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令和2年・2020|問18|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法が定める出訴期間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 処分または裁決の取消しの訴えは、処分または裁決の日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りでない。
  2. 処分につき審査請求をすることができる場合において審査請求があったときは、処分に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、これに対する裁決があったことを知った日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りではない。
  3. 不作為の違法確認の訴えは、当該不作為に係る処分または裁決の申請をした日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りではない。
  4. 義務付けの訴えは、処分または裁決がされるべきことを知った日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りではない。
  5. 差止めの訴えは、処分または裁決がされようとしていることを知った日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りではない。

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【答え】:2

【解説】

1.処分または裁決の取消しの訴えは、処分または裁決の日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りでない。
1・・・誤り

取消訴訟は、「処分又は裁決があつたことを知った日から6ヶ月月を経過したとき」または「処分又は裁決の日から1年を経過したとき」は、提起することができません。ただし、正当な理由があるときは、この期間を過ぎても提起できます(行政事件訴訟法14条1項2項)。

本肢は「処分または裁決の日から6ヵ月」が誤りで、正しくは「処分または裁決を知った日から6ヵ月」です。

2.処分につき審査請求をすることができる場合において審査請求があったときは、処分に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、これに対する裁決があったことを知った日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りではない。

2・・・正しい

「処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合」又は「行政庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示した場合」において、審査請求があったときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、「選択肢1の14条1項2項」の規定にかかわらず、これに対する「裁決があったことを知った日から6か月を経過したとき」又は「当該裁決の日から1年を経過」したときは、提起することができません。ただし、正当な理由があるときは、この期間を過ぎても提起できます(行政事件訴訟法14条3項)。

よって、正しいです。

3.不作為の違法確認の訴えは、当該不作為に係る処分または裁決の申請をした日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りではない。
3・・・誤り

本肢のような規定はないので、誤りです。

不作為の違法確認訴訟については、出訴期間はありません。
なぜなら、行政庁の不作為が継続しているということは、その間、ずっと行政庁の違法な状態が続いているということです。
そのため、その間はずっと、訴訟提起できます。

4.義務付けの訴えは、処分または裁決がされるべきことを知った日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りではない。
4・・・誤り

義務付け訴訟については、出訴期間の規定はありません。
よって、誤りです。

【義務付け訴訟に出訴期間の規定がない理由】

義務付けの訴えは、①行政庁が一定の処分・裁決をすべきにもかかわらず、処分・裁決をしない場合(非申請型)や、②申請や審査請求がなされた場合(申請型)に、「行政庁に一定の処分・裁決をしてください!」と求める訴訟です。

①(非申請型)については、申請はしていないものの、処分や裁決を求める場合です。
例えば、隣地の建物が違法建築物であり、今にも倒壊しそうな場合に、所有者に対して是正命令処分をしてください!と求める場合です。
この場合、1年とか6ヶ月といった具体的な期間として、出訴期間を定めることができません。
上記の状況であれば、ずっと義務付けの訴えを提起できるのが当然です。

②(申請型)については、申請や審査請求をして、拒否処分を受けたり、不作為の場合です。
不作為の場合を考えると、不作為が続く限り、義務付け訴訟ができるので、これも1年とか6ヶ月といった具体的な期間として、出訴期間を定めることができません。

拒否処分の場合は、「取消訴訟」又は「無効確認の訴え」と併せて提起することが要件となるため、取消訴訟と併合提起する場合、取消訴訟の出訴期間が適用され、無効確認訴訟については、そもそも出訴期間はありません。
よって、出訴期間の定めをする必要はありません。

【取消訴訟の出訴期間】

「処分又は裁決があったことを知った日から6か月を経過したとき」または、「処分又は裁決の日から1年を経過した」ときは、提起することができないという
5.差止めの訴えは、処分または裁決がされようとしていることを知った日から6ヵ月を経過したときは提起することができないが、正当な理由があるときはこの限りではない。
5・・・誤り

差止め訴訟については、出訴期間の規定はありません。
よって、誤りです。

【差止め訴訟に出訴期間の規定がない理由】

差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができます(行政事件訴訟法37条の4第1項)。
つまり、この条文から、「一定の処分又は裁決」がされていない間でないと訴えを提起できないことが分かります。

そのため、出訴期間の規定を別途さだめることはしていません。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・政治
問23 地方自治法 問53 一般知識・経済
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問13|行政手続法

