民法の過去問

平成23年・2011|問45|民法・記述式

改正民法に対応済

Aの抵当権(登記済み)が存する甲土地をその所有者Bから買い受け、甲土地の所有権移転登記を済ませたCは、同抵当権を消滅させたいと思っている。抵当権が消滅する場合としては、被担保債権または抵当権の消滅時効のほかに、Cが、Bの債権者である抵当権者Aに対し被担保債権額の全部をBのために弁済することが考えられるが、そのほかに、抵当権が消滅する場合を二つ、40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:CがAに対して抵当権消滅請求をした場合及びCがAの請求に応じて甲土地の代価を弁済した場合。(45字)

【解説】

問題文の状況は

  • 所有者Bの甲土地(抵当権の設定あり:抵当権者A)
  • Cは上記甲土地を購入し、移転登記済

上記状況で、Cは同抵当権を消滅させたいと思っています。

抵当権が消滅する場合としては、下記2つがあると書かれています。

  1. 被担保債権または抵当権の消滅時効
  2. Cが、Bの債権者である抵当権者Aに対し被担保債権額の全部をBのために弁済する

上記2つ以外に抵当権が消滅する場合を2つ考えよ、という質問です。

抵当権を消滅させる方法として考えられるのは

抵当権消滅請求と②代価弁済です。

これを、40字でまとめます。

CがAに対して抵当権消滅請求をした場合及びCがAの請求に応じて甲土地の代価を弁済した場合。(45字)

>>「抵当権消滅請求」はこちら


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問33|民法・委任契約・事務管理

改正民法に対応済

Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(以下、「甲」という。)の屋根が損傷したため修繕を行った。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、強風に煽られて屋根から落下してしまい、受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができない。
  2. Bは、Aから不在中における甲の管理を頼まれていたために修繕を行ったが、屋根から下りる際にBの不注意により足を滑らせて転倒し受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができる。
  3. Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、それがAにとって有益であるときは、Bは、Aに対して報酬を請求することができる。
  4. Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせた。このようなBの行為は、Aのための事務管理にあたるから、これによりCは、Aに対して工事代金の支払いを直接に請求することができる。
  5. Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせたが、実はAがCによる修繕を望んでいないことが後になって判明した。このような場合、甲にとって必要不可欠な修繕であっても、Bは、Aに対してその費用の支払いを請求することができない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:1

【解説】

Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。

1.Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、強風に煽られて屋根から落下してしまい、受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができない。

1・・・妥当

●事務管理 → 管理者に過失なく損害を受けたとしても、本人に対し、損害賠償請求はできない

事務管理とは 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(事務管理)をしなければなりません。これを事務管理と言います(民法697条)。

つまり、「管理者は、本人から管理を頼まれていない」ことが事務管理の要件の一つです。

そして、事務管理において、管理者が自己に過失なく損害を受けたとしても、本人に対し、その賠償を請求することができません。

本問 そして、本問は、「Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行った」と記載されているので、Bは事務管理を行った「管理者」です。よって、 Bが強風に煽られて屋根から落下してしまい、受傷したとしても、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができません。

対比  委任の場合、受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができます(650条3項)。

Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。

2.Bは、Aから不在中における甲の管理を頼まれていたために修繕を行ったが、屋根から下りる際にBの不注意により足を滑らせて転倒し受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができる。

2・・・妥当ではない

●準委任契約 → 委任契約の規定が適用 → 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し損害賠償請求することができる

委任契約と準委任契約の違い ある事務を、任せる点では同じですが、委任契約の場合、「法律行為に関する事務」を受任者に依頼し、「準委任契約」の場合「法律行為に関すること以外」の事務を受注者に依頼します。

委任契約の具体例 土地の売買契約を委任する場合 → 売買契約を締結すること(「意思表示」をすること)で、「引渡し義務や引渡し請求権」「代金支払義務や代金支払請求権」という「効果」が発生するため、売買契約は法律行為です。

準委任契約の具体例 不在中に建物の管理を任せる場合 → 管理すること自体、法律行為ではないです。管理すること自体に、何ら意思表示をすることもないからです。

準委任契約について 準委任契約は、委任契約の規定が準用されます(民法656条)。そして、委任の場合、受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができます(650条3項)。

本問 本問は、「Bの不注意により足を滑らせて転倒し受傷した」わけなので、受任者Bに過失があります。そのため、受任者Bは、委任者Aに対して損害賠償を請求することができません。

Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。

3.Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、それがAにとって有益であるときは、Bは、Aに対して報酬を請求することができる。

3・・・妥当ではない

●事務管理 → 管理者が有益費・必要費を支出した場合、本人に対して「その費用」を償還請求できる

●事務管理 → 報酬は請求はできない

事務管理とは 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(事務管理)をしなければなりません。これを事務管理と言います(民法697条)。

つまり、「管理者は、本人から管理を頼まれていない」ことが事務管理の要件の一つです。

管理者による費用の償還請求 管理者は、本人のために有益な費用(必要費も含む)を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができます(民法702条)。

具体例 Aの隣人であるBが、Aの不在の間に台風によって、A所有の甲建物の屋根が損傷したため、修繕した場合、修繕費用(材料費)が上記「有益な費用」に当たります。よって、この修繕費用は請求できます。

注意点 事務を行った対価としての「報酬」は請求できませんよって、本問は誤りです。

Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。

4.Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせた。このようなBの行為は、Aのための事務管理にあたるから、これによりCは、Aに対して工事代金の支払いを直接に請求することができる。

4・・・妥当ではない

●事務管理 → 管理者が「本人の名」で第三者との間で契約しても、その効果は、本人は及ばない

本人Aと管理者Bとした事務管理において、判例によると、「管理者Bが本人Aの名でした法律行為の効果は、当然には本人Aに及ぶものではない」としています。つまり、本問のように、管理者Bが、工務店Cとの間で請負契約を締結した場合(管理者Bが、Aの名で請負契約を締結したとしても)、本人Aには請負契約の効果は生じず、CはAに対して報酬を請求することはできません。Cは、管理者Bに対して請求することになります。(その後、BがAが請求する流れになる)

Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。

5.Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせたが、実はAがCによる修繕を望んでいないことが後になって判明した。このような場合、甲にとって必要不可欠な修繕であっても、Bは、Aに対してその費用の支払いを請求することができない。

5・・・妥当ではない

●本人の意思に反した事務管理 → 管理者は本人に対して「本人が現に利益を受けている限度」においてのみ、償還請求できる

管理者Bが本人Aの意思に反して事務管理をしたときは、本人Aが現に利益を受けている限度においてのみ、償還請求できます(702条3項)。つまり、 本人Aが工務店Cによる修繕を望んでいなかったとしても、この修繕によって、Aが現に利益を受けた限度で、管理者Bは、本人Aに対してその費用の支払いを請求することができます。よって、誤りです。

