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令和4年・2022|問41|憲法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

[ ア ]の争訟は、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られるとする当審の判例(引用略)に照らし、地方議会議員に対する出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが、①②の要件を満たす以上、[ ア ]の争訟に当たることは明らかであると思われる。

[ ア ]の争訟については、憲法32条により国民に裁判を受ける権利が保障されており、また、[ ア ]の争訟について裁判を行うことは、憲法76条1項により司法権に課せられた義務であるから、本来、司法権を行使しないことは許されないはずであり、司法権に対する[ イ ]制約があるとして司法審査の対象外とするのは、かかる例外を正当化する[ ウ ]の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。

国会については、国権の最高機関(憲法41条)としての[ エ ]を憲法が尊重していることは明確であり、憲法自身が議員の資格争訟の裁判権を議院に付与し(憲法55条)、議員が議院で行った演説、討論又は表決についての院外での免責規定を設けている(憲法51条)。しかし、地方議会については、憲法55条や51条のような規定は設けられておらず、憲法は、[ エ ]の点において、国会と地方議会を同視していないことは明らかである。

(最大判令和2年11月25日民集74巻8号2229頁、宇賀克也裁判官補足意見)

1:法令上 2:一般的 3:公法上 4:地位 5:自律性 6:訴訟法上 7:外在的 8:必然的 9:公益上 10:法律上 11:独立性 12:社会的 13:慣習法上 14:権能 15:私法上 16公共性 16:偶然的 17:実体法上 18:判例法上 19:憲法上

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【答え】:ア:法律上 イ:外在的 ウ:憲法上 エ:自律性

【解説】

ア:法律上 ]の争訟は、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られるとする当審の判例(引用略)に照らし、地方議会議員に対する出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが、①②の要件を満たす以上、[ ア:法律上 ]の争訟に当たることは明らかであると思われる。

ア:法律上 ]の争訟については、憲法32条により国民に裁判を受ける権利が保障されており、また、[ ア:法律上 ]の争訟について裁判を行うことは、憲法76条1項により司法権に課せられた義務であるから、本来、司法権を行使しないことは許されないはずであり、司法権に対する[ イ:外在的 ]制約があるとして司法審査の対象外とするのは、かかる例外を正当化する[ ウ:憲法上 ]の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。

国会については、国権の最高機関(憲法41条)としての[ エ:自律性 ]を憲法が尊重していることは明確であり、憲法自身が議員の資格争訟の裁判権を議院に付与し(憲法55条)、議員が議院で行った演説、討論又は表決についての院外での免責規定を設けている(憲法51条)。しかし、地方議会については、憲法55条や51条のような規定は設けられておらず、憲法は、[ エ:自律性 ]の点において、国会と地方議会を同視していないことは明らかである。

[ ア ]の争訟は、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られるとする当審の判例(引用略)に照らし、地方議会議員に対する出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが、①②の要件を満たす以上、[ ア ]の争訟に当たることは明らかであると思われる。

[ ア ]の争訟については、憲法32条により国民に裁判を受ける権利が保障されており、また、[ ア ]の争訟について裁判を行うことは、憲法76条1項により司法権に課せられた義務である

ア・・・法律上

裁判所法3条(裁判所の権限) 
1項 裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。

判例(最判昭56.4.7:板まんだら事件)によると、『裁判所が司法権を行使できる裁判所法3条1項の「法律上の争訟」とは、①当事者間の具体的な「権利義務ないし法律関係」の存否に関する紛争であって、かつ、②それが法令の適用に終局的に解決することができるものをいう』としています。

よって、アには「法律上」が入ります。

[ ア:法律上 ]の争訟については、憲法32条により国民に裁判を受ける権利が保障されており、また、[ ア:法律上 ]の争訟について裁判を行うことは、憲法76条1項により司法権に課せられた義務であるから、本来、司法権を行使しないことは許されないはずであり、
/ 司法権に対する[ イ ]制約があるとして司法審査の対象外とするのは、かかる例外を正当化する[ ウ ]の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。

イ・・・外在的

「内在的制約」とは、「本来当然に存在する制約(根拠)」といった意味です。
憲法76条1項では「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と規定しており、これを根拠として、司法権を行使しないことは許されないということです。
これは、憲法76条1項そのものを根拠としています。
よって、司法権を行使しないことは許されない根拠が、憲法76条1項に内在している(含めれている)ということです。

一方、「外在的制約」とは、内在的制約以外を根拠とするといった意味です。
『司法権に対する[ イ ]制約があるとして司法審査の対象外とする。これは例外を正当化する』
と言っています。

例外的に司法権を行使しないことは許される場合があり、それは、司法権に対する[ イ ]制約がある場合ということです。

ここから、イには「外在的」が入ることが分かります。

  • 憲法76条1項(内在的制約)から、原則、司法権を行使しないことは許されない
  • ただし、例外的に別の規定(外在的制約)から、司法権を行使しないことが許される(司法審査の対象外)

ということです。

司法権に対する[ イ:外在的 ]制約があるとして司法審査の対象外とするのは、かかる例外を正当化する[ ウ ]の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。

ウ・・・憲法上

司法審査の対象外とする例外を認めることができるのは「憲法上」の根拠がある場合に限定されています。

これは、覚えておきましょう!

