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令和4年・2022|問46|民法 40字記述

Aは、工場を建設するために、Bから、Bが所有する甲土地(更地)を、賃貸借契約締結の日から賃借期間30年と定めて賃借した。ただし、甲土地の貸借権の登記は、現在に至るまでされていない。ところが、甲土地がBからAに引き渡される前に、甲土地に何らの権利も有しないCが、AおよびBに無断で、甲土地に塀を設置したため、Aは、甲土地に立ち入って工場の建設工事を開始することができなくなった。そこで、Aは、Bに対応を求めたが、Bは何らの対応もしないまま現在に至っている。Aが甲土地に工場の建設工事を開始するために、Aは、Cに対し、どのような請求をすることができるか。民法の規定および判例に照らし、40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら


【答え】:例1)Bの所有権に基づく妨害排除請求権を債権者代位することで、塀の除去を請求することができる。(44字)

例2)Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使し、塀の除去を請求することができる。(39字)

【解説】

Aは、工場を建設するために、Bから、Bが所有する甲土地(更地)を、賃貸借契約締結の日から賃借期間30年と定めて賃借した。ただし、甲土地の貸借権の登記は、現在に至るまでされていない。ところが、甲土地がBからAに引き渡される前に、甲土地に何らの権利も有しないCが、AおよびBに無断で、甲土地に塀を設置したため、Aは、甲土地に立ち入って工場の建設工事を開始することができなくなった。そこで、Aは、Bに対応を求めたが、Bは何らの対応もしないまま現在に至っている。Aが甲土地に工場の建設工事を開始するために、Aは、Cに対し、どのような請求をすることができるか。民法の規定および判例に照らし、40字程度で記述しなさい。

問題文の状況

行政書士試験令和4年問46の状況図です。

質問内容

Aが甲土地に工場の建設工事を開始するために、Aは、Cに対し、「どのような請求」をすることができるか。

解説

今回、塀を設置されて占有を妨害されただけで、占有を奪われた(占有された)とまでは言えないので、「妨害排除請求」ができるかを考えます。

「妨害排除請求権」は、「物権(不動産賃借権も含む)が占有以外の形で妨害されているとき、妨害の排除を請求する権利」のことです。

妨害排除請求をするための根拠となるのは、下記2つがあります。

  1. 賃借権に基づく妨害排除請求
  2. 所有権に基づく妨害排除請求

今回、Aは、工場用地を建設するために土地を借りているので、対抗要件としては「①借地権の登記」または「②借地上建物の登記」のいずれかです。

本問では、「甲土地の貸借権の登記は、現在に至るまでされていない」状況です。=未登記

また、工場は建設されていないので、②借地上建物ももちろん未登記です。

したがって、土地賃借人Aは、借地権を対抗することができません。

よって、「1の賃借権に基づく妨害排除請求」はできないです。

できることは、「2の所有権に基づく妨害排除請求」です。

判例(最判昭29.9.24)によると、
「建物の賃借人が、賃貸人たる建物所有者に代位して、建物の不法占拠者に対しその明渡を請求する場合には、直接自己に対して明渡をなすべきことを請求することができる」と判示しています。

■ここで質問内容を確認すると

「Aが甲土地に工場の建設工事を開始するために」、Aは、Cに対し、どのような請求をすることができるか?

「Aが甲土地に工場の建設工事を開始するために」、Aは、Cに対し、

Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使し、塀の除去を請求することができる。(39字)

となります。

※ 妨害排除請求の根拠規定は、民法198条(占有保持の訴え)ですが、ここには、「占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。」
と規定しており、損害賠償請求もできる旨が定められています。

今回、質問内容は、「Aが甲土地に工場の建設工事を開始するために」、Aは、Cに対し、どのような請求をすることができるか?なので

「損害賠償請求」は、不適当です。

なぜなら、「Aが甲土地に工場の建設工事を開始するための手段」として、損害賠償請求は、適していないからです。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問16|行政不服審査法

行政不服審査法が定める教示に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. 処分庁が審査請求をすることができる処分をなす場合においては、それを書面でするか、口頭でするかにかかわらず、当該処分につき不服申立てをすることができる旨その他所定の事項を書面で教示をしなければならない。
  2. 処分庁が審査請求をすることができる処分をなす場合において、処分の相手方に対し、当該処分の執行停止の申立てをすることができる旨を教示する必要はない。
  3. 処分庁は、利害関係人から、当該処分が審査請求をすることができる処分であるかどうかにつき書面による教示を求められたときは、書面で教示をしなければならない。
  4. 処分をなすに際し、処分庁が行政不服審査法において必要とされる教示をしなかった場合、当該処分に不服がある者は、当該処分庁に不服申立書を提出することができる。
  5. 審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をなす場合には、裁決書に、再審査請求をすることができる旨並びに再審査請求をすべき行政庁および再審査請求期間を記載してこれらを教示しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.処分庁が審査請求をすることができる処分をなす場合においては、それを書面でするか、口頭でするかにかかわらず、当該処分につき不服申立てをすることができる旨その他所定の事項を書面で教示をしなければならない。

