵を設置する費用が高額であり、一般的に採用されていない。
  3. 道路には動物注意の標識が設置されており、適切な注意が喚起されていた。

これらの事情から、道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえないと判示しています。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問19|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法が定める抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
  2. 行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
  3. 労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
  4. 市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
  5. 都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。

1・・・妥当でない

登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求をした。これに対し、登記機関が拒否処分を下した。この場合の登記機関が行った拒否処分は、行政処分に当たります最判平17.4.14)。

【詳細解説】 登録免許税を過大に納付した者」は、そのことによって当然に還付請求権を取得し、その還付がなされないときは、還付金請求訴訟を提起することができます。そして、その還付がなされない場合、判例では、「登記等を受けた者(登録免許税の過大に納付した者)が、登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。」と判示しています。

 

2.行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。

2・・・妥当でない

行政庁が建築基準法に基づいて、みなし道路(二項道路)を告示により一括して指定する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たります(最判平14.1.17)。2項道路が指定されると、その敷地所有者は当該道路につき道路内の建築等が制限されるなど具体的な私権の制限を受けることになります。そうすると、特定行政庁による2項道路(みなし道路)の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものといえます。そのため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たります

3.労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

3・・・妥当である

労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たります(最判平15.9.4)。災労働者又はその遺族は、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければなりません。そして、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得します。そうすると、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものといえます。

4.市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

4・・・妥当でない

市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません最判平11.1.21)。なぜなら、住民票に「続柄」を記載する行為は、何らかの法的効果を有するものではないからです。ちなみに、同じ判例の中で「市町村長が住民票に記載事項を記載する行為は、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関するこれらの事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であり、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するものではない」と言っています。よって、本肢は妥当ではありません。

【詳細解説】 続柄の記載がなくとも、「住民票に氏名等を記載」があれば、投票権は認められている。つまり、続柄を記載する行為は「新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するものではない」ということです。

そのため、住民票に特定の住民と世帯主との続柄がどのように記載されるかは、その者が選挙人名簿に登録されるか否かには何らの影響も及ぼさないことが明らかなので、住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たりません。

5.都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

5・・・妥当でない

都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません(最判昭57.4.22)。都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用される。しかし、これらの効果は、当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、個別具体的な処分とは言えないので、処分性を有しません。そのため、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問18|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)の準用規定に関する次の会話の下線部(ア)~(ウ)について、その正誤を判定した組合せとして、正しいものはどれか。

学生A:今日は行訴法の準用に関する規定について学ぼう。

学生B:準用については主として行訴法38条に定められているけど、他の条文でも定められているよね。まずは出訴期間について定める行訴法14条から。

学生A:行訴法14条については、(ア)無効等確認訴訟にも、その他の抗告訴訟にも準用されていない。訴訟の性質を考えれば当然のことだよ。

学生B:よし、それでは、執行停止について定める行訴法25条はどうだろう。

学生A:行訴法25条は(イ)義務付け訴訟や差止訴訟には準用されていない。でも、当事者訴訟には準用されているのが特徴だね。

学生B:なるほど、当事者訴訟にも仮の救済が用意されているんだね。最後に、第三者効について定める行訴法32条はどうだろう。

学生A:「処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する」という規定だね。(ウ)これは義務付け訴訟にも差止訴訟にも準用されている。義務付け判決や差止め判決の実効性を確保するために必要だからね。

  1. ア:正しい イ:誤り ウ:正しい
  2. ア:正しい イ:誤り ウ:誤り
  3. ア:誤り イ:正しい ウ:誤り
  4. ア:誤り イ:誤り ウ:正しい
  5. ア:誤り イ:誤り ウ:誤り

>解答と解説はこちら


【答え】:2(ア:正しい イ:誤り ウ:誤り)

【解説】

ア.(出訴期間について定める)行訴法14条については、(ア)無効等確認訴訟にも、その他の抗告訴訟にも準用されていない。訴訟の性質を考えれば当然のことだよ。

ア・・・正しい

質問されている内容は「出訴期間(行訴法14条)については、無効等確認訴訟その他の抗告訴訟にも準用されない」〇か×か?です。結論は、出訴期間(行訴法14条)については、無効等確認訴訟その他の抗告訴訟にも準用されていないので正しい〇です。 無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟すべてにおいて、取消訴訟の出訴期間の規定を準用していないです。

