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令和3年・2021|問40|会社法

剰余金の株主への配当に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.株式会社は、剰余金の配当をする場合には、資本金の額の4分の1に達するまで、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を、資本準備金または利益準備金として計上しなければならない。

イ.株式会社は、金銭以外の財産により剰余金の配当を行うことができるが、当該株式会社の株式等、当該株式会社の子会社の株式等および当該株式会社の親会社の株式等を配当財産とすることはできない。

ウ.株式会社は、純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当を行うことができない。

エ.株式会社が剰余金の配当を行う場合には、中間配当を行うときを除いて、その都度、株主総会の決議を要し、定款の定めによって剰余金の配当に関する事項の決定を取締役会の権限とすることはできない。

オ.株式会社が最終事業年度において当期純利益を計上した場合には、当該純利益の額を超えない範囲内で、分配可能額を超えて剰余金の配当を行うことができる。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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【答え】:1

【解説】

ア.株式会社は、剰余金の配当をする場合には、資本金の額の4分の1に達するまで、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を、資本準備金または利益準備金として計上しなければならない。

ア・・・正しい

剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、「当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の一を乗じて得た額」を「資本準備金又は利益準備金」として計上しなければなりません。(会社法445条4項)

よって、本問は正しいです。

【詳細解説】

株式会社が剰余金を配当すると、剰余金が少なくなり、債権者への利息の返済等に影響が出る可能性があります。

そのため、剰余金を株主に配当する前に、原資である剰余金に1/10を掛けた金額を、資本準備金か利益準備金として確保しておいてください!

ということです。

例えば、1億円を配当に使うのであれば、1000万円を資本準備金か利益準備金に計上しなければなりません。

 

イ.株式会社は、金銭以外の財産により剰余金の配当を行うことができるが、当該株式会社の株式等、当該株式会社の子会社の株式等および当該株式会社の親会社の株式等を配当財産とすることはできない。

イ・・・誤り

株式会社は、剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければなりません(会社法454条1項)。

  1. 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額
  2. 株主に対する配当財産の割当てに関する事項
  3. 当該剰余金の配当がその効力を生ずる日

つまり、自社の株式を配当財産とすることはできないです。

一方、当該株式会社の親会社・子会社の株式等を配当財産とすることはできるので、本問は「当該株式会社の子会社の株式等および当該株式会社の親会社の株式等を配当財産とすることはできない」が誤りです。この部分だけ削除すれば、正しい記述となります。

 

ウ.株式会社は、純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当を行うことができない。

ウ・・・正しい

第453条から457条までの規定(剰余金の配当に関する規定)は、株式会社の純資産額が300万円を下回る場合には、適用されません(会社法458条)。

言い換えると、株式会社は、純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当を行うことができないので、正しいです。

 

エ.株式会社が剰余金の配当を行う場合には、中間配当を行うときを除いて、その都度、株主総会の決議を要し、定款の定めによって剰余金の配当に関する事項の決定を取締役会の権限とすることはできない。

エ・・・誤り

会計監査人設置会社は、定款で決めれば、配当についての決定を取締役会の権限にすることができます(会社法459条1項)。
よって、会社によっては、配当の決定を取締役会の権限にすることができるので、誤りです。

【理由】

会計監査人とは、公認会計士や監査法人で、会計のプロと言えます。
そして、会計監査人は、会社の財務状況や業績を監査しており、配当に関する取締役会の決定についても、会計監査人は監査します。

そのため、株主や債権者の信頼は担保(保証)されているので
会計監査人設置会社は、定款に定めれば配当に関する決定を取締役会に委任できます。

オ.株式会社が最終事業年度において当期純利益を計上した場合には、当該純利益の額を超えない範囲内で、分配可能額を超えて剰余金の配当を行うことができる。

オ・・・誤り

剰余金の配当により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはいけません(会社法461条1項8号)。

よって、「分配可能額を超えて剰余金の配当を行うことができない」ので誤りです。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問10|行政法・行政立法

行政立法についての最高裁判所の判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 国家公務員の退職共済年金受給に伴う退職一時金の利子相当額の返還について定める国家公務員共済組合法の規定において、その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。
  2. 監獄法(当時)の委任を受けて定められた同法施行規則(省令)において、原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、事物を弁別する能力のない幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効である。
  3. 薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、当該施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、もっぱら法律中の根拠規定それ自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることを要するものというべきであり、その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない。
  4. 児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反するものでもなく、父の不存在を指標として児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲を画することはそれなりに合理的なものともいえるから、それを設けたことは、政令制定者の裁量の範囲内に属するものであり、違憲、違法ではない。
  5. 銃砲刀剣類所持等取締法が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止した上で、美術品として価値のある刀剣類の所持を認めるための登録の方法や鑑定基準等を定めることを銃砲刀剣類登録規則(省令)に委任している場合に、当該登録規則において登録の対象を日本刀に限定したことについては、法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である。

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【答え】:2
【解説】

1.国家公務員の退職共済年金受給に伴う退職一時金の利子相当額の返還について定める国家公務員共済組合法の規定において、その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。

1・・・妥当ではない

判例(最判平27.12.14)によると

『国公共済法附則12条の12は、同一の組合員期間に対する退職一時金と退職共済年金等との重複支給を避けるための調整措置として、従来の年金額からの控除という方法を改め、財政の均衡を保つ見地から、脱退一時金の金額の算定方法に準じ、退職一時金にその予定運用収入に相当する額を付加して返還させる方法を採用したものと解される。

このような同条の趣旨等に照らすと、同条4項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率について、予定運用収入に係る利率との均衡を考慮して定められる利率とする趣旨でこれを政令に委任したものと理解することができる

中略

したがって、国公共済法附則12条の12第4項及び厚年法改正法附則30条1項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に委任するものということはできず憲法41条及び73条6号に違反するものではないと解するのが相当である。』

