2019年過去問

令和元年・2019|問27|民法

時効の援用に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。

イ.時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。

ウ.被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。

エ.保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。

オ.主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:5
【解説】

ア.時効による債権の消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものである。

ア・・・正しい

時効の援用とは、時効の完成によって利益を受ける者が、時効の完成を主張することです。

そして、判例(最判昭61.3.17)によると、時効の援用は、時効の効果を確定的に発生させる意思表示であるとしています。

よって、本肢は正しいです。

【詳細解説】

例えば、「Aが平穏・公然・善意無過失で他人地(甲土地)の占有を開始し、10年経過によって甲土地を時効取得する場合」を考えます。この場合、「時効に必要な期間(10年)」が経過したことを、「時効が完成した」と言います。

時効が完成したからAは当然に甲土地を取得するかというと、そうではなく、「時効を援用」することによって、Aは甲土地の所有権を得ます

「時効の援用」とは、時効の利益を受ける者Aが、「時効の利益を受けます!」と主張することです。

単に、時効期間が経過しただけでは、時効の利益(効果)は得ることができず、時効の利益を得るためには「時効の完成+時効の援用」が必要ということです。

イ.時効の援用を裁判上行使する場合には、事実審の口頭弁論終結時までにする必要がある。

イ・・・正しい

そもそも、時効の援用は、裁判上で行使するだけでなく、裁判外で行っても、口頭で行っても有効とされています。

そして、時効の援用を「裁判上」で行使する場合は、「事実審の口頭弁論終結時まで」にする必要があります(大判大12.3.26)。

よって、本肢は正しいです。

ウ.被相続人の占有により取得時効が完成していた場合に、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
ウ・・・正しい
被相続人(死亡した者)が一定期間占有することにより既に取得時効が完成していた場合、共同相続人の一人は、自分の相続分を限度として、取得時効を援用できます(最判平13.7.10)。よって、本肢は正しいです。【具体例】

A所有の甲土地を、Bが占有することで時効取得が完成していた。
その後、Bは死亡し、Bの相続人として「CとD」の2人いた(法定相続分を1/2ずつとする)。
この場合、Cは、時効取得を原因として、甲土地の持分1/2についてのみ取得時効を援用できます。
エ.保証人や連帯保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することはできるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することはできない。

エ・・・誤り

消滅時効にあっては、保証人物上保証人第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者は、援用できます(民法145条)。

したがって、物上保証人や抵当不動産の第三取得者も消滅時効を援用できるので誤りです。

オ.主たる債務者である破産者が免責許可決定を受けた場合であっても、その保証人は、自己の保証債務を免れるためには、免責許可決定を受けた破産者の主たる債務について、消滅時効を援用しなければならない。

オ・・・誤り

主たる債務者である破産者が免責許可決定(債務の弁済をしなくてもよい旨の決定)を受けた場合、その保証人は、破産者の主たる債務について、消滅時効を援用することができません。

よって、本肢は誤りです。

【考え方】

主債務者に破産免責決定(債務の免責)が確定した場合は、免責された主債務に対して履行請求等ができません。
消滅時効の進行の起算点は履行請求できる時だから、破産免責決定により、時効進行の起算点がなくなります(時効進行の起算点の上に、時効進行があるため、起算点がなくなると時効進行もなくなる)。
そのため、主債務の時効進行を考える余地はないから、保証人は主債務の消滅時効を援用できません。

ちなみに、保証人は免責されないです。

そのため、保証人は引き続き債務を負います。

付従性を考えると、免責されそうに考えてしまいますが、例外としてとらえるのがよいでしょう!


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問26|行政法

国公立学校をめぐる行政法上の問題に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。

イ.公立中学校教員を同一市内の他の中学校に転任させる処分は、仮にそれが被処分者の法律上の地位に何ら不利益な変更を及ぼすものではないとしても、その名誉につき重大な損害が生じるおそれがある場合は、そのことを理由に当該処分の取消しを求める法律上の利益が認められる。

ウ.公立学校の儀式的行事における教育公務員としての職務の遂行の在り方に関し校長が教職員に対して発した職務命令は、教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。

エ.国公立大学が専攻科修了の認定をしないことは、一般市民としての学生が国公立大学の利用を拒否することにほかならず、一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであるから、専攻科修了の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象となる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:5
【解説】

ア.公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。

ア・・・誤り

【事案】

エホバの証人という宗教を信仰していたXは、その宗教の絶対平和主義の教義に従い、格技である剣道の実技に参加することを拒否し、剣道の実技に参加しなかった。その間Xは、正座をしてレポートを作成するため記録しながら見学をしていたが、レポートの受領は拒否された。学校長Yは代替措置をとらないとし、特別救済措置として剣道実技の補講を行うこととして参加を勧めたが、Xは参加しなかった。そのため、YはXの体育の単位を認定せず、Xに対して原級留置処分(留年)を行った。これが2年続き、退学処分をとった。

【判例】

判例(最判平8.3.8)によると
「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、

裁判所がその処分の適否を審査するに当たって、①校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく

校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである」としています(最判平8.3.8エホバの証人剣道受講拒否事件)。

よって、本肢は誤りです。

【判例解説】

裁判所は、①のように判断するのではなく、②で判断すべき、ということです。
①は、「裁判所が校長と同じ立場に立って、原級留置処分をすべきかどうか判断し、その判断が重いかどうかを判断する」ということで、このように判断するのではない、としています。

