民法の過去問

平成21年・2009|問27|民法・代理

改正民法に対応済

代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aは留守中の財産の管理につき単に妻Bに任せるといって海外へ単身赴任したところ、BがAの現金をA名義の定期預金としたときは、代理権の範囲外の行為に当たり、その効果はAに帰属しない。
  2. 未成年者Aが相続により建物を取得した後に、Aの法定代理人である母Bが、自分が金融業者Cから金銭を借りる際に、Aを代理して行ったCとの間の当該建物への抵当権設定契約は、自己契約に該当しないので、その効果はAに帰属する。
  3. A所有の建物を売却する代理権をAから与えられたBが、自らその買主となった場合に、そのままBが移転登記を済ませてしまったときには、AB間の売買契約について、Aに効果が帰属する。
  4. 建物を購入する代理権をAから与えられたBが、Cから建物を買った場合に、Bが未成年者であったときでも、Aは、Bの未成年であることを理由にした売買契約の取消しをCに主張することはできない。
  5. Aの代理人Bが、Cを騙してC所有の建物を安い値で買った場合、AがBの欺罔行為につき善意無過失であったときには、B自身の欺罔行為なので、CはBの詐欺を理由にした売買契約の取消しをAに主張することはできない。

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改正民法に対応済

【答え】:4
【解説】

1.Aは留守中の財産の管理につき単に妻Bに任せるといって海外へ単身赴任したところ、BがAの現金をA名義の定期預金としたときは、代理権の範囲外の行為に当たり、その効果はAに帰属しない。

1・・・妥当ではない

権限の定めのない代理人は、「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をする権限を有します(民法103条)。

「Aの現金をA名義の定期預金」にする行為は、性質を変えない範囲の利用行為です。

そのため、代理権の範囲内の行為にあたるので、その効果はAに帰属します。

よって、妥当ではありません。

2.未成年者Aが相続により建物を取得した後に、Aの法定代理人である母Bが、自分が金融業者Cから金銭を借りる際に、Aを代理して行ったCとの間の当該建物への抵当権設定契約は、自己契約に該当しないので、その効果はAに帰属する。

2・・・妥当ではない

判例によると、
親権者Bが自己の負担する貸金債務につき未成年の子Aの所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を右未成年の子Aの養育費に供する意図であっても、「利益が相反する行為」にあたる』としています(最判昭37.10.2)。

本肢の「自己契約に該当しないので、その効果はAに帰属する」は誤りで、
正しくは「利益相反行為に該当するので、その効果はAに帰属しない」です。

3.A所有の建物を売却する代理権をAから与えられたBが、自らその買主となった場合に、そのままBが移転登記を済ませてしまったときには、AB間の売買契約について、Aに効果が帰属する。

3・・・妥当ではない

本肢の内容は「自己契約」です。

自己契約は、原則禁止です(民法108条1項)。

そのため、自己契約を行った場合、その行為は本人Aには効果が帰属しません。

よって、誤りです。

>>自己契約はこちら

4.建物を購入する代理権をAから与えられたBが、Cから建物を買った場合に、Bが未成年者であったときでも、Aは、Bの未成年であることを理由にした売買契約の取消しをCに主張することはできない。

4・・・妥当

制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができません(民法102条)。

つまり、制限行為能力者Bを代理人にしたからと言って、制限行為能力者であることを理由に売買契約の取り消しはできないです。

よって、正しいです。

【理解】 代理人(制限行為能力者)の行った行為の効果は、本人に帰属します。つまり、制限行為能力者が行った契約の責任は、「本人」が負うことになります。
そもそも、制限行為能力者を代理人として選んだのは「本人」です。そのため、制限行為能力者を理由に後で取り消しさせてくれ!というのはムシが良すぎます。よって、取消しできません。

5.Aの代理人Bが、Cを騙してC所有の建物を安い値で買った場合、AがBの欺罔行為につき善意無過失であったときには、B自身の欺罔行為なので、CはBの詐欺を理由にした売買契約の取消しをAに主張することはできない。

5・・・妥当ではない

代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとします(民法101条1項)。

本肢は、代理人Bが詐欺をして安い値で買っています。

この場合、本人Aが詐欺をしたものと扱い、詐欺を受けたCは、本人Aに契約の取り消しを主張できます。

よって、誤りです。

>>代理人が詐欺や強迫等をうけて契約した場合どうなる?


平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・社会
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問35|民法・相続

改正民法に対応済

Aは、海外出張に出かけたが、帰国予定の日に帰国しないまま長期間が経過した。その間、家族としては関係者および関係機関に問い合わせ、可能な限りの捜索をしたが、生死不明のまま出張から10年以上が経過した。そこで、Aについて、Aの妻Bの請求に基づき家庭裁判所によって失踪宣告がなされた。Aの相続人としては、妻Bおよび子Cの2人がいる場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.BがAの出張前にAから誕生日に宝石をプレゼントされていたときは、Aの相続開始とされる時においてAが有していた財産の価額に、その宝石の価額を加えたものを相続財産とみなし、Bの相続分の中からその宝石の価額を控除した残額をもってBの相続分とする。

イ.Aの相続についての限定承認は、BとCが共同してのみ家庭裁判所に申述することができる。

ウ.Aの遺言が存在した場合に、その遺言の効力は、Aの生死が不明になった時から7年の期間が満了した時からその効力を生ずる。

エ.CがAの失踪宣告前にAの無権代理人としてA所有の土地および建物をDに売却した場合に、BがCと共同して追認をしないときでも、当該無権代理行為は有効となる。

オ.Aについて失踪宣告がなされた後にBはD男と婚姻したが、その後、失踪宣告が取り消された場合に、A・B間の婚姻とB・D間の婚姻は、戸籍の上では共に存在することになるが、両者の婚姻は、当然には無効とならず、共に重婚を理由として取り消し得るにすぎない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:3
【解説】

Aについて、Aの妻Bの請求に基づき家庭裁判所によって失踪宣告がなされた。

Aの相続人としては、妻Bおよび子Cの2人がいる。

ア.BがAの出張前にAから誕生日に宝石をプレゼントされていたときは、Aの相続開始とされる時においてAが有していた財産の価額に、その宝石の価額を加えたものを相続財産とみなし、Bの相続分の中からその宝石の価額を控除した残額をもってBの相続分とする。