1・・・妥当ではない

本肢は「口頭でするかにかかわらず」が妥当ではありません。
下記の通り、口頭の場合、教示は不要です。

行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければなりません。
ただし、当該処分を口頭でする場合は、教示は不要です(行政不服審査法82条1項)。

なぜなら、口頭で処分を行う場合、その処分は重要な処分ではないので、教示も不要としています。

2.処分庁が審査請求をすることができる処分をなす場合において、処分の相手方に対し、当該処分の執行停止の申立てをすることができる旨を教示する必要はない。

2・・・妥当

処分庁が審査請求をすることができる処分をなす場合において、処分の相手方に対し、教示すべき内容は「①当該処分につき不服申立てをすることができる旨」「②不服申立てをすべき行政庁」「③不服申立てをすることができる期間」の3つです。

「行停止の申立てをすることができる旨」は含まれていません。

よって、本肢は妥当です。

【執行停止が教示の内容になっていない理由】

執行停止は、審査請求をした後の話です。

処分をする際に、教示すべき内容は、あくまで審査請求自体の内容です(最低限しか教示しない)。

そのため、審査請求をした後の執行停止までは教示しません。

3.処分庁は、利害関係人から、当該処分が審査請求をすることができる処分であるかどうかにつき書面による教示を求められたときは、書面で教示をしなければならない。

3・・・妥当

行政庁は、利害関係人から、「①当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか」並びに「②当該処分が不服申立てをすることができるものである場合における不服申立てをすべき行政庁」及び「③不服申立てをすることができる期間」につき教示を求められたときは、当該事項を教示しなければなりません(行政不服審査法82条2項)。

そして、上記教示を求めた者が書面による教示を求めたときは、当該教示は、書面でしなければなりません(行政不服審査法82条3項)。

したがって、「処分庁は、利害関係人から、当該処分が審査請求をすることができる処分であるかどうかにつき書面による教示を求められたときは、書面で教示をしなければならない」ので妥当です。

ちなみに、「利害関係人」とは、「処分を受けた者」や「処分について利害関係を有する第三者」です。

4.処分をなすに際し、処分庁が行政不服審査法において必要とされる教示をしなかった場合、当該処分に不服がある者は、当該処分庁に不服申立書を提出することができる。

4・・・妥当

行政庁が前条の規定による教示をしなかった場合には、当該処分について不服がある者は、当該処分庁に不服申立書を提出することができます(行政不服審査法83条1項)。

行政庁が教示をしなかった場合には、行政庁が悪いので、それによって、不服申立人が不利益をこうむるのは、酷です。そのため、不服申立人が、処分庁に対して不服申立書を提出してもよいことになっています。

5.審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をなす場合には、裁決書に、再審査請求をすることができる旨並びに再審査請求をすべき行政庁および再審査請求期間を記載してこれらを教示しなければならない。

5・・・妥当

審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に「①再審査請求をすることができる旨」並びに「②再審査請求をすべき行政庁」及び「③再審査請求期間」を記載して、これらを教示しなければなりません(行政不服審査法50条3項)。

再審査請求ができる場合、審査庁が裁決書に、教示内容を記載して、審査請求人に教示するということです。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問45|民法 40字記述

Aが所有する甲不動産について、Aの配偶者であるBが、Aから何ら代理権を与えられていないにもかかわらず、Aの代理人と称して甲不動産をCに売却する旨の本件売買契約を締結した後、Bが死亡してAが単独で相続するに至った。CがAに対して、売主として本件売買契約を履行するよう求めた場合に、Aは、これを拒みたいと考えているが、認められるか。民法の規定および判例に照らし、その許否につき理由を付して40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら


【答え】:Aは、Bの無権代理行為について追認拒絶しても信義則に反しないから、履行を拒絶ができる。(43文字)

【解説】

Aが所有する甲不動産について、Aの配偶者であるBが、Aから何ら代理権を与えられていないにもかかわらず、Aの代理人と称して甲不動産をCに売却する旨の本件売買契約を締結した後、Bが死亡してAが単独で相続するに至った。CがAに対して、売主として本件売買契約を履行するよう求めた場合に、Aは、これを拒みたいと考えているが、認められるか。民法の規定および判例に照らし、その許否につき理由を付して40字程度で記述しなさい。

問題文の状況

行政書士:令和4年問45の状況図です。

質問内容

①Aは、これを拒みたいと考えているが、認められるか?
②その理由は?

解説1.配偶者が行った行為は無権代理行為といえるか?

まず、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う(民法761条本文)」と規定しています。

これは、「夫婦は相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有する」ということです。

では、「日常の家事に関する法律行為」とは、どの範囲までをいうか?

判例(最判昭44.12.18)によると

「日常の家事に関する法律行為の具体的な範囲は、個々の夫婦によって異なるが、単に夫婦の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的に、その法律行為の種類、性質等をも十分に考慮して判断すべきとして、・・・不動産の売買契約締結の当時、被上告人が訴外Aに対しその売買契約を締結する代理権またはその他の何らかの代理権を授与していた事実は認められない、」と判示しています。

つまり、不動産の売買契約は「日常の家事に関する法律行為」にはあたりません。

したがって、Aの配偶者であるBが行った、A所有の甲不動産の売却行為は、無権代理行為と分かります。

解説2.無権代理人が死亡して、本人が単独相続した場合どうなるか?

