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保証債務(保証の基本)

保証人とは?

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う者を言います(民法446条1項)。

保証債務の成立

保証契約は、書面または電磁的記録(電子的な契約)でしなければ、無効となります(民法446条2項3項)。

保証債務の範囲

保証人が負う債務の範囲、「主たる債務」だけでなく「利息、違約金、損害賠償」等その債務に従たるすべてのものを含みます(民法447条1項)。

さらに、原状回復義務についても保証人は負います(最判昭40.6.30)。

保証債務と主たる債務の関係

保証人の負担が債務の目的又は態様が、主たる債務より重いときは、主たる債務の限度まで減らされます(民法448条1項)

【具体例】

主たる債務が100万円の場合、保証債務(保証契約)も最大100万円です。保証債務はあくまで、主たる債務を保証するだけなので、保証債務だけ150万円としても、100万円となります。また、主たる債務が100万円で、主たる債務者が50万円を返済して、残額が50万円になれば、保証債務も50万円に減ります。

また、主たる債務の目的又は態様が、保証契約の締結後に加重された場合、当然には保証人の負担は加重されません(民法448条2項)。保証債務も加重するには、別途保証人と契約が必要です。

保証人の要件

債務者が保証人を立てる義務を負う場合、その保証人は、下記2つの要件を満たす必要があります(民法450条1項)。

  1. 行為能力者であること(制限行為能力者はダメ)
  2. 弁済をする資力を有すること

保証債務の性質(付従性・随伴性・補充性)

付従性(ふじゅうせい)

主たる債務の債務(主債務)が消滅すれば、当然に、保証債務も消滅します。この性質を「付従性」と言います。

随伴性(ずいはんせい)

主たる債務の債務(主債務)が、別の者に移転した時は、保証債務も移転します。この性質を「随伴性」と言います。

【具体例】

下図のように、はじめは、Aが「貸金債権」と「抵当権」を有しています。

この貸金債権をCに譲渡(債権譲渡)することで、当然に抵当権もCに移ります。つまり、抵当権の譲渡契約などをしなくても当然に、Cに移ります。

補充性

主たる債務者が債務を履行しないときにはじめて、保証人は履行の責任を負います。この性質を「補充性」と言います。

保証人の権利(催告の抗弁権と検索の抗弁権)

催告の抗弁権

主たる債務者から履行請求があったとき、保証人は、まず主たる債務者に対して請求してください!と主張できます。これを「催告の抗弁権」と言います。

検索の抗弁権

主たる債務者から履行請求があったとき、保証人が「①主たる債務者に弁済する資力があること」と「②執行が容易であること」を証明した場合、主たる債務者の財産から先に取り立てをさせることができます。これを「検索の抗弁権」と言います。

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参考条文

(保証人の責任等)
第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

(保証債務の範囲)
第447条 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
2 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

(保証人の負担と主たる債務の目的又は態様)
第448条 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。

(保証人の要件)
第450条 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること。
二 弁済をする資力を有すること。
2 保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
3 前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。

(他の担保の供与)
第451条 債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。

(催告の抗弁)
第452条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

(検索の抗弁)
第453条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

抵当権

抵当権とは?

抵当権とは、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を言います(民法369条1項)。

例えば、AがBに対して100万円を貸し、債務者Bがその保証(担保)として、B所有の土地に抵当権を設定した場合、債務者B(抵当権設定者という)が返済期限に100万円をAに返済しないとき、債権者A(抵当権者という)は、「抵当権が設定された土地」を競売にかけて、その代金から100万円(+利息)の弁済を受けることができます。

このとき、土地の占有者は、所有者Bです。

物上保証人とは?