ア・・・誤り

誕生日プレゼント(高額なものは除く)」は相続財産には含まれません

よって、本肢の「宝石の価額を加えたものを相続財産とみなし」は妥当ではありません。

Aについて、Aの妻Bの請求に基づき家庭裁判所によって失踪宣告がなされた。

Aの相続人としては、妻Bおよび子Cの2人がいる。

イ.Aの相続についての限定承認は、BとCが共同してのみ家庭裁判所に申述することができる。

イ・・・正しい

相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができます(民法923条)。

つまり、限定承認をする場合、相続人全員が共同して家庭裁判所に申述する必要があるので、本肢は妥当です。

Aについて、Aの妻Bの請求に基づき家庭裁判所によって失踪宣告がなされた。

Aの相続人としては、妻Bおよび子Cの2人がいる。

ウ.Aの遺言が存在した場合に、その遺言の効力は、Aの生死が不明になった時から7年の期間が満了した時からその効力を生ずる。

ウ・・・正しい

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生じます985条1項)。

そして、不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができ、上記7年を経過した時に、死亡したものとみなします30条1項、31条)。

よって、遺言の効力は、Aの生死が不明になった時から7年の期間が満了した時からその効力を生ずるので妥当です。

Aについて、Aの妻Bの請求に基づき家庭裁判所によって失踪宣告がなされた。

Aの相続人としては、妻Bおよび子Cの2人がいる。

エ.CがAの失踪宣告前にAの無権代理人としてA所有の土地および建物をDに売却した場合に、BがCと共同して追認をしないときでも、当該無権代理行為は有効となる。

エ・・・誤り

判例によると。
「無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない」としています(最判平5.1.21)。

よって、BがCと共同して追認をしないときは、当該無権代理行為は有効とはならないので、妥当ではりません。

Aについて、Aの妻Bの請求に基づき家庭裁判所によって失踪宣告がなされた。

Aの相続人としては、妻Bおよび子Cの2人がいる。

オ.Aについて失踪宣告がなされた後にBはD男と婚姻したが、その後、失踪宣告が取り消された場合に、A・B間の婚姻とB・D間の婚姻は、戸籍の上では共に存在することになるが、両者の婚姻は、当然には無効とならず、共に重婚を理由として取り消し得るにすぎない。

オ・・・誤り

失踪宣告後、再婚し、その後失踪宣告が取り消された場合の取り扱いについては下記の通りです。

  • 後婚(再婚)の両当事者が善意の場合、前婚が復活せず、後婚のみ有効となります(32条1項後段)。
  • 再婚した当事者の一方または双方が悪意の場合(Aの失踪宣告が事実と異なることを知っている場合)、前婚が復活して、重婚状態となります。そして、前婚については、離婚原因民法770条)となり、後婚は取消原因744条)となります。

よって、「共に重婚を理由として取り消し得る」は妥当ではありません。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問34|民法・親族

改正民法に対応済

A男と、B女が出産したCとの関係に関する次の記述のうち、民法の規定または判例に照らし、誤っているものはどれか。

  1. AとBの内縁関係の継続中にBがCを出産し、AによってCを嫡出子とする出生届がなされた場合において、誤ってこれが受理されたときは、この届出により認知としての効力が生ずる。
  2. Bは、Aとの内縁関係の継続中に懐胎し、その後、Aと適法に婚姻をし、婚姻成立後150日を経てCを出産した場合において、AがCとの間に父子関係が存在しないことを争うには、嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在確認の訴えによらなければならない。
  3. Bは、Aと離婚した後250日を経てCを出産したが、Aは、離婚の1年以上前から刑務所に収容されていた場合において、Aは、Cとの父子関係を争うためには嫡出否認の訴えによらなければならない。
  4. Aによる嫡出否認の訴えは、AがCの出生を知った時から3年以内に提起しなければならないが、Aが成年被後見人である場合には、この期間は後見開始の審判の取消しがあった後にAがCの出生を知った時から起算する。(改)
  5. Aが嫡出否認の訴えを提起する場合において、Cが幼少で意思能力を有せず、かつ、Bがすでに死亡しているときには、Cの未成年後見人がいるときであっても、家庭裁判所が選任した特別代理人を相手方とする。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:3
【解説】

A男と、B女が出産したCとの関係について、

1.AとBの内縁関係の継続中にBがCを出産し、AによってCを嫡出子とする出生届がなされた場合において、誤ってこれが受理されたときは、この届出により認知としての効力が生ずる。

1・・・正しい

判例によると、
嫡出でない子(非嫡出子)につき、父から、これを嫡出子とする出生届がされ、又は嫡出でない子(非嫡出子)としての出生届がされた場合において、右各出生届が戸籍事務管掌者によって受理されたときは、その各届は、認知届としての効力を有する」としています(最判昭53.2.24)。

つまり、本肢は正しいです。

「認知」とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)について、その父又は母が自分の子であると認めることを言います(民法779条)。

非嫡出子を嫡出子として出生届が出されても、非嫡出子であることに違いはないため、認知したことになります。そして、認知されると、認知された子は「子」としての身分を取得し、父が死亡すれば 相続権を取得します。

>>「認知」の解説はこちら

A男と、B女が出産したCとの関係について、

2.Bは、Aとの内縁関係の継続中に懐胎し、その後、Aと適法に婚姻をし、婚姻成立後150日を経てCを出産した場合において、AがCとの間に父子関係が存在しないことを争うには、嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在確認の訴えによらなければならない。

2・・・正しい

婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます(民法772条2項)。

本肢は、婚姻成立後150日を経てCを出産した場合なので、「Cは推定されない嫡出子」です。

この場合に、父が父子関係が存在しないことを争うには、「親子関係不存在確認の訴え」によらなければなりません(大判昭15.9.20)。

よって、正しいです。

>>嫡出の推定とは?