行政手続法の定める申請の取扱いに関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.申請がそれをすることができる期間内にされたものではない場合、当該申請は当然に不適法なものであるから、行政庁は、これに対して諾否の応答を行わず、その理由を示し、速やかに当該申請にかかる書類を申請者に返戻しなければならない。

イ.許認可等を求める申請に必要な書類が添付されていない場合、行政庁は、速やかに、相当の期間を定めて当該申請の補正を求めるか、あるいは当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

ウ.行政庁は、申請により求められた許認可等のうち行政手続法に列挙されたものについて、これを拒否する処分を行おうとするときは、予めその旨を申請者に対し通知し、当該申請者に弁明書の提出による意見陳述の機会を与えなければならない。

エ.行政庁が申請の取下げまたは内容の変更を求める行政指導を行うことは、申請者がそれに従う意思がない旨を表明したにもかかわらずこれを継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるものでない限り、直ちに違法とされるものではない。

オ.行政庁が、申請の処理につき標準処理期間を設定し、これを公表した場合において、当該標準処理期間を経過してもなお申請に対し何らの処分がなされないときは、当該申請に対して拒否処分がなされたものとみなされる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:3

【解説】

ア.申請がそれをすることができる期間内にされたものではない場合、当該申請は当然に不適法なものであるから、行政庁は、これに対して諾否の応答を行わず、その理由を示し、速やかに当該申請にかかる書類を申請者に返戻しなければならない。

ア・・・誤り
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、「申請をすることができる期間内にされたものであること」その他の法令に定められた「申請の形式上の要件に適合しない申請」については、速やかに、申請者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません。(行政手続法7条)。

よって、「申請がそれをすることができる期間内にされたものではない場合」とは、「申請の形式上の要件に適合しない申請」にあたるため、行政庁は「拒否」をしなければなりません。

※申請期間は過ぎているので「補正」を求めることはしません。

イ.許認可等を求める申請に必要な書類が添付されていない場合、行政庁は、速やかに、相当の期間を定めて当該申請の補正を求めるか、あるいは当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

イ・・・正しい

アの解説の「行政手続法7条」の内容の通り、
「申請に必要な書類が添付されていない場合」とは、「申請の形式上の要件に適合しない申請」にあたるため、行政庁は「拒否」をしなければなりません。

よって、本肢は正しいです。

ウ.行政庁は、申請により求められた許認可等のうち行政手続法に列挙されたものについて、これを拒否する処分を行おうとするときは、予めその旨を申請者に対し通知し、当該申請者に弁明書の提出による意見陳述の機会を与えなければならない。

ウ・・・誤り
行政手続法には、許認可を列挙した条文はありません。
したがって、「許認可等の申請を拒否する処分を行おうとするときは、予めその旨を申請者に対し通知し、当該申請者に弁明書の提出による意見陳述の機会を与えなければならない」という規定もないので誤りです。

エ.行政庁が申請の取下げまたは内容の変更を求める行政指導を行うことは、申請者がそれに従う意思がない旨を表明したにもかかわらずこれを継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるものでない限り、直ちに違法とされるものではない。
エ・・・正しい
「申請の取下げ」又は「内容の変更を求める行政指導」にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはなりません(行政手続法33条)。

つまり、「当該申請者の権利の行使を妨げるもの」は違法ですが、「当該申請者の権利の行使を妨げるものでない」ならば、それは、直ちに違法とはなりません。

よって、本肢は正しいです。

オ.行政庁が、申請の処理につき標準処理期間を設定し、これを公表した場合において、当該標準処理期間を経過してもなお申請に対し何らの処分がなされないときは、当該申請に対して拒否処分がなされたものとみなされる。
オ・・・誤り

標準処理期間を過ぎても処分がされない場合どうなるか?については、行政手続法に規定されていません。

標準処理期間については、下記条文があります。

行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない(行政手続法6条)。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問9|行政法

行政行為(処分)に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 処分に重大かつ明白な瑕疵があり、それが当然に無効とされる場合において、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきである。
  2. 行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、その意思表示が相手方に到達した時ではなく、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である。
  3. 課税処分における内容の過誤が課税要件の根幹にかかわる重大なものである場合であっても、当該瑕疵に明白性が認められなければ、当該課税処分が当然に無効となることはない。
  4. 相手方に利益を付与する処分の撤回は、撤回の対象となる当該処分について法令上の根拠規定が定められていたとしても、撤回それ自体について別途、法令上の根拠規定が定められていなければ、適法にすることはできない。
  5. 旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決は、これを実質的に見れば、その本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、それが処分である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことを妨げない。

