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平成24年・2012|問45|民法・記述式

改正民法に対応済

AがBに金銭を貸し付けるにあたり、書面により、Cが保証人(Bと連帯して債務を負担する連帯保証人ではない。)となり、また、Dが物上保証人としてD所有の土地に抵当権を設定しその旨の登記がなされた。弁済期を徒過したので、Aは、Bに弁済を求めたところ、Bは、「CまたはDに対して請求して欲しい」と応えて弁済を渋った。そこで、Aは、Dに対しては何らの請求や担保権実行手続をとることなく、Cに対してのみ弁済を請求した。この場合において、Cは、Aの請求に対し、どのようなことを証明すれば弁済を拒むことができるか。40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:Bに弁済する資力があり、かつ、その執行が容易であることを証明した場合、拒むことができる。(45字)

【解説】

問題文の状況を確認すると

  • AがBに金銭を貸し付けるにあたり、書面により、Cが普通保証人となった。
  • Dが物上保証人としてD所有の土地に抵当権を設定しその旨の登記がなされた。
  • 弁済期を徒過したので、Aは、Bに弁済を求めたところ、Bは、「CまたはDに対して請求して欲しい」と応えて弁済を渋った。
  • そこで、Aは、Dに対しては何らの請求や担保権実行手続をとることなく、普通保証人Cに対してのみ弁済を請求した。

この場合において、

普通保証人Cは、債権者Aの請求に対し、どのようなことを証明すれば弁済を拒むことができるか。

上記内容から、普通保証人の検索の抗弁権と分からないとダメです。

(民法453条:検索の抗弁権)
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であること証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

どのようなことを証明すべきか?

  1. Bに弁済する資力があること
  2. 執行が容易であること

この2つを証明すれば、債権者Aからの請求を拒むことができます・

よって、まとめると、

(普通保証人Cは、債権者Aの請求に対し、)
Bに弁済する資力があり、かつ、その執行が容易であることを証明した場合、拒むことができる。(45字)


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問11|行政手続法・申請に対する処分・不利益処分

行政手続法の定める申請に対する処分および不利益処分に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 行政手続法は、申請に対する処分の審査基準については、行政庁がこれを定めるよう努めるべきものとしているのに対し、不利益処分の処分基準については、行政庁がこれを定めなければならないものとしている。
  2. 行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、申請者から求めがあったときに限り当該処分の理由を示すべきものとされているのに対し、不利益処分をする場合には、処分を行う際に名宛人に対して必ず当該処分の理由を示すべきものとされている。
  3. 行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、弁明の機会の付与の手続を執らなければならないのに対し、不利益処分をする場合には、聴聞の手続を執らなければならない。
  4. 行政手続法は、申請に対する処分については、行政庁が標準処理期間を定めるよう努めるべきものとしているのに対し、不利益処分については、標準処理期間にかかわる規定を設けていない。
  5. 行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、公聴会を開催するよう努めるべきものとされているのに対し、不利益処分をする場合には、公聴会を開催しなければならないものとされている。

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

1.行政手続法は、申請に対する処分の審査基準については、行政庁がこれを定めるよう努めるべきものとしているのに対し、不利益処分の処分基準については、行政庁がこれを定めなければならないものとしている。
1・・・誤り
行政庁は、審査基準を定めるものとする(行政手続法5条1項)。一方、
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない(行政手続法12条1項)。
つまり、審査基準は必ず定めなければならない義務ですが
処分基準は、必ずしも定める必要はない努力義務です。

2.行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、申請者から求めがあったときに限り当該処分の理由を示すべきものとされているのに対し、不利益処分をする場合には、処分を行う際に名宛人に対して必ず当該処分の理由を示すべきものとされている。
2・・・誤り
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない(行政手続法8条1項本文)。
したがって、申請者の求めがなくても、拒否処分をする場合、理由を示す必要があるので誤りです。一方
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない(行政手続法14条1項本文)。
ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない(行政手続法14条1項ただし書)。
したがって、例外的に理由を示す必要がない場合もあるので「必ず」という記述は誤りです。