国会については、国権の最高機関(憲法41条)としての[ エ ]を憲法が尊重していることは明確であり、憲法自身が議員の資格争訟の裁判権を議院に付与し(憲法55条)、議員が議院で行った演説、討論又は表決についての院外での免責規定を設けている(憲法51条)。しかし、地方議会については、憲法55条や51条のような規定は設けられておらず、憲法は、[ エ ]の点において、国会と地方議会を同視していないことは明らかである。

エ・・・自律性

自律性とは、自分自身(ここでは国会自身)で物事をコントロール・調整・判断することを言います。

憲法41条 
国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

「国会については憲法で議員の資格争訟の裁判権を付与している」というのは、「国会(議院)の自律性」を憲法が尊重していることを意味します。
なぜなら、通常、裁判権は、裁判所に属しますが、国会議員の資格訴訟に関しては、国会が行ってよいと憲法で認めているからです。

また、「議員が議院で行った演説、討論又は表決についての院外での免責規定を設けている」というのは、議院(国会)内の言動は、議院内で処理することを意味しているので、「議院の自律性」と言えます。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問11|行政手続法

申請に対する処分について定める行政手続法の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努め、これを定めたときは、行政手続法所定の方法により公にしておかなければならない。
  2. 行政庁は、法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請について、それを理由として申請を拒否することはできず、申請者に対し速やかにその補正を求めなければならない。
  3. 行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示すよう努めなければならない。
  4. 行政庁は、定められた標準処理期間を経過してもなお申請に対し諾否の応答ができないときは、申請者に対し、当該申請に係る審査の進行状況および処分の時期の見込みを書面で通知しなければならない。
  5. 行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利益を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、当該申請者以外の者および申請者本人の意見を聴く機会を設けなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努め、これを定めたときは、行政手続法所定の方法により公にしておかなければならない。

1・・・妥当

行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(標準処理期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません(行政手続法6条)。

つまり、「標準処理期間」を定めることは努力義務であり、「標準処理期間」を定めた場合は、公にする義務があるということです。

【対比ポイント】

  • 「標準処理期間」は、申請が行政庁の事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間をいい、
  • 「標準審理期間」は、審査請求が行政庁の事務所に到達してから当該審査請求に対する裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間をいいます。

「処理→申請に対する処分をするための処理」「審理→審査請求に対する裁決をするための審理」
と考えて、分けて頭に入れておきましょう!

2.行政庁は、法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請について、それを理由として申請を拒否することはできず、申請者に対し速やかにその補正を求めなければならない。

2・・・妥当ではない

行政庁は、法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、「それを理由として申請を拒否することもできるし」または「申請者に対し、その補正を求めることもできます」。

よって、本肢は、「それを理由として申請を拒否することはできず」が妥当ではないです。

条文では、下記のように規定されています。

行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません(行政手続法7条)。

3.行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示すよう努めなければならない。

3・・・妥当ではない

本肢は「努めなければならない」という点が妥当ではありません。

行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合、原則、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければなりません(行政手続法8条1項本文)。

よって、原則として、行政庁が申請により求められた許認可等の処分をする場合、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示すことは「義務」です。

【関連ポイント】

上記の通り、原則、申請に対して拒否処分をする場合、理由提示は義務ですが、例外的に理由提示が不要な場合があります。

それが下記の①と②を同時に満たす場合です!

①法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、②当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足ります。

4.行政庁は、定められた標準処理期間を経過してもなお申請に対し諾否の応答ができないときは、申請者に対し、当該申請に係る審査の進行状況および処分の時期の見込みを書面で通知しなければならない。

4・・・妥当ではない

行政庁は、定められた標準処理期間を経過してもなお申請に対し諾否の応答ができないときであっても、申請者に対し、当該申請に係る審査の進行状況および処分の時期の見込みを書面で通知する義務はありません。

本肢のようなルールは、行政手続法に規定されていないです。

よって、妥当ではないです。

ちなみに、標準処理期間を超えたからといって、直ちに「不作為についての審査請求(行政不服審査法3条)」や「不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法3条5項)」を提起することはできません。

「相当の期間」を経過すれば、上記審査請求や違法確認訴訟を提起することができます。

5.行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利益を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、当該申請者以外の者および申請者本人の意見を聴く機会を設けなければならない。

5・・・妥当ではない

本肢は「設けなければならない」という風に「義務」になっている点が妥当ではありません。

行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、「必要に応じ」、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう「努めなければなりません」。

つまり、公聴会の開催等については、「義務」ではなく、「努力義務」です。

必要に応じて開催すればよく、行政庁が不要と判断すれば開催しなくてもよいです。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問40|会社法

