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令和4年・2022|問35|民法

相続に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときを除き、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
  2. 相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するが、不法行為による慰謝料請求権は、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるから相続財産には含まれない。
  3. 相続財産中の預金債権は、分割債権であるから、相続開始時に共同相続人に対してその相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない。
  4. 相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなるため、残余の相続財産について遺産分割を行い、共同相続人間の不公平が生じたときには、別途訴訟等により回復する必要がある。
  5. 共同相続人は、相続の開始後3ヵ月を経過した場合、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。

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【答え】:1

【解説】

1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときを除き、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。

1・・・妥当

系譜(家系図)、祭具及び墳墓の所有権は、相続の一般的効力にかかわらず、慣習に従って「祖先の祭祀を主宰すべき者」が承継します。
ただし、被相続人の指定に従って「祖先の祭祀を主宰すべき者(祭祀主宰者)」があるときは、その者が承継します(民法897条1項)。

よって、本肢は妥当です。

まず、お墓、祭壇等などは「祭祀(さいし)財産」と呼ばれます。

この祭祀財産は相続人の間で分割すると、「祖先の祭祀」をするときに不都合を生じますので、相続財産とは別に「特定の1人」に受け継がせることになっています。

これを「祭祀主宰者」と言います。

祭祀主宰者は、第1に、被相続人(故人)が、生前に指定していたのであれば、その人が、祭祀主宰者となります。

第2に、上記指定がない場合には、被相続人が亡くなった地域や属していた地方の慣習に従い祭祀主宰者が決められます。

この第1、第2の方法によっても祭祀主宰者が決まらない場合には、第3として、家庭裁判所の調停、もしくは審判によって決めます(民法897条1項2項)。

2.相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するが、不法行為による慰謝料請求権は、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるから相続財産には含まれない。

2・・・妥当ではない

【前半部分】

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし、被相続人の一身に専属したものは、承継しません(民法896条)。
よって、前半部分は妥当です。

【後半部分】

判例(最大判昭42.11.1)によると、「被害者がこの請求権を放棄したものと解しうる特別の事情のない限り、生前に請求の意思を表明しなくても、その相続人は、当然にこの慰謝料請求権を相続する」と判示しています。

したがって、不法行為による慰謝料請求権も、相続財産に含まれるので、後半部分が妥当ではありません。

3.相続財産中の預金債権は、分割債権であるから、相続開始時に共同相続人に対してその相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない。

3・・・妥当ではない

判例(最大決平28.12.19)では、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」としています。

よって、本肢は「相続財産中の預金債権は、相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない」という記述が妥当ではありません。

※ 遺産分割は共同相続人間の実質的公平を図るためにあります。公平を図るために、被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましいことから、預貯金も遺産分割の対象になるとしています。

4.相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなるため、残余の相続財産について遺産分割を行い、共同相続人間の不公平が生じたときには、別途訴訟等により回復する必要がある。

4・・・妥当ではない

遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができます(民法906条の2第1項)。

よって、「相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなる」という部分は妥当ではありません。

そして、「処分された財産」は、遺産として存在するものとみなすことができるので、別途訴訟等により回復する必要はありません。

そのまま遺産分割を行うことができ、その遺産分割協議書に基づいて、遺産は分割されます。

【背景】 このルールは、モノを処分するというより「預貯金を不当に引き出して使い込む」ことを前提としたルールです。つまり、「処分」=「お金を使い込む」という意味です。

この場合、「不当に引き出した相続人」の相続分も相続財産となるので、「不当に引き出した相続人」の相続分は、使い込んだ分、少なくなるイメージです。

5.共同相続人は、相続の開始後3ヵ月を経過した場合、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。

5・・・妥当ではない

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合又は分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(民法907条1項)。

したがって、本肢は「相続の開始後3ヵ月を経過した場合」という部分が妥当ではありません。

3ヵ月を経過しなくても遺産分割は可能です。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問5|憲法

適正手続に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されないが、貨物の密輸出で有罪となった被告人が、そうした手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由に、手続の違憲性を主張することはできない。
  2. 憲法は被疑者に対して弁護人に依頼する権利を保障するが、被疑者が弁護人と接見する機会の保障は捜査権の行使との間で合理的な調整に服さざるを得ないので、憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。
  3. 審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。
  4. 不利益供述の強要の禁止に関する憲法の保障は、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶ。
  5. 不正な方法で課税を免れた行為について、これを犯罪として刑罰を科すだけでなく、追徴税(加算税)を併科することは、刑罰と追徴税の目的の違いを考慮したとしても、実質的な二重処罰にあたり許されない。

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【答え】:4
【解説】

1.告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されないが、貨物の密輸出で有罪となった被告人が、そうした手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由に、手続の違憲性を主張することはできない。

1・・・妥当ではない

第三者所有物没収事件において判例(最大判昭37.11.28)によると、「所有者に対して事前に告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有物を没収することは、憲法31条に反する」としてします

ここでいう所有物を没収する前に「所有者に対して事前に告知、弁解、防禦の機会を与えること」が「手続的保障」です。

つまり、この手続的保障がないままに第三者の所有物が没収された場合、そのことを理由に、手続の違憲性を主張することはできるので、本肢は妥当ではないです。

2.憲法は被疑者に対して弁護人に依頼する権利を保障するが、被疑者が弁護人と接見する機会の保障は捜査権の行使との間で合理的な調整に服さざるを得ないので、憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。

2・・・妥当ではない

まず、本肢は、憲法34条の内容と関連するのですが、そもそも私たちが身柄の拘束を受ける場合、「なぜ抑留・拘禁されなければならなのか?」という理由が示されなければならないとされています。また、弁護人を依頼する権利が与えられます。
これを前提知識として、下記判例をご覧ください。