と判示しています。よって、本肢は「その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。」が妥当ではありません。本問の政令に委任したことは、憲法に違反しません。

【前提知識】

国公共済法附則12条の12第1項は、
退職一時金の給付を受けた者が,退職共済年金の支給を受ける権利を有することとなったときは、退職一時金利子加算額を,国家公務員共済組合連合会に返還しなければならない旨を規定する。
過去に退職一時金の支給を受けた方が、その後、「退職共済年金や障害共済年金」を受けることになったときは、原則としてその退職一時金として受けた額に利子を加えて返還する必要がある。→退職一時金と年金が重複してもらうことになるから

国公共済法附則12条の12第4項は,
退職一時金利子加算額に係る利率は,政令で定める旨を規定する。

これを受けて,政令4条2項は,退職一時金利子加算額に係る利子は,期間に応じ,年5.5%や年4%の利率で複利計算の方法によるものとする旨を規定する。

判決文にもある通り、国公共済法附則12条の12は、同一の組合員期間に対する退職一時金と退職共済年金等との重複支給を避けるための調整措置として、従来の年金額からの控除という方法を改め、財政の均衡を保つ見地から、脱退一時金の金額の算定方法に準じ、退職一時金にその予定運用収入に相当する額を付加して返還させる方法を採用したものと解される。

そして、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率について、政令に委任したことは、白地で包括的に政令に委任するものということはできず憲法違反ではない

としています。

2.監獄法(当時)の委任を受けて定められた同法施行規則(省令)において、原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、事物を弁別する能力のない幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効である。

2・・・妥当

判例(最判平3.7.9)によると

『旧監獄法50条は、「接見の立ち合い、信書の検閲その他接見及び信書に関する制限は法務省令をもって定める」と規定し、命令(法務省令)をもって、面会の立会、場所、時間、回数等、面会の態様についてのみ必要な制限をすることができる旨を定めている。

そして、命令によって接見許可の基準そのものを変更することは許されない。

ところが、規則120条は、「14歳末満の者には在監者と接見することを許さない」と規定し、旧監獄法施行規則124条は「所長において処遇上その他必要があると認めるときは旧監獄法施行規則120条の制限を免除できる」と規定している。

これによれば、規則120条が原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないこととする一方で、規則124条がその例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしていることが明らかである。

しかし、これらの規定は、たとえ事物を弁別する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法50条の委任の範囲を超えるものといわなければならない。』

と判示しており、「法の委任の範囲を超えるものといえ(=超えるものであり)、当該施行規則の規定は無効」です。

よって、本問は妥当です。

簡単にまとめると

監獄法の施行規則(省令)で原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものだから、この省令は、法50条の委任の範囲を超えるものであり無効。だから〇となります。

3.薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、当該施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、もっぱら法律中の根拠規定それ自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることを要するものというべきであり、その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない。

3・・・妥当ではない

判例(最判平25.1.11)によると

『旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は,郵便等販売(医薬品のネット販売)をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかである。これらの事情の下で,厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が,これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するもの(行政手続法38条1項)であり,その委任の範囲を逸脱したものではないというためには立法過程における議論をもしんしゃくした上で,新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て,そこから,郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が,上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである。』

と判示しています。

よって、本問の「その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない」というのは妥当ではありません。

正しくは「その判断において立法過程における議論を考慮した上で判断する」です。

【まとめると】

薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、
施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、
法律中の根拠規定自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることが必要であり
、その判断において立法過程における議論を考慮した上で判断する必要がある

ということです。

つまり、省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めるためには、法律の条文の中に「郵便等販売を規制する内容は、大臣が制定する省令に任せる」という趣旨が明確に読み取れることが必要で、法律を制定した過程における議論を考慮した上で判断する必要があるということです。

4.児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反するものでもなく、父の不存在を指標として児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲を画することはそれなりに合理的なものともいえるから、それを設けたことは、政令制定者の裁量の範囲内に属するものであり、違憲、違法ではない。

4・・・妥当ではない

判例(最判平14.1.31)によると

『施行令1条の2第3号が「父から認知された婚姻外懐胎児童」を本件括弧書により児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは、法の委任の趣旨に反し本件括弧書は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。そうすると,その余の点について判断するまでもなく、本件括弧書を根拠としてされた本件処分は違法といわざるを得ない。』

と判示しています。

よって、本問は『児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反ものでもなく』となっており、妥当ではないです。憲法違反です。

 

5.銃砲刀剣類所持等取締法が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止した上で、美術品として価値のある刀剣類の所持を認めるための登録の方法や鑑定基準等を定めることを銃砲刀剣類登録規則(省令)に委任している場合に、当該登録規則において登録の対象を日本刀に限定したことについては、法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である。

5・・・妥当ではない

判例(最判平2.2.1)によると

『規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法一四条一項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。』

と判示しています。

よって、本問は「法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である」は妥当ではありません。

正しくは「法律の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。」です。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問39|会社法

社外取締役および社外監査役の設置に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

ア.監査役設置会社(公開会社であるものに限る。)が社外監査役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外監査役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。

イ.監査役会設置会社においては、3人以上の監査役を置き、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。

ウ.監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものにおいては、3人以上の取締役を置き、その過半数は、社外取締役でなければならない。

エ.監査等委員会設置会社においては、3人以上の監査等委員である取締役を置き、その過半数は、社外取締役でなければならない。

オ.指名委員会等設置会社においては、指名委員会、監査委員会または報酬委員会の各委員会は、3人以上の取締役である委員で組織し、各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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【答え】:1

【解説】

ア.監査役設置会社(公開会社であるものに限る。)が社外監査役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外監査役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。

ア・・・誤り

「監査役設置会社」には「社外監査役」の設置に関する規定はないので誤りです。

ちなみに、「監査役会設置会社」については「社外監査役」を置く義務があります。

監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない(会社法335条3項)。

 