会計参与に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.公開会社である大会社は、会計参与を置いてはならない。

イ.公開会社ではない大会社は、会計監査人に代えて、会計参与を置くことができる。

ウ.会計参与は、株主総会の決議によって選任する。

エ.会計参与は、公認会計士もしくは監査法人または税理士もしくは税理士法人でなければならない。

オ.会計参与は、すべての取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:4(ウ・エが正しい)

【解説】

ア.公開会社である大会社は、会計参与を置いてはならない。

ア・・・誤り

取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければなりません。ただし、非公開会社の会計参与設置会社については、監査役を置かなくても大丈夫です(会社法327条2項)。

つまり、「大会社でない」かつ「非公開会社」かつ「取締役会設置会社」で、監査役を置いていない場合に限って、会計参与の設置が義務となります。

それ以外の会社は、会計参与の設置は任意なので、本肢の「公開会社である大会社」も、会計参与を置くことはできます。

よって、誤りです。

イ.公開会社ではない大会社は、会計監査人に代えて、会計参与を置くことができる。

イ・・・誤り

「公開会社でない大会社」は、会計監査人を置かなければなりません(会社法328条2項)。

よって、「会計監査人に代えて、会計参与を置くことができない」ので誤りです。

一方、「公開会社の大会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)」は、監査役会及び会計監査人を置かなければなりません(会社法328条1項)。

「会計参与」とは、取締役と共同して「計算書類等を作成すること」および「会計参与報告を作成すること」を職務とする者で、役員です(374条1項)。会計事務職のトップといったイメージで、公認会計士(監査法人を含む)または税理士(税理士法人を含む)がなることができます。

「会計監査人」は、公認会計士または監査法人しかなれません。つまり、企業会計のプロといったイメージです。

大会社は、当然、外部監査を行う「会計監査人」が必要です。

【会計監査人を置かなければいけない会社】
①大会社、②監査等委員会設置会社、③指名委員会等設置会社には、必ず会計監査人を置かなけ
ればなりません。

ウ.会計参与は、株主総会の決議によって選任する。

ウ・・・正しい

役員(取締役、会計参与及び監査役)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任します(会社法329条1項)。

よって、「会計参与は、株主総会の決議によって選任する」ので正しいです。

エ.会計参与は、公認会計士もしくは監査法人または税理士もしくは税理士法人でなければならない。

エ・・・正しい

選択肢アでも解説した通り、会計参与は、公認会計士(監査法人を含む)または税理士(税理士法人を含む)でなければなりません(会社法333条1項)。

よって、正しいです。

※ 「会計参与になれない人」は、当該株式会社とその子会社の取締役、監査役、執行役、支配人等です(会社法333条3項)。

オ.会計参与は、すべての取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。

オ・・・誤り

会計参与は、計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書について、取締役会の承認を受けなければならない場合に取締役会に出席しなければなりません。この場合において、会計参与は、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない(会社法376条1項)。

よって「計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書について、取締役会の承認を受ける必要がない取締役会」に、会計参与は出席しなくてもよいので、本肢は「すべての取締役会に出席し」という部分が誤りです。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問10|行政法

行政調査に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 警察官職務執行法には、警察官は、職務質問に付随して所持品検査を行うことができると規定されており、この場合には、挙動が異常であることに加えて、所持品を確認する緊急の必要性を要するとされている。
  2. 交通の取締を目的として、警察官が自動車の検問を行う場合には、任意の手段により、走行の外観上不審な車両に限ってこれを停止させることができる。
  3. 行政手続法においては、行政調査を行う場合、調査の適正な遂行に支障を及ぼすと認められない限り、調査の日時、場所、目的等の項目を事前に通知しなければならないとされている。
  4. 国税通則法には、同法による質問検査権が犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと定められていることから、当該調査において取得した資料をその後に犯則事件の証拠として利用することは認められない。
  5. 行政調査の実効性を確保するため、調査に応じなかった者に刑罰を科す場合、調査自体の根拠規定とは別に、刑罰を科すことにつき法律に明文の根拠規定を要する。

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【答え】:5

【解説】

1.警察官職務執行法には、警察官は、職務質問に付随して所持品検査を行うことができると規定されており、この場合には、挙動が異常であることに加えて、所持品を確認する緊急の必要性を要するとされている。

1・・・妥当ではない

警察官職務執行法には、「警察官は、職務質問に付随して所持品検査を行うことができる」と規定されていないので、誤りです。

なお、下記判例では、「警察官は、具体的状況のもとで相当と認められる限度において、職務質問に付随して所持品検査を行うことができる」と判示しています。

【最判昭53.9.7】 

職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、職務質問ないし所持品検査の目的、性格及びその作用等にかんがみると、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される場合があると解すべきである