【最大判平11.3.24】

憲法34条前段は、「何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。」と定める。
この弁護人に依頼する権利は、身体の拘束を受けている被疑者が、拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり、人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。
したがって、右規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているものと解すべきである。

そして、「接見交通の機会」とは、刑事事件の被疑者・被告人として身柄拘束を受けている者が、弁護士等と面談する(接見)する機会、物品を受領する(交通)機会という意味です。

上記の通り、「弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障している」という部分から、「接見交通の機会も実質的に保障しています」。

よって、本肢は「接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。」という部分が妥当でないです。

3.審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。

3・・・妥当ではない

下記判例は、「公判が、特段の理由なく15年以上にわたって中断されていた」場合の判例です。

【判例(最大判昭47.12.20:高田事件)】憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する。

つまり、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であれば、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなくても、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることができます。

よって、妥当ではないです。

4.不利益供述の強要の禁止に関する憲法の保障は、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶ。

4・・・妥当

「不利益供述の強要の禁止」は、憲法38条1項「何人も、自己に不利益な供述を強制されない」という規定の内容です。
わかりやすくいうと、誰でも黙秘権があり、供述を強要することは禁止だということです。

上記規定は「刑事手続」について規定していますが、判例では、「それ以外(行政手続)」にも及ぶとしています。

それが、下記判例(最大判昭47.11.22:川崎民商事件)です。

憲法38条1項の法意が、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解すべきことは、当裁判所大法廷の判例とするところであるが、右規定による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続(行政手続)においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする。

5.不正な方法で課税を免れた行為について、これを犯罪として刑罰を科すだけでなく、追徴税(加算税)を併科することは、刑罰と追徴税の目的の違いを考慮したとしても、実質的な二重処罰にあたり許されない。

5・・・妥当ではない

結論からいうと「刑罰(罰金)」と「追徴税(加算税)」は、二重処罰に当たらないので許されているため、本肢は妥当ではないです。

【判例(最大判昭33.4.30)】
法人税法43条の追徴税は、単に過少申告・不申告による納税義務違反の事実があれば、同条所定の已むを得ない事由のない限り、その違反の法人に対し課せられるものであり、これによつて、過少申告・不申告による納税義務違反の発生を防止し、以つて納税の実を挙げんとする趣旨に出でた行政上の措置であると解すべきである。
法が追徴税を行政機関の行政手続により租税の形式により課すべきものとしたことは追徴税を課せらるべき納税義務違反者の行為を犯罪とし、これに対する刑罰として、これを課する趣旨でないこと明らかである。追徴税のかような性質にかんがみれば、憲法39条の規定は刑罰たる罰金と追徴税とを併科することを禁止す
る趣旨を含むものでないと解するのが相当である

わかりやすくいうと、
「脱税に対する刑罰は、反社会性・反道徳性に対する制裁」であるのに対して、「追徴税(加算税)は、納税義務違反を防止するための行政上の措置」です。
両者は性質が異なるから二重処罰の禁止に当たらない、ということです。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問34|民法

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 未成年者が他人に損害を加えた場合、道徳上の是非善悪を判断できるだけの能力があるときは、当該未成年者は、損害賠償の責任を負う。
  2. 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、過失によって一時的にその状態を招いたとしても、損害賠償の責任を負わない。
  3. 野生の熊が襲ってきたので自己の身を守るために他人の宅地に飛び込み板塀を壊した者には、正当防衛が成立する。
  4. 路上でナイフを振り回して襲ってきた暴漢から自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ者には、緊急避難が成立する。
  5. 路上でナイフを持った暴漢に襲われた者が自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ場合、窓を壊された被害者は、窓を割った者に対して損害賠償を請求できないが、当該暴漢に対しては損害賠償を請求できる。

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【答え】:5

【解説】

1.未成年者が他人に損害を加えた場合、道徳上の是非善悪を判断できるだけの能力があるときは、当該未成年者は、損害賠償の責任を負う。

1・・・妥当ではない

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負いません(民法712条:責任能力)。

ここで「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」とは、道徳上不正の行為たることを弁識する知能の意にあらず加害行為の法律上の責任を弁識するに足るべき知能を指すものと解するを相当とする(大判大6.4.30)」としている。

イメージとしては、おおよそ12歳から13歳以上であれば責任能力ありと考えられています。

【判例理解】

「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」とは、「道徳上の是非善悪を判断できる能力」という意味ではなく、「加害行為の法律上の責任を判断できる能力」を指します。

つまり、民法712条の内容は、「道徳上の是非善悪を判断できるだけの能力の有無に関わらず」、加害者が「その行為の法律上の責任を理解できる程度の知能」を有していれば、法的責任を負うという内容です。

■「道徳上の是非善悪を判断できる能力」と言うのは、12歳よりも小さい子供も有します。

具体的に何歳というのはないですが、幼稚園児でも、やっていいこと、悪いことは分かるようになるのでそれくらいの子供も有すると考えられます。

2.精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、過失によって一時的にその状態を招いたとしても、損害賠償の責任を負わない。

2・・・妥当ではない

精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、原則、損害賠償責任を負いません(民法713条本文)。

ただし例外として、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、損害賠償責任を負います(民法713条ただし書き)。