>>「嫡出否認の訴え」と「親子関係不存在確認の訴え」の違い

A男と、B女が出産したCとの関係について、

3.Bは、Aと離婚した後250日を経てCを出産したが、Aは、離婚の1年以上前から刑務所に収容されていた場合において、Aは、Cとの父子関係を争うためには嫡出否認の訴えによらなければならない。

3・・・誤り

婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます(民法772条2項)。

つまり、「Cは推定される嫡出子」です。

推定される嫡出子について、夫が親子関係を否定する場合、原則、「嫡出否認の訴え」をしなければなります。

ただし、夫が刑務所に収容されていた等の理由で性交渉不可能などの状況がある場合出産した子は夫の子と推定されず、「親子関係不存在確認の訴え」をすることができます(最判昭44.5.29)。

よって、本肢は誤りです。

A男と、B女が出産したCとの関係について、

4.Aによる嫡出否認の訴えは、AがCの出生を知った時から3年以内に提起しなければならないが、Aが成年被後見人である場合には、この期間は後見開始の審判の取消しがあった後にAがCの出生を知った時から起算する。(改)

4・・・正しい

夫が成年被後見人であるときは、嫡出否認の訴えの出訴期間は、後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から3年以内に提起しなければなりません(民法777条)。

よって、本肢は正しいです。

A男と、B女が出産したCとの関係について、

5.Aが嫡出否認の訴えを提起する場合において、Cが幼少で意思能力を有せず、かつ、Bがすでに死亡しているときには、Cの未成年後見人がいるときであっても、家庭裁判所が選任した特別代理人を相手方とする。

5・・・正しい

嫡出否認については、子又は親権を行う母に対する「嫡出否認の訴え」によって行います。

そして、親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければなりません

したがって、未成年後見人がいるときであっても、家庭裁判所が選任した特別代理人を相手方として嫡出否認の訴えを提起します。

よって、正しいです。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問33|民法・不当利得

改正民法に対応済

AのBに対する不当利得返還請求等に関する次のア~オの記述のうち、判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

ア.Aは、Bに対する未払い賃料はないことを知りつつ、Bから賃料不払いを理由とした賃貸建物明渡請求訴訟を提起された場合における防禦方法として支払いをなすものであることを特に表示したうえで、Bに弁済を行った。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として給付した弁済額の返還を請求することができる。

イ.Aは、賭博に負けたことによる債務の弁済として、Bに高価な骨董品を引き渡したが、その後、A・B間でBがこの骨董品をAに返還する旨の契約をした。この場合に、Aは、Bに対し、この骨董品の返還を請求することができる。

ウ.Cは、BからB所有の家屋を賃借した際に、CがBに対して権利金を支払わない代わりに、Cが当該家屋の修繕業務を負うこととする旨を合意したため、後日、当該家屋の修繕工事が必要となった際、CはAに対してこれを依頼し、Aが同工事を完了したが、CはAに修繕代金を支払う前に無資力となってしまった。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできない。

エ.Aは、Bとの愛人関係を維持するために、自己の有する未登記建物をBに贈与し、これを引き渡した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得としてこの建物の返還を請求することができる。

オ.Bは、Cから強迫を受け、同人の言うままに、Aと金銭消費貸借契約を締結し、Aに指示してBとは何らの法律上または事実上の関係のないDに貸付金を交付させたところ、Bが強迫を理由にAとの当該金銭消費貸借契約を取り消した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として貸付金相当額の返還を請求することができる。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2
【解説】

ア.Aは、Bに対する未払い賃料はないことを知りつつ、Bから賃料不払いを理由とした賃貸建物明渡請求訴訟を提起された場合における防禦方法として支払いをなすものであることを特に表示したうえで、Bに弁済を行った。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として給付した弁済額の返還を請求することができる。

ア・・・正しい

●債務不存在を知って弁済 → 原則:返還請求できない

●例外:訴訟を提起されるやむを得ない事情があって弁済した場合は、返還請求できる

債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができません民法705条)。

しかし、判例によると、
「居住家屋の賃料の支払義務のない者が、当該家屋の所有者から賃料支払の催告を受けたため、これを支払うべき筋合はないが賃料不払等とこじつけて家屋明渡訴訟を提起された場合の防禦方法として支払う旨とくに留保の表示をしたうえ、請求額を支払った等判示実関係のように、債務の不存在を知って弁済したことも無理からぬような客観的事情がある場合には、民法第705条の適用はない」としています(最大判昭40.12.21)。

つまり、Aは、Bに対し、不当利得として給付した弁済額の返還を請求することができるので正しいです。

>>不当利得とは?

イ.Aは、賭博に負けたことによる債務の弁済として、Bに高価な骨董品を引き渡したが、その後、A・B間でBがこの骨董品をAに返還する旨の契約をした。この場合に、Aは、Bに対し、この骨董品の返還を請求することができる。

イ・・・正しい

●不法原因給付 → 原則:返還請求できない

●例外:当事者間で、不法原因による給付を返還する旨の特約は有効となるので、その場合、返還請求できる

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができません (民法708条本文)。

具体例 賭博(とばく)は、違法です。このような反社会的な行為を理由にお金等を渡すことを「不法原因給付」と言います。

これによりお金等を渡すと、原則、渡したお金は返還できません。

理由 「返還請求できる」というルールにすると、不法原因を作った者(賭博をした者)を保護してしまうことになるからです。

判例 上記のように原則、不法原因給付は、返還請求できないのですが、判例では「当事者間で、不法原因による給付を返還する旨の特約をした場合、それは有効」としています。つまり、本問の場合、これに当たるため、賭博の弁済として引渡した骨董品を返還してもらうことができます。

理由 不法原因を理由に給付したものを返還できる契約をすることは、反社会的行為ではなく、公序良俗に反しないから

ウ.Cは、BからB所有の家屋を賃借した際に、CがBに対して権利金を支払わない代わりに、Cが当該家屋の修繕業務を負うこととする旨を合意したため、後日、当該家屋の修繕工事が必要となった際、CはAに対してこれを依頼し、Aが同工事を完了したが、CはAに修繕代金を支払う前に無資力となってしまった。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできない。

ウ・・・正しい

●不当利得があったかどうかは、契約全体からみて、第三者が対価を受けずに利益を得たかどうかで判断する

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負います(民法703条:不当利得)。

争点 建物所有者Bが、利益を受けたか?