本問は「必要費」なので、本人は少なからず利益を受けていると考えることができます。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問32|民法・契約解除

改正民法に対応済

契約類型に応じた契約解除の相違に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 贈与契約において、受贈者が、受贈の見返りとして贈与者を扶養する義務を負担していたにもかかわらず、この扶養する義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができる。
  2. 売買契約において買主から売主に解約手付が交付された場合に、売主が売買の目的物である土地の移転登記手続等の自己の履行に着手したときは、売主は、まだ履行に着手していない買主に対しても、手付倍返しによる解除を主張することはできない。
  3. 賃貸借契約において、賃借人の賃借物に対する使用方法が著しく信頼関係を破壊するものである場合には、賃貸人は、催告を要せずにただちに契約を解除することができる。
  4. 委任契約において、その契約が受任者の利益のためにもなされた場合であっても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるときはもちろん、また、そのような事情がないときでも、委任者が解除権自体を放棄したとは解されないときは、委任者は、自己の利益のためになお解除権を行使することができる。
  5. 建物の工事請負契約において、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合には、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、既施工部分については契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

1.贈与契約において、受贈者が、受贈の見返りとして贈与者を扶養する義務を負担していたにもかかわらず、この扶養する義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができる。

1・・・妥当

●負担付贈与で受贈者が負担である義務の履行を怠る場合、贈与者は贈与契約の解除ができる

負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。例えば、時価3000万円の土地を贈与するかわりに、借入金500万円を負担させる場合です。そして、判例では、負担付贈与において受贈者(もらう側)が、その負担である義務の履行を怠る場合、贈与者は、贈与契約の解除ができるとしています。

考え方 契約内容として、負担することを約束して、贈与しているのだから、負担の義務を履行しないということは、契約解除のルールが適用されるのは当然です(民法541条)。

2.売買契約において買主から売主に解約手付が交付された場合に、売主が売買の目的物である土地の移転登記手続等の自己の履行に着手したときは、売主は、まだ履行に着手していない買主に対しても、手付倍返しによる解除を主張することはできない。

2・・・妥当ではない

●相手方が履行に着手していない → 手付解約できる (自分が履行に着手したかは関係ない)

買主が売主に手付を交付したときは、相手方が履行に着手するまでの間は、契約解除できます。そして、買主から解除する場合、手付を放棄し、売主から解除する場合、手付の倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができます。(民法557条)。

本問 本問は、売主が移転登記手続を行っているので、売主が履行に着手しています。つまり、相手方である買主から手付放棄による解除はできません。一方、買主は履行に着手していないので、売主からは手付の倍額を償還して(渡して)解除できます。この場合、売主が履行に着手しているかどうかは関係ありません。あくまでも判断基準は、相手方が履行に着手したかどうかです。

具体例 手付金100万円を交付したとする

>>手付とは?

3.賃貸借契約において、賃借人の賃借物に対する使用方法が著しく信頼関係を破壊するものである場合には、賃貸人は、催告を要せずにただちに契約を解除することができる。

3・・・妥当

●賃貸借関係の継続を著しく困難にさせるような不信行為のあった場合 → 催告なく直ちに解除できる

判例によると、「賃貸借は、当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難にさせるような不信行為があった場合には、相手方は、賃貸借を将来に向って、解除することができるものと解しなければならない、そして、この場合には催告なく、解除できるものと解すべきである」としています。つまり、賃貸借契約において、賃借人の賃借物に対する使用方法が著しく信頼関係を破壊するものである場合には、賃貸人は、催告を要せずにただちに契約を解除することができるので〇です。

4.委任契約において、その契約が受任者の利益のためにもなされた場合であっても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるときはもちろん、また、そのような事情がないときでも、委任者が解除権自体を放棄したとは解されないときは、委任者は、自己の利益のためになお解除権を行使することができる。

4・・・妥当

●委任契約において、その契約が受任者の利益のためにもなされた場合 → ①受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるとき、②委任者が解除権を放棄していないときは、委任者は解除できる

委任契約において、その契約が受任者の利益のためにもなされた場合の具体例

委任者Aが受任者Bに対して、「賃料10万円の取り立て」を委任し、取り立てた10万円のうち3万円が受任者Bの報酬となる場合です。

判例 判例によると「受任者の利益のためにも締結された委任契約であっても、受任者が著しく不誠実な行動に出る等やむをえない事由があるときは、委任者において委任契約を解除することができる。また、やむを得ない事由がなくても、委任者が委任契約の解除権自体を放棄したものとは解されない事情があるとき(委任者が解除権を放棄していない場合)は、民法651条に基づき、委任契約を解除できる」としています。

※ 民法651条では「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」としています。

5.建物の工事請負契約において、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合には、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、既施工部分については契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎない。

5・・・妥当

●建物の工事請負契約 → 工事内容が可分の場合 → 既に終わっている部分だけでも注文者に利益がある → 既に終わっている部分は解除できない・未施工部分にのみ解除できる

「①注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき」または「②請負が仕事の完成前に解除されたとき」、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなします(民法634条)。

①については、注文者の責任ではない事由で仕事の完成が不能になった場合に請負人による報酬請求を認めるもので、具体的には、「請負人の債務不履行」や「当事者双方の責任ではない事由(天災等)」を指します。

本問は① 「請負人の債務不履行」を理由に解除する場合です。つまり、既施工部分を引渡すことで注文者に利益がある場合、その部分だけ引き渡して、その部分の割合だけ、請負人は報酬を受けることができます(既施工部分は解除できない)。

そして、未施工部分のみ解除することができます。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問31|民法・連帯債務・連帯保証権

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。

連帯債務および連帯保証に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.連帯債務において、連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合には、その連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者は相殺を援用することができる。これに対し、連帯保証において、主たる債務者が債権者に対して債権を有する場合には、連帯保証人は、主たる債務者が債権者に対して有する債権による相殺をもって、相殺適状にあった全額について債権者に対抗することができる。

イ.連帯債務において、債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除した場合には、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者は債務を免れる。これに対し、連帯保証において、債権者が連帯保証人に対して債務を免除した場合には、主たる債務者はその債務の全額について免れることはない。

ウ.連帯債務において、連帯債務者の1人のために消滅時効が完成した場合には、他の連帯債務者はこれを援用して時効が完成した債務の全額について自己の債務を免れることができる。これに対し、連帯保証において、連帯保証人のために時効が完成した場合には、主たる債務者はこれを援用して債務を免れることはできない。

