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令和4年・2022|問31|民法

債務不履行を理由とする契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 債務者が債務の全部について履行を拒絶する意思を明確に示したとしても、債権者は、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がない場合でなければ、契約を解除することができない。
  2. 特定物の売買契約において、契約締結後に目的物が不可抗力によって滅失した場合、買主は、履行不能を理由として契約を解除することができない。
  3. 建物賃貸借契約において、賃借人の用法違反が著しい背信行為にあたり、契約関係の継続が困難となるに至った場合であっても、賃貸人は相当の期間を定めて賃借人に利用態様を改めるよう催告をし、その期間が経過しても賃借人が態度を改めようとしない場合でなければ、賃貸人は、当該契約を解除することができない。
  4. 売買契約に基づいて目的物が引き渡された後に契約が解除された場合、買主が売主に対して負うべき原状回復義務には、目的物の返還に加えて、それまでに生じた目的物に関する使用利益の返還も含まれるが、当該契約が他人物売買であったときは、買主は売主に対して使用利益の返還義務を負わない。
  5. 売買契約において、買主が代金の一部の支払を遅滞した場合、売主が相当の期問を定めてその支払の催告をし、その期間内に買主が代金を完済しなかったとしても、その時点における代金額の不足が軽微であるときは、売主の売買契約の解除が制限されることがある。

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【答え】:5

【解説】

1.債務者が債務の全部について履行を拒絶する意思を明確に示したとしても、債権者は、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がない場合でなければ、契約を解除することができない。

1・・・妥当でない

債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます(民法542条1項2号:無催告解除)。

よって、本肢は「催告をした上で、履行がない場合でなければ解除できない」となっているので妥当ではありません。

無催告解除ができる場合】

履行不能の場合
建物の売買契約成立後、引渡し前に建物が火災で滅失した場合
債務者が債務の全部の履行を拒絶している場合
土地の売買契約締結後、売主が「土地を引渡しません!」と拒絶している場合
「債務の一部が履行不能」または「債務者が債務の一部を履行拒絶すること」によって残存する部分のみでは契約の目的を達成できない場合
隣接する2つ土地の売買契約締結後、売主が「一つの土地は引渡しません!」と拒絶しており、他方の土地だけでは、希望の建物が建築できない場合
特定の日時・一定期間内に債務を履行をしないと目的を達成できない場合に、その時期が過ぎた場合
結婚式の宴会に有名人Aに歌を披露してもらう契約をして、結婚式当日にAがこれなくなった場合、結婚式が終わった後に来てもらっても意 味がないので、催告なしで解除できる
上記以外でも債務者が債務を履行せず、催告しても履行の見込みがないことが明らかな場合
建築請負契約を締結したにも関わらず、当該建築するための機材や人員が足らない場合(注文者が催告したとしても、請負人は建物を完成できる見込みがないから)
2.特定物の売買契約において、契約締結後に目的物が不可抗力によって滅失した場合、買主は、履行不能を理由として契約を解除することができない。

2・・・妥当でない

契約締結後に目的物が不可抗力によって滅失した場合、売主は、特定物の引渡しができなくなるので「履行不能」となります。

履行不能の場合、催告なく、直ちに契約解除ができます(民法542条1項1号)。

よって、本肢は妥当ではありません。

※履行不能となった原因は関係ないので、原因が「不可抗力」「債権者の過失」「債務者の過失」関係なく無催告で解除ができます。

ただし、債権者や債務者に過失があれば、損害賠償責任は負います。

3.建物賃貸借契約において、賃借人の用法違反が著しい背信行為にあたり、契約関係の継続が困難となるに至った場合であっても、賃貸人は相当の期間を定めて賃借人に利用態様を改めるよう催告をし、その期間が経過しても賃借人が態度を改めようとしない場合でなければ、賃貸人は、当該契約を解除することができない。

3・・・妥当でない

下記判例の通り、賃借人が賃借物を通常の利用方法と異なる方法で使い、背信行為(裏切り行為)と認められる場合、賃貸人は、催告することなく、直ちに契約を解除することができます。

よって、妥当ではありません。

【判例(最判昭27.4.25)】

賃貸借は、当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような(困難となるような)不信行為のあった場合には、相手方は、賃貸借を将来に向って、解除することができるものと解しなければならない、そうして、この場合には民法541条所定の催告は、これを必要としないものと解すべきである。

4.売買契約に基づいて目的物が引き渡された後に契約が解除された場合、買主が売主に対して負うべき原状回復義務には、目的物の返還に加えて、それまでに生じた目的物に関する使用利益の返還も含まれるが、当該契約が他人物売買であったときは、買主は売主に対して使用利益の返還義務を負わない。

4・・・妥当でない

本肢は最後の部分が妥当ではありません。

正しくは「買主は売主に対して使用利益の返還義務を負う」となります。

まず、当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負います。

そして、この場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実(利用利益)をも返還しなければなりません(民法545条1項本文、民法545条3項)。