判例  判例によると、「第三者が利益を受けたというには、契約全体から見て、当該第三者が対価関係なしに利益を受けたときに限られる」としています。つまり、契約全体から見て、第三者が対価を受けずに利益を得た場合、不当利得として返還しなければならないということです。

本問 本問は、「①賃借人Cは、賃貸人Bに対して権利金を支払わない」というのは、賃貸人Bにとっては不利益です。一方で、「②賃借人Cが、建物の修繕義務を負う」というのは、賃貸人Bにとっては利益です。つまり、利益を受けた分、不利益も受けているので、不当利得とは言えません。したがって、建物修繕をした者A(請負業者)は、賃貸人Bに対して、不当利得に基づく返還請求はできません。

エ.Aは、Bとの愛人関係を維持するために、自己の有する未登記建物をBに贈与し、これを引き渡した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得としてこの建物の返還を請求することができる。

エ・・・誤り

●不法原因給付 : 未登記の建物は「引き渡し」があれば「給付」したことになる → 返還請求できない

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができません (民法708条本文)。

本問の「愛人関係を維持するために建物を贈与する」とは、不法(反社会的)な原因(理由)で、建物を贈与しています。

ここで、不法原因であることは確かですが、「給付」したかどうかについては、判例では、未登記の建物の場合、引き渡しがあれば、「給付」があったとしています。つまり、本問は、引き渡しまで完了しているので、不法原因給付にあたり、建物の返還請求はできません。

関連ポイント 「登記された建物(既登記建物)」の場合、「給付」とみなされるのは、「引渡し」と「移転登記」が完了したときとしています。「引渡し」だけでは「給付」には当たりません。

オ.Bは、Cから強迫を受け、同人の言うままに、Aと金銭消費貸借契約を締結し、Aに指示してBとは何らの法律上または事実上の関係のないDに貸付金を交付させたところ、Bが強迫を理由にAとの当該金銭消費貸借契約を取り消した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として貸付金相当額の返還を請求することができる。

オ・・・誤り

●法律上の原因なく利益(不当利得)を受けていれば、返還しなければならない

●利益をけていないのであれば、不当利得に当たらない

問題文の状況 CがBを強迫して、

①AB間で金銭消費貸借契約(貸金契約)を締結させ、

②Aが借りるお金を、Bは、Dに渡した。

その後、AB間の貸金契約は強迫に基づき解除された。

質問内容 上記の場合、 Aは、Bに対し、不当利得として貸付金相当額の返還を請求することができる。〇か×か?

判例 そもそも、Bは貸金契約の当事者(借主)ではあるものの、お金を受け取っていません。そのため何らの利益も受けていません。そのため、不当利得には当たらず、Aは、Bに対し、不当利得として貸付金相当額の返還を請求することができません。

※ もし、仮にBがDに借金をしていて、Aと貸金契約をして、その借りたお金をAから直接Dに渡して、借金を返済していたというのであれば、Bは利益を受けているので、AB間の貸金契約解除により、不当利得となり、BはAにお金を返還しないといけないです。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問32|民法・委任契約・事務管理

改正民法に対応済

AはBのためにある事務処理を行った。これが、①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合とに関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.Aは、①の場合において、事務の処理に関して費用を要するときは、Bに対しその費用の前払いを請求することができるのに対し、②の場合には、Bに対し事務の管理により生じる費用の前払いを請求することができない。

イ.Aは、①の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、②の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。

ウ.Aは、①の場合には、Bを代理する権限が法律上当然には認められないのに対し、②の場合には、Bを代理する権限が法律上当然に認められる。

エ.Aは、①の場合には、事務を処理するにあたって受け取った金銭をBに引き渡さなければならないが、②の場合には、Bに対しそのような義務を負わない。

オ.Aは、①の場合には、委任の終了後に遅滞なくBに事務処理の経過および結果を報告しなければならないのに対し、②の場合には、事務管理を終了しても、Bの請求がない限り、事務処理の結果を報告する義務を負わない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:1
【解説】

①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合について、

ア.Aは、①の場合において、事務の処理に関して費用を要するときは、Bに対しその費用の前払いを請求することができるのに対し、②の場合には、Bに対し事務の管理により生じる費用の前払いを請求することができない。

ア・・・正しい

委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければなりません(民法649条)。

一方、
事務管理については、費用の前払請求はできません

よって、正しいです。

①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合について、

イ.Aは、①の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、②の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。

イ・・・正しい

受任者は、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。

また、受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用の償還を請求することができます(民法650条1項)。

一方、
事務管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができます(民法702条1項)。

よって、正しいです。

①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合について、

ウ.Aは、①の場合には、Bを代理する権限が法律上当然には認められないのに対し、②の場合には、Bを代理する権限が法律上当然に認められる。

ウ・・・誤り

委任契約がされているからといって、当然に代理する権限が法律上当然に認められるわけではありません
よって、この点は正しいです。

一方、事務管理については
判例によると、
事務管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然には本人に及ぶものではない」としています(最判昭36.11.30)。
つまり、事務管理についても、当然代理する権限が法律上当然に認められるわけではありません。
よって、この点が誤りです。

①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合について、

エ.Aは、①の場合には、事務を処理するにあたって受け取った金銭をBに引き渡さなければならないが、②の場合には、Bに対しそのような義務を負わない。

エ・・・誤り

受任者は、委任事務を処理するにあたって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければなりません民法646条1項)。
この点は正しいです。

また、事務管理でも、上記委任の規定を準用しています(民法701条)。

したがって、②の場合には、Bに対しそのような義務を負うので、この点が誤りです。

①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合について、

オ.Aは、①の場合には、委任の終了後に遅滞なくBに事務処理の経過および結果を報告しなければならないのに対し、②の場合には、事務管理を終了しても、Bの請求がない限り、事務処理の結果を報告する義務を負わない。

オ・・・誤り

受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません(民法645条)。

また、事務管理でも、上記委任の規定を準用しています(民法701条)。
したがって、②の場合には、事務処理の結果を報告する義務を負うので、この点が誤りです。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問31|民法・保証