無権代理人が死亡して、本人が単独相続した場合について、
判例(最判昭37.4.20)では、「相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当」と判示しています。

つまり、「AはBの行為の追認を拒絶でき」、その理由は「何ら信義に反しないから」です。

これを、40字程度でまとめると、次の通りです。

Aは、Bの無権代理行為について追認拒絶しても信義則に反しないから、履行を拒絶ができる。(43文字)


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問15|行政不服審査法

審理員に関する行政不服審査法の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 審理員は、審査請求がされた行政庁が、審査請求の対象とされた処分の処分庁または不作為庁に所属する職員から指名する。
  2. 審理員は、職権により、物件の所持人に対し物件の提出を求めた上で、提出された当該物件を留め置くことができる。
  3. 審理員は、審査請求人または参加人の申立てがなければ、必要な場所についての検証をすることはできない。
  4. 審理員は、審査請求人または参加人の申立てがなければ、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することはできない。
  5. 審理員は、数個の審査請求に係る審理手続を併合することはできるが、ひとたび併合された審査請求に係る審理手続を分離することはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.審理員は、審査請求がされた行政庁が、審査請求の対象とされた処分の処分庁または不作為庁に所属する職員から指名する。

1・・・妥当ではない

審査庁は、審査庁に所属する職員のうちから審理手続を行う者を指名します(行政不服審査法9条1項)。

審査庁は、「処分庁または不作為庁」ではなく、上級行政庁の場合もあります。

その場合、「上級行政庁」に所属するのうちから審理員を指名するので、本肢の「審査請求の対象とされた処分の処分庁または不作為庁に所属する職員から指名する」というのは妥当ではありません。

※ ちなみに、「審査請求に係る処分に関与した者」は、審理員となることができません(行政不服審査法9条2項1号)。

2.審理員は、職権により、物件の所持人に対し物件の提出を求めた上で、提出された当該物件を留め置くことができる。

2・・・妥当

審理員は、「審査請求人・参加人の申立て」により又は「職権」で、書類その他の物件の所持人に対し、相当の期間を定めて、その物件の提出を求めることができます。物件の提出を求めた上で、審理員は、その提出された物件を留め置くことができます(行政不服審査法33条)。

よって、妥当です。

3.審理員は、審査請求人または参加人の申立てがなければ、必要な場所についての検証をすることはできない。

3・・・妥当ではない

審理員は、「審査請求人・参加人の申立て」により又は「職権」で、必要な場所につき、検証をすることができます(行政不服審査法35条)。

つまり、「審査請求人または参加人の申立てがなければ、検証できない」というわけではありません。

「職権」でも検証は可能です。

4.審理員は、審査請求人または参加人の申立てがなければ、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することはできない。

4・・・妥当ではない

審理員は、「審査請求人・参加人の申立て」により又は「職権」で、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することができます(行政不服審査法36条)。

つまり、「審査請求人または参加人の申立てがなければ、審理関係人に質問することはできない」というわけではありません。

「職権」でも審理関係人に質問することは可能です。

5.審理員は、数個の審査請求に係る審理手続を併合することはできるが、ひとたび併合された審査請求に係る審理手続を分離することはできない。

5・・・妥当ではない

本肢は「ひとたび併合された審査請求に係る審理手続を分離することはできない」としているので妥当でない。

審理員は、必要があると認める場合には、数個の審査請求に係る審理手続を併合し、又は併合された数個の審査請求に係る審理手続を分離することができます(行政不服審査法39条)。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問44|行政法 40字記述

開発事業者であるAは、建築基準法に基づき、B市建築主事から建築確認を受けて、マンションの建築工事を行い、工事完成後、Aは当該マンションの建物につき、検査の上、検査済証の交付を受けた。これに対して、当該マンションの隣地に居住するXらは、当該マンションの建築計画は建築基準法令に適合せず、建築確認は違法であり、当該マンションも、そのような建築計画に沿って建てられたものであるから違法であって、当該マンションの建物に火災その他の災害が発生した場合、建物が倒壊、炎上することにより、Xらの身体の安全や家屋に甚大な被害が生ずるおそれがあるとして、建築基準法に基づき違反建築物の是正命令を発出するよう、特定行政庁であるB市長に申し入れた。しかしながら、B市長は、当該建築確認および当該マンションの建物に違法な点はないとして、これを拒否することとし、その旨を通知した。

このようなB市長の対応を受け、Xらは、行政事件訴訟法の定める抗告訴訟を提起することにした。この場合において、①誰を被告として、②前記のような被害を受けるおそれがあることにつき、同法の定める訴訟要件として、当該是正命令がなされないことにより、どのような影響を生ずるおそれがあるものと主張し(同法の条文の表現を踏まえて記すこと。)、③どのような訴訟を起こすことが適切か。40字程度で記述しなさい。