2.交通の取締を目的として、警察官が自動車の検問を行う場合には、任意の手段により、走行の外観上不審な車両に限ってこれを停止させることができる。

2・・・妥当ではない

下記判例によると、
警察官が自動車の検問を行う場合、走行の外観上不審な車両に「限って」停止させることができるのではなく、「走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく」停止させることができるので、妥当ではないです。

【最判昭55.9.22】 自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況などをも考慮すると、警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである

3.行政手続法においては、行政調査を行う場合、調査の適正な遂行に支障を及ぼすと認められない限り、調査の日時、場所、目的等の項目を事前に通知しなければならないとされている。

3・・・妥当ではない

行政手続法は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする(行政手続法1条)。

つまり、「行政調査」に関する手続については、行政手続法の対象外です。よって、妥当ではないです。

行政手続法の対象
処分、行政指導、届出、命令
行政手続法の対象外
行政計画、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続など
4.国税通則法には、同法による質問検査権が犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと定められていることから、当該調査において取得した資料をその後に犯則事件の証拠として利用することは認められない。

4・・・妥当ではない

下記判例の通り、行政調査において取得した資料を、犯則事件の証拠として利用したとしても直ちに違法とはなりません。よって、妥当ではないです。

【最決平16.1.20】質問又は検査の権限の行使にあたって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである

5.行政調査の実効性を確保するため、調査に応じなかった者に刑罰を科す場合、調査自体の根拠規定とは別に、刑罰を科すことにつき法律に明文の根拠規定を要する。

5・・・妥当

調査に応じなかった者に刑罰を科す行政調査は、「間接強制を伴う調査」です。

刑罰という制裁が伴うので、法律の根拠が「必要」です。

よって、妥当です。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問39|会社法

公開会社における株主総会に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款に別段の定めはなく、かつ、株主総会の目的である事項の全部または一部について議決権を有しない株主はいないものとする。

  1. 総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項および招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
  2. 総株主の議決権の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の日の8週間前までに、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。
  3. 株主は、株主総会において、当該株主総会の目的である事項につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令もしくは定款に違反する場合または実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合は、この限りでない。
  4. 総株主の議決権の100分の1以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、株主総会に係る招集の手続および決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、取締役に対し、検査役を選任すべきことを請求することができる。
  5. 取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由があるとして法務省令で定める場合は、この限りでない。

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【答え】:4

【解説】

1.総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項および招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

1・・・正しい

原則として総株主の議決権の3/100以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます(会社法297条1項:少数株主権)。

【株主総会の招集権者】

株主総会は、原則、取締役会(非取締役会設置会社では、取締役)が一定事項を決定し、代表取締役等がこれを執行して招集します。
⇒ 違反すると、「決議取消し」や「決議不存在」となる

また、少数株主(総株主の議決権の100分の3以上、公開会社は6か月以上前から保有)による招集も認められています。

2.総株主の議決権の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の日の8週間前までに、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。

2・・・正しい

総株主の議決権の1/100以上の議決権又は300個以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができます。この場合において、その請求は、株主総会の日の8週間前までにしなければなりません(会社法303条2項:株主総会の議題提案権)。

※「株主総会の目的となる事項」が「議題」です。
例えば、「取締役の選任の件」です。

3.株主は、株主総会において、当該株主総会の目的である事項につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令もしくは定款に違反する場合または実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合は、この限りでない。

3・・・正しい

株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)につき議案を提出することができます。
ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の1/10(これを下回る割合を定款で定めることも可能)以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合は、議案の提出はできません(会社法304条:の株主総会の議案提出権)。

※「議案」とは、議題に対する具体的な提案です。
例えば「〇〇さんを取締役として選任する件」です。

4.総株主の議決権の100分の1以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、株主総会に係る招集の手続および決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、取締役に対し、検査役を選任すべきことを請求することができる。

4・・・誤り

株式会社又は総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定める事も可能)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し検査役の選任の申立てをすることができます(会社法306条1項:株主総会の招集手続等に関する検査役の選任)。

本肢は「取締役に対し」となっているので誤りです。
正しくは「裁判所に対し」です。

当該検査は、「株主総会の招集手続」に関する検査なので、会社内部の検査でしても意味がないので、裁判所に検査役の選任の申立が必要としています。

5.取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由があるとして法務省令で定める場合は、この限りでない。

5・・・正しい

取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければなりません。

ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、説明義務はありません(会社法314条:取締役等の説明義務)。

よって、本肢は正しいです。

令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問9|行政法

行政契約に関する次のア~オの記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。

イ.地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。

ウ.水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。

エ.公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。

オ.法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:4(ウ・オが妥当)

【解説】

ア.行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。

ア・・・妥当ではない

行政手続法は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする(行政手続法1条)。

つまり、行政契約に関する手続については、行政手続法の対象外です。

行政手続法の対象
処分、行政指導、届出、命令
行政手続法の対象外
行政計画、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続など
イ.地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。