イ.監査役会設置会社においては、3人以上の監査役を置き、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。

イ・・・正しい

監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければなりません(会社法335条3項)。

よって、正しいです。

 

ウ.監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものにおいては、3人以上の取締役を置き、その過半数は、社外取締役でなければならない。

ウ・・・誤り

監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければなりません(会社法327条の2)。

本問は「3人以上の取締役を置き、その過半数は、社外取締役でなければならない」が誤りです。

単に「社外取締役」を置けば足ります。

 

エ.監査等委員会設置会社においては、3人以上の監査等委員である取締役を置き、その過半数は、社外取締役でなければならない。

エ・・・正しい

監査等委員会設置会社」においては、監査等委員である取締役は、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければなりません(会社法331条6項)

よって、正しいです。

 

オ.指名委員会等設置会社においては、指名委員会、監査委員会または報酬委員会の各委員会は、3人以上の取締役である委員で組織し、各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない。

オ・・・正しい

指名委員会等設置会社においては、「指名委員会」、「監査委員会」又は「報酬委員会」の各委員会は、委員3人以上で組織します(会社法400条1項)。

よって、正しいです。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問9|行政法

行政裁量に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点から行われる学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣(当時)の合理的な裁量に委ねられる。

イ.国家公務員に対する懲戒処分において、処分要件にかかる処分対象者の行為に関する事実は、平素から庁内の事情に通暁し、配下職員の指揮監督の衝にあたる者が最もよく把握しうるところであるから、懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される。

ウ.公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない。

エ.生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものであるから、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない。

オ.学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、集会の自由の保障の趣旨に鑑み、これを許可しなければならない。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:1

【解説】

ア.教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点から行われる学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣(当時)の合理的な裁量に委ねられる。

ア・・・妥当

判例(最判平5.3.16)によると

『(教科書)検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。』

と判示しています。

よって、妥当です。

イ.国家公務員に対する懲戒処分において、処分要件にかかる処分対象者の行為に関する事実は、平素から庁内の事情に通暁し、配下職員の指揮監督の衝にあたる者が最もよく把握しうるところであるから、懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される。

イ・・・妥当ではない

判例(最判昭52.12.20)によると

『公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。

・・・中略・・・、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。

したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。』

と判示しています。

よって、本問は「懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される」という部分が妥当ではないです。

【分かりやすくいうと】

つまり、裁判所が「公務員の懲戒処分が適当か否か」を審査する場合、懲戒権者と同一の立場に立って「懲戒処分をすべきであったかどうか」又は「いかなる処分を選択すべきであったか」で判断しない。
懲戒処分が、裁量権を濫用したがどうかで判断する、ということです。

【関連ポイント】

憲法76条3項(すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。)にも規定されている通り、裁判官(裁判所)が拘束されるのは「憲法」と「法律」だけです。「懲戒権者が行った事実認定」には拘束されません。

【事実認定とは?】

例えば、「公務員Aは、国家公務員法〇条に違反したから、懲戒免職処分とする」と懲戒権者が判断した場合の「公務員Aは、国家公務員法〇条に違反した」という部分が「事実認定」の部分です。

ウ.公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない。

ウ・・・妥当

判例(最判平25.4.16)によると

『上記の認定(水俣病の認定)自体は,・・・客観的事象としての水俣病のり患の有無という現在又は過去の確定した客観的事実を確認する行為であって,この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないというべきであり・・』

としています。

つまり、本問の「水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない。」という内容は妥当です。

エ.生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものであるから、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない。

エ・・・妥当ではない

判例(最判平24.2.28)によると

『生活保護法3条によれば,同法により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ,同法8条2項によれば,保護基準は,要保護者(保護を必要とする者)の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものでなければならない。

そうすると,仮に,老齢加算の一部又は全部についてその支給の根拠となっていた高齢者の特別な需要が認められないというのであれば,老齢加算の減額又は廃止をすることは,同項の規定に沿うところであるということができる。

もっとも,これらの規定にいう最低限度の生活は,抽象的かつ相対的な概念であって,その具体的な内容は,その時々における経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり,これを保護基準において具体化するに当たっては,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである

したがって,保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し,最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては,厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。』

と判示しています。

よって、『「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものであるから、・・・最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない。』は妥当ではありません。

正しくは『「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものではないから、・・・最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められる。』です。

オ.学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、集会の自由の保障の趣旨に鑑み、これを許可しなければならない。

オ・・・妥当ではない

判例(最判平18.2.7)によると

学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されていることからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。

すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。』

と判示しています。

よって、「集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、集会の自由の保障の趣旨に鑑み、これを許可しなければならない。」は妥当ではありません。

正しくは「集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについても、申請を拒否することができる。」です。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問38|会社法

株券が発行されない株式会社の株式であって、振替株式ではない株式の質入れに関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 株主が株式に質権を設定する場合には、質権者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載または記録しなければ、質権の効力は生じない。
  2. 株主名簿に質権者の氏名または名称および住所等の記載または記録をするには、質権を設定した者は、質権者と共同して株式会社に対してそれを請求しなければならない。
  3. 譲渡制限株式に質権を設定するには、当該譲渡制限株式を発行した株式会社の取締役会または株主総会による承認が必要である。 
  4. 株主名簿に記載または記録された質権者は、債権の弁済期が到来している場合には、当該質権の目的物である株式に対して交付される剰余金の配当(金銭に限る。)を受領し、自己の債権の弁済に充てることができる。 
  5. 株主名簿に記載または記録された質権者は、株主名簿にしたがって株式会社から株主総会の招集通知を受け、自ら議決権を行使することができる。 

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】

1.株主が株式に質権を設定する場合には、質権者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載または記録しなければ、質権の効力は生じない。

1・・・誤り

株券発行会社の株式の質入れは、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じません(会社法146条2項)。

