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令和5年・2023|問44|行政法・記述

Y市議会の議員であるXは、2023年7月に開催されたY市議会の委員会において発言(以下「当該発言」という。)を行った。これに対して、当該発言は議会の品位を汚すものであり、Y市議会会議規則α条に違反するとして、Y市議会の懲罰委員会は、20日間の出席停止の懲罰を科すことが相当であるとの決定を行った。Y市議会の議員に対する懲罰は、本会議で議決することによって正式に決定されるところ、本会議の議決は、9月に招集される次の会期の冒頭で行うこととし、会期は終了した。これに対し、Xは、①問題となった当該発言は市政に関係する正当なものであり、議会の品位を汚すものではなく、会議規則には違反しない、②予定されている出席停止の懲罰は20日と期間が長く、これが科されると議員としての職責を果たすことができない、と考えている。

9月招集予定の次の会期までの間において、Xは、出席停止の懲罰を回避するための手段(仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る。)を検討している。次の会期の議会が招集されるまで1ヵ月程度の短い期間しかないことを考慮に入れたとき、誰に対してどのような手段をとることが有効適切か、40字程度で記述しなさい。

(参照条文)
地方自治法
134条

  1. 普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。
  2. 懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない。

135条

  1. 懲罰は、左の通りとする。
    一 公開の議場における戒告
    二 公開の議場における陳謝
    三 一定期間の出席停止
    四 除名
  2. 以下略

Y市議会会議規則
α条 議員は、議会の品位を重んじなければならない。

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【答え】:Y市に対して、出席停止の懲罰の差止訴訟を提起し、仮の差止めを申立てることが有効適切。(42文字)

【解説】

Y市議会の議員であるXは、2023年7月に開催されたY市議会の委員会において発言(以下「当該発言」という。)を行った。これに対して、当該発言は議会の品位を汚すものであり、Y市議会会議規則α条に違反するとして、Y市議会の懲罰委員会は、20日間の出席停止の懲罰を科すことが相当であるとの決定を行った。Y市議会の議員に対する懲罰は、本会議で議決することによって正式に決定されるところ、本会議の議決は、9月に招集される次の会期の冒頭で行うこととし、会期は終了した。これに対し、Xは、①問題となった当該発言は市政に関係する正当なものであり、議会の品位を汚すものではなく、会議規則には違反しない、②予定されている出席停止の懲罰は20日と期間が長く、これが科されると議員としての職責を果たすことができない、と考えている。

9月招集予定の次の会期までの間において、Xは、出席停止の懲罰を回避するための手段(仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る。)を検討している。次の会期の議会が招集されるまで1ヵ月程度の短い期間しかないことを考慮に入れたとき、誰に対してどのような手段をとることが有効適切か、40字程度で記述しなさい。

問題文の状況

X議員は、Y市議会の委員会で行った発言が議会の品位を汚すものではなく、会議規則に違反していないと主張しています。懲罰委員会は、その発言に対し20日間の出席停止の懲罰を科すことを決定しましたが、正式な議決は次の会期の開始時に行うこととされました。X議員は、予定された出席停止の期間が長く、自らの職責を果たせなくなると主張しています。そして、Xは、出席停止の懲罰を回避するための手段(仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る。)を検討している。

質問内容

次の会期の議会が招集されるまで1ヵ月程度の短い期間しかないことを考慮に入れたとき、「①誰に対して」「②どのような手段をとることが有効適切か」。この2つを考えます。

解説

まず、②②どのような手段をとることが有効適切かが分かれば、①誰に対してという相手方も分かります。そのため、「②どのような手段をとることが有効適切か」を考えます。

②どのような手段をとることが有効適切か

目的が「出席停止処分」がなされることを防止したいということであり、かつ、1ヵ月程度の短い期間しかないことを考慮すると、「出席停止処分の差止訴訟の提起」した上で、「仮の差止めの申し立て」も必要と判断できます。

注意点

  1. 仮の差止め」は、訴訟ではないので、訴えの提起ではなく、「申し立て」で行う。
  2. 仮の差止め」は、単独では行えず、差止めの訴えを提起した後に申し立てる

(差止めの訴えの要件) 行政事件訴訟法第37条の4 差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。

(仮の義務付け及び仮の差止め) 行政事件訴訟法37条の5第2項 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(仮の差止め)ができる。

①誰に対して

出席停止処分をしようとしている行政庁は、「Y市議会の懲罰委員会」です。そして、処分をしようとする行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、差止訴訟は、「処分をしようとする行政庁の所属する国又は公共団体」を被告として提起しなければなりません。そのため、「Y市」を被告として訴えを提起します。

(被告適格等) 行政事件訴訟法11条 処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体

上記をまとめると下記の通りです。
Y市に対して、出席停止の懲罰の差止訴訟を提起し、仮の差止めを申立てることが有効適切。(42文字)