よって、本肢は、「過失によって一時的にその状態を招いた場合、損害賠償の責任を負う」ので妥当ではありません。

例えば、お酒の飲みすぎによって、酩酊状態となり、他人に損害を加えた場合、損害賠償責任を負うことになります。

3.野生の熊が襲ってきたので自己の身を守るために他人の宅地に飛び込み板塀を壊した者には、正当防衛が成立する。

3・・・妥当ではない

本肢は、「正当防衛」ではなく、「緊急避難」です。

【正当防衛】

他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負いません(民法720条1項)。

これが「正当防衛」です。

例えば、Aは、通りすがり人Bに、ナイフで襲われそうになり、自分の身を守るために、持っていたバックでBの顔を殴った際に、Bが負傷した。この場合、Bに対してやむを得ずした反撃が「正当防衛」です。

この場合、Aは損害賠償責任を負いません。

【緊急避難】

緊急避難について、民法720条2項は「他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合」に損害賠償責任が否定されると規定しています。

この場合の「他人の物から生じた危難」とは、例として他人宅の倒壊しそうな塀(=危険源が他人の物である)などが想定されます。

今回は「野生の熊」という第三の存在(自然災害や動物など、他人の物以外)が生じさせた危難から逃れるために他人の物を損壊しています。この場合、危難の発生源が「他人の物」ではないため、720条2項の緊急避難は成立しません。

結論:
この設問文の内容は妥当ではありません。
なぜなら、民法720条2項の要件を満たさず、正当防衛も適応されない状況だからです。

この場合、やむを得ず他人の物を損壊しても民法上の損害賠償責任は免除されません。

【正当防衛と緊急避難の違い】

正当防衛は、他人の不法な侵害に対する反撃や防御を対象とします。
一方、緊急避難は、自然災害や事故などの緊急の危険から自身や他者を守るための行為を対象とします。

4.路上でナイフを振り回して襲ってきた暴漢から自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ者には、緊急避難が成立する。

4・・・妥当ではない

本肢は、選択肢3の解説の通り「正当防衛」となります。

なぜなら、他人の不法行為(路上でナイフを振り回して襲ってきた)に対し、「自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益(自己の身)」を防衛するため、やむを得ず加害行為をした(人の家の窓を割った)ので、「正当防衛」にあたります。

5.路上でナイフを持った暴漢に襲われた者が自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ場合、窓を壊された被害者は、窓を割った者に対して損害賠償を請求できないが、当該暴漢に対しては損害賠償を請求できる。

5・・・妥当

正当防衛や緊急避難による被害者(損害を受けた者)は、不法行為をした者に対して損害賠償の請求をすることはできます(民法720条1項ただし書き、2項)。

したがって、「窓を壊された被害者」は、「暴漢」に対して損害賠償請求ができます。

一方、「窓を割った者(暴漢に襲われた者)」に対しては、損害賠償請求ができません。
これは、選択肢3の「民法720条1項本文」の内容でもあります。

よって、妥当です。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問4|憲法

薬局を営むXは、インターネットを介した医薬品の通信販売を始めたが、法律は一定の種類の医薬品の販売については、薬剤師が対面で情報の提供および薬学的知見に基づく指導を行うことを求めている。そこでXは、この法律の規定が違憲であり、この種の医薬品についてもネットで販売する権利が自らにあることを主張して出訴した。この問題に関する最高裁判所の判決の趣旨として、妥当なものはどれか。

  1. 憲法22条1項が保障するのは職業選択の自由のみであるが、職業活動の内容や態様に関する自由もまた、この規定の精神に照らして十分尊重に値する。後者に対する制約は、公共の福祉のために必要かつ合理的なものであることを要する。
  2. 規制の合憲性を判断する際に問題となる種々の考慮要素を比較考量するのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、規制措置の内容や必要性・合理性については、立法府の判断が合理的裁量の範囲にとどまる限り、裁判所はこれを尊重する。
  3. 本件規制は、専らインターネットを介して販売を行う事業者にとっては職業選択の自由そのものに対する制限を意味するため、許可制の場合と同様にその必要性・合理性が厳格に審査されなければならない。
  4. 本件規制は、国民の生命および健康に対する危険の防止という消極目的ないし警察目的のための規制措置であり、この場合は積極目的の場合と異なり、基本的人権への制約がより小さい他の手段では立法目的を達成できないことを要する。
  5. 本件規制は、積極的な社会経済政策の一環として、社会経済の調和的発展を目的に設けられたものであり、この種の規制措置については、裁判所は立法府の政策的、技術的な裁量を尊重することを原則とする。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】本問題は、下記判例(最判令和3.3.18)の内容です。

憲法22条1項は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由も保障しているところ、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため、その同項適合性を一律に論ずることはできず、その適合性は、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。要指導医薬品について薬剤師の対面による販売又は授与を義務付ける本件各規定は、職業選択の自由そのものに制限を加えるものであるとはいえず、職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまるものであることはもとより、その制限の程度が大きいということもできない。本件各規定による規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度に照らすと、本件各規定による規制に必要性と合理性があるとした判断が、立法府の合理的裁量の範囲を超えるものであるということはできない。

したがって、本件各規定が憲法22条1項に違反するものということはできない。

1.憲法22条1項が保障するのは職業選択の自由のみであるが、職業活動の内容や態様に関する自由もまた、この規定の精神に照らして十分尊重に値する。後者に対する制約は、公共の福祉のために必要かつ合理的なものであることを要する。

1・・・妥当ではない

判例では「憲法22条1項は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由も保障している」と言っています。

つまり、「憲法22条1項が保障するのは職業選択の自由のみであるが、職業活動の内容や態様に関する自由もまた、この規定の精神に照らして十分尊重に値する。」という本肢は妥当ではありません。

また、「後者に対する制約は、公共の福祉のために必要かつ合理的なものであることを要する。」とも言っていません。

「職業の自由に対する規制措置(制約)は、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。」という風に比較考量して判断します。

