時効の援用に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。
ア.時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。
イ.時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。
ウ.被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
エ.保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。
オ.主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。
- ア・イ
- ア・エ
- イ・ウ
- ウ・オ
- エ・オ
【答え】:5
【解説】
ア・・・正しい
時効の援用とは、時効の完成によって利益を受ける者が、時効の完成を主張することです。
そして、判例(最判昭61.3.17)によると、時効の援用は、時効の効果を確定的に発生させる意思表示であるとしています。
よって、本肢は正しいです。
【詳細解説】
例えば、「Aが平穏・公然・善意無過失で他人地(甲土地)の占有を開始し、10年経過によって甲土地を時効取得する場合」を考えます。この場合、「時効に必要な期間(10年)」が経過したことを、「時効が完成した」と言います。
時効が完成したからAは当然に甲土地を取得するかというと、そうではなく、「時効を援用」することによって、Aは甲土地の所有権を得ます。
「時効の援用」とは、時効の利益を受ける者Aが、「時効の利益を受けます!」と主張することです。
単に、時効期間が経過しただけでは、時効の利益(効果)は得ることができず、時効の利益を得るためには「時効の完成+時効の援用」が必要ということです。
イ・・・正しい
そもそも、時効の援用は、裁判上で行使するだけでなく、裁判外で行っても、口頭で行っても有効とされています。
そして、時効の援用を「裁判上」で行使する場合は、「事実審の口頭弁論終結時まで」にする必要があります(大判大12.3.26)。
よって、本肢は正しいです。
被相続人(死亡した者)が一定期間占有することにより既に取得時効が完成していた場合、共同相続人の一人は、自分の相続分を限度として、取得時効を援用できます(最判平13.7.10)。よって、本肢は正しいです。【具体例】
その後、Bは死亡し、Bの相続人として「CとD」の2人いた(法定相続分を1/2ずつとする)。
この場合、Cは、時効取得を原因として、甲土地の持分1/2についてのみ取得時効を援用できます。
エ・・・誤り
消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者は、援用できます(民法145条)。
したがって、物上保証人や抵当不動産の第三取得者も消滅時効を援用できるので誤りです。
オ・・・誤り
主たる債務者である破産者が免責許可決定(債務の弁済をしなくてもよい旨の決定)を受けた場合、その保証人は、破産者の主たる債務について、消滅時効を援用することができません。
よって、本肢は誤りです。
【考え方】
消滅時効の進行の起算点は履行請求できる時だから、破産免責決定により、時効進行の起算点がなくなります(時効進行の起算点の上に、時効進行があるため、起算点がなくなると時効進行もなくなる)。
そのため、主債務の時効進行を考える余地はないから、保証人は主債務の消滅時効を援用できません。
ちなみに、保証人は免責されないです。
そのため、保証人は引き続き債務を負います。
付従性を考えると、免責されそうに考えてしまいますが、例外としてとらえるのがよいでしょう!
| 問1 | 著作権の関係上省略 | 問31 | 民法:物権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 憲法・議員 | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 法の下の平等 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 選挙権・選挙制度 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 教科書検定制度 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法・その他 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 一般知識・政治 |
| 問20 | 問題非掲載のため省略 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 一般知識・経済 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・政治 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・経済 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・情報通信 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