エ.連帯債務において、債権者が連帯債務者の1人に対してした債務の履行の請求は、他の債務者にも効力を生じる。これに対し、連帯保証において、債権者が連帯保証人に対してした債務の履行の請求は、主たる債務者に対して効力が生じることはなく、主たる債務の時効は中断しない。

オ.連帯債務において、連帯債務者の1人が債務の全額を弁済した場合には、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償することができる。これに対し、連帯保証において、連帯保証人の1人が債務の全額を弁済した場合には、その連帯保証人は、他の連帯保証人に対し、求償することはできない。

  1. ア・イ
  2. イ・エ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:-

【解説】

民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、解説は省略します。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問30|民法・法定地上権

改正民法に対応済

法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aは、自己所有の土地(更地)に抵当権を設定した後に、その土地上に建物を建築したが、抵当権の被担保債権について弁済をすることができなかった。この場合において、抵当権者が抵当権を実行して土地を競売すると、この建物のために法定地上権は成立せず建物は収去されなければならなくなることから、抵当権者は、土地とその上の建物を一括して競売しなければならない。
  2. AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Bは、その土地上に甲抵当権を設定したが、Aから建物を取得した後に、さらにその土地に乙抵当権を設定した。その後、Bは、甲抵当権の被担保債権について弁済したので甲抵当権は消滅したが、乙抵当権の被担保債権については弁済できなかったので、乙抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
  3. AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Aは、その建物上に甲抵当権を設定したが、Bから土地を取得した後に、さらにその建物に乙抵当権を設定した。その後、Aは、甲抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、甲抵当権が実行され、その建物は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
  4. Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権の被担保債権について弁済することができなかったので、土地についての抵当権が実行され、その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権が再築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のために法定地上権は成立しない。
  5. AとBが建物を共同で所有し、Aがその建物の敷地を単独で所有している場合において、Aがその土地上に抵当権を設定したが、抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、その抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

1.Aは、自己所有の土地(更地)に抵当権を設定した後に、その土地上に建物を建築したが、抵当権の被担保債権について弁済をすることができなかった。この場合において、抵当権者が抵当権を実行して土地を競売すると、この建物のために法定地上権は成立せず建物は収去されなければならなくなることから、抵当権者は、土地とその上の建物を一括して競売しなければならない。

1・・・妥当ではない

●更地に抵当権を設定した場合、法定地上権を満たさない

●一括競売をすることはできる(任意)

法定地上権の成立要件は、下表のとおりです。

法定地上権の成立要件

その中の①に「抵当権設定当時、土地上に建物が存在すること」があります。つまり、更地に抵当権を設定した場合、抵当権設定当時、建物が存在していないので、法定地上権の成立要件を満たしません。よって、「抵当権者が抵当権を実行して土地を競売すると、この建物のために法定地上権は成立せず建物は収去されなければならなくなる」という記述は正しいです。

この場合、更地の抵当権者は、土地だけでなく、「抵当権のついていない建物」も一緒に競売にかけることができます。これを「一括競売」と言います。この一括競売は、「必ずしなければならない(義務)」ではなく、任意です。よって、誤りです。

一括競売できる理由(覚えなくてもよい)

更地に抵当権を設定した後に建物が建てられた場合、一括競売制度がなければ、下記のような不都合が生じるからです。

建物については法定地上権が生じないため、土地所有者(土地の競落人)から建物収去請求される可能性があります。そうなると、「①建物を解体することになり、社会経済的損失が大きい」です。また、②建物収去請求するなどの紛争の問題が出てきて、解決が面倒となります。そのため、一括競売のルールがあります。

建物を売却される建物所有者としては、建物の代金は手に入るので、大きな不利益は被りません。

2.AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Bは、その土地上に甲抵当権を設定したが、Aから建物を取得した後に、さらにその土地に乙抵当権を設定した。その後、Bは、甲抵当権の被担保債権について弁済したので甲抵当権は消滅したが、乙抵当権の被担保債権については弁済できなかったので、乙抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

2・・・妥当ではない

●土地について「1番抵当権」と2番抵当権」が設定された後1抵当権が消滅し、その後、2番抵当権の実行により、土地と建物の所有者が異なることとなった場合2抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一であれば、法定地上権は成立する

問題文の状況 問題文の状況は下図の通りです。

判例 判例によると『土地に「先順位の甲抵当権」と「後順位の乙抵当権」が設定された後、甲抵当権が消滅し、残された乙抵当権の実行により、土地と建物の所有者が異なることとなった場合、乙抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一であれば、法定地上権は成立する』としています。

理由 「法定地上権が成立する」ということは、土地の抵当権者乙にとっては不利益です。なぜなら、土地の競落人は土地を使えないため、土地を買いたい人が減るからです。これを前提に考えます。

乙抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一なので、これによる法定地上権成立(デメリット)も予測できていたと考えます。そのため、法定地上権が成立することを認めても、乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえないから法定地上権の成立を認めています。

3.AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Aは、その建物上に甲抵当権を設定したが、Bから土地を取得した後に、さらにその建物に乙抵当権を設定した。その後、Aは、甲抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、甲抵当権が実行され、その建物は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

3・・・妥当ではない

●建物に1番抵当権が設定された当時、土地と建物の所有者は異なっていたが、2番抵当権が設定された当時土地と建物の所有者が同一であった。この状況で抵当権が実行された場合、法定地上権は成立する

問題文の状況 問題文の状況は下図の通りです。

判例 判例によると「建物に1番抵当権が設定された当時、土地と建物の所有者は異なっていたが、2番抵当権が設定された当時土地と建物の所有者が同一であった。この状況で抵当権が実行された場合、法定地上権は成立する」としています。

理由 1番抵当権設定当時、土地と建物の所有者は異なっています。そのため、1番抵当権者甲は、法定地上権は成立しないと予測しています。その後、2番抵当権設定当時に、土地と建物の所有者が同一なので、この時点を判断基準として、法定地上権を認めたとしても、1番抵当権者に不利益は生じることはなく、利益があります。なぜなら、建物競落人Cは、建物を収去しなくて済むため、競売に出しても落札されやすくなるから。つまり、建物抵当権者甲やその競落人Cに有利になる解釈をしています。

上記事例は建物だが、土地の場合どうなるか?