【詳細解説】

差止め訴訟は、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合の話なので、
ここから、「処分や裁決」に差止め訴訟は提起する必要があります。

つまり、処分が執行されてしまったら、差止め訴訟はできなきなくなります。

これが一つの期間制限ではありますが、
取消訴訟のように「〇か月以内」という制限はありません。

そういった意味で出訴制限は規定されていないということです。

義務付け訴訟は、行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらず、一定の処分がされないとき等処分が行われるに行われる訴訟です。
そのため、処分前に義務付け訴訟は提起する必要があります。

これが一つの期間制限ではありますが、
取消訴訟のように「〇か月以内」という期限はありません。

そういった意味で出訴制限は準用されていません。

無効確認訴訟については、そもそも取消訴訟の出訴期間を経過した場合でも、処分の無効を主張して抗告訴訟を提起する者に対して救済の道を与えるものです。

そのため無効等確認訴訟については、出訴期間は準用されません。

イ.(執行停止について定める)行訴法25条は(イ)義務付け訴訟や差止訴訟には準用されていない。でも、当事者訴訟には準用されているのが特徴だね。

イ・・・誤り

執行停止について定める行訴法25条は、義務付け訴訟や差止訴訟だけでなく、当事者訴訟でも準用されていません(行政事件訴訟法41条1項)。よって、誤りです。

【理解】 義務付け訴訟や差し止め訴訟は、「処分や裁決」がされる「前」に、訴訟提起します。

一方、執行停止は、すでに、「処分や裁決」がされた「後」に「執行はしないで!」と求めるものです。

よって、義務付け訴訟や差し止め訴訟については、執行停止のルールは準用されていません。

当事者訴訟は、そもそも抗告訴訟でないので、行政庁の公権力の行使に関する訴訟ではありません。そのため、執行停止を準用していません。

ウ.「処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する」という規定だね。(ウ)これは義務付け訴訟にも差止訴訟にも準用されている。義務付け判決や差止め判決の実効性を確保するために必要だからね。

ウ・・・誤り

本肢は、「第三者効は、義務付け訴訟にも差止訴訟にも準用されている」〇か×か?という質問内容です。結論は、第三者効は、義務付け訴訟にも差止訴訟にも準用されていません(行政事件訴訟法32条、38条)。よって、誤りです。

【理由】 第三者に影響しないからです。

義務付けの場合、行政庁Aに対して、ある処分をするよう義務付けをするのですが
処分をしない別の行政庁Bは関係ありません。
そのため、義務判決に第三者効はありません。

また、差し止めについても、処分をしようとしている行政庁Aがいて
このAが処分をしないようにすればよいので、
処分をしようとしていない別の行政庁Bは関係ありません。

そのため、差止判決に第三者効はありません。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問17|行政事件訴訟法

以下の事案に関する次のア~エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 Xは、A川の河川敷の自己の所有地に小屋(以下「本件小屋」という。)を建設して所有している。A川の河川管理者であるB県知事は、河川管理上の支障があるとして、河川法に基づきXに対して本件小屋の除却を命ずる処分(以下「本件処分」という。)をした。しかし、Xは撤去の必要はないとして本件処分を無視していたところ、Xが本件処分の通知書を受け取ってから約8ヵ月が経過した時点で、同知事は、本件小屋の除却のための代執行を行うため、Xに対し、行政代執行法に基づく戒告および通知(以下「本件戒告等」という。)を行った。そこでXは、代執行を阻止するために抗告訴訟を提起することを考えている。

ア.本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できる。

イ.本件戒告等の取消訴訟において、Xは、本件戒告等の違法性だけでなく、本件処分の違法性も主張できる。

ウ.Xが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはない。

エ.Xが本件戒告等の取消訴訟を提起したとしても、代執行手続が完了した後には、本件戒告等の効果が消滅したことから、当該訴訟は訴えの利益の欠如を理由に不適法として却下される。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