上記は抵当権設定者が債務者Bですが、第三者が抵当権設定者となる場合があります。この第三者を物上保証人と言います。

例えば、AがBに対して100万円を貸し、「債務者Bの親C」がその保証(担保)として、C所有の土地に抵当権を設定した場合、「抵当権者がA」で、「抵当権設定者はC」です。

このCが物上保証人です。

抵当権を設定できるもの(抵当権の目的物)

抵当権は、不動産地上権永小作権に抵当権を設定することができます(民法369条1項・2項)。言い換えると、抵当権の目的物は、「不動産、地上権、永小作権」だということです。

抵当権の効力の及ぶ範囲

抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(抵当不動産という。)に付加して一体となっている物(付加一体物)に及びます(370条)。

付加一体物とは?

例えば、「取外しの困難な庭石」「土地に植えられた木」「建物の場合、扉や窓」等です。

>>付加一体物の詳細解説はこちら

抵当権の性質

抵当権には「付従性」「随伴性」「物上代位性」という3つの性質があります。

付従性

「抵当権は単独では存在できない。特定の債権と一緒に存在する」という性質が付従性です。

例えば、上記事例では、AはBに100万円を貸しているので、Aは「100万円の貸金債権」を有します。

これを保証するために「抵当権」を設定しているので、「100万円の貸金債権」と「抵当権」は一緒に存在します。

言い換えると、「100万円の貸金債権」が消滅すれば(Bが返済すれば)、自動的に「抵当権」は消滅します。

そして、この抵当権と一緒に存在する債権(100万円の貸金債権)のことを「被担保債権」と言います。

随伴性

抵当権は、被担保債権と一緒に移動する」という性質が随伴性です。

例えば、上記事例で、抵当権者Aが「100万円の貸金債権」を第三者Cに譲渡(債権譲渡)したとします。この場合「100万円の貸金債権」はAからCに移動します。それに伴って、抵当権もAからCに移動します(抵当権者もAからCに変更となる)。

物上代位性

抵当権の設定された不動産が別の「価値」に変わった場合、その「価値」から弁済を受けることができる性質を物上代位性と言います。

例えば、例えば、AがBに対して100万円を貸し、債務者Bがその保証(担保)として、B所有の建物に抵当権を設定した。この建物が火災に見舞われ、火災保険金が下りる場合、「抵当権の設定された建物」が「火災保険金」という別の価値に変わっています。

この場合、火災保険金から、100万円の弁済を受けることができます。この場合、抵当権者は、火災保険金が支払われる前に差し押さえる必要があります(民法304条1項)。

抵当権の対抗要件

抵当権は、登記をすることで、第三者に対して対抗することができます(民法177条)。

抵当権の順位

同一の不動産に、数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後によります(民法373条)。

一番初めに設定された抵当権を「1番抵当権」
その後の二番目に設定された抵当権を「2番抵当権」と言います。

この場合、1番抵当権から先に弁済を受けることができます。

そして、1番抵当権が消滅すると、2番抵当権が1番抵当権に順位が上がります。

抵当権の被担保債権の範囲

「抵当権の被担保債権の範囲」とは、分かりやすくいうと、「抵当権で保証される範囲(金額)」ということです。

「抵当権の被担保債権の範囲」は、元本だけでなく、利息も保証されます。ただし、利息については、他の債権者がいる場合は、「満期となった最後の2年分」としており(民法375条1項本文)、他の債権者がいない場合にのみ、利息のすべてが保証されます。

>>「満期となった最後の2年分」とは?

抵当権の侵害

第三者が「抵当権が設定された不動産」を損傷させたり、価値を下げる行為をした場合、抵当権者は「妨害排除請求」や「損害賠償請求」をすることができます。

また、抵当権設定者(債務者)が損傷させたり、価値を下げる行為をした場合、債務者は、期限の利益を主張することができなくなります(民法137条2号)。

不法行為に基づく損害賠償請求権

例えば、土地の不法占有者が小屋を作って生活をしており、汚物やゴミをその土地に埋めていた場合、そのままだと、価値が下がってしまいます。

このような場合、それらの除去費用を損害賠償請求により、回収することができます。

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参考条文

(期限の利益の喪失)
第137条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

(物上代位)
第304条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない

(抵当権の内容)
第369条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第370条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。

第371条 抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

(抵当権の順位)
第373条 同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。

(抵当権の順位の変更)
第374条 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。

(抵当権の被担保債権の範囲)
第375条 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

時効の基本

時効とは?