土地に1番抵当権が設定された当時、土地と建物の所有者は異なっていたが、2番抵当権が設定された当時土地と建物の所有者が同一であった。この状況で抵当権が実行された場合、法定地上権は成立しない

理由 1番抵当権者甲は法定地上権が成立しない(メリット・利益がある)

と予測して、抵当権を設定しています。法定地上権が成立しないということは競売後、建物を収去させることができ、土地買受人にとっては土地を使いやすいメリット・利益があります。そのため、1番抵当権者の利益を奪うことができないため、法定地上権は成立しないとしています。

4.Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権の被担保債権について弁済することができなかったので、土地についての抵当権が実行され、その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権が再築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のために法定地上権は成立しない。

4・・・妥当

●土地と建物に共同抵当権が設定 → 建物が滅失し、新しい建物を新築 → 特段の事情がなければ、新しい建物に法定地上権は成立しない

問題文の状況 問題文の状況は下図の通りです。

判例 判例によると「土地と建物に共同抵当権が設定後、建物が取り壊され、新しい建物を新築した場合、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、②新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない」としています。つまり、 土地と建物に共同抵当権が設定後、建物が取り壊され、新しい建物を新築した場合、①新築建物の所有者がAで、かつ、②新建物に、土地と同順位の共同抵当権を再度設定すれば、法定地上権は成立するが、そういった特段の事情がなければ、法定地上権は成立しません。

理由 新しい建物に抵当権を設定しなかったのは、抵当権者が、「法定地上権が成立しない更地」として担保価値を認めていたと予測できるので、法定地上権の成立を認めると、抵当権者に不測の損害を被る結果となるから。

5.AとBが建物を共同で所有し、Aがその建物の敷地を単独で所有している場合において、Aがその土地上に抵当権を設定したが、抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、その抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

5・・・妥当ではない

●建物共有・土地単独所有で、単独所有の土地に抵当権設定 → 法定地上権は成立する

問題文の状況 問題文の状況は下図の通りです。

判例 判例によると「建物の共有者の一人Aが、その建物の敷地たる土地を単独で所有する場合においては、Aは、自己のみならず他の建物共有者Bのためにも土地の利用を認めているものというべきであるから、Aが土地に抵当権を設定し、この抵当権の実行により、第三者Cが土地を競落したときは、抵当権設定当時にAが土地および建物を単独で所有していた場合と同様、右土地に法定地上権が成立する」としています。

理由 建物の共有者Bに不測の損害が生じないようにするためです。もし「法定地上権が成立しない」ならば、土地の競落人Cからの建物収去請求等により、Bは建物の取り壊しを余儀なくされます。それを防ぐために、法定地上権の成立を認めています。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問29|民法・占有

改正民法に対応済

A所有のカメラをBが処分権限なしに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なくBから同カメラを買い受けた。この場合に関する次のア~エの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものをすべて挙げた組合せはどれか。

ア.CがAのカメラを即時取得するのは、Bの占有に公信力が認められるからであり、その結果、Bがカメラの所有者であったとして扱われるので、Cの所有権はBから承継取得したものである。

イ.Cは、カメラの占有を平穏、公然、善意、無過失で始めたときにカメラの所有権を即時取得するが、その要件としての平穏、公然、善意は推定されるのに対して、無過失は推定されないので、Cは無過失の占有であることを自ら立証しなければならない。

ウ.Bは、Cにカメラを売却し、以後Cのために占有する旨の意思表示をし、引き続きカメラを所持していた場合、Cは、一応即時取得によりカメラの所有権を取得するが、現実の引渡しを受けるまでは、その所有権の取得は確定的ではなく、後に現実の引渡しを受けることによって確定的に所有権を取得する。

エ.Bは、Cにカメラを売却する前にカメラをDに寄託していたが、その後、BがCにカメラを売却するに際し、Dに対して以後Cのためにカメラを占有することを命じ、Cがこれを承諾したときは、たとえDがこれを承諾しなくても、Cは即時取得によりカメラの所有権を取得する。

  1. ア・イ
  2. ア・イ・ウ
  3. ア・ウ・エ
  4. イ・ウ・エ
  5. ウ・エ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:2

【解説】

A所有のカメラをBが処分権限なしに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なくBから同カメラを買い受けた。

ア.CがAのカメラを即時取得するのは、Bの占有に公信力が認められるからであり、その結果、Bがカメラの所有者であったとして扱われるので、Cの所有権はBから承継取得したものである。

ア・・・妥当ではない

●即時取得は「原始取得」

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、

善意無過失のときは、その動産を即時取得(自分の物に)できます(民法192条)。

即時取得の要件

本問を見ると、上記要件をすべて満たしています。

そのため、Cは「A所有のカメラ」を即時取得します。そして、即時取得は「原始取得」です。「承継取得」ではありません。

A所有のカメラをBが処分権限なしに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なくBから同カメラを買い受けた。

イ.Cは、カメラの占有を平穏、公然、善意、無過失で始めたときにカメラの所有権を即時取得するが、その要件としての平穏、公然、善意は推定されるのに対して、無過失は推定されないので、Cは無過失の占有であることを自ら立証しなければならない。

イ・・・妥当ではない

●即時取得の要件である「善意・平穏・公然・無過失」は推定される → 占有取得者(譲受人)に立証責任はない

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定します(民法186条)。つまり、占有者は「善意・平穏・公然」について反証がなければ、 「善意・平穏・公然」として扱います。つまり、占有者は積極的に「善意・平穏・公然」であることを立証する必要はありません。

そして、即時取得の場合、要件3より、『「取引行為」により占有を承継したこと』は満たしています。これは、適法に権利を取得していることを意味するので、「無過失であることも推定」されます。よって、結果として、即時取得における占有者は、 「善意・平穏・公然・無過失」はすべて推定されるので、立証しなくてもよいです。

A所有のカメラをBが処分権限なしに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なくBから同カメラを買い受けた。

ウ.Bは、Cにカメラを売却し、以後Cのために占有する旨の意思表示をし、引き続きカメラを所持していた場合、Cは、一応即時取得によりカメラの所有権を取得するが、現実の引渡しを受けるまでは、その所有権の取得は確定的ではなく、後に現実の引渡しを受けることによって確定的に所有権を取得する。

ウ・・・妥当ではない

●即時取得 → 「占有改定」の方法による取得では要件を満たさない

占有改定とは ある目的物の占有者がそれを手元に置いたまま占有を他者に移す場合をいいます。本問の内容でいえば、カメラをBの手元に置いたまま、 Cのために占有する旨の意思表示をすることです。つまり、BはCのために占有しているということです。

判例 判例では、「即時取得するためには占有改定では足りない。即時取得するためには、外観上、占有状態が変更する必要がある」としています。つまり、Cが即時取得するには、カメラをCに現実に引き渡す必要があるということです。

本問 「Cは、一応即時取得によりカメラの所有権を取得する」が誤りです。

A所有のカメラをBが処分権限なしに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なくBから同カメラを買い受けた。