改正民法に対応済

保証に関する1~5の「相談」のうち、民法の規定および判例に照らし、「可能です」と回答しうるものはどれか。

  1. 私は、AがBとの間に締結した土地の売買契約につき、売主であるAの土地引渡等の債務につき保証人となりましたが、このたびBがAの債務不履行を理由として売買契約を解除しました。Bは、私に対して、Aが受領した代金の返還について保証債務を履行せよと主張しています。私が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。
  2. 私は、AがBから金銭の貸付を受けるにあたり、Aに頼まれて物上保証人となることにし、Bのために私の所有する不動産に抵当権を設定しました。このたびAの債務の期限が到来しましたが、最近資金繰りに窮しているAには債務を履行する様子がみられず、抵当権が実行されるのはほぼ確実です。私はAに資力があるうちにあらかじめ求償権を行使しておきたいのですが、これは可能でしょうか。
  3. 私の経営する会社甲は、AがBと新たに取引関係を結ぶにあたり、取引開始時から3ヵ月間の取引に関してAがBに対して負う一切の債務を保証することとし、契約書を作成しましたが、特に極度額を定めていませんでした。このたび、この期間内のA・B間の取引によって、私が想定していた以上の債務をAが負うことになり、Bが甲に対して保証債務の履行を求めてきました。甲が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。
  4. 私は、AがB所有のアパートを賃借するにあたりAの保証人となりました。このたびA・B間の契約がAの賃料不払いを理由として解除されたところ、Bは、Aの滞納した賃料だけでなく、Aが立ち退くまでの間に生じた損害の賠償についても保証債務の履行をせよと主張しています。私は保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。
  5. 私は、AがBから400万円の貸付を受けるにあたり、Aから依頼されてCと共に保証人となりましたが、その際、私およびCは、Aの債務の全額について責任を負うものとする特約を結びました。このたび、私はBから保証債務の履行を求められて400万円全額を弁済しましたが、私は、Cに対して200万円の求償を請求することが可能でしょうか。

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改正民法に対応済

【答え】:5
【解説】

1.私は、AがBとの間に締結した土地の売買契約につき、売主であるAの土地引渡等の債務につき保証人となりましたが、このたびBがAの債務不履行を理由として売買契約を解除しました。Bは、私に対して、Aが受領した代金の返還について保証債務を履行せよと主張しています。私が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

1・・・「可能です」と回答できない

●保証人は、契約解除に伴う原状回復義務についても保証しなければならない

判例では、「保証人は、債務不履行により売主が買主に対し負担する損害賠償義務についてはもちろん、特に反対の意思表示のないかぎり、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても保証の責任がある」としています。

つまり、売主Aが代金受領後、解除によって、代金返還義務が発生した場合、売主Aの保証人(私)も、代金返還義務を負います。

つまり、保証人(私)は、買主Bからの代金返還請求を拒むことはできません。

2.私は、AがBから金銭の貸付を受けるにあたり、Aに頼まれて物上保証人となることにし、Bのために私の所有する不動産に抵当権を設定しました。このたびAの債務の期限が到来しましたが、最近資金繰りに窮しているAには債務を履行する様子がみられず、抵当権が実行されるのはほぼ確実です。私はAに資力があるうちにあらかじめ求償権を行使しておきたいのですが、これは可能でしょうか。

2・・・「可能です」と回答できない

●物上保証人は事前求償できない

事前求償とは 通常、保証人は、債権者に弁済した後に、弁済した額を主たる債務者に求償します。しかし、主たる債務者が破産してしまった場合など、弁済した後に求償をしようとしても、主たる債務者が弁済できないことも考えられます。このような場合に、弁済前に求償できる「事前求償」という制度があります。

判例 そして、判例では、「物上保証人は事前求償できない」としています。

理由 物上保証人は、債務者ではなく、競売手続きが終わって、はじめて物上保証人が弁済した額が決定します。そのため、競売が終わるまで、求償できる額が分からないから、「物上保証人は事前求償できない」としています。

3.私の経営する会社甲は、AがBと新たに取引関係を結ぶにあたり、取引開始時から3ヵ月間の取引に関してAがBに対して負う一切の債務を保証することとし、契約書を作成しましたが、特に極度額を定めていませんでした。このたび、この期間内のA・B間の取引によって、私が想定していた以上の債務をAが負うことになり、Bが甲に対して保証債務の履行を求めてきました。甲が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

3・・・「可能です」と回答できない

●個人根保証 → 極度額を定めない場合、無効となる

●法人が根保証人の場合、極度額を定めなくても有効

根保証とは 根保証とは、一定の取引関係から生ずる現在および将来の一切の債務を保証することを指します。そして、本問の「会社甲は、AがBと新たに取引関係を結ぶにあたり、取引開始時から3ヵ月間の取引に関してAがBに対して負う一切の債務を保証する」と書いてあるので。会社甲は、根保証人であることが分かります。

そして、「個人」が根保証人となる場合、「極度額」を定めなければ、根保証の効力は生じません(民法465条の2の2項)。

一方、「法人」が根保証人となる場合、「極度額」を定めなくても有効となります。そのため、「会社甲(法人)」は債権者Bに対して保証債務の履行を拒むことはできません。

4.私は、AがB所有のアパートを賃借するにあたりAの保証人となりました。このたびA・B間の契約がAの賃料不払いを理由として解除されたところ、Bは、Aの滞納した賃料だけでなく、Aが立ち退くまでの間に生じた損害の賠償についても保証債務の履行をせよと主張しています。私は保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

4・・・「可能です」と回答できない

●保証債務 → 主たる債務だけでなく、利息、違約金、損害賠償債務も負う

保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを含みます(民法447条)。

よって、賃料不払いを理由に契約解除となった場合、保証人は、滞納した賃料だけなく、 賃借人Aが立ち退くまでの間に生じた損害の賠償についても保証しなければなりません。よって、保証人(私)は、滞納家賃と損害賠償の請求を拒むことはできません。

5.私は、AがBから400万円の貸付を受けるにあたり、Aから依頼されてCと共に保証人となりましたが、その際、私およびCは、Aの債務の全額について責任を負うものとする特約を結びました。このたび、私はBから保証債務の履行を求められて400万円全額を弁済しましたが、私は、Cに対して200万円の求償を請求することが可能でしょうか。