(参照条文)
建築基準法
(違反建築物に対する措置)
第9条
特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:B市を被告として、重大な損害が生ずるおそれがあると主張し、義務付けの訴えを提起する。(42文字)※ 「義務付け訴訟」でもよい

【解説】

開発事業者であるAは、建築基準法に基づき、B市建築主事から建築確認を受けて、マンションの建築工事を行い、工事完成後、Aは当該マンションの建物につき、検査の上、検査済証の交付を受けた。これに対して、当該マンションの隣地に居住するXらは、当該マンションの建築計画は建築基準法令に適合せず、建築確認は違法であり、当該マンションも、そのような建築計画に沿って建てられたものであるから違法であって、当該マンションの建物に火災その他の災害が発生した場合、建物が倒壊、炎上することにより、Xらの身体の安全や家屋に甚大な被害が生ずるおそれがあるとして、建築基準法に基づき違反建築物の是正命令を発出するよう、特定行政庁であるB市長に申し入れた。しかしながら、B市長は、当該建築確認および当該マンションの建物に違法な点はないとして、これを拒否することとし、その旨を通知した。

このようなB市長の対応を受け、Xらは、行政事件訴訟法の定める抗告訴訟を提起することにした。この場合において、①誰を被告として、②前記のような被害を受けるおそれがあることにつき、同法の定める訴訟要件として、当該是正命令がなされないことにより、どのような影響を生ずるおそれがあるものと主張し(同法の条文の表現を踏まえて記すこと。)、③どのような訴訟を起こすことが適切か。40字程度で記述しなさい。

問題文の状況

(1)開発事業者であるAは、建築基準法に基づき、B市建築主事から建築確認を受けて、マンションの建築工事を行い、工事完成後、Aは当該マンションの建物につき、検査の上、検査済証の交付を受けた。
【開発業者A / B市建築主事(建築確認を行った者)】

(2)上記建築確認について、隣地住民Xらは、建築確認は違法であり、当該マンションの建物に火災その他の災害が発生した場合、建物が倒壊、炎上することにより、Xらの身体の安全や家屋に甚大な被害が生ずるおそれがあるとして、建築基準法に基づき違反建築物の是正命令を発出するよう、B市長に申し入れた。

(3)しかし、B市長は、違法はないとして、隣地住民Xらの申し入れを拒否し、その旨を通知した。

(4)このようなB市長の対応を受け、Xらは、行政事件訴訟法の定める抗告訴訟を提起することにした。

質問内容

①誰を被告として、②前記のような被害を受けるおそれがあることにつき、同法の定める訴訟要件として、当該是正命令がなされないことにより、どのような影響を生ずるおそれがあるものと主張し(同法の条文の表現を踏まえて記すこと。)、③どのような訴訟を起こすことが適切か

解説

③どのような訴訟を起こすことが適切か

まず、③どのような訴訟を起こすことが適切かを考えます。

訴訟類型を確定させれば、そこから詳細な要件や手続を確定させることができます。

そもそも、隣地住民Xらは「建築基準法に基づき違反建築物の是正命令を発出するよう、B市長に申し入れ」ています。これは、是正命令を出すべきであるにも関わらず、市長が是正命令を出していないから、上記申し入れをしているわけです。

これを訴訟として争う場合「(非申請型)義務付け訴訟」となります。

行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう(行政事件訴訟法3条6項1号)。

誰を被告とするか

行政事件訴訟法では、被告は「行政主体」です。
したがって、「B市」を被告とします。

どのような影響を生ずるおそれがあるものと主張し(同法の条文の表現を踏まえて記すこと。)

「条文の表現を踏まえて記すこと」という部分から、義務付け訴訟の要件から考えます。

義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる(行政事件訴訟法37条の2第1項)。

「影響」については「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」の法なので、これを使います。

「一定の処分」とは「是正命令」です。

上記をまとめると

B市に対して、是正命令が出されないことにより重大な損害を生ずるおそれがあると主張し、義務付けの訴えを提起する。(55字)

これでは長いので、「是正命令が出されないことにより」を省略します。

B市を被告として、重大な損害が生ずるおそれがあると主張し、義務付けの訴えを提起する。(42文字)

【補足:取消訴訟ができない理由】

理由は、訴えの利益が消滅しているからです。

そもそも、取消しようとしている処分は「建築確認」です。

そして、建物はすでに建築済であるため、建築確認を取り消すという訴えの利益はすでに消滅しています。

そのため、取消訴訟はできないです。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問14|行政不服審査法

行政不服審査法の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に審査請求をすることができる場合には、行政不服審査法の定める例外を除き、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。
  2. 行政不服審査法に基づく審査請求を審理した審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書を作成し、速やかに、これを事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない。
  3. 法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていないと思料する者は、行政不服審査法に基づく審査請求によって、当該処分をすることを求めることができる。
  4. 法令に違反する行為の是正を求める行政指導の相手方は、当該行政指導が違法なものであると思料するときは、行政不服審査法に基づく審査請求によって、当該行政指導の中止を求めることができる。
  5. 地方公共団体の機関がする処分であってその根拠となる規定が条例に置かれているものにも行政不服審査法が適用されるため、そのような処分についての審査請求がされた行政庁は、原則として総務省に置かれた行政不服審査会に諮問をしなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に審査請求をすることができる場合には、行政不服審査法の定める例外を除き、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。