さらに判例(最判昭51.2.13)では、「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負うものであり、この理(考え方)は、他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、契約が解除された場合についても同様であると解すべきである」と判示しています。

したがって、契約が他人物売買であったときは、買主は売主に対して使用利益の返還義務を負います。

5.売買契約において、買主が代金の一部の支払を遅滞した場合、売主が相当の期問を定めてその支払の催告をし、その期間内に買主が代金を完済しなかったとしても、その時点における代金額の不足が軽微であるときは、売主の売買契約の解除が制限されることがある。

5・・・妥当

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、原則、相手方は、契約の解除をすることができます。
ただし、例外として、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、契約解除はできません(民法541条)。

したがって、「代金額の不足」が「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微」であるときは、売主の売買契約の解除が制限される(契約解除ができない)ことがあることがあるので、妥当です。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問1|基礎法学

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ ]として力をもつ[ ウ ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。

(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)

  1. ア:少数意見 イ:判決理由 ウ:主文 エ:多数決
  2. ア:合議 イ:判例 ウ:多数意見 エ:全員一致
  3. ア:少数意見 イ:判例 ウ:多数意見 エ:全員一致
  4. ア:合議 イ:判決理由 ウ:主文 エ:多数決
  5. ア:少数意見 イ:判例 ウ:主文 エ:多数決

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【答え】:3(ア:少数意見、イ:判例、ウ:多数意見、エ:全員一致)

【解説】

ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア:少数意見 ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア:少数意見 ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ:判例 ]として力をもつ[ ウ:多数意見 ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ:全員一致 ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。

(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)

ア.ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。

ア・・・少数意見

「ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られる」
という部分から、ヨーロッパ大陸(例えば、イギリスやドイツ、フランス)では、裁判は合議制が採られています。
つまり、アに「合議」を入れたら、上記内容と矛盾します。

したがって、アには「少数意見」が入ります。

また、「[ ア ]制について、裁判所の権威を害するとされる。」
と書いてあります。

「少数意見制」とは、裁判官の少数意見についても尊重するという考え方に基づいています。
最高裁の判決は、「多数決の原則」により、多数派の意見が通るのですが、この少数意見を尊重しすぎると、結果として、裁判所の判断にブレが生じることになり、裁判所の権威を害することとなります。

ウ.[ イ ]として力をもつ[ ウ ]のみが一枚岩のように示されること

ウ・・・多数意見

ウの方が分かりやすいので、ウから考えます。
ウには「主文」か「多数意見」が入ります。

「一枚岩」とは、組織が、内部に分裂や対立を含まず、しっかりとまとまっていることを意味します。主文は、1つしかないので「一枚岩」にはならないです。このことから考えると、ウには、「主文」は入らないです。
多数意見」を入れれば、「多数意見のみが一枚岩のように示される」という事になります。

イ.[ イ ]として力をもつ[ ウ:多数意見 ]のみが一枚岩のように示されること

イ・・・判例

「判決理由としての力をもつ多数意見」なのか「判例としての力を持つ多数意見」なのかを考えると、「判例」が妥当です。

多数意見が、裁判所の判断(判例)となるからです。

最高裁判所は多数決で最終的な判断が下されます。

エ.[イ:判例]として力をもつ[ウ:多数意見]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

エ・・・全員一致

上記文章を言い換えていきます。

判例としての力を持つ多数意見のみが一枚岩にように示されることが裁判への信頼を生む。
しかし、
[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

判例として、1つの判断として示すことが裁判の信頼を生む。
しかし、
1つの判断として示して、他の意見を示さないことが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

「1つの判断として示して」=「外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとること」
となります。

よって、エには「全員一致」が入ります。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問15|行政不服審査法

再調査の請求について定める行政不服審査法の規定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合に審査請求を行ったときは、法律に再調査の請求ができる旨の規定がある場合でも、審査請求人は、当該処分について再調査の請求を行うことができない。
  2. 行政庁の処分につき処分庁に対して再調査の請求を行ったときでも、法律に審査請求ができる旨の規定がある場合には、再調査の請求人は、当該再調査の請求と並行して、審査請求もすることができる。
  3. 法令に基づく処分についての申請に対して、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁が何らの処分をもしない場合、申請者は当該不作為につき再調査の請求を行うことができる。
  4. 再調査の請求については、審理員による審理または行政不服審査会等への諮問は必要ないが、処分庁は決定を行った後に、行政不服審査会等への報告を行う必要がある。
  5. 再調査の請求においては、請求人または参加人が口頭で意見を述べる機会を与えられるのは、処分庁がこれを必要と認めた場合に限られる。

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【答え】:1
【解説】

1.行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合に審査請求を行ったときは、法律に再調査の請求ができる旨の規定がある場合でも、審査請求人は、当該処分について再調査の請求を行うことができない。

1・・・正しい

行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができます。

ただし、当該処分について審査請求をしたときは、再調査の請求をすることはできなくなります(行政不服審査法5条1項)。

よって、本問は正しいです。

2.行政庁の処分につき処分庁に対して再調査の請求を行ったときでも、法律に審査請求ができる旨の規定がある場合には、再調査の請求人は、当該再調査の請求と並行して、審査請求もすることができる。

