民法の過去問

令和元年・2019|問28|民法

代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。(出題ミスで複数正解)

  1. 代理人が代理行為につき、相手方に対して詐欺を行った場合、本人がその事実を知らなかったときであっても、相手方はその代理行為を取り消すことができる。
  2. 無権代理行為につき、相手方が本人に対し、相当の期間を定めてその期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告を行った場合において、本人が確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。
  3. 代理人が本人になりすまして、直接本人の名において権限外の行為を行った場合に、相手方においてその代理人が本人自身であると信じ、かつ、そのように信じたことにつき正当な理由がある場合でも、権限外の行為の表見代理の規定が類推される余地はない。
  4. 代理人が本人の許諾を得て復代理人を選任した場合において、復代理人が代理行為の履行として相手方から目的物を受領したときは、同人はこれを代理人に対してではなく、本人に対して引き渡す義務を負う。
  5. 無権代理行為につき、相手方はこれを取り消すことができるが、この取消しは本人が追認しない間に行わなければならない。

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【答え】:3,4(出題ミスで複数正解)
【解説】

1.代理人が代理行為につき、相手方に対して詐欺を行った場合、本人がその事実を知らなかったときであっても、相手方はその代理行為を取り消すことができる。

1・・・正しい

詐欺による意思表示は、原則、取り消しができます(民法96条)。

そして、代理人が相手方に詐欺を行った場合、本人が相手方に詐欺を行った場合と同じと考え、本人の善意・悪意に関係なく、相手方は取消しができます。

よって、本肢は正しいです。

【考え方】

代理人が行った法律行為(契約)の効果(契約を行った結果発生する権利や義務)は、本人に帰属します。例えば、土地の売主Aの代理人Bが、買主Cと契約した場合、売主Aが「土地の引渡し義務」と「代金をもらう権利」を有します。つまり、売主Aが契約したことと同じということです。

これと同じように考えると、代理人Bが詐欺をして契約した場合、本人Aが詐欺をして契約したと考え、買主C(相手方)は詐欺を理由に取消しができます。

2.無権代理行為につき、相手方が本人に対し、相当の期間を定めてその期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告を行った場合において、本人が確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。

2・・・正しい

無権代理が行われた場合、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。

そして、この催告に対して、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。(民法114条)。

よって、本肢は正しいです。

【考え方】

例えば、「本人=あなた」「無権代理人=小野」として
「あなたは、小野に、土地売却の代理権を与えていない」
とします。それにもかかわらず
小野が、あなたに無断で、あなたの代理人として土地を第三者Cに売却したとします。第三者Cは、あなたに「土地を購入したので引渡してください!」と手紙を送ります。

あなたはどうしますか?

おそらく、詐欺か何かと思い、あなたは無視をするとはずです!

なぜなら、売った覚えもなければ、第三者Cも誰か分からないからです。

「無視をする=確答をしない」

です。

この場合、「追認拒絶」となるのが当然であり

追認とみなされたら、あなたは第三者Cに土地を売らないといけないことになり、
悪い人がこのルールを悪用して、勝手に好きな価格でドンドン不動産を購入しまします。

なので、追認拒絶としています!

>>制限行為能力者と取引した相手方の催告権(関連ポイント)

3.代理人が本人になりすまして、直接本人の名において権限外の行為を行った場合に、相手方においてその代理人が本人自身であると信じ、かつ、そのように信じたことにつき正当な理由がある場合でも、権限外の行為の表見代理の規定が類推される余地はない。
3・・・誤り
判例によると、「代理人が直接本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、そのように信じたことについて正当な理由があるかぎり、民法110条権限外の行為の表見代理)の規定を類推して、本人はその責に任ずるものと解するのが相当である。」としています(最判昭44.12.19)。本問は、上記判例の内容にあたるので、相手方が善意無過失の場合、権限外の行為の表見代理の規定が類推されます。よって、本肢は誤りです。
4.代理人が本人の許諾を得て復代理人を選任した場合において、復代理人が代理行為の履行として相手方から目的物を受領したときは、同人はこれを代理人に対してではなく、本人に対して引き渡す義務を負う。

4・・・誤り

判例によると
「本人又は復代理人がそれぞれ代理人と締結した委任契約に基づいて有している権利義務に消長をきたすべき理由はないから、復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭等を受領したときは、復代理人は、特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引渡す義務を負う」としています(最判昭51.4.9)。

よって、復代理人が代理行為の履行として相手方から目的物を受領したときは、
復代理人は、「代理人」および「本人」両者に対して引渡し義務を負います

よって、本肢は、「代理人に対して引渡し義務を負わない」ことを意味しているので誤りです。

もちろん、復代理人が目的物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅します。

5.無権代理行為につき、相手方はこれを取り消すことができるが、この取消しは本人が追認しない間に行わなければならない。

5・・・正しい

代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができます民法115条本文)。

よって、無権代理行為につき、相手方はこれを取り消すことができます。

そして、この取消しは本人が追認しない間に行わなければなりません。

したがって、本肢は正しいです。

【関連ポイント】

「本人による追認」と「相手方による取消し」の早い方が優先します。上記のように、「本人による追認」の前に、「相手方が取消し」をすれば、契約取消しとなり、その後、本人は追認できません。

逆に、「相手方が取消す」前に、「本人が追認」をすれば、追認により契約の有効性が確定し、その後、相手方は取消しすることができません。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問27|民法

