2019年過去問

令和元年・2019|問5|憲法

選挙権・選挙制度に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 国民の選挙権それ自体を制限することは原則として許されず、制約が正当化されるためにはやむを得ない事由がなければならないが、選挙権を行使するための条件は立法府が選択する選挙制度によって具体化されるものであるから、選挙権行使の制約をめぐっては国会の広い裁量が認められる。
  2. 立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持する上で、きわめて重要な基本的人権であることに鑑みれば、これに対する制約は特に慎重でなければならない。
  3. 一定の要件を満たした政党にも選挙運動を認めることが是認される以上、そうした政党に所属する候補者とそれ以外の候補者との間に選挙運動上の差異が生じても、それが一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達している場合に、はじめて国会の裁量の範囲を逸脱し、平等原則に違反することになる。
  4. 小選挙区制は、死票を多く生む可能性のある制度であることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、特定の政党のみを優遇する制度とはいえないのであって、選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法といい得る。
  5. 比例代表選挙において、選挙人が政党等を選択して投票し、各政党等の得票数の多寡に応じて、政党等があらかじめ定めた当該名簿の順位に従って当選人を決定する方式は、投票の結果、すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点で選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、直接選挙といい得る。

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【答え】:1
【解説】

1.国民の選挙権それ自体を制限することは原則として許されず、制約が正当化されるためにはやむを得ない事由がなければならないが、選挙権を行使するための条件は立法府が選択する選挙制度によって具体化されるものであるから、選挙権行使の制約をめぐっては国会の広い裁量が認められる。
1・・・誤り
判例によると
「自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として,国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,国民の選挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。そして,そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り,上記のやむを得ない事由があるとはいえず,このような事由なしに国民の選挙権の行使を制限することは,憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44条ただし書に違反するといわざるを得ない。」としています(最大判平17.9.14在外日本人選挙権訴訟)。よって、本肢の「選挙権行使の制約をめぐっては国会の広い裁量が認められる」は誤りです。選挙権行使の制約について、国会の裁量については広く認められていません。つまり、「制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合に限って、選挙権又はその行使を制限することができる」ということなので、裁量の範囲は狭いです。

2.立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持する上で、きわめて重要な基本的人権であることに鑑みれば、これに対する制約は特に慎重でなければならない。

2・・・正しい

判例によると
「立候補の自由は、
選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持するうえで、
きわめて重要である。このような見地からいえば、憲法一五条一項には、被選挙権者、特にその立候補の自由について、直接には規定していないが、これもまた、同条同項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである。

公職選挙における立候補の自由は、憲法15条1項の趣旨に照らし、基本的人権の一つとして、憲法の保障する重要な権利であるから、これに対する制約は、特に慎重でなければならない。」としています(最大判昭43.12.4)。