②は、校長の裁量権の行使として、原級留置処分をしたことが、そもそも「1.事実の基礎を欠いたり」「2.著しく妥当を欠いたり」、「3.裁量権の範囲を超えていたり」「4.裁量権を濫用していたり」していると認められる場合に限り、違法であると判断すべき、としています。

つまり、1~4に該当する場合に限って、校長が行った原級留置処分が違法とすべきであるということです。

イ.公立中学校教員を同一市内の他の中学校に転任させる処分は、仮にそれが被処分者の法律上の地位に何ら不利益な変更を及ぼすものではないとしても、その名誉につき重大な損害が生じるおそれがある場合は、そのことを理由に当該処分の取消しを求める法律上の利益が認められる。

イ・・・誤り

判例によると
「本件転任処分は、公立中教諭として勤務していた被上告人らを同一市内の他の中学校数諭に補する旨配置換えを命じたものにすぎず、被上告人らの身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより、客観的また実際的見地からみても、被上告人らの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものでないことは、原判決の判示するとおりであると認められる。したがって、他に特段の事情の認められない本件においては、被上告人らについて本件転任処分の取消しを求める法律上の利益を肯認することはできないものといわなければならない」としています(最判昭61.10.23)。

よって、本肢は、法律上の利益が認められないので誤りです。

【判例解説】

公立中学校教員Aを同一市内の他の中学校に転任させる処分は、単なる配置換えを命じたものにすぎない。また、Aの身分、給料等に変更を生じさせるものでない。

さらに客観的また実際的にみても、Aの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものでない。

よって、原則、Aについて転任処分の取消しを求める法律上の利益はない。

ウ.公立学校の儀式的行事における教育公務員としての職務の遂行の在り方に関し校長が教職員に対して発した職務命令は、教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。

ウ・・・正しい

判例によると、公立学校の儀式的行事(卒業式)における教育公務員としての職務の遂行の在り方に関し校長が教職員に対して発した職務命令(国歌斉唱時に起立する旨の命令)について、
「本件職務命令も,教科とともに教育課程を構成する特別活動である都立学校の儀式的行事における教育公務員としての職務の遂行の在り方に関する校長の上司としての職務上の指示を内容とするものであって,教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではないから,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないと解される」としています(最判平24.2.9

よって、本肢は正しいです。

【判例解説】

校長が、教職員に対して、国歌斉唱時に起立する旨の命令(職務命令)を発した。この「国歌斉唱時に起立する旨の命令」も職務上の指示を内容とするものであって、教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではない。

だから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない(=処分性がない)。

>>処分性とは?

エ.国公立大学が専攻科修了の認定をしないことは、一般市民としての学生が国公立大学の利用を拒否することにほかならず、一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであるから、専攻科修了の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象となる。

エ・・・正しい

判例によると
「国公立の大学において右のように大学が専攻科修了の認定をしないことは、実質的にみて、一般市民としての学生の国公立大学の利用を拒否することにほかならないものというべく、その意味において、学生が一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであると解するのが、相当である。されば、本件専攻科修了の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象になるものといえる」としています(最判昭52.3.15:富山大学事件)。

つまり、本肢は正しいです。

【整理すると】

■大学の「単位の認定」については、 教育内容や評価方法の専門性が高く、大学の教育的判断が尊重されるべき
司法審査の対象外

■大学の「専攻科の修了認定・不認定」という「大学卒業に準じた公的効果のある判断」については、 形式的には私法上の契約に基づく行為であるが、学歴・資格など社会的効果が大きいため
司法審査の対象となる

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問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問25|行政法

上水道に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.自然的条件において、取水源が貧困で現在の取水量を増加させることが困難である状況等があるとき、水道事業者としての市町村は、需要量が給水量を上回り水不足が生ずることのないように、もっぱら水の供給を保つという観点から水道水の需要の著しい増加を抑制するための施策をとることも、やむを得ない措置として許される。

イ.行政指導として教育施設の充実に充てるために事業主に対して寄付金の納付を求めること自体は、強制にわたるなど事業主の任意性を損なうことがない限り、違法ということはできないが、水道の給水契約の締結等の拒否を背景として、その遵守を余儀なくさせることは、違法である。

ウ.水道事業者である地方公共団体が、建築指導要綱に従わないことを理由に建築中のマンションの給水契約の拒否を行うことも、当該建築指導要綱を遵守させるために行政指導を継続する理由があるといった事情がある場合には、給水契約の拒否を行うについて水道法が定める「正当な理由」があるものとして適法なものとされる。

エ.建築基準法に違反し、建築確認を受けずになされた増築部分につき、水道事業者である地方公共団体の職員が給水装置新設工事の申込書を返戻した場合、それが、当該申込みの受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、同法違反の状態を是正し、建築確認を受けた上で申込みをするよう一応の勧告をしたものにすぎないものであったとしても、かかる措置は、違法な拒否に当たる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:1
【解説】

ア.自然的条件において、取水源が貧困で現在の取水量を増加させることが困難である状況等があるとき、水道事業者としての市町村は、需要量が給水量を上回り水不足が生ずることのないように、もっぱら水の供給を保つという観点から水道水の需要の著しい増加を抑制するための施策をとることも、やむを得ない措置として許される。