2・・・誤り

再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ審査請求をすることができません行政不服審査法5条2項本文)。

よって、本問のように「再調査の請求と並行して、審査請求をすること」はできないので誤りです。

【関連ポイント】

再調査請求の対象とされている処分がなされた場合、審査請求もしくは、再調査請求を選んで、行う形となります。

3.法令に基づく処分についての申請に対して、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁が何らの処分をもしない場合、申請者は当該不作為につき再調査の請求を行うことができる。

3・・・誤り

行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができます(行政不服審査法5条1項本文)。

つまり、再調査の請求ができるのは「処分」があった場合であり、処分がなされていない「不作為」の場合、再調査の請求はできません

4.再調査の請求については、審理員による審理または行政不服審査会等への諮問は必要ないが、処分庁は決定を行った後に、行政不服審査会等への報告を行う必要がある。

4・・・誤り

【前半部分】 再調査の請求については、審理員に関する規定(行政不服審査法9条1~3項)、行政不服審査会等への諮問に関する規定(行政不服審査法43条)は準用されていません(行政不服審査法61条)。よって、「再調査の請求については、審理員による審理または行政不服審査会等への諮問は必要ない」は正しいです。

【後半部分】 「処分庁は決定を行った後に、行政不服審査会等への報告を行う必要がある」というのは条文にないので、誤りです。

再調査の請求に対する決定を出した後に、行政不服審査会等に報告する必要はありません。

5.再調査の請求においては、請求人または参加人が口頭で意見を述べる機会を与えられるのは、処分庁がこれを必要と認めた場合に限られる。

5・・・誤り

審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、意見を述べる機会を与えなくてもよいです(行政不服審査法31条1項)。

この規定は再調査請求にも準用されています(行政不服審査法61条)。

つまり、再調査の請求においては、請求人または参加人が口頭で意見を述べる機会を与えられるのは、請求人または参加人が口頭で意見を述べる機会を与えてください!と申立をした場合です(原則)。

よって、「処分庁がこれを必要と認めた場合に限られる」は、誤りです。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問30|民法

留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 留置権者は、善良な管理者の注意をもって留置物を占有すべきであるが、善良な管理者の注意とは、自己の財産に対するのと同一の注意より軽減されたものである。
  2. 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物について使用・賃貸・担保供与をなすことができず、留置権者が債務者の承諾を得ずに留置物を使用した場合、留置権は直ちに消滅する。
  3. 建物賃借人が賃料不払いにより賃貸借契約を解除された後に当該建物につき有益費を支出した場合、賃貸人による建物明渡請求に対して、賃借人は、有益費償還請求権を被担保債権として当該建物を留置することはできない。
  4. Aが自己所有建物をBに売却し登記をB名義にしたものの代金未払のためAが占有を継続していたところ、Bは、同建物をCに転売し、登記は、C名義となった。Cが所有権に基づき同建物の明渡しを求めた場合、Aは、Bに対する売買代金債権を被担保債権として当該建物を留置することはできない。
  5. Dが自己所有建物をEに売却し引渡した後、Fにも同建物を売却しFが所有権移転登記を得た。FがEに対して当該建物の明渡しを求めた場合、Eは、Dに対する履行不能を理由とする損害賠償請求権を被担保債権として当該建物を留置することができる。

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【答え】:3
【解説】

1.留置権者は、善良な管理者の注意をもって留置物を占有すべきであるが、善良な管理者の注意
とは、自己の財産に対するのと同一の注意より軽減されたものである。

1・・・妥当ではない

留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければなりません(民法298条1項)。

そして、注意義務の重さは、「善良な管理者の注意(善管注意義務)」の方が重く、

「自己の財産と同一の注意義務」の方が軽いです。

よって、本問は「軽減」が妥当ではなく、正しくは「加重」です。

 

2.留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物について使用・賃貸・担保供与をなすことが
できず、留置権者が債務者の承諾を得ずに留置物を使用した場合、留置権は直ちに消滅する。

2・・・妥当ではない

留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができません(民法298条2項本文)。

もし、留置権者が上記規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができます(民法298条3項)。

よって、本問は「留置権は直ちに消滅する」が妥当ではないです。正しくは「留置権の消滅を請求できる」です。

 

3.建物賃借人が賃料不払いにより賃貸借契約を解除された後に当該建物につき有益費を支出した
場合、賃貸人による建物明渡請求に対して、賃借人は、有益費償還請求権を被担保債権として当該建物を留置することは
できない。

3・・・妥当

判例(最判昭46.7.16)によると

『 建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち、権原のないことを知りながら右建物を不法に占有する間に有益費を支出しても、その者は、民法295条2項の類推適用により、右費用の償還請求権に基づいて右建物に留置権を行使することはできない。』

と判示しています。

よって、本肢は妥当です。

 