時効の援用に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。

イ.時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。

ウ.被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。

エ.保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。

オ.主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:5
【解説】

ア.時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。

ア・・・正しい

時効の援用とは、時効の完成によって利益を受ける者が、時効の完成を主張することです。

そして、判例(最判昭61.3.17)によると、時効の援用は、時効の効果を確定的に発生させる意思表示であるとしています。

よって、本肢は正しいです。

【詳細解説】

例えば、「Aが平穏・公然・善意無過失で他人地(甲土地)の占有を開始し、10年経過によって甲土地を時効取得する場合」を考えます。この場合、「時効に必要な期間(10年)」が経過したことを、「時効が完成した」と言います。

時効が完成したからAは当然に甲土地を取得するかというと、そうではなく、「時効を援用」することによって、Aは甲土地の所有権を得ます

「時効の援用」とは、時効の利益を受ける者Aが、「時効の利益を受けます!」と主張することです。

単に、時効期間が経過しただけでは、時効の利益(効果)は得ることができず、時効の利益を得るためには「時効の完成+時効の援用」が必要ということです。

イ.時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。

イ・・・正しい

そもそも、時効の援用は、裁判上で行使するだけでなく、裁判外で行っても、口頭で行っても有効とされています。

そして、時効の援用を「裁判上」で行使する場合は、「事実審の口頭弁論終結時まで」にする必要があります(大判大12.3.26)。

よって、本肢は正しいです。

ウ.被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
ウ・・・正しい
被相続人(死亡した者)が一定期間占有することにより既に取得時効が完成していた場合、共同相続人の一人は、自分の相続分を限度として、取得時効を援用できます(最判平13.7.10)。よって、本肢は正しいです。【具体例】

A所有の甲土地を、Bが占有することで時効取得が完成していた。
その後、Bは死亡し、Bの相続人として「CとD」の2人いた(法定相続分を1/2ずつとする)。
この場合、Cは、時効取得を原因として、甲土地の持分1/2についてのみ取得時効を援用できます。
エ.保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。

エ・・・誤り

消滅時効にあっては、保証人物上保証人第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者は、援用できます(民法145条)。

したがって、物上保証人や抵当不動産の第三取得者も消滅時効を援用できるので誤りです。

オ.主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。

オ・・・誤り

主たる債務者である破産者が免責許可決定(債務の弁済をしなくてもよい旨の決定)を受けた場合、その保証人は、破産者の主たる債務について、消滅時効を援用することができません。

よって、本肢は誤りです。

【考え方】

主債務者に破産免責決定(債務の免責)が確定した場合は、免責された主債務に対して履行請求等ができません。
消滅時効の進行の起算点は履行請求できる時だから、破産免責決定により、時効進行の起算点がなくなります(時効進行の起算点の上に、時効進行があるため、起算点がなくなると時効進行もなくなる)。
そのため、主債務の時効進行を考える余地はないから、保証人は主債務の消滅時効を援用できません。

ちなみに、保証人は免責されないです。

そのため、保証人は引き続き債務を負います。

付従性を考えると、免責されそうに考えてしまいますが、例外としてとらえるのがよいでしょう!


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問35|民法・相続

改正民法に対応済

相続欠格と相続人の廃除に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.相続欠格においては、その対象者となりうるのは全ての推定相続人であるが、相続人の廃除においては、その対象者となるのは遺留分を有する推定相続人に限られる。

イ.相続欠格においては、その効果は一定の欠格事由があれば法律上当然に生ずるが、相続人の廃除においては、その効果は被相続人からの廃除請求による家庭裁判所の審判の確定によって生ずる。

ウ.相続欠格においては、被相続人および同順位相続人は欠格の宥恕をすることができるが、相続人の廃除においては、被相続人は審判確定後は家庭裁判所にその取消しを請求することはできない。

エ.相続欠格においては、被相続人の子が欠格者となった場合には、欠格者の子は代襲相続人となることができないが、相続人の廃除においては、被相続人の子について廃除が確定した場合でも、被廃除者の子は代襲相続人となることができる。

オ.相続欠格においては、その効果としてすべての相続にかかわる相続能力が否定されるが、相続人の廃除においては、その効果として廃除を請求した被相続人に対する相続権のみが否定される。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:1
【解説】

ア.相続欠格においては、その対象者となりうるのは全ての推定相続人であるが、相続人の廃除においては、その対象者となるのは遺留分を有する推定相続人に限られる。

ア・・・妥当

故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者は、相続人となることができません(民法891条1号)。

つまり、推定相続人が上記のことをしたら欠格となるので、相続欠格においては、その対象者となりうるのは全ての推定相続人です。

遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法892条)。

つまり、廃除の対象者となるのは遺留分を有する推定相続人に限られます

よって、妥当です。

イ.相続欠格においては、その効果は一定の欠格事由があれば法律上当然に生ずるが、相続人の廃除においては、その効果は被相続人からの廃除請求による家庭裁判所の審判の確定によって生ずる。

イ・・・妥当

相続欠格については、欠格事由に該当すれば、法律上当然に(自動的に)欠格の効果が発生じます

つまり、自動的に、相続人でなくなります。

一方、

廃除は、家庭裁判所に請求して、家庭裁判所の審判の確定がないと効果が発生しません

ウ.相続欠格においては、被相続人および同順位相続人は欠格の宥恕をすることができるが、相続人の廃除においては、被相続人は審判確定後は家庭裁判所にその取消しを請求することはできない。