よって、本肢は正しいです。

3.一定の要件を満たした政党にも選挙運動を認めることが是認される以上、そうした政党に所属する候補者とそれ以外の候補者との間に選挙運動上の差異が生じても、それが一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達している場合に、はじめて国会の裁量の範囲を逸脱し、平等原則に違反することになる。
3・・・正しい
判例によると
「憲法は,各候補者が選挙運動の上で平等に取り扱われるべきことを
要求しているというべきであるが,合理的理由に基づくと認められる差異を設ける
ことまで禁止しているものではないから,国会の具体的に決定したところが裁量権
の行使として合理性を是認し得ない程度にまで候補者間の平等を害するというべき
場合に,初めて憲法の要求に反することになると解すべきである。そして、候補者と並んで候補者届出政党にも選挙運動を認めることが是認される
以上,候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に選挙運
動の上で差異を生ずることは避け難いところであるから,その差異が合理性を有す
るとは考えられない程度に達している場合に,初めてそのような差異を設けること
が国会の裁量の範囲を逸脱するというべきである。」としています(最大判平23.3.23)。よって、本肢は正しいです。
4.小選挙区制は、死票を多く生む可能性のある制度であることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、特定の政党のみを優遇する制度とはいえないのであって、選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法といい得る。
4・・・正しい
判例によると
「小選挙区制の下においては死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、・・・小選挙区制は、選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができる」
としています(最大判平11.11.10)。よって、本肢は正しいです。
5.比例代表選挙において、選挙人が政党等を選択して投票し、各政党等の得票数の多寡に応じて、政党等があらかじめ定めた当該名簿の順位に従って当選人を決定する方式は、投票の結果、すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点で選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、直接選挙といい得る。
5・・・正しい判例によると
「政党等にあらかじめ候補者の氏名及び当選人となるべき順位を定めた名簿を届け出させた上、選挙人が政党等を選択して投票し、各政党等の得票数の多寡に応じて当該名簿の順位に従って当選人を決定する方式(比例代表選挙における非拘束名簿式)は、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはない。複数の重複立候補者の比例代表選挙における当選人となるべき順位が名簿において同一のものとされた場合には、その者の間では当選人となるべき順位が小選挙区選挙の結果を待たないと確定しないことになるが、結局のところ当選人となるべき順位は投票の結果によって決定されるのであるから、このことをもって比例代表選挙が直接選挙に当たらないということはできず、憲法43条1項に違反するとはいえない」としています(最大判平11.11.10)。よって、本肢は正しいです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問4|憲法

家族・婚姻に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、当該規定が補充的に機能する規定であることから本来は立法裁量が広く認められる事柄であるが、法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する。
  2. 国籍法が血統主義を採用することには合理性があるが、日本国民との法律上の親子関係の存否に加え、日本との密接な結びつきの指標として一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる。
  3. 出生届に嫡出子または嫡出でない子の別を記載すべきものとする戸籍法の規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものであり、憲法に違反する。
  4. 厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間(100日)を超えて女性の再婚を禁止する民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至った。
  5. 夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるが、婚姻前の氏の通称使用が広く定着していることからすると、直ちに違憲とまではいえない。

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【答え】:4
【解説】

1.嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、当該規定が補充的に機能する規定であることから本来は立法裁量が広く認められる事柄であるが、法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する。
1・・・誤り
「法律婚保護という立法目的と照らして著しく不合理」なのではなく、「個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法と照らして著しく不合理」と下記判例で言っています。
判例によると
「法律婚主義の下においても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分をどのように定めるかということについては,事柄を総合的に考慮して決せられるべきものであり,また,これらの事柄は時代と共に変遷するものでもあるから,その定めの合理性については,個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らして不断に検討され,吟味されなければならない。法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、・・・父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきで あるという考えが確立されてきているものということができる。立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。」
としています(最大決平成25年9月4日)。つまり、本肢は「法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり」が誤りです。「嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、憲法に違反する」という点は正しいです。

2.国籍法が血統主義を採用することには合理性があるが、日本国民との法律上の親子関係の存否に加え、日本との密接な結びつきの指標として一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる。

2・・・誤り

旧国籍法3条1項の規定では、日本国民である父の非嫡出子について、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した者に限り日本国籍の取得を認めていました。

この点について判例によると
「国籍法3条1項は,同法の基本的な原則である血統主義を基調としつつ,日本国民との法律上の親子関係の存在に加え我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を設けて,これらを満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めることとしたものと解される。このような目的を達成するため準正その他の要件が設けられ,これにより本件区別が生じたのであるが,本件区別を生じさせた上記の立法目的自体には,合理的な根拠があるというべきである」
としています(最大判平成20年6月4日)。

よって、「一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる」が誤りです。

3.出生届に嫡出子または嫡出でない子の別を記載すべきものとする戸籍法の規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものであり、憲法に違反する。