3.行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、弁明の機会の付与の手続を執らなければならないのに対し、不利益処分をする場合には、聴聞の手続を執らなければならない。
3・・・誤り
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、処分が与える不利益の程度に応じて、意見陳述(聴聞もしくは弁明の機会の付与)のための手続を執らなければなりません(行政手続法13条1項参照)。
そして、「申請を拒否する処分」は、「申請に対する処分」であり、「不利益処分」ではありません(行政手続法2条4号ロ)。
したがって、上記、意見陳述のための手続きは不要です。
よって、本肢の「行政庁が申請を拒否する処分をする場合に、弁明の機会の付与手続を執らなければならない」という記述は誤りです。また、「不利益処分」を行う場合、内容によって「聴聞」と「弁明の機会の付与」のどちらか一方を行うので、「聴聞の手続を執らなければならない」と限定している記述も誤りです。

4.行政手続法は、申請に対する処分については、行政庁が標準処理期間を定めるよう努めるべきものとしているのに対し、不利益処分については、標準処理期間にかかわる規定を設けていない。
4・・・正しい
行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません(行政手続法6条)。
これは「申請に対する処分」にかかる標準処理期間のルールです。
「不利益処分」にかかる、標準処理期間のルールは規定されていません。
したがって、本肢は正しいです。

5.行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、公聴会を開催するよう努めるべきものとされているのに対し、不利益処分をする場合には、公聴会を開催しなければならないものとされている。
5・・・誤り
行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければなりません(行政手続法10条)。
これは、「申請に対する処分」についてのルールで
「不利益処分」をする場合に「公聴会を開催しなければならない」という規定はないので、この点が誤りです。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

直接請求

直接請求とは、住民が、地方公共団体に直接、一定の行動を取るように請求することを言い、普通地方公共団体の議会の議員および長の選挙権を有する者が直接請求の権利を持っています。

つまり、外国人は直接請求できません。

上記の通り、直接請求は、住民が、代表者(議員)などを介さずに、地方公共団体の意思決定に直接参加することから直接民主制の一つである。

議会政治(議会で地方公共団体の意思決定を行うこと)は、住民が選挙で選んだ代表者(議員)に意思決定を委託し、間接的に政治参加することから、間接民主制代表民主制の一つです。

直接請求の種類

直接請求には、下記4つがあります。

  1. 条例制定・改廃請求
  2. 事務監査請求
  3. 議会解散請求
  4. 解職請求

あとで、細かく解説しますが、重要ポイントをまとめると下記の通りです。


条例制定・改廃請求

住民は、条例の制定、改正、廃止を請求することができます。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の50分の1以上の連署により、代表者からに対して、請求できます。

ただし、地方税の賦課徴収、分担金・使用料・手数料の徴収に関する条例については、制定・改廃請求できません

条例制定・改廃請求があったときは、長は、直ちに請求の要旨を公表しなければなりません。

そして、この請求を受領した日から20日以内に議会を招集し、意見を付けて議会に付議(過半数の同意で議決)し、その結果を代表者に通知するとともに、公表しなければなりません。


事務監査請求

住民は、「地方公共団体の事務執行」ならびに「長および各委員会・委員の権限に属する事務執行」について、監査委員に対し、監査請求ができます。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の50分の1以上の連署により、代表者から監査委員に対して、請求できます。

署名が有効の場合、監査委員はすぐに事務監査(特別監査に該当)を行います。

>>住民監査請求請求との違いはこちら

議会解散請求

住民は、都道府県議会や市町村議会を解散するよう請求できます。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の3分の1以上の連署により、代表者から選挙管理委員会に対して、請求できます。

議会の解散請求があった場合、選挙管理委員会は、直ちに請求の要旨を公表し、選挙人の投票に(住民投票)に付さなければなりません。

解散の投票で、過半数の同意があった時は、議会は解散することになります。

解職請求

住民は、「議員」「地方公共団体の長」「役員」の解職を請求できます。

この点については、それぞれ内容が異なるので分けて考えます。

議員の解職請求

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の3分の1以上(※1)の連署により、請求できます。

請求先は、その後、選挙が行われるので選挙管理委員会に請求します。

そして、住民投票により、過半数の同意で決し、過半数の同意があれば、議員は解職されます。

※1 有権者総数が40万人以下の場合は、3分の1の連署でよいが、
有権者総数が40万人超の場合は、署名数の要件が緩和されます。どれだけ緩和されるかは行政書士の試験では出題される可能性は低いので覚えなくても大丈夫です。

長の解職請求

長の解職請求は、議員の解職請求と同じです。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の3分の1以上(※1)の連署により、請求できます。