時効とは、一定の「事実」が継続する場合に、「事実」が「真実」と異なるときでも、継続した「事実」の法律関係で確定させる制度を言います。

【事例1】 「甲土地の所有者はA」という「真実」に対して、Bが甲土地を一定期間占有し続けたら(=事実)、事実を優先させて、甲土地の所有者はBとなる。(これを「取得時効」という)

【事例2】 CがDに対して100万円を貸した。「CはDに対して100万円を請求する権利を持つ」という「真実」に対して、一定期間CはDに対して請求等をしなかった(請求権を行使しないという「事実」)。この場合、Cの有する請求は消滅してしまう。(これを「消滅時効」という)

時効の要件

時効が成立する要件は下記2つあります。

  1. 時効期間が経過すること(時効が完成するという)
  2. 時効を援用すること

時効期間(要件1)

1の時効が完成する期間については、色々あるので、取得時効と消滅時効で細かく解説します。

時効の援用(要件2)

「時効を援用する」とは、時効の利益を受ける旨の意思表示をすることです。

「時効の利益」とは、上記事例1では、「甲土地の所有権を取得すること」、事例2では「Cの債権が消滅して、100万円を返済しなくてよくなること」です。

つまり、「甲土地の所有権を取得します!」とか「Cの債権を消滅させます!」と主張することが「時効を援用する」ということです。

時効を援用できる者と時効を援用できない者

当事者は、もちろん時効を援用できますが、それ以外でも「時効を援用できる者」がいます。

「援用ができる者」は「時効により直接に利益を受ける者」と判例では示されていましたが、改正民法により「正当な利益を有する者」と規定され、具体的には下記のような者が挙げられます。

時効を援用できる者

  • 保証人、連帯保証人
  • 物上保証人
  • 抵当権の第三取得者
  • 詐害行為の受益者最判平10.6.22

時効を援用できない者(判例)

時効の効果

①時効期間が満了し(時効が完成し)、②当事者が時効を援用すると、その効果は、起算点(時効期間の最初の時点)にさかのぼります(民法144条:遡及効)。

【具体例】

A所有の土地を、Bが自分の土地と思って2005年4月1日から占有をはじめ、2025年3月末に時効期間が満了した。その後、Bが取得時効を援用した場合、Bは「2005年4月1日から」その土地を所有していたこととなる。

時効利益の放棄

「時効利益の放棄」とは、時効完成後に、時効の利益を受けない旨の意思表示をすることです。時効利益は時効完成前に放棄することはできません(民法146条)。

時効完成後に債務を承認した場合

時効完成後に債務を承認した場合、時効完成していることを知らなかったとしても、その後、時効を援用することができなくなります最判昭41.4.20)。

参考条文

(時効の効力)
第144条 時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

(時効の援用)
第145条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

(時効の利益の放棄)
第146条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

無権代理

無権代理とは?

無権代理とは、代理権がないにも関わらず、代理行為をする行為を言います。

無権代理行為の効果

無権代理は、そもそも代理権が欠けているため、原則、「代理権の効果」は、本人に帰属しません。また代理人にも帰属しません。そうなると、法律効果はどうなるかが問題となるので、下記の通り、「本人の権利」と「相手方の権利」が用意されています。

無権代理が行われた場合の本人の権利

追認権

無権代理人が行った契約について、本人は追認をすることができます。そして、本人が追認することで、無権代理行為は有効となります(=追認することで効力が発生する)(民法113条1項)。

無権代理が行われた場合の相手方の権利

催告権

無権代理の相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。そして、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなします(民法114条)。

取消権

無権代理人が行った契約は、原則、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができます。ただし、相手方が契約時に無権代理であることを知っていたとき(悪意のとき)は、取消しできません(民法115条)。