3・・・誤り

【事案】

戸籍法には、出生届の記載事項として「嫡出子又は嫡出でない子の別を記載すべき」とする規定がある。

父母が、出生の届書の記載事項である「嫡出子又は嫡出でない子の別」を記載せずに届出をした。「嫡出子又は嫡出でない子の別」の記載がなかったため,世田谷区長により上記届出が受理されず、子に係る戸籍及び住民票の記載がされなかった。そこで、上記戸籍法の規定は、憲法14条1項に違反すると主張した。

【判例】

「出生の届出は、子の出生の事実を報告するものであって、その届出によって身分関係の発生等の法的効果を生じさせるものではなく、出生した子が嫡出子又は嫡出でない子のいずれであるか、また、嫡出でない子である場合にいかなる身分関係上の地位に置かれるかは、民法の親子関係の規定によって決せられるものである。本件規定それ自体によって、嫡出でない子について嫡出子との間で子又はその父母の法的地位に差異がもたらされるものとはいえない。したがって、本件規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものとはいえず、憲法14条1項(法の下の平等)に違反するものではない」としています(最判平成25年9月26日)。本肢は「嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものであり」という点と「憲法に違反する」の2点が誤りです。

【覚えるべきポイント】

出生届出書の記載事項について
「嫡出子又は嫡出でない子の別を記載すべき」とする規定は
不合理な差別的取扱いを定めたものとはいえないので、憲法違反ではない

という部分です。

4.厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間(100日)を超えて女性の再婚を禁止する民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至った。

4・・・正しい

【事案】

旧民法733条1項には「女は、前婚の解消又は取消しの日から6ヶ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と定められていました。前婚解消から100日を経過していれば、再婚しても父性推定の重複が避けられるため、再婚禁止期間は100日で十分ではないかと争われた。

【判例:最大判平27.1216】

「本件規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は、憲法14条1項にも、憲法24条1項にも違反するものではない。一方、本件規定のうち100日超過部分については、民法772条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできない(憲法違反)」としています(最大判平成27年12月16日)。つまり、100日超過部分については憲法に違反すると判断されたので本肢は正しいです。
ちなみに、この判例のあと、再婚禁止期間は、法改正より削除されました。

5.夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるが、婚姻前の氏の通称使用が広く定着していることからすると、直ちに違憲とまではいえない。

5・・・誤り

【事案:最大判平27.12.16:夫婦別姓訴訟】

「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定める民法750条の規定が、憲法14条1項や女性差別撤廃条約等に反するとして争われた。

【判例】

判例によると
「本件規定は、夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており、夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって、その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく、本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。
我が国において,夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても,それが,本件規定の在り方自体から生じた結果であるということはできない。
したがって,本件規定は,憲法14条1項に違反するものではない」としています(最大判平成27年12月16日)。

つまり、夫婦同氏制それ自体は、夫婦の姓の決定を両者の合意に委ねている以上、不平等が存在するとはいえず、憲法第14条第1項に違反しないということです。

よって、「実質的に法の下の平等に違反する状態といいうる」は誤りです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問3|憲法

議員の地位に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものを2つ選べ。(改題)

  1. 衆参両議院の比例代表選出議員に欠員が出た場合、当選順位に従い繰上補充が行われるが、名簿登載者のうち、除名、離党その他の事由により名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出がなされているものは、繰上補充の対象とならない。
  2. 両議院の議員は、国会の会期中逮捕されないとの不逮捕特権が認められ、憲法が定めるところにより、院外における現行犯の場合でも逮捕されない。
  3. 両議院には憲法上自律権が認められており、所属議員への懲罰については司法審査が及ばないが、除名処分については、一般市民法秩序と関連するため、裁判所は審査を行うことができる。
  4. 地方議会の自律権は、議院の自律権とは異なり法律上認められたものにすぎないので、裁判所は、除名に限らず、地方議会による議員への懲罰について広く審査を行うことができる。
  5. 地方議会の議員は、住民から直接選挙されるので、国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない。