エ.Bは、Cにカメラを売却する前にカメラをDに寄託していたが、その後、BがCにカメラを売却するに際し、Dに対して以後Cのためにカメラを占有することを命じ、Cがこれを承諾したときは、たとえDがこれを承諾しなくても、Cは即時取得によりカメラの所有権を取得する。

エ・・・妥当

●指図による占有移転 → 外観上占有が移転している場合、即時取得できる

寄託とは 物を預かって、保管してもらうこと(契約)を言います。例えば、「銀行にお金を預けること」「友人に荷物を預けること」です。「預ける側を、寄託者(きたくしゃ)」、「預かる側を、受寄者(じゅきしゃ)」と言います。 

指図による占有移転とは 占有代理人(直接占有する者)Dによって占有権を有する者(間接占有者)Bが、自己Bの占有を第三者Cへ移転させる場合に、占有代理人Dに対して、以後はその第三者Cのために占有すべき旨を命じることによって(間接)占有を移転させる方法を言います。この場合、第三者Cの承諾は必要ですが、占有代理人Dの承諾は不要です。

判例 本問は指図による占有移転の内容ですが、判例では、「指図による占有移転」でも即時取得の要件4の「占有を開始したこと」を満たすとしています。つまり、Cは占有を開始したことになるため、即時取得によりカメラの所有権を取得します。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問28|民法・時効

民法改正に伴い、選択肢3と4が使えなくなりましたので、その解説は省略します。

時効等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. A所有の甲土地につき、20年間占有を継続してきたBが取得時効を援用した場合、取得時効の成立を否定するためには、Aの側において、他主占有事情の立証では足りず、Bの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証しなければならない。
  2. A所有の乙土地につき、Bが5年間占有した後にCがこれを相続して、さらに10年間占有を継続した時点において、CがBの占有と併合して取得時効を援用した場合、C自身が占有開始時に悪意であったときは、Bが占有開始時に善意であり、かつ無過失であったとしても時効取得は認められない。
  3. 民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、省略
  4. 民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、省略
  5. 乙建物について先順位抵当権者Aの被担保債権につき消滅時効が完成した場合、かかる債権の消滅により後順位抵当権者Bは順位上昇の利益を享受することができるため、Bもその時効を援用することができる。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済
【答え】:改正民法による妥当な選択肢なし

【解説】

1.A所有の甲土地につき、20年間占有を継続してきたBが取得時効を援用した場合、取得時効の成立を否定するためには、Aの側において、他主占有事情の立証では足りず、Bの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証しなければならない。

1・・・妥当ではない

●「①他主占有権限に基づいて開始された旨」または「②他主占有事情の立証」(どちらか一方)を立証すれば、取得時効の成立を否定できる
●立証責任は「取得時効を否定する側」にある

20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得します(民法162条)。つまり、時効取得するためには「①所有の意思を持って」占有することが要件です。

【自主占有と他主占有】

「自主占有」の場合、所有の意思をもって占有しているので、上記①の要件を満たします。一方、「他主占有」の場合、上記①の要件を満たさないので、時効が成立しないことになります。

つまり、「他主占有」の事実が証明されれば、

取得時効の成立が否定されます。

【判例】

「①占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明される」か、又は「②占有者が占有中、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情が証明されるとき」は、「所有の意思」が否定され、取得時効の成立が否定されるとしています。

そして、上記立証責任は「取得時効を否定する側」つまり、本問のA側です。

【判例理解】

①または②のどちらか一方が証明されれば、 「所有の意思」が否定され、取得時効の成立が否定されます。

①「他主占有権原に基づいて開始された旨の立証」については、
「他主占有」により占有を取得した事実が証明された場合です。

例えば、賃貸借契約に基づいて占有を取得したことを証明した場合です。

②「他主占有事情の立証」については、
占有者が、占有中に客観的にみて、「真の所有者であれば通常はとらない態度を示したり」または「所有者であれば当然とるべき行動をとらなかった」事情が証明された場合(「他主占有事情」という)です。

例えば、占有者が、賃貸借契約をしていないにも関わらず、所有者に賃料を支払っていた場合です。この場合、占有者は、自主占有しているとはいえず、客観的にみて他主占有しているように見えます。

【本問の質問内容】

取得時効の成立を否定するためには、 Aが、「②他主占有事情の立証」+「①Bの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証」をしなければならない。 〇か×かです。

1.取得時効の成立を否定するために、①と②の両方をAが立証する必要がある場合は〇

2.取得時効の成立を否定するために、 ①と②のどちらか一方だけ、Aが立証すればよい場合は×です。

本問は2の方にあたるので、×です。

2.A所有の乙土地につき、Bが5年間占有した後にCがこれを相続して、さらに10年間占有を継続した時点において、CがBの占有と併合して取得時効を援用した場合、C自身が占有開始時に悪意であったときは、Bが占有開始時に善意であり、かつ無過失であったとしても時効取得は認められない。

2・・・妥当ではない

●占有を承継するか否かは、現在の占有者が選択することができる

●占有を承継する場合、前占有者の善意・悪意、過失の有無も承継する(もちろん占有期間も承継する)

【問題文の状況】 「前占有者Bは5年間占有(占有開始時にBは善意無過失)」し、その後、Bが死亡し、Cが相続したことにより、Cが占有を開始する(占有開始時にCは悪意)。そして「現占有者Cが10年間占有」した状況です。

前占有者B:善意無過失で5年間占有

現占有者C:悪意で10年間占有

【質問内容】 Cが、「Bの占有と併合(承継)」して取得時効を援用した場合、Bの時効取得は認められない。〇か×か。

【考え方】 占有者の承継人Cは、その選択に従い、「①自己Cの占有のみを主張」することもできるし、又は「②自己占有前の占有者Bの占有を併せて主張」することができます(民法187条1項)。そして、②の場合、前占有者Cの善意・悪意、過失の有無も承継します(2項、判例)。そのため、②で考えた場合、占有開始時の状態は「善意無過失」、占有期間は5年+10年=15年です。つまり、善意無過失で15年(10年以上)占有しているので、Cの取得時効は認められます。

5.乙建物について先順位抵当権者Aの被担保債権につき消滅時効が完成した場合、かかる債権の消滅により後順位抵当権者Bは順位上昇の利益を享受することができるため、Bもその時効を援用することができる。

5・・・妥当ではない

●後順位抵当権者は、先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用できない

【具体例】 Aが債務者Xに対して1000万円を貸し、乙建物に1番抵当権者をAとして抵当権を設定してもらった。

その後、Bが債務者Xに対して、500万円を貸し、乙建物に2番抵当権者をBとして抵当権を設定してもらった。

その後、Aの1000万円の貸金債権(被担保債権)について消滅時効が完成した。

この場合、2番抵当権者B(後順位抵当権者)は時効を援用できるか?