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問43|行政法・多肢選択

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項)には出訴期間の制限があり、当該処分があったことを知った日又は当該処分の日から一定期間を経過したときは、原則としてすることができない(同法14条1項、2項)。ただし、出訴期間が経過した後でも、当該処分が[ ア ]であれば、当該処分の取消しの訴えとは別の訴えで争うことができる。

そのような訴えとしては複数のものがある。まず、行政事件訴訟法上の法定抗告訴訟としては、[ イ ]がこれに当たる。また、私法上の法律関係に関する訴訟においても処分が[ ア ]か否かが争われ得るところ、この訴えは[ ウ ]と呼ばれ、行政事件訴訟法の一部が準用される。

最高裁判所の判例は、処分が[ ア ]であるというためには、当該処分に[ エ ]な瑕疵がなければならないとする考えを原則としている。

1:原始的不能 2:行政不服申立て 3:外見上客観的に明白 4:住民訴訟 5:撤回可能 6:無効確認の訴え 7:不当 8:実質的当事者訴訟 9:重大かつ明白 10:差止めの訴え 11:実体的 12:仮の救済申立て 13:形式的当事者訴訟 14:無効 15:義務付けの訴え 16:重大又は明白 17:客観訴訟 18:手続的 19:争点訴訟 20:不作為の違法確認の訴え

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【答え】:14(無効)、イ:6(無効確認の訴え)、ウ:19(争点訴訟)、エ:9(重大かつ明白)

処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項)には出訴期間の制限があり、当該処分があったことを知った日又は当該処分の日から一定期間を経過したときは、原則としてすることができない(同法14条1項、2項)。ただし、出訴期間が経過した後でも、当該処分が[ ア:無効 ]であれば、当該処分の取消しの訴えとは別の訴えで争うことができる。

そのような訴えとしては複数のものがある。まず、行政事件訴訟法上の法定抗告訴訟としては、[ イ:無効確認の訴え ]がこれに当たる。また、私法上の法律関係に関する訴訟においても処分が[ ア:無効 ]か否かが争われ得るところ、この訴えは[ ウ:争点訴訟 ]と呼ばれ、行政事件訴訟法の一部が準用される。

最高裁判所の判例は、処分が[ ア:無効 ]であるというためには、当該処分に[ エ:重大かつ明白 ]な瑕疵がなければならないとする考えを原則としている。

【解説】

ア.処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項)には出訴期間の制限があり、当該処分があったことを知った日又は当該処分の日から一定期間を経過したときは、原則としてすることができない(同法14条1項、2項)。ただし、出訴期間が経過した後でも、当該処分が[ ア ]であれば、当該処分の取消しの訴えとは別の訴えで争うことができる。

ア・・・無効

原則、出訴期間が経過してしまったら、争うことができなくなってしまいます。しかし、例外的に、処分が無効であれば、出訴期間が経過した後でも争うことができます。よって、アには「無効」が入ります。

イ.ウ.出訴期間が経過した後でも、当該処分が[ ア:無効 ]であれば、当該処分の取消しの訴えとは別の訴えで争うことができる。そのような訴えとしては複数のものがある。まず、行政事件訴訟法上の法定抗告訴訟としては、[ イ ]がこれに当たる。また、私法上の法律関係に関する訴訟においても処分が[ ア:無効 ]か否かが争われ得るところ、この訴えは[ ウ ]と呼ばれ、行政事件訴訟法の一部が準用される。

イ・・・無効確認の訴え / ウ・・・争点訴訟

処分が無効の場合、取消訴訟で争うこともできますが、別の訴えで争うことができます。それは、「無効確認訴訟」です。よって、イには「無効確認の訴え」が入ります。
そして、処分等の無効等を前提に「私法上の権利義務(法律関係)」について争うものを「争点訴訟」と言います。したがって、ウには「争点訴訟」が入ります。

エ.最高裁判所の判例は、処分が[ ア:無効 ]であるというためには、当該処分に[ エ ]な瑕疵がなければならないとする考えを原則としている。

エ・・・重大かつ明白

当然無効となる行政行為」とは、重大かつ明白な瑕疵がある行政行為です。そのため、エには「重大かつ明白」が入ります。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問42|行政法・多肢選択