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【答え】:1と4
【解説】

1.衆参両議院の比例代表選出議員に欠員が出た場合、当選順位に従い繰上補充が行われるが、名簿登載者のうち、除名、離党その他の事由により名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出がなされているものは、繰上補充の対象とならない。
1・・・正しい
衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙に係る繰上補充において、
衆議院名簿登載者又は参議院名簿登載者で、当選人とならなかったものにつき除名、離党その他の事由により当該衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者でなくなった旨の届出が、文書で、これらの条に規定する事由が生じた日の前日までに選挙長にされているときは、これを当選人と定めることができない(公職選挙法98条3項)。

■選挙会・選挙長とは?

各選挙では、各開票管理者からの開票結果の報告を点検して各候補者・政党等の得票を計算し、当選人を決定する選挙会が置かれることとなっています。
この選挙会に関する事務を行うのが選挙長です。

そして、選挙長は、その選挙の有権者の中から、その選挙を管理する選挙管理委員会によって選任されます。

2.両議院の議員は、国会の会期中逮捕されないとの不逮捕特権が認められ、憲法が定めるところにより、院外における現行犯の場合でも逮捕されない。

2・・・誤り

両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければなりません(憲法50条議員の不逮捕特権)。

そして、各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されません(国会法33条)。

つまり、院外における現行犯の場合、逮捕されます。

【「~を除いては・・・」について】この法律の構造は、「原則・・・、例外として~」ということです。

つまり、両議院の議員は、原則、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければなりません。

ただし、例外として、法律の定める場合は、国会の会期中でも逮捕される(原則の逆の内容となる)。

3.両議院には憲法上自律権が認められており、所属議員への懲罰については司法審査が及ばないが、除名処分については、一般市民法秩序と関連するため、裁判所は審査を行うことができる。

3・・・誤り

両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の2/3以上の多数による議決を必要とします(憲法58条2項)。

これは、議院(衆議院・参議院)の自律権の内容で、(国会)議員除名について裁判所の審査ではなく(=司法審査の対象ではなく)、議員内部で問題解決をすることとなっています。

よって、裁判所は審査を行うことはできません。

【対比】地方議会議員に対する「出席停止処分」「議員除名処分」→司法審査の対象になる=司法審査が及ぶ(下記選択肢4参照)

4.地方議会の自律権は、議院の自律権とは異なり法律上認められたものにすぎないので、裁判所は、除名に限らず、地方議会による議員への懲罰について広く審査を行うことができる。
4・・・正しい
判例(最大判令2.11.25)によると、「出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない(=議会内部の話ではない)」と判示しています。したがって、「出席停止処分については、裁判所の審査は及ぶ(裁判所は司法審査を行うことができる)」また、議員の除名についても、判例(最大判昭35.10.19)によると「議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らない」として議員の除名処分についても、議院内部の話ではなく、司法審査が及ぶ(裁判所は司法審査を行うことができる)としています。「最大判令2.11.25:地方議会議員出席停止事件」の事案と解説はこちら>>

5.地方議会の議員は、住民から直接選挙されるので、国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない。

5・・・誤り
両議院の議員(国会議員)は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われません(憲法51条)。上記は国会議員についてのルールですが、地方議会議員についても上記ルールが適用されるかが問題となります。この点について、判例では、「憲法51条をそのまま直ちに地方議会にあてはめ、地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない」としています(最大判昭42.5.24)。よって、本肢の「国会議員と同様に免責特権が認められ、議会で行った演説、討論または表決について議会外で責任を問われない」という記述は誤りです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問2|基礎法学

裁判の審級制度等に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.民事訴訟および刑事訴訟のいずれにおいても、簡易裁判所が第1審の裁判所である場合は、控訴審の裁判権は地方裁判所が有し、上告審の裁判権は高等裁判所が有する。