4.Aが自己所有建物をBに売却し登記をB名義にしたものの代金未払のためAが占有を継続していた
ところ、Bは、同建物をCに転売し、登記は、C名義となった。Cが所有権に基づき同建物の明渡しを求めた場合、Aは、Bに対する売買代金債権を被担保債権として当該建物を留置することはできない。

4・・・妥当ではない

判例(最判昭47.11.16)によると

甲(A)所有の物を買受けた乙(B)が、売買代金を支払わないままこれを丙(C)に譲渡した場合には、甲(A)は、丙(C)からの物の引渡請求に対して、未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。

と判示しています。

よって、本問は「できない」が誤りで、正しくは「できる」です。

【簡単に言えば】
A→B→C
と売却されていって
AがBから代金をもらっていない場合
Aは、BにもCも目的物を引渡さなくてもよい
ということです。

 

5.Dが自己所有建物をEに売却し引渡した後、Fにも同建物を売却しFが所有権移転登記を得た。FがEに対して当該建物の明渡しを求めた場合、Eは、Dに対する履行不能を理由とする損害賠償請求権を被担保債権として当該建物を留置することができる。
5・・・妥当ではない
判例(最判昭43.11.21)によると

 不動産の二重売買において、第二の買主(F)のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主(E)は、第二の買主(F)の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもつて、留置権を主張することは許されない。

と判示しています。

よって、本問は「できる」が妥当ではなく、正しくは「できない」です。

【簡単にいえば】
損害賠償請求は目的物(建物)によって生じた債権ではないから、留置権を行使できない、ということです。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問29|民法

物権的請求権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. A所有の甲土地上に権原なくB所有の登記済みの乙建物が存在し、Bが乙建物をCに譲渡した後も建物登記をB名義のままとしていた場合において、その登記がBの意思に基づいてされていたときは、Bは、Aに対して乙建物の収去および甲土地の明渡しの義務を免れない。
  2. D所有の丙土地上に権原なくE所有の未登記の丁建物が存在し、Eが丁建物を未登記のままFに譲渡した場合、Eは、Dに対して丁建物の収去および丙土地の明渡しの義務を負わない。
  3. 工場抵当法により工場に属する建物とともに抵当権の目的とされた動産が、抵当権者に無断で同建物から搬出された場合には、第三者が即時取得しない限り、抵当権者は、目的動産をもとの備付場所である工場に戻すことを請求することができる。
  4. 抵当権設定登記後に設定者が抵当不動産を他人に賃貸した場合において、その賃借権の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、賃借人の占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、賃借人に対して、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができ
    る。
  5. 動産売買につき売買代金を担保するために所有権留保がされた場合において、当該動産が第三者の土地上に存在してその土地所有権を侵害しているときは、留保所有権者は、被担保債権の弁済期到来の前後を問わず、所有者として当該動産を撤去する義務を免れない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】

1.A所有の甲土地上に権原なくB所有の登記済みの乙建物が存在し、Bが乙建物をCに譲渡した後も建物登記をB名義のままとしていた場合において、その登記がBの意思に基づいてされていたときは、Bは、Aに対して乙建物の収去および甲土地の明渡しの義務を免れない。

1・・・妥当

判例(最判平6.2.8)によると

A所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由したBは、たとい右建物をCに譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、Aに対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。

と判示しています。

よって、「Bは、Aに対して乙建物の収去および甲土地の明渡しの義務を免れない」ので妥当です!

 

2.D所有の丙土地上に権原なくE所有の未登記の丁建物が存在し、Eが丁建物を未登記のままFに譲渡した場合、Eは、Dに対して丁建物の収去および丙土地の明渡しの義務を負わない。

2・・・妥当

判例(最判昭35.6.17)によると

『土地の所有権にもとづく物上請求権(物権的請求権)の訴訟においては、現実に家屋を所有することによつて現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害しているもの(もし、Fが土地を占有しているのであれば、F)を被告としなければならないのである。』

と判示しています。

つまり、Eは、未登記の丁建物をFに譲渡した場合、Eは、Dに対して、丁建物の収去・丙土地の明け渡しの義務はあるとは、言い切れません。

■Eは、丁建物の占有者ではございません。

すでに、Fが丁建物を買い取っており、占有している状況です。

そのため、Fに対して明渡請求や収去請求を行う流れとなります。

 

3.工場抵当法により工場に属する建物とともに抵当権の目的とされた動産が、抵当権者に無断で同建物から搬出された場合には、第三者が即時取得しない限り、抵当権者は、目的動産をもとの備付場所である工場に戻すことを請求することができる。

3・・・妥当

判例(最判昭57.3.12)によると

『工場抵当法二条の規定により工場に属する土地又は建物とともに抵当権の目的とされた動産が、備え付けられた工場から抵当権者の同意を得ないで搬出された場合には、第三者において即時取得をしない限りは、抵当権者は、搬出された目的動産をもとの備付場所である工場に戻すことを請求することができる。』

と判示しています。

よって、本肢は妥当です。

 

4.抵当権設定登記後に設定者が抵当不動産を他人に賃貸した場合において、その賃借権の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、賃借人の占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、賃借人に対して、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。