上記反対解釈から、「株券を発行しない株式会社」については、株式に質権を設定する場合、当事者の合意により、質権の効力は生じます。よって、誤りです。

ちなみに、「質権者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載または記録しなければ、質権の効力は生じない」旨の規定はありません。

 

2.株主名簿に質権者の氏名または名称および住所等の記載または記録をするには、質権を設定した者は、質権者と共同して株式会社に対してそれを請求しなければならない。

2・・・誤り

株式に質権を設定した者は、株式会社に対し、「①質権者の氏名又は名称及び住所」および「②質権の目的である株式」を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができます(会社法148条)。

つまり、本問は「質権者と共同して、請求しなければならない」が誤りで、正しくは「単独で、請求できる」です。

 

3.譲渡制限株式に質権を設定するには、当該譲渡制限株式を発行した株式会社の取締役会または株主総会による承認が必要である。 

3・・・誤り

「譲渡制限株式に質権をつける場合、取締役会や株主総会の承認が必要」という条文は会社法にはありません。

したがって、譲渡制限株式に質権を設定するのに、取締役会や株主総会の承認はいりません。

 

4.株主名簿に記載または記録された質権者は、債権の弁済期が到来している場合には、当該質権の目的物である株式に対して交付される剰余金の配当(金銭に限る。)を受領し、自己の債権の弁済に充てることができる。 

4・・・正しい

登録株式質権者(株主名簿に記載されている質権者)は、質権を設定した株式に対して支払われる配当を受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができます(会社法154条1項)。

よって、本問は正しいです。

 

5.株主名簿に記載または記録された質権者は、株主名簿にしたがって株式会社から株主総会の招集通知を受け、自ら議決権を行使することができる。 

5・・・誤り

本問のような規定はないので、誤りです。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問8|行政法

法の一般原則に関わる最高裁判所の判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した場合、その後社会情勢が変動したとしても、当該施策を変更することは住民や関係者の信頼保護の観点から許されないから、当該施策の変更は、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして、それにより損害を被る者との関係においては、違法となる。
  2. 租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合する課税処分について、法の一般原則である信義則の法理の適用がなされることはなく、租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合であっても、課税処分が信義則の法理に反するものとして違法となることはない。
  3. 法の一般原則として権利濫用の禁止が行政上の法律関係において例外的に適用されることがあるとしても、その適用は慎重であるべきであるから、町からの申請に基づき知事がなした児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものであっても、それが、地域環境を守るという公益上の要請から生じたものである場合には、当該処分が違法とされることはない。
  4. 地方自治法により、金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利につきその時効消滅については援用を要しないとされているのは、当該権利の性質上、法令に従い適正かつ画一的にこれを処理することが地方公共団体の事務処理上の便宜および住民の平等的取扱の理念に資するものであり、当該権利について時効援用の制度を適用する必要がないと判断されたことによるものと解されるから、普通地方公共団体に対する債権に関する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされる場合は、極めて限定されるものというべきである。
  5. 国家公務員の雇傭関係は、私人間の関係とは異なる特別の法律関係において結ばれるものであり、国には、公務の管理にあたって公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮する義務が認められるとしても、それは一般的かつ抽象的なものにとどまるものであって、国家公務員の公務上の死亡について、国は、法律に規定された補償等の支給を行うことで足り、それ以上に、上記の配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うことはない。

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】

1.地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した場合、その後社会情勢が変動したとしても、当該施策を変更することは住民や関係者の信頼保護の観点から許されないから、当該施策の変更は、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして、それにより損害を被る者との関係においては、違法となる。

1・・・妥当ではない

判例(最判昭56.1.27:宜野座工場誘致事件)によると
『地方公共団体の施策を住民の意思に基づいて行うべきものとするいわゆる住民自治の原則は地方公共団体の組織及び運営に関する基本原則であり、また、地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたつて継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴つて変更されることがあることはもとより当然であつて、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。』
としています。

つまり、問題文の「施策を変更することは住民や関係者の信頼保護の観点から許されない」が妥当ではありません。

【詳細解説】

<事案(最判昭56.1.27:宜野座工場誘致事件)>

沖縄県の宜野座(ぎのざ)村Yは工場建設を計画し、村長Aは、株式会社Xに対して、「工場建設の誘致に全面的に協力すること」を断言した。

これを受けて、X社は、お金をかけて、工場の敷地内の整備工事を完了させた。

ところが、工場誘致の賛否を争点とする村長選挙があり、「誘致反対派のB」が村長に選出された結果、Bは、工場建設の計画を変更した。

これにより、Xは、工場誘致を断念することとなったため、当該Yの行いは、Xとの間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして、損害賠償請求をした。

<判例>

『地方公共団体の施策を住民の意思に基づいて行うべきものとするいわゆる住民自治の原則は地方公共団体の組織及び運営に関する基本原則であり、また、地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたつて継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴つて変更されることがあることはもとより当然であつて、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。(=地方公共団体が計画を変更することは許される

しかし、・・・右施策が変更されることにより、前記の勧告等に動機づけられて前記のような活動に入つた者がその信頼に反して所期の活動を妨げられ、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合に、地方公共団体において右損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の不法行為責任を生ぜしめるものといわなければならない。(=損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく計画変更することは、原則として、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして、違法となる)』
としています。

よって、前半部分「施策を変更することは住民や関係者の信頼保護の観点から許されない」が妥当ではありません。

後半部分は妥当です。

なので、問題文を正しくすると、下記のようになります。

地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した場合、その後社会情勢が変動した場合、当該施策を変更することは住民や関係者の信頼保護の観点から許されるが、当該施策の変更は、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして、それにより損害を被る者との関係においては、違法となる。

2.租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合する課税処分について、法の一般原則である信義則の法理の適用がなされることはなく、租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合であっても、課税処分が信義則の法理に反するものとして違法となることはない。