ア・・・正しい

【事案】

水道事業を経営する町がマンション分譲業者からの420戸分の給水契約の申込みに対し契約の締結を拒んだ。その理由は下記のような事情があったからである。

  1. 当該町が、全国有数の人口過密都市であり今後も人口の集積が見込まれ、認可を受けた水源のみでは現在必要とされる給水量を賄うことができず、認可外の水源から取水して給水量を補っているが当該取水は不安定である
  2. 多額の財政的負担をして種々の施策を執ってきているが容易に上記の状況が改善されることは見込めない
  3. このまま漫然と新規の給水申込みに応じていると近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずるこが予測される

【判例】

判例によると
「水の供給量が既にひっ迫しているにもかかわらず、自然的条件においては取水源が貧困で現在の取水量を増加させることが困難である一方で、

社会的条件としては著しい給水人口の増加が見込まれるため、近い将来において需要量が給水量を上回り水不足が生ずることが確実に予見されるという地域にあっては、水道事業者である市町村としては、そのような事態を招かないよう適正かつ合理的な施策を講じなければならず、その方策としては、困難な自然的条件を克服して給水量をできる限り増やすことが第一に執られるべきであるが、それによってもなお深刻な水不足が避けられない場合には、専ら水の需給の均衡を保つという観点から水道水の需要の著しい増加を抑制するための施策を執ることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。」としています(最判平11.1.21)。

よって、本肢は正しいです。

ちなみに、上記の事案において、給水契約の締結を拒否することは、
「急激な水道水の需要の増加を抑制するためのやむを得ない措置」であって、右の措置には水道法15条1項にいう「正当の理由」があるものというべきである。

>>「最判平11.1.21:水道給水拒否事件」の詳細解説はこちら

イ.行政指導として教育施設の充実に充てるために事業主に対して寄付金の納付を求めること自体は、強制にわたるなど事業主の任意性を損なうことがない限り、違法ということはできないが、水道の給水契約の締結等の拒否を背景として、その遵守を余儀なくさせることは、違法である。

イ・・・正しい

【事案】

武蔵野市は、市民の生活環境が宅地開発やマンション建設によって破壊されて行くのを防止することを目的として、武蔵野市宅地開発等に関する指導要綱を制定した。その指導要綱の中に、教育施設負担金の寄付を求める規定があり、これに従わない事業主には水道の給水を拒否するなどの制裁措置を背景として義務を課することを内容とするものであった。

【判例】

「寄付金の納付」について、強制することは違法であるが、任意性を損うことがない場合は合法

よって、正しい記述です。

判例の内容は下記の通りです。
「行政指導として教育施設の充実に充てるために事業主に対して
寄付金の納付を求めること自体は、強制にわたるなど事業主の任意性を損うことが
ない限り、違法ということはできない。・・・(中略)・・・事業主が指導要綱に基づく行政指導に従わなかった場合に採ることがあるとされる給水契約の締結の拒否という制裁措置は、水道法上許されないものであり」違法としています(最判平5.2.18)。

よって、本肢は、正しいです。

>>「最判平5.2.18:教育施設負担金事件」の解説はこちら

ウ.水道事業者である地方公共団体が、建築指導要綱に従わないことを理由に建築中のマンションの給水契約の拒否を行うことも、当該建築指導要綱を遵守させるために行政指導を継続する理由があるといった事情がある場合には、給水契約の拒否を行うについて水道法が定める「正当な理由」があるものとして適法なものとされる。

ウ・・・誤り

【事案】

武蔵野市では、昭和40年代からマンション建設が急増し、日照権やプライバシー権をめぐって住民と事業者間で紛争が生じるなどの問題が深刻化していた。そこで、同市では、宅地開発指導要綱を施行した。その指導要綱の中に、「指導要綱に従わない場合、市の上下水道などの利用について必要な協力を行わない旨(給水拒否もあり得る旨)」を定めた。

ところが、建設業者Aは、指導要綱に基づく行政指導に従わないで、マンション建設をし、水道の供給を申し入れた。これに対し、武蔵野市長Xは、水道供給を拒否した。

【判例】

上記事案では、市長Xは、指導要綱を順守させるための圧力手段として、水道事業者が有している給水の権限を用い、指導要綱に従わないA建設らとの給水契約の締結を拒んだものである。

だから、給水契約の締結を拒む正当の理由がなかった。

よって、違法。

したがって、本肢は誤りです。

判例の内容は下記の通りです。
「被告人らは、右の指導要綱を順守させるための圧力手段として、水道事業者が有している給水の権限を用い、指導要綱に従わないA建設らとの給水契約の締結を拒んだものであり、その給水契約を締結して給水することが公序良俗違反を助長することとなるような事情もなかったというのである。

そうすると、原判決が、このような場合には、水道事業者としては、たとえ指導要綱に従わない事業主らからの給水契約の申込であっても、その締結を拒むことは許されないというべきであるから、被告人らには本件給水契約の締結を拒む正当の理由がなかったと判断した点も、是認することができる。」としています(最判平元.11.8