イ・・・妥当ではない

売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとされています(地方自治法234条1項)。

つまり、「地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない」としている点が妥当ではないです。

ウ.水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。

ウ・・・妥当

水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではなりません(水道法15条1項)。

そして、下記判例では、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができると判示しているので、本肢は妥当です。

【最判平11.1.21:志免町水道給水拒否事件】 漫然と新規の給水申込みに応じていると、近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずることが予測される状態にあるということができる。
このようにひっ迫した状況の下においては、被上告人が、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的であらかじめしたものについて契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制する施策を講ずることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。
そして、上告人の給水契約の申込みは、マンション420戸を分譲するという目的のためにされたものであるから、所論のように、建築計画を数年度に分け、井戸水を併用することにより水道水の使用量を押さえる計画であることなどを考慮しても、被上告人がこれを拒んだことには水道法15条1項にいう「正当の理由」があるものと認めるのが相当である
エ.公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。

エ・・・妥当ではない

公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約については、下記判例の通り、法的拘束力を有します。

【最判平21.7.10】 

廃棄物処理法は、廃棄物の排出の抑制、適正な再生、処分等を行い、生活環境を清潔にすることによって、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とし(1条)、その目的を達成するために廃棄物の処理に関する規制等を定めるものである。

そして、廃棄物処理法の規定は、知事が、処分業者としての適格性や処理施設の要件適合性を判断し、産業廃棄物の処分事業が廃棄物処理法の目的に沿うものとなるように適切に規制できるようにするために設けられたものである。

したがって、知事の許可が、処分業者に対し、許可が効力を有する限り事業や処理施設の使用を継続すべき義務を課すものではないことは明らかである。(知事が期間を定めて許可したからと言って、業者が、知事が許可した有効期間まで、ずっと使用継続する義務を負うわけではない

また、処分業者(Y)が、公害防止協定において、協定の相手方(X)に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者自身の自由な判断で行えることであり(民法における契約自由の原則、私法上の契約)、その結果、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、同法に何ら抵触するものではない。

したがって、当該期限の条項が廃棄物処理法の趣旨に反するということはできないし、本件期限条項が本件協定が締結された当時の廃棄物処理法の趣旨に反するということもできない。

よって、本件期限条項の法的拘束力を否定することはできない(法的拘束力はある)

分かりやすくまとめると

産廃処理事業を行う場合、知事の営業許可が必要なんですね。
例えば、令和7年までが有効期間だったとします。

一方、公害防止協定の中には、上記とは別に、産廃施設の使用期限が設定されていました
例えば、令和5年までという期限だったとします。
この場合、この使用期限を超えて当該最終処分場を利用してはいけません。

なぜなら、「公害防止協定」は私法上の契約と同じだから、契約したのであれば守らないといけない(法的拘束力がある)ということです。

たとえ、産廃処理事業の営業許可が、令和7年までであっても、上記公害防止協定の約束は有効なので、そこで産廃処理業は行えません。

ということです。

※この事案では、産廃業者は、令和7年までが有効期間があるから、最終処分場も使えるでしょ!と訴えたのですが、それは認められなかった、という内容です。

オ.法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。

オ・・・妥当

下記判例の通り、法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、原則、契約は有効であり、例外的に、無効としなければ、法令の規定の趣旨を無視(没却)する結果となるような特別ば場合に限って無効となります。

【最判昭62.5.19】 

随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約の私法上の効力については別途考察する必要があり、かかる違法な契約であっても私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によることができる場合として前記令(地方自治法施行令)の規定の掲げる事由のいずれにもあたらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える前記法(地方自治法)及び令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になるものと解するのが相当である。

■「当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる」とは?

分かりやすく言うと
「その契約を無効にしないと、法律の目的や意味が台無しになるような
特別な事情がない限り、
その契約は法律的には有効とみなされます」

◆ 「随意契約」とは、入札などを経ずに相手を選んで契約する方法です。

法令で随意契約が禁止されているのに、それを破って契約しても、
原則として契約自体(=私法上の効力)は有効です。

しかし、

例:役所と業者が癒着して、
わざと競争入札を避けて高額な契約を結んだ、
しかもその不正が誰の目にも明らかである、
というようなケースでは、「無効にしなければ、ルールの意味が完全に失われる」ため、

例外的に無効とされます。

◆ まとめ

たとえルール違反の契約でも、
原則として契約そのものは有効です。
でも、不正があまりに明白だったり、
無効にしないと法律の意味がなくなるような
よっぽどの事情があれば、例外的に無効になることがあります。

令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問38|会社法

特別支配株主の株式売渡請求に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の他の株主(当該対象会社を除く。)の全員に対し、その有する当該対象会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。
  2. 株式売渡請求をしようとする特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社に対し、株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項について通知し、当該対象会社の株主総会の承認を受けなければならない。
  3. 株式売渡請求をした特別支配株主は、株式売渡請求において定めた取得日に、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の株主が有する売渡株式の全部を取得する。
  4. 売渡株主は、株式売渡請求が法令に違反する場合であって、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式の全部の取得をやめることを請求することができる。
  5. 株式売渡請求において定めた取得日において公開会社の売渡株主であった者は、当該取得日から6ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該株式売渡請求に係る売渡株式の全部の取得の無効を主張することができる。