1・・・妥当ではない

行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができます
ただし、当該処分について審査請求をしたときは、再調査請求ができません(行政不服審査法5条)。

したがって、本肢は「行政不服審査法の定める例外を除き、処分庁に対して再調査の請求をすることができる」が妥当ではありません。

「行政不服審査法の定める例外」とは、審査請求をした場合ですが、それ以外であっても、再調査の請求が出来ない場合があります。

それは、そもそも法律で、再調査の請求ができる旨の規定がない場合です。

この場合、再調査の請求ができません。

2.行政不服審査法に基づく審査請求を審理した審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書を作成し、速やかに、これを事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない。

2・・・妥当

審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書(審理員意見書)を作成しなければならず(行政不服審査法42条1項)、審理員意見書を作成したときは、速やかに、これを事件記録とともに、審査庁に提出しなければなりません(行政不服審査法42条2項)。

よって、本肢は妥当です。

3.法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていないと思料する者は、行政不服審査法に基づく審査請求によって、当該処分をすることを求めることができる。

3・・・妥当ではない

「行政不服審査法に基づく審査請求によって」が妥当ではありません。
本肢の場合、審査請求はできません。できることは「処分を求めること」です。

審査請求の中で、処分を求めるわけではありません。

審査請求とは別に、処分を求めます。

何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる(行政手続法36条の3第1項)。

4.法令に違反する行為の是正を求める行政指導の相手方は、当該行政指導が違法なものであると思料するときは、行政不服審査法に基づく審査請求によって、当該行政指導の中止を求めることができる。

4・・・妥当ではない

「行政不服審査法に基づく審査請求によって」が妥当ではありません。
本肢の場合、「行政不服審査法に基づく審査請求」はできません。できることは「行政手続法に基づき、行政指導の中止を求めること」です。

審査請求の中で、行政指導の中止を求めるわけではありません。

審査請求とは別に、「行政手続法36条の2に基づいて、行政指導の中止」をすることを求めます。

(行政指導の中止等の求め)
法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。(行政手続法36条の2第1項)

5.地方公共団体の機関がする処分であってその根拠となる規定が条例に置かれているものにも行政不服審査法が適用されるため、そのような処分についての審査請求がされた行政庁は、原則として総務省に置かれた行政不服審査会に諮問をしなければならない。

5・・・妥当ではない

「原則として総務省に置かれた行政不服審査会に諮問をしなければならない」という部分が妥当ではありません。

地方公共団体「総務省(国)の行政不服審査会」に諮問するのではなく、地方公共団体に置かれる執行機関の附属機関(例えば、●●市行政不服審査会:行政不服審査法81条1項)に対して諮問します。

ちなみに、行政不服審査法では、国の機関が行う処分に限らず、地方公共団体の機関が行う処分についても、その根拠が法律にあるか、条例にあるかを問わず、原則として行政不服審査法の規定が適用されます。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問43|行政法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

国家補償制度は、国家賠償と損失補償によって構成されるが、両者のいずれによっても救済されない問題が存在する。公務員の[ ア ]の違法行為による被害は、国家賠償法の救済の対象とはならず、他方、憲法29条3項によって求められる損失補償は、[ イ ]以外の権利利益についての被害には及ばないと考えられるからである。この救済の空白地帯は「国家補償の谷間」と呼ばれている。

「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ ]解釈によって、救済を図ろうとする。

これに対して、国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア ]とされる可能性が残る。この点について、最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[ エ ]することで、実質的に、自らが[ ア ]であることの立証貢任を国側に負わせることで救済を図った。

1: 自由裁量 2:合憲限定 3:生存権 4:無過失 5:正当な補償 6:文理 7:証明 8:緊急避難 9:重過失 10:特別の犠牲 11:推定 12:職務外 13:決定 14:事実行為 15:財産権 16:確定 17:反対 18:憲法上の権利 19:償うことのできない損害 20:勿論

>解答と解説はこちら


【答え】:ア:無過失 イ:財産権 ウ:勿論 エ:推定

【解説】

国家補償制度は、国家賠償と損失補償によって構成されるが、両者のいずれによっても救済されない問題が存在する。公務員の[ ア:無過失 ]の違法行為による被害は、国家賠償法の救済の対象とはならず、他方、憲法29条3項によって求められる損失補償は、[ イ:財産権 ]以外の権利利益についての被害には及ばないと考えられるからである。この救済の空白地帯は「国家補償の谷間」と呼ばれている。

「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ:財産権 ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ:勿論 ]解釈によって、救済を図ろうとする。

これに対して、国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア:無過失 ]とされる可能性が残る。この点について、最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[ エ:推定 ]することで、実質的に、自らが[ ア:無過失 ]であることの立証貢任を国側に負わせることで救済を図った。

国家補償制度は、国家賠償と損失補償によって構成されるが、両者のいずれによっても救済されない問題が存在する。公務員の[ ア ]の違法行為による被害は、国家賠償法の救済の対象とはならず、・・・国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア ]とされる可能性が残る。