>>「最判平元.11.8:宅地開発指導要綱と給水拒否」の解説はこちら

エ.建築基準法に違反し、建築確認を受けずになされた増築部分につき、水道事業者である地方公共団体の職員が給水装置新設工事の申込書を返戻した場合、それが、当該申込みの受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、同法違反の状態を是正し、建築確認を受けた上で申込みをするよう一応の勧告をしたものにすぎないものであったとしても、かかる措置は、違法な拒否に当たる。

エ・・・誤り

【事案】

違法建築物についての給水装置新設工事申込があり
市の水道局給水課長が、建築基準法に違反することを指摘して、申込の受理を事実上拒絶し、申込書をその申込者に返戻した。

【判例】

「申込書の返戻」が、
①当該申込みの受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、
②同法違反の状態を是正し、建築確認を受けた上で申込みをするよう一応の勧告をしたものにすぎないものであった場合、
「申込書の返戻」は、違法ではない。

よって、誤りです。

判例によると
「被上告人市の水道局給水課長が上告人の本件建物についての給水装置新設工事申込の受理を事実上拒絶し、申込書を返戻した措置は、右申込の受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、上告人に対し、右建物につき存する建築基準法違反の状態を是正して建築確認を受けたうえ申込をするよう一応の勧告をしたものにすぎないと認められるところ、これに対し上告人は、その後一年半余を経過したのち改めて右工事の申込をして受理されるまでの間右工事申込に関してなんらの措置を講じないままこれを放置していたのであるから、右の事実関係の下においては、前記被上告人市の水道局給水課長の当初の措置のみによっては、未だ、被上告人市の職員が上告人の給水装置工事申込の受理を違法に拒否したものとして、被上告人市において上告人に対し不法行為法上の損害賠償の責任を負うものとするには当たらないと解するのが相当である」としています(最判昭56.7.16)。

つまり、水道事業者である地方公共団体の職員が給水装置新設工事の申込書を返戻した場合、それが、当該申込みの受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、同法違反の状態を是正し、建築確認を受けた上で申込みをするよう一応の勧告をしたものにすぎないものである場合、違法な拒否には当たりません。

>>「最判昭56.7.16:違法建築物の給水装置新設工事申込の拒否」の解説はこちら


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問24|地方自治法

地方自治法が定める監査委員に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 普通地方公共団体の常勤の職員は、監査委員を兼務することができない。
  2. 普通地方公共団体の議会の議員は、条例に特に定めのない限り、当該普通地方公共団体の監査委員となることができない。
  3. 監査委員は、普通地方公共団体の長が選任し、それについて議会の同意を得る必要はない。
  4. 監査委員の定数は、条例により、法律上定められている数以上に増加させることはできない。
  5. 都道府県とは異なり、政令で定める市においては、常勤の監査委員を置く必要はない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1
【解説】

1.普通地方公共団体の常勤の職員は、監査委員を兼務することができない。

1・・・正しい

監査委員は、地方公共団体の常勤の職員及び短時間勤務職員と兼ねることができません(地方自治法196条3項)。

つまり、本肢は正しいです。

2.普通地方公共団体の議会の議員は、条例に特に定めのない限り、当該普通地方公共団体の監査委員となることができない。

2・・・誤り

監査委員」は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者及び「議員」のうちから、選任します(地方自治法196条1項本文)。

よって、条例の定めがなくとも、議員は監査委員になることができるので誤りです。

3.監査委員は、普通地方公共団体の長が選任し、それについて議会の同意を得る必要はない。

3・・・誤り

監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者及び議員のうちから、選任します(地方自治法196条1項)。

よって、議会の同意を得る必要があるので誤りです。

4.監査委員の定数は、条例により、法律上定められている数以上に増加させることはできない。

4・・・誤り

監査委員の定数は、「都道府県」及び「政令で定める市」にあっては4人とし、「その他の市及び町村」にあっては2人です。

ただし、条例でその定数を増加することができます地方自治法195条2項)。

よって、誤りです。

5.都道府県とは異なり、政令で定める市においては、常勤の監査委員を置く必要はない。
5・・・誤り
都道府県及び政令で定める市にあっては、識見を有する者のうちから選任される監査委員のうち少なくとも1人以上は、常勤としなければなりません(地方自治法196条5項)。

つまり、「政令で定める市においては、常勤の監査委員を置く必要はない」は誤りです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問23|地方自治法

公の施設についての地方自治法の規定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 公の施設とは、地方公共団体が設置する施設のうち、住民の福祉を増進する目的のため、その利用に供する施設をいう。
  2. 公の施設の設置およびその管理に関する事項は、条例により定めなければならない。
  3. 普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体が指定する法人その他の団体に、公の施設の管理を行わせることができるが、そのためには長の定める規則によらなければならない。
  4. 普通地方公共団体は、公の施設の管理を行わせる法人その他の団体の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
  5. 普通地方公共団体は、適当と認めるときは、当該普通地方公共団体が指定する法人その他の団体に、その管理する公の施設の利用に係る料金をその者の収入として収受させることができる。

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【答え】:3
【解説】

1.公の施設とは、地方公共団体が設置する施設のうち、住民の福祉を増進する目的のため、その利用に供する施設をいう。

1・・・正しい

普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(公の施設)を設置します(地方自治法244条1項)