>解答と解説はこちら


【答え】:2(ア・エが妥当)

【解説】

令和5年・2023年、行政書士試験、問17の問題の状況を表した図

ア.本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できる。

ア・・・妥当

行政代執行法による戒告および代執行令書による通知は、処分性が認められるため、取消訴訟の対象となります(大阪高決昭40.10.5)。そのため、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できます。

イ.本件戒告等の取消訴訟において、Xは、本件戒告等の違法性だけでなく、本件処分の違法性も主張できる。

イ・・・妥当でない

戒告の取消訴訟においては、処分の違法性は主張できません。よって、妥当ではありません。そもそも、「戒告・通知」と「除去命令」は独立した別々の処分です。そのため、違法性の承継は、原則として認められないので、Xは、本件戒告等の取消訴訟において、本件処分の違法性を主張することはできません。

【簡潔にいうと】

まず、除去命令(処分)→戒告という順で行われるのですが

戒告の取消訴訟は可能です。

その場合、戒告の違法性を主張すべきであり
除去命令(処分)の違法性は主張できないということです。

これは、違法性の承継は、原則として認められないからです!

【事案:最判平21.12.17

A社は、マンション建設を計画しており、「条例に基づく安全認定(先行行政行為)」が行われた上で、「建築確認(後行行政行為)」を受けた。

■安全認定のルール

条例の41項では、一定面積以上の建築物を建築する場合、一定の幅をもった前面道路に接しなければならないという「接道義務」があった。(例えば、2800㎡の建物を建てる場合、前面道路の幅は8m以上なければならない)

さらに、条例の43項では、安全認定を受ければ、1項の接道義務を満たさなくてもよいとされていた(接道義務の免除)

【争点】 建築確認(後行行政行為)の取消訴訟において、安全認定(先行行政行為)の違法を主張することができるか?

【判例】 

そして、・・・安全認定は、建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり、建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。

手続き上の観点からすると、安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在(安全認定の存在)を速やかに知ることができるとは限らない。

そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。

したがって、安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定に違反があると主張することは許される。

【分かりやすく言うと】

安全認定は、申請者以外の人に通知することはなく、建築確認があるまで工事が行われることもないから、安全認定を争おうとする周辺住民は、安全認定の存在を知ることができるとは限らない。

このことから、周辺住民は、安全認定について、その適否を争うための手続的保障が十分与えられていない。

だから、安全認定(先行行政行為)が取り消されていなくても、建築確認(後行行政行為)の取消訴訟において、安全認定(先行行政行為)に違反があると主張することは許される。

ウ.Xが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはない。

ウ・・・妥当でない

取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6か月を経過したときは、提起することができません(行政事件訴訟法14条1項本文)。そして、「処分があったことを知った日」とは、抽象的なしり得べかりし日ではなく、「当事者が書類の交付、口頭の告知、その他の方法により処分の存在を現実に知った日を指すもの」としています(最判平14.10.24)。分かりやすく言うと、「処分があったことを知った日」とは、あいまいな日付ではなく、当事者が書類を受け取ったり、口頭で告知を受けたり、他の方法で処分の存在を実際に知った日を指します。本肢を見ると、通知書を受け取ってから約8か月が経過しているので、「処分(通知)を知ってから6か月」を経過しています。したがって、出訴期間が過ぎているので、出訴期間の徒過(期限の経過)を理由として却下されます。

エ.Xが本件戒告等の取消訴訟を提起したとしても、代執行手続が完了した後には、本件戒告等の効果が消滅したことから、当該訴訟は訴えの利益の欠如を理由に不適法として却下される。

エ・・・妥当

この問題は「最判昭48.3.6」の判例が参考になります。土地収用に基づく明渡裁決があると、一定期間内に土地を明け渡す義務が発生します。そして、いったん土地の明渡しが完了すれば、明渡裁決の効果として土地の占有者の義務はなくなります。つまり、代執行の完了(明渡し完了)をした後に、上記明渡裁決を取り消しても意味がないので、明渡裁決の取消しを求める訴えの利益は消滅します(最判昭48.3.6)。本問の事案においても、代執行手続が完了した後は、本件戒告等の効果が消滅するので、取消訴訟は訴えの利益は消滅し、不適法として却下されます。よって、妥当です。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問16|行政不服審査法