ア・・・無過失

国又は公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、賠償責任を負う(国家賠償法1条)。

ここから、国家賠償法の救済の対象とはならないのは、公務員が「無過失」で行った違法行為と判断できます。

また、後半部分「国家賠償による救済のアプローチをとる場合~」を見ると、
「予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難」
だから、「医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア:無過失 ]とされる可能性が残る」
となります。

他方、憲法29条3項によって求められる損失補償は、[ イ ]以外の権利利益についての被害には及ばないと考えられるからである。この救済の空白地帯は「国家補償の谷間」と呼ばれている。・・・

「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ ]解釈によって、救済を図ろうとする。

イ・・・財産権

私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる(憲法29条3項)。

憲法29条3項が「財産権」に関する規定なので、この条文を覚えていれば、ここから「財産権」と判断してもよいです。

一方、上記を覚えていなくても、
キーとなる文章である
「[ イ ]以外の権利利益」と「[ イ ]よりも重要な利益である生命・身体の利益」
から判断する方法もあります。

ここから、イには「財産権」が入ることを推測します。

「財産」と「生命・身体」を比べたら、もちろん、「生命・身体」の方が重要です。

「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ:財産権 ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ ]解釈によって、救済を図ろうとする。

ウ・・・勿論

憲法29条3項に規定する損失補償の対象は「財産権」ですが、それよりも重要な「生命・身体の利益」は、もちろん解釈によって(=当然)に損失補償の対象として救済が図られます。

よって、ウには「勿論(もちろん)」が入ります。

「勿論解釈」とは、法制定の沿革・意義・目的を考えて、法に書かれていなくても、類似する事項と同様に適用することが当然であるとする解釈方法です。

最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[エ:推定]することで、実質的に、自らが[ア:無過失]であることの立証貢任を国側に負わせることで救済を図った。

国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア:無過失 ]とされる可能性が残る。この点について、最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[ エ ]することで、実質的に、自らが[ ア:無過失 ]であることの立証貢任を国側に負わせることで救済を図った。

エ・・・推定

判例(最判昭51.9.30)では、
「適切な問診を尽さなかったため、 接種対象者の症状、疾病その他異常な身体的条件及び体質的素因を認識することができず、禁忌すべき者の識別判断を誤って予防接種を実施した場合において、予防接種の異常な副反応により接種対象者が死亡又は罹病したときには、担当医師は接種に際し右結果を予見しえたものであるのに過誤により予見しなかったものと推定するのが相当である。」と判示しています。

「推定」なので、反証があれば、担当医師の過失を覆す(くつがえす)ことができます。

つまり、国側が無過失を証明できれば、無過失となるわけです。

したがって、実質的に、「自らが無過失であること」の立証貢任を国側に負わせることで、被害者の救済を図っています。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問13|行政手続法

行政手続法(以下、本問において「法」という。)が定める届出に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 届出は、法の定めによれば、「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為」であるが、「申請に該当するものを除く」という限定が付されている。
  2. 届出は、法の定めによれば、「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為」であるが、「事前になされるものに限る」という限定が付されている。
  3. 届出は、法の定めによれば、「法令により直接に当該通知が義務付けられているもの」であるが、「自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを除く」という限定が付されている。
  4. 法令に定められた届出書の記載事項に不備があるか否かにかかわらず、届出が法令によりその提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとされる。
  5. 届出書に法令上必要とされる書類が添付されていない場合、事後に補正が求められることにはなるものの、当該届出が法令によりその提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務自体は履行されたものとされる。

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【答え】:1

【解説】

1.届出は、法の定めによれば、「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為」であるが、「申請に該当するものを除く」という限定が付されている。

1・・・妥当

「届出」とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいいます(行政手続法2条7号)。

「申請に該当するものを除く」となっているので、本肢は妥当です。

2.届出は、法の定めによれば、「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為」であるが、「事前になされるものに限る」という限定が付されている。

2・・・妥当ではない

下記の通り、届出は、法(行政手続法)の定めによれば、「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為」であるという記述は妥当です。

一方、後半部分の『「事前になされるものに限る」という限定が付されている』が妥当ではありません。

そのような規定はないです。

「届出」とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいいます(行政手続法2条7号)。

3.届出は、法の定めによれば、「法令により直接に当該通知が義務付けられているもの」であるが、「自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを除く」という限定が付されている。

3・・・妥当ではない

下記の通り、届出は、法(行政手続法)の定めによれば、「法令により直接に当該通知が義務付けられているもの」であるという記述は妥当です。

一方、後半部分の「自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを除く」としている点が妥当ではありません。

「除く」ではなく「含む」である。

「届出」とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいいます(行政手続法2条7号)。

4.法令に定められた届出書の記載事項に不備があるか否かにかかわらず、届出が法令によりその提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとされる。