2.規制の合憲性を判断する際に問題となる種々の考慮要素を比較考量するのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、規制措置の内容や必要性・合理性については、立法府の判断が合理的裁量の範囲にとどまる限り、裁判所はこれを尊重する。

2・・・妥当

【判例(最大判昭50.4.30、最判令3.3.18)】

職業選択の自由に対する規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。
この場合、右のような検討と考量をするのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである

本肢は上記部分の内容なので、妥当です。

3.本件規制は、専らインターネットを介して販売を行う事業者にとっては職業選択の自由そのものに対する制限を意味するため、許可制の場合と同様にその必要性・合理性が厳格に審査されなければならない。

3・・・妥当ではない

【判例(最判令3.3.18)】

要指導医薬品について薬剤師の対面による販売又は授与を義務付ける本件各規定は、職業選択の自由そのものに制限を加えるものであるとはいえず、職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまるものであることはもとより、その制限の程度が大きいということもできない。

本件規制とは、「要指導医薬品について薬剤師の対面による販売又は授与を義務付ける」を指します。
そして、判例では、「本件規制は、職業選択の自由そのものに制限を加えるものであるとはいえない」といっているので、本肢の「件規制は、専らインターネットを介して販売を行う事業者にとっては職業選択の自由そのものに対する制限を意味する」というのは、妥当ではないです。

4.本件規制は、国民の生命および健康に対する危険の防止という消極目的ないし警察目的のための規制措置であり、この場合は積極目的の場合と異なり、基本的人権への制約がより小さい他の手段では立法目的を達成できないことを要する。

4・・・妥当ではない

本肢の内容は、薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)の内容で、
「規制をするためには、基本的人権への制約がより小さい他の手段では立法目的を達成できないことが要件」と言っています。

一方、本問の判例では、
「規制(本件規制)の適合性は、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。」
と言っています。

よって、妥当ではないです。

【薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)の詳細解説】

職業選択の自由、営業の自由といっても、誰でも薬を販売できたり、また、その方法についても自由というわけではないように、「公共の福祉による規制」を受けます。そして、その規制(制限)には、規制目的に応じて、2つの規制があります。

消極目的規制
危険の除去・安全の保護といった消極目的を主眼とする規制
積極目的規制
社会政策的に弱者・少数者等を保護するなどの積極目的を主眼とする規制

「積極目的規制」と「消極目的規制」の審査基準を比べると、
「消極目的規制」の方が「厳しい審査基準」となります。

5.本件規制は、積極的な社会経済政策の一環として、社会経済の調和的発展を目的に設けられたものであり、この種の規制措置については、裁判所は立法府の政策的、技術的な裁量を尊重することを原則とする。

5・・・妥当ではない

本問の内容は、「小売市場距離制限事件(最大判昭47.11.22)の内容です。

よって、妥当ではありません。

「積極的な社会経済政策の一環として、社会経済の調和的発展を目的に設けられたもの」というのが「小売市場の許可規制」です。

「小売市場の許可規制」とは、「小売市場を設置するために、許可が必要」という規制です。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問33|民法

法定利率に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。
  2. 利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動したときは、当該消費貸借の利息に適用される法定利率も一緒に変動する。
  3. 利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。
  4. 不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。
  5. 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。

1・・・妥当

利息について定めをして、利率について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点(金銭を受け取った日)における「法定利率」になります(民法404条1項)。

ただし、この法定利率は、3年ごとに見直しがされ(民法404条3項)、見直し時期は「令和5年4月1日、令和8年4月1日、令和11年4月1日・・・」となります。

令和5年1月1日時点では、法定利率は「3%」です(民法404条2項)。

2.利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動したときは、当該消費貸借の利息に適用される法定利率も一緒に変動する。

2・・・妥当ではない

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率によります(民法404条1項)。

したがって、利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動があったとしても、当該債権に適用される利率は変動しません。

例えば、法定利率が3%の時点でお金を貸して、その後、法定利率が5%になったとしても、当該貸金債権の利率は3%のままということです。

3.利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。

3・・・妥当

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率となります。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率となります(民法419条1項)。

つまり、利息の約定利率が法定利率を超えないとき(低かったとき)は、損害賠償の額(遅延損害の額)は「法定利率」となります。

よって、妥当です。

4.不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。

4・・・妥当

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率となります(民法419条1項本文)。

そして、不法行為に基づく損害賠償請求権について、履行遅滞(債務不履行)となる時期(起算点)は、「不法行為があった時」です(最判昭37.9.4)。

つまり、不法行為があった瞬間から、加害者は損害賠償金を支払う義務を負い、その瞬間から遅延損害金が発生していることになります。
(実際は、損害額や治療費等をそのまま払えば済む場合が多いです。)

上記をまとめると、

不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定めることになるので、本肢は、妥当です。

5.将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

5・・・妥当

将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする(民法417条の2第1項)。

【「中間利息の控除」とは?】 

本来は将来受け取るべきお金(損害賠償金)を前払いしてもらう場合、前払いしてもらっていることにより、それに利息が付きます。
そのため、その利息分は、過剰に賠償してもらっていることになるので、その分は差し引くことを言います。

【具体例】 

交通事故で後遺症を負い、労働能力が喪失したことによって将来得られたはずの収入の全部を得られなくなることがあります。

この得られなくなった収入分を「逸失利益」といい、労働者の平均収入や平均就労年数等から金額を計算して、損害賠償請求することができます。

この時、計算した金額をそのまま受け取ると、もらい過ぎになります。

なぜなら、逸失利益は「将来の収入」であり、本来、将来受け取るべきお金です。

それを、前払いしてもらうことにより、そのお金は、毎月利息がついて増え続けます。

結果として、損害額以上に利益を生じることになります。

そこで、公平のため「中間利息控除」によって将来にわたって発生するはずの利息分を差し引いて、逸失利益の減額をします。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問3|憲法