【判例】 判例では、「後順位抵当権者Bは、先順位抵当権Aの被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当するものではないため、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない」としています。つまり、Bは時効を援用することができないので誤りです。

【理由】 被担保債権の消滅により消滅時効を援用できるのは、直接利益を受ける者に限られます。そして、先順位抵当権者Aの1000万円の貸金債権(被担保債権)が時効によって消滅し、その結果として、後順位抵当権者Bの順位が上がり(Bが2番抵当権者から1番抵当権者に上がり)、配当額が増加するという利益はあるが、この利益は、直接的な利益ではなく、抵当権の順位上昇によってもたらされる反射的(間接的)な利益にすぎないから、後順位抵当権者は消滅時効を援用できないとしています。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問27|民法・無効と取消し

民法改正に伴い、選択肢ウは使えなくなりましたので、解説は省略します。

無効または取消しに関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはいくつあるか。

ア.BがAに騙されてAから金銭を借り入れ、CがBの保証人となった場合、CはAの詐欺を理由としてAB間の金銭消費貸借契約を取り消すことができる。

イ.BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、その後になってBがAの詐欺に気がついたとしても、当該絵画を第三者に譲渡してしまった以上は、もはやBはAとの売買契約を取り消すことはできない。

ウ.民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、省略。

エ.BがAに強迫されて絵画を購入した場合、Bが追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、追認があったものと推定される。

オ.未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れたが、後に当該金銭消費貸借契約が取り消された場合、BはAに対し、受領した金銭につき現存利益のみを返還すれば足りる。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

ア.BがAに騙されてAから金銭を借り入れ、CがBの保証人となった場合、CはAの詐欺を理由としてAB間の金銭消費貸借契約を取り消すことができる。

ア・・・妥当ではない

●錯誤取消し → 勘違いをして意思表示をした者・その代理人が主張できる

●詐欺取消し → 詐欺を受けて意思表示した者・その代理人が主張できる

●強迫取消し → 強迫受けて意思表示した者・その代理人が主張できる

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、「①瑕疵ある意思表示をした者」又は「②その代理人若しくは承継人」に限り、取り消すことができます(民法120条)。つまり、本問の場合、 「瑕疵ある意思表示をした者」とは、「だまされて金銭を借り入れたB」を指すので、「B又はBの代理人等」は詐欺を理由にAB間の契約を取消すことができます。一方、保証人Cは上記①②に該当しないので、詐欺を理由にAB間の金銭消費貸借契約の取消しはできません。

イ.BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、その後になってBがAの詐欺に気がついたとしても、当該絵画を第三者に譲渡してしまった以上は、もはやBはAとの売買契約を取り消すことはできない。

イ・・・妥当ではない

●取消権者が、取消しができなくなる理由は、「①追認した場合」と「②法定追認の場合
取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後から追認することができる

→ 取消権を有することを知るの追認は、追認の効力は生じない

取消権者が、取消しができなくなる理由は、「①追認した場合」と「②法定追認の場合」の2つがあります。

②法定追認とは 法律で定める事由に該当した場合に、自動的に追認したものとみなされることを言います。

そして、追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について下記一定の事実があったときは、原則、追認をしたものとみなされます(民法125条本文)。

②法定追認となる場合の一例

1.全部又は一部の履行

2.履行の請求

3.担保の供与

4.取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 → 本問の「BがCに転売した事実」

追認することができる時とは? 取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後から追認することができます(124条1項)。

「取消しの原因となっていた状況が消滅し」とは、「詐欺行為が終わった後」を指し、

「取消権を有することを知った後」とは、詐欺があったことを知った後を指します。

つまり、詐欺にあっていることを知り、詐欺行為が終わった後から追認することができます。

■本問をみると「BはAの詐欺に気づく前に転売(法定追認)している」ため、「取消権を有することを知る前」です。そのため、追認の効果は生じません。よって、BはAとの売買契約を取り消すことができます。

エ.BがAに強迫されて絵画を購入した場合、Bが追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、追認があったものと推定される。

エ・・・妥当ではない

●①「追認をすることができる時から5年間」行使しないとき、または② 「行為の時から20年を経過」したとき 

 取消権は消滅する

取消権は、「追認をすることができる時から5年間」行使しないときは、時効によって消滅し、また「行為の時から20年を経過」したときも、同様に消滅します。つまり、強迫により取消しについて、追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、Bの取消権は消滅してしまいます。「追認があったものと推定される」わけではありません。

オ.未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れたが、後に当該金銭消費貸借契約が取り消された場合、BはAに対し、受領した金銭につき現存利益のみを返還すれば足りる。

オ・・・妥当

●制限行為能力の行為 : 取消しされると初めから無効となる → 現存利益のみ返還すればよい

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなします(民法121条)。そして、その行為の時に「意思無能力者」や「制限行為能力者」であった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負います(121条の2の3項)。

本問 「未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れた」行為は取消しできる行為です。

そして、取消しをした場合、上記行為は未成年者(制限行為能力者)が行った行為なので、受領した金銭につき現存利益のみを返還すればよいです。

関連ポイント 「制限行為能力者や意思無能力者以外の者」が行った契約について、契約が取消しされ、契約が無効となった場合、原則、契約当事者は原状回復義務を負います。

※ 「制限行為能力者や意思無能力者」の場合は、本問のように現存利益だけ返還すればよいという風に一定の保護をしています。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問35|相続

改正民法に対応済

Aは2010年10月1日に死亡したが、Aには、Dに対する遺贈以外の遺言はなく、その死亡時に妻B、長男C、長女Dおよび次男Eがいた。この場合についての次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

ア Bが2010年10月1日にAの死亡を知った場合において、Bは、その時から3ヶ月以内に単独で限定承認をすることができ、相続人全員で共同してする必要はない。

イ Cの相続権が侵害された場合に、CがAの死亡の時から5年以内に相続回復請求権を行使しないときは、同請求権は、時効によって消滅する。

ウ DがAから遺贈を受けた場合には、Aが死亡の時において有した財産の価額に遺贈の価額を加えたものを相続財産とみなし、Dの法定相続分の中からその遺贈の価額を控除した残額をもってDの相続分とする。

エ Eが、生前Aに対して虐待をし、またはAに重大な侮辱を加えた場合には、Eは、欠格者として相続人となることができない。

オ Aの死亡の時から5年以内にB、C、D、Eの協議により遺産分割がなされない場合には、B、C、D、Eは、全員で家庭裁判所に対し遺産分割を申し立てなければならない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