4・・・妥当

  • 「設定者」とは、「抵当権設定者」のことで、一般的には「債務者」です。
  • 「賃借人の占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるとき」とは、例えば、賃借人が動物をたくさん部屋で飼っていて、汚物の処理もせず、悪臭等で悲惨な状態にある場合等です。これだと、抵当不動産の価値が下がってしまいます。

判例(最判平17.3.10)によると

抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者であっても,抵当権設定登記後に占有権原の設定を受けたものであり,その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができる

と判示しています。

つまり、賃借人の占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、賃借人に対して、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができるので、妥当です。

 

5.動産売買につき売買代金を担保するために所有権留保がされた場合において、当該動産が第三者の土地上に存在してその土地所有権を侵害しているときは、留保所有権者は、被担保債権の弁済期到来の前後を問わず、所有者として当該動産を撤去する義務を免れない。

5・・・妥当ではない

「動産売買につき売買代金を担保するために所有権留保がされた場合」とは、動産の売買契約を締結したけど、「代金を支払うまで、動産の所有権は買主に移らず、引き続き売主にある」旨の特約がある場合です。

「留保所有権者」とは、動産の所有権を留保している者なので、下図の「動産の売主A」です。

判例(最判平21.3.10)によると(動産は買主Bに引き渡されているものとする)

動産の購入代金を立替払した者Aが,立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保する場合において,買主Bとの契約上,期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の到来前は当該動産を占有,使用する権原を有せず,その経過後は買主Bから当該動産の引渡しを受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができるとされているときは,所有権を留保した者Aは,第三者Cの土地上に存在してその土地所有権の行使を妨害している当該動産について,上記弁済期が到来するまでは,(所有権を留保した者は)特段の事情がない限り,撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,上記弁済期が経過した後は,留保された所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはない

と判示しています。

  • 弁済期「前」は、「Bが」動産を留置している・引渡しを受けています。
  • 弁済期「後」Bが代金を支払わない場合、「Aが」動産の引渡しを受けます。

つまり、弁済期「前」は、「Bが」動産の引渡しを受けているので、第三者Cは、「B」に対して撤去の請求などをすることはできます。留保所有権者Aに撤去義務はありません。

つまり、本問は「弁済期到来の前後を問わず」が妥当ではないです。

正しくは「留保所有権者Aは、弁済期が経過した後は、所有者として当該動産を撤去する義務を免れない。」です。

 


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問28|民法

Aが従来の住所または居所を去って行方不明となった場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. Aは自己の財産につき管理人を置いていたが、権限について定めていなかった場合であっても、管理人は、保存行為および、その財産の性質を変えない範囲内において利用または改良を行うことができる。
  2. Aが自己の財産につき管理人を置かなかったときは、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所は、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
  3. Aが自己の財産につき管理人を置いた場合において、Aの生死が明らかでないときは、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所は、管理人を改任することができる。
  4. Aの生死が7年間明らかでないときは、利害関係人の請求により、家庭裁判所はAについて失踪の宣告をすることができ、これにより、Aは、失踪の宣告を受けた時に死亡したものとみなされる。
  5. Aについて失踪の宣告が行われた場合、Aは死亡したものとみなされるが、Aが生存しているときの権利能力自体は、これによって消滅するものではない。

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】

1.Aは自己の財産につき管理人を置いていたが、権限について定めていなかった場合であっても、管理人は、保存行為および、その財産の性質を変えない範囲内において利用または改良を行うことができる。

1・・・正しい

権限の定めのない代理人は、「①保存行為」及び「②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」のみをする権限を有します(民法103条:解説動画はこちら)。

そして、財産の管理人は、上記103条に規定する①②の権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができます(民法28条前段)

つまり、管理人は、①②の行為は家庭裁判所の許可を得ずに行うことができます

 

2.Aが自己の財産につき管理人を置かなかったときは、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所は、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。

2・・・正しい

「従来の住所又は居所を去った者(不在者)」が「その財産の管理人を置かなかったとき」は、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができます(民法25条1項前段)。

よって、本問は正しいです。

 

3.Aが自己の財産につき管理人を置いた場合において、Aの生死が明らかでないときは、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所は、管理人を改任することができる。

3・・・正しい

不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができます(民法26条)。

よって、正しいです。

 

4.Aの生死が7年間明らかでないときは、利害関係人の請求により、家庭裁判所はAについて失踪の宣告をすることができ、これにより、Aは、失踪の宣告を受けた時に死亡したものとみなされる。

4・・・誤り

不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます(民法30条1項)。

そして、上記規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間(7年間)が満了した時に、死亡したものとみなします(民法31条)。

よって、本問は「失踪の宣告を受けた時」が誤りで、正しくは「7年間が満了した時」です。

失踪宣告の関連ポイントはこちら>>

 