表現の自由に関する次の判断基準が想定している事例として、妥当なものはどれか。

公共の利害に関する事項について自由に批判、論評を行うことは、もとより表現の自由の行使として尊重されるべきものであり、その対象が公務員の地位における行動である場合には、右批判等により当該公務員の社会的評価が低下することがあっても、その目的が専ら公益を図るものであり、かつ、その前提としている事実が主要な点において真実であることの証明があったときは、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り、名誉侵害の不法行為の違法性を欠くものというべきである。

(最一小判平成元年12月21日民集43巻12号2252頁)

  1. XはA駅の構内で、駅員の許諾を受けず、また退去要求を無視して、乗降客や通行人に対してB市の施策を批判する演説を行ったところ、不退去などを理由に起訴された。
  2. Yは雑誌上で、宗教法人X1の会長X2に関する事実を批判的に報道したところ、X1・X2の名誉を毀損したとして訴訟になった。
  3. 作家Yは自らが執筆した小説にXをモデルとした人物を登場させ、この際にXが不特定多数への公開を望まない私生活上の事実を描いたため、Xが出版差止めを求めて出訴した。
  4. 新聞記者Xは取材の過程で公務員Aに接近して親密になり、外交交渉に関する国の機密情報を聞き出したところ、機密漏洩をそそのかしたとして起訴された。
  5. A市の公立小学校で成績の評価方法をめぐる対立が生じ、市民Yが教員Xを厳しく批判するビラを配布したところ、XがYに対して損害賠償と謝罪広告を求めて出訴した。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

(※)公共の利害に関する事項について自由に批判、論評を行うことは、もとより表現の自由の行使として尊重されるべきものであり、その対象が公務員の地位における行動である場合には、右批判等により当該公務員の社会的評価が低下することがあっても、その目的が専ら公益を図るものであり、かつ、その前提としている事実が主要な点において真実であることの証明があったときは、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り、名誉侵害の不法行為の違法性を欠くものというべきである。

上記文章は、「公務員の地位における行動について批判・論評を行う行為が、名誉侵害の不法行為に当たらないのは、目的が専ら公益を図るものであるなどを証明するなど一定要件を満たした場合」と言っています。

1.XはA駅の構内で、駅員の許諾を受けず、また退去要求を無視して、乗降客や通行人に対してB市の施策を批判する演説を行ったところ、不退去などを理由に起訴された。

1・・・妥当ではない

本肢は、「Xは、B市の施策を批判する演説を行ったところ、不退去などを理由に起訴された」と書いてあります。「B市の施策を批判」しているのであって、「公務員の地位における行動について批判」しているわけではありません。

よって、本肢は「上記(※)の判断基準が想定している事例」と言えないので妥当ではないです。

2.Yは雑誌上で、宗教法人X1の会長X2に関する事実を批判的に報道したところ、X1・X2の名誉を毀損したとして訴訟になった。

2・・・妥当ではない

本肢は、「Yは雑誌上で、宗教法人X1の会長X2に関する事実を批判的に報道した」と書いてあります。
つまり、「宗教法人X1の会長X2に関する事実を批判」しているのであって、「公務員の地位における行動について批判」しているわけではありません。

よって、本肢は「上記(※)の判断基準が想定している事例」と言えないので妥当ではないです。

3.作家Yは自らが執筆した小説にXをモデルとした人物を登場させ、この際にXが不特定多数への公開を望まない私生活上の事実を描いたため、Xが出版差止めを求めて出訴した。

3・・・妥当ではない

問題文(※)は、「公務員の地位における行動について批判・論評を行う行為が、名誉侵害の不法行為に当たらないのは、目的が専ら公益を図るものであるなどを証明するなど一定要件を満たした場合」と言っています。

もっと分かりやすく言えば、
「公務員の行動について批判・論評を行う行為が、不法行為に当たらない場合」に関する記述です。

本肢は「作家Yの行為について、プライバシー侵害(不法行為)に当たるかどうか」の話です。
「公務員の行動について批判・論評を行う行為」ではないので、「上記(※)の判断基準が想定している事例」と言えないです。

よって、妥当ではないです。

4.新聞記者Xは取材の過程で公務員Aに接近して親密になり、外交交渉に関する国の機密情報を聞き出したところ、機密漏洩をそそのかしたとして起訴された。

4・・・妥当ではない

新聞記者Xが、公務員Aをそそのかしたことで起訴された内容(国家公務員法111条における秘密漏示そそのかし罪)です。

つまり、「上記(※)の判断基準が想定している事例」とは内容が異なります。

問題文(※)は、「公務員の地位における行動について批判・論評を行う行為が、名誉侵害の不法行為に当たらないのは、目的が専ら公益を図るものであるなどを証明するなど一定要件を満たした場合」と言っています。

もっと分かりやすく言えば、
「公務員の行動について批判・論評を行う行為が、不法行為に当たらない場合」に関する記述です。

本肢は、「新聞記者Xのそそのかし行為が、国家公務員法111条における秘密漏示そそのかし罪に当たる」として起訴されているので、内容が異なります。

5.A市の公立小学校で成績の評価方法をめぐる対立が生じ、市民Yが教員Xを厳しく批判するビラを配布したところ、XがYに対して損害賠償と謝罪広告を求めて出訴した。

5・・・妥当

「市民Yが教員Xを厳しく批判するビラを配布した」というのは、「公務員の行動について批判・論評を行う行為」です。

これについて、「教員Xが市民Yに対して損害賠償と謝罪広告を求めて出訴している」ので、
本問の(※)の事例として適切です。

本肢の「市民Yが教員Xを厳しく批判するビラを配布した」行為について、教員Xが市民Yに対して損害賠償と謝罪広告を求めて出訴した結果として、裁判所が「名誉侵害の不法行為」に当たらないのは、目的が専ら公益を図るものであるなどを証明するなど一定要件を満たした場合と判断を下しています。