無権代理人への責任追及権

無権代理人に対して責任追及できるかどうか(原則と例外)は、下記ルールの通りですが、少し分かりづらいので、まとめた表の上記を頭に入れる方が効率的です。

※例外の3.「無権代理人が制限行為能力者であるとき」は上記表にはありません。

無権代理人は、①自己の代理権を証明したとき、又は②本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負います(民法117条)。

つまり、無権代理人が、①自己の代理権を証明したとき、又は②本人の追認を得たときは、相手方に対して責任を負いません。(原則)

また、下記3つの場合も無権代理人は、相手方に対して責任を負いません(民法117条2項:例外)。

  1. 「無権代理人が代理権を有しないこと」を相手方が知っていたとき(悪意)。
  2. 「無権代理人が代理権を有しないこと」相手方が過失によって知らなかったとき(有過失)。ただし、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときは除きます。
  3. 無権代理人が制限行為能力者であるとき。

自己契約、双方代理

自己契約とは?

自己契約とは、代理人が自ら契約の相手方として、本人と契約をすることを自己契約と言います。例えば、売主Aが代理人Bに対して土地の売却の代理権を与えた。そして、代理人Bが買主となって、AB間で土地の売買契約を締結した場合、代理人Bは自己契約をしたことになります。

そして、自己契約は、原則、無権代理行為とみなす(民法108条本文)。

ただし、例外として①債務の履行及び②本人があらかじめ許諾した行為については、有効な契約とします(民法108条ただし書き)。

【具体例】

例えば、売主Aが、土地の売却について代理人Bに代理権を与えたとします。ここで、「代理人Bが、自ら買主」となってAB間で契約することが自己契約(代理人自身が契約をすること)です。

【理由】

この場合、代理人Bは、売買価格を勝手に決めて、自分(代理人B)に有利な契約にする可能性があります。すると、逆に本人Aの不利益になるため、無権代理として扱うようにしています。

双方代理とは?

双方代理とは、同一の者が契約当事者双方の代理人となって代理行為をすること。例えば、売主代理人も買主代理人もどちらも同一の者Aがなる場合、双方代理です。

そして、双方代理は、原則、無権代理行為とみなす(民法108条本文)。

ただし、例外として①債務の履行及び②本人があらかじめ許諾した行為については、有効な契約とします(民法108条ただし書き)。(自己契約と法律効果は同じです。)

【具体例と理由】

売主と買主の双方から代理を依頼された場合、代理人が買主に便宜を図って価格を通常よりも低くしたりすることができ、売主に不利益になる可能性があります。

逆に、価格を高くして買主に不利益を生じさせる可能性もあります。

そのため、双方代理も無権代理として扱うようにしています。

代理権の濫用

代理人が、「自己又は第三者」の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合を「代理権の濫用」と言います。

そして、代理権の濫用があっても、その契約は、原則、有効です。

相手方がその目的(代理権を濫用していること)を知り、(悪意)又は知ることができた(有過失の)ときは、その行為は、無権代理行為とみなします(民法107条)。

参考条文

(代理権の濫用)
第107条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

(自己契約及び双方代理等)
第108条 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

(無権代理)
第113条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

(無権代理の相手方の催告権)
第114条 前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

(無権代理の相手方の取消権)
第115条 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

(無権代理行為の追認)
第116条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

(無権代理人の責任)
第117条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

(単独行為の無権代理)
第118条 単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。

代理の基本

代理とは?

代理とは、代理人が本人に代わって意思表示をして、その法律効果は本人に帰属させることを言います。

例えば、A所有の土地について、Aが土地を誰かに売りたいと思って、Bに対して、土地の売却についての代理権を与えた。

この場合、「Aが本人」「Bが代理人」です。

そして、代理人Bが、買主Cと「A所有の土地」の売買契約を締結するのが代理です。

代理の要件の一つ「顕名」とは?