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【答え】:1
【解説】

1.処分に重大かつ明白な瑕疵があり、それが当然に無効とされる場合において、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきである。
1・・・妥当
判例(最判昭36.3.7)によると、「瑕疵が明白であるというのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解すべきである」としています。
よって、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るもの(一目で分かるもの)であるかどうかにより決すべきということなので妥当です。
2.行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、その意思表示が相手方に到達した時ではなく、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である。

2・・・妥当ではない
判例(最判昭29.8.24)によると、「行政庁の処分は、特定の規程のない限り、意思表示の一般的法理に従い、その意思表示が相手方に到達した時に、その効果を生ずるものと解すべき」としています。
つまり、本肢の「行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である」というのは妥当ではありません。
「発信されたとき」ではなく、「到達した時」です。

3.課税処分における内容の過誤が課税要件の根幹にかかわる重大なものである場合であっても、当該瑕疵に明白性が認められなければ、当該課税処分が当然に無効となることはない。

3・・・妥当ではない

本肢は「当該瑕疵に明白性が認められなければ」が妥当ではありません。

判例(最判昭48.4.26)によると、「課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであって、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である」としています。

よって、課税処分が当然に無効となる要件が上記の判例と問題文では異なるので妥当はありません。

【判例解説】
上記判決文は、「課税処分が当然に無効となる要件」についての内容です。

課税処分は「課税庁と被課税者」との間にのみの話である。
だから、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のない。
↓このことから考えると
①当該課税処分における内容上の過誤(課税処分の間違い)が、課税要件を満たしていない場合であって、
かつ、
②税金に関する行政の安定と円滑な運営を考慮しても、不服申立期間が過ぎて、争えなくなることを理由に、税金を課された人がその課税処分で不利益を受けることが著しく不当と認められる
といった例外的な事情がある場合に限って、課税処分が当然に無効となる

4.相手方に利益を付与する処分の撤回は、撤回の対象となる当該処分について法令上の根拠規定が定められていたとしても、撤回それ自体について別途、法令上の根拠規定が定められていなければ、適法にすることはできない。
4・・・妥当ではない
本肢は「定められていなければ、適法にすることはできない」が妥当ではありません。
「定められていなくても、適法にすることができる」が妥当です。判例(最判昭和63.6.17)によると、
「指定医師の指定の撤回によって上告人(医師)の被る不利益を考慮しても、なおそれを撤回すべき公益上の必要性が高いと認められるから、法令上その撤回について直接明文の規定がなくとも、指定医師の指定の権限を付与されている被上告人医師会は、その権限において上告人(医師)に対する右指定を撤回することができる」としています。つまり、撤回すべき公益上の必要性が高い場合、「撤回できる」という規定が明文化されていなくても(法令上の根拠がなくても)、処分の権限があれば、その権限で撤回できるということです。

5.旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決は、これを実質的に見れば、その本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、それが処分である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことを妨げない。

5・・・妥当ではない

【自作農創設特別措置法の背景】
戦前、大地主が小作人に農地を貸して、農業を行われていたが、戦後、国が全国の大地主(たくさん土地を持つ人達)から土地を買い上げ、安い価格で小作人に売渡し、自作農民を増やす改革を行いました。
本肢は、国が全国の大地主の農地について、「農地買収計画の決定」をし、それに対して、この計画を取り消してください!と願い出て、それに対して、国はその願いを認めて、取消裁決をしました。

※訴願とは、現在の不服申立てのようなもので、現在は廃止されてありません。

【問題文】
この取消裁決の本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、
あくまで取消裁決は「処分」である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことができる〇か×か
という質問内容です。