5・・・「可能です」と回答できる

●保証人 → 自己の負担部分を超える弁済をすれば、自己の負担部分を超える部分について他の保証人に求償できる

本問では、「私」と「C」が保証人にとなり、それぞれが債務の全額400万円を保証する契約となっています。そして、保証人は、自己の負担部分(200万円)を超える弁済をすれば、自己の負担部分を超える部分について他の保証人に求償できますつまり、「私」が400万円を弁済したのであれば、「私」は、200万円をCに求償できます。よって、「可能といえます」。

※ もし、「私」が300万円を弁済したのであれば、「私」は、300万円のうち、負担部分200万円を超える部分=100万円をCに求償できます。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問30|民法・抵当権

改正民法に対応済

A銀行はBに3,000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。この場合に、以下のア~オの記述のうち、次の【考え方】に適合するものをすべて挙げた場合に、妥当なものの組合せはどれか。なお、対抗要件や即時取得については判例の見解に立つことを前提とする。

【考え方】:分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する。

ア.抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、A銀行は第三者への木材の引渡しよりも先に抵当権の登記を備えているので、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。

イ.抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却され、占有改定による引渡しがなされたとしても、第三者のために即時取得は成立しない。

ウ.Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。

エ.Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合において、当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを第三者が知っているときは、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できない。

オ.第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。

  1. ア・イ・ウ・エ
  2. ア・イ・ウ・オ
  3. ア・イ・エ
  4. ア・ウ・エ
  5. イ・ウ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

本肢の【考え方】を整理すると

伐採木材が、「①抵当不動産上にある場合」と「抵当不動産から搬出された場合」の2つに分けて考えています。

  • ①伐採木材が抵当不動産上にある場合 ⇒ 抵当権の効力は伐採材木にも及び、抵当権を第三者に対抗できる
  • ②伐採木材が抵当不動産から搬出された場合 ⇒ 抵当権の効力は伐採材木にも及ぶが、抵当権を第三者に対抗できない
ア.抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、A銀行は第三者への木材の引渡しよりも先に抵当権の登記を備えているので、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。

ア・・・適合する

本肢は「抵当山林上に伐採木材がある段階」なので①です。

そのため、木材がBから第三者に売却された場合でも、銀行は、抵当権により第三者に対抗できます

よって、第三者の搬出行為の禁止を求めることができます。

したがって、本問の考え方と適合します。

イ.抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却され、占有改定による引渡しがなされたとしても、第三者のために即時取得は成立しない。

イ・・・適合する

本肢は「抵当山林上に伐採木材がある段階」なので①です。

よって、抵当権は伐採木材にも及び、第三者に対抗できます。

そして、占有改定による引渡しがなされたとしても、占有改定では、即時取得は成立しません最判昭35.2.11)。

したがって、本問の考え方と適合します。

ウ.Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。

ウ・・・適合する

本肢は「伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合」なので②です。

この場合、抵当権の効力は伐採材木にも及ぶが、抵当権を第三者に対抗できないです。

本肢の第三者は、「Bと取引関係にない第三者」は無権利者です。

よって、上記「抵当権を対抗できない第三者」には含みません。

言い換えると、A銀行は第三者(無権利者)に対して元の場所へ戻すように請求できます。

したがって、本問の考え方と適合します。

エ.Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合において、当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを第三者が知っているときは、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できない。

エ・・・適合しない

本肢は「Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後」なので②です。

そして、「第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合」なので、A銀行は、当該第三者に対して抵当権を対抗できません

言い換えると、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できます。

したがって、本問の考え方と適合しません。

オ.第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。

オ・・・適合する

【問題文の状況】

・A銀行:抵当権者
・B:抵当権設定者・伐採木材の所有者

Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行い、別の場所に搬出させた。

第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的でBから上記木材を買い引渡しを受けた。

【問題文の続き】

本肢は「第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合」となっているので、当該第三者は「背信的悪意者」です。

したがって、A銀行は、第三者に対抗できます。

そして、判例によると、
「抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,当該占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる」としています(最判平17.3.10)。

「第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的でBから上記木材を買い引渡しを受けた」からといって、Bが抵当不動産(山林・木材)を適切に維持管理することが期待できないわけではありません。

そのため、「抵当不動産(山林・木材)を適切に維持管理することが期待できない」場合には当たらないので、抵当権者は抵当不動産の明け渡しを求めることができません。

つまり、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができないので、本問の考え方と適合します。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問29|民法・共有

改正民法に対応済

A・B・Cの3人が、甲土地、乙土地、丙土地のすべてについて、どれも3分の1ずつの持分権をもって共有している場合の共有物分割に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定及び判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるから、たとえA・B・Cの間で5年間の共有物分割禁止の契約があった場合でも同契約は無効であり、Aは、BおよびCに対して甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することができる。

イ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、これらを一括して分割の対象としてAが甲土地、Bが乙土地、Cが丙土地というように各土地を単独所有とする分割方法をとることができる。

ウ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、乙土地および丙土地については共有関係を解消せず、Aに対してのみAの持分権に相当する甲土地を取得させ、乙土地および丙土地はBとCの共有として残すとする分割方法をとることができる。

エ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、Aの申立てがあれば、甲土地、乙土地および丙土地をAの単独所有とし、BおよびCに対してAから各自の持分権の価格を賠償させる方法をとらなければならない。

オ.甲土地、乙土地および丙土地についてのBおよびCの共有持分権がDに譲渡された場合には、その旨の移転登記がないときでも、Aは、BおよびCに対しては甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することはできない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:3
【解説】

ア.各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるから、たとえA・B・Cの間で5年間の共有物分割禁止の契約があった場合でも同契約は無効であり、Aは、BおよびCに対して甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することができる。

ア・・・誤り

●5年以内の期間を定めて、共有物分割禁止する契約 → 有効

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をした場合、この契約は有効となり、その期間は分割請求できません(民法256条)。よって、本問は誤りです。

関連ポイント 共有分割禁止特約は、更新することもできます。その場合も、最長5年です。

イ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、これらを一括して分割の対象としてAが甲土地、Bが乙土地、Cが丙土地というように各土地を単独所有とする分割方法をとることができる。