請求先は、その後、選挙が行われるので選挙管理委員会に請求します。

そして、住民投票により、過半数の同意で決し、過半数の同意があれば、議員は解職されます。

役員の解職請求

役員とは、①副知事・副市町村長、②指定都市の総合区長、③選挙管理委員、④監査委員、⑤公安委員会の委員を指します。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の3分の1以上(※1)の連署により、請求できます。

請求先は、任命権者である長(知事や市町村長)です。

役員の解職請求があったら、長は、直ちに請求の要旨を公表し、解職請求を議会に付議し、議会議員の3分の2以上の出席、かつ、その4分の3以上の者の同意により議決します。

可決されれば、その役員は役員の職を失います。

そして、長は、可決・否決の結果を解職請求の代表者および関係人に通知し、公表します。

地方公共団体の議会の運営の5つの原則

地方公共団体の議会の運営には下記5つの原則があります。

  1. 会議公開の原則
  2. 定足数の原則
  3. 多数決の原則
  4. 一事不再議の原則
  5. 会期不継続の原則

会議公開の原則

普通地方公共団体の議会の会議は、公開により行います。
ただし、議長または議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができます。

定足数の原則

普通地方公共団体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議自体開くことができません。

※定足数とは、会議で議事を進め議決するのに必要な最小限の人数です。

多数決の原則

普通地方公共団体の議会の議事は、原則、出席議員の過半数で決定し、可否同数(賛成も反対も同じ数)の場合は、議長が決します。

例外的に特別多数を要するものは下記の通りです。

議員の半数の出席とその3分の2以上の多数の同意
地方公共団体の事務所の位置決定又は変更に関する条例の制定
秘密会の開催
議員の失職、資格決定
条例の制定・改廃または予算に関する再議
条例で定める特に重要な公の施設の廃止、長期かつ独占的な利用をさせること
議員の3分の2の出席過半数の同意
地方公共団体の長に対する再度の不信任議決
議員の3分の2の出席とその4分の3の同意
役員の解職請求に対する同意
議員の除名
地方公共団体の長に対する最初の不信任議決

一事不再議の原則

一度議決された事項は、同一会期中に再度議決してはいけません(再議にかけてはいけない)。これを一事不再議の原則と言います。

会期不継続の原則

会期中に議決に至らなかった事件は、次の会期に継続しません。会期はそれぞれ独立しているということです。

国家賠償と損失補償の全体像

行政書士のここまでの勉強、行政不服審査法行政事件訴訟法と勉強してきました。これらは、争訟による救済制度です。もし、公権力の行使によって、金銭的に損害を受けた場合、行政不服審査法や行政事件訴訟法での救済だけでは不十分です。そのため、国家賠償や損失補償という制度があります。

そもそも、国家賠償法は、憲法17条を受けて制定されました。

憲法17条
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

一方、損失補償は、憲法29条3項で定めております。しかし、国家賠償法のように、一般法はなく、個別の法律で損失補償の規定がされています。ただし、たとえ、個別法に損失補償の規定がない場合も、上記憲法29条3項を根拠に(直接適用して)損失補償されることもあります。

憲法29条3項
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

国家賠償 違法行為による損害の賠償を求める制度
損失補償 適法行為ではあるもの損失を受けた場合に補償を求める制度

そして、国家賠償には、「国家賠償法1条による損害賠償責任」と「国家賠償法2条による損害賠償責任」があります。

1条 公権力の行使について、故意または過失により他人に損害を与えた場合(過失責任
2条 営造物の設置管理の瑕疵により他人に損害を与えた場合(無過失責任

<<行政事件訴訟法 | 国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任)>>

取消訴訟の原告適格

原告適格とは、取消訴訟を提起した者が「処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」であるかどうか?ということです。

処分の相手方は、もちろん取消訴訟を行えますが、「処分の相手方以外の第三者」についても、取消訴訟を行うことができます。この「処分の相手方以外の第三者」が法律上の利益を有していれば、原告適格の要件を満たします。

一方、「処分の相手方以外の第三者」が法律上の利益を有していないのであれば、原告適格の要件を満たさず、却下判決が下されます。

法律上の利益を有する者とは?