代理人が、相手方に対して、「本人のために代理行為をすること」を示すことを言います。

上記事例でいうと、
代理人Bが、買主Cに対して「売主Aのために、売買契約をします!」と伝えることを指します。

この「顕名」をすることで、代理の効果は、本人に帰属します。

顕名をしない場合どうなるか?

原則、代理行為は代理人のためにしたものとみなされます(民法100条本文)。

上記事例でいうと、代理人Bが売主となって売買契約をしたことになります。つまり、「売主B-買主C」の契約となるので、他人物売買ということです。

ただし、例外として、買主C(相手方)が、本人のためにすることを知っていたり(悪意)、もしくは知ることができた(有過失の)場合、本人のためにしたものとみなされます。

代理の効果

代理の効果とは、「代理行為をした結果発生する権利義務」のことです。

上記事例でいうと、土地の売買契約を締結すると(代理行為をすると)、売主側は「代金を受け取る権利」「土地を引渡す義務」が代理の効果です。

そして、この権利義務を誰が取得するか?が、「代理の効果は誰に効果が帰属するか?」ということです。

「代理の効果が本人に帰属する」のであれば、本人Aが「代金を受け取る権利」と「土地を引渡す義務」を持ちます。

一方、

「代理の効果が代理人に帰属する」のであれば、代理人Bが「代金を受け取る権利」と「土地を引渡す義務」を持ちます。

代理権の種類

代理権には「任意代理権」と「法定代理権」の2種類があります。

任意代理権とは?

任意代理権とは、本人の意思に基づいて、代理人に代理権を与えた場合、代理人は任意代理権を取得します。

通常、委任状を作成して、代理権を与える場合が「任意代理」に当たります。

法定代理権とは?

法定代理権とは、本人に基づかず、法律の規定で、代理人に代理権が与えられる場合、代理人は法定代理権を取得します。

例えば、親権者や成年後見人は、法律で未成年者や成年被後見人の法定代理人となる旨の規定があります。

権限の定めのない代理人の権限

権限の定めのない代理人は、「①保存行為」と「②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」のみをする権限を有します(民法103条)。

【①の具体例】
本人から「しばらく海外に行っているので、建物の管理は任せた!」と言われて代理権が授与された場合の、「家屋の修繕」は、保存行為なので、代理人は、単独で(本人の許諾なく)行えます。

【②の具体例】

  1. 現金を銀行預金にすること(性質は変わらない)
  2. 建物の管理を委任された者がその建物を賃貸する

【②に該当しない具体例】

  1. 「現金や預金」を「株式」に変える(性質が変わるから、代理人は本人の承諾なく行えない)

代理権が消滅する場合とは?(消滅事由)

下表について

「死亡」とは、死亡した場合

「破産」とは、破産手続開始決定を受けた場合

「後見開始」とは、後見開始の審判を受けた場合

を示しています。

本人 代理人
死亡 破産 後見開始 死亡 破産 後見開始
任意代理 消滅 消滅① 消滅しない③ 消滅 消滅 消滅
法定代理 消滅 消滅しない② 消滅しない④ 消滅 消滅 消滅

上表の「本人が破産手続き開始決定を受けた場合」の違いについて

①について、任意代理の場合、一般的に、「報酬を約束して頼む」場合が多いです。

もし、本人が破産してしまうと、代理人が頼まれたことを行っても、報酬が支払われない可能性が生じるから、代理人が困らないよう代理
権を消滅させます。

②について、そもそも法定代理は本人(未成年者や成年被後見人)を保護するための制度なので、本人が破産したからといって、法定代理権が消滅してしまうと、未成年者や成年被後見人の保護者がいなくなり困ります。

だから、本人(未成年者や成年被後見人)が破産しても、代理権は消滅させません。

「本人が後見開始の審判を受けた」場合について

③について、本人が認知症になる前、つまり、判断能力はあった時に代理権を与えています。その後、本人が認知症になり、後見開始の審判を受けた場合、当時の本人の意思を尊重するために、代理権を消滅させません。

④について、法定代理人はそもそも、本人(未成年者等)を保護するための制度なので、本人が後見開始の審判を受けたからといって代理権が消滅したら、保護する人がいなくなります。そのため、代理権は消滅させません。

参考条文

(代理行為の要件及び効果)
第99条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

(本人のためにすることを示さない意思表示)
第100条 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

(権限の定めのない代理人の権限)
第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(代理権の消滅事由)
第111条 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
2 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。

失踪宣告

失踪宣告とは?