2・・・妥当ではない

判例(最判昭62.10.30)によると

『租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。』

よって、問題文の後半部分「租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合であっても、課税処分が信義則の法理に反するものとして違法となることはない。」が妥当ではありません。

正しくは「租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合、課税処分が信義則の法理に反するものとして違法となることがある」です。

 

3.法の一般原則として権利濫用の禁止が行政上の法律関係において例外的に適用されることがあるとしても、その適用は慎重であるべきであるから、町からの申請に基づき知事がなした児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものであっても、それが、地域環境を守るという公益上の要請から生じたものである場合には、当該処分が違法とされることはない。

3・・・妥当ではない

「トルコぶろ」とは、いわゆる「ソープランド」です。

判例(最判昭和53.6.16)によると

『本来、児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操をゆたかにすることを目的とする施設なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿つてなされるべきものであつて、前記のような、被告会社のトルコぶろ営業の規制を主たる動機、目的とするa町のb児童遊園設置の認可申請を容れた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、被告会社のトルコぶろ営業に対しこれを規制しうる効力を有しないといわざるをえない』として児童遊園設置認可処分は違法とされました。

つまり、本問の「町からの申請に基づき知事がなした児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものであっても、それが、地域環境を守るという公益上の要請から生じたものである場合には、当該処分が違法とされることはない。」は妥当ではありません。

正しくは下記の通りです。

「町からの申請に基づき知事がなした児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものである場合当該処分が違法とされる。」

 

4.地方自治法により、金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利につきその時効消滅については援用を要しないとされているのは、当該権利の性質上、法令に従い適正かつ画一的にこれを処理することが地方公共団体の事務処理上の便宜および住民の平等的取扱の理念に資するものであり、当該権利について時効援用の制度を適用する必要がないと判断されたことによるものと解されるから、普通地方公共団体に対する債権に関する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされる場合は、極めて限定されるものというべきである。

4・・・妥当

簡単にいうと、地方公共団体に対して金銭債権を持っている者(例えば、給付金をもらえる権利がある者)は、時効期間が過ぎてしまうと、地方公共団体が時効援用しなくても、自動的に請求権が時効消滅してしまう、ということです。

しかし、例外的に、地方公共団体が信義則に反する場合は、地方公共団体は、消滅時効を主張して、給付金をもらえる人の債権の消滅を主張することは許されません。この点の具体例は考えなくても大丈夫です。

■「健康管理手当の支給認定を受けた被爆者」が、外国へ出国したことに伴いその支給を打ち切られたため未支給の健康管理手当の支払を求めた事案において、

判例では、「支給義務者が地方自治法236条所定の消滅時効(5年で時効消滅すること)を主張することが信義則に反し許されない」と判示しました。

判例(最判平19.2.6)によると

『権利の時効消滅につき当該普通地方公共団体による援用を要しないこととしたのは,上記権利については,その性質上,法令に従い適正かつ画一的にこれを処理することが,当該普通地方公共団体の事務処理上の便宜及び住民の平等的取扱いの理念(同法10条2項参照)に資することから,時効援用の制度(民法145条)を適用する必要がないと判断されたことによるものと解される。
このような趣旨にかんがみると,普通地方公共団体に対する債権に関する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされる場合は,極めて限定されるものというべきである。』

よって、本肢は妥当です。

【事案】

Xは広島の原爆に被ばくしたことにより、健康管理手当の支給認定を受けた。その後Xは、ブラジルに移住した。その際、広島県知事は、厚生省(現厚労省)の通達に従って、健康管理手当の支給を打ち切った。そのため、Xは、広島県を相手に未支給の健康管理手当の支払を求めた。

※通達の内容は、「外国に移住した者は、健康管理手当の受給権は失権する」という内容

【判例】

被上告人ら(Xら)は、その申請により本件健康管理手当の受給権を具体的な権利として取得したところ、上告人(広島県)は、被上告人らがブラジルに出国したとの一事により、同受給権につき通達に基づく失権の取扱いをした。しかも、このような通達や取扱いには何ら法令上の根拠はなかったというのである。

通達は、行政上の取扱いの統一性を確保するために、上級行政機関が下級行政機関に対して発する法解釈の基準であって、国民に対し直接の法的効力を有するものではないとはいえ、通達に定められた事項は法令上相応の根拠を有するものであるとの推測を国民に与えるものであるから、前記のような通達の明確な定めに基づき健康管理手当の受給権について失権の取扱いをされた者に、なおその行使(手当を請求すること)を期待することは極めて困難であったといわざるを得ない。(失権扱いされているから、手当を請求しようと普通は考えない)

他方、国が具体的な権利として発生したこのような重要な権利について、失権の取扱いをする通達を発出する以上、相当程度慎重な検討ないし配慮がされてしかるべきものである。

しかも、通達の上記失権取扱いに関する定めは、我が国を出国した被爆者に対し、その出国時点から適用されるものであり、失権取扱い後の権利行使(手当を請求すること)が通常困難となる者を対象とするものであったということができる。

中略

そうすると、上告人(広島県)の消滅時効の主張は、「402号通達が発出されているにもかかわらず、当該被爆者については同通達に基づく失権の取扱いに対し訴訟を提起するなどして自己の権利を行使することが合理的に期待できる事情があったなどの特段の事情のない限り(このカッコ部分が例外部分)」、信義則に反し許されないものと解するのが相当である。(原則、広島県は、健康管理手当の受給権が時効消滅したことを主張できる)

本件は信義則に反することから、上告人は、消滅時効を主張して未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れることはできないものと解される。(今回の事案では、例外に該当し、広島県は、未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れることはできない)

5.国家公務員の雇傭関係は、私人間の関係とは異なる特別の法律関係において結ばれるものであり、国には、公務の管理にあたって公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮する義務が認められるとしても、それは一般的かつ抽象的なものにとどまるものであって、国家公務員の公務上の死亡について、国は、法律に規定された補償等の支給を行うことで足り、それ以上に、上記の配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うことはない。