行政不服審査法が定める審査請求の手続に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 審査請求をすべき行政庁が処分庁と異なる場合、審査請求人は処分庁を経由して審査請求を行うこともできる。
  2. 審査請求は書面により行わなければならないが、行政不服審査法以外の法律や条例に口頭ですることができる旨の規定のある場合には、審査請求人は審査請求を口頭で行うことができる。
  3. 審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求の取下げをすることができ、取下げの理由に特に制限は設けられていない。
  4. 審査請求を受けた審査庁は、審査請求書に形式上の不備がある場合でも審理員を指名し、審理手続を開始しなければならず、直ちに審査請求を却下することはできない。
  5. 審査請求人から申立てがあった場合には、審理員は原則として口頭意見陳述の機会を与えなければならず、口頭意見陳述には参加人だけでなく、審理員の許可を得て補佐人も参加することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】

1.審査請求をすべき行政庁が処分庁と異なる場合、審査請求人は処分庁を経由して審査請求を行うこともできる。

1・・・正しい

(処分庁等を経由する審査請求) 審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁等を経由してすることができます(行政不服審査法21条1項前段)。よって、本肢は正しいです。

【関連ポイント1】

②審査請求について「処分庁・不作為庁」を経由した場合、処分庁等は、直ちに、審査請求書又は審査請求録取書(陳述の内容を録取した書面)を審査庁となるべき行政庁に送付しなければなりません(行政不服審査法212項)。

【関連ポイント2】

「処分庁・不作為庁」を経由した場合の審査請求期間の計算については、処分庁に「審査請求書を提出した時」、又は「処分庁に対し当該事項を陳述した時」に、処分についての審査請求があったものとみなします。つまり、審査庁となるべき行政庁に送付した時・到達した時に審査請求があったものとみなすわけではないので注意しましょう!

2.審査請求は書面により行わなければならないが、行政不服審査法以外の法律や条例に口頭ですることができる旨の規定のある場合には、審査請求人は審査請求を口頭で行うことができる。

2・・・正しい

審査請求は、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければなりません(行政不服審査法19条1項)。つまり、審査請求は、原則、書面で行い、例外として、行政不服審査法以外の法律や条例に口頭ですることができる旨の規定のある場合には、審査請求人は審査請求を口頭で行うことができるということです。

3.審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求の取下げをすることができ、取下げの理由に特に制限は設けられていない。

3・・・正しい

審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求の取下げをすることができます(行政不服審査法27条1項)。取下げの理由は、規定されていないので、どのような理由で取り下げても問題ありません。

4.審査請求を受けた審査庁は、審査請求書に形式上の不備がある場合でも審理員を指名し、審理手続を開始しなければならず、直ちに審査請求を却下することはできない。

4・・・誤り

審査請求書が審査請求書に形式上の不備がある場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければなりません(行政不服審査法23条)。つまり、本肢の「審理員を指名し、審理手続を開始しなければならない」というのは誤りです。

【関連ポイント】 審査請求人が期間内に不備を補正しない場合、審査庁は、審理手続を経ないで、裁決で、当該審査請求を却下することができます(行政不服審査法24条1項)。

5.審査請求人から申立てがあった場合には、審理員は原則として口頭意見陳述の機会を与えなければならず、口頭意見陳述には参加人だけでなく、審理員の許可を得て補佐人も参加することができる。

5・・・正しい

審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、原則、当該申立人に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければなりません(行政不服審査法31条1項本文)。この場合において、審査請求人又は参加人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができます(行政不服審査法31条3項)。よって、本肢は正しいです。

•   口頭意見陳述は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。(312項)

•   口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。(313項)

•   口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。(314項)

•   口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。(315項)

全ての審理関係人とは、審査請求人や処分庁等だけでなく、参加人も含みます。

口頭意見陳述の申立人は、処分庁等に対して質問することを認めており(5項)、その実効性を確保し、充実した審理とするため、全ての審理関係人を招集するようにしています。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問15|行政不服審査法