法律上の利益を有する者」とは、「処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されるおそれのある者」と判例では言っています。

そして、「法律上保護された利益」とは、行政法規(法令)で私人の個人的利益が保護されているものを言います。

反射的な利益をもつに過ぎない者は、「法律上保護された利益」を持つとは言えず、原告適格を有する者と認められません。

この点については、下記「主婦連ジュース不当表示事件」で詳しく解説します。

主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53.3.14)

商品の表示方法に問題があったとして、消費者(主婦連合会)が訴えたが、景表法はあくまでも一般的抽象的な「公益」を保護しているのであって、「個々人の具体的利益」を保護しているわけではありません。もちろん、公益保護を目的として商品の表示方法について制限を加えた結果、消費者も利益を受けることとなるが、それは、反射的利益でなので、「法律上保護された利益」とは言えないということです。

つまり、個別の法令で
公益利益のみを保護している場合、原告適格なし
個人の個別的利益も保護している場合、原告適格あり
ということです。

「最判昭53.3.14:主婦連ジュース事件」の詳細はこちら>>

原告適格を肯定した判例

  1. 公衆浴場法に基づく営業許可処分(最判昭37.1.19)
  2. 森林法に基づく保安林指定解除処分(最判昭57.9.9)
  3. 航空法に基づく定期航空運送事業免許処分(最判平元.2.17)
  4. 原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分(最判平4.9.22)
  5. 都市計画法29条に基づく開発許可処分(最判平9.1.28)
  6. 場外車券発売施設設置許可処分における「医療施設の開設者」(最判平21.10.15)

公衆浴場法に基づく営業許可処分(最判昭37.1.19)

公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要不可欠な公共性を伴う厚生施設です。
そして、公衆浴場の設立を業者の自由に委せて、濫立することにより、浴場経営に無用の競争を生じさせ
結果として「浴場の衛生設備の低下」等の影響をきたすことも考えられます。
公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、濫立を防止することが望まく、
公衆浴場法では、公衆浴場を設置する場合、都道府県知事等の許可を受ける必要があるとしています。
つまり、公衆浴場法では、①「国民保健及び環境衛生」という公共の福祉と、②既存業者の経営の不合理化を防止することを目的としているわけです。
したがって、既存業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護せられる法的利益と解するのが相当なので、既存業者は、原告適格の要件を満たします。
よって、ある業者に対する公衆浴場の営業許可処分に対して、既存の業者が営業許可の取消訴訟を提起することができます。

「最判昭37.1.19:公衆浴場既存経営者の原告適格」の詳細はこちら>>

森林法に基づく保安林指定解除処分(最判昭57.9.9)

森林法における保安林は、農業用水の確保や、洪水の予防・飲料水の確保を目的としたものです。そして、この保安林によって利益は、公益だけでなく、一定範囲の者の利益(個別的利益)も保護すべき利益と捉えています。
そのため、保安林が指定を解除されたことで、洪水の緩和や水不足の予防に関して直接影響を受ける一定範囲の地域住民は、森林法の「直接の利害関係を有する者」として、保安林の指定解除処分に関する取消訴訟の原告適格があります

航空法に基づく定期航空運送事業免許処分(最判平元.2.17)

定期航空運送事業の免許により、周辺住民は騒音被害を受けることになります。
そして、定期航空運送事業免許の審査において、航空機の騒音による障害の防止の観点から、
航空機の航行による騒音障害の有無及び程度も審査基準とされています。
これは、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、
「飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益」を周辺住民の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるので、騒音による障害が著しい程度に至った周辺住民については、原告適格があるとしています。

「最判平元.2.17:航空法に基づく定期航空運送事業免許処分」の詳細はこちら>>

原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分(最判平4.9.22)

原子炉等規制法は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきとあります。
つまり、原子炉の設置により重大な被害を受けることが想定される範囲の周辺住民について、原告適格を認めています。

「最判平4.9.22:原子炉設置許可処分と原告適格」の詳細はこちら>>

都市計画法29条に基づく開発許可処分(最判平9.1.28)

大規模な土地の工事を行う許可が開発許可です。そして、都市計画法33条1項7号は、この開発許可によって、がけ崩れなどによる被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の住民の生命、身体の安全等を、個々人の個別具体的な利益として保護する趣旨を含みます。
よって、近隣住民は、法律上の利益を有する者として、原告適格を認めています

場外車券発売施設設置許可処分における「医療施設の開設者」(最判平21.10.15)

位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきである。

したがって、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。

「最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分」の詳細はこちら>>

原告適格を否定した判例

  1. 主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53.3.14)
  2. 町名変更決定(最判昭48.1.19)
  3. 特急料金決定認可処分(最判平元.4.13)
  4. 場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民、事業者、医療施設の利用者(最判平21.10.15)