イ.民事訴訟における控訴審の裁判は、第1審の裁判の記録に基づいて、その判断の当否を事後的に審査するもの(事後審)とされている。

ウ.刑事訴訟における控訴審の裁判は、第1審の裁判の審理とは無関係に、新たに審理をやり直すもの(覆審)とされている。

エ.上告審の裁判は、原則として法律問題を審理するもの(法律審)とされるが、刑事訴訟において原審の裁判に重大な事実誤認等がある場合には、事実問題について審理することがある。

オ.上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について、下級審の裁判所を拘束する。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:5

【解説】

ア.民事訴訟および刑事訴訟のいずれにおいても、簡易裁判所が第1審の裁判所である場合は、控訴審の裁判権は地方裁判所が有し、上告審の裁判権は高等裁判所が有する。

ア・・・誤り

■民事訴訟

民事訴訟の場合、第一審裁判所が簡易裁判所であるとき、控訴裁判所は地方裁判所で(裁判所法16条1号、24条3号)、上告裁判所は高等裁判所です(裁判所法16条3号)。

したがって、民事訴訟については正しいです。

■刑事訴訟

刑事訴訟の場合、第一審裁判所が簡易裁判所である場合、控訴裁判所は高等裁判所で(裁判所法16条1号)、上告裁判所は最高裁判所です(裁判所法7条1号)。

※刑事訴訟の場合、上告裁判所は常に最高裁判所です。

したがって、刑事訴訟については誤りです。

よって、本肢は誤りです。

イ.民事訴訟における控訴審の裁判は、第1審の裁判の記録に基づいて、その判断の当否を事後的に審査するもの(事後審)とされている。

イ・・・誤り

控訴審の裁判には「続審」「事後審」「覆審」の3つがあります。

日本の民事訴訟における控訴審の裁判は「続審制」が採用されています。
よって、誤りです。

■「続審」とは、下級審の審理を基礎としながら、上級審においても新たな訴訟資料の提出を認めて事件の審理を続行して判決をすることです。

■「事後審」とは、原判決の当否を原審の訴訟記録により上級審で審査すること言い、続審のように原則、新たに訴訟資料の提出を認めていません

■「覆審」とは、上級審で第一審とは無関係上級審で訴訟資料を集め、これに基づいて新たに審理し直すことです。

ウ.刑事訴訟における控訴審の裁判は、第1審の裁判の審理とは無関係に、新たに審理をやり直すもの(覆審)とされている。

ウ・・・誤り

日本の刑事訴訟における控訴審の裁判は「事後審」が採用されています。
「事後審」とは、原判決の当否を原審の訴訟記録により上級審で審査すること言い、原則、新たに訴訟資料の提出を認めていません。
つまり、第一審で取り調べた証拠に基づいて,第一審判決に上記の控訴理由が存在するかを事後的に審査します。

■一方、「民事訴訟」における控訴審の裁判は、「続審」です。

続審」とは、下級審の審理を基礎としながら、上級審においても新たな訴訟資料の提出を認めて事件の審理を続行することをいいます。

エ.上告審の裁判は、原則として法律問題を審理するもの(法律審)とされるが、刑事訴訟において原審の裁判に重大な事実誤認等がある場合には、事実問題について審理することがある。
エ・・・正しい
上告申し立ての理由として認められるのは、原審に対して憲法違反や憲法解釈の誤り、最高裁の判例と相反する判断をしたことなどに限定されています(刑事訴訟法405条)。つまり、法の解釈・適用についての申し立てを行い、法の解釈・適用についてのみ審査して判断するのが上告審で、これを「法律審」と言います。

そして、上告審の裁判は、「法律審」です。そのため、この点は正しいですが、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認等があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときには、原判決を破棄することができるため、事実問題について審理することがあります(刑事訴訟法411条)。よって、本肢は正しいです。

>>「事実審」と「法律審」の違い

オ.上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について、下級審の裁判所を拘束する。
オ・・・正しい
上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束します(裁判所法4条)


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略