行政不服審査法が定める審査請求の裁決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 審査庁が不利益処分を取り消す裁決をした場合、処分庁は、当該裁決の趣旨に従い当該不利益処分を取り消さなければならない。
  2. 不利益処分につき、その根拠となった事実がないとしてこれを取り消す裁決を受けた処分庁は、事実を再調査した上で、同一の事実を根拠として同一の不利益処分を再び行うことができる。
  3. 事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、処分庁である審査庁は、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を裁決で宣言し、当該事実上の行為を撤廃又は変更する。
  4. 審査庁は、処分庁の上級行政庁または処分庁でなくとも、審査請求に対する認容裁決によって処分を変更することができるが、審査請求人の不利益に処分を変更することは許されない。
  5. 審査庁が処分庁である場合、許認可の申請に対する拒否処分を取り消す裁決は、当該申請に対する許認可処分とみなされる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】

1.審査庁が不利益処分を取り消す裁決をした場合、処分庁は、当該裁決の趣旨に従い当該不利益処分を取り消さなければならない。

1・・・妥当でない

処分(事実上の行為を除く。)についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更します(行政不服審査法46条1項前段)。そして、取消裁決をした場合、この裁決により処分は初めから効力はなかったことになります。これを「形成力」と言います。そのため、処分庁が改めて取り消す必要はありません。

2.不利益処分につき、その根拠となった事実がないとしてこれを取り消す裁決を受けた処分庁は、事実を再調査した上で、同一の事実を根拠として同一の不利益処分を再び行うことができる。

2・・・妥当でない

裁決は、関係行政庁を拘束します(行政不服審査法52条1項)。これを「拘束力」と言います。そのため、取消しの裁決を受けた処分庁は、同一の事実関係の下、同一の理由では同一の処分を反復することができません。よって、本肢は「同一の事実を根拠として同一の不利益処分を再び行うことができる」が妥当ではありません。

3.事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、処分庁である審査庁は、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を裁決で宣言し、当該事実上の行為を撤廃又は変更する。

3・・・妥当である

事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、処分庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更します(行政不服審査法47条2号)。よって、本肢は妥当です。

■事実行為(例えば、人の収容等)に関する審査請求を認容する場合
=審査請求人が正しいことを言っている
=行政庁Aが行った事実行為が不当または違法ということ

この場合、
処分庁(行政庁A)は、自ら事実行為をやめることは(撤廃することは)できます。

■一方で、
処分庁(行政庁A)以外の審査庁(例えば、上級行政庁B)の場合
自ら事実行為を行っていないので
行政庁Aに対して「事実行為をやめなさい!」と命令することができます。

この命令を受けた行政庁Aは、事実行為をやめなければなりません。

4.審査庁は、処分庁の上級行政庁または処分庁でなくとも、審査請求に対する認容裁決によって処分を変更することができるが、審査請求人の不利益に処分を変更することは許されない。

4・・・妥当でない

処分についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更します。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできません(行政不服審査法46条1項ただし書き)。本肢は「審査庁は、処分庁の上級行政庁または処分庁でなくとも・・・変更することができる」となっているので妥当ではありません。不利益にならない処分の変更もできません審査庁が「処分庁の上級行政庁」か「処分庁自身」の場合、不利益にならない処分の変更ができます

5.審査庁が処分庁である場合、許認可の申請に対する拒否処分を取り消す裁決は、当該申請に対する許認可処分とみなされる。

5・・・妥当でない

審査庁が処分庁である場合、許認可の申請に対する拒否処分を取り消す裁決は、拒否処分が取り消されただけであって、処分をしていない状態に戻るだけです。つまり、許認可処分とみなされません。

【理解と流れ】

  1. 許認可の申請をする
  2. 処分庁が拒否処分を下す
  3. 申請者が審査請求をする
  4. 審査庁が2の拒否処分を取消判決をする
  5. 2が取り消されたので、1に戻る(=申請した状態に戻る)

その後再度、処分を下すのですが、その際に、異なる理由で「拒否処分」される可能性はあります。必ずしも許認可処分を受けられるわけではありません。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略