イ・・・正しい

●複数の不動産があった場合、各所有者に不動産をそれぞれ割り当てる方法も可能

判例 判例によると「分割の対象となる共有物が多数の不動産である場合には、これらの不動産が外形上一団とみられるときだけでなく、数か所に分かれて存在するときでも、当該不動産を一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすることも、現物分割の方法として許される」としています。つまり、本問のような分割方法も可能です。

ウ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、乙土地および丙土地については共有関係を解消せず、Aに対してのみAの持分権に相当する甲土地を取得させ、乙土地および丙土地はBとCの共有として残すとする分割方法をとることができる。

ウ・・・正しい

●共有分割の方法として、共有者1人のみ現物分割し、残った部分については他の共有者の共有にすることも可能

判例 判例では、「共有者が多数である場合、その中のただ一人でも分割請求をするときは、直ちにその全部の共有関係が解消されるものと解すべきではなく、当該請求者に対してのみ持分の限度で現物を分割し、その余った部分は他の者の共有として残すことも許される」としています。したがって、Aに対してのみAの持分権に相当する甲土地を取得させ(Aの単独所有)、乙土地および丙土地はBとCの共有として残すとする分割方法をとることができます。

エ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、Aの申立てがあれば、甲土地、乙土地および丙土地をAの単独所有とし、BおよびCに対してAから各自の持分権の価格を賠償させる方法をとらなければならない。

エ・・・誤り

●共有物の分割を請求がされた場合、「価格賠償(単独所有者させ、その分お金で賠償させる方法)」を選択することもできる

判例 判例では、「裁判所は、共有者の実質的公平を害しない特段の事情があれば、共有者のうちの1人の単独所有として、他の共有者にその持分の価格を賠償させる方法で分割させることができる」としています。つまり、「価額賠償の方法をとらなければならない」と義務になっている点は誤りです。あくまでも「価額賠償の方法によって分割することもできる」という任意です。つまり、甲土地、乙土地および丙土地をAの単独所有とし、Aは、B・Cに対してお金等を支払わせる方法をとることも可能です。

オ.甲土地、乙土地および丙土地についてのBおよびCの共有持分権がDに譲渡された場合には、その旨の移転登記がないときでも、Aは、BおよびCに対しては甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することはできない。

オ・・・誤り

●共有持分の譲渡後、移転登記されていない場合 共有分割請求は譲渡人に対してすべき

判例 判例によると「持分譲渡があっても、その旨が登記されていないときは、持分はなお譲渡人(BC)に帰属するものとして、共有分割請求をすべき」としています。つまり、本問の場合、譲受人Dに移転登記がされていないため、 Aは、BおよびCに対して分割請求をすべきです。よって、本問は「Aは、BおよびCに対して分割請求できない」となっているので誤りです。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問28|民法・時効

改正民法に対応済

時効更新の効力に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 債務者Aの債権者Bに対する債務の承認によって被担保債権の時効が更新した場合に、物上保証人Cは、当該被担保債権について生じた消滅時効更新の効力を否定することはできない。
  2. 物上保証人Aに対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者Bに通知した場合には、被担保債権についての消滅時効は更新する。
  3. 要役地である甲地をA・B・Cの3人が共有しているが、承役地である乙地の通行地役権について消滅時効が進行している場合に、Aのみが通行地役権を行使して消滅時効を更新したときは、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。
  4. 甲地の共有者A・B・Cの3人が乙地の上に通行地役権を時効取得しそうな場合に、乙地の所有者Dは、A・B・Cのうち誰か1人に対して時効の更新をすれば、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。
  5. A所有の甲土地をB・Cの2人が占有して取得時効が完成しそうな場合に、AがBに対してだけ時効の更新をしたときは、Bの取得時効のみ更新され、Cの取得時効は更新されることはない。

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改正民法に対応済

【答え】:4
【解説】

1.債務者Aの債権者Bに対する債務の承認によって被担保債権の時効が更新した場合に、物上保証人Cは、当該被担保債権について生じた消滅時効更新の効力を否定することはできない。

1・・・正しい

●被担保債権の時効が更新した場合、物上保証人は時効更新の効力を否定できない

まず、債務者Aが「債務を承認すること」により、被担保債権の時効は更新します。

つまり、債権者Bとしては、被担保債権が時効消滅せずに済みます。

一方、物上保証人としては、被担保債権が時効消滅してくれれば、

付従性により、抵当権も消滅するので、利益があるので、

上記時効更新の効力を否定したいです。

判例 抵当権には付従性があるため、被担保債権の時効が更新されれば、それに伴い、抵当権も存続し、物上保証人は時効更新の効力を否定することはできないとしています。(=物上保証人も時効更新される)

2・・・正しい

●物上保証 : 競売開始決定の通知が債務者に届く → 被担保債権の消滅時効の完成猶予および時効更新の効果が生じる

競売にかけられると、競売の手続きが終わってから6か月間は時効の完成は猶予され、また、競売の手続きが終わった時から新たにその進行を始めます(時効更新する)(民法148条)。

そして、競売に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の完成猶予又は更新の効力を生じません(154条)。

本問 本問において、「時効の利益を受ける者」とは、物上保証人Aと債務者Bです。物上保証人Aに対しては、直接競売開始の手続きが進められているので、当然、競売の事実を知っています。一方、債務者Bは、競売開始の事実を知らない可能性があります。今回、裁判所が債務者Bに通知しているので、被担保債権について、時効完成は猶予され、また時効更新します。

3.要役地である甲地をA・B・Cの3人が共有しているが、承役地である乙地の通行地役権について消滅時効が進行している場合に、Aのみが通行地役権を行使して消滅時効を更新したときは、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。

3・・・正しい

●地役権 : 要役地の共有者の一人について時効の完成猶予や時効更新した → 他の共有者も、時効の完成猶予や時効更新の効力が生じる

時効の完成猶予と更新 「時効の完成猶予」とは、時効の進行が「一時停止」するイメージです。時効の完成猶予期間中に、時効完成の時期が到来しても、その期間中は時効が完成しない(時効の完成が妨げられる)ということです。 また、「更新」とは、今まで経過してきた時効のための時間が、法律上ストップして、また、振り出しに戻る(リセットされ、再スタート:新たに時効期間がスタートする)ことを言います。