本肢は「取り消すことを妨げない(取り消すことができる)」が妥当ではありません。
「原則、取り消すことはできない」が妥当です。

判例(最判昭29.1.21)によると、
「旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決が行政処分であることは言うまでもないが、実質的に見ればその本質は法律上の争訟を裁判するものである。憲法76条2項後段によれば、「行政機関は、終審として裁判を行うことができない」のであって、終審としては、裁判所が裁判を行うが、行政機関をして前審として裁判を行わせることは、何等差支えないのである。
本件裁決のごときは、行政機関である上告人が実質的には裁判を行っているのであるが、行政機関がするのでるから行政処分に属するわけである。
かかる(このような)性質を有する裁決は、他の一般行政処分とは異り、特別の規定がない限り、原判決のいうように裁決庁自らにおいて取消すことはできないと解するを相当とする。」としている。

つまり、訴願に対して裁決を出した後に、裁決庁が自分でその裁決を取り消すことは原則できないということです。

【分かりやすく言うと】

1.農地買収計画の決定(処分)
2.農地所有者が、上記計画を取り消してください!と願い出る(訴願、今でいう審査請求)
3.上記訴願(審査請求)に対して、国(審査庁:裁決庁)はその願いを認めて、取消裁決をする

ここで、審査庁は、一度裁決を下した「取消裁決」を取り消すことができるか?

答えは、できない。

なぜなら、自分で裁決をした後に、やっぱりその裁決をやめるということは、できないから。

いわゆる「不可変更力」のことです!


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

最大判平20.6.4:国籍法3条1項違憲判決

論点

旧国籍法3条1項によると、結婚していない「日本人の父」と「フィリピン人の母」との間に日本で生まれた子が日本国籍を取得するためには、認知後に父母が婚姻をする必要があると規定されていたが、この規定は憲法14条1項(法の下の平等)に違反するか?

事案

結婚していない「日本人の父」と「フィリピン人の母」との間に日本で生まれた子(原告)が、出生後に「日本人の父」から認知を受けたことを理由として、

法務大臣あてに日本国籍取得の届出をしたところ、国籍取得の条件を備えておらず、日本国籍を与えなかった。

かつての国籍法3条1項では、「日本人の父」と「外国人の母」との間に出生した後に父から認知された子につき、「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り」日本国籍の取得を認めていた。

この国籍法3条1項が、憲法14条1項(法の下の平等)に違反するか?

判例

旧国籍法3条1項によると、結婚していない「日本人の父」と「フィリピン人の母」との間に日本で生まれた子が日本国籍を取得するためには、認知後に父母が婚姻をする必要があると規定されていたが、この規定は憲法14条1項(法の下の平等)に違反するか?

違反する(旧国籍法3条1項は、違憲)

かつての国籍法3条1項によると、結婚していない「日本人の父」と「フィリピン人の母」との間に日本で生まれた子が日本国籍を取得するためには、認知後に父母が婚姻をする必要がある。

しかし、父母の婚姻という子がどうすることもできない事です。

そのどうすることもできない事情によって国籍取得の可否が決まるというのは不合理な差別であるため、憲法14条1項に違反するとしました。

最判昭56.7.16:違法建築物の給水装置新設工事申込の拒否

論点

違法建築物についての給水装置(上下水道)新設工事申込の受理の事実上の拒絶につき、市は、不法行為法上の損害賠償責任を負うか?

事案

違法建築物についての給水装置新設工事申込があり
市の水道局給水課長が、建築基準法に違反することを指摘して、申込の受理を事実上拒絶し、申込書をその申込者に返戻した。

判例

違法建築物についての給水装置新設工事申込の受理の事実上の拒絶につき、市は、不法行為法上の損害賠償責任を負うか?
→ 市は、不法行為に基づく損害賠償責任を負わない

上記申込の受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではない

また、建築基準法違反の状態を是正して建築確認を受けたうえ申込をするよう一応の勧告をしたものにすぎない

他方、右申込者は、その後1年半余を経過したのち改めて右工事の申込をして受理されるまでの間、右申込に関してなんらの措置を講じないままこれを放置していた。

この事実関係の下においては、市は、受理の拒否したことについて不法行為法上の損害賠償の責任を負うものではない。

>>判例の内容はこちら

民法736条の条文解説

養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、親族関係が終了した後でも、婚姻できません(民法736条)

「~と~との間では、親族関係が終了した後でも、婚姻できません」という構造になっているので、下記のように分けます。

①「養子若しくはその配偶者」又は「養子の直系卑属若しくはその配偶者
②「養親」又は「その直系尊属(養親の直系親族)


①と②のとの間では親族関係が終了した後でも、婚姻できません

つまり、下記4パターンは、親族関係が終了した後でも、婚姻できません。

  1. 養子若しくはその配偶者」―「養親
  2. 養子若しくはその配偶者」―「その直系尊属(養親の直系親族)
  3. 養子の直系卑属若しくはその配偶者」―「養親
  4. 養子の直系卑属若しくはその配偶者」―「その直系尊属(養親の直系親族)

使用者責任

使用者責任とは?