5.Aについて失踪の宣告が行われた場合、Aは死亡したものとみなされるが、Aが生存していると
きの権利能力自体は、これによって消滅するものではない。

5・・・正しい

失踪宣告を受けた人は、死亡したとみなされます(民法31条)。

ただし、失踪宣告を受けた人(A)が、実際には生存している場合、Aに権利能力はあるので、Aは契約などの法律行為をすることができます

 


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問57|一般知識

行政機関の個人情報保護制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(2022年改正対応)

  1. 行政機関の長は、保有個人情報の利用停止請求があった場合には、当該利用停止請求者の求めに応じ、すべての事案において一時的に利用の停止を決定し、その上で利用停止の必要性、相当性について行政機関内において検討し、その必要がないと認められるときには、利用停止を解除する必要がある。
  2. 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合において、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができ、かつ、不開示情報に該当する箇所に関係する関係機関の同意が得られたときは、開示可能な部分について開示しなければならない。
  3. 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合には、個人の権利利益を保護するための特別の必要性の有無を考慮しても、開示請求者に対して開示することは一切認められない。
  4. 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に開示請求者以外のものに関する情報が含まれているときは、開示決定等をするにあたって、当該第三者に関する情報の内容等を当該情報に係る第三者に対して通知するとともに、聴聞の機会を付与しなければならない。
  5. 行政機関の長は、保有個人情報の開示について、当該保有個人情報が電磁的記録に記録されているときは、その種別、情報化の進展状況等を勘案して行政機関が定める方法により行う。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】

1.行政機関の長は、保有個人情報の利用停止請求があった場合には、当該利用停止請求者の求めに応じ、すべての事案において一時的に利用の停止を決定し、その上で利用停止の必要性、相当性について行政機関内において検討し、その必要がないと認められるときには、利用停止を解除する必要がある。

1・・・誤り

行政機関の長等は、利用停止請求があった場合において、当該利用停止請求に理由があると認めるときは、当該行政機関の長等の属する行政機関等における個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で、当該利用停止請求に係る保有個人情報の利用停止をしなければならない。
ただし、当該保有個人情報の利用停止をすることにより、当該保有個人情報の利用目的に係る事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、利用停止をしなくてもよいです(個人情報保護法100条)。

本問は「すべての事案において一時的に利用の停止を決定し、その上で利用停止の必要性、相当性について行政機関内において検討し、その必要がないと認められるときには、利用停止を解除する必要がある」が誤りです。このような記述は条文にありません。

 

2.行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合において、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができ、かつ、不開示情報に該当する箇所に関係する関係機関の同意が得られたときは、開示可能な部分について開示しなければならない。

2・・・誤り

行政機関の長等は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合において、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければなりません(個人情報保護法79条1項)。

本問は「不開示情報に該当する箇所に関係する関係機関の同意が得られたとき」というのが誤りです。「関係機関の同意」は不要です。

 

3.行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合には、個人の権利利益を保護するための特別の必要性の有無を考慮しても、開示請求者に対して開示することは一切認められない。

3・・・誤り

行政機関の長等は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示することができます(個人情報保護法80条)。

よって「個人の権利利益を保護するための特別の必要性の有無を考慮しても、開示請求者に対して開示することは一切認められない」は誤りです。上記の通り、開示が認められる場合はあります。

 

4.行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に開示請求者以外のものに関する情報が含まれているときは、開示決定等をするにあたって、当該第三者に関する情報の内容等を当該情報に係る第三者に対して通知するとともに、聴聞の機会を付与しなければならない。

4・・・誤り

開示請求に係る保有個人情報に国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人及び開示請求者以外の者(第三者)に関する情報が含まれているときは、行政機関の長等は、開示決定等をするに当たって、当該情報に係る第三者に対し、政令で定めるところにより、当該第三者に関する情報の内容その他政令で定める事項を通知して、意見書を提出する機会を与えることができる(個人情報保護法86条1項)。

「聴聞の機会を付与」する必要はないので誤りです。

「意見書を提出する機会を与えることができる」にすぎません。

 

5.行政機関の長は、保有個人情報の開示について、当該保有個人情報が電磁的記録に記録されているときは、その種別、情報化の進展状況等を勘案して行政機関が定める方法により行う。

5・・・正しい

保有個人情報の開示は、当該保有個人情報が、①文書又は図画に記録されているときは閲覧又は写しの交付により、②電磁的記録に記録されているときはその種別、情報化の進展状況等を勘案して行政機関等が定める方法により行う(個人情報保護法87条1項本文)。よって、本問は正しいです。

ちなみに、上記は原則で、例外もあります。
【例外】 閲覧の方法による保有個人情報の開示にあっては、行政機関の長等は、当該保有個人情報が記録されている文書又は図画の保存に支障を生ずるおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときは、その写しにより、これを行うことができる(個人情報保護法87条1項ただし書き)。

 


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問27|民法

意思表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される。これに対して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない。
  2. 契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことができる。この場合、当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない。
  3. 契約の申込みの意思表示に対して承諾の意思表示が郵送でなされた場合、当該意思表示が相手方に到達しなければ意思表示が完成せず契約が成立しないとすると取引の迅速性が損なわれることになるから、当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する。
  4. 意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けないが、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したときには、当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。
  5. 意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または制限行為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】