そのため、本肢の事案に対する判断基準として、(※)は適切なので、本肢は、表現の自由に関する判断基準が想定している事例として妥当です。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問32|民法

Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。この場合についての次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、AとCとの合意により、Cに移転させることができる。
  2. 甲建物の譲渡によるCへの賃貸人たる地位の移転は、甲建物についてAからCへの所有権移転登記をしなければ、Bに対抗することができない。
  3. AとCが甲建物の賃貸人たる地位をAに留保する旨の合意および甲建物をCがAに賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位はCに移転しない。
  4. 賃貸人たる地位がCに移転した場合、Bは、Cの承諾を得なければ、甲建物の賃借権を譲り渡すことはできないが、甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。
  5. 賃貸人たる地位がCに移転した場合、敷金の返還に係る債務はCに承継され、Cが、Bに対し、その債務を負う。

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

1.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、AとCとの合意により、Cに移転させることができる。

1・・・正しい

賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転します(民法605条の2第1項)。

建物の賃貸借の場合「引渡し」又は「賃借権の登記」により対抗要件を備えます(民法605条、借地借家法31条)。

そして、本肢の場合、Bは甲建物の引渡しを受けているため、賃貸借の対抗要件(対抗力)を備えています。

したがって、甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、Cに移転します。

2.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

甲建物の譲渡によるCへの賃貸人たる地位の移転は、甲建物についてAからCへの所有権移転登記をしなければ、Bに対抗することができない。

2・・・正しい

賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができません(民法605条の2第3項)。

よって、本肢は正しいです。

つまり、新賃貸人Cは、移転登記をすることで、賃借人に対して、賃料を請求することができるようになります。

3.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

AとCが甲建物の賃貸人たる地位をAに留保する旨の合意および甲建物をCがAに賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位はCに移転しない。

3・・・正しい

不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しません(民法605条の2第2項前段)。

つまり、AC間で「賃貸人は引き続きAのままにしましょう!」と合意した場合、賃貸人は、「建物の新所有者C」ではなく、そのままAとなります。

4.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

賃貸人たる地位がCに移転した場合、Bは、Cの承諾を得なければ、甲建物の賃借権を譲り渡すことはできないが、甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。

4・・・誤り

賃借人Bは、賃貸人Cの承諾を得なければ、「その賃借権を譲り渡し」、又は「賃借物を転貸すること」ができません(民法612条1項)。

よって、本肢は「甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。」と言う部分が誤りです。

正しくは「甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要する」です。

※ 賃借人が賃貸人の承諾を得ず第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができます(民法612条2項)。

ただし、背信的行為と認められない場合は、解除できません(最判昭31.5.8)。

5.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

賃貸人たる地位がCに移転した場合、敷金の返還に係る債務はCに承継され、Cが、Bに対し、その債務を負う。

5・・・正しい

賃貸人たる地位が譲受人C又はその承継人に移転したときは、費用の償還に係る債務及び敷金の返還に係る債務は、譲受人C又はその承継人が承継します(民法605条の2第4項)。

よって、敷金の返還に係る債務は新賃貸人C(譲受人)に承継され、Cが、Bに対し、その債務を負います。

したがって、本肢は正しいです。

※ 旧賃貸人Aに差し入れられた敷金は、未払賃料債務があれば、当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人Cに承継されます(最判昭44.7.17)。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問2|基礎法学

法律用語に関する次のア~オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.「法律要件」とは、法律効果を生じさせる原因となる客観的な事実のことであり、意思表示などの主観的な要素は、これには含まれない。

イ.「法律効果」とは、法律上の権利義務関係の変動(発生、変更または消滅)のことをいう。

ウ.「構成要件」とは、犯罪行為を特徴付ける定型的な外形的事実のことであり、故意などの主観的な要素は、これには含まれない。

エ.「立法事実」とは、法律を制定する場合において、当該立法の合理性を根拠付ける社会的、経済的、政治的または科学的事実のことをいう。

オ.「要件事実」とは、法律要件に該当する具体的な事実のことをいう。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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【答え】:1(ア・ウが妥当ではない)

【解説】

ア.「法律要件」とは、法律効果を生じさせる原因となる客観的な事実のことであり、意思表示などの主観的な要素は、これには含まれない。

ア・・・妥当ではない

「法律要件」とは、法律効果を生じさせる原因となる客観的な事実のことです。
したがって、この点は妥当です。

そして、本肢は「意思表示などの主観的な要素は、これには含まれない。」という点が妥当ではありません。

例えば、売買契約における「売ります」「買います」という意思表示は、売買契約の法律効果を生じさせる原因となります(民法522条1項)。

よって、妥当ではないです。

【具体例】 
例えば、民法90条には「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は,無効とする。」とあります。

「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為(公序良俗に反する法律行為)」をすれば(=法律要件を満たせば)、
法律効果としては「無効」となる、ということです。

具体的には、配偶者がいる者が、「愛人になってくれたら100万円をあげる」という契約です。
これは、「公序良俗に反する法律行為」です。
つまり、民法90条の法律要件を満たすことになります。
よって、無効となります。