よって、公の施設とは、地方公共団体が設置する施設のうち、住民の福祉を増進する目的のため、その利用に供する施設をいいます。

つまり、本肢は正しいです。

2.公の施設の設置およびその管理に関する事項は、条例により定めなければならない。

2・・・正しい

普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければなりません(地方自治法244条の2第1項)。

つまり、公の施設の設置およびその管理に関する事項は、条例により定めなければならないので、本肢は正しいです。

3.普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体が指定する法人その他の団体に、公の施設の管理を行わせることができるが、そのためには長の定める規則によらなければならない。

3・・・誤り

普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、「条例」の定めるところにより、指定管理者に、当該公の施設の管理を行わせることができます地方自治法244条の2第3項)。

本肢の「当該普通地方公共団体が指定する法人その他の団体」とは、指定管理者を指します。

指定管理者に行わせるようにするには「条例」の定めが必要であり、「規則」で定めることはできないので誤りです。

4.普通地方公共団体は、公の施設の管理を行わせる法人その他の団体の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。

4・・・正しい

普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければなりません(地方自治法244条の2第6項)。
つまり、指定管理者を指定する場合、議会の決議が必要ということです。

よって、正しいです。

5.普通地方公共団体は、適当と認めるときは、当該普通地方公共団体が指定する法人その他の団体に、その管理する公の施設の利用に係る料金をその者の収入として収受させることができる。

5・・・正しい

普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金を当該指定管理者の収入として収受させることができます(地方自治法244条の2第8項)。

つまり、「公の施設の利用料金を、指定管理者の収入にすることができる」と、普通地方公共団体は決めることができます。

よって、正しいです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問22|地方自治法

普通地方公共団体の議会に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 議会は、長がこれを招集するほか、議長も、議会運営委員会の議決を経て、自ら臨時会を招集することができる。
  2. 議員は、法定数以上の議員により、長に対して臨時会の招集を請求することができるが、その場合における長の招集に関し、招集の時期などについて、地方自治法は特段の定めを置いていない。
  3. 議会は、定例会および臨時会からなり、臨時会は、必要がある場合において、付議すべき事件を長があらかじめ告示し、その事件に限り招集される。
  4. 議員は、予算を除く議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができるが、条例の定めがあれば、1人の議員によってもこれを提出することができる。
  5. 議会の運営に関する事項のうち、議員の請求による会議の開催、会議の公開については、議会の定める会議規則によるものとし、地方自治法は具体的な定めを置いていない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】

1.議会は、長がこれを招集するほか、議長も、議会運営委員会の議決を経て、自ら臨時会を招集することができる。
1・・・誤り
議長は、議会運営委員会の議決を経て、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができます(地方自治法101条2項)。つまり、議長は「自ら」臨時会を招集するのではありません。よって、誤りです。正しくは、議長は、「普通地方公共団体の長に対し」、臨時会の招集を「請求」することがでます。

2.議員は、法定数以上の議員により、長に対して臨時会の招集を請求することができるが、その場合における長の招集に関し、招集の時期などについて、地方自治法は特段の定めを置いていない。

2・・・誤り

議員の定数の4分の1以上の者は、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集請求することができます(地方自治法101条3項)。

上記請求があったときは、当該普通地方公共団体の長は、請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければなりません(同条4項)。

つまり、長の招集(臨時会の招集)に関し、招集の時期などについて、地方自治法に定めがあるので誤りです。

3.議会は、定例会および臨時会からなり、臨時会は、必要がある場合において、付議すべき事件を長があらかじめ告示し、その事件に限り招集される。

3・・・正しい

普通地方公共団体の議会は、定例会及び臨時会があります(地方自治法102条1項)。

そして、臨時会は、必要がある場合において、その事件に限り、臨時会を招集します(同条3項)。

その際、臨時会に付議すべき事件は、普通地方公共団体の長があらかじめこれを告示しなければなりません(同条4項)。

よって、まとめると「議会は、定例会および臨時会からなり、臨時会は、必要がある場合において、付議すべき事件を長があらかじめ告示し、その事件に限り招集される」ので、本肢は正しいです。

4.議員は、予算を除く議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができるが、条例の定めがあれば、1人の議員によってもこれを提出することができる。

4・・・誤り

普通地方公共団体の議会の議員は、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができます(地方自治法112条1項本文)。

そして、上記議案を提出するに当たっては、議員の定数の12分の1以上の者の賛成が必要です(同条2項)。

よって、「条例の定めがあれば、1人の議員によってもこれを提出することができる」は誤りです。

また、条例を定める場合、地方自治法に反する規定は定めることができません。

5.議会の運営に関する事項のうち、議員の請求による会議の開催、会議の公開については、議会の定める会議規則によるものとし、地方自治法は具体的な定めを置いていない。

5・・・誤り

普通地方公共団体の議会の議員の定数の半数以上の者から請求があるときは、議長は、その日の会議(その日のうちに議会の会議)を開かなければなりません(地方自治法114条1項)。

つまり、「議員の請求による会議の開催」は地方自治法に具体的な定めを置いています。議会の定める会議規則によりません。

また、普通地方公共団体の議会の会議は、原則、公開です。ただし、議長又は議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができます(地方自治法115条1項)。