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【答え】:2

【解説】

1.特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の他の株主(当該対象会社を除く。)の全員に対し、その有する当該対象会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。

1・・・正しい

「特別支配株主」とは、株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有する株主を言います。

そして、株式会社の特別支配株主は、当該株式会社の株主の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができます(会社法179条1項)。

【特別支配株主による株式等売渡請求制度のメリット】

  1. 特別支配株主が全株式を保有することになるので「株主総会開催を省略」できます。
  2. 少数株主がいなくなるので、将来の訴訟リスクを減らせる
2.株式売渡請求をしようとする特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社に対し、株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項について通知し、当該対象会社の株主総会の承認を受けなければならない。

2・・・誤り

特別支配株主は、株式売渡請求をしようとするときは、対象会社に対し、「株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項」を通知し、その承認を受けなければなりません(会社法179条の3第1項)。

そして、取締役会設置会社が上記承認をするか否かの決定をするには、「取締役会の決議」によらなければなりません(会社法179条の3第3項)。

よって、本肢は「株主総会の承認」が誤りです。

ちなみに、「非取締役会設置会社」の場合、「取締役の過半数の同意」で承認するか否かを決めます(会社法348条2項)。

3.株式売渡請求をした特別支配株主は、株式売渡請求において定めた取得日に、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の株主が有する売渡株式の全部を取得する。

3・・・正しい

株式等売渡請求をした特別支配株主は、取得日(売渡請求において定めた日)に、売渡株式等の全部を取得します(会社法179条の9第1項)。

よって、本肢は正しいです。

ちなみに、取得する株式について、譲渡制限が付いている場合、当該株式会社が譲渡の承認をしたものとみなされます(会社法179条の9第2項)。したがって、別途譲渡承認の手続は不要です。

4.売渡株主は、株式売渡請求が法令に違反する場合であって、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式の全部の取得をやめることを請求することができる。

4・・・正しい

(売渡株式等の取得をやめることの請求)
下記1~3に掲げる場合において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができます(会社法179条の7)。

  1. 株式売渡請求が法令に違反する場合
  2. 売渡株主に対する通知の規定や事前開示の規定に違反した場合
  3. 売渡請求の対価として交付する金銭等が著しく不当である場合
5.株式売渡請求において定めた取得日において公開会社の売渡株主であった者は、当該取得日から6ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該株式売渡請求に係る売渡株式の全部の取得の無効を主張することができる。

5・・・正しい

株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日から6ヵ月以内(対象会社が非公開会社の場合は、当該取得日から1年以内)に、訴えをもってのみ主張することができます(会社法846条の2第1項)。

したがって、公開会社の場合、「売渡株式の取得の無効の訴え」は、取得日から6ヵ月以内であれば、主張できるので、正しいです。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問8|憲法

公法上の権利の一身専属性に関する次の文章の空欄[ A ]~[ C ]に当てはまる文章の組合せとして、妥当なものはどれか。

最高裁判所昭和42年5月24日判決(いわゆる朝日訴訟判決)においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。そして、この判決は、その前提として、[ A ]。
その後も公法上の権利の一身専属性が問題となる事例が散見されたが、労働者等のじん肺に係る労災保険給付を請求する権利については最高裁判所平成29年4月6日判決が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権については最高裁判所平成29年12月18日判決が、それぞれ判断をしており、[ B ]。
なお、この健康管理手当の受給権の一身専属性について、最高裁判所平成29年12月18日判決では、受給権の性質が[ C ]。

空欄[ A ]
ア.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている
イ.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益であるとしている
 
空欄[ B ]
ウ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めて、相続人による訴訟承継を認めなかった
エ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた
 
空欄[ C ]
オ.社会保障的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている
カ.国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている

  1. A:ア B:ウ C:オ
  2. A:ア B:エ C:力
  3. A:イ B:ウ C:オ
  4. A:イ B:ウ C:力
  5. A:イ B:エ C:力

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【答え】:2

【解説】

最高裁判所昭和42年5月24日判決(いわゆる朝日訴訟判決)においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。そして、この判決は、その前提として、[ A ]。

空欄[ A ]
ア.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている
イ.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益であるとしている

A・・・ア:生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている

[ A ]という前提があって、→ 朝日訴訟判決においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。

という流れです。

要保護者等が国から生活保護を受けるのが、「法的利益でなく」「国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益」であれば、そもそも、訴えの利益がなく却下となります。

今回の内容は、却下(門前払いで審理をしない)となっておらず、
審理を行った上で「生活保護を受給する地位は、相続人らが当該訴訟を承継しない」と結論づけています。

よって、[ A ]には、「法的利益」という文言を含む「生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている」が入ります。