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

公営住宅法は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を建設し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することにより、国民生活の安定と[ ア ]の増進に寄与することを目的とするものであって(1条)、この法律によって建設された公営住宅の使用関係については、管理に関する規定を設け、家賃の決定、明渡等について規定し(第3章)、また、法〔=公営住宅法〕の委任(25条)に基づいて制定された条例〔=東京都営住宅条例〕も、使用許可、使用申込、明渡等について具体的な定めをしているところである。右法及び条例の規定によれば、公営住宅の使用関係には、[ イ ]の利用関係として公法的な一面があることは否定しえないところであって、入居者の募集は公募の方法によるべきこと(法16条)などが定められており、また、特定の者が公営住宅に入居するためには、事業主体の長から使用許可を受けなければならない旨定められているのであるが(条例3条)、他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋[ ウ ]と異なるところはなく、このことは、法が賃貸(1条、2条)等私法上の[ ウ ]に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律していることからも明らかであるといわなければならない。したがって、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、[ エ ]の法理の適用があるものと解すべきである。ところで、右法及び条例の規定によれば、事業主体は、公営住宅の入居者を決定するについては入居者を選択する自由を有しないものと解されるが、事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、両者の間には[ エ ]を基礎とする法律関係が存するものというべきであるから、公営住宅の使用者が法の定める公営住宅の明渡請求事由に該当する行為をした場合であっても、賃貸人である事業主体との間の[ エ ]を破壊するとは認め難い特段の事情があるときには、事業主体の長は、当該使用者に対し、その住宅の使用関係を取り消し、その明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。
(最一小判昭和59年12月13日民集38巻12号1411頁〈文章を一部省略した。〉)
1:民間活力 2:私有財産 3:信頼関係 4:所有権移転関係 5:社会福祉 6:普通財産 7:特別権力関係 8:公法関係 9:街づくり 10:物品 11:売買契約関係 12:賃貸借関係 13:公用物 14:事業収益 15:請負契約関係 16:委託契約関係 17:定住環境 18:公の営造物 19:管理関係 20:一般権力関係

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【答え】:ア:5(社会福祉)、イ:18(公の営造物)、ウ:12(賃貸借関係)、エ:3(信頼関係)

公営住宅法は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を建設し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することにより、国民生活の安定と[ ア:社会福祉 ]の増進に寄与することを目的とするものであって(1条)、この法律によって建設された公営住宅の使用関係については、管理に関する規定を設け、家賃の決定、明渡等について規定し(第3章)、また、法〔=公営住宅法〕の委任(25条)に基づいて制定された条例〔=東京都営住宅条例〕も、使用許可、使用申込、明渡等について具体的な定めをしているところである。右法及び条例の規定によれば、公営住宅の使用関係には、[ イ:公の営造物 ]の利用関係として公法的な一面があることは否定しえないところであって、入居者の募集は公募の方法によるべきこと(法16条)などが定められており、また、特定の者が公営住宅に入居するためには、事業主体の長から使用許可を受けなければならない旨定められているのであるが(条例3条)、他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋[ ウ:賃貸借関係 ]と異なるところはなく、このことは、法が賃貸(1条、2条)等私法上の[ ウ:賃貸借関係 ]に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律していることからも明らかであるといわなければならない。したがって、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、[ エ:信頼関係 ]の法理の適用があるものと解すべきである。ところで、右法及び条例の規定によれば、事業主体は、公営住宅の入居者を決定するについては入居者を選択する自由を有しないものと解されるが、事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、両者の間には[ エ:信頼関係 ]を基礎とする法律関係が存するものというべきであるから、公営住宅の使用者が法の定める公営住宅の明渡請求事由に該当する行為をした場合であっても、賃貸人である事業主体との間の[ エ:信頼関係 ]を破壊するとは認め難い特段の事情があるときには、事業主体の長は、当該使用者に対し、その住宅の使用関係を取り消し、その明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。

【解説】

ア.公営住宅法は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を建設し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することにより、国民生活の安定と[ ア ]の増進に寄与することを目的とするものであって(1条)

ア・・・社会福祉

公営住宅が何の目的で存在するのかを考えると分かりやすいです。定額所得者に対して、安い家賃で賃貸することで、「国民生活の安定」と「社会福祉の増進」に貢献することを目的としています。よって、アには「社会福祉」が入ります。 公営住宅法1条
この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

イ.右法(公営住宅法)及び条例の規定によれば、公営住宅の使用関係には、[ イ ]の利用関係として公法的な一面があることは否定しえない

イ・・・公の営造物

「公営住宅の使用関係には、[ イ ]の利用関係として、公法的な一面があることは否定できない」と書いてあります。「公の営造物」とは、公の目的に供されているモノや設備を言います。例えば、学校、図書館、病院、公園、道路、橋、ダム、空港、公営住宅などが含まれます。これらの施設は、一般の人々が利用することができ、社会全体の利益や福祉を促進するために設けられています。そのため、公営住宅も公の営造物です。よって、イには「公の営造物」が入ります。

ウ.特定の者が公営住宅に入居するためには、事業主体の長から使用許可を受けなければならない旨定められているのであるが(条例3条)、他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法(公営住宅法)及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋[ ウ:賃貸借関係 ]と異なるところはなく、このことは、法(公営住宅法)が賃貸(1条、2条)等私法上の[ ウ:賃貸借関係 ]に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律していることからも明らかであるといわなければならない。