失踪とは「しっそう」と呼びます。

ある人(失踪者)が生死不明となった場合、失踪者の財産をどうすることもできず、家族の人が困ってしまいます。そのため、一定期間が経過したら、その財産を家族の人に相続させるようにすることが失踪宣告という制度です。

普通失踪

家出等が原因で行方不明になった場合が普通失踪です。

そして、不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます(民法30条1項)。

そして、失踪の宣告を受けた者は上記7年を経過した時に、死亡したものとみなします(民法31条)。

特別失踪

戦争、船舶の沈没、震災などの危難に遭遇して行方不明となった場合が特別失踪です。

危難が去った後1年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます(民法30条2項)。

そして、失踪の宣告を受けた者は上記危難が去った時に、死亡したものとみなします(民法31条)。

失踪宣告を受けた者の権利能力

もしかすると、失踪宣告を受けた者は、どこかで生存して生活をしているかもしれません。そのため、失踪者本人の権利能力は依然として残ります

失踪宣告の取消し

①失踪者が生存すること又は②上記「7年経過時・危難が去った時」と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければなりません(民法32条1項)。

また、失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失います。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負います(民法32条2項)。

現に利益を受けている限度(現存利益)とは?

原形または形を変えて現に残っている限りの利益をいいます。

【現存利益の具体例】

生活費として執行宣告者の財産を使った場合、支出した生活費は「現存利益」として考えるので、返還が必要です。これは、生活費は必ず使うお金であり、失踪宣告者の財産がなかったとしても、必ず使うお金です。そのため「現存利益」としています。

【現存利益に当たらない例】

ギャンブルで浪費した利益は「現存しない」ものとされます。

参考条文

(失踪の宣告)
第30条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪そうの宣告をすることができる。
2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

(失踪の宣告の効力)
第31条 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

(失踪の宣告の取消し)
第32条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

平成23年・2011|問35|民法・親族

改正民法に対応済

後見および扶養に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 未成年後見人が選任されている場合、家庭裁判所は、職権で、さらに別の未成年後見人を選任することはできない。
  2. 後見人と被後見人との利益が相反する行為については、後見監督人がある場合でも、後見人は、被後見人のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
  3. 未成年後見については、未成年者に対し親権を行う者がないとき、または親権を行う者が管理権を有しないときに後見が開始し、成年後見については、後見開始の審判があったときに後見が開始する。
  4. 夫婦、直系血族および兄弟姉妹は、お互いに扶養する義務があるが、姻族間においては、家庭裁判所は、特別の事情がある場合でも、扶養の義務を負わせることはできない。
  5. 扶養する義務のある者が数人ある場合において、扶養すべき者の順序については、配偶者を先にし、配偶者がないときの親等の異なる血族間では、親等の近い者を先にする。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:3

【解説】

1.未成年後見人が選任されている場合、家庭裁判所は、職権で、さらに別の未成年後見人を選任することはできない。

1・・・誤り

●未成年後見人 → 複数選任される場合もある 

未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で、更に未成年後見人を選任することができます(民法840条2項)。

具体例 「親族」と「弁護士等の専門家」の両者が後見人なる場合があります。

関連ポイント 未成年後見人は、「法人」もなることができる

後見人には本人の親族や弁護士、司法書士などのイチ個人がなることが多いのですが、福祉協議会・福祉公社や司法書士法人・弁護士法人などの法人も後見人になることが可能です(民法840条3項)。