イ.「法律効果」とは、法律上の権利義務関係の変動(発生、変更または消滅)のことをいう。

イ・・・妥当

「法律効果」とは、法律上の権利義務関係の変動(発生、変更または消滅)のことを言います。

よって、妥当です。

例えば、売買契約における「売ります」「買います」という意思表示は、売買契約の法律効果を生じさせる原因となり(民法522条1項)、
結果として、所有権が、売主から買主に移転します。
つまり、法律上の権利が変動しています。

ウ.「構成要件」とは、犯罪行為を特徴付ける定型的な外形的事実のことであり、故意などの主観的な要素は、これには含まれない。

ウ・・・妥当ではない

構成要件とは、犯罪が成立するための原則的な要件です。

例えば、刑法235条の窃盗罪は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の拘禁又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
この「他人の財物を窃取した」が構成要件になります。

そして、本肢は「故意などの主観的な要素は、これには含まれない」が妥当ではないです。

「罪を犯す意思がない行為は、罰しない(刑法38条1項本文)」と規定しており、「故意」といった主観的要素も、構成要件に含まれることが分かります。

例えば、刑法246条の詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁に処する。」と規定していますが、これは、故意が無ければ成立しない犯罪です。

エ.「立法事実」とは、法律を制定する場合において、当該立法の合理性を根拠付ける社会的、経済的、政治的または科学的事実のことをいう。

エ・・・妥当

立法事実とは、法律(条例等も含む)の目的と手段を基礎付ける社会的な事実(データ、市民の意識などを含みます)をいいます。

例えば、「住宅セーフティネット法」という法律が制定された背景としては下記があり、これが「立法事実」です。

高齢者、障害者、子育て世帯等の住宅の確保に配慮が必要な方が今後も増加する見込み
住宅セーフティネットの根幹である公営住宅については大幅な増加が見込めない
一方で、民間の空き家・空き室は増加している

これらに基づいて

「高齢者、障害者、子育て世帯等の入居を拒まない賃貸住宅」については、国が経済的支援をして、高齢者、障害者、子育て世帯等の入居後押しする法律が「住宅セーフティネット法」です。

オ.「要件事実」とは、法律要件に該当する具体的な事実のことをいう。

オ・・・妥当

「要件事実」とは、一定の法律効果が発生するために必要な具体的事実をいいます。

例えば、「弁済した」という事実によって、債務が消滅するという法律効果が生じます。
この場合、「弁済した行為」が要件事実です。

そして、法律効果を発生させるためには、一定の要件を満たす必要があります。
その要件が「法律要件」です。

上記でいえば、弁済によって、債務が消滅するという法律効果が発生するので,
「弁済」が法律要件です。

つまり、法律要件に該当する具体的な事実は「弁済をすること=例えば、借りたお金を返すこと」です。

よって、本肢は妥当です。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問31|民法

債務不履行を理由とする契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 債務者が債務の全部について履行を拒絶する意思を明確に示したとしても、債権者は、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がない場合でなければ、契約を解除することができない。
  2. 特定物の売買契約において、契約締結後に目的物が不可抗力によって滅失した場合、買主は、履行不能を理由として契約を解除することができない。
  3. 建物賃貸借契約において、賃借人の用法違反が著しい背信行為にあたり、契約関係の継続が困難となるに至った場合であっても、賃貸人は相当の期間を定めて賃借人に利用態様を改めるよう催告をし、その期間が経過しても賃借人が態度を改めようとしない場合でなければ、賃貸人は、当該契約を解除することができない。
  4. 売買契約に基づいて目的物が引き渡された後に契約が解除された場合、買主が売主に対して負うべき原状回復義務には、目的物の返還に加えて、それまでに生じた目的物に関する使用利益の返還も含まれるが、当該契約が他人物売買であったときは、買主は売主に対して使用利益の返還義務を負わない。
  5. 売買契約において、買主が代金の一部の支払を遅滞した場合、売主が相当の期問を定めてその支払の催告をし、その期間内に買主が代金を完済しなかったとしても、その時点における代金額の不足が軽微であるときは、売主の売買契約の解除が制限されることがある。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.債務者が債務の全部について履行を拒絶する意思を明確に示したとしても、債権者は、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がない場合でなければ、契約を解除することができない。

1・・・妥当でない

債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます(民法542条1項2号:無催告解除)。

よって、本肢は「催告をした上で、履行がない場合でなければ解除できない」となっているので妥当ではありません。

無催告解除ができる場合】

履行不能の場合
建物の売買契約成立後、引渡し前に建物が火災で滅失した場合
債務者が債務の全部の履行を拒絶している場合
土地の売買契約締結後、売主が「土地を引渡しません!」と拒絶している場合
「債務の一部が履行不能」または「債務者が債務の一部を履行拒絶すること」によって残存する部分のみでは契約の目的を達成できない場合
隣接する2つ土地の売買契約締結後、売主が「一つの土地は引渡しません!」と拒絶しており、他方の土地だけでは、希望の建物が建築できない場合
特定の日時・一定期間内に債務を履行をしないと目的を達成できない場合に、その時期が過ぎた場合
結婚式の宴会に有名人Aに歌を披露してもらう契約をして、結婚式当日にAがこれなくなった場合、結婚式が終わった後に来てもらっても意 味がないので、催告なしで解除できる
上記以外でも債務者が債務を履行せず、催告しても履行の見込みがないことが明らかな場合
建築請負契約を締結したにも関わらず、当該建築するための機材や人員が足らない場合(注文者が催告したとしても、請負人は建物を完成できる見込みがないから)
2.特定物の売買契約において、契約締結後に目的物が不可抗力によって滅失した場合、買主は、履行不能を理由として契約を解除することができない。