ウ・・・妥当ではない

相続欠格においては、被相続人が宥恕すること(大目に見て許すこと)ができます(通説)。

分かりやすく言うと
「被相続人は相続欠格になっているが、その状態を取り消すことができる」ということです。

この場合、被相続人は何らかの手続きや措置を講じて、相続欠格を取り消したり、軽減したりすることができます。

例えば、刑罰を受けた場合には、その罪状が取り消されたり、執行猶予期間が終了したりすることによって、相続欠格を取り消すことができます。

一方、
相続人の廃除においては、被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます民法894条)。

この点が妥当ではありません。

エ.相続欠格においては、被相続人の子が欠格者となった場合には、欠格者の子は代襲相続人となることができないが、相続人の廃除においては、被相続人の子について廃除が確定した場合でも、被廃除者の子は代襲相続人となることができる。

エ・・・妥当ではない

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は相続欠格となったとき、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となります(民法887条2項)。

つまり、相続欠格も相続廃除も代襲相続はあります

したがって、「相続欠格においては、被相続人の子が欠格者となった場合には、欠格者の子は代襲相続人となることができない」が妥当ではありません。

オ.相続欠格においては、その効果としてすべての相続にかかわる相続能力が否定されるが、相続人の廃除においては、その効果として廃除を請求した被相続人に対する相続権のみが否定される。

オ・・・妥当ではない

相続欠格・廃除ともに、被相続人に対する相続権のみが否定されるだけです。

被相続人以外の者に対する相続権は否定されません。

つまり、相続欠格・廃除ともに相続能力自体が否定されるわけではないです。

本肢は「相続欠格においては、その効果としてすべての相続にかかわる相続能力が否定される」が妥当ではありません。


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問34|民法・不法行為

改正民法に対応済

不法行為の成立に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 鍵が掛けられていた、他人の自転車を盗んだ者が、その自転車を運転している最中に不注意な運転により第三者に怪我を負わせてしまった場合、自転車の所有者は、第三者に対して不法行為責任を負う。
  2. 責任能力を有する未成年者が不法行為をなした場合、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がないときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わない。
  3. 飲食店の店員が出前に自動車で行く途中で他の自動車の運転手と口論となり、ついには同人に暴力行為を働いてしまった場合には、事業の執行につき加えた損害に該当せず、店員の使用者は、使用者責任を負わない。
  4. 請負人がその仕事について第三者に損害を与えてしまった場合、注文者と請負人の間には使用関係が認められるので、注文者は、原則として第三者に対して使用者責任を負う。
  5. 借家の塀が倒れて通行人が怪我をした場合、塀の占有者である借家人は通行人に対して無過失責任を負うが、塀を直接占有していない所有者が責任を負うことはない。

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改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

1.鍵が掛けられていた、他人の自転車を盗んだ者が、その自転車を運転している最中に不注意な運転により第三者に怪我を負わせてしまった場合、自転車の所有者は、第三者に対して不法行為責任を負う。

1・・・妥当ではない

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。

本肢の場合、「自転車の所有者」に故意又は過失はありません。

そのため、第三者に対して不法行為責任を負いません。

よって、妥当ではありません。

2.責任能力を有する未成年者が不法行為をなした場合、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がないときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わない。

2・・・妥当

判例によると、
「少年院を仮退院した後に保護観察の遵守事項を守らないで遊び歩くなどしていた未成年者が強盗傷人事件を犯した場合において,当該未成年者が間もなく成人に達する年齢にあることなどから,親権者が当該未成年者に及ぼし得る影響力は限定的なものとなっており,当該親権者が上記遵守事項を確実に守らせることのできる適切な手段を有していたとはいい難いこと,当該親権者において当該未成年者が上記事件のような犯罪を犯すことを予測し得る事情があったとはいえないこと,当該未成年者の生活状態が直ちに少年院に再入院させるための手続等を執るべき状態にあったともいえないことなど判示の事情の下では,当該親権者に上記事件に結びつく監督義務違反があったとはいえない」としています(最判平18.2.24

つまり、責任能力を有する未成年者が不法行為をなした場合、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がないときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負いません。

本肢は妥当です。

3.飲食店の店員が出前に自動車で行く途中で他の自動車の運転手と口論となり、ついには同人に暴力行為を働いてしまった場合には、事業の執行につき加えた損害に該当せず、店員の使用者は、使用者責任を負わない。

3・・・妥当ではない

判例によると、
「すし屋の店員二名が、使用者所有の自動車を運転し、またはこれに同乗して、出前に行く途中、右自動車の方向指示器を点燈したまま直進したため、これと衝突しそうになった他の自動車の運転者と口論になり、そのあげく同人に対し暴行を加えて負傷させた場合、これによつて同人の被つた損害は、被用者が事業の執行につき加えた損害にあたるというべきである」としています(最判昭46.6.22)。

そのため、本肢の場合、店員の使用者は、使用者責任を負うので、妥当ではありません。

4.請負人がその仕事について第三者に損害を与えてしまった場合、注文者と請負人の間には使用関係が認められるので、注文者は、原則として第三者に対して使用者責任を負う。