ウ・・・賃貸借関係

「前示のような法(公営住宅法)及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋[ ウ ]と異なるところはなく」という部分から、事業主体と入居者との間の法律関係は、民法上の賃貸借の関係と同じと分かります。また、「公営住宅法が、「賃貸」といった民法上の[ ウ ]に関連した用語を使用して公営住宅の使用関係を規定されていることからも明白」だと言っています。ここからもウには「賃貸借関係」が入ります。

エ.賃貸人である事業主体との間の[ エ ]を破壊するとは認め難い特段の事情があるときには、事業主体の長は、当該使用者に対し、その住宅の使用関係を取り消し、その明渡を請求することはできないものと解するのが相当

エ・・・信頼関係

「賃貸人である事業主体との間の[ エ ]を破壊するとは認められない事情があるときには、事業主体の長は、当該使用者に対し、その住宅の使用関係を取り消し、その明渡を請求することはできない」と言っています。不動産の賃貸借契約は、当事者同士の信頼関係にもとづいた継続的な契約であるため、簡単には解除が認められません。 ただし、信頼関係を破壊するほどの背信的行為があれば、貸主から契約を解除できます。よって、エには「信頼関係」が入ります。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問41|憲法・多肢選択

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、[ ア ]の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ[ イ ]な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。 出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが[ ウ ]に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨(略)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら[ エ ]を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、・・・(中略)・・・例外的に事前差止めが許されるものというべきであ〔る〕(以下略)。 (最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)
1:名誉毀損 2:公正な論評 3:公共の安全 4:私的自治 5:公務の遂行 6:公の批判 7:実質的 8:公益 9:営利 10:公正 11:出版者の収益 12:事実の摘示 13:公共の利害 14:国民の自己統治 15:公権力の行使 16:個別的 17:合理的 18:明確 19:著者の自己実現 20:公共の福祉

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【答え】:ア:6(公の批判)、イ:18(明確)、ウ:13(公共の利害)、エ:8(公益)

表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、[ ア:公の批判 ]の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ[ イ:明確 ]な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。 出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが[ ウ:公共の利害 ]に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨(略)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら[ エ:公益 ]を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、・・・(中略)・・・例外的に事前差止めが許されるものというべきであ〔る〕(以下略)。 (最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)

【解説】

ア.表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、[ ア ]の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって

ア・・・公の批判

上記文章を要約すると下記の通りです。
「表現行為に対する事前抑制は、出版物や放送などの表現物が公の場に出る前に、その内容を抑止したり遅延させたりして、読者や聴衆に届く機会を減少させ、[ ア ]の機会を失わせるものである。また、事前抑制は予測に基づくため広範囲で行われ、濫用の可能性があります。実際には事後制裁よりも効果が高いと考えられます。」

表現物が公の場に出る前に、その内容を抑止したり遅延させたりすると、「①何かの機会を失わせ」また「②濫用の恐れを減らせる」と言っています。①②はいずれも、世間にとってマイナスとなることを失くしたり、減らすことができるということが分かります。すると、アには「公の批判」が入ります。

イ.表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、[ ア:公の批判 ]の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、

表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ[ イ ]な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。

イ・・・明確

上記文章を要約すると下記の通りです。
「表現行為に対する事前抑制は、出版物や放送などが公に出る前にその内容を抑止し、読者や聴衆に届く機会を減少させ、批判も減らせるものです。事前抑制は予測に基づくため広範囲で行われ、濫用の可能性があります。実際には事後制裁よりも効果が高いと考えられ、

表現行為に対する事前抑制は、憲法21条の表現の自由を保障し検閲を禁止する趣旨に照らして、厳格かつ[ イ ]な要件の下でのみ許容される。」

つまり、事前抑制は事後制裁よりも効果が高いので、その分、制限が厳しいということです。そのため、事前抑制ができる要件は、厳格かつ[ イ ]でなければならず、厳格かつ[ イ ]な要件を満たす場合にのみ事前抑制は可能、と言っています。すると、イには「明確」が入ります。制限の効果が高いため、要件は、明確で、かつ、厳しくしないといけないです。

ウ.出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが[ ウ:公共の利害 ]に関する事項であるということができ

ウ・・・公共の利害

上記文章を要約すると下記の通りです。
「出版物の頒布等の事前差止めは、特に公務員や公職選挙の候補者に関する評価や批判などの表現に対するものであれば、一般的には[ ウ ]に関する事項であると見なされる。」

公務員等は、「公共サービス」を提供し、行政業務を遂行を行います。そのため公務員などに関する評価や批判などの表現自体が公共の利害にも影響します。そのため、ウには「公共の利害」が入ります。

エ.その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら[ エ:公益 ]を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、・・・(中略)・・・例外的に事前差止めが許されるものというべきであ〔る〕