法人が成年後見人になることのメリットは、①個人ではなく、組織として動くことができるので、効率よく後見人の仕事を進めていくことが可能です。また、②個人の場合だと、その個人の健康上の理由などで責任を果たせなくなると職務が滞ってしまい、後見を受けている人(被後見人)の生活に支障が出ることもあります。法人が未成年後見人であれば、それを防ぐことが可能です。

2・・・誤り

●後見人と被後見人との利益相反 → 原則 : 特別代理人の選任が必要

●例外 : 後見監督人がいる場合は特別代理人の選任は不要

「親権者・後見人」と「その子・被後見人」との利益が相反する行為については、「親権者・後見人」は、その子のために「特別代理人」を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません(民法826条1項)。ただし、後見監督人がある場合は、 「特別代理人」を選任は不要です(860条)。

理由 後見監督人とは、弁護士のような専門家です。そして、後見監督人が選任されている場合には、後見監督人が被後見人を代理できることになるため、 「特別代理人」を選任は不要としています。

3.未成年後見については、未成年者に対し親権を行う者がないとき、または親権を行う者が管理権を有しないときに後見が開始し、成年後見については、後見開始の審判があったときに後見が開始する。

3・・・正しい

●未成年後見の開始時期 → ①未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は②親権を行う者が管理権を有しないとき

●成年後見の開始時期 → 後見開始の審判があったとき

「①未成年者に対して親権を行う者がないとき」、又は「②親権を行う者が管理権を有しないとき」に未成年後見は開始し、

「後見開始の審判があったとき」に成年後見は開始します(838条)。

※  「②親権を行う者が管理権を有しないとき」とは、例えば、家庭裁判所が管理権喪失の審判をした場合を指します。

4.夫婦、直系血族および兄弟姉妹は、お互いに扶養する義務があるが、姻族間においては、家庭裁判所は、特別の事情がある場合でも、扶養の義務を負わせることはできない。

4・・・誤り

●「夫婦間」、「直系血族および兄弟姉妹間」において、互いに扶養する義務がある(民法752条、877条1項)

●「三親等内の親族間」において、特別の事情があれば、家庭裁判所は扶養義務を負わせることができる(877条2項)

※ 「姻族間」とは、配偶者の血族を指します。

※ 親族とは、「6親等内の血族」「配偶者」「3親等内の姻族」を指します(725条)。

5.扶養する義務のある者が数人ある場合において、扶養すべき者の順序については、配偶者を先にし、配偶者がないときの親等の異なる血族間では、親等の近い者を先にする。

5・・・誤り

●扶養の順位 → 当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないとき → 家庭裁判所が決める 

1.扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定めます。
具体例 介護が必要な親(扶養権利者)とその子(扶養義務者)が二人いたします。どちらが親を扶養するか話合いで決まらない場合、家庭裁判所がまず「誰が(子のどちらが)」親を扶養するべきかを決めます。

2.扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定めます。 (民法878条)。
具体例 介護が必要な親(扶養権利者)が二人いて、子(扶養義務者)が一人いたとします。どちらの親をまず扶養するか話合いで決まらない場合、家庭裁判所がまず「誰を(どちらの親を)」扶養するべきかを決めます。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問34|民法・請負契約

改正民法に対応済

次のア~エの記述は、木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。このうち、約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものの組合せとして妥当なものはどれか。

ア.Aの請負代金の支払いは、Bの本契約の目的物の引渡しと同時になされるものとする。

イ.Aは、本契約の目的物に瑕疵があるときは、その瑕疵の補修(修補)に代え、または補修(修補)とともに、瑕疵に基づく損害賠償をBに求めることができる。

ウ.工事の遅延が、不可抗力によるとき、または正当な理由があるときは、Bは、速やかにその事由を示して、Aに工期の延長を求めることができる。

エ.Bの責めに帰すことができない工事の遅延または中止があるときは、Bは、この契約を解除することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。下記約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものはどれか。