4・・・妥当ではない

本肢は、「不備があるか否かにかかわらず」という点が妥当ではありません。

下記の通り、届出をすべき手続上の義務が履行されたものとされるのは、「届出が届出書の記載事項に不備がないこと」が要件とされています。

届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする(行政手続法37条)。

5.届出書に法令上必要とされる書類が添付されていない場合、事後に補正が求められることにはなるものの、当該届出が法令によりその提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務自体は履行されたものとされる。

5・・・妥当ではない

本肢は、「届出書に法令上必要とされる書類が添付されていない場合、事後に補正が求められることにはなる」が妥当ではありません。

このようなルールは行政手続法に規定されていません。

規定されている内容は、下記内容です。

届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする(行政手続法37条)。

令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問42|行政法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)に基づき、行政機関の長に対して、当該行政機関が保有する[ ア ]の開示が請求された場合、当該行政機関の長は、当該[ ア ]の開示又は不開示の決定(開示決定等)をしなければならない。

開示決定等は、行政手続法上の[ イ ]であるから、同法の定めによれば、当該行政機関の長は、不開示決定(部分開示決定を含む。)をする場合、原則として、開示請求者に対し、同時に、当該決定の[ ウ ]を示さなければならない。

開示決定等に不服がある者は、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は、原則として、[ エ ]に諮問しなければならない(当該行政機関の長が会計検査院長である場合を除く)。[ エ ]は、必要があると認めるときは、諮問をした行政機関の長(諮問庁)に対し、[ ア ]の提示を求めることができ、諮問庁は、これを拒むことができない。この審査請求においては、処分庁は、当初に示された[ ウ ]と異なる[ ウ ]を主張することもできる。

1: 届出に対する処分 2:個人情報保護委員会 3:情報公開・個人情報保護審査会 4:裁量処分 5:公文書 6:理由 7:行政情報 8:行政不服審査会 9:解釈基準 10:不利益処分 11:申請に対する処分 12:裁量基準 13:国地方係争処理委員会 14:行政文書ファイル 15:審査基準 16:公情報 17:授益的処分 18:処分基準 19:行政文書 20:情報公開委員会

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【答え】:ア:行政文書 イ:申請に対する処分 ウ:理由 エ:情報公開・個人情報保護審査会

【解説】

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)に基づき、行政機関の長に対して、当該行政機関が保有する[ ア:行政文書 ]の開示が請求された場合、当該行政機関の長は、当該[ ア:行政文書 ]の開示又は不開示の決定(開示決定等)をしなければならない。開示決定等は、行政手続法上の[ イ:申請に対する処分 ]であるから、同法の定めによれば、当該行政機関の長は、不開示決定(部分開示決定を含む。)をする場合、原則として、開示請求者に対し、同時に、当該決定の[ ウ:理由 ]を示さなければならない。

開示決定等に不服がある者は、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は、原則として、[ エ:情報公開・個人情報保護審査会 ]に諮問しなければならない(当該行政機関の長が会計検査院長である場合を除く)。[ エ:情報公開・個人情報保護審査会 ]は、必要があると認めるときは、諮問をした行政機関の長(諮問庁)に対し、[ ア:行政文書 ]の提示を求めることができ、諮問庁は、これを拒むことができない。この審査請求においては、処分庁は、当初に示された[ ウ:理由 ]と異なる[ ウ:理由 ]を主張することもできる。

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)に基づき、行政機関の長に対して、当該行政機関が保有する[ ア ]の開示が請求された場合、当該行政機関の長は、当該[ ア ]の開示又は不開示の決定(開示決定等)をしなければならない。

ア・・・行政文書

何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる(行政機関情報公開法第3条:開示請求権)。

行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない(行政機関情報公開法第5条:行政文書の開示義務)。

つまり、アには「行政文書」が入ります。

開示決定等は、行政手続法上の[ イ ]であるから、同法の定めによれば、当該行政機関の長は、不開示決定(部分開示決定を含む。)をする場合、原則として、開示請求者に対し、同時に、当該決定の[ ウ ]を示さなければならない。

イ・・・申請に対する処分

「申請」とは、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう(行政手続法2条3号)。

開示決定は、法令(行政機関情報公開法)に基づき、「自己(請求者)に対し何らかの利益を付与する処分」を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答(開示決定or不開示決定)をすべきこととされています。

つまり、これは行政手続法上の「申請に対する処分」に当たります。

開示決定等は、行政手続法上の[ イ:申請に対する処分 ]であるから、同法の定めによれば、当該行政機関の長は、不開示決定(部分開示決定を含む。)をする場合、原則として、開示請求者に対し、同時に、当該決定の[ ウ ]を示さなければならない。

ウ・・・理由

行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分(ここでいう不開示決定)をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない(行政手続法8条1項)。

つまり、ウには「理由」が入ります。

開示決定等に不服がある者は、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は、原則として、[ エ ]に諮問しなければならない(当該行政機関の長が会計検査院長である場合を除く)。[ エ ]は、必要があると認めるときは、諮問をした行政機関の長(諮問庁)に対し、[ ア ]の提示を求めることができ、諮問庁は、これを拒むことができない。この審査請求においては、処分庁は、当初に示された[ ウ ]と異なる[ ウ ]を主張することもできる。

エ・・・情報公開・個人情報保護審査会

開示決定等又は開示請求に係る不作為について審査請求があったときは、当該審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は、情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならない(行政機関情報公開法19条1項)。

「開示決定等」又は「開示請求に係る不作為」について審査請求に関する諮問先は「情報公開・個人情報保護審査会」であることは覚えておきましょう!