4・・・妥当ではない

注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負いません民法716条本文)。

よって、請負人がその仕事について第三者に損害を与えてしまった場合、注文者は、原則として第三者に対して使用者責任を負いません。

したがって、妥当ではありません。

5.借家の塀が倒れて通行人が怪我をした場合、塀の占有者である借家人は通行人に対して無過失責任を負うが、塀を直接占有していない所有者が責任を負うことはない。

5・・・妥当ではない

工作物の設置または保存の瑕疵により、第三者に損害を
与えた場合の責任を負う順番は下記の通りです。

  1. まず、「占有者」が損害賠償責任を負わなければなら
    ない
  2. 占有者が損害の発生を防止するために必要な注意をしていた場合「所有者」が損害賠償責任を負わなければならない
    ※所有者は無過失でも責任を負う

よって、借家人(占有者)が、損害の発生を防止するのに必要な注意をした場合は、所有者が損害を賠償する責任を負います

したがって、「塀の占有者である借家人は通行人に対して無過失責任を負うが、塀を直接占有していない所有者が責任を負うことはない」は妥当ではありません。

>>工作物責任の解説はこちら


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問33|民法・賃貸借

改正民法に対応済

次の文章は、最高裁判所の判決文の一節であるが、文中の空欄[ア]~[ウ]に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

「賃貸人の承諾のある転貸借においては、転借人が目的物の使用収益につき賃貸人に対抗し得る権原(転借権)を有することが重要であり、転貸人が、自らの債務不履行により賃貸借契約を解除され、転借人が転借権を賃貸人に対抗し得ない事態を招くことは、転借人に対して目的物を使用収益させる債務の履行を怠るものにほかならない。そして、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合において、賃貸人が転借人に対して直接目的物の返還を請求したときは、転借人は賃貸人に対し、目的物の返還義務を負うとともに、遅くとも右返還請求を受けた時点から返還義務を履行するまでの間の目的物の使用収益について、不法行為による損害賠償義務又は不当利得返還義務を免れないこととなる。他方、賃貸人が転借人に直接目的物の返還を請求するに至った以上、転貸人が賃貸人との間で再び賃貸借契約を締結するなどして、転借人が賃貸人に転借権を対抗し得る状態を回復することは、もはや期待し得ないものというほかなく、[ア]の[イ]に対する債務は、社会通念及び取引通念に照らして[ウ]というべきである。したがって、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、[ア]の[イ]に対する債務の[ウ]により終了すると解するのが相当である。」

(最三小判平成9年2月25日民集51巻2号398頁以下)

  1. ア:転貸人 イ:転借人 ウ:不完全履行
  2. ア:転貸人 イ:賃貸人 ウ:履行不能
  3. ア:賃貸人 イ:転貸人 ウ:履行遅滞
  4. ア:賃貸人 イ:転借人 ウ:履行遅滞
  5. ア:転貸人 イ:転借人 ウ:履行不能

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【答え】:5

【解説】

「賃貸人A→転貸人B→転借人C」

と仮定すると

転貸人BがAに賃料不払いで、AB間の賃貸借契約が解除された場合、
転借人Cは、賃貸人Aに対抗できません。

そして、賃貸人Aが転借人Cに対して直接目的物の返還を請求したときは、転借人Cは賃貸人Aに対し、目的物の返還義務を負う。

そして、

[ア]の[イ]に対する債務は、社会通念及び取引通念に照らして[ウ]というべきである。したがって、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、[ア]の[イ]に対する債務の[ウ]により終了すると解するのが相当である。

と続いています。

したがって以降を考えると分かりやすいです。

賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、[ア:転貸人]の[イ:転借人]に対する債務の[ウ:履行不能]により終了すると解するのが相当である。


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問32|民法・償還請求

改正民法に対応済

他人の財産に対する費用の支出とその償還請求に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.A・B間の家屋売買契約が解除されても、買主Aは解除前に支出した有益費の償還を受けるまで家屋を留置することができるが、Aは、留置中にこれを使用することにより、法律上の原因なく利得することとなるから、その利得を不当利得として返還する義務がある。

イ.Aは、Bに対して自己が所有する土地を売り渡したが、この売買契約と同時に買戻しの特約をしていた場合において、Aが買戻権を行使したときは、この売買契約成立後Aが買戻権を行使するまでにBがその土地につき必要費を支出していたとしても、Bは、Aに対してこの費用の償還請求をすることができない。

ウ.Aは、Bから建物を賃借して居住し、その間に同建物につき有益費を支出したが、その後に、B・C間で賃貸人たる地位の移転が生じた場合に、Aは、原則としてBに対しては有益費の償還を請求することができない。

エ.Aは、Bに対して自己が所有する建物を賃貸していたが、Bが有益費を支出して同建物に増築部分を付加して同建物と一体とした場合において、後にその増築部分が隣家の火災により類焼して失われたときにも、Bは、Aに対して増築部分につき有益費の償還請求をすることができる。

オ.Aは、Bと寄託契約に基づき受寄物を保管していたが、保管事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、Bに対し、その費用および支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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【答え】:3
【解説】

ア.A・B間の家屋売買契約が解除されても、買主Aは解除前に支出した有益費の償還を受けるまで家屋を留置することができるが、Aは、留置中にこれを使用することにより、法律上の原因なく利得することとなるから、その利得を不当利得として返還する義務がある。