エ・・・公益

どういった場合に、例外的に事前差止めが許されるのかを考えると
「表現内容」が「真実ではない」または「公益目的ではない」ことが明白であって、「被害者が回復困難な損害を被る可能性が高い場合」、事前差止めが例外的にできる、とすると妥当な文章になります。よって、エには「公益」が入ります。「公益を図る目的」というのは、ワンセットで覚えておきましょう。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問40|会社法・会計参与・会計監査人

会計参与と会計監査人の差異に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 大会社、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会計監査人の設置が義務付けられているのに対して、当該いずれの会社形態においても、会計参与は任意に設置される機関である。
  2. 会計参与は会社法上「役員」に位置づけられるが、会計監査人は「役員」に含まれない。
  3. 会計参与は定時株主総会において選任決議が必要であるのに対して、会計監査人については、定時株主総会において別段の決議がなされなかったときは、再任されたものとみなす。
  4. 会計参与は、取締役または執行役と共同して計算関係書類を作成するが、会計監査人は計算関係書類の監査を行う。
  5. 会計監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為等を発見したときは、遅滞なく、これを監査役等に報告しなければならないが、会計参与にはこのような報告義務はない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.大会社、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会計監査人の設置が義務付けられているのに対して、当該いずれの会社形態においても、会計参与は任意に設置される機関である。

1・・・正しい

監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、必ず会計監査人を置かなければなりません(会社法327条5項)。一方、会計参与の設置は、原則として任意です。よって、正しいです。

2.会計参与は会社法上「役員」に位置づけられるが、会計監査人は「役員」に含まれない。

2・・・正しい

役員(取締役、会計参与及び監査役)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任します(会社法329条1項)。つまり、会計参与は会社法上「役員」に位置づけられていますが、会計監査人は「役員」に含まれません。よって、正しいです。

会計参与とは?

会計参与とは、取締役と共同して「計算書類等を作成すること」および「会計参与報告を作成すること」を職務とする者です(374条1項)。取締役や監査役と同様、役員に該当します。

 会計参与による計算書類等の備置き

会計参与は、下記の書類等を、当該会計参与が定めた場所に備え置かなければなりません(378条1項)。
  1. 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書
  2. 会計参与報告
  3. 臨時計算書類及び④会計参与報告

会計監査人とは

会計監査人は、公認会計士または監査法人しかなれません。つまり、企業会計のプロといったイメージです。 監査役は役員なので、会社の内部の人です(社外の人もいますが、、、)。つまり、内部監査です。それでは適正な監査が行われないこともあります。 一方、会計監査人は、会社の外部から、独立して、株式会社の監査を行います。つまり、外部監査です。

会計監査人を設置しなければならない会社

  1. 大会社
  2. 監査等委員会設置会社
  3. 指名委員会等設置会社

会計監査人と監査役と会計参与の違い

  1. まず、会計参与が、取締役と共同して計算書類を作成します。
  2.  この計算書類について、初めに会計監査人が監査を行い、会計監査報告を作成します。
  3.  その後、監査役が審査して、監査報告を作成します。
3.会計参与は定時株主総会において選任決議が必要であるのに対して、会計監査人については、定時株主総会において別段の決議がなされなかったときは、再任されたものとみなす。

3・・・正しい

会計参与、株主総会の決議によって選任します(会社法329条1項)。一方、会計監査人は、別段の決議がされなかったときは、定時株主総会において再任されたものとみなされます(会社法338条2項)。よって、正しいです。

4.会計参与は、取締役または執行役と共同して計算関係書類を作成するが、会計監査人は計算関係書類の監査を行う。

4・・・正しい

会計参与は、取締役または執行役と共同して、計算書類等の作成をし、会計参与報告を作成しなければなりません(会社法374条1項、6項)。一方、会計監査人は、株式会社の計算書類等を監査し、会計監査報告を作成しなければなりません(会社法396条1項)。よって、正しいです。

5.会計監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為等を発見したときは、遅滞なく、これを監査役等に報告しなければならないが、会計参与にはこのような報告義務はない。

5・・・誤り

会計監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監査役に報告しなければなりません(会社法397条1項)。

会計参与は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを株主(監查役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければなりません(会社法375条1項)。つまり、会計監査人、会計参与ともに報告義務があるので誤りです。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問39|会社法

役員等の責任に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合には、株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず、株式会社と利益が相反する取引をした取締役または執行役は任務を怠ったものと推定する。
  2. 取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定する。
  3. 監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず、当該取締役が任務を怠ったものと推定されることはない。
  4. 非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができる。
  5. 自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合には、株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず、株式会社と利益が相反する取引をした取締役または執行役は任務を怠ったものと推定する。

1・・・正しい

取締役又は執行役が行った利益相反取引により会社に損害が発生した場合、当該利益相反取引を行った取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定されます(会社法423条3項1号)。よって、正しいです。