Aは2010年10月1日に死亡したが、Aには、Dに対する遺贈以外の遺言はなく、その死亡時に妻B、長男C、長女Dおよび次男Eがいた。

ア Bが2010年10月1日にAの死亡を知った場合において、Bは、その時から3ヶ月以内に単独で限定承認をすることができ、相続人全員で共同してする必要はない。

ア・・・誤り

●限定承認 → 共同相続人全員でしなければならない

相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができます(民法923条)。本問の場合、B・C・D・E全員が限定承認をしないと、限定承認はできません。 Bが単独で限定承認をすることはできないので誤りです。

限定承認とは、プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を弁済する方法です。例えば、相続財産が、土地建物800万円(プラスの財産)のみ、借金2,000万円(マイナスの財産)だったとします。この場合、債権者に800万円を弁済して、残り1200万円は相続しなくて済みます。

Aは2010年10月1日に死亡したが、Aには、Dに対する遺贈以外の遺言はなく、その死亡時に妻B、長男C、長女Dおよび次男Eがいた。

イ Cの相続権が侵害された場合に、CがAの死亡の時から5年以内に相続回復請求権を行使しないときは、同請求権は、時効によって消滅する。

イ・・・誤り

●相続回復の請求権 → 相続権侵害を知ってから5年経過 or 相続開始から20年経過で消滅する

相続回復の請求権は、①「相続人又はその法定代理人」が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。また、②相続開始の時から20年を経過したときも、消滅します(民法884条)。「死亡の時から」ではなく「相続権の侵害の事実を知った時から」です。

相続回復請求権とは

相続人は、遺産を相続する権利を持っていますが、相続人でない者(親子関係がない者)が相続人(実子)と称して相続財産をもっていかれた場合(侵害された場合)、真の相続人は、その財産を取り戻す権利を持ち、この権利を相続回復請求権といいます。

本肢は「Aの死亡の時から」が誤りです。

正しくは「相続権を侵害された事実を知った時から」です。

Aは2010年10月1日に死亡したが、Aには、Dに対する遺贈以外の遺言はなく、その死亡時に妻B、長男C、長女Dおよび次男Eがいた。

ウ DがAから遺贈を受けた場合には、Aが死亡の時において有した財産の価額に遺贈の価額を加えたものを相続財産とみなし、Dの法定相続分の中からその遺贈の価額を控除した残額をもってDの相続分とする。

ウ・・・誤り

●遺贈 → 遺言で贈与すること → 相続財産の中に、遺贈分の財産はすでに含まれている

相続財産の中に、遺贈分の財産はすでに含まれています

よって、「Aが死亡の時において有した財産の価額に遺贈の価額を加えたものを相続財産とみなし」が誤りです。

「遺贈の価格」は、そもそも「Aが死亡の時において有した財産の価額」の中に含まれています。

本問は「特別受益者の相続分(民法903条)」についての内容です。

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその「贈与」の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分の中からその「遺贈又は贈与」の価額を控除した残額をもってその者の相続分とします(903条)。

分かりやすくいうと 相続人の中に、被相続人から、生前に、遺贈、贈与を受けた人(特別受益者)がいる場合、「生前贈与」については、被相続人が元々もっていた財産として遺産のなかに一度戻して、相続財産の総額と考え、遺贈や贈与を受けた人(特別受益者)は、その相続分から遺贈や贈与額を差し引いた額を相続分とします。

生前贈与の具体例 Xが死亡し、子Yと子Zが相続人であった。相続人YがXから1000万円の生前贈与を受けていて、Xが死亡し、死亡時の財産が3000万円であった場合、相続財産の総額は4000万円として考えます。そして、YとZの相続分が2000万円ずつなので、Zは2000万円を相続し、Yは生前贈与額1000万円を差し引いた1000万円を相続します。

遺贈の具体例 遺贈とは、遺言により贈与することです。Xが死亡し、子Yと子Zが相続人であった。そして、遺言に「現金1000円はYに遺贈する」と書かれていた。その後Xが死亡し、死亡時の財産が3000万円であった場合、相続財産の総額3000円ですなぜなら、遺贈の1000万円はまだYに贈与されていないので、死亡時の財産に含まれているからです。

そして、YとZの相続分が1500万円ずつなので、Zは1500万円を相続し、Yは1500万円から「遺贈の現金1000万円」を差し引いた500万円を別途相続します(結果的に遺贈の1000万円+500万円=1500万円なので、YとZは公平に分けています。)

本問  本問は、「DがAから遺贈を受けた場合」です。そのため、 「Aが死亡の時において有した財産の価額に遺贈の価額を加えたものを相続財産とみなし」が誤りです。Aが死亡した時の有した財産の中に、遺贈分も含まれているからです。

Aは2010年10月1日に死亡したが、Aには、Dに対する遺贈以外の遺言はなく、その死亡時に妻B、長男C、長女Dおよび次男Eがいた。

エ Eが、生前Aに対して虐待をし、またはAに重大な侮辱を加えた場合には、Eは、欠格者として相続人となることができない。

エ・・・誤り

●虐待、重大な侮辱、著しい非行 → 廃除の対象(欠格ではない)

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)が、被相続人に対して①虐待をし、若しくは②これに重大な侮辱を加えたとき、又は③推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法892条)。

よって、 Eが、生前Aに対して虐待をし、またはAに重大な侮辱を加えた場合には、Aは、Eの廃除を家庭裁判所に請求できます。虐待や重大な侮辱が理由で「欠格」にはなりません。

欠格とは 相続に関し、不正な利益を得ようと被相続人や他の相続人に対して悪質な行為(殺人、詐欺、強迫、遺言書の偽造・隠匿)をしたり、しようとした者から、相続人の資格を奪う制度です(891条)。

Aは2010年10月1日に死亡したが、Aには、Dに対する遺贈以外の遺言はなく、その死亡時に妻B、長男C、長女Dおよび次男Eがいた。

オ Aの死亡の時から5年以内にB、C、D、Eの協議により遺産分割がなされない場合には、B、C、D、Eは、全員で家庭裁判所に対し遺産分割を申し立てなければならない。

オ・・・誤り

●民法上、遺産分割の期限はない / 単独で家庭裁判所に分割請求ができる

共同相続人は、原則としていつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる(民法907条1項)。そして、遺産の分割について、共同相続人間で協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができます(民法907条2項本文)。本問は、「共同相続人全員で家庭裁判所に対し遺産分割を申し立てなければならない」となっているので誤りです。単独で行えます。