ア・・・妥当

買主Aは解除前に支出した有益費の償還を受けるまで家屋を留置することができます(大判昭10.5.13)。

そして、留置家屋を居住することによって得た利益は、不当利得として返還する義務があります(大判昭13.12.17)。

よって、本肢は妥当です。

イ.Aは、Bに対して自己が所有する土地を売り渡したが、この売買契約と同時に買戻しの特約をしていた場合において、Aが買戻権を行使したときは、この売買契約成立後Aが買戻権を行使するまでにBがその土地につき必要費を支出していたとしても、Bは、Aに対してこの費用の償還請求をすることができない。

イ・・・妥当ではない

買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、その償還をしなければなりません民法583条2項本文)。

よって、Bは、Aに対してこの費用の償還請求をすることができます。

したがって、本肢は妥当ではありません。

ウ.Aは、Bから建物を賃借して居住し、その間に同建物につき有益費を支出したが、その後に、B・C間で賃貸人たる地位の移転が生じた場合に、Aは、原則としてBに対しては有益費の償還を請求することができない。

ウ・・・妥当

賃貸人たる地位譲受人又はその承継人に移転したときは、有益費の償還に係る債務及び敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継します(民法605条の2第4項)。

よって、Aは、原則として旧賃貸人Bに対しては有益費の償還を請求することができません。
新賃貸人Cに対して請求することができます。

エ.Aは、Bに対して自己が所有する建物を賃貸していたが、Bが有益費を支出して同建物に増築部分を付加して同建物と一体とした場合において、後にその増築部分が隣家の火災により類焼して失われたときにも、Bは、Aに対して増築部分につき有益費の償還請求をすることができる。

エ・・・妥当ではない

判例によると、
「賃借人が賃借建物に附加した増・新築部分が、賃貸人に返還される以前に、賃貸人、賃借人いずれの責にも帰すべきでない事由により滅失したときは、特段の事情のないかぎり、右部分に関する有益費償還請求権は消滅する」としています(最判昭48.7.17)。

本肢の場合、有益費を支出して増築して、その後増築部分が焼失しています。

よって、有益費償還請求権は消滅するので、Bは、Aに対して増築部分につき有益費の償還請求をすることができません

本肢は妥当ではありません。

オ.Aは、Bと寄託契約に基づき受寄物を保管していたが、保管事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、Bに対し、その費用および支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

オ・・・妥当

受寄者Aは、保管事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、寄託者Bに対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができます民法665条民法650条1項)。

よって、本肢は妥当です。


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問31|民法・連帯債務

改正民法に対応済

A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償できるが、もしCが無資力のときは、Bに対して30万円の求償をすることができる。
  2. AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、Cの負担部分が1:1:0であり(Cには負担部分がない)、また、Bが無資力のときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償することができる。
  3. DがAに対して60万円の債務を免除した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。
  4. DがAに対して連帯の免除をした場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であったときは、Aは、20万円の分割債務を負い、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。
  5. A、B、C三人の負担部分が平等である事情の下で、DがAに対して連帯の免除をした場合に、Bが債務全額を弁済したときに、もしCが無資力であったとすると、Cが弁済することができない部分のうちAが負担すべき10万円はDが負担する。

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改正民法に対応済

【答え】:1
【解説】

A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている。

1.AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償できるが、もしCが無資力のときは、Bに対して30万円の求償をすることができる。

1・・・妥当

連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担します(民法444条)。

よって、Cが無資力のときは、AとBが60万円を負担割合(1:1)に応じて分割します。

したがって、60万円を弁済したAは、Bに対して30万円を求償できます。

A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている。

2.AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、Cの負担部分が1:1:0であり(Cには負担部分がない)、また、Bが無資力のときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償することができる。

2・・・妥当ではない

Cは負担部分がないので、求償できません(通説)。

また、Bは無資力なので、求償できません。

よって、通説で考えると、A、BとCに求償できません。

A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている。

3.DがAに対して60万円の債務を免除した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。

3・・・妥当ではない

免除については相対効です。

そのため、60万円について、BとCが連帯債務を負うことになります。

>>「連帯債務と免除」について

A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている。

4.DがAに対して連帯の免除をした場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であったときは、Aは、20万円の分割債務を負い、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。

4・・・妥当ではない

「連帯の免除」とは、「連帯の免除」を受けた者は分割債務となり、それ以外の者は以前と変わりなく、連帯債務者のままのことを言います。

つまり、本肢の場合

連帯の免除を受けたAは20万円の分割債務を負い

BとCは以前と変わりなく、60万円の連帯債務を負います

よって、「40万円ずつ」が妥当ではありません。

A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている。

5.A、B、C三人の負担部分が平等である事情の下で、DがAに対して連帯の免除をした場合に、Bが債務全額を弁済したときに、もしCが無資力であったとすると、Cが弁済することができない部分のうちAが負担すべき10万円はDが負担する。

5・・・妥当ではない

連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担します(民法444条)。

よって、Cが無資力のときは、AとBが60万円を負担割合(1:1)に応じて分割します

したがって、Bが債務全額を弁済したときに、BはAに30万円を求償できます。


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問30|民法・催告

改正民法に対応済

催告に関する次のア~オの各事例のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.Aは成年被保佐人であるBとの間で、Bの所有する不動産を購入する契約を締結したが、後日Bが制限行為能力者であることを知った。Aは、1ヵ月以上の期間を定めて、Bに対し保佐人の追認を得るべき旨を催告したが、所定の期間を過ぎても追認を得た旨の通知がない。この場合、その行為は追認されたものとみなされる。