その後も公法上の権利の一身専属性が問題となる事例が散見されたが、労働者等のじん肺に係る労災保険給付を請求する権利については最高裁判所平成29年4月6日判決が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権については最高裁判所平成29年12月18日判決が、それぞれ判断をしており、[ B ]。

空欄[ B ]
ウ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めて、相続人による訴訟承継を認めなかった
エ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた

B・・・エ:両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた

下記判例の通り、いずれの判決も「権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めています」。

【最判平29.4.6】

 

原審は、・・・じん肺管理区分の決定を受けるという労働者等の地位は,当該労働者等に固有のものであり,一身専属的なものであると解されるから、上告人らがAの相続人としてこれを承継することはできず,本件訴訟はAの死亡により当然に終了すると判断し、第1審判決(ただし,国家賠償請求に関する部分を除く。)を取り消し、訴訟終了宣言をした。

しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。・・・

じん肺管理区分決定が管理1に該当する旨の決定を受けた労働者等が当該決定の取消しを求める訴訟の係属中に死亡した場合、当該訴訟は当該労働者等の死亡によって当然に終了するものではなく、当該労働者等のじん肺に係る未支給の労災保険給付を請求することができる労災保険法11条1項所定の遺族においてこれを承継すべきものと解するのが相当である

【最判平29.12.18】

 

被爆者援護法の性格や健康管理手当の目的及び内容に鑑みると、同条に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権は、当該申請をした者の一身に専属する権利ということはできず、相続の対象となるものであるから、被爆者健康手帳交付申請及び健康管理手当認定申請の各却下処分の取消しを求める訴訟並びに同取消しに加えて被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟について、訴訟の係属中に申請者が死亡した場合には、当該訴訟は当該申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継するものと解するのが相当である。

なお、この健康管理手当の受給権(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権)の一身専属性について、最高裁判所平成29年12月18日判決では、受給権の性質が[ C ]。

空欄[ C ]
オ.社会保障的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている
カ.国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている

C・・・カ:国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている

「国家補償」とは、国家の活動によって私人に損失が生じた場合に、その損失を填補することによって救済を図る制度のことを言います。

そして、下記判例では、
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権の性質は、国家補償的性質を有することが、申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継すると言っています。

つまり、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されています。

【最判平29.12.18】 
被爆者援護法は原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する特殊な戦争被害において、戦争遂行主体であった国の責任により救済を図るという一面を有し、実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあるとした。

そして、被爆者健康手帳交付申請及び健康管理手当認定申請の各却下処分の取消しを求める訴訟と被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟の係属中に申請者が死亡した場合には、当該訴訟は当該申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継する。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問37|会社法

株式会社の設立における発行可能株式総数の定め等に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

ア.発起設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

イ.発起設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、発起人は、株式会社の成立の時までに、その過半数の同意によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができる。

ウ.募集設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

エ.募集設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができる。

オ.設立時発行株式の総数は、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:3(イ・ウが誤り)

【解説】

ア.発起設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

ア・・・正しい

発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(発行可能株式総数)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければなりません(会社法37条1項)。

  1. 発行可能株式総数→定款の「絶対的記載事項」
  2. 会社設立の際は、定款の認証(公証人による認証)を受けなければなりませんが、設立後に株式発行可能株式総数を変更する場合、公証人の認証は不要です。
イ.発起設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、発起人は、株式会社の成立の時までに、その過半数の同意によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができる。

イ・・・誤り

発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができます(会社法37条2項)。

本肢は「過半数の同意によって」が誤りです。正しくは「発起人全員の同意」です。

ウ.募集設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

ウ・・・誤り

募集設立をする場合において、発行可能株式総数を定款で定めていないときは、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければなりません(会社法98条)。

よって、本肢は「その全員の同意」が誤りです。正しくは、「創立総会の決議」です。

※ 募集設立における株式の引受人が払込によって確定する払込期間初日以後は、発起人全員の同意があっても定款を変更することはできません(会社法95条)。これは、募集設立の場合、株主となるのは、「発起人」だけでなく「引受人」も存在するため、発起人だけで、定款変更するのは、不適当だからです。

エ.募集設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができる。

エ・・・正しい

募集設立においては、創立総会の決議によって、定款の変更をすることができます(会社法96条)。

よって、募集設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができます。

※ 株式会社の成立後は「創立総会」を開くことはできません。創立総会は、会社が成立するまでに行うものです。そのため、本肢の通り「株式会社の成立の時まで」という期限が入っています。

オ.設立時発行株式の総数は、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。

オ・・・正しい

公開会社の場合、設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の1/4を下ることができません(会社法37条3項)。これを4倍規制(4倍ルール)といいます。