5・・・妥当ではない

判例(最判昭50.2.25)によると

『国と国家公務員(以下「公務員」という。)との間における主要な義務として、法は、「公務員が職務に専念すべき義務」並びに「法令及び上司の命令に従うべき義務」を負い、

国がこれに対応して公務員に対し「給与支払義務」を負うことを定めているが、国の義務は右の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、・・・「安全配慮義務」を負つているものと解すべきである。』

つまり、本問は後半部分が妥当ではなく、正しくは「国家公務員の公務上の死亡について、国は、法律に規定された補償等の支給を行うことで足りず、それ以上に、上記の配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うこともある。」です。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問37|会社法

株式会社の設立に係る責任等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が定款に記載または記録された価額に著しく不足するときは、発起人および設立時取締役は、検査役の調査を経た場合および当該発起人または設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合を除いて、当該株式会社に対して、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
  2. 発起人は、その出資に係る金銭の払込みを仮装し、またはその出資に係る金銭以外の財産の給付を仮装した場合には、株式会社に対し、払込みを仮装した出資に係る金銭の全額を支払い、または給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部を給付する義務を負う。
  3. 発起人、設立時取締役または設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
  4. 発起人、設立時取締役または設立時監査役がその職務を行うについて過失があったときは、当該発起人、設立時取締役または設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
  5. 発起人、設立時取締役または設立時監査役が株式会社または第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の発起人、設立時取締役または設立時監査役も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。

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【答え】:4
【解説】

1.株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が定款に記載または記録された価額に著しく不足するときは、発起人および設立時取締役は、検査役の調査を経た場合および当該発起人または設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合を除いて、当該株式会社に対して、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。

1・・・正しい

株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負います(会社法52条1項)。

しかし、次に掲げる場合には、発起人及び設立時取締役は、現物出資財産等について、不足額を支払う義務を負いません(会社法52条2項)。

  1. 検査役の調査を経た場合
  2. 当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合

よって、本問は上記1項と2項の内容をまとめた内容なので、正しいです。

 

2.発起人は、その出資に係る金銭の払込みを仮装し、またはその出資に係る金銭以外の財産の給付を仮装した場合には、株式会社に対し、払込みを仮装した出資に係る金銭の全額を支払い、または給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部を給付する義務を負う。

2・・・正しい

発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負います(会社法52条の2第1項)。

  1. 払込みを仮装した場合→払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払
  2. 金銭以外の財産の給付を仮装した場合給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)

本問は、上記2号の内容です。

 

3.発起人、設立時取締役または設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

3・・・正しい

発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法53条1項)。

 

4.発起人、設立時取締役または設立時監査役がその職務を行うについて過失があったときは、当該発起人、設立時取締役または設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

4・・・誤り

発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います(会社法53条2項)。

本問は、「過失があったとき」が誤りで、正しくは「悪意または重過失があったとき」です。

 

5.発起人、設立時取締役または設立時監査役が株式会社または第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の発起人、設立時取締役または設立時監査役も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。

5・・・正しい

発起人、設立時取締役又は設立時監査役が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の発起人、設立時取締役又は設立時監査役も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者となります(会社法54条)。

よって、正しいです。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問7|憲法

次の文章の空欄[ ア ]~[ オ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

国民投票制には種々の方法があるが、普通にこれを[ ア ]、[ イ ]及び[ ウ ]の三種に大別する。[ ア ]という言葉は、通俗には広く国民投票一般を意味するもののようにも用いられているが、その語の本来の意義は、代表者たる議会が一度議決した事柄を、主権者たる国民が確認又は否認して終局的に決定するということであって、国民表決という訳語も必ずしも正確ではない。・・・(中略)・・・。[ ア ]が議会の為したことの過誤を是正する手段であるのに対して、[ イ ]は議会が為さないことの怠慢を補完する方法である。即ち議会が国民の要望を採り上げないで、必要な立法を怠っている場合に、国民自ら法律案を提出し国民の投票によってその可否を決する制度である。・・・(中略)・・・。[ ウ ]即ち公務員を国民の投票によって罷免する制度は、元来選挙と表裏を成して人の問題を決定するもので、[ エ ]を前提とするものであるから、厳密な意味における[ オ ]ではないけれども、その思想及び制度の歴史に於いて他の国民投票制と形影相伴って発達して来たのみならず、その実行の方法に於いても、概ね共通しているから、通常やはり国民投票制の一種として取り扱われている。

(出典 河村又介「新憲法と民主主義」1948年から<原文の表記の一部を改めた。>」

  1. ア:レファレンダム イ:国民発案 ウ:国民拒否 エ:命令委任 オ:プレビシット
  2. ア:イニシアティブ イ:国民拒否 ウ:不信任投票 エ:直接民主制 オ:代議制
  3. ア:レファレンダム イ:国民発案 ウ:国民拒否 エ:代議制 オ:直接民主制
  4. ア:イニシアティブ イ:国民拒否 ウ:解職投票 エ:プレビシット オ:命令委任
  5. ア:レファレンダム イ:国民発案 ウ:解職投票 エ:代議制 オ:直接民主

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【答え】:5

【解説】

ア.[ ア ]という言葉は、通俗には広く国民投票一般を意味するもののようにも用いられているが、その語の本来の意義は、代表者たる議会が一度議決した事柄を、主権者たる国民が確認又は否認して終局的に決定するということであって、国民表決という訳語も必ずしも正確ではない。

ア・・・レファレンダム
「国民投票」を意味する語句として正しいものは「レファレンダム」です。
「レファレンダム」とは、 憲法改正や法律の制定など重大な事項を定めるに際して、直接に国民投票によって賛否を求める制度。直接民主制の一形態で、日本では、憲法改正の際の国民投票や、地方自治特別法についての住民投票がレファレンダムに当たります。