イ.CはDとの間で、C所有の自動車を、代金後払い、代金額150万円の約定でDに売却する契約を締結した。Cは自動車の引き渡しを完了したが、代金支払期日を経過してもDからの代金の支払いがない。そこでCはDに対して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに代金の支払いがない。この場合、C・D間の売買契約は法律上当然に効力を失う。

ウ.Eは知人FがGより100万円の融資を受けるにあたり、保証(単純保証)する旨を約した。弁済期後、GはいきなりEに対して保証債務の履行を求めてきたので、Eはまずは主たる債務者に催告するよう請求した。ところがGがFに催告したときにはFの資産状況が悪化しており、GはFから全額の弁済を受けることができなかった。この場合、EはGが直ちにFに催告していれば弁済を受けられた限度で保証債務の履行を免れることができる。

エ.Hは甲建物を抵当権の実行による競売により買い受けたが、甲建物には、抵当権設定後に従前の所有者より賃借したIが居住している。HはIに対し、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ヵ月分以上の支払いを催告したが、期間経過後もIが賃料を支払わない場合には、Hは買受け後6ヵ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。

オ.Jは、自己の所有する乙土地を、その死後、世話になった友人Kに無償で与える旨の内容を含む遺言書を作成した。Jの死後、遺言の内容が明らかになり、Jの相続人らはKに対して相当の期間を定めてこの遺贈を承認するか放棄するかを知らせて欲しいと催告したが、Kからは期間内に返答がない。この場合、Kは遺贈を承認したものとみなされる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:4
【解説】

ア.Aは成年被保佐人であるBとの間で、Bの所有する不動産を購入する契約を締結したが、後日Bが制限行為能力者であることを知った。Aは、1ヵ月以上の期間を定めて、Bに対し保佐人の追認を得るべき旨を催告したが、所定の期間を過ぎても追認を得た旨の通知がない。この場合、その行為は追認されたものとみなされる。

ア・・・誤り

制限行為能力者の相手方は、被保佐人に対しては、1か月にその保佐人の追認を得るべき旨の催告をすることができます。

この場合において、その被保佐人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなします民法20条4項)。

本肢は「追認されたものとみなされる」が誤りです。

正しくは「取り消したものとみなされる」です。

イ.CはDとの間で、C所有の自動車を、代金後払い、代金額150万円の約定でDに売却する契約を締結した。Cは自動車の引き渡しを完了したが、代金支払期日を経過してもDからの代金の支払いがない。そこでCはDに対して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに代金の支払いがない。この場合、C・D間の売買契約は法律上当然に効力を失う。

イ・・・誤り

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができます(民法541条本文)。

つまり、本肢の場合、期日に代金の支払いがないからと言って、売買契約が効力を失うわけではありません。

相当期間を定めて催告をし、その期間内に代金を支払わないとき、契約解除ができます
この契約解除によって、効力は失われます。

よって、誤りです。

ウ.Eは知人FがGより100万円の融資を受けるにあたり、保証(単純保証)する旨を約した。弁済期後、GはいきなりEに対して保証債務の履行を求めてきたので、Eはまずは主たる債務者に催告するよう請求した。ところがGがFに催告したときにはFの資産状況が悪化しており、GはFから全額の弁済を受けることができなかった。この場合、EはGが直ちにFに催告していれば弁済を受けられた限度で保証債務の履行を免れることができる。

ウ・・・正しい

保証人が催告の抗弁権を主張したにもかかわらず、債権者が主たる債務者に催告することを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れます民法455条)。

本肢は上記の内容なので、正しいです。

エ.Hは甲建物を抵当権の実行による競売により買い受けたが、甲建物には、抵当権設定後に従前の所有者より賃借したIが居住している。HはIに対し、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ヵ月分以上の支払いを催告したが、期間経過後もIが賃料を支払わない場合には、Hは買受け後6ヵ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。

エ・・・誤り

甲建物を競売により買い受けたHが、甲建物の賃借人Iに対して、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ヵ月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、Iは建物の明渡猶予制度の適用はなくなり、直ちにHに甲建物を明け渡さないといけなくなります(民法395条2項)。

オ.Jは、自己の所有する乙土地を、その死後、世話になった友人Kに無償で与える旨の内容を含む遺言書を作成した。Jの死後、遺言の内容が明らかになり、Jの相続人らはKに対して相当の期間を定めてこの遺贈を承認するか放棄するかを知らせて欲しいと催告したが、Kからは期間内に返答がない。この場合、Kは遺贈を承認したものとみなされる。

オ・・・正しい

遺贈義務者(Jの相続人ら)は、受遺者Kに対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができます

この場合において、受遺者Kがその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなします民法987条)。

よって、正しいです。


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問29|民法・抵当権

改正民法に対応済

Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。この場合における抵当権の消滅に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.Aの抵当権が根抵当権である場合において、Bが破産手続開始の決定を受けたときは、被担保債権は確定して満足し、根抵当権は確定的に消滅する。