本問 地役権は取得しやすく、消滅しにくいというイメージです。本問は「地役権は消滅しにくい」というイメージの具体例です。要役地(利用する側・利益を受ける側の土地)を数人が共有する場合において、その一人のために「時効の完成猶予又は更新」があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生じます(民法292条)。つまり、共有者の一人について時効の完成猶予や時効更新があったら、他の共有者も時効の完成猶予と更新の効力が生じます。つまり、共有者の一人について地役権の消滅時効の「完成猶予と更新」があることで、共有者全員について地役権が消滅しなくなります。つまり、地役権は消滅しにくいとうことです。

4.甲地の共有者A・B・Cの3人が乙地の上に通行地役権を時効取得しそうな場合に、乙地の所有者Dは、A・B・Cのうち誰か1人に対して時効の更新をすれば、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。

4・・・誤り

●地役権が時効取得されそう → 時効取得しようとしている全員に対して時効更新しないと、時効取得されてしまう

問題文の状況 「甲地の共有者A・B・Cの3人が乙地の上に通行地役権を時効取得しそうな場合」ということは。A・B・Cは、乙地を長期間通行していたということです。それだと、通行地役権を時効により取得されてしまうと思って、乙地の所有者が、時効取得されないように、時効の更新を行おうとしている状況です。

質問内容 乙地の所有者Dは、A・B・Cのうち誰か1人に対して時効の更新をすれば、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。〇か×か。

解説 地役権のイメージは「地役権は取得しやすく、消滅しにくいです。本問に関係するのは、「地役権は取得しやすい」という方です。これを基準に考えると、乙地の所有者Dは、ABC全員に対して時効更新しないと、時効取得されてしまうということが分かります。よって、本問は×です。民法284条2項にも「共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない」と規定されています。

5.A所有の甲土地をB・Cの2人が占有して取得時効が完成しそうな場合に、AがBに対してだけ時効の更新をしたときは、Bの取得時効のみ更新され、Cの取得時効は更新されることはない。

5・・・正しい

 ●「時効の完成猶予」「時効の更新」は相対効

時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有します(民法153条)。つまり、「時効の完成猶予」「時効の更新」は相対効だということです。

よって、BとCの二人について取得時効が完成しそうな場合において、Bに対してだけ時効更新させても、Cには時効更新の効力は生じません。よって、本問は正しいです。時効取得されたくなければ、BとCの両者について、時効更新させる必要があります。例えば、両者を被告として、裁判上の請求をして、確定判決を獲得すれば、両者について、時効更新できます。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成22年・2010|問27|民法・制限行為能力者

改正民法に対応済

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。
  2. Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。
  3. この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。
  4. Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。
  5. Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。

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改正民法に対応済【答え】:4【解説】

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

1.Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。

1・・・誤り

●成年被後見人 → 後見開始の審判を受けた者

成年被後見人は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」で、家庭裁判所が、「後見開始の審判」をした者をいいます(民法7条)。

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるからといって、当然に成年被後見人とはならないので、妥当ではありません。

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

2.Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。

2・・・誤り

●被保佐人 → 原則:単独で法律行為を行える

●例外:重要な財産上の行為については、保佐人の同意が必要 → 同意がなければ取消しできる

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」である者で、家庭裁判所が保佐開始の審判をしたものです(民法11条)。そして、被保佐人は、原則、単独有効に契約することができます。ただし、「一定の重要な財産上の行為」については、保佐人の同意を得なければ行うことができません(13条)。(下表参照)

本問 「動産を譲渡する行為」といっても、下記例外に該当しない場合もあります。例えば、友人に「テーブル」を売却したとしても、それは重要な財産上の行為に該当しないので、保佐人の同意なく、売却できます。この場合、制限行為能力者を理由にあとで取り消すことはできないので、誤りです。

被保佐人の法律行為

 

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

3.この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。

3・・・誤り

●第三者詐欺 → 相手方が「善意無過失」の場合、相手方が保護される=相手方が善意無過失の場合、詐欺を受けた本人は取消しできない

問題文の状況は図の通りです。

①第三者(鑑定人)がAをだまして、

②AがBに安い価格で骨董品を売却した。

質問内容

Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、

Aは当該意思表示を取り消すことができない。〇か×か。

解説 

第三者から詐欺を受けて売却した場合、詐欺の事実を相手方Bが過失なく知らなかった時(相手方が善意無過失の場合)、相手方Bを保護し、Aは、AB間の契約を取消すことができません(民法96条2項)。

一方、相手方Bが、詐欺の事実を知っていたり(悪意)、知らなくても過失がある場合(有過失)、詐欺を受けたAを保護し、Aは、AB間の契約を取消すことができます。よって、Bが詐欺の事実を知っている場合、Aは意思表示を取り消すことができるので、本問は誤りです。

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

4.Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。

4・・・正しい

●心裡留保(冗談)について相手方が「善意無過失」の場合、契約は有効となる(原則)

●心裡留保(冗談)について相手方が「悪意」もしくは「過失があれば契約は無効となる

「本問」は、『贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した』となっているので、この贈与は「真意ではない」ことが分かります。「真意ではない」とは「心裡留保(冗談)」ということです。

心裡留保の場合、原則、契約は有効となります。例外として、相手方Bが「悪意」もしくは「過失があれば」、契約は無効となります。よって、本問は、原則有効なので、正しいです。

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

5.Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。

5・・・誤り

●「虚偽表示による第三者」は、善意であれば保護される(所有権を主張できる)

まず、問題文の「Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡した」というのは、仮装譲渡をしたということなので、虚偽表示の問題と判断できます。そして、第三者Cは善意(仮装譲渡であることを知らず)・有過失の状況です。

【質問内容】  Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。〇か×か。

【解説】 虚偽表示では、本人Aは、善意第三者Cに対抗できません(不動産を返せ!と言えない)(民法94条2項)。

つまり、本人Aは「善意のC」に無効主張できません。よって、本問は、誤りです。

ちなみに、無効主張できないということは、Aは、Cに対して、所有者であることを主張できません(=AはCから不動産を取り戻せない)ということです。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略