政治における「イニシアチブ(国民発案ともいう)」とは、「国家・住民の発案権」を言います。

国や地方自治体の政治で、国民または住民の発言を認めることが「イニシアチブ」です。

イ.[ イ ]は議会が為さないことの怠慢を補完する方法である。即ち議会が国民の要望を採り上げないで、必要な立法を怠っている場合に、国民自ら法律案を提出し国民の投票によってその可否を決する制度である。
イ・・・国民発案
必要な立法を怠っている場合に、国民自ら法律案を提出することを「イニシアチブ(国民発案ともいう)」と言います。

つまり、イには「国民発案」が入ります。

議会が仕事をしない(立法を作らない)といった、怠慢の状況の際に、国民自らが「このような法律を作るのはどうでしょうか?」と法律案を提出して、国民投票によってその可否を決する制度が「国民発案」です。

【国民拒否とは】
国民投票の一つで、政府および議会の行なった行政や立法について、一定数の国民が異議を唱えた場合に、国民がそれを撤回、廃止させるために行われる国民投票です。

ウ.[ ウ ]即ち公務員を国民の投票によって罷免する制度

ウ・・・ 解職投票
「公務員を国民の投票によって罷免する制度」は「解職投票」です。

「不信任投票」新たに選出される候補者の信任を問うものです。
一方、解職投票は、既に任命されている者の解職を問うものである点で異なります。

エ.[ ウ:解職投票 ]即ち公務員を国民の投票によって罷免する制度は、元来選挙と表裏を成して人の問題を決定するもので、[ エ ]を前提とするものであるから、厳密な意味における[ オ ]ではないけれども、その思想及び制度の歴史に於いて他の国民投票制と形影相伴って発達して来たのみならず、その実行の方法に於いても、概ね共通しているから、通常やはり国民投票制の一種として取り扱われている。

エ・・・代議制
「代議制」は、選挙によって選ばれた代表者が国民の代表として政治を行うシステムです。ここで、選ばれた代表者を国民が罷免(やめさせる)のが「解職投票」です。

つまり、解職制度は、代議制を前提とするものと言えます。

分かりやすく言えば、「代議制で代表者を選んで → 解職投票で、選んだ代表者をやめさせる」という関係です。

オ.[ ウ:解職投票 ]即ち公務員を国民の投票によって罷免する制度は、元来選挙と表裏を成して人の問題を決定するもので、[ エ:代議制 ]を前提とするものであるから、厳密な意味における[ オ ]ではないけれども、その思想及び制度の歴史に於いて他の国民投票制と形影相伴って発達して来たのみならず、その実行の方法に於いても、概ね共通しているから、通常やはり国民投票制の一種として取り扱われている。

オ・・・直接民主
「解職投票は代議制を前提とするものであるため、厳密な意味における[ オ ]ではない。」と言っています。

代議制とは、国民が政治を行う代表者を選んで、その代表者が政治の意思決定を行います。

一方、直接民主制は、国民が自ら政治の意思決定を行います。例えば、国民投票や住民投票です。

つまり、「解職投票は代議制を前提とするものであるため、厳密な意味における[ オ:直接民主制 ]ではない。」ということです。

【参考知識】

「プレビシット」とは国民投票のことですが「レファレンダム(国民投票)」と少し異なる部分があります。

プレビシットは、政府や立法府がある政策を採用する前に、国民の意見を問い合わせる手段です。

一方、レファレンダムは、政府や立法府がある政策を採用した後に、国民による投票を行うことで、その政策の承認を得るかどうかを決定する手段です。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問36|商法

商人でない個人の行為に関する次のア~オの記述のうち、商法の規定および判例に照らし、これを営業として行わない場合には商行為とならないものの組合せはどれか。

ア.利益を得て売却する意思で、時計を買い入れる行為

イ.利益を得て売却する意思で、買い入れた木材を加工し、製作した机を売却する行為

ウ.報酬を受ける意思で、結婚式のビデオ撮影を引き受ける行為

エ.賃貸して利益を得る意思で、レンタル用のDVDを買い入れる行為

オ.利益を得て転売する意思で、取得予定の時計を売却する行為

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. ウ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:3

【解説】

ア.利益を得て売却する意思で、時計を買い入れる行為

ア・・・常に商行為となる

次に掲げる行為が、商行為です(商法501条:絶対的商行為)。

  1. 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
  2. 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為・・・選択肢オ
  3. 取引所においてする取引
  4. 手形その他の商業証券に関する行為

よって、「利益を得て売却する意思で、時計を買い入れる行為」は上記1号に当たるので、常に商行為です。

 

イ.利益を得て売却する意思で、買い入れた木材を加工し、製作した机を売却する行為

イ・・・常に商行為となる

選択肢アの商法501条1号の通り

「利益を得て売却する意思で、買い入れた木材を加工し、製作した机を売却する行為」は、常に商行為です。

 

ウ.報酬を受ける意思で、結婚式のビデオ撮影を引き受ける行為

ウ・・・営業として行わない場合には商行為とならない

次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為となります。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、商行為ではないです(商法502条:営業的商行為)。

  1. 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為・・・選択肢エ
  2. 他人のためにする製造又は加工に関する行為
  3. 電気又はガスの供給に関する行為
  4. 運送に関する行為
  5. 作業又は労務の請負
  6. 出版、印刷又は撮影に関する行為
  7. 客の来集を目的とする場屋における取引
  8. 両替その他の銀行取引
  9. 保険
  10. 寄託の引受け
  11. 仲立ち又は取次ぎに関する行為
  12. 商行為の代理の引受け
  13. 信託の引受け

「報酬をもらうつもりで、結婚式のビデオ撮影を引き受ける行為」は、商法502条6号の行為(営業的商行為)に該当するので、営業として行わない場合は、商行為になりません。

 