2・・・妥当でない

契約締結後に目的物が不可抗力によって滅失した場合、売主は、特定物の引渡しができなくなるので「履行不能」となります。

履行不能の場合、催告なく、直ちに契約解除ができます(民法542条1項1号)。

よって、本肢は妥当ではありません。

※履行不能となった原因は関係ないので、原因が「不可抗力」「債権者の過失」「債務者の過失」関係なく無催告で解除ができます。

ただし、債権者や債務者に過失があれば、損害賠償責任は負います。

3.建物賃貸借契約において、賃借人の用法違反が著しい背信行為にあたり、契約関係の継続が困難となるに至った場合であっても、賃貸人は相当の期間を定めて賃借人に利用態様を改めるよう催告をし、その期間が経過しても賃借人が態度を改めようとしない場合でなければ、賃貸人は、当該契約を解除することができない。

3・・・妥当でない

下記判例の通り、賃借人が賃借物を通常の利用方法と異なる方法で使い、背信行為(裏切り行為)と認められる場合、賃貸人は、催告することなく、直ちに契約を解除することができます。

よって、妥当ではありません。

【判例(最判昭27.4.25)】

賃貸借は、当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような(困難となるような)不信行為のあった場合には、相手方は、賃貸借を将来に向って、解除することができるものと解しなければならない、そうして、この場合には民法541条所定の催告は、これを必要としないものと解すべきである。

4.売買契約に基づいて目的物が引き渡された後に契約が解除された場合、買主が売主に対して負うべき原状回復義務には、目的物の返還に加えて、それまでに生じた目的物に関する使用利益の返還も含まれるが、当該契約が他人物売買であったときは、買主は売主に対して使用利益の返還義務を負わない。

4・・・妥当でない

本肢は最後の部分が妥当ではありません。

正しくは「買主は売主に対して使用利益の返還義務を負う」となります。

まず、当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負います。

そして、この場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実(利用利益)をも返還しなければなりません(民法545条1項本文、民法545条3項)。

さらに判例(最判昭51.2.13)では、「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負うものであり、この理(考え方)は、他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、契約が解除された場合についても同様であると解すべきである」と判示しています。

したがって、契約が他人物売買であったときは、買主は売主に対して使用利益の返還義務を負います。

5.売買契約において、買主が代金の一部の支払を遅滞した場合、売主が相当の期問を定めてその支払の催告をし、その期間内に買主が代金を完済しなかったとしても、その時点における代金額の不足が軽微であるときは、売主の売買契約の解除が制限されることがある。

5・・・妥当

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、原則、相手方は、契約の解除をすることができます。
ただし、例外として、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、契約解除はできません(民法541条)。

したがって、「代金額の不足」が「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微」であるときは、売主の売買契約の解除が制限される(契約解除ができない)ことがあることがあるので、妥当です。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問1|基礎法学

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ ]として力をもつ[ ウ ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。

(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)

  1. ア:少数意見 イ:判決理由 ウ:主文 エ:多数決
  2. ア:合議 イ:判例 ウ:多数意見 エ:全員一致
  3. ア:少数意見 イ:判例 ウ:多数意見 エ:全員一致
  4. ア:合議 イ:判決理由 ウ:主文 エ:多数決
  5. ア:少数意見 イ:判例 ウ:主文 エ:多数決

>解答と解説はこちら


【答え】:3(ア:少数意見、イ:判例、ウ:多数意見、エ:全員一致)

【解説】

ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア:少数意見 ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア:少数意見 ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ:判例 ]として力をもつ[ ウ:多数意見 ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ:全員一致 ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。

(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)

ア.ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。

ア・・・少数意見

「ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られる」
という部分から、ヨーロッパ大陸(例えば、イギリスやドイツ、フランス)では、裁判は合議制が採られています。
つまり、アに「合議」を入れたら、上記内容と矛盾します。

したがって、アには「少数意見」が入ります。

また、「[ ア ]制について、裁判所の権威を害するとされる。」
と書いてあります。

「少数意見制」とは、裁判官の少数意見についても尊重するという考え方に基づいています。
最高裁の判決は、「多数決の原則」により、多数派の意見が通るのですが、この少数意見を尊重しすぎると、結果として、裁判所の判断にブレが生じることになり、裁判所の権威を害することとなります。

ウ.[ イ ]として力をもつ[ ウ ]のみが一枚岩のように示されること

ウ・・・多数意見

ウの方が分かりやすいので、ウから考えます。
ウには「主文」か「多数意見」が入ります。

「一枚岩」とは、組織が、内部に分裂や対立を含まず、しっかりとまとまっていることを意味します。主文は、1つしかないので「一枚岩」にはならないです。このことから考えると、ウには、「主文」は入らないです。
多数意見」を入れれば、「多数意見のみが一枚岩のように示される」という事になります。

イ.[ イ ]として力をもつ[ ウ:多数意見 ]のみが一枚岩のように示されること

イ・・・判例

「判決理由としての力をもつ多数意見」なのか「判例としての力を持つ多数意見」なのかを考えると、「判例」が妥当です。

多数意見が、裁判所の判断(判例)となるからです。

最高裁判所は多数決で最終的な判断が下されます。

エ.[イ:判例]として力をもつ[ウ:多数意見]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

エ・・・全員一致

上記文章を言い換えていきます。

判例としての力を持つ多数意見のみが一枚岩にように示されることが裁判への信頼を生む。
しかし、
[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

判例として、1つの判断として示すことが裁判の信頼を生む。
しかし、
1つの判断として示して、他の意見を示さないことが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

「1つの判断として示して」=「外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとること」
となります。

よって、エには「全員一致」が入ります。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略