町名変更決定(最判昭48.1.19)

町名は、住民の日常生活にとって密接な関係を持つものであるが、利益・不利益は事実上のものであるにすぎず、「現在の町名をみだりに変更されない」という利益が法的に保障されているわけではないので、当該区域内の住民に原告適格は認められない

特急料金決定認可処分(最判平元.4.13)

地方鉄道法21条では、地方鉄道における運賃、料金の定め、変更につき監督官庁の認可を受けさせることとしているが、同条の趣旨は公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではなく、他に同条が当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することを目的として認可権の行使に制約を課していると解すべき根拠はない
そのため、地方鉄道の路線の周辺に居住し、通勤定期券を購入するなどして日常的に特急列車を利用している者であっても、特急料金の改定(値上げ)の認可処分について、その取消しを求める原告適格は認められない

「最判平元.4.13:特急料金改定の認可処分」の詳細はこちら>>

場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民、事業者、医療施設の利用者(最判平21.10.15)

自転車競技法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは、第一次的には、上記のような不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であって、原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。

したがって、場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者は、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。

「最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分」の詳細はこちら>>

<<取消訴訟の処分性 | 取消訴訟の訴えの利益(狭義)>>

取消訴訟の概要|原処分主義、裁決主義

取消訴訟の概要

取消訴訟は、行政庁の処分・裁決について、その全部または一部の取消しを求め、その処分・裁決の法的効力をさかのぼって消滅させる訴えを言います。

行政庁の処分や裁決は、国民の権利義務を一方的に変更する効力があります。この効力は、たとえ違法な処分や裁決であっても、取消しがあるまで、有効とされ(公定力という)、この効力を失わせるには、行政庁が自ら処分や裁決を取り消すか、裁判によって取消判決をもらうことが必要です。

※上記の通り、公定力があるが、行政庁の行った処分に瑕疵がある場合、その瑕疵が重大かつ明白であるときは、当該処分は無効初めから効力を生じない

そのため、国民の権利利益を保護するためにも、取消訴訟は、重要なものとなります。

そして、取消訴訟以外の抗告訴訟(無効確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴え)についても、取消訴訟のルールが適用されたりするため、取消訴訟のルールは基本的なルールとしてしっかり頭に入れましょう!

取消訴訟の分類

取消訴訟は、処分の取消しの訴え裁決の取消の訴えの2つがあります。

処分の取消しの訴え

処分の取消しの訴えは、行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟です。

自由選択主義

そして、違法な処分については、審査請求の申立てもできるし、審査請求をせずに処分の取消しの訴えの提起でもよいです。どちらを行ってもよいです。これを自由選択主義と言います。


審査請求前置主義

ただし、個別の法律に、「審査請求に対する裁決を経た後でなければ、処分の取消しの訴えを提起することができない」旨の定めがある場合、審査請求を先に行い、その裁決がなされた後でなければ訴えを提起することはできません。これを審査請求前置主義と言います。


裁決の取消しの訴え

裁決の取消しの訴えは、審査請求や再調査請求等の裁決や決定に対して、取消しを求める訴訟です。

そして、処分の違法を訴える場合、また裁決の違法を訴える場合、「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消の訴え」のどちらを行えることができるのか?

行政事件訴訟法では、原則、「原処分主義」を採用しています。

原処分主義

Aが、行政庁から「税金100万円の課税処分」を受けた。Aは、この処分を違法と思い、審査請求を行った。

しかし、審査請求の裁決についても、棄却裁決。

Aが最後の手段として、取消訴訟を行う場合、下記2つのいずれかを行う

処分の違法を主張するのであれば、「処分の取消訴訟」を提起し

裁決の違法を主張するのであれば、「裁決の取消訴訟」を提起しなさい!

ということです。

言い換えれば、処分の違法を主張するのに、裁決の取消訴訟は行えないということです。


裁決主義

裁決主義とは、「処分の違法を争う場合」も「裁決の違法を争う場合」も、「裁決の取消しの訴え」で行うことができるということです。

処分の取消しの訴えでは行うことができません。

<<行政事件訴訟法の概要 | 取消訴訟の訴訟要件>>

行政手続法21条:陳述書等の提出

上図をご覧ください。行政庁は、不利益処分を行う前に、①当事者に対して、聴聞の通知を行います。その後、②行政庁は、職員の中から主宰者(聴聞の運営を行う者)を指名します。また、③主宰者は必要に応じて、参加人の参加許可を行います。

そうすると、当事者と参加人は、聴聞に参加して、不利益処分に対して意見を主張する機会を得ます。そして、行政手続法21条では、聴聞に出席する代わりに、陳述書や証拠書類の提出を行って、自らの意見を主張する方法が認められています。

聴聞における陳述書とは?