【具体例】 例えば、「会社Aの取締役」が、自分の友人や親しい関係者が経営する会社Bと取引をし、その取引によって自分自身が利益を得た場合、その取引が会社Aにとって不利益である場合、その取締役は、自らの利益を優先して会社Aの利益を守ることを怠ったとみなされます。会社法では、取締役や執行役には、会社の利益を最優先に考え、自己の利益との利益相反を避ける義務が課されています。

2.取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定する。

2・・・正しい

取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定されます(会社法423条2項)。よって、正しいです。

【具体例】 例えば、会社Aの取締役Xが、会社Aが取引している業界と同じ業界で別の会社Bを立ち上げ、会社Aと競合する商品を販売することを計画しています。Xは会社Aの業務や顧客情報にアクセスして会社Bは、1億円の利益をあげた。この場合、1億円が、会社Aに対する賠償責任の額と推定されることになります。

3.監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず、当該取締役が任務を怠ったものと推定されることはない。

3・・・誤り

株式会社には、取締役が監査等委員会からの承認を受けて行った取引がある場合、その取締役が任務を怠ったとみなされない特別なルールがあります。監査等委員会設置会社の取締役の利益相反により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員である場合を除き、当該取締役が任務を怠ったものと推定されません(任務懈怠責任を負わない)(会社法423条4項)。

【具体例】 例えば、株式会社Aの取締役Xが、自分の車Xを会社Aに売却する契約を締結した(利益相反取引)。これにより、会社は100万円の損害を受けた。しかし、会社Aが監査等委員会を設置しており、Xがその取引を監査等委員会からの承認を受けて行った場合、会社法第423条の4項に基づき、Xが任務を怠ったとみなされません。

ただし、Xが監査等委員(取締役)である場合、Xは任務懈怠責任を負います。

4.非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができる。

4・・・正しい

非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができます(会社法427条)。この契約を責任限定契約といいます。

【背景】 取締役等が業務を遂行する際には、多くの場合リスクが伴います。実際、非業務執行取締役の報酬は、それほど多くありません。それにも関わらず、大きな責任を負うのは、困ります。そのため、責任限定契約があります。これがあれば、非業務執行取締役が責任を負う範囲が明確に定められるため、多様な人材確保を実現しやすくなります。

5.自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできない。

5・・・正しい

株式会社と直接自己のために取引をした取締役等は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができません(会社法428条1項)。つまり、取締役などの役員が自分の利益のために会社との取引を行い、その取引によって会社に損害が発生した場合、役員が「任務を怠っていないこと」を証明しても、その責任を免れることはできません。役員が自分の利益のために会社との取引を行うことは、法律違反であり、損害賠償責任を負うことになります。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問38|会社法・種類株式

株式会社の種類株式に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款において、単元株式数の定めはなく、また、株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはないものとする。

  1. 株式会社が2以上の種類の株式を発行する場合には、各々の種類の株式について発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
  2. 公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができる。
  3. 株式会社は、株主総会または取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とすることを内容とする種類株式を発行することができる。
  4. 公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任することを内容とする種類株式を発行することができる。
  5. 株式会社は、株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないことを内容とする種類株式を発行することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】

1.株式会社が2以上の種類の株式を発行する場合には、各々の種類の株式について発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。

1・・・正しい

株式会社は、内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合には、一定事項及び発行可能種類株式総数定款で定めなければなりません(会社法108条2項)。よって、正しいです。

【具体例】「剰余金配当に関する種類株式」の場合、当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容、発行可能種類株式総数を定款で定めます。

2.公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができる。

2・・・誤り

非公開会社については、「定款の定め」により、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができます。

ただし、本問は問題文に「なお、定款において、単元株式数の定めはなく、また、株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはないものとする」という制限があるので、上記種類株式を発行することができません。よって誤りです。

詳細解説

まず、大前提ですが、
非公開会社(公開会社でない会社)は、
→ 「1株につき2個以上の議決権」を与える種類株式を、定款で定めれば発行できます。

つまり、通常は「定款で定めさえすればOK」なんです。

では、本問特有の話。

問題文にはこうあります。

「なお、定款において、単元株式数の定めはなく、また、株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはないものとする」

このうち特に重要なのは
「株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはない」という部分です。

これは何を意味しているか?