つまり、会議の公開についても地方自治法に具体的な定めを置いています。議会の定める会議規則によりません。

よって、誤りです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問21|国家賠償法

次の文章は、国家賠償法2条1項の責任の成否が問題となった事案に関する最高裁判所判決の一節である。空欄[ア]~[エ]に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が[ ア ]を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その[ イ ]の存在を必要としないと解するを相当とする。ところで、原審の確定するところによれば、本件道路(は)・・・従来山側から屡々落石があり、さらに崩土さえも何回かあったのであるから、いつなんどき落石や崩土が起こるかも知れず、本件道路を通行する人および車はたえずその危険におびやかされていたにもかかわらず、道路管理者においては、「落石注意」等の標識を立て、あるいは竹竿の先に赤の布切をつけて立て、これによって通行車に対し注意を促す等の処置を講じたにすぎず、本件道路の右のような危険性に対して防護柵または防護覆を設置し、あるいは山側に金網を張るとか、常時山地斜面部分を調査して、落下しそうな岩石があるときは、これを除去し、崩土の起こるおそれのあるときは、事前に通行止めをする等の措置をとったことはない、というのである。・・・かかる事実関係のもとにおいては、本件道路は、その通行の安全性の確保において欠け、その管理に瑕疵があったものというべきである旨、・・・そして、本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその[ ウ ]に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできないのであり、その他、本件事故が不可抗力ないし[ エ ]のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断は、いずれも正当として是認することができる。

(最一小判昭和45年8月20日民集24巻9号1268頁)

  1. ア:過渡的な安全性 イ:重過失 ウ:予算措置 エ:回避可能性
  2. ア:通常有すべき安全性 イ:故意 ウ:予算措置 エ:予見可能性
  3. ア:過渡的な安全性 イ:重過失 ウ:事務処理 エ:予見可能性
  4. ア:通常有すべき安全性 イ:過失 ウ:事務処理 エ:予見可能性
  5. ア:通常有すべき安全性 イ:過失 ウ:予算措置 エ:回避可能性

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【答え】:5
【解説】
ア:通常有すべき安全性
イ:過失
ウ:予算措置
エ:回避可能性

国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が[ア:通常有すべき安全性]を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その[イ:過失]の存在を必要としないと解するを相当とする。ところで、原審の確定するところによれば、本件道路(は)・・・従来山側から屡々落石があり、さらに崩土さえも何回かあったのであるから、いつなんどき落石や崩土が起こるかも知れず、本件道路を通行する人および車はたえずその危険におびやかされていたにもかかわらず、道路管理者においては、「落石注意」等の標識を立て、あるいは竹竿の先に赤の布切をつけて立て、これによって通行車に対し注意を促す等の処置を講じたにすぎず、本件道路の右のような危険性に対して防護柵または防護覆を設置し、あるいは山側に金網を張るとか、常時山地斜面部分を調査して、落下しそうな岩石があるときは、これを除去し、崩土の起こるおそれのあるときは、事前に通行止めをする等の措置をとったことはない、というのである。・・・かかる事実関係のもとにおいては、本件道路は、その通行の安全性の確保において欠け、その管理に瑕疵があったものというべきである旨、・・・そして、本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその[ウ:予算措置]に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできないのであり、その他、本件事故が不可抗力ないし[エ:回避可能性]のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断は、いずれも正当として是認することができる。

最判昭45.8.20

ア.国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が[ ア ]を欠いていることをいい、・・・
ア・・・通常有すべき安全性
「国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵」とは、営造物について「何」を欠いていることをいうかを考えます。選択肢をみると「安全性」を欠いていることは分かります。「過渡的な安全性」なのか、「通常有すべき安全性」なのかを考えます。過渡的な安全性とは、「一時的な対策・安全性」という意味です。
そして、
「国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵」とは、営造物について「通常有すべき安全性」を欠いていることをいいます。

イ.国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が[ア:通常有すべき安全性]を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その[ イ ]の存在を必要としないと解するを相当とする。

イ・・・過失

国家賠償法2条1項の損害については、無過失責任です。

つまり、設置者や管理者に過失(落ち度)がなかったとしても、公の営造物の設置に瑕疵があったり、管理に瑕疵があれば、国等が賠償責任を負うことになります。

言い換えると、国賠法2条に基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としません。

よって、過失の存在は「イには、過失」が入ります。

ウ.本件道路は、その通行の安全性の確保において欠け、その管理に瑕疵があったものというべきである旨、・・・そして、本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその[ ウ ]に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできない

ウ・・・予算措置

「困却:こんきゃく」とは、困り果てることを言います。

つまり、内容としては、
「道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその[ ウ ]に困却するであろう(困り果てる)ことは推察できる」
ということです。

しかし、
「だからといって、直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任が免責と考えることはできない」
と言っています。

つまり、費用の額が相当の多額にのぼり=お金がかかりすぎて、予算措置に困るということです。

よって、ウには、「予算措置」が入ります。

エ.本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその[ウ:予算措置]に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできないのであり、その他、本件事故が不可抗力ないし[ エ ]のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断は、いずれも正当として是認することができる。

エ・・・回避可能性

本件事故が不可抗力や[ エ ]のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断は、いずれも正当として是認することができる。

となっているので、今回の事故は、「不可抗力がない」「エでもない」ことを認められないと判断した、原審(前の裁判)の判断は、正しいと言っています。

「予見可能性」と「回避可能性」どちらも入りそうです。

なので、判断は難しいです。

判例では「回避可能性」となっているので、こちらが結果的に入ります。

これは、他のア~ウで答えを導きます。

「本件事故が不可抗力ないし回避可能性のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断」とは?