1.意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される。これに対して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない。

1・・・妥当ではない

【前半部分】

相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなします(民法97条2項)。

よって、前半部分は妥当です。

【後半部分】

判例(最判平10.6.11)によると

遺留分減殺の意思表示(遺留分が侵害されたから侵害された分を返してくれ!)が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなど判示の事情の下においては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点受取人に到達したものと認められる

と判示しています。

よって、後半部分の「認められることはない」が妥当ではありません。正しくは「認められることがある」です。

なお、「遺留分が侵害されたから侵害された分を返してくれ!」と請求することを、以前は「遺留分減殺請求」と呼んでいましたが、現在は「遺留分侵害額請求」という言葉に変わっています。

 

2.契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことができる。この場合、当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない。

2・・・妥当

意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができます(民法98条1項)。

公示による意思表示は、「最後に官報に掲載した日」又は「その掲載に代わる掲示を始めた日」から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなします

ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じません(民法98条3項)。

よって、本問は妥当です。

 

3.契約の申込みの意思表示に対して承諾の意思表示が郵送でなされた場合、当該意思表示が相手方に到達しなければ意思表示が完成せず契約が成立しないとすると取引の迅速性が損なわれることになるから、当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する。

3・・・妥当ではない

意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じます(民法97条1項)。

よって、承諾の意思表示」も、到達した時点で有効になって契約が成立します。

 

4.意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けないが、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したときには、当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。

4・・・妥当ではない

【前半部分】

意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられません(民法97条3項)

つまり、通知した後に制限行為能力者になっても、通知は有効なので、前半部分は妥当です。

【後半部分】

しかし、申込者が申込みの通知を発した後に「死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合」において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しません(民法526条)。

そのため、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したとき、契約は成立しないので、取消しもできません。

 

5.意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または制限行為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。

5・・・妥当ではない

意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができません(民法98条の2本文)。

簡単に言えば、「意思無能力者や未成年者・成年被後見人」に対して、意思表示をしても、意味がない、というということです。

よって、本問は「制限行為能力者」が妥当ではなく、正しくは「未成年者若しくは成年被後見人」です。

【具体例】 

例えば、未成年者が、親の同意を得て、アパートで一人暮らしをした。この未成年者が家賃を滞納していたので、賃貸人(大家)が賃料の不払いに基づいて賃貸借契約の解除の意思表示を未成年者に行った場合、この「解除の意思表示」は有効ではない、ということです。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問56|一般知識

国土交通省自動車局による自動運転ガイドラインに定められた車両の自動運転化の水準(レベル)に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. レベル1は、縦方向か横方向か、いずれかの車両運動制御に限定された機能についてシステムが運転支援を行い、安全運転については運転者が主体となる。
  2. レベル2は、縦方向・横方向、両方の方向の車両運動制御について自動運転機能を有するが、安全運転については運転者が主体となる。
  3. レベル3は、全ての方向の車両運動制御について自動運転機能を有し、人の介入を排除し、安全運転についてもシステム側が完全に主体となる。
  4. レベル4は、限られた領域で無人自動運転を実施し、システム側が安全運転主体となる。
  5. レベル5は、自動運転に関わるシステムが全ての運転タスクを実施し、システム側が安全運転主体となる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】

1.レベル1は、縦方向か横方向か、いずれかの車両運動制御に限定された機能についてシステムが運転支援を行い、安全運転については運転者が主体となる。

1・・・妥当

レベル1:「運転支援」 システムが前後・左右のいずれかの車両制御を実施します。
【例】 自動で止まる(自動ブレーキ)、前のクルマに付いて走る(ACC)、車線からはみ出さない(LKAS)

本問の「レベル1は、縦方向か横方向か、いずれかの車両運動制御に限定された機能についてシステムが運転支援を行い、安全運転については運転者が主体となる。」は妥当です。

 

2.レベル2は、縦方向・横方向、両方の方向の車両運動制御について自動運転機能を有するが、
安全運転については運転者が主体となる。

2・・・妥当

レベル2:①「特定条件下での自動運転機能(レベル1の組み合わせ)」
【例】車線を維持しながら前のクルマに付いて走る(LKAS+ACC)

②「特定条件下での自動運転機能(高機能化)」
【例】 高速道路での自動運転モード機能、遅いクルマがいれば自動で追い越す、高速道路の分合流を自動で行う

本問の「レベル2は、縦方向・横方向、両方の方向の車両運動制御について自動運転機能を有するが、
安全運転については運転者が主体となる。」は妥当です。

 

3.レベル3は、全ての方向の車両運動制御について自動運転機能を有し、人の介入を排除し、安
全運転についてもシステム側が完全に主体となる。

3・・・妥当ではない

レベル3:「条件付自動運転」 システムが全ての運転タスクを実施するが、システムの介入要求等に対してドライバーが適切に対応することが必要

レベル3は、システム(機械)で運転しますが、システムでの運転が難しい場合は、人が介入して運転します。

「人の介入を排除し」という部分が妥当ではないです。

 