ちなみに、公開会社では、「募集株式発行」は「取締役会」で決議します。

【4倍規制が存在する理由】 このルールは、既存株主の利益を保護するためのルールです。非公開会社の場合は、株を売買することはあまりありませんが、公開会社は、頻繁に売買され株主もよく変更します。そして、公開会社の場合、取締役会決議で株式を発行することが可能です。そして、もし、上記制限がないならば、発行可能株式総数を極端に増やし、たくさん株式を発行することで、既存株主の議決権を減らすことができます。そうすると、取締役にとって既存株主が煩わしい場合、たくさん株式を発行してそれを防ぐことができてしまいます。これは、既存株主にとって不利益なので、それができないように、発行できる株式に一定の制限を設けているのです。例えば、1000株発行するのであれば、発行可能株式総数は最大で4000株です。つまり既存株主は、今後、株式を増やしたとしても最大4000株までしか発行できないので、既存株主だけでも合計して25%の議決権は保障されます。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問7|憲法

裁判の公開に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。
  2. 裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。
  3. 証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。
  4. 傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。
  5. 裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】

1.裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。

1・・・妥当ではない

裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行います(憲法82条1項)。

「対審」とは、裁判官の目の前で当事者が口頭でそれぞれの主張を述べる手続きです。

そして、下記判例によると、開廷中のカメラ取材、写真撮影の許可等は裁判所の裁量に委ねられ、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されています。

よって、妥当ではないです。

【判例(最判昭33.2.17:北海タイムス事件:)】

憲法が裁判の対審及び判決を公開法廷で行うことを規定しているのは、手続を一般に公開してその審判が公正に行われることを保障する趣旨にほかならないのであるから、たとい公判廷の状況を一般に報道するための取材活動であっても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するがごときものは、もとより許されないところであるといわなければならない。
ところで、公判廷における写真の撮影等は、その行われる時、場所等のいかんによっては、前記のような好ましくない結果を生ずる恐れがあるので、刑事訴訟規則215条(公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。)は写真撮影の許可等を裁判所の裁量に委ね、その許可に従わないかぎりこれらの行為をすることができないことを明らかにしたのであって、右規則は憲法に違反するものではない

2.裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。

2・・・妥当ではない

下記判例によると、裁判所が過料を科する場合、対審および判決を公開(裁判を公開)する必要はないとしています。

【最大判昭41.12.27】

民事上の秩序罰としての過料を科する作用は、国家のいわゆる後見的民事監督の作用であり、その実質においては、一種の行政処分としての性質を有するものであるから、必ずしも裁判所がこれを科することを憲法上の要件とするものではなく、行政庁がこれを科する(地方自治法149条3号、255条の2参照)ことにしても、なんら違憲とすべき理由はない。
従って、法律上、裁判所がこれを科することにしている場合でも、過料を科する作用は、もともと純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なるのであるから、憲法82条、32条の定めるところにより、公開の法廷における対審及び判決によって行なわれなければならないものではない。」

3.証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。

3・・・妥当

すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有します(憲法37条1項)。

そして、下記判例によると、証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られる行為は、「裁判の公開の原則(憲法37条1項)」に違反しないと判示しています。

【最判平17.4.14】

証人尋問が公判期日において行われる場合、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られ、あるいはビデオリンク方式によることとされ、さらには、ビデオリンク方式によった上で傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、これらの規定は、憲法82条1項、37条1項に違反するものではない。

4.傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。

4・・・妥当ではない

判例によると、法廷でメモを取る行為は「尊重に値する」ものの、権利として保障されているとまではいえないと判示しています。

【最大判平元.3.8:レペタ事件】

憲法82条1項の規定は、・・・傍聴人に対して法廷においてメモを取ることを権利として保障しているものでない・・・(しかし)傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならないものというべきである。

5.裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。

5・・・妥当ではない

下記判例によると、
裁判官の懲戒の裁判は、裁判公開の原則が適用されず、審問は公開しなくてもよいと判示しているので、妥当ではないです。

【最大判平10.12.1:寺西判事補事件】

憲法82条1項は、裁判の対審及び判決は公開の法廷で行わなければならない旨を規定している。・・・
裁判官に対する懲戒は、裁判所が裁判という形式をもってすることとされているが、一般の公務員に対する懲戒と同様、その実質においては裁判官に対する行政処分の性質を有するものである。
したがって、裁判官に懲戒を課する作用は、固有の意味における司法権の作用ではなく、懲戒の裁判は、純然たる訴訟事件についての裁判にはあたらないことが明らかである。・・・分限事件は、訴訟とは全く構造を異にするというほかはない。
したがって、分限事件については憲法82条1項の適用はないものというべきである」

【分限裁判(分限事件)】

分限裁判とは、裁判官の免職と懲戒を決定するために開かれる裁判です。

どのような場合に行われるかというと、「①心身の故障または本人の希望により免職を決定する場」や、「②裁判官として相応しくない行為をした」などの理由で「懲戒処分」を下す必要のあるときに、裁判官分限法に基づき、開かれます。

つまり、分限裁判で懲戒処分を行うこともあるので、上記判例の通り、懲戒処分で審問の非公開もOKということになります。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略