陳述書とは、行政庁の不利益処分に対する「言い分や反論」を記載した書面を指します。

行政書士試験では、出題される可能性も高く、内容も易しいのでしっかり頭に入れておきましょう!

(陳述書等の提出)
第21条 当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
2 主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、前項の陳述書及び証拠書類等を示すことができる。

<<行政手続法20条:聴聞の期日における審理の方式 | 行政手続法22条:続行期日の指定>>

行政行為の「取消し」と「撤回」の違い

取消しと撤回の違い

行政行為の取消しは、行政行為の成立当初から瑕疵があり、その瑕疵を理由として、行政行為がなされた時にさかのぼって、その効力を失われることです。例えば、不正手段を使って行政書士の登録を受けた場合、行政庁が登録した(行政行為の)時点で、すでに瑕疵があると言えます。そのため、その後、不正手段を行政庁が知った場合、登録を取り消さなければなりません。これは「取消し」です。

一方、行政行為の撤回は、成立当時は瑕疵はなく、その後の瑕疵によって、将来に向かって効力を失わせることです。例えば、行政書士の登録は正当な手段で受けたが、その後、強盗を行い、懲役刑を受けた場合、登録消除処分の対象となります。この場合、当初の行政書士の登録に瑕疵はなかったが、その後、懲役刑を受けることが瑕疵が生じ、登録取り消しとなります。これを法律上「撤回」と言います。「取消し」という文言があっても「撤回」になるので注意しましょう。

原因 効力
取消し 成立時に瑕疵 遡及的に効力消滅
撤回 成立後に瑕疵 将来に向かって効力消滅

行政行為の取消し

そもそも、行政行為が行われると、たとえ違法な行政行為であっても、取消しされるまで一応有効なものとして扱われます。これを「公定力」と言います。

行政行為の取消には、職権取消し争訟取消しの2つがあります。

職権取消し

職権取消しとは、行政行為の相手方からの取消しの主張を待たずに、行政庁が、違法又は不当であることを理由に行政庁自ら取り消しをすることです。上記事例でも解説しましたが、例えば、不正手段を使って行政書士の登録の申請を受けて、その不正を見抜けずに行政庁が登録の処分を下したとします。その後、「この登録は不正だ!」と見抜いて、「この登録は違法だったので、登録を取り消します!」というのが職権取消しです。

争訟取消し

争訟取消しとは、行政処分に対して、不服がある場合、審査請求や取消訴訟を行うことができます。これにより、審査庁や裁判所が取消しをすることを争訟取消しと言います。例えば、行政書士の登録を受けた者が、不正手段を理由に取り消し(職権取消し)をされ、その取消し処分に対して、「この取消処分はおかしい!取消処分を取り消せ!」と取消訴訟を行い、裁判所が、「この者は不正をしていない!だから取消処分は取消しなさい!」といった場合が争訟取消しです。

実際、行政書士試験では、上記2つの違いについては出題される可能性は低いので参考程度でよいでしょう。これより下の内容についても、判例だけ押さえておけば大丈夫でしょう!

取消しをする際の法律の根拠

行政庁が取消しを行う場合、法律の特別な根拠は不要です。なぜなら、行政行為の取消は、違法な行政行為の効力を失わせる行為であり、そもそも、取消さなければならないものだからです

ただし、授益的行政行為を取消すことは、相手方に対して大きな不利益を与える可能性があります。
例えば、営業許可を受けた後に飲食店の営業を準備のために色々機材を購入したにも関わらず、営業許可が突然取消されたら大きな損害を受けます。

そのため、授益的行政行為(相手に権利利益を与える行為)の職権取消しは一定の制限があります。

取消権者

取消権者とは、取消しすることができる者(職権取消しの権限を持つ者)を言います。そして、職権取消しの権限を持つのは、処分庁上級行政庁(処分庁を監督する行政庁)です。

職権取消しの制限(職権取消しは自由にできるか?)