イ.Aの抵当権が根抵当権である場合において、元本が確定した後に、Bから土地の所有権を取得したCが、極度額に相当する金額をAに支払い、根抵当権の消滅請求をしたときは、確定した被担保債権の額が極度額を超えていたとしても、Aの根抵当権は、確定的に消滅する。

ウ.BがAに対し、残存元本に加えて、最後の2年分の利息および遅延損害金を支払った場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

エ.第三者Cが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

オ.第三者Cが、BのAに対する債務の全額を弁済し、その弁済と同時にAの承諾を得ていた場合には、CはAに代位することができるが、抵当権は、確定的に消滅する。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:3
【解説】

Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。

ア.Aの抵当権が根抵当権である場合において、Bが破産手続開始の決定を受けたときは、被担保債権は確定して満足し、根抵当権は確定的に消滅する。

ア・・・妥当ではない

債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき、根抵当権の担保すべき元本は、確定します(民法398条の20第1項4号)。

しかし、単に元本確定するだけで、「被担保債権は満足しない」し「根抵当権は確定的に消滅はしません」。

よって、本肢は、妥当ではないです。

Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。

イ.Aの抵当権が根抵当権である場合において、元本が確定した後に、Bから土地の所有権を取得したCが、極度額に相当する金額をAに支払い、根抵当権の消滅請求をしたときは、確定した被担保債権の額が極度額を超えていたとしても、Aの根抵当権は、確定的に消滅する。

イ・・・妥当

根抵当付きの不動産の取得者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができます民法398条の22第1項)。

つまり、Cが、極度額に相当する金額をAに支払い、根抵当権の消滅請求をしたときは、確定した被担保債権の額が極度額を超えていたとしても、Aの根抵当権は、確定的に消滅します。

妥当です。

【具体例】

根抵当権の極度額が500万円で、被担保債権の元本が550万円であった場合、根抵当権で保証されるのは500万円なので、「根抵当付不動産の取得者」が根抵当権者に500万円を支払えば、Aの根抵当権は消滅します。

Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。

ウ.BがAに対し、残存元本に加えて、最後の2年分の利息および遅延損害金を支払った場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

ウ・・・妥当ではない

本肢の場合、債務者Bは、残存元本に加えて、これまでの利息および遅延損害金全額を弁済しないと、抵当権は消滅しません

もし、他に後順位抵当権者や一般債権者がいた場合は、これらの者を保護するために、優先弁済権は「最後の2年分の利息および遅延損害金」に限られます。

よって、妥当ではありません。

>>「最後の2年分の利息および遅延損害金」とは?

Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。

エ.第三者Cが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

エ・・・妥当

債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、時効消滅します(民法397条)。

つまり、第三者Cが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅します。

妥当です。

【理由】

時効取得は原始取得であり、抵当権や地上権等の所有権以外の権利はすべてない、まっさらな所有権として取得するものです。そのため、時効取得した土地に抵当権が付着していた場合、抵当権は消滅します。

Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。

オ.第三者Cが、BのAに対する債務の全額を弁済し、その弁済と同時にAの承諾を得ていた場合には、CはAに代位することができるが、抵当権は、確定的に消滅する。

オ・・・妥当ではない

債権者Aに代位した者Cは、債権の効力及び担保としてその債権者Aが有していた一切の権利を行使することができます(民法501条1項)。

つまり、第三者Cが弁済することで、Aが有していた抵当権をCが行使することができます

よって、抵当権は、確定的に消滅するわけではないので妥当ではありません。


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問28|民法・時効

改正民法に対応済

時効に関する次のA~Eの各相談に関して、民法の規定および判例に照らし、「できます」と回答しうるものの組合せはどれか。

Aの相談:「私は13年前、知人の債務を物上保証するため、私の所有する土地・建物に抵当権を設定しました。知人のこの債務は弁済期から11年が経過していますが、債権者は、4年前に知人が債務を承認していることを理由に、時効は完成していないと主張しています。民法によれば、時効の更新は当事者及びその承継人の間においてのみその効力を有するとありますが、私は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できますか。」

Bの相談:「私は築25年のアパートを賃借して暮らしています。このアパートは賃貸人の先代が誤って甲氏の所有地を自己所有地と認識して建ててしまったものですが、これまで特に紛争になることもなく現在に至っています。このたび、甲氏の相続人である乙氏が、一連の事情説明とともにアパートからの立ち退きを求めてきました。私は賃貸人が敷地の土地を時効取得したと主張して立ち退きを拒否できますか。」

Cの相談:「30年程前に私の祖父が亡くなりました。祖父は唯一の遺産であった自宅の土地・建物を祖父の知人に遺贈したため、相続人であった私の父は直ちに遺留分を主張して、当該土地・建物についての共有持分が認められたのですが、その登記をしないまま今日に至っています。このたび父が亡くなり、父を単独相続した私が先方に共有持分についての登記への協力を求めたところ、20年以上経過しているので時効だといって応じてもらえません。私は移転登記を求めることはできますか。」

Dの相談:「私は他人にお金を貸し、その担保として債務者の所有する土地・建物に2番抵当権の設定を受けています。このたび、1番抵当権の被担保債権が消滅時効にかかったことがわかったのですが、私は、私の貸金債権の弁済期が到来していない現時点において、この事実を主張して、私の抵当権の順位を繰り上げてもらうことができますか。」