議決権の個数に「株主ごとで差をつける」ことはできない
(=全株主について一律のルールしか使えない)
という縛りを意味しています。

ここで注意してほしいのは、
本来、「1株2個の議決権をもつ種類株式」を発行しようとすると、
普通株式と「種類株式」とで、議決権の数に差ができてしまう、ということ。

例えば、

普通株式 ⇒ 議決権数:1個
特別な種類株式 ⇒ 議決権数:2個

こんな感じです。

普通株式の株主と、種類株式の株主で議決権の個数に差がつくわけですよね。

でも、問題文では
「株主ごとに異なる取扱いをしてはいけない」と指定されています。

つまり、

種類株式を発行して、株主によって議決権数が違う
→ NG(できない)

だから、
この問題文の条件下では、1株2議決権の種類株式は発行できない。

→ よって「誤り」ということになります。

【関連ポイント】

株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければなりません(会社法109条1項)。ただし、公開会社でない株式会社(非公開会社)は、「剰余金の配当を受ける権利」「残余財産の分配を受ける権利」「株主総会における議決権(本肢の「1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容」)」について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます(会社法109条2項)。

3.株式会社は、株主総会または取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とすることを内容とする種類株式を発行することができる。

3・・・正しい

株式会社は、「株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする」旨の種類株式を発行することができます(会社法108条1項8号)。この種類株式を「拒否権付種類株式」と呼ばれます。

【具体例】 例えば、取締役の選任について、「当会社の取締役の選任については、株主総会の決議のほか、A種類株式を有する株主の種類株主総会の決議を要する。」という規定があった場合、 株主総会によって取締役としてXを選任する決議が成立したときも、拒否権付種類株主総会で当該議案が否決されたときは、Xは取締役となることができません。

4.公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任することを内容とする種類株式を発行することができる。

4・・・正しい

公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、「当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任すること」を内容とする種類株式を発行することができます(会社法108条1項9号)。この種類の株式を「役員選任権付種類株式」といいます。役員を選任する権利を持つ株式です。通常、役員は株主総会で選任するのですが、この種類株式が発行されている場合、この種類株式を持つ株主で役員を決めます。

【具体例】 ベンチャーキャピタル(投資会社)が、ベンチャー企業に出資をして、役員を投資会社が決める場合に利用します。投資会社は、経営のプロたちを用意できます。そのため、ベンチャー企業にお金を出す代わりに、役員を選任する権利を投資会社に与える場合、「役員選任権付種類株式」を利用します。

5.株式会社は、株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないことを内容とする種類株式を発行することができる。

5・・・正しい

株式会社は、「株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないこと」を内容とする種類株式を発行することができます(会社法108条1項3号)。この株式を持つ人は議決権を行使できません。しかし、一方で、配当や残余財産の配当が多くもらえたりする場合があります。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問37|会社法

設立時取締役に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。なお、設立しようとする株式会社は、種類株式発行会社ではないものとする。

ア.発起設立においては、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならないが、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなす。

イ.募集設立においては、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。

ウ.設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は3人以上でなければならない。

エ.発起設立においては、法人でない発起人は設立時取締役に就任することができるが、募集設立においては、発起人は設立時取締役に就任することはできない。

オ.設立時取締役は、その選任後、株式会社が成立するまでの間、発起人と共同して、株式会社の設立の業務を執行しなければならない。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:5(エ・オが誤り)

【解説】

ア.発起設立においては、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならないが、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなす。

ア・・・正しい

発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく設立時取締役を選任しなければなりません(会社法38条1項)。定款で設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなします(会社法38条4項)。よって、本肢は正しいです。

イ.募集設立においては、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。

イ・・・正しい

募集設立の場合、発起人以外の引受人を募集をするので、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人の選任は、創立総会の決議によって行わなければなりません(会社法88条1項)。

【詳細解説】 募集設立によって会社を設立する場合、発起人だけでなく、多くの人々から出資を募集します。この出資を引き受けた人々は「引受人」と呼びます。発起人と引受人が、設立される会社の株主(オーナー)になるので、設立時取締役などは、発起人と引受人によって構成される創立総会で決めることになります。

ウ.設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は3人以上でなければならない。

ウ・・・正しい

設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は、3人以上必要です(会社法39条3項)。よって、正しいです。

エ.発起設立においては、法人でない発起人は設立時取締役に就任することができるが、募集設立においては、発起人は設立時取締役に就任することはできない。

エ・・・誤り

設立時取締役とは、株式会社の設立に際して取締役となる者をいいます(会社法38条1項)。そして、発起設立、募集設立のいずれであっても、法人が設立時取締役に就任することはできません(会社法331条1項1号)。一方、発起人は設立時取締役に就任することはできます。よって、「募集設立においては、発起人は設立時取締役に就任することはできない」が誤りです。前半部分の「発起設立においては、法人でない発起人は設立時取締役に就任することができる」は正しいです。

オ.設立時取締役は、その選任後、株式会社が成立するまでの間、発起人と共同して、株式会社の設立の業務を執行しなければならない。

オ・・・誤り

設立時取締役は、設立手続きに関する調査を行います(会社法46条、93条)。発起人と共同して、株式会社の設立の業務を執行するわけではありません。よって、誤りです。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問36|商法