参考知識 民法上、遺産分割の期限は定められていませんが、相続税法で、原則、10ヶ月以内に納税するように定められているため、通常、それまでに遺産分割協議を終わらせることが多いです。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問34|不法行為

改正民法に対応済

不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車と衝突して、Bの自動車の助手席に乗っていたBの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。CがAに対して損害賠償請求をする場合には、原則としてBの過失も考慮される。

イ Aの運転する自動車と、Bの運転する自動車が、それぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ損害を生じさせた。CがBに対して損害賠償債務の一部を免除しても、原則としてAの損害賠償債務に影響はない。

ウ A社の従業員Bが、A社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中のCをはねて負傷させ損害を生じさせた。A社がCに対して損害の全額を賠償した場合、A社は、Bに対し、事情のいかんにかかわらずCに賠償した全額を求償することができる。

エ Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、AがB鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。

オ Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車に追突してBを負傷させ損害を生じさせた。BのAに対する損害賠償請求権は、Bの負傷の程度にかかわりなく、また、症状について現実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、5年で消減時効にかかる。(改)

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:1

【解説】

ア Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車と衝突して、Bの自動車の助手席に乗っていたBの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。CがAに対して損害賠償請求をする場合には、原則としてBの過失も考慮される。

ア・・・妥当

被害者の過失→被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失を含む

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができます(民法722条2項)。

判例 判例では、「被害者の過失」について、被害者だけでなく、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失を含むとしています。

本問 「CがAに対して損害賠償請求をする場合」なので、被害者をCととらえて、被害者Cだけでなく、「Cの夫B」の過失も考慮して損害賠償額を定めます。

イ Aの運転する自動車と、Bの運転する自動車が、それぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ損害を生じさせた。CがBに対して損害賠償債務の一部を免除しても、原則としてAの損害賠償債務に影響はない。

イ・・・妥当

●共同不法行為 → 連帯債務 → 免除は相対効

「弁済」「相殺」「混同」「更改」を除いて

連帯債務者の一人について生じた事由は、

他の連帯債務者に対してその効力を生じない(民法441条)。

そのため、CがBの債務の一部を免除した場合、Bの債務は一部免除されるが、Cの債務は免除されません。

言い換えると、原則としてAの損害賠償債務に影響はないので正しいです。

関連ポイント 免除を受けたとしても、これは、債権者Cとの関係であり、他の連帯債務者A社との関係では求償関係は残ります(民法445条)。つまり、A社が賠償すれば、被用者Bに求償することができます。

■連帯債務の絶対効の語呂合わせ

弁当の惣菜、今度は後悔」 (弁:弁済/惣菜:相殺/今度:混同/後悔:更改)

ウ A社の従業員Bが、A社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中のCをはねて負傷させ損害を生じさせた。A社がCに対して損害の全額を賠償した場合、A社は、Bに対し、事情のいかんにかかわらずCに賠償した全額を求償することができる。

ウ・・・妥当でない

●使用者が賠償した場合、損害の公平な分担という見地から信義則上「相当と認められる限度」で従業員に求償できる(加害者の故意または過失は関係ない

本問は、使用者A社が「使用者責任」を負うことを前提として、全額を被害者Cに賠償した場合の内容となっています。

使用者A社が被害者Cに損害賠償金を支払った場合(=Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合)、使用者Aは被用者B(加害者)に対して求償することができますが、使用者が被用者に無制限に求償することはできず、判例では、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、使用者Aは被用者Bに対して求償することができるとしています。「事情のいかんにかかわらずCに賠償した全額を求償することができる」が誤りです。

被用者Bに故意または重大な過失があったときに限らず、賠償した使用者Aは、Bに求償できます。

※ 「相当と認められる限度」のイメージとしては、使用者Aの管理がしっかりしていないことで不法行為(例えば、過失による事故)が生じた場合は、従業員Bに対して求償できる金額は小さくなり、逆に従業員個人Bの責任が大きい場合は、従業員Bに対して求償できる額は大きくなるといった感じです。

【関連ポイント】

もし、被用者Bが賠償した場合、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、被用者Bは、使用者Aに対して求償することができる(賠償した者が使用者Aであっても被用者Bであっても、考え方は同じということ)

エ Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、AがB鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。
エ・・・妥当ではない
●線路 → 工作物に当たる → 設置・保存に瑕疵があれば、工作物責任が問われる土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、①初めに工作物の占有者が責任を問われ、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていないときは、占有者が損害賠償し、②占有者が必要な注意をしていたときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません(民法717条)。

争点 線路は工作物に当たるか?

判例 判例では、「鉄道の軌道施設(線路や踏切)も工作物にあたり、線路や踏切の設置に瑕疵がある場合、工作物責任を問われる」としています。

本問 本問の場合、線路は土地工作物にはあたるため、被害者Aは、B鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできます。

オ Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車に追突してBを負傷させ損害を生じさせた。BのAに対する損害賠償請求権は、Bの負傷の程度にかかわりなく、また、症状について現実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、5年で消減時効にかかる。(改)

オ・・・妥当でない

●事故当初予測できなかった後遺症が現れ、治療が必要となった場合 → 後日その治療を受けるようになるまでは、当該治療費(損害)については、時効は進行しない

不法行為による損害賠償の請求権は被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないとき、時効によって消滅します(民法724条1号)。

判例 加害者も分かっている状況で、被害者が不法行為に基づく損害の発生を知ったのであれば、原則、その時から時効は進行を開始する。しかし、判例では、「受傷時から相当期間経過後に後遺症が現われ、そのため受傷時においては医学的にも通常予想しえなかったような治療方法が必要とされ、右治療のため費用を支出することを余儀なくされるに至ったときは、後日その治療を受けるようになるまでは、右治療に要した費用すなわち損害については、時効は進行しないものと解する」としています。

具体例 事故が起きてから、1年後に、当初予測できなかった後遺症が現れ、治療が必要となった場合、その治療費(損害)については、治療を受けるようになるまでは時効は開始せず、治療を受けることになってから時効が進行するということです。つまり、この具体例でいえば、事故から約4年間、治療費請求権の時効期間があるということです。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(物損)

  1. 被害者又はその法定代理人が「損害」及び「加害者」を知った時から3年間行使しないとき
  2. 不法行為の時から20年間行使しないとき
1については、「損害」と「加害者」の双方を知った時から時効が進行し始める。どちらか一方しか知らないときは、1について時効は開始しません。

不法行為に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効(人損)

  1. 被害者又はその法定代理人が「損害」及び「加害者」を知った時から5年間行使しないとき
  2. 不法行為の時から20年間行使しないとき
1について、人の生命または身体を害する不法行為の場合、保護する必要性が高いため、5年間に延長される


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略