「使用者責任」とは、被用者(例えば従業員)が、業務中に第三者に損害を与えてしまった場合に、使用者(例えば、会社)も損害賠償責任を負うことを言います。

使用者責任の成立要件

使用者責任は下記をすべて満たす場合に成立します。

  1. 被用者と使用者との間に指揮・監督関係がある
    →雇用関係がなくても、事実上の指揮・監督関係があれば足りる
  2. 被用者の行為が一般不法行為の成立要件を満たしている
  3. 被用者の行為が、事業の執行についての行為である(事業執行性
    →行為の外形から見て被用者の職務の範囲に属するものと認められれば足りる(最判昭39.2.4)
  4. 使用者が選任・事業の監督について相当の注意をしていなかった
  5. 被用者の行為により第三者に損害が生じる

使用者責任の効果

使用者責任が成立すると、被害者は、使用者に対して、損害賠償請求ができます(民法715条)。

被害者は、被用者に対しては一般不法行為に基づいて損害賠償請求ができます(民法709条)。

求償の範囲

使用者が、被害者に対して損害賠償をした場合、使用者は被用者に対して求償することができ(民法715条3項)、具体的には、「使用者は、事業の性格、規模など様々な事情を考慮して、損害の公平な分担という観点から、信義則上相当と認められる限度」について、被用者に対して請求ができます(最判昭51.7.8)。

使用者が、他の加害者側(加害者)に求償する場合・・・負担部分を超える部分について求償できる

使用者が、他の加害者側(使用人)に求償する場合・・・負担部分を超える部分について求償できる

加害者他の加害者の使用人に求償・・・負担部分を超える部分について求償できる
使用者他の加害者に求償する場合・・・過失割合に応じて求償できる

一方の加害者に複数の使用人がいた場合の使用者間・・・責任割合を超える部分

 

民法テキストの目次

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参考条文

(使用者等の責任)
第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

契約不適合責任

契約不適合責任とは?

売買契約において、売主が買主に引き渡したモノや権利に何らかの欠陥があった場合、売主は買主に対して様々な責任を負います。

この責任を「契約不適合責任」と言います。この契約不適合責任の内容を一つ一つ見ていきます。

買主の追完請求権

引き渡された目的物が「種類、品質又は数量」に関して契約の内容に適合しないもの(不適合)であるとき、
買主は、売主に対し、原則として、目的物の修補代替物の引渡し又は不足分の引渡しといった「履行の追完請求」ができます(民法第562条1項本文)。

ただし、例外として、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完ができます(民法第562条1項ただし書)。

また、上記不適合が、買主の責めに帰すべき事由によるとき、買主は、履行の追完請求ができません(民法第562条2項)。

【具体例】

売主Aと買主Bが「バナナ500個」の売買契約を締結した。買主Bが引渡予定していた日に取りに来ず、1週間後に取りに来た。結果としてバナナ100個が腐ってしまった。この場合、引渡予定日に取りに来なかった買主の責任なので、買主Bは売主Aに追完請求はできません。

買主の代金減額請求権

引き渡された目的物が「種類、品質又は数量」に関して契約の内容に適合しないもの(不適合)であるとき、
買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金減額請求ができます(民法563条1項)。

上記1項の規定にかかわらず、下記1~4の場合には、買主は、無催告で、直ちに代金減額請求ができます(民法563条2項)。

  1. 履行の追完が不能であるとき
  2. 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
  3. 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき
  4. 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

そして、1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、買主は、代金減額請求ができません(民法563条3項)。

【具体例】

 売主Aと買主Bが「建物」の売買契約を締結した。買主Bが引渡し前に、その建物を見に行って、誤って窓ガラスを割ってしまった。この場合、買主Bに責任があるので、買主Bは売主Aに対して代金減額請求はできません。