商行為に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 商行為の代理人が本人のためにすることを示さないで商行為をした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。
  2. 商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。
  3. 商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
  4. 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、当該通知を発することを怠ったときは、その商人はその申込みを承諾したものとみなす。
  5. 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したかどうかにかかわらず、申込みを受けた商人の費用をもって、その物品を保管しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.商行為の代理人が本人のためにすることを示さないで商行為をした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

1・・・正しい

商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生じます。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げません(商法504条)。よって、正しいです。

商法504条は、代理人が本人のために行った行為に関する規定です。代理人が本人のために行った行為は、本人に帰属し、本人と相手方の間で法的効力を持ちます。ただし、相手方が、代理人が本人のために行動していることを知らなかったとき(善意)は、代理人に対して、その行為の履行を求めることができます

2.商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。

2・・・正しい

商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができます(商法505条)。よって正しいです。

【具体例】 例えば、AさんがBさんに自分の車を売却する代理を依頼しました。この場合、Bさんは「売買契約の締結」「車の引渡し」等の売却手続きが「委任の本旨に反しない範囲内」なので行うことができます。

3.商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

3・・・正しい

商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失います(商法508条1項)。よって、正しいです。

【具体例】 例えば、AさんがBさんに手紙で商品の購入を申し込みました。しかし、Bさんはその手紙に対する返事を一定期間内に送らなかった場合、Aさんの申し込みは無効になります。これは、Bさんが「Aさんの申し込み」を受けたことに対して、承諾をするかしないかの決断を下すために、合理的な期間が与えられたにもかかわらず、承諾の通知を怠った場合に適用されます。

4.商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、当該通知を発することを怠ったときは、その商人はその申込みを承諾したものとみなす。

4・・・正しい

商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければなりません(商法509条1項)。
商人が上記通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなします(商法509条2項)。

【具体例】 例えば、A商店とB商店が、日常的に取引をしているとします。ある日、B商店からA商店に商品の購入を申し込むメールが届きました。この場合、A商店は迅速にその申し込みに対する返答をしなければなりません。もしA商店が返答を怠った場合、商法509条ではその申し込みを承諾したものとみなされます。

つまり、商法509条は、商取引において迅速なコミュニケーションが重要であり、申し込みを受けた商人が速やかに返答をすることを義務付けています。返答が遅れた場合は、申し込みを受け入れたとみなされるため、商人は注意して期限内に返答をする必要があります。

5.商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したかどうかにかかわらず、申込みを受けた商人の費用をもって、その物品を保管しなければならない。

5・・・誤り

商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければなりません(商法510条本文)。本肢は「申込みを受けた商人の費用をもって」が誤りです。正しくは「申込者の費用をもって」です。

【具体例】 例えば、Aさんが、オーダーメイドのバックを作ってもらうために、Bさんに類似のバッグを郵送して、注文しました。しかし、Bさんは、そのようなバッグを作るんは難しいためも申込を拒絶した。この場合、類似のバッグは保管しないといけないですが、その保管費用は、申込者であるAさんの負担となります。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問35|民法・遺言

遺言に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.重度の認知症により成年被後見人となった高齢者は、事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない。

イ.自筆証書遺言の作成に際し、カーボン紙を用いて複写の方法で作成が行われた場合であっても、自書の要件を満たし、当該遺言は有効である。

ウ.夫婦は、同一の証書によって遺言をすることはできない。

エ.遺言において受遺者として指定された者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継する。

オ.遺言は、遺言者が死亡して効力を生じるまでは、いつでも撤回することができるが、公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない。

  1. ア・エ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:3(イ・ウが妥当)

【解説】

ア.重度の認知症により成年被後見人となった高齢者は、事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない。

ア・・・妥当でない

成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければなりません(民法973条1項)。しかし、本肢のように「後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない」という定めはありません。よって、妥当ではありません。

イ.自筆証書遺言の作成に際し、カーボン紙を用いて複写の方法で作成が行われた場合であっても、自書の要件を満たし、当該遺言は有効である。

イ・・・妥当

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印(ハンコ)を押さなければなりません(民法968条1項)。そして、カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言であっても「自書」の要件を満たします最判平5.10.19)。

ウ.夫婦は、同一の証書によって遺言をすることはできない。

ウ・・・妥当

遺言について、2人以上の者が同一の証書ですることはできません(民法975条)。つまり、1つの証書(遺言書)に夫婦二人が遺言を記載することはできないということです。夫婦であっても、別々の証書に遺言しなければなりません。

エ.遺言において受遺者として指定された者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継する。

エ・・・妥当でない

遺贈について、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈の効力は生じません(民法994条1項)。

オ.遺言は、遺言者が死亡して効力を生じるまでは、いつでも撤回することができるが、公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない。

オ・・・妥当でない

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。そして、「公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない」という規定はないので、妥当ではありません。遺言の方式に従ってさえいれば、後の遺言が優先し、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなします(民法1023条1項)。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。)
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。


令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略