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問12|行政手続法

行政手続法(以下、本問において「法」という。)が定める不利益処分の手続に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 申請拒否処分は、申請により求められた許認可等を拒否するものとして、法の定義上、不利益処分に該当するので、それを行うにあたっては、申請者に対して意見陳述の機会を与えなければならない。
  2. 行政庁は、不利益処分がされないことにより権利を害されるおそれがある第三者がいると認めるときは、必要に応じ、その意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。
  3. 弁明の機会の付与は、処分を行うため意見陳述を要する場合で、聴聞によるべきものとして法が列挙している場合のいずれにも該当しないときに行われ、弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書の提出により行われる。
  4. 法が定める「聴聞」の節の規定に基づく処分またはその不作為に不服がある場合は、それについて行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。
  5. 聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰するが、聴聞を主宰することができない者について、法はその定めを政令に委任している。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.申請拒否処分は、申請により求められた許認可等を拒否するものとして、法の定義上、不利益処分に該当するので、それを行うにあたっては、申請者に対して意見陳述の機会を与えなければならない。

1・・・妥当ではない

申請拒否処分は、法の定義上、「不利益処分の定義」から除外されています。
よって、妥当ではないです。

もちろん、申請拒否処分は不利益処分に当たらないので、意見陳述の機会を与える必要もありません。

申請拒否処分が、行政手続法上、何と呼ばれるかは定義されていませんが「不利益処分ではなく」「申請に対する処分」に該当することは頭にいれておきましょう!

【注意】 

意見陳述の機会(聴聞・弁明の機会付与)は、不利益処分を行う前に行う手続きです。

2.行政庁は、不利益処分がされないことにより権利を害されるおそれがある第三者がいると認めるときは、必要に応じ、その意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。

2・・・妥当ではない

公聴会の開催は、「申請に対する処分」において、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされている場合に行う手続です(行政手続法10条)。

「不利益処分」を行う場合の手続きではないので、妥当ではありません。

不利益処分を行う前に行う手続きは「意見陳述の機会(聴聞・弁明の機会付与」です。

3.弁明の機会の付与は、処分を行うため意見陳述を要する場合で、聴聞によるべきものとして法が列挙している場合のいずれにも該当しないときに行われ、弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書の提出により行われる。

3・・・妥当

行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、下記1~4までの4つのいずれに該当する場合は、聴聞手続を執らなければなりません(行政手続法13条1項)。

  1. 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
  2. 1に規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
  3. 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
  4. 1から3までに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。

一方、上記以外のいずれにも該当しないときは「弁明の機会の付与」の手続を執らなければなりません(行政手続法13条2項)。

そして、弁明の機会の付与手続は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書の提出により行われます(行政手続法29条1項)。

よって、妥当です。

【3の名宛人について】

「名あて人」は、行政手続法上の不利益処分の対象となる者です。

①法人の役員の解任を命ずる不利益処分
名あて人:法人
→ 処分の対象者は法人であり、処分の内容としてはその法人の役員(個人)に対する解任命令がなされる。

②法人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分
名あて人:法人
→ 処分の対象者は法人であり、処分の内容としてはその法人の従業者(個人)に対する解任命令がなされる。

③法人の会員の除名を命ずる不利益処分
名あて人:法人
→ 処分の対象者は法人であり、処分の内容としてはその法人の会員(個人や法人)に対する除名命令がなされる。

という内容です!

4.法が定める「聴聞」の節の規定に基づく処分またはその不作為に不服がある場合は、それについて行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。

4・・・妥当ではない

「聴聞」の節の規定に基づく処分またはその不作為に不服がある場合は、それについて行政不服審査法に基づく審査請求をすることができません(行政手続法27条)。

【具体例】

例えば、下記場合は、「聴聞」の節の規定に基づく処分・不作為なので、行政不服審査法に基づく審査請求はできません。

  • 聴聞において、主宰者が関係人の参加を不許可処分した場合(行政手続法17条1項)
  • 行政庁が文書の閲覧請求を拒否処分した場合(行政手続法18条1項)
  • 主宰者が補佐人の出頭を不許可処分した場合(行政手続法20条3項)
5.聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰するが、聴聞を主宰することができない者について、法はその定めを政令に委任している。

5・・・妥当ではない

「聴聞を主宰することができない者について、法はその定めを政令に委任している」という部分が妥当ではありません。

聴聞主宰者の欠格事由は、行政手続法19条2項で直接定められており、政令に委任していません。

次の各号のいずれかに該当する者は、聴聞を主宰することができない(行政手続法19条2項)。

  1. 当該聴聞の当事者又は参加人
  2. 前号に規定する者の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
  3. 第1号に規定する者の代理人又は次条第3項に規定する補佐人
  4. 前3号に規定する者であった者
  5. 第1号に規定する者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
  6. 参加人以外の関係人


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略