エ.賃貸して利益を得る意思で、レンタル用のDVDを買い入れる行為

エ・・・営業として行わない場合には商行為とならない

選択肢ウの商法502条1号の通り、「賃貸して利益を得る意思で、レンタル用のDVDを買い入れる行為」は、営業として行わない場合は、商行為になりません。

「営業としてする」とは、営利の目的をもって反復継続して行うことをいいます。

本肢を見ると、「営利の目的をもって反復継続して行う」とまでは書いてありません。そのため、営業として行うか否かが判断できないので、必ずしも商行為になるとは判断できません。よって、「営業として行わない場合には商行為とならない」となります。

 

オ.利益を得て転売する意思で、取得予定の時計を売却する行為

オ・・・商行為となる

選択肢アの商法501条2号の通り

「利益を得て転売する意思で、取得予定の時計を売却する行為」は、常に商行為です。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問6|憲法,国会

次の文章の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

憲法で、国会が国の「唯一の」立法機関であるとされるのは、憲法自身が定める例外を除き、[ ア ]、かつ、[ イ ]を意味すると解されている。
  1. ア:内閣の法案提出権を否定し(国会中心立法の原則) イ:議員立法の活性化を求めること(国会単独立法の原則)
  2. ア:国権の最高機関は国会であり(国会中心立法の原則) イ:内閣の独立命令は禁止されること(国会単独立法の原則)
  3. ア:法律は国会の議決のみで成立し(国会単独立法の原則) イ:天皇による公布を要しないこと(国会中心立法の原則)
  4. ア:国会が立法権を独占し(国会中心立法の原則) イ:法律は国会の議決のみで成立すること(国会単独立法の原則)
  5. ア:国権の最高機関は国会であり(国会中心立法の原則) イ:立法権の委任は禁止されること(国会単独立法の原則)

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【答え】:4
【解説】

憲法で、国会が国の「唯一の」立法機関であるとされるのは、憲法自身が定める例外を除き、[ア:国会が立法権を独占し(国会中心立法の原則)]、かつ、[イ:法律は国会の議決のみで成立すること(国会単独立法の原則)]を意味すると解されている。

本問は、「国会中心立法の原則」と「国会単独立法の原則」の内容を問う問題です。

国会中心立法の原則

「国会中心立法の原則」は、憲法によって特別定められたものを除いて、原則として国会を通して立法を行わなければならないという意味です。
例外として、両議院の規則制定権、内閣の政令制定権、裁判所の規則制定権、地方自治体の条例制定権は、国会を通さずに立法を行っているので、例外です。

国会単独立法の原則

「国会単独立法の原則」は、立法は国会だけで行い、国会以外の機関等は参加せずに、国会の議決だけで法律が成立するという原則をいいます。
例外としては、「①一の地方公共団体のみに適用される特別法への住民投票(95条)」「②憲法改正の国民投票(96条)」「③内閣の法案提出権」などがあり、①は、住民投票は、住民が参加しないと成立しない点で例外ですし、②は国民が参加しないと成立しない点で例外です。また、③については、法律の成立に内閣(行政機関)が参加している点で、例外といえます。

1.ア:内閣の法案提出権を否定し(国会中心立法の原則) イ:議員立法の活性化を求めること(国会単独立法の原則)

1・・・妥当ではない
「内閣の法案提出権」を否定しているのは、「国会単独立法の原則」です。よって、この点が妥当ではありません。

また、「議員立法の活性化を求めること」は、「国会単独立法の原則」を意味していないので、この点も妥当ではありません。

2.国権の最高機関は国会であり(国会中心立法の原則) イ:内閣の独立命令は禁止されること(国会単独立法の原則)

2・・・妥当ではない
「国権の最高機関は国会であり」というのは、「国会中心立法の原則」の意味ではありません。
憲法41条にある「国会は、国権の最高機関であって」の「最高機関」とは、国会議員が「国民」によって、直接選任され、その点で国会は国民に連結しており、国会は、国政の中心的地位を占める機関であることを強調する「ほめ言葉」のような意味で使われていて、法的な意味はありません。

「内閣の独立命令は禁止されること」は、「国会単独立法の原則」の意味ではありません。
「内閣の独立命令」とは、法律を無視して内閣が制定する政令のことですが、これは憲法73条6号本文「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。」の中の「憲法及び法律の規定を実施するために」について、「法律」を無視して「憲法の規定を実施するために」と考えているため、憲法にさえ沿っていれば法律に違反していても政令が下せるという解釈の下にある命令です。しかし、現在は認められていません。

3.ア:法律は国会の議決のみで成立し(国会単独立法の原則) イ:天皇による公布を要しないこと(国会中心立法の原則)

3・・・妥当ではない
「法律は国会の議決のみで成立し」とは、「国会単独立法の原則」ですが、イの「天皇による公布を要しないこと」は、「国会中心立法の原則」ではないので、妥当ではありません。

4.ア:国会が立法権を独占し(国会中心立法の原則) イ:法律は国会の議決のみで成立すること(国会単独立法の原則)

4・・・妥当
「国会が立法権を独占している」とは、「国会を通して立法を行わなければならない」「立法する場合、国会を通す必要がある」ということなので「国会中心立法の原則」です。

また、「法律は国会の議決のみで成立する」ことは、「国会単独立法の原則」を意味します。

よって、妥当です。

5.ア:国権の最高機関は国会であり(国会中心立法の原則) イ:立法権の委任は禁止されること(国会単独立法の原則)

5・・・妥当ではない
「国権の最高機関は国会であり」とは「国会中心立法の原則」を意味するものではありません。(選択肢2の解説参照)

また、「立法権の委任は禁止されること」は、「国会単独立法の原則」の意味ではありません。
そして、「国会単独立法の原則」は、立法権の委任は禁止してはいません。

【詳細解説】 前提として、憲法73条6号ただし書きに「政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」という風に法律が政令に対して罰則を設けることを委任することを許すルールがあります。

つまり、「国会単独立法の原則」は、立法権の委任は禁止してはいません。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略