  1. 不可変更力がある行政行為の職権取消しはできない
    不服申立てに対する裁決には、不可変更力が働きます。そのため、裁決した行政庁自身は職権取消しができません
    ※この点は行政不服審査法を勉強してから理解すれば大丈夫です!
  2. 侵害的行政行為の職権取消しは、自由に行える
    侵害的行政行為とは、私人の権利を侵害する行為で、例えば、Aさんの行政書士の登録を取り消す行為です。この取消し行為(取消処分)を職権取消しすることは、Aさんにとっては、不利益にはなりません。むしろ、利益です。そのため、自由に行えます。
  3. 授益的行政行為の職権取消しは、慎重な判断が必要
    授益的行政行為とは、私人に利益を与える行為です。例えば、Bさんに対する生活保護の支給決定処分です。これを取り消すとなると、Bさんは不利益を受けます。そのため、この支給決定処分を取り消す場合、慎重な判断が必要となります。慎重な判断とは、処分を取り消すだけの公益上必要性がある場合や、生活保護の申請内容に不正があったなどの場合です。

行政行為の取消しに関する判例

  • 処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては、みずからその違法または不当を認めて、処分の取消しによって生じる不利益と、取消しをしないことによってかかる処分に基づきすでに生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、しかもその処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときに限り、これを取り消すことができる。(最判昭43.11.7:農地の買収売渡計画職権取消し)

行政行為の撤回

撤回をする際の法律の根拠

行政庁が撤回を行う場合、法律の特別な根拠は不要です(最判昭63.6.17)。なぜなら、撤回の原因は、私人にあるため、それを理由に撤回することは私人の権利の侵害には当たらないからです。例えば、運転免許をCさん与えて、その後、Cさんが、飲酒運転を行って運転免許の取消し(撤回)を行う場合、撤回するかどうか行政庁の裁量によります。法律に飲酒運転をした場合、撤回しなければならないと規定されていなくても、撤回をすることができます。もちろん、ほんのちょっとの飲酒で捕まえたとしても、それだけで撤回というのは厳しすぎるので、そういった場合は、免許取消ではなく、罰金くらいでしょう。つまり、比例原則は適用されます。

撤回権者

撤回権者とは、撤回することができる者(撤回できる権限を持つ者)を言います。そして、撤回権者は、処分庁のみです。

撤回の制限(撤回は自由にできるか?)

撤回の場合も、職権取消しと同じように、不可変更力がある行政行為は撤回できません。」「侵害的行政行為の場合、自由に撤回できます。」一方、「授益的行政行為の撤回は、原則、できません。

行政行為の撤回に関する判例

  • 【要旨】都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向つて取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。【判決理由】使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。(最判昭49.2.5:撤回にかかる損失補償の要否)

行政手続法14条:不利益処分の理由の提示

行政庁が不利益処分をする場合、原則、その名あて人に対し、同時に不利益処分を行う理由を示さなければなりません
ただし、例外として、処分をすべき差し迫った必要がある場合は、「処分と同時に」理由を示すことは不要です。

もっとも、上記処分をすべき差し迫った必要がある場合でも、原則、処分後相当の期間内に、不利益処分の理由を示さなければなりません
名あて人の所在が判明しなくなったときは、理由を示すことができないので、理由を示す必要はありません

そして、不利益処分を書面で行う場合、理由の提示も書面で行わないといけません。

原則 その名あて人に対し、同時に不利益処分を行う理由を示さなければなりません
例外 処分をすべき差し迫った必要がある場合は、「処分と同時に」理由を示すことは不要
もっとも、処分後相当の期間内に、不利益処分の理由を示さなければならないが
名あて人の所在が判明しなくなったときは、理由を示すことができないので、理由を示す必要はない

行政書士試験におけるポイント

13条の意見陳述の手続き」は、不利益処分前の手続きで
公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、意見陳述のための手続を執ることができないとき、意見陳述(聴聞・弁明の機会)の手続きが不要です。
「14条の不利益処分の理由提示」とは異なり、あとで意見陳述の手続きを取る必要はありません

14条の不利益処分の理由提示」は、上記例外の通り、原則、あとで、不利益処分の理由を示さなければなりません

(不利益処分の理由の提示)
第14条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。

<<行政手続法13条:不利益処分をしようとする場合の手続 | 行政手続法15条:聴聞の通知の方式>>