ア.Aの請負代金の支払いは、Bの本契約の目的物の引渡しと同時になされるものとする。

ア・・・民法に規定されている

報酬は、仕事の目的物の引渡し同時に、支払わなければなりません(民法633条本文)。

よって、本肢は民法に規定されています。

木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。下記約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものはどれか。

イ.Aは、本契約の目的物に瑕疵があるときは、その瑕疵の補修(修補)に代え、または補修(修補)とともに、瑕疵に基づく損害賠償をBに求めることができる。

イ・・・民法に規定されている

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができます(民法562条1項本文)。

そして、上記と併せて、「第415条の規定による損害賠償の請求」並びに「第541条及び第542条の規定による解除権」を行使できます。

これらは、請負契約にも準用されます。(559条)

したがって、本肢は民法に規定されています。

【具体例】

建物の床下に防湿シートが設置されていなかったこと(契約不適合)により、直してください!と請求し(追完請求)、それにともなって、3日間、ホテル暮らしとなった(ホテル代合計5万円)。この場合、5万円の損害賠償請求も併せて可能です。

木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。下記約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものはどれか。

ウ.工事の遅延が、不可抗力によるとき、または正当な理由があるときは、Bは、速やかにその事由を示して、Aに工期の延長を求めることができる。

ウ・・・民法に規定されていない

「工期の延長の請求」については、民法に規定されていません。

木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。下記約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものはどれか。

エ.Bの責めに帰すことができない工事の遅延または中止があるときは、Bは、この契約を解除することができる。

エ・・・民法に規定されていない

注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができます民法642条1項本文)。

「工事の遅延または中止」を理由に、請負人Bから解除することはできる旨の規定は民法にはありません。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問46|民法・記述式

改正民法に対応済

次の文章は遺言に関する相談者と回答者の会話である。〔    〕の中に、どのような請求によって、何についてどのような請求ができるかを40字程度で記述しなさい。

相談者 今日は遺言の相談に参りました。私は夫に先立たれて独りで生活しています。亡くなった夫との間には息子が一人おりますが、随分前に家を出て一切交流もありません。私には、少々の預金と夫が遺してくれた土地建物がありますが、少しでも世の中のお役に立てるよう、私が死んだらこれらの財産一切を慈善団体Aに寄付したいと思っております。このような遺言をすることはできますか。」
回答者 「もちろん、そのような遺言をすることはできます。ただ「財産一切を慈善団体Aに寄付する」という内容が、必ずしもそのとおりになるとは限りません。というのも、相続人である息子さんは、〔    〕からです。そのようにできるのは、被相続人の財産処分の自由を保障しつつも、相続人の生活の安定及び財産の公平分配をはかるためです。」

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済


【答え】:遺留分侵害請求によって、相続財産の2分の1について金銭の支払を請求することができる。(42字)

【解説】

どのような請求か?

「このような遺言」とは、「私が死んだら財産一切を慈善団体Aに寄付旨の遺言」です。
しかし、必ずしもそのとおり(上記の遺言の通りに)になるとは限りません。

その理由は、「〇〇だからです。〇〇ようにできるのは、被相続人の財産処分の自由を保障しつつも、相続人の生活の安定及び財産の公平分配をはかるため」
となっているので、

〇〇の目的は、被相続人の財産処分の自由を保障しつつも、相続人の生活の安定及び財産の公平分配をはかることが目的と分かります。

上記内容から、「遺留分侵害額請求」と判断できます。

つかうルール

(遺留分侵害額の請求)
1046条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

何についてどのような請求ができるか?

そして、「私は夫に先立たれて独りで生活しています。亡くなった夫との間には息子が一人」という記述から

私(被相続人となる者)、子(相続人となる者)という流れです。

つまり、相続人が、「子」なので、遺留分率は1/2なので、相続財産の1/2は保障されています。

したがって、息子は、
遺留分侵害請求によって、相続財産の2分の1について金銭の支払を請求することができる。(42字)


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略