「原審」とは、最高裁の一つ前の裁判を指し、高等裁判所による裁判です。高等裁判所では、今回の事故は、「不可抗力や回避不可能」と認めることができない、つまり「事故は、不可抗力ではなく、回避できた」と判断したということです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問19|行政事件訴訟法

抗告訴訟に関する次の記述について、正しいものはどれか。

  1. 裁判所は、処分または裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者または当該行政庁の申立てを待たず、当該行政庁を職権で訴訟に参加させることができる。
  2. 処分の取消しの訴えにおいて、裁判所は職権で証拠調べをすることができるが、その対象は、訴訟要件に関するものに限られ、本案に関するものは含まれない。
  3. 取消訴訟の訴訟物は、処分の違法性一般であるから、取消訴訟を提起した原告は、自己の法律上の利益に関係のない違法についても、それを理由として処分の取消しを求めることができる。
  4. 裁判所は、処分の取消しの訴えにおいて、当該処分が違法であっても、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償または防止の程度および方法その他一切の事情を考慮した上、当該処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、当該訴えを却下することができる。
  5. 行政庁に対して一定の処分を求める申請を拒否された者が、処分の義務付けの訴えを提起する場合、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、処分の義務付けの訴えのみを単独で提起することができる。

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【答え】:1
【解説】

1.裁判所は、処分または裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者または当該行政庁の申立てを待たず、当該行政庁を職権で訴訟に参加させることができる。
1・・・正しい
裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができます(行政事件訴訟法23条1項)。よって、「行政庁の訴訟参加」は、「裁判所の職権」で行うこともできるので、本肢は正しいです。
2.処分の取消しの訴えにおいて、裁判所は職権で証拠調べをすることができるが、その対象は、訴訟要件に関するものに限られ、本案に関するものは含まれない。

2・・・誤り

裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。ただし、その証拠調べの結果について、当事者の意見をきかなければなりません(行政事件訴訟法24条職権証拠調べ)。

上記の通り、条文では「調べることができる対象」は限定されていません。

よって、「対象は、訴訟要件に関するものに限られ、本案に関するものは含まれない。」は誤りです。

※「本案」とは、事案(紛争の内容)といったイメージです。

3.取消訴訟の訴訟物は、処分の違法性一般であるから、取消訴訟を提起した原告は、自己の法律上の利益に関係のない違法についても、それを理由として処分の取消しを求めることができる。
3・・・誤り
取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができません(行政事件訴訟法10条1項)。
【理解】
そもそも、取消訴訟は抗告訴訟であり、抗告訴訟は主観訴訟です。
つまり、主観訴訟の中に抗告訴訟があり、抗告訴訟の中に取消訴訟があります。「主観訴訟>抗告訴訟>取消訴訟」という関係です。
そして、主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟です。他人を救済するものではありません。
4.裁判所は、処分の取消しの訴えにおいて、当該処分が違法であっても、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償または防止の程度および方法その他一切の事情を考慮した上、当該処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、当該訴えを却下することができる。

4・・・誤り

取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償または防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分または裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を「棄却」することができます(行政事件訴訟法31条1項:事情判決

事情判決は「棄却判決」なので、「却下」ではありません。

よって、本肢は誤りです。

5.行政庁に対して一定の処分を求める申請を拒否された者が、処分の義務付けの訴えを提起する場合、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、処分の義務付けの訴えのみを単独で提起することができる。
5・・・誤り
申請型義務付け訴訟は、処分又は裁決に係わる取消訴訟、若しくは無効等確認の訴えを併合して提起しなければなりません(行政事件訴訟法37条の3第3項2号)。よって、「処分の義務付けの訴えのみを単独で提起することができる」というのは誤りです。
【理解】
例えば、マンション建設のために建築確認申請したが、申請が拒否された(拒否処分)。これに対して、建築確認処分を認めてください!と訴えるのが「申請型義務付け訴訟」です。事前に申請をしているからです。そして、この場合、建築確認処分をもらうためには、①「拒否処分」を取り消してもらって、その後、②「建築確認」の処分をもらう必要があります。よって、上記の通り併合提起が必要です。
一方、拒否処分を取り消すだけであれば、取消訴訟を単独で提起することは可能です。もちろん、この場合、「拒否処分」が取り消されるだけなので、建築確認の処分をもらえるかは分からないので、目的を達成することはできませんが・・・


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問18|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法が定める行政庁の訴訟上の地位に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 処分をした行政庁が国または公共団体に所属しない場合は、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。
  2. 処分をした行政庁は、当該処分の取消訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する。
  3. 審査請求の裁決をした行政庁は、それが国または公共団体に所属する場合であっても、当該裁決の取消訴訟において被告となる。
  4. 裁判所は、義務付けの訴えに係る処分につき、訴えに理由があると認めるときは、当該処分の担当行政庁が当該処分をすべき旨を命ずる判決をする。
  5. 裁判所は、私法上の法律関係に関する訴訟において処分の効力の有無が争われている場合、決定をもって、その処分に関係する行政庁を当該訴訟に参加させることができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】

1.処分をした行政庁が国または公共団体に所属しない場合は、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。
1・・・正しい
処分または裁決をした行政庁が国または公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない(行政事件訴訟法11条2項)。