4.レベル4は、限られた領域で無人自動運転を実施し、システム側が安全運転主体となる。

4・・・妥当

レベル4:「特定条件下における完全自動運転」 特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施

本問の「レベル4は、限られた領域で無人自動運転を実施し、システム側が安全運転主体となる。」は妥当です。

 

5.レベル5は、自動運転に関わるシステムが全ての運転タスクを実施し、システム側が安全運転
主体となる。

5・・・妥当

レベル5:完全自動運転常にシステムが全ての運転タスクを実施

本問の「レベル5は、自動運転に関わるシステムが全ての運転タスクを実施し、システム側が安全運転
主体となる。」は妥当です。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問26|行政法

公立学校に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.公立高等専門学校の校長が、必修科目を履修しない学生を原級留置処分または退学処分にするに際しては、その判断は校長の合理的な教育的裁量に委ねられる。

イ.公立中学校の校庭が一般に開放され、校庭を利用していた住民が負傷したとしても、当該住民は本来の利用者とはいえないことから、その設置管理者が国家賠償法上の責任を負うことはない。

ウ.公立小学校を廃止する条例について、当該条例は一般的規範を定めるにすぎないものの、保護者には特定の小学校で教育を受けさせる権利が認められることから、その処分性が肯定される。

エ.市が設置する中学校の教員が起こした体罰事故について、当該教員の給与を負担する県が賠償金を被害者に支払った場合、県は国家賠償法に基づき、賠償金の全額を市に求償することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:2(アエが妥当)

【解説】

ア.公立高等専門学校の校長が、必修科目を履修しない学生を原級留置処分または退学処分にするに際しては、その判断は校長の合理的な教育的裁量に委ねられる。

ア・・・妥当

判例(最判平8.3.8)によると

『高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである』

と判示しています。

よって、本肢は妥当な内容です!

 

イ.公立中学校の校庭が一般に開放され、校庭を利用していた住民が負傷したとしても、当該住民は本来の利用者とはいえないことから、その設置管理者が国家賠償法上の責任を負うことはない。

イ・・・妥当ではない

判例(最判平5.3.30)によると

幼児が、テニスの審判台に昇り、その後部から座席部分の背当てを構成している左右の鉄パイプを両手で握つて降りようとしたために転倒した審判台の下敷きになつて死亡した場合において、当該審判台には、本来の用法に従つて使用する限り、転倒の危険がなく、右幼児の行動が当該審判台の設置管理者の通常予測し得ない異常なものであつたなど判示の事実関係の下においては、設置管理者は、右事故につき、国家賠償法2条1項所定の損害賠償責任を負わない

と判示しています。

つまり、国賠法上の責任を負わない理由は「当該住民は本来の利用者とはいえないから」ではありません。

「設置管理者の通常予測し得ない異常なものであれば」国賠法上の責任を負いません。

 

ウ.公立小学校を廃止する条例について、当該条例は一般的規範を定めるにすぎないものの、保護者には特定の小学校で教育を受けさせる権利が認められることから、その処分性が肯定される。

ウ・・・妥当ではない

判例(最判平14.4.25)によると

『本件条例(公立小学校を廃止する条例)は、東京都千代田区内に設置されていたすべての区立小学校を廃止し、新たに区立小学校 校を設置すること等をその内容とするものであるところ、原審が適法に確 8定した事実関係によれば、上告人(保護者)らの子が通学していた区立小学校の廃止後に新たに設置され就学校として指定を受けた区立小学校は、上告人らの子らにとって社会生活上通学することができる範囲内にないものとは認められない。これによれば、本件条例は一般的規範にほかならず上告人らは、被上告人東京都千代田区が社会生活上通学可能な範囲内に設置する小学校においてその子らに法定年限の普通教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するが、具体的に特定の区立小学校で教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するとはいえないとして、本件条例が抗告訴訟の対象となる処分に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができる 』

と判示しています。

具体的に特定の区立小学校で教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するとはいえない

「保護者には、具体的に特定の区立小学校で教育を受けさせる権利はない」ということなので
本件条例は抗告訴訟の対象となる処分にはあたりません。
よって、処分性が否定されました。
ゆえに、妥当ではないです。

 

エ.市が設置する中学校の教員が起こした体罰事故について、当該教員の給与を負担する県が賠償金を被害者に支払った場合、県は国家賠償法に基づき、賠償金の全額を市に求償することができる。

エ・・・妥当

判例(最判平21.10.23)によると

市町村が設置する中学校の教諭がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に生徒に損害を与えた場合において,当該教諭の給料その他の給与を負担する都道府県が国家賠償法1条1項,3条1項に従い上記生徒に対して損害を賠償したときは,当該都道府県は,同条2項に基づき,賠償した損害の全額を当該中学校を設置する市町村に対して求償することができるものと解するのが相当である』

と判示しています。

よって、本問は妥当です。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略