Eの相談:「叔父は7年ほど前に重度の認知症になり後見開始の審判を受けました。配偶者である叔母が後見人となっていたところ、今年2月10日にこの叔母が急逝し、同年6月10日に甥の私が後見人に選任されました。就任後調べたところ、叔父が以前に他人に貸し付けた300万円の債権が10年前の6月1日に弁済期を迎えた後、未回収のまま放置されていることを知り、あわてて本年6月20日に返済を求めましたが、先方はすでに時効期間が満了していることを理由に応じてくれません。この債権について返還を求めることができますか。」

  1. Aの相談とBの相談
  2. Aの相談とCの相談
  3. Bの相談とDの相談
  4. Cの相談とEの相談
  5. Dの相談とEの相談

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4
【解説】

Aの相談:「私は13年前、知人の債務を物上保証するため、私の所有する土地・建物に抵当権を設定しました。知人のこの債務は弁済期から11年が経過していますが、債権者は、4年前に知人が債務を承認していることを理由に、時効は完成していないと主張しています。民法によれば、時効の更新は当事者及びその承継人の間においてのみその効力を有するとありますが、私は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できますか。」

A・・・できません

判例によると、
物上保証人は、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効更新の効力を否定することができない」としています(最判平7.3.10)。

言い換えると、物上保証人は、時効の完成を主張できないので、
私(物上保証人)は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できません。

Bの相談:「私は築25年のアパートを賃借して暮らしています。このアパートは賃貸人の先代が誤って甲氏の所有地を自己所有地と認識して建ててしまったものですが、これまで特に紛争になることもなく現在に至っています。このたび、甲氏の相続人である乙氏が、一連の事情説明とともにアパートからの立ち退きを求めてきました。私は賃貸人が敷地の土地を時効取得したと主張して立ち退きを拒否できますか。」

B・・・できません

判例によると、
建物賃借人は、建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできない」としています(最判昭44.7.15)。

つまり、私(建物賃借人)は、賃貸人が敷地の土地を時効取得したことを主張して立ち退きを拒否できません。

【理由】 建物賃借人が借りているのはあくまで「建物」だけです。時効取得を援用するためには、時効を援用することで「直接利益を受ける者」です。建物賃借人が、時効を援用した場合、建物所有者は、敷地利用権を時効取得でき「直接利益を受ける」が、建物賃借人は、建物所有者が敷地利用権を時効取得した結果、間接的に、建物を賃借しつづけることができることになるので、「間接的に利益を受ける」に過ぎないから、建物賃借人は取得時効を援用できません。

Cの相談:「30年程前に私の祖父が亡くなりました。祖父は唯一の遺産であった自宅の土地・建物を祖父の知人に遺贈したため、相続人であった私の父は直ちに遺留分を主張して、当該土地・建物についての共有持分が認められたのですが、その登記をしないまま今日に至っています。このたび父が亡くなり、父を単独相続した私が先方に共有持分についての登記への協力を求めたところ、20年以上経過しているので時効だといって応じてもらえません。私は移転登記を求めることはできますか。」

C・・・できます

判例によると、
遺留分権利者が侵害額請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は、時効によって消滅することはない」としています(最判平7.6.9)。

つまり、私は移転登記を求めることはできます。

Dの相談:「私は他人にお金を貸し、その担保として債務者の所有する土地・建物に2番抵当権の設定を受けています。このたび、1番抵当権の被担保債権が消滅時効にかかったことがわかったのですが、私は、私の貸金債権の弁済期が到来していない現時点において、この事実を主張して、私の抵当権の順位を繰り上げてもらうことができますか。」

D・・・できません

判例によると、
後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない」としています(最判平11.10.21)。

【理由】 消滅時効を援用できる者は「直接利益を受ける者」です。被担保債権の消滅時効により直接利益を受けるのは、抵当権設定者です。後順位抵当権者は、被担保債権の消滅により、先順位の抵当権が消滅し、その結果として(反射的に=間接的に=二次的に)、後順位抵当権者は、抵当権の順位が上がるという利益を受けます。つまり、順位が上がるという利益は「直接の利益ではない」ので消滅時効を援用することはできません。

よって、私(2番抵当権者)の抵当権の順位を繰り上げてもらうことができません。

Eの相談:「叔父は7年ほど前に重度の認知症になり後見開始の審判を受けました。配偶者である叔母が後見人となっていたところ、今年2月10日にこの叔母が急逝し、同年6月10日に甥の私が後見人に選任されました。就任後調べたところ、叔父が以前に他人に貸し付けた300万円の債権が10年前の6月1日に弁済期を迎えた後、未回収のまま放置されていることを知り、あわてて本年6月20日に返済を求めましたが、先方はすでに時効期間が満了していることを理由に応じてくれません。この債権について返還を求めることができますか。」

E・・・できます

時効の期間の満了前6ヵ月以内の間に「未成年者又は成年被後見人」に法定代理人がないときは、その「未成年者若しくは成年被後見人」が①行為能力者となった時又は②法定代理人が就職した時から6ヵ月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しません民法158条1項)。

本肢を見ると、
2月10日から6月10日まで、叔父には成年後見人(法定代理人)がついていません。

そして、叔父が有する300万円の債権の時効は、「Eが成年後見人に就任した6月10日」から6ヵ月間は、時効完成が猶予されます。

したがって、6月20日時点では消滅時効が完成していないので、Eは、300万円の返還を求めることができます。


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略