買主の損害賠償請求および解除権

売主が買主に引き渡したモノに契約不適合があった場合、買主は売主に対して追完請求や代金減額請求ができるだけでなく

債務不履行に基づく損害賠償請求」や「契約解除」を行うこともできます(民法564条)。

移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任

「売主が買主に移転した権利」が契約の内容に適合しない場合(一部他人物売買で一部を権利移転しない場合も含む。)についても、上記「追完請求権」「代金減額請求権」「損害賠償請求権」「解除権」を行使することができます(民法565条)。

例えば、「売った不動産に地上権・地役権・質権・対抗力のある賃借権等が付着していた場合」や「一部他人物売買の場合」です。

契約不適合責任の期間制限

原則:

目的物の瑕疵については、使用や時間の経過によって判断ができなくなります。そのため、早期に解決しておく必要がある。そのため、買主は、種類・品質(数量・権利移転は除く)について契約不適合(瑕疵)を知ったときから、1年以内に、売主に対して契約不適合の旨を通知する必要がある。 (a)通知しない場合、買主は、その不適合を理由とする「①追完請求」「②代金減額請求」「③損害賠償請求及び④契約解除」はできなくなる。

通知をすることで、①~④の権利は通常の債権の消滅時効の期間内に行使すればよい。

つまり、 ()買主は不適合を知ったことになるので、消滅時効の主観的起算点により、不適合を知った時から5年経過もしくは、引渡しから10年経過で①~④の債権が消滅する。

さらに、 (c)買主が不適合を知らなかったとしても、消滅時効の客観的起算点により、引渡しから10年経過で①~④の債権が消滅する。

例外

売主が」引渡しの時に目的物が契約の内容に適合しないものであることについて知っていたり(悪意)、または、知らなかったとしても重大な過失がある場合(重過失)には、売主を保護する必要はないので、1年間の期間制限が適用されず、買主は目的物について契約内容の不適合を知ってから1年経過したとしても、売主に責任追及ができます

ただし、 d消滅時効の通常の考え方は適用されるため、「買主が契約不適合を知ってから5年」もしくは「引渡しから10年」経過すれば買主の①~④の権利は消滅する

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参考条文

(買主の追完請求権)
第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

(買主の代金減額請求権)
第563条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
第565条 前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

売買

売買とは?

売買とは、売主が「モノや権利」を買主に渡すことを約束し、買主が代金を支払うことを約束することで成立し、売買の効力が生じます。

例えば、売主が買主に200万円で自動車を売買するとすると。
売主が買主に自動車を引渡すことを約束し
買主が売主に200万円を支払うことを約束することで成立します。

手付とは?

手付とは、売買契約を交わす時に、買主が売主に対して渡すお金を言います。

そして、手付には「解約手付」「証約手付」「違約手付」の3種類があります。

解約手付」は、あとで契約解除できる権利を置いておく(留保する)ための手付です。

  • 買主から解除する場合、売主に渡した手付金を放棄して(手付金を売主にあげて)解除することができます(民法557条)。
  • 売主から解除する場合、買主が履行に着手するまでは、手付の倍額を買主に渡して(償還して)解除することができます(民法557条)。

【具体例】

買主が手付金として100万円を売主に支払った後に、
① 買主が解除する場合
売主が履行に着手する前であれば、手付金として支払った100万円をそのまま売主にあげることで解除できる
② 売主が解除する場合
買主が履行に着手する前であれば、手付金として受け取った100万円にプラス100万円を売主が上乗せして(合計200万円)買主に渡すことで解除できる。

証約手付」は、契約が成立した証拠のための手付です。

違約手付」は、債務不履行があると没収される手付です。

売買契約に関する費用

売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担(折半)します(民法558条)。

例えば、契約書を作成するための費用としては、「印刷費用」、「契約書に貼付する収入印紙の費用」、「公正証書で売買契約を締結するときは公証人に対する費用」等があります。

売主の義務

車や不動産などの売買を行う場合、売主は、登録や登記を買主に移転して、買主が対抗要件を備えるようにさせる義務を負います。(民法560条)

他人物売買も有効ですが、他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売ったときはは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負います(民法561条)。

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参考条文

(売買)
第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(売買の一方の予約)
第556条 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
2 前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。

(手付)
第557条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
2 第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。

(売買契約に関する費用)
第558条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

(有償契約への準用)
第559条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

(権利移転の対抗要件に係る売主の義務)
第560条 売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。

(他人の権利の売買における売主の義務)
第561条 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。