「国または公共団体に所属しない行政庁」とは、例えば、建築基準法に基づき、建築確認や検査を行う機関として国土交通大臣や都道府県知事から指定された民間の機関(指定確認検査機関)です。よって、本肢は正しいです。

2.処分をした行政庁は、当該処分の取消訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する。

2・・・正しい

処分又は裁決をした行政庁は、当該処分又は裁決に係る国又は公共団体を被告とする訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有します(行政事件訴訟法11条6項)。

つまり、処分をした行政庁は、当該処分の取消訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有するので正しいです。

3.審査請求の裁決をした行政庁は、それが国または公共団体に所属する場合であっても、当該裁決の取消訴訟において被告となる。
3・・・誤り
処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければなりません(行政事件訴訟法11条1項)。よって、「裁決をした行政庁」は被告にならないので誤りです。

正しくは「裁決をした行政庁の所属する国または公共団体」が被告となります。

4.裁判所は、義務付けの訴えに係る処分につき、訴えに理由があると認めるときは、当該処分の担当行政庁が当該処分をすべき旨を命ずる判決をする。

4・・・正しい

義務付けの訴えについて、訴えに理由がある場合、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をします(行政事件訴訟法37条の2第5項)。

よって、本肢は正しいです。

5.裁判所は、私法上の法律関係に関する訴訟において処分の効力の有無が争われている場合、決定をもって、その処分に関係する行政庁を当該訴訟に参加させることができる。
5・・・正しい
私法上の法律関係に関する訴訟(争点訴訟)において、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無が争われている場合には、「行政庁の訴訟参加23条)」および「出訴の通知(39条)」の規定を準用します(行政事件訴訟法45条1項)。よって、裁判所は、処分または裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てによりまたは職権で、決定をもって、その行政庁を訴訟に参加させることができます(行政事件訴訟法23条1項)。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問17|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法が定める執行停止に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 執行停止の決定は、裁判所が疎明に基づいて行うが、口頭弁論を経て行わなければならない。
  2. 執行停止の決定は、取消訴訟の提起があった場合においては、裁判所が職権で行うことができる。
  3. 執行停止の決定は、償うことができない損害を避けるための緊急の必要がある場合でなければ、することができない。
  4. 執行停止の決定は、本案について理由があるとみえる場合でなければ、することができない。
  5. 執行停止による処分の効力の停止は、処分の執行または手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。

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【答え】:5
【解説】

1.執行停止の決定は、裁判所が疎明に基づいて行うが、口頭弁論を経て行わなければならない。
1・・・誤り
執行停止の決定は、口頭弁論を経ないですることができます。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない行政事件訴訟法25条6項)。
2.執行停止の決定は、取消訴訟の提起があった場合においては、裁判所が職権で行うことができる。

2・・・誤り

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止)をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。

つまり、執行停止の決定は、裁判所が職権で行うことはできず「申立て」が必要です。

よって、本肢は誤りです!

3.執行停止の決定は、償うことができない損害を避けるための緊急の必要がある場合でなければ、することができない。
3・・・誤り
処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止)をすることができます。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができません(行政事件訴訟法25条2項)。つまり、執行停止の決定ができないのは、「償うことができない損害を避けるための緊急の必要があるとき」ではなく、「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」です。
4.執行停止の決定は、本案について理由があるとみえる場合でなければ、することができない。

4・・・誤り

公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は②本案について理由がないとみえるときは、執行停止はできません行政事件訴訟法25条4項)。

②の「理由がないとみえるときは、執行停止できない」と「理由があるときに執行停止できる」は同じではありません。

「理由がないとみえるときは、執行停止できない」とは、「理由がある場合に執行停止できる」+「理由があるかどうか判断がつかない場合にも、執行停止はできる」となります。

したがって、本肢は誤りとなります。

【具体例】

Aが課税処分された場合において、それはおかしいと思って、処分の取消しの訴えを提起した。ここで、「執行」とは、例えば、Aの財産を差し押さえたりすることです。この「Aの財産の差押えをしない決定」が「執行停止の決定」です。

そして、「執行すること(Aの財産を差し押さえること)で①公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき(これはほどんど考えられない)」、又は「②本案について理由がないとみえるとき(Aの処分取消しの訴えが認めれないとき=Aの敗訴のとき)」は、執行停止はできず、Aの財産は差し押さえられる、ということです。

 

5.執行停止による処分の効力の停止は、処分の執行または手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
5・・・正しい
処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止)をすることができます。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができません(行政事件訴訟法25条2項)。よって、本肢は正しいです。

【具体例】

Aが違法建築物を建築し、B市長が、建物の除去命令をした場合、「処分の効力」「処分の執行」「手続きの続行」
とは下記内容です。

1. 処分の効力=除去命令自体
2. 処分の執行=代執行により建物を強制的に除去すること
3. 手続きの続行=上記代執行の手続きのこと

2や3は、「1の処分の効力」があることを前提に行います。

そのため、「1の処分の効力」を停止させると、自動的に2、3も停止します。

一方、「2の処分の執行」を停止させる場合、2のみを停止させて、「1の処分の効力」は停止しません。

そのため、「2の処分の執行」の停止で目的達成ができる場合は、あえて、「1の処分の効力」を停止させる必要はないので、そのような場合は、「1の処分